説明

極低温格納容器冷却システム及びその運用方法

【課題】被冷却物を冷媒に浸漬した状態で格納する貯蔵容器と真空容器との間に熱シールドを設け、その熱シールドを冷却する冷媒を極低温冷凍機により冷却するようにした極低温格納容器冷却システムにおいて、極低温冷凍機で発生する振動の抑制と、冷媒貯蔵容器からの冷媒の蒸発量抑制を図る。
【解決手段】貯蔵容器とそれを収容する真空容器及び熱シールドを備えた極低温格納容器と、極低温冷凍機を搭載した冷却源とを、輸送配管によって連結し、極低温冷凍機の振動が極低温格納容器に直接伝わらないようにした。輸送配管にベローズ部を設けることで更に振動を低減できる。また、極低温に冷却したヘリウムガスを利用する循環冷却方式とし、最も低温に冷却された冷媒を用いて2枚設置した熱シールドのうちの低温側シールドを冷却し、次に1枚のみ設置した熱シールドを冷却し、最後に2枚設置したうちの高温側シールドを冷却して、冷媒の蒸発量を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極低温格納容器の冷却システムとその運用方法に係り、特に液体ヘリウムなどの冷媒を用いて極低温に冷却する冷媒貯蔵型極低温格納容器の冷却システムとその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MRIやNMRのように高磁場を必要とする装置の需要が増大している。これらの装置では、高磁場を発生するために超電導マグネットを使用している。また、微弱な磁場を計測するために超電導を利用したデバイスが適用されている。これらの被冷却物は極低温冷媒に浸漬された状態で冷却されており、一般には沸点が4.2K(−269℃)の液体ヘリウムが冷媒として使用されている。
【0003】
液体ヘリウムは蒸発潜熱が小さく、大気圧下にある液体ヘリウムの蒸発潜熱は20.7[kJ/kg]である。これは水の大気圧下での蒸発潜熱(2257[kJ/kg])の100分の1以下であり、わずかな熱侵入でも大量の液体ヘリウムが蒸発する。したがって、液体ヘリウムで冷却しているシステムでは、定期的に液体ヘリウムの補充が必要となる。
【0004】
極低温容器に貯蔵した液体ヘリウムへの熱侵入を抑制するために、液体ヘリウムを貯蔵する容器と真空容器との間の真空槽に熱シールドを設置し、この熱シールドを室温である真空容器と、液体ヘリウム温度の中間温度に冷却して、室温である真空容器からの輻射熱が液体ヘリウム容器に直接伝わらないようにすることが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
熱シールドは通常2枚設けられ、真空容器側に設置された高温側の熱シールドが77K〜200K程度、液体ヘリウムを貯蔵する容器側に設置された熱シールドが4.2K〜77K程度で、それぞれ冷却されている。
【0006】
熱シールドの冷却源としては、一般に液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスの顕熱が利用されている。この場合、液体ヘリウムの蒸発量が少なくなると、ヘリウムガスの流量が減少するため、熱シールドを冷却する性能が低下し、熱シールド冷却温度が上昇してしまう。
【0007】
また、熱シールドを設置するためには、熱シールドと液体ヘリウムを貯蔵する容器とが接触しないためのスペース、および熱シールドと真空容器とが接触しないためのスペースが必要となる。熱シールドを2枚設置した場合には、更に内側(低温側)の熱シールドと外側(高温側)の熱シールドとの接触を防止するためのスペースが必要となり、液体ヘリウムを貯蔵する容器内に設置した被冷却物と真空容器表面との距離が長くなる。
【0008】
生体磁気計測では、被冷却物である超電導デバイスと真空容器表面との距離が感度に大きく影響するため、可能な限り被冷却物と真空容器表面との距離を近づけたいという要求がある。また、強磁場を発生する超電導マグネットにおいても、被冷却物である超伝導マグネットと真空容器表面との距離を近づけて、より強い磁場を活用したいとの要求がある。
【0009】
このためには、被冷却物と真空容器表面との距離を縮めた極低温容器構造とすることが望ましい。特許文献1では、熱シールドを1枚にして、貯蔵容器と真空容器との距離を縮めている。
【0010】
熱シールドを低温に冷却することで、熱シールドが1枚であっても液体ヘリウムの蒸発量を低減することができる。このために、極低温冷凍機を用いて熱シールドを冷却することが知られている。
【0011】
冷凍機を用いない場合、熱シールドの冷却源は液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスの顕熱である。したがって、蒸発量が少ない場合、ヘリウムガスが熱シールドを冷却する温度が上昇し、熱シールドからの輻射熱量が増大する。極低温冷凍機を用いない場合には、このように熱シールド温度と蒸発したヘリウムガスの熱シールド冷却性能とのバランスにより、熱シールド温度および液体ヘリウムの蒸発量が決まってしまう。
【0012】
しかし、極低温冷凍機を用いることにより、液体ヘリウムの蒸発量が少なくても、より低温に熱シールドを冷却することが可能となり、液体ヘリウムの蒸発量を少なくすることができる。
【0013】
【特許文献1】特開2002−232030号公報
【特許文献2】特開2002−232029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
極低温冷凍機を活用することにより、極低温冷媒格納容器の断熱性能は向上する。しかし、極低温冷凍機は、冷凍機構造や冷却方式の違いにより、異なるレベルではあるが必ず振動が発生する。このため、微弱な振動が感度に影響する生体磁気計測やNMR用マグネットには適用が難しい。
【0015】
また、被冷却物である超電導デバイスの感度を高めたり、超電導マグネットにおける真空容器表面での磁場強度を高めたりするためには、被冷却物から真空容器表面までの距離を短くする必要がある。これを実現するために、貯蔵容器と真空容器との間の真空槽に設置された熱シールドの枚数を減らして、熱シールド同士の接触防止のために設けられたスペースをなくし、貯蔵容器と真空容器との距離を短くすることが行われてきた。しかし、超電導デバイスのマルチチャンネル化や超電導マグネットの強磁場化に伴い、熱シールドを1枚しか設置できない部分の表面積が大きくなり、熱シールドから貯蔵容器への輻射熱が増大するという問題があった。
