説明

極細多孔チューブ及びその製造方法

【課題】外径精度に優れた極細多孔チューブを安定して製造する方法を提供すること。
【解決手段】極細多孔チューブの製造方法であって、該製造方法は以下の(1)〜(2)の工程を有することを特徴とする。
(1)ダイス直下の、40℃以上で樹脂部を形成する樹脂の融点近傍未満に加熱した加熱筒中で押出成形物を引き落とす徐冷工程、(2)次いで、室温付近の空冷ゾーンを少なくとも1段階以上設け、空冷しつつ通過させ樹脂部を室温付近まで冷却するか、又は空冷ゾーンの後、さらに必要に応じて水冷し室温付近まで押出成形物を冷却する冷却工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細多孔チューブ及びその製造方法に関し、特に安定した外径精度が得られる極細多孔チューブ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内環状部と、該内環状部の外周に沿って略等間隔で放射状に延設された複数のリブ部と、前記複数のリブ部を連結する外環状部と、を備え、前記内環状部と前記リブ部と前記外環状部とにより中空部が形成され、前記内環状部と前記外環状部とが、縦断面視、同心的に配置された断面が蓮根状の多孔チューブとその製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−97580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載の製造方法では、見なし外径平均値が0.5mm以下の極細多孔チューブを安定して製造することはできず、特に、長手方向に外径精度の良い極細多孔チューブは得られていなかった。すなわち、0.5mm未満の極細多孔チューブを製造する場合、常温の大気下に溶融押出し、冷却を行うと、樹脂の冷却固化が早いため、安定して外径精度が得られなかった。また、目標とする外径まで細くすることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、外径精度に優れた極細多孔チューブを安定して製造する方法を鋭意検討した結果、所定形状のダイスから垂直下方に溶融押出をし、冷却時に加熱冷却をすることによって、長手方向の安定性と断面形状精度を向上できることを知得して本願発明を完成した。
上記課題を解決するため、本発明は、下記の〔1〕〜〔9〕を提供する。
〔1〕熱可塑性樹脂からなり、横断面が略円形状、多角形状、又は楕円形状で、見なし外径平均値が0.5mm以下、長手方向に2個以上の連続する中空部を有する極細多孔チューブであって、長手方向の見なし外径変動率が2%以下である、ことを特徴とする極細多孔チューブ。
〔2〕前記横断面が略円形状で、長手方向の見なし外径変動率が2%以下で、真円率が90%以上である前記〔1〕に記載の極細多孔チューブ。
〔3〕前記横断面が、中央の空間部とこれを囲む内環状部と、前記内環状部から放射状に延びる複数のリブ部と、前記リブ部の外端間を連結する外環状部とを備え、前記内,外環状部とリブ部とで囲まれた複数の中空部を有する断面蓮根状形状である前記〔1〕又は〔2〕に記載の極細多孔チューブ。
〔4〕前記横断面が、中央に樹脂が充実した芯部を有し、該芯部の周囲に複数の中空部を有する前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の極細多孔チューブ。
〔5〕中央の空間部に画像伝送用、又は高速信号伝送用の光ファイバ、あるいは抗張力体線状物を備える前記〔3〕に記載の極細多孔チューブ。
〔6〕前記〔1〕〜〔4〕に記載の極細多孔チューブを製造するに際して、所望の断面形状の極細多孔チューブを得るべく設計され、中空部を形成するダイス相当部分に中空部形成用内圧調整エアーの導入用の貫通孔を設けたダイスを用い、内圧調整用エアーを中空部内に導入しつつ、極細多孔チューブの樹脂部を形成するためのダイス孔部から溶融した樹脂を垂直下方に押出し、冷却工程を経て引き取る製造方法であって、
該製造方法は以下の(1)〜(2)の工程を有することを特徴とする極細多孔チューブの製造方法。
(1)ダイス直下に、40℃以上で樹脂部を形成する樹脂の融点近傍未満に加熱した加熱筒中で押出成形物を引き落とす徐冷工程、
(2)次いで、室温付近の空冷ゾーンを少なくとも1段階以上設け、空冷しつつ通過させ樹脂部を室温付近まで冷却するか、又は空冷ゾーンの後、さらに必要に応じて水冷し室温付近まで押出成形物を冷却する冷却工程。
〔7〕前記〔5〕に記載の極細多孔チューブを製造するに際して、中央に極細線状物を導入するための導入孔を有し、所望の形状の極細多孔チューブを得るべく設計され、中空部を形成するダイス相当部分に中空部形成用内圧調整エアーの導入用の貫通孔を設けたダイスを用い、内圧調整用エアーを中空部内に導入しつつ、前記導入孔に極細線状物を挿入し、この周囲に極細多孔チューブの樹脂部を形成するためのダイス孔部から溶融した樹脂を垂直下方に押出して、複数の中空部を有する樹脂部で被覆しつつ引き取る製造方法であって、
該製造方法は以下の(1)及び(2)の工程を有することを特徴とする極細多孔チューブの製造方法。
(1)ダイス直下に、40℃以上で樹脂部を形成する樹脂の融点近傍未満に加熱した加熱筒中で押出成形物を引き落とす徐冷工程、