【0016】
本発明の目的は、極低温冷凍機を用いて熱シールドを冷却する場合の振動の問題を解決できる極低温格納容器冷却システムと、冷媒貯蔵容器からの冷媒の蒸発量を抑制できる運用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、冷媒に浸漬された状態で被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドと、前記熱シールドに固定された冷媒配管を有する極低温格納容器と、前記冷媒配管を流れる冷媒を冷却するための極低温冷凍機を搭載した冷却源と、前記冷却源と前記極低温格納容器とを連結する冷媒輸送配管とを具備し、前記極低温冷凍機により冷却された冷媒が前記輸送配管を通って前記極低温格納容器に送られるようにしたことを特徴とする極低温格納容器冷却システムにある。
【0018】
また本発明は、冷媒を貯蔵し、被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドにより構成され、前記熱シールドが前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された部分と、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された部分を持ち、前記2枚設置された熱シールドのそれぞれと、前記1枚設置された熱シールドに固定された冷媒配管を持ち、前記冷媒配管の内部に、前記貯蔵容器に貯蔵された前記冷媒と異なる冷媒が流れ、その冷媒配管を流れる冷媒が前記2枚設置された熱シールドと前記1枚設置された熱シールドを冷却するように構成された極低温格納容器と、
内部が真空となる第2の真空容器と、前記第2の真空容器に取り付けられた極低温冷凍機と、前記第2の真空容器内部に設置され、前記極低温冷凍機の寒冷発生部に取り付けられた少なくとも1台の熱交換部と、前記第2の真空容器内に設置された少なくとも1台の向流熱交換器と、内部に冷媒が流れる第2の冷媒配管を持ち、前記熱交換部と前記向流熱交換器が前記第2の冷媒配管により連結されている冷却源と、
内部に冷媒が流れる第3の冷媒配管と、前記第3の冷媒配管との間で真空層を形成する第3の真空容器を有する輸送配管とを有し、
前記極低温格納容器に設置された前記熱シールドに固定された冷媒配管と、前記冷却源に設置された第2の冷媒配管が、前記第3の冷媒配管により連結され、前記低温格納容器における前記真空容器と、前記冷却源における前記第2の真空容器が、前記第3の真空容器により連結されていることを特徴とする極低温格納容器冷却システムにある。
【0019】
また本発明は、冷媒を貯蔵し、被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドにより構成され、前記熱シールドが前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された部分と、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された部分を持ち、前記2枚設置された熱シールドのそれぞれと、前記1枚設置された熱シールドに固定された冷媒配管を持ち、前記冷媒配管の内部に、前記貯蔵容器に貯蔵された前記冷媒と異なる冷媒が流れ、その冷媒配管を流れる冷媒が前記2枚設置された熱シールドと前記1枚設置された熱シールドを冷却するように構成された極低温格納容器と、
内部が真空となる第2の真空容器と、前記第2の真空容器に取り付けられた極低温冷凍機と、前記第2の真空容器内部に設置され、前記極低温冷凍機の寒冷発生部に取り付けられた少なくとも1台の熱交換部と、前記第2の真空容器内に設置された少なくとも1台の向流熱交換器と、内部に冷媒が流れる第2の冷媒配管を持ち、前記熱交換部と前記向流熱交換器が前記第2の冷媒配管により連結されている冷却源と、
内部に冷媒が流れる第3の冷媒配管と、前記第3の冷媒配管との間で真空層を形成する第3の真空容器を有する輸送配管とを有し、
前記極低温格納容器に設置された前記熱シールドに固定された冷媒配管と、前記冷却源に設置された第2の冷媒配管が、前記第3の冷媒配管により連結され、前記低温格納容器における前記真空容器と、前記冷却源における前記第2の真空容器が、前記第3の真空容器により連結されている極低温格納容器冷却システムの運用方法であって、
前記低温格納容器における前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、前記貯蔵容器側に設置された熱シールドを前記冷却源で冷却された冷媒で最初に冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒を、前記冷却源における前記向流熱交換器の低温源として活用して、前記向流熱交換器で対向する冷媒との間で熱交換を行い、
これにより温度が上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドを冷却し、
前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドとの熱交換により温度上昇した冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、真空容器側に設置された熱シールドを冷却するようにしたことを特徴とする極低温格納容器冷却システムの運用方法にある。
【0020】
また本発明は、冷媒を貯蔵し、被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドにより構成され、前記熱シールドが前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された部分と、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された部分を持ち、前記2枚設置された熱シールドのそれぞれと、前記1枚設置された熱シールドに固定された冷媒配管を持ち、前記冷媒配管の内部に、前記貯蔵容器に貯蔵された前記冷媒と異なる冷媒が流れ、その冷媒配管を流れる冷媒が前記2枚設置された熱シールドと前記1枚設置された熱シールドを冷却するように構成された極低温格納容器と、