(2)次いで、室温付近の空冷ゾーンを少なくとも1段階以上設け、空冷しつつ通過させ樹脂部を室温付近まで冷却するか、又は空冷ゾーンの後、さらに必要に応じて水冷し室温付近まで押出成形物を冷却する冷却工程。
〔8〕前記〔4〕に記載の極細多孔チューブを用いた極細多孔脱気チューブであって、熱可塑性樹脂がフッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、及び塩化ビニル樹脂から選択される1種の熱可塑性樹脂からなり、中央に樹脂が充実した芯部を有する、外環状部の見なし外径平均値が0.5mm以下、長手方向の見なし外径変動率が2%以下としてなる、ことを特徴とする極細多孔脱気チューブ。
〔9〕前記〔3〕に記載の極細多孔チューブを用いた極細多孔医療用チューブであって、中央の中空部に石英、又はプラスチックからなる極細光ファイバを備え、見なし外径平均値が0.5mm以下で長手方向の見なし外径変動率が2%以下としてなる、ことを特徴とする極細多孔医療用チューブ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱可塑性樹脂からなる見なし外径平均値が0.5mm以下、長手方向に2個以上の連続する中空部を有する極細多孔チューブであって、長手方向の見なし外径変動率が2%以下で、外径精度が良好なので、精密なモジュール加工が容易であり、軽量薄肉が要求される機器等へ利用できる。
円形断面の場合は、真円率が高いので、特にモジュール等の端末加工が容易である。
中央を空間としたり、芯部としたりできるので、要求されるチューブの空隙率や引張強度等の要求性能に容易に対応できる。
また、中央の空間部に光ファイバや抗張力体線状物を挿入して、機能性を有する極細多孔チューブとすることができる。
本発明の極細多孔チューブの製造方法は、見なし外径平均値が0.5mm以下の極細多孔チューブを、低い見なし外径変動率で、長手方向に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)〜(F)本発明に係る種々の断面形状の例を示す極細多孔チューブの断面図である。
【図2】図1(A)〜(D)の断面形状の極細多孔チューブを得るために使用されるダイスを開孔側から見た平面図である。
【図3】本発明に係る極細多孔チューブの製造方法の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明に係わる代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0009】
図1は、本発明に係る極細多孔チューブの長手方向断面の実施例を示し、同図(A)に示す極細多孔チューブ1Aは、外環状部1aとリブ部2aに囲まれた2個の中空部3aを有し、同図(B)に示す極細多孔チューブ1Bは3個の中空部3bを有している。また、図1(C)に示す極細多孔チューブ1Cは、外環状部1cと内環状部4c間を6本のリブ部2cで6分割された6つの中空部3cと中央の空間部5cを有している。 一方、図1(D)に示す極細多孔チューブ1Dは、中央に樹脂が充実した芯部6dを有し、その外周に6つの中空部3dを有している。
本発明において、極細多孔チューブのサイズや、中空部の数は本発明の効果が得られる範囲内において目的に応じて適宜選定可能である。
また、図1(A)〜(E)では円形断面を示しているが、略円形や図1(F)のように6角形等の略多角形状であってもよいが、外環状部1の見なし外径平均値は0.5mm以下としている。
本発明に係る極細多孔チューブ1(例えば、1A〜1F)は、側圧特性や曲げ特性等の機械的特性や、極細多孔チューブ構造の真円性あるいは正多角形性を、より良好に保つために、リブ部2を3本以上とすることが望ましい。リブの数が3本未満では、例えば、脱気用極細多孔チューブとして使用した場合、中空部に通液して脱気する際に、圧力差による変形が大きくなり、一方、リブ数が多いと空隙率が小さくなるので、4〜6個が好ましい。特に6個(断面略6角形)の場合、極細多孔チューブをモジュール化したときの端末部を6角ハニカム構造に最密充填することができるため好適である。
本発明において、見なし外径平均値とは、後述する測定方法により測定した外径の平均値を言う。
見なし外径平均値を0.5mm以下とすることによって、実用レベルにおいても優れた特性を有する極細多孔チューブとすることができる。
【0010】
外環状部1(1a〜1f)、リブ部2(2a〜2f)、内環状部4(4c、4e、4f)、芯部6(6d)は、熱可塑性樹脂の溶融押出成形により一体に形成される。
【0011】
本発明の極細多孔チューブに用いられる熱可塑性樹脂は、溶融押出が可能であれば特に限定されないが、例えば、PFA等のフッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン(APO)樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)樹脂、ポリメチルペンテン(TPX)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等を用いることができる。
特に、空間部に液体を流しその液体に溶存する気体を除去するための脱気チューブとして用いる場合には、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、及び塩化ビニル樹脂から選択される1種の熱可塑性樹脂が用いられる。