内部が真空となる第2の真空容器と、前記第2の真空容器に取り付けられた極低温冷凍機と、前記第2の真空容器内部に設置され、前記極低温冷凍機の寒冷発生部に取り付けられた少なくとも1台の熱交換部と、前記第2の真空容器内に設置された少なくとも1台の向流熱交換器と、内部に冷媒が流れる第2の冷媒配管を持ち、前記熱交換部と前記向流熱交換器が前記第2の冷媒配管により連結されている冷却源と、
内部に冷媒が流れる第3の冷媒配管と、前記第3の冷媒配管との間で真空層を形成する第3の真空容器を有する輸送配管とを有し、
前記極低温格納容器に設置された前記熱シールドに固定された冷媒配管と、前記冷却源に設置された第2の冷媒配管が、前記第3の冷媒配管により連結され、前記低温格納容器における前記真空容器と、前記冷却源における前記第2の真空容器が、前記第3の真空容器により連結されている極低温格納容器冷却システムの運用方法であって、
前記極低温格納容器における前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、貯蔵容器側に設置された熱シールドを前記冷却源で冷却された冷媒で最初に冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドを冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒を、前記冷却源における前記向流熱交換器の低温源として活用して、前記向流熱交換器で対向する冷媒との間で熱交換を行い、
これにより温度が上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、真空容器側に設置された熱シールドを冷却するようにしたことを特徴とする極低温格納容器冷却システムの運用方法にある。
【0021】
本発明において、極低温格納容器の貯蔵容器と真空容器との間に設置された熱シールドは分割された構造とし、分割された熱シールド同士を低熱伝導率材料で連結することが望ましい。
【0022】
また、本発明では、極低温格納容器と冷却源を連結する冷媒輸送配管における第3の真空容器の少なくとも一部に、ベローズ部を設けることが望ましい。冷媒輸送配管における第3の冷媒配管の少なくとも一部にベローズ部が設けることも望ましい。
【0023】
冷媒輸送配管を構成する第3の真空容器の少なくとも一部にベローズ部を設け、そのべローズ部の途中で床に対して固定することは更に望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、極低温冷凍機を使用した場合の振動の問題を解消でき、また、極低温格納容器における冷媒貯蔵容器からの液体ヘリウムの蒸発量を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
図3は本発明に係る極低温格納容器冷却システムの概略構成を示す図である。本発明の極低温格納容器冷却システムは、貯蔵部100と冷却源101および輸送配管102により構成されている。冷却源101には、ここでは図示していないが極低温冷凍機が搭載されており、極低温冷凍機は図示しない圧縮機と高圧配管により連結されている。極低温冷凍機を使用することにより,例えば液体窒素や液体ヘリウムなどの冷媒を補充する必要がなくなる。また、極低温冷凍機の冷却ステージで発生する液体窒素温度以下の寒冷を利用することができる。
【0027】
図3では、輸送配管102の一部にベローズ104を設けている。また、ベローズ104の途中で支持台105を用いて、ベローズ104を床に対して固定している。
【0028】
冷却源101には振動を発生する極低温冷凍機が存在する。この極低温冷凍機は、極低温冷凍機が固定された冷却源101自体に一定の振動を与えることになる。冷却源101で発生した振動は、輸送配管102を伝わって貯蔵部100に伝わることになる。
【0029】
輸送配管102の少なくとも一部にベローズ104を設けることによって、冷却源101で発生した振動が貯蔵部100に伝わる前に減衰させることができる。また、輸送配管102に設けたベローズ104の途中で、ベローズ104を床に対して剛性高く支持台105に固定することにより、ベローズ104の固定部における振動を更に小さくすることができる。また、ベローズ104を床に固定した位置から貯蔵部100の間にベローズ104があることにより、貯蔵部100に伝わる振動が更に小さくなる。ベローズ104と支持台105の固定部は剛性の高いステンレス鋼パイプなどであっても構わないが、その場合には固定部の両端にベローズを設けることが望ましい。
【0030】
図1は本発明を適用したNMR用超電導マグネットにおける極低温冷媒貯蔵容器貯蔵部の断面を示す図である。貯蔵部100は、冷媒5を貯蔵し被冷却物である超電導マグネット1aを格納した貯蔵容器2と、貯蔵容器2との間で真空槽10を生成する真空容器3と、真空槽10内で貯蔵容器2の周囲に設置された2重の熱シールド7,8と、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に1枚だけ設置された熱シールド9と、各熱シールドを冷却するための冷媒が流れる冷媒配管11により構成されている。
【0031】
超電導マグネット1aで発生する強磁場を有効に活用するためには、超電導マグネット1aとマグネットの中心を貫通するアクセスポート14の壁との距離を近づける必要がある。
【0032】
貯蔵部100は一般にはステンレス鋼やアルミニウムを用いて製作されるが、特にアクセスポート14は材料の持つ磁性が問題となるため、磁化率の小さいアルミニウムを用いて製作されることが望ましい。
【0033】
以下、真空槽10内で貯蔵容器2の周囲に設置された2重の熱シールド7,8のうち、室温である真空容器3側に設置された熱シールド8を高温シールド、貯蔵容器2側に設置された熱シールド7を低温シールドと称する。
【0034】
高温シールド8は室温である真空容器3からの輻射を受け、低温シールド7は高温シールド8からの輻射を受けることになる。熱シールドが2重に設置された部分では、貯蔵容器2は低温シールド7からの輻射を受けることになる。