これらの熱可塑性樹脂は、気体透過性で液体不透過性の特徴を有している。
【0012】
本発明に係る極細多孔チューブは、長手方向の見なし外径変動率(CV値)を2%以下としている。本発明において、見なし外径変動率とは、連続製造しながら、得られた極細多孔チューブについて、中心軸の周囲±90°の角度を10秒間で往復回転する揺動式のレーザー外径測定器を使用し、40秒間を、毎秒50回の測定速度で外径を計測し、その1秒間に計測した外径(測定数:50)の平均値を見なし外径とする。
更に40秒間連続計測し、見なし外径の平均値とその標準偏差を求め、この見なし外径標準偏差を見なし外径平均値で除した値(変動係数)を%(変動率=CV値)で表示したものである。
見なし外径変動率が2%を超えると、寸法精度が要求される端末の加工性の観点から好ましくない。
【0013】
また、本発明に係る極細多孔チューブは、断面が略円形状の極細多孔チューブでは、真円率を90%以上とすることが好ましい。本発明において、真円率は、図1において外環状部1の最長径をa、最短径をb、平均外径をc(c=(a+b)/2)とした場合、下記数式で示される値であり、どれだけ極細多孔チューブが真円に近いかを示す。
真円率=(1−(a−b)/c)×100
【0014】
本発明では図1(E)の如く、中央の空間部に光ファイバ或いは抗張力体線状物を備えた極細多孔チューブも提供する。
空間部に用いられる光ファイバとしては、石英又はプラスチックの光ファイバであって、外径が250μm以下のものが挙げられる。
また、抗張力体線状物としては、アラミド繊維、延伸ポリエステルモノフィラメント、ピアノ線等の鋼線等、引張力等の外力に対して充分耐え得る高強度の線材が望ましく、引張強度が0.4GPa以上のものが特に好ましい。
【0015】
また、極細多孔チューブ1の中空率については限定されず、適宜好適な中空率とすることができる。本発明に係る極細多孔チューブ1では、チューブ内の単位時間あたりの流体輸送量を低下させずにすみ、かつ圧力損失が大きくなって材質を高圧対応とすることも不要とできる。また、キンク等の発生も防止できる。本発明によれば、高い中空率を有しながらキンク等にも優れた極細多孔チューブとすることができる。この中空率とは、極細多孔チューブ1の断面積(外環状部1、リブ部2、内環状部4、光ファイバ又は抗張力体線状物と中空部3の各断面積の総和)に対する、極細多孔チューブ1の中空部3の断面積の割合をいう。中空率として30〜60%が好ましい。
【0016】
本発明に係る極細多孔チューブの製造方法の第1態様は、所望の断面形状の極細多孔チューブを得るべく設計され、中空部を形成するダイス相当部分に中空部形成用内圧調整エアーの導入用の貫通孔を設けたダイスを用い、内圧調整用エアーを中空部内に導入しつつ、極細多孔チューブの樹脂部を形成するためのダイス孔部から溶融した樹脂を垂直下方に押出し、冷却工程を経て引き取る極細多孔チューブの製造方法であり、(1)ダイス直下に、40℃以上で樹脂部を形成する樹脂の融点近傍未満に加熱した加熱筒中で押出成形物をドラフトする徐冷工程と、(2)次いで、室温付近の空冷ゾーンを少なくとも1段階以上設け、空冷しつつ通過させ樹脂部を室温付近まで冷却するか、又は空冷ゾーンの後、さらに必要に応じて水冷し室温付近まで押出成形物を冷却する冷却工程を有している。
【0017】
本発明に係る極細多孔チューブの製造方法の第2態様では、中央部分に極細線状物を導入するための導入孔を有しているダイスを使用する他は、第1態様と同じである。
【0018】
本発明に係る極細多孔チューブの製造方法の第1態様に用いられるダイスは、溶融樹脂の吐出面側から見た平面図が図2(A)〜(D)に示すような開孔部を有するものが使用される。図2(A)〜(D)に示す孔部形状のダイスは、図1(A)〜(D)に断面を示す極細多孔チューブに対応している。また、中央に光ファイバや抗張力体線状物を備える製造方法の第2態様においては、図2(C)に示す孔部形状のダイスが用いられる。
図2において、符号の添え字a〜dは、ダイス孔部10(A)〜(D)に対応した部位であることを意味している。
各ダイス孔部10は、外環状部孔11、リブ部孔12、中空部形成ブロック13、内環状部孔14、導入孔15、中央芯部孔17、内圧調整エアー導入用貫通孔20を適宜有している。
【0019】
図3は、本発明に係る極細多孔チューブの製造方法の一例を示す概念図である。符号Sは、本発明に係る極細多孔チューブの製造装置(以下、「製造装置」という場合がある。)を示している。この製造装置Sは、溶融押出機のクロスヘッド30に、所望の断面形状の極細多孔チューブを得るべく設計された中空部を有するダイス10が取着され、該ダイスの開孔部から溶融状の熱可塑性樹脂が溶融成形体1'として押出され、加熱手段を備えた加熱筒40に導入される。