【0035】
一方、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に1枚だけ設置された熱シールド9は、室温であるアクセスポート14からの輻射を受ける。熱シールドが1枚だけ設置された部分では、熱シールド9の内側には貯蔵容器2があるため、貯蔵容器2は熱シールド9からの輻射を受けることになる。
【0036】
熱シールド7,8,9は、冷媒配管11と例えばアルミニウムテープによって熱的に接触しており、冷媒配管11内を流れる極低温に冷却された冷媒との熱交換により冷却されている。冷媒配管11は輸送区間ではステンレス鋼製のパイプで形成されている。熱シールド7,8,9と冷媒配管11との熱接触部では熱伝導率が高く強度も強い銅配管で接続されている。熱シールド7,8,9と冷却配管11との接触面積が十分に確保できる場合には、熱接触部の配管をステンレス鋼にしても良い。ただし、配管の肉厚は薄くする必要がある。
【0037】
真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールド7は分割構造となっており、分割された各シールドには冷媒配管11との熱接触部が設けられている。熱シールド7の分割は、分割された熱シールド7のシールド温度により決まり、同じ温度で冷却するシールド同士は結合することができる。室温部との連結部(開口部)と結合した熱シールドは、室温からの熱伝導を受けるために温度が高くなる。熱シールド温度が高い部分を少なくするために、室温部との連結部と結合した熱シールドは、他の熱シールドと切り離している。
【0038】
図4は熱シールド分割部の固定構造を示す図である。熱シールドを分割した時、熱シールド同士に隙間ができると、隙間を通過する輻射熱が生じる。そのため、異なる温度で冷却される熱シールド61,62の間にスペーサ65を挟みこんでいる。ここで、スペーサ65の材質に熱伝導率の低いGFRP(glass fiber reinforced plastic)を用いることにより、熱シールド61と熱シールド62の間に温度差を設けることができる。この時、完全に密閉状態にしてしまうと、熱シールド内部を真空にすることができなくなるので、ガス抜き孔66を数箇所設ける必要がある。また、ガス抜き孔66を通過する輻射熱を防止するために、孔の内面の放射率を高くするほか、ガス抜き孔の周囲をガス抜きシールド67で覆うことも有効である。
【0039】
このように、熱シールド61と熱シールド62との間をGFRPなどの低熱伝導率材料で接合することによって、熱シールド同士の間で温度差を設けることができる。
【0040】
真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールド8も熱シールド7と同様の構造となっている。
【0041】
真空槽10内で貯蔵容器2とアクセスポート14の間に1枚だけ設置された熱シールド9は、真空槽10を薄くした部分に冷媒配管11を設置することが困難なため、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールド7,8の間に配管を設置して冷却している。
【0042】
真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールドのうち高温シールド8と真空容器3の間には、図示しないが積層断熱材を設置して、室温である真空容器3から高温シールド8への輻射熱が低減するようにすることが望ましい。
【0043】
また、真空槽10内で貯蔵容器2とアクセスポート14の間に1枚だけ設置された熱シールド9とアクセスポート14の間にも、同じように図示しないが積層断熱材を設置して、室温である真空容器3から熱シールド9への輻射熱が低減するようにすることが望ましい。
【0044】
図5は本発明を適用した冷却源の構造を示す断面図である。冷却源101は、第2の真空容器21と第2の真空容器21に固定された極低温冷凍機30、第2の真空容器21内に設置された向流熱交換器22,23、極低温冷凍機30の第1冷却ステージ31と熱的に結合した熱交換部41、極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と熱的に結合した熱交換部42、極低温冷凍機30の第1冷却ステージ31と熱的に結合した熱シールド24および冷媒配管11から構成されている。
【0045】
図5では、極低温冷凍機30にGifford−McMahon(ギフォード・マクマホン)型冷凍機(以下、GM冷凍機)を使用している。本実施例ではGM冷凍機が1台のみであるが、冷却能力によっては冷凍機を複数台使用してもよい。冷却能力に問題がなければ、GM冷凍機よりも発生する振動が小さいパルス管冷凍機を適用してもよい。
【0046】
冷媒配管11の内部には図示しない圧縮機により加圧されたヘリウムガスが充填されている。冷媒配管はステンレス鋼製である。室温である圧縮機から冷却源101に供給されたヘリウムガスは、まず向流熱交換器22を通過する際に、対向するヘリウムガスとの間で熱交換を行い、低温に冷却される。次に極低温冷凍機30の第1冷却ステージ31と熱的に結合した熱交換部41で、極低温冷凍機30の第1冷却ステージ31と同じ温度まで冷却される。次に、向流熱交換器23を通過する際、対向するヘリウムガスとの間で熱交換を行い、更に温度が低下する。次に極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と熱的に結合した熱交換部42で、極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と同じ温度まで冷却され、輸送配管102の内部に設置された冷媒配管11aを通って貯蔵部100に送られる。
【0047】
貯蔵部100内で被冷却物である熱シールドとの熱交換により温度上昇したヘリウムガスは、冷媒配管11bを通って再び冷却源101に帰還して、向流熱交換器23の低温源として使用される。ここで、対向するヘリウムガスとの間で熱交換を行い温度上昇したヘリウムガスは、冷媒配管11cを通って再び貯蔵部100に送られる。貯蔵部100内で被冷却物である熱シールドとの熱交換により温度上昇したヘリウムガスは、冷媒配管11dを通って再び冷却源101に帰還して、向流熱交換器22の低温源として使用される。ここで、対向するヘリウムガスとの間で熱交換を行い、室温まで温度上昇したヘリウムガスは図示しない圧縮機に戻る。