加熱筒40は、溶融成形体1'が外気により急冷されるのを防せぎ、好適な温度条件で所望の外径に細径化するためのドラフトゾーンの機能を果たすものであり、筒内温度を、40℃以上で、用いられる熱可塑性樹脂の融点近傍未満に制御されている。該加熱筒40中で引き落とされ徐冷された成形体は、さらに、空冷ゾーン50により空冷された後、非接触温度計55で表面温度を計測して、さらに、冷却が必要であれば、水冷却槽60に導入して水冷却される。冷却された成形物は、ターンシーブ70で方向転換され、ネルソンローラー90を経て、揺動式外径測定器95により外径を連続的に測定されて、ボビンに巻取られる(図示省略)。なお、水冷却槽60で水冷却する場合は、水冷却槽60から漏洩した水は、受水槽80にて処理される。
【0020】
一方、中央の空間部に光ファイバあるいは抗張力体線状物を備えた第2の態様の極細多孔チューブの製造方法では、図3において、ボビン25に巻取られた光ファイバあるいは抗張力体線状物を、ガイドローラー26を介して連続的に供給し、これをクロスヘッド30に取付けられた、例えば図2に示す孔部形状のダイス10Cの導入孔15cに導き、ダイスの開孔部から溶融状の熱可塑性樹脂が光ファイバあるいは抗張力体線状物を被覆するように押出され、以下、前記同様に溶融成形体1'として加熱手段を備えた加熱筒40に導入される。
以後の工程は前記と同様である。
【0021】
加熱筒40(ドラフトゾーン)は、ダイス10から引き落とされた溶融成形体1'を形成する樹脂を加熱する。加熱温度は、樹脂の種類や極細多孔チューブの外径等に応じて適宜設定することができ、例えば(その樹脂の融点+10℃)未満〜40℃以上で加熱することができる。かかる温度の加熱筒40に樹脂を通過させることで、細径であっても優れた真円性を有する極細多孔チューブ1とすることができる。ダイス孔部10から押出された溶融樹脂の熱容量が小さくても、この加熱筒40を通過させることで、溶融樹脂の急速な冷却固化を防止できる。なお、樹脂融点の測定は、ASTM D4591によって測定することができる。そして、加熱筒40の構造や加熱方法は限定されないが、好適には、高周波加熱や遠赤外線加熱によることが望ましい。
【0022】
空冷部50は、極細多孔チューブ1を形成する樹脂を、室温近傍で空冷により徐冷する。加熱筒40の後に空冷部50を設けることで、極細多孔チューブ1を形成する樹脂が一気に冷却固化するのを防止できる。空冷部50の温度は、室温近傍であればよいが、より具体的には15℃〜40℃であることが望ましく、更に好ましくは、25℃〜35℃とすることが望ましい。なお、空冷部50の長さ(空冷ゾーン)を調節することで、溶融樹脂を目的の温度とすることができる。
【0023】
水冷却槽60は、空冷部50を通過した成形体を水冷する。これにより、極細多孔チューブを形成する樹脂を完全に冷却固化させることができる。水冷却槽60は、本発明において必ずしも必須ではないが、空冷部50(や風冷部)に加えて備えることが望ましい。極細径な多孔チューブであれば、前述の空冷や風冷によって極細多孔チューブを形成する樹脂の温度を室温付近にまで下げることができるが、水冷を行うことによって製造速度が高速であっても真円性が高い極細多孔チューブを得ることができる。特に、引き出し速度が30m/分以上であっても、真円性の高い極細多孔チューブを好適に得ることができる。
【0024】
また、得られた極細多孔チューブ1の最大外径と最小外径を測定し、最大外径と最小外径の差が最小となるように、加熱筒40や空冷部50等の夫々の条件を制御することが望ましい。
【0025】
この最大外径と最小外径の測定は、揺動式外径測定器95によって測定できる。揺動式外径測定器95は、連続あるいは間欠的に極細多孔チューブ1の外径測定が可能であり、測定器自身を±90°往復揺動回転させつつ測定し、オンライン上で極細多孔チューブ1の全周方向で外径の測定が可能である。なお、本発明では測定器の種類は限定されず、適宜好適な測定器、測定方法によって測定することができる。
【0026】
加熱筒40については、その加熱温度と加熱時間の少なくともいずれか一つを制御することができる。加熱筒40内の雰囲気温度や筒の長さ(ゾーン長)等を調節することで可能となる。更には、加熱筒40の加熱のタイミングを制御することもできる。例えば、製造装置Sであれば、レール(図示省略)上で適宜移動可能な構造として、これによってクロスヘッドダイ30のダイス孔部10から押出された溶融樹脂をどのタイミングで加熱するかを制御することができる。温度が低かったり加熱筒が短すぎると、中空部の外環が膨らみ花びら状になりやすく、加熱筒の温度が高すぎたり加熱筒が長すぎると、中空部の外環が凹みリブ部を頂点とした多角形状に潰れてしまいやすい。これらの条件は、成形速度や、非接触温度計55によって測定された温度や、極細多孔チューブ1の大きさや形状等を考慮して決定することができる。
【0027】
空冷部50については、その雰囲気温度や空冷部の長さ(ゾーン長)等を調節することで、空冷条件(空冷温度や空冷時間)を制御することができる。更に、空冷部55の空冷のタイミングを制御することが望ましく、例えば、製造装置Sであれば、レール(図示省略)上で適宜移動可能な構造として、レール上を適宜に移動させることで制御することができる。
【0028】
また、加熱筒40や空冷部50等について、製造開始時は、揺動式外径測定器95の測定結果に基づいて最適な配置位置(配置間隔)を検出すべく、レール上を移動させ、最適な配置位置が決まった後は夫々の最適な配置位置(配置間隔)に固定させることもできる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