【0048】
このように、外部からの冷媒供給を必要としない、閉じた循環方式を採用することにより、内部の温度変動を小さく抑え、長時間の連続運転にも適用することができる。
【0049】
極低温冷凍機30の第1冷却ステージ31と熱的に結合した熱シールド24は、極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と向流熱交換器23への輻射を低減している。極低温冷凍機30の第1冷却ステージ31と熱的に結合した熱シールド24と真空容器21との間には、図示しない積層断熱材を設置して真空容器21から熱シールド24への輻射熱を低減している。
【0050】
極低温冷凍機30から発生する振動は、第2の真空容器21に設置された図示しない減衰機構により低減される。また、冷媒配管11を伝わる振動は、冷媒配管11の一部に設けられた図示しないベローズ部において低減される。また、輸送配管102は真空容器の一部が図示しないベローズ構造となっており、真空容器を伝わる振動を低減する。また,輸送配管102のベローズ部で床に剛性高く固定することにより、冷却源101での振動が貯蔵部100に伝わるのを更に抑制できる。
【0051】
図6は貯蔵部100内に設置された熱シールドを、冷却源101で極低温に冷却した冷媒を用いて冷却する経路を示す図である。
【0052】
冷却源101において極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と熱的に結合した熱交換部42で、極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と同じ温度に冷却されたヘリウムガスは、冷媒配管11aを通って貯蔵部100に送られ、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールドのうち低温シールド7を冷却する。低温シールド7の周囲には高温シールド8があるため、低温シールド7が高温シールド8から受ける輻射熱202は小さく、冷却配管11を流れるヘリウムガスの温度上昇幅は小さい。
【0053】
低温シールド7との熱交換により温度上昇したヘリウムガスは、冷媒配管11bを通って一旦冷却源101に送られ、向流熱交換器23の低温源として使用される。ここで、対向するヘリウムガスとの間で熱交換を行い、温度上昇したヘリウムガスは冷媒配管11cを通って再び貯蔵部100に送られ、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3との間に1枚設置された熱シールド9を冷却する。
【0054】
熱シールド9は、室温である真空容器3からの輻射熱204を受けるため、冷媒であるヘリウムガスの温度が上昇する。この温度上昇したヘリウムガスを利用して、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3との間に2枚設置された熱シールドの内の高温シールド8を冷却する。高温シールド8は室温である真空容器3からの輻射熱201を受けるため、冷媒の温度は更に上昇する。
【0055】
熱シールド9との熱交換で温度上昇したヘリウムガスは、冷媒配管11dを通って冷却源101に送られ、向流熱交換器22の低温源として利用される。
【0056】
以上により、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールドのうち低温シールド7は4.2K〜10K程度、高温シールド8は70K〜100K程度、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に1枚に設置された熱シールド9は25K〜45K程度に冷却される。貯蔵容器2は、低温シールド7からの輻射熱203と、熱シールド9からの輻射熱205を受けるが、それぞれの熱シールド温度が低いため貯蔵容器2からの液体ヘリウムの蒸発量を抑制することができる。
【0057】
図8は輸送配管102の構造を示す断面図である。輸送配管102は、第3の真空容器301と、内部に冷媒が流れる冷媒配管302により構成されている。ここで、輸送配管102を構成する第3の真空容器301の少なくとも一部には、ベローズが用いられている。
【0058】
真空容器3と第2の真空容器21および第3の真空容器301は連結されている。また、真空容器3と第2の真空容器21および第3の真空容器301の内部に設置された各冷媒配管は、図6の冷却経路を実現するように連結されている。
【実施例2】
【0059】
図7は貯蔵部100内に設置された熱シールドを、冷却源101で極低温に冷却した冷媒を用いて冷却する経路の別の例を示す図である。全体構成は図3と同じである。また、貯蔵部100の構造も図1と同じである。冷却源101の構造は図5と同じである。輸送配管102の構造は図8と同じである。
【0060】
冷却源101において極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と熱的に結合した熱交換部42で、極低温冷凍機30の第2冷却ステージ32と同じ温度に冷却されたヘリウムガスは、冷媒配管11aを通って貯蔵部100に送られ、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールドのうち低温シールド7を冷却する。低温シールド7の周囲には高温シールド8があるため、低温シールド7が高温シールド8から受ける輻射熱202は小さく、冷却配管11aを流れるヘリウムガスの温度上昇幅は小さい。
【0061】
低温シールド7との熱交換により温度上昇したヘリウムガスは、真空槽10内で貯蔵容器2とアクセスポート14との間に1枚設置された熱シールド9を冷却する。熱シールド9は、室温であるアクセスポート14からの輻射熱204を受けるため、冷媒であるヘリウムガスの温度が上昇する。この温度上昇したヘリウムガスは冷却配管11bを通って一旦冷却源101に送られ、向流熱交換器23の低温源として使用される。
【0062】