本発明において、面積引落とし倍率、真円率、見なし外径変動率は、以下に記載の方法で測定した。
(1)面積引落し倍率
面積引落とし倍率(%)=(ダイス孔部の外環状部の外径)2/(極細多孔チューブの外径)2
(2)極細多孔チューブの真円率
真円率は、図1において外環状部14の最長径をa、最短径をb、平均外径をc(c=(a+b)/2)とした場合、下記数式で示される値であり、どれだけ極細多孔チューブが真円に近いかを示す。
真円率(%)=(1−(a−b)/c)×100
(3)見なし外径変動率(CV値)
連続製造しながら、得られた極細多孔チューブについて、中心軸の周囲±90°の角度を10秒間で往復回転する揺動式のレーザー外径測定器(LDM−903M、タキカワエンジニアリング(株)製)を使用し、40秒間を、毎秒50回の測定速度で外径を計測し、その1秒間に計測した外径(測定数:50)の平均値を見なし外径とする。更に40秒間連続計測し、見なし外径の平均値とその標準偏差を求め、この見なし外径標準偏差を見なし外径平均値で除した値(変動係数)を%で表示し、見なし外径変動率(=CV値)とした。
上記における表現の定義を下記に示す。
外径:ある時点の1点の外径計測値
見なし外径:外径を50点/秒の速度で1秒間計測した値の平均値(50点の計測平均 値)
見なし外径平均値:40秒間での見なし外径の平均値
見なし外径標準偏差:40秒間での見なし外径の標準偏差
見なし外径変動率(CV値)(%)=見なし外径標準偏差/見なし外径平均値×100
なお、極細多孔チューブが略多角形の断面形状である場合は、対角線の最長部を円の直径と見なして、見なし外径変動率を評価した。具体的には揺動式のレーザー外径測定器で計測した値が最大値を示す回転位置で揺動を停止させ(即ちこの位置での計測が略多角形の対角線の最長部である)、その他は前記の方法と同一の方法で、40秒間を、毎秒50回の測定速度でこの対角線長さを計測し、その1秒間に計測した長さ(測定数:50)の平均値を見なし外径とし、更に同様に40秒間連続計測し、見なし外径の平均値とその標準偏差を求め、この見なし外径の標準偏差を見なし外径の平均値で除した値(変動係数)を%で表示し、見なし外径変動率(=CV値)とした。
【0031】
実施例1
図3に示す装置Sにおいて、図2(C)に示す孔部形状のダイス10Cを用いて、図1(C)に示す断面を有し、外径0.5mm、6個のリブ2c及び内環状部4cにより6個の扇状中空部3cと中央の中空部5cを有する蓮根形状の極細多孔チューブをペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)樹脂(三井デュポンフロロケミカル(株)、420HPJ、融点:305℃)で作製した。溶融したPFAを、図2(C)に示す孔部形状のダイス10Cから350℃で押出し成形することによって極細多孔チューブを得た。その際の条件は以下のようにして試作を行なった。
線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度90℃、外気温度は19℃、面積引き落とし倍率は280倍で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.50mm、見なし外径標準偏差は0.0070mm、見なし外径変動率は1.40%、真円率96%であった。
【0032】
実施例2
実施例1と同じ孔部形状のダイス10Cを用い、各空気孔20c及び15cから圧縮エアー(圧力0.05kg/cm2)を導入し、実施例1と同じPFA製で、断面が図1(C)の極細多孔チューブを作製した。その際の条件は、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度210℃、外気温度は20℃、面積引き落とし倍率は772倍で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.20mm、見なし外径標準偏差は0.0030mm、見なし外径変動率は1.50%、真円率95%であった。
【0033】
実施例3
図3に示す装置を用いて、図1(A)に示す断面で外径0.4mm、2個の中空部3aを有し、実施例1と同じPFA製の、極細多孔チューブ1Aを作製した。溶融したPFA樹脂を、図2(A)に示す孔部形状のダイス10Aから押出し成形することによって極細多孔チューブを得た。その際の条件は、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度110℃、外気温度は20℃、空気孔20aに圧縮エアー(圧力0.05kg/cm2)を導入しながら、面積引き落とし倍率は437倍で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.40mm、見なし外径標準偏差は0.0060mm、見なし外径変動率は1.50%、真円率96%であった。
【0034】
実施例4
図3に示す装置を用いて、図1(B)に示す断面で、外径0.3mm、3個の中空部3bを有するPFA製の極細多孔チューブを作製した。