対向するヘリウムガスとの間で熱交換を行い温度上昇したヘリウムガスは、再び冷媒配管11cを通って貯蔵部100に送られ、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3との間に2枚設置された熱シールドの内の高温シールド8を冷却する。高温シールド8は室温である真空容器3からの輻射熱201を受けるため受熱量が大きく、冷媒の温度は更に上昇する。
【0063】
高温シールド8との熱交換で温度上昇したヘリウムガスは、冷却配管11dを通って再び冷却源101に送られ、向流熱交換器22の低温源として利用される。
【0064】
以上により、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に2重に設置された熱シールドのうち低温シールド7は10K〜15K程度、高温シールド8は70K〜100K程度、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に1枚に設置された熱シールド9は20K〜30K程度に冷却される。
【0065】
本実施例により、貯蔵容器2への輻射熱量を小さくすることができる。貯蔵容器2は、低温シールド7からの輻射熱203と、熱シールド9からの輻射熱205を受けるが、それぞれの熱シールド温度が低いため、貯蔵容器2からの液体ヘリウムの蒸発量を抑制することができる。
【0066】
本発明の冷却システムとその運用方法はNMR用のマグネットに限定されるものではない。例えば、MRI用のマグネットにも適用可能である。
【実施例3】
【0067】
図2は、超電導デバイスを格納した極低温格納容器冷媒貯蔵部の断面を示す図である。極低温格納容器の全体構成は図3と同じである。また、冷却源の構造は図5と同じである。冷媒を循環する経路については、図5および図6に示したいずれの循環経路を用いても構わない。輸送配管の構造は図8と同じである。
【0068】
ここで超電導デバイスとは、例えば微弱な磁場を計測するためのSQUID(Superconducting Quantum Interference Device:超電導量子干渉素子)のことである。SQUIDは地磁気の100万分の1以下の微弱な磁場を計測することができる高感度な磁気センサである。高感度な計測を実現するためには、SQUID自体から生じる熱雑音を低減する必要があるため、液体ヘリウムを用いて極低温に冷却されている。
【0069】
超電導デバイス1bから真空容器3の計測面3aまでの距離が計測感度に大きく依存し、この距離を近づける程感度が大きく向上する。
【0070】
貯蔵部100は、冷媒5を貯蔵し、超伝導デバイス1bを格納した貯蔵容器2と、貯蔵容器2との間で真空槽10を生成する真空容器3と、真空槽10内で貯蔵容器2の周囲に設置された2重の熱シールド7,8と、真空槽10内で貯蔵容器2と真空容器3の間に1枚だけ設置された熱シールド9と、各熱シールドを冷却するための冷媒が流れる冷媒配管11により構成されている。真空容器3は輸送配管102の真空容器に接続されている。
【0071】
貯蔵部100は一般には非金属材料や非磁性材料で製作され、例えばGFRPを用いて製作される。貯蔵部を構成する熱シールドに生じる渦電流が超電導デバイス1bの計測に影響を与えることがあるため、超電導デバイス1bの周囲には冷媒配管11を設置していない。熱シールド9と冷媒配管11との接合部は、超電導デバイスの計測に問題がないだけの距離を離して設置している。これは、全ての熱シールドで共通である。
【0072】
熱シールド9は、高温シールド8との間で、熱シールド8,9よりも熱伝導率の小さな材料、例えばGFRPで製作された断熱支持体15により支持されている。温度の高い高温シールド8と熱シールド9を断熱支持体15で支持することにより、高温シールド8と熱シールド9との間に温度差を設けることができ、熱シールド9の温度を低温に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明を適用したNMR用超電導マグネット極低温冷媒貯蔵容器貯蔵部の断面図である。
【図2】本発明を適用した超電導デバイス用極低温冷媒貯蔵容器貯蔵部の断面図である。
【図3】本発明を適用した極低温格納容器の構成図である。
【図4】本発明を適用した熱シールド結合部構造断面図である。
【図5】本発明を適用した冷却源構造断面図である。
【図6】本発明を適用した実施例における冷却経路図である。
【図7】本発明を適用した別の実施例における冷却経路図である。
【図8】本発明を適用した輸送配管の断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1a…超伝導マグネット、1b…超伝導デバイス、2…貯蔵容器、3…真空容器、3a…計測面、5…冷媒、7…熱シールド(低温シールド)、8…熱シールド(高温シールド)、9…熱シールド、10…真空槽、11…冷媒配管、11a〜11d…冷媒配管、14…アクセスポート、15…断熱支持体、21…第2の真空容器、22…向流熱交換器、23…向流熱交換器、30…極低温冷凍機、31…極低温冷凍機の第1冷却ステージ、32…極低温冷凍機の第2冷却ステージ、41…熱交換部、42…熱交幹部、100…貯蔵部、101…冷却源、102…輸送配管、104…ベローズ、105…支持台、301…第3の真空容器、302…冷媒配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒に浸漬された状態で被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドにより構成される極低温格納容器を備え、前記熱シールドに冷媒配管が固定され、前記冷媒配管を流れる冷媒が極低温冷凍機により冷却されるようにした極低温格納容器冷却システムにおいて、
前記極低温冷凍機を搭載した冷却源と、前記冷却源を前記極低温格納容器と連結する冷媒輸送配管とを備え、前記極低温冷凍機により冷却された冷媒が前記輸送配管を通して前記極低温格納容器に送られるようにしたことを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項2】
請求項1において、前記冷媒輸送配管の少なくとも一部にベローズ部が設けられていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項3】
請求項1において、前記冷媒輸送配管が内部を冷媒が流れる冷媒配管とそれを包囲する真空容器とから構成され、前記真空容器の少なくとも一部にベローズが設けられていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項4】
請求項3において、前記冷媒輸送配管における前記真空容器に設けられた前記ベローズの途中で床に対して固定されていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項5】
請求項3において、前記冷媒輸送配管における前記冷媒配管の少なくとも一部にベローズが設けられていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記極低温格納容器が、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に前記熱シールドが2枚設置された部分と前記熱シールドが1枚設置された部分とを有し、
前記冷却源に、内部が真空となる第2の真空容器と、前記第2の真空容器に取り付けられた前記極低温冷凍機と、前記第2の真空容器の内部に設置され、前記極低温冷凍機の寒冷発生部に取り付けられた少なくとも1台の熱交換部と、前記第2の真空容器内に設置された少なくとも1台の向流熱交換器と、内部に冷媒が流れる第2の冷媒配管が備えられ、前記熱交換部と前記向流熱交換器が前記第2の冷媒配管により連結されており、
前記冷媒輸送配管が、内部に冷媒が流れる第3の冷媒配管と、前記第3の冷媒配管との間で真空層を形成する第3の真空容器を有し、
前記熱シールドに固定された冷媒配管と、前記冷却源に備えられている前記第2の冷媒配管および前記冷媒輸送配管における前記第3の冷媒配管が連結されていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項7】
請求項6において、前記極低温格納容器を構成する真空容器と、前記冷却源を構成する前記第2の真空容器が、前記冷媒輸送配管を構成する前記第3の真空容器により連結されていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項8】
請求項1において、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に設置された前記熱シールドが分割された構造であり、分割された前記熱シールド同士が前記熱シールドよりも熱伝導率が低い材料で連結されていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項9】
請求項6に記載の極低温格納容器冷却システムの運用方法であって、
前記極低温格納容器を構成する前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、前記貯蔵容器側に設置された熱シールドを前記冷却源で冷却された冷媒で最初に冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒を、前記冷却源における前記向流熱交換器の低温源として活用して、前記向流熱交換器で対向する冷媒との間で熱交換を行い、
これによって温度上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドを冷却し、
前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドとの熱交換により温度上昇した冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、前記真空容器側に設置された熱シールドを冷却することを特徴とする極低温格納容器冷却システムの運用方法。
【請求項10】
請求項6に記載の極低温格納容器冷却システムの運用方法であって、
前記極低温格納容器を構成する前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、前記貯蔵容器側に設置された熱シールドを前記冷却源で冷却された冷媒で最初に冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドを冷却し、
前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドとの熱交換により温度上昇した冷媒を、前記冷却源における前記向流熱交換器の低温源として活用して、前記向流熱交換器で対向する冷媒との間で熱交換を行い、
これにより温度上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、前記真空容器側に設置された熱シールドを冷却することを特徴とする極低温格納容器冷却システムの運用方法。
【請求項11】
冷媒を貯蔵し、被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドにより構成され、前記熱シールドが前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された部分と、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された部分を持ち、前記2枚設置された熱シールドのそれぞれと、前記1枚設置された熱シールドに固定された冷媒配管を持ち、前記冷媒配管の内部に、前記貯蔵容器に貯蔵された前記冷媒と異なる冷媒が流れ、その冷媒配管を流れる冷媒が前記2枚設置された熱シールドと前記1枚設置された熱シールドを冷却するように構成された極低温格納容器と、
内部が真空となる第2の真空容器と、前記第2の真空容器に取り付けられた極低温冷凍機と、前記第2の真空容器内部に設置され、前記極低温冷凍機の寒冷発生部に取り付けられた少なくとも1台の熱交換部と、前記第2の真空容器内に設置された少なくとも1台の向流熱交換器と、内部に冷媒が流れる第2の冷媒配管を持ち、前記熱交換部と前記向流熱交換器が前記第2の冷媒配管により連結されている冷却源と、
内部に冷媒が流れる第3の冷媒配管と、前記第3の冷媒配管との間で真空層を形成する第3の真空容器を有する輸送配管とを有し、