溶融した実施例1と同じPFA樹脂を、図2に示す孔部形状のダイス10Bから押出し成形することによって極細多孔チューブを得た。その際の条件は、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度150℃、外気温度は20℃、面積引き落とし倍率は776倍で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.30mm、見なし外径標準偏差は0.0050mm、見なし外径変動率は1.67%、真円率95%であった。
【0035】
実施例5
実施例1においてPFA樹脂をポリプロピレン(PP)樹脂(プライムポリマー(株)、J106MG、融点160℃)に変更して図1(C)に示す断面の極細多孔チューブを作製した。溶融したPP樹脂を、図2(C)に示す孔部形状のダイス10Cから押出し成形することによって極細多孔チューブを得た。その際の条件は、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度45℃、外気温度は19℃、面積引き落とし倍率は280倍で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.50mm、見なし外径標準偏差は0.0070mm、見なし外径変動率は1.40%、真円率96%であった。
【0036】
実施例6
実施例1においてPFA樹脂をポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂((株)クラレ、パラペットGF)に変更して、図1(C)に示す断面の極細多孔チューブを作製した。
溶融したPMMA樹脂を、図2(C)に示す孔部形状のダイス10Cから押出し成形することによって極細多孔チューブを得た。その際の条件は、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度50℃、外気温度は19℃、面積引き落とし倍率は280倍で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.50mm、見なし外径標準偏差は0.0070mm、見なし外径変動率(%)は1.40%、真円率96%であった。
【0037】
比較例1
実施例1において、加熱筒は使用せず、線速度は30m/分、外気温度は19℃で、外気の雰囲気温度で冷却した。面積引き落とし倍率は280倍で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.50mm、見なし外径標準偏差は0.0132、見なし外径変動率(%)は2.64%、真円率は84%であった。引き落しが安定せず外径変動が大きくなった。
【0038】
比較例2
実施例2において、加熱筒は使用せず、線速度は30m/分、外気温度は20℃で、外気の雰囲気温度で冷却した。空気孔に圧縮エアー(圧力0.05kg/cm2)を導入しながら、面積引き落とし倍率は772倍目標で行った。
得られた極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.35mm、見なし外径標準偏差は0.0200mm、見なし外径変動率は5.71%であり、製品外径を目標とする0.2mm径まで細くすることができなかった。
【0039】
比較例3
実施例2において、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、外気温度は20℃、筒内加熱温度330℃、空気孔に圧縮エアー(圧力0.05kg/cm2)を導入しながら、面積引き落とし倍率は772倍目標で行った。
得られた極細多孔チューブの平均外径は0.20mmと目標とする径まで引き落とす事が出来たが、外径が安定しなかった。見なし外径標準偏差は0.0100mm、見なし外径変動率は5.00%となった。筒内加熱温度をPFA樹脂の融点305℃以上としたため安定しなかったと思われる。
【0040】
実施例7
外径0.5mmで、6個のリブを有する図1(D)に示す断面の四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)樹脂(三井・デュポンフロロケミカル(株)、TE9494、融点260℃)製の極細多孔チューブを作製した。溶融したFEP樹脂を、図2(D)に示す孔部形状のダイス10Dから押出し成形することによって極細多孔チューブを得た。その際の条件は、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度90℃、外気温度は20℃、面積引き落とし倍率は280倍で行った。
得られたチューブの見なし外径平均値は0.50mm、中央の充実部の外径は0.25mm、見なし外径標準偏差は0.0070mm、見なし外径変動率は1.40%、真円率96%であった。
【0041】
実施例8
中央に外径0.25mmのシングルモードの石英光ファイバを備えた、図1(E)に断面を示す実施例1と同じPFA樹脂製の、極細医療用多孔チューブを作製した。
図3において、ドラム25からシングルモードの石英光ファイバを、ガイドローラー26介して、クロスヘッド部30に取り付けられた、図2(C)に示す孔部形状のダイス10Cの導入孔15cに挿通し、これを連続的に下方に引き取りながら、その外周にPFA樹脂を350℃で押出して被覆した。
線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度90℃、外気温度は20℃、面積引き落とし倍率は437倍で行った。
得られた石英光ファイバ入り極細多孔チューブの見なし外径平均値は0.40mm、見なし外径標準偏差は0.0017mm、見なし外径変動率は0.43%、真円率96%であった。
【0042】
実施例9
図3に示す装置を用いて、外径0.5mm、6個のリブを有する図1(F)に示す断面のポリメチルペンテン樹脂(PMP樹脂;三井化学(株)、TPX、RT18、融点:237℃)製の極細多孔チューブを作製した。溶融したPMP樹脂を、図2(C)に示す孔部形状のダイス10Cから押出し成形することによって極細多孔チューブを得た。その際の条件は、線速度は30m/分、加熱筒長は250mm、筒内加熱温度200℃、外気温度は19℃、面積引き落とし倍率は280倍で行った。
得られた極細多孔チューブはリブ部を頂点とする略6角形状を呈していた。リブ部の外径を外径として、見なし外径平均値は0.50mm、見なし外径標準偏差は0.0070mm、見なし外径変動率は1.40%であった。また本実施例の断面形状は円形ではなく略6角形であり、真円率を評価するのは適切ではないが、本発明における定義に従って、真円率90%であった。
6角形状になった原因は、筒内加熱温度をPMPの融点(237℃)に近い高温に設定したため冷却不足となり、リブを頂点とし、外環状部が内側に入り込み、6角形状となったものと考えられる。
【0043】
以上の実施例、比較例の結果をまとめて表1及び表2に示す。
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
以上の様な本発明の極細多孔チューブは、種々の用途において、機能的に改良されたチューブとして、例えば、以下に示す様な(1)脱気チューブ、(2)医療用チューブ、(3)その他、精密分析用などの極細多孔チューブとして有効に利用できる。
【0046】
(1)脱気チューブ
例えば、液体クロマトグラフなどでは、試薬液(溶媒やサンプル液等)中に溶け込んでいる気体を移送中に除去する(脱気する)必要がある。各種理化学・分析機器や製薬,半導体,液晶等を含む各種の生産プロセス設備等において、液体(被脱気液体)から溶存気体を除去するのに真空脱気装置が使用される。
脱気装置には上記サンプル液や溶媒,緩衝液等と接触する部分に、気体のみを通し液体の透過を阻止するフッ素樹脂などを使用した極細脱気用チューブが使用される。
この種の真空脱気装置の脱気効率を向上させるためには、気体成分の拡散効率を上げる必要がある。気体拡散は拡散方程式に従うため、拡散移動距離が短い程、指数関数的に効率が向上する。つまり、脱気用チューブ内を通過する被脱気液体を脱気用チューブの中心部よりも膜面(チューブの内周面)にできるだけ近い位置を移動させることが好ましい。
本発明の極細多孔チューブは、中心に充実部ないし中空部を有し、その外周に被脱気液体の通過が可能な中空部を配しているので、当該中空部の被脱気液体は効率よく脱気される。
【0047】
(2)医療用チューブ
マウスによる臨床実験用カテーテルでは非常に細いカテーテルが使用されている。人体においても血管内に挿入する血管造影用カテーテルでは、非常に細いものが要求されている。また、極細径の石英光ファイバを配置し、センサー機能を持たせると同時に、患部の治療も同時に行う事が可能なカテーテルも研究されている。光ファイバセンサーの径は0.25mm以下であり、カテーテルの外径は0.6mm以下が要求されている。
本発明の極細多孔チューブの場合、複数の中空部には、他の信号線(銅線など)を導入することもできる。また、薬剤を投与するための空間とすることもできる。つまり、中央に光ファイバを備え、その周囲の複数の空間に信号線を後入れし、薬剤を別の空間から注入する患部検査、治療を同時に行うことができる極細カテーテルとして使用する事が可能である。
【0048】
(3)その他、精密分析用など
ライフサイエンスやメディカル分野の分析技術においては、サンプル溶液の高速微量送液に係わる技術が重要な要素技術になる場合がある。ナノリッターレベル或いは、更に、フェムトリッターレベルの送液が要求されている。
質量分析装置やDNAマイクロアレイなど、環境・バイオサンプルを多数網羅的に分析する技術が成熟しつつあるが、現在実用化されている送液方法は、1つの空間を有する1本のキャピラリーを使用する方法であり、複数の送液をしたい時には複数本使用しないといけないし、送液システムも各々必要になる。分析すべき検体が非常に多い場合など、分析系が非常に複雑になる。本発明の極細多孔チューブを使用し、各々の孔部にそれぞれ別の液を送液するシステムとすることで、分析系を単純化できる可能性がある。
【0049】
微小な二流体ノズル、エレクトロスプレーノズル
中央を飛ばしたい液の送液に、周囲をガス流路とすると極細二流体ノズルとして使用できる。タンパク質の質量分析等でエレクトロスプレー現象を応用し、微量な試料を検出部に飛ばして送る方法があるが、ガスはネペライザーガスと言われている。送液部はガラスキャピラリーが使用されており、極細多孔チューブの中央空間にキャピラリーを挿入したものとすることで、ガスの方向性を保てるので、液(霧状)の拡散、広がりを防止でき、確実にターゲット部に微量の試料を供給できる。
【0050】
本発明の極細多孔チューブの製造方法は、上記の有用な極細多孔チューブを安定して精度よく連続生産する方法として有効に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1、1A〜1F 極細多孔チューブ