前記極低温格納容器に設置された前記熱シールドに固定された冷媒配管と、前記冷却源に設置された第2の冷媒配管が、前記第3の冷媒配管により連結され、前記低温格納容器における前記真空容器と、前記冷却源における前記第2の真空容器が、前記第3の真空容器により連結されていることを特徴とする極低温格納容器冷却システム。
【請求項12】
冷媒を貯蔵し、被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドにより構成され、前記熱シールドが前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された部分と、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された部分を持ち、前記2枚設置された熱シールドのそれぞれと、前記1枚設置された熱シールドに固定された冷媒配管を持ち、前記冷媒配管の内部に、前記貯蔵容器に貯蔵された前記冷媒と異なる冷媒が流れ、その冷媒配管を流れる冷媒が前記2枚設置された熱シールドと前記1枚設置された熱シールドを冷却するように構成された極低温格納容器と、
内部が真空となる第2の真空容器と、前記第2の真空容器に取り付けられた極低温冷凍機と、前記第2の真空容器内部に設置され、前記極低温冷凍機の寒冷発生部に取り付けられた少なくとも1台の熱交換部と、前記第2の真空容器内に設置された少なくとも1台の向流熱交換器と、内部に冷媒が流れる第2の冷媒配管を持ち、前記熱交換部と前記向流熱交換器が前記第2の冷媒配管により連結されている冷却源と、
内部に冷媒が流れる第3の冷媒配管と、前記第3の冷媒配管との間で真空層を形成する第3の真空容器を有する輸送配管とを有し、
前記極低温格納容器に設置された前記熱シールドに固定された冷媒配管と、前記冷却源に設置された第2の冷媒配管が、前記第3の冷媒配管により連結され、前記低温格納容器における前記真空容器と、前記冷却源における前記第2の真空容器が、前記第3の真空容器により連結されている極低温格納容器冷却システムの運用方法であって、
前記低温格納容器における前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、前記貯蔵容器側に設置された熱シールドを前記冷却源で冷却された冷媒で最初に冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒を、前記冷却源における前記向流熱交換器の低温源として活用して、前記向流熱交換器で対向する冷媒との間で熱交換を行い、
これにより温度が上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドを冷却し、
前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドとの熱交換により温度上昇した冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、真空容器側に設置された熱シールドを冷却するようにしたことを特徴とする極低温格納容器冷却システムの運用方法。
【請求項13】
冷媒を貯蔵し、被冷却物を格納する貯蔵容器と、前記貯蔵容器の周囲に設置され、前記貯蔵容器との間に真空槽を形成する真空容器と、前記真空槽に設置された熱シールドにより構成され、前記熱シールドが前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された部分と、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された部分を持ち、前記2枚設置された熱シールドのそれぞれと、前記1枚設置された熱シールドに固定された冷媒配管を持ち、前記冷媒配管の内部に、前記貯蔵容器に貯蔵された前記冷媒と異なる冷媒が流れ、その冷媒配管を流れる冷媒が前記2枚設置された熱シールドと前記1枚設置された熱シールドを冷却するように構成された極低温格納容器と、
内部が真空となる第2の真空容器と、前記第2の真空容器に取り付けられた極低温冷凍機と、前記第2の真空容器内部に設置され、前記極低温冷凍機の寒冷発生部に取り付けられた少なくとも1台の熱交換部と、前記第2の真空容器内に設置された少なくとも1台の向流熱交換器と、内部に冷媒が流れる第2の冷媒配管を持ち、前記熱交換部と前記向流熱交換器が前記第2の冷媒配管により連結されている冷却源と、
内部に冷媒が流れる第3の冷媒配管と、前記第3の冷媒配管との間で真空層を形成する第3の真空容器を有する輸送配管とを有し、
前記極低温格納容器に設置された前記熱シールドに固定された冷媒配管と、前記冷却源に設置された第2の冷媒配管が、前記第3の冷媒配管により連結され、前記低温格納容器における前記真空容器と、前記冷却源における前記第2の真空容器が、前記第3の真空容器により連結されている極低温格納容器冷却システムの運用方法であって、
前記極低温格納容器における前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、貯蔵容器側に設置された熱シールドを前記冷却源で冷却された冷媒で最初に冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に1枚設置された前記熱シールドを冷却し、
これにより温度上昇した前記冷媒を、前記冷却源における前記向流熱交換器の低温源として活用して、前記向流熱交換器で対向する冷媒との間で熱交換を行い、
これにより温度が上昇した前記冷媒で、前記貯蔵容器と前記真空容器との間に2枚設置された前記熱シールドのうち、真空容器側に設置された熱シールドを冷却するようにしたことを特徴とする極低温格納容器冷却システムの運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−306060(P2008−306060A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153015(P2007−153015)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度文部科学省、新方式NMR分析技術の開発(新方式NMRシステム技術の開発)委託研究、産業再生法第30条の適用を受けるもの
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】