1a〜1f 外環状部
2、2a〜2f リブ部
3、3a〜3f 中空部
4、4c、4e、4f 内環状部
5c、5f 中央空間部
5e 光ファイバ
6d 充実部
10、10A〜10D ダイス孔部形状
11、11a〜11d 外環状孔
12、12a〜12d リブ部孔
13、13a〜13d 中空部形成領域
14、14c 内環状孔
15、15c 光ファイバ、抗張力体線状物導入パイプ
17、17d 中央部樹脂充実部孔
20、20a〜20d 中空部形成用内圧調整エアーの導入孔
25 光ファイバ、抗張力体線状物の巻取ボビン
26 ガイドローラー
30 クロスヘッドダイス
40 加熱筒
50 空冷部
55 非接触温度計
60 水冷却槽
70 ターンシーブ
80 受水槽
90 ネルソンローラー(引取機)
95 揺動式外径測定器
S 製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなり、横断面が略円形状、多角形状、又は楕円形状で、見なし外径平均値が0.5mm以下、長手方向に2個以上の連続する中空部を有する極細多孔チューブであって、長手方向の見なし外径変動率が2%以下である、ことを特徴とする極細多孔チューブ。
【請求項2】
前記横断面が略円形状で、長手方向の見なし外径変動率が2%以下で、真円率が90%以上である請求項1に記載の極細多孔チューブ。
【請求項3】
前記横断面が、中央の空間部とこれを囲む内環状部と、前記内環状部から放射状に延びる複数のリブ部と、前記リブ部の外端間を連結する外環状部とを備え、前記内,外環状部とリブ部とで囲まれた複数の中空部を有する断面蓮根状形状である請求項1又は2に記載の極細多孔チューブ。
【請求項4】
前記横断面が、中央に樹脂が充実した芯部を有し、該芯部の周囲に複数の中空部を有する請求項1〜3のいずれかに記載の極細多孔チューブ。
【請求項5】
中央の空間部に画像伝送用、又は高速信号伝送用の光ファイバ、あるいは抗張力体線状物を備える請求項3に記載の極細多孔チューブ。
【請求項6】
請求項1〜4に記載の極細多孔チューブを製造するに際して、所望の断面形状の極細多孔チューブを得るべく設計され、中空部を形成するダイス相当部分に中空部形成用内圧調整エアーの導入用の貫通孔を設けたダイスを用い、内圧調整用エアーを中空部内に導入しつつ、極細多孔チューブの樹脂部を形成するためのダイス孔部から溶融した樹脂を垂直下方に押出し、冷却工程を経て引き取る製造方法であって、
該製造方法は以下の(1)〜(2)の工程を有することを特徴とする極細多孔チューブの製造方法。
(1)ダイス直下に、40℃以上で樹脂部を形成する樹脂の融点近傍未満に加熱した加熱筒中で押出成形物を引き落とす徐冷工程、
(2)次いで、室温付近の空冷ゾーンを少なくとも1段階以上設け、空冷しつつ通過させ樹脂部を室温付近まで冷却するか、又は空冷ゾーンの後、さらに必要に応じて水冷し室温付近まで押出成形物を冷却する冷却工程。
【請求項7】
請求項5に記載の極細多孔チューブを製造するに際して、中央に極細線状物を導入するための導入孔を有し、所望の形状の極細多孔チューブを得るべく設計され、中空部を形成するダイス相当部分に中空部形成用内圧調整エアーの導入用の貫通孔を設けたダイスを用い、内圧調整用エアーを中空部内に導入しつつ、前記導入孔に極細線状物を挿入し、この周囲に極細多孔チューブの樹脂部を形成するためのダイス孔部から溶融した樹脂を垂直下方に押出して、複数の中空部を有する樹脂部で被覆しつつ引き取る製造方法であって、
該製造方法は以下の(1)及び(2)の工程を有することを特徴とする極細多孔チューブの製造方法。
(1)ダイス直下に、40℃以上で樹脂部を形成する樹脂の融点近傍未満に加熱した加熱筒中で押出成形物を引き落とす徐冷工程、
(2)次いで、室温付近の空冷ゾーンを少なくとも1段階以上設け、空冷しつつ通過させ樹脂部を室温付近まで冷却するか、又は空冷ゾーンの後、さらに必要に応じて水冷し室温付近まで押出成形物を冷却する冷却工程。
【請求項8】
請求項4に記載の極細多孔チューブを用いた極細多孔脱気チューブであって、熱可塑性樹脂がフッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、及び塩化ビニル樹脂から選択される1種の熱可塑性樹脂からなり、中央に樹脂が充実した芯部を有する、外環状部の見なし外径平均値が0.5mm以下、長手方向の見なし外径変動率が2%以下としてなる、ことを特徴とする極細多孔脱気チューブ。
【請求項9】
請求項3に記載の極細多孔チューブを用いた極細多孔医療用チューブであって、中央の中空部に石英、又はプラスチックからなる極細光ファイバを備え、見なし外径平均値が0.5mm以下で長手方向の見なし外径変動率が2%以下としてなる、ことを特徴とする極細多孔医療用チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189173(P2012−189173A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54771(P2011−54771)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】