説明

構内交換機、音声品質調整方法および音声品質調整プログラム

【課題】電話機や通信回線の接続種別に応じて構内交換機単独で通話音声レベルや通話品質の調整を可能とする構内交換機を提供する。
【解決手段】通話用に接続する電話機種別、回線種別のグループごとの組み合わせに応じて最適な通話音質が得られるゲイン回路112,122やエコーキャンセラ回路121の音質調整値を記憶する音質特性構成DB116と、通話用に接続する電話機、通信回線の組み合わせにより決まる接続経路に関する情報を記憶する接続経路DB117とを備え、電話機または通信回線からの接続要求があった際に、接続経路DB117を参照して決定した接続経路上に存在するゲイン回路112,122やエコーキャンセラ回路121に対して設定すべき音質調整値を、音質特性構成DB116を参照することにより取得して、ゲイン回路112,122やエコーキャンセラ回路121に対して設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内交換機、音声品質調整方法および音声品質調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電話システムにおいては、従来型の回線交換機能とVoIP(Voice over Internet Protocol)機能との両方の機能を有するハイブリッドPBX(Private Branch Exchange:構内交換機)によるシステムが多く構築され、アナログ電話機、デジタル電話機、IP(Internet Protocol)電話機、アナログ回線、デジタル回線、IP回線と、音声通話の特性が異なる様々なインターフェースの電話機、通信回線を収容することが可能になったことから、電話機同士や電話機と通信回線との接続の組み合わせが多様化し、電話システムの接続構成が複雑になってきている。
【0003】
これに伴い、電話システムとして全ての接続経路についての音声通話品質の電話機による確認と保守端末による音質調整とを行う作業に必要な人員、所要時間が膨大になり、VoIPに関わる知識を有する専門技術者も必要とされることから、保守性の一層の向上が要求されている。
【0004】
また、接続経路によっては、音声通話レベルを調整するゲイン回路と、エコーを消去するエコーキャンセラ回路とを複数経由する場合があるため、音声通話品質の調整に使用する最適な回路を判断する必要があり、専門技術者による調整作業が必要とされるような困難な作業になっている。
【0005】
これらの課題を解決する手段として、特許文献1の特開2005−176071号公報「音声品質管理機能付きハイブリッド電話システムおよびそれを用いるハイブリッドPBX」に記載されているような、音声通話品質を自動調整する外部装置を電話システムに設置するという提案もなされている。外部装置においては、各種の通話経路毎に音声品質の調査を行う機能・データ蓄積機能、各種の通話経路毎の音声品質の調整機能・設定更新機能・エコーキャンセラの有効化/無効化制御機能を備えることにより、各通話経路における通話音声品質に関する各種パラメータの設定をエコーキャンセラに対して自動的に最適化することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−176071号公報(第11−15頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1のように、音声通話品質を自動調整する外部装置を設置しようとすると、PBXとは別個の設備を導入することになり、設備投資や外部装置の保守作業が必要になるという課題がある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電話機や通信回線の接続種別に応じて構内交換機(PBX)単独で通話音声レベルや通話品質の調整を可能とし、良好な音声通話品質を確保することを可能とする構内交換機、音声品質調整方法および音声品質調整プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による構内交換機、音声品質調整方法および音声品質調整プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)本発明による構内交換機は、電話機や通信回線を通話用に接続する動作を行う構内交換機において、通話用に接続する電話機種別、回線種別のグループごとの組み合わせに応じて最適な通話音質が得られるゲイン回路やエコーキャンセラ回路の音質調整値を記憶する音質特性構成データベースと、通話用に接続する電話機、通信回線の組み合わせにより決まる接続経路に関する情報を記憶する接続経路データベースとを備え、電話機または通信回線からの接続要求があった際に、前記接続経路データベースを参照して決定した接続経路上に存在する前記ゲイン回路や前記エコーキャンセラ回路に対して設定すべき音質調整値を、前記音質特性構成データベースを参照することにより取得して、当該ゲイン回路や当該エコーキャンセラ回路に対して設定することを特徴とする。
【0011】
(2)本発明による音声品質調整方法は、電話機や通信回線を通話用に接続する動作を行う構内交換機における音声品質調整方法であって、前記構内交換機に、通話用に接続する電話機種別、回線種別のグループごとの組み合わせに応じて最適な通話音質が得られるゲイン回路やエコーキャンセラ回路の音質調整値を記憶する音質特性構成データベースと、通話用に接続する電話機、通信回線の組み合わせにより決まる接続経路に関する情報を記憶する接続経路データベースとを備え、電話機または通信回線からの接続要求があった際に、前記接続経路データベースを参照して決定した接続経路上に存在する前記ゲイン回路や前記エコーキャンセラ回路に対して設定すべき音質調整値を、前記音質特性構成データベースを参照することにより取得して、当該ゲイン回路や当該エコーキャンセラ回路に対して設定することを特徴とする。
【0012】
(3)本発明による音声品質調整プログラムは、少なくとも前記(2)に記載の音声品質調整方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構内交換機、音声品質調整方法および音声品質調整プログラムによれば、以下のような効果を奏することができる。
【0014】
第一に、通話中の状態にある電話機からのダイヤル操作による音質調整作業を可能とすることによって、従来のように電話機での音声品質の確認と保守端末での音質調整作業とを繰り返していた手順を、電話機のみによって音声品質の確認と音質調整作業とを実施することができ、音声通話品質の確認作業と調整作業とを軽減することが可能である。
【0015】
第二に、ゲイン回路やエコーキャンセラ回路の接続経路によってパターン化された音質調整部位情報を記憶する接続経路データベースを設けることによって、従来、専門技術者による判断が必要とされていた音質調整対象のゲイン回路やエコーキャンセラ回路の選択が不要となり、音声通話品質の調整作業を容易に行うことが可能である。
【0016】
第三に、電話機種別や通信回線種別の音声通話の特性に応じたグループ単位に音質調整値情報を構成して記憶する音質特性構成データベースを設けることによって、一回の音声通話品質の確認作業と音質調整作業とで、電話機種別や通信回線種別が同一の複数の接続経路に対する音質調整が可能となり、音声通話品質の確認作業と音質調整作業とを軽減することが可能である。
【0017】
第四に、保守端末においては、電話機種別や通信回線種別のグループ単位に音質調整値情報を記憶する音質特性構成データベースと連動する形で、電話機種別や通信回線種別が属するグループの組み合わせにより一括指定して、音質調整値情報を変更することにより、グループの組み合わせにより特定される複数の接続経路について一括して変更することが可能になり、保守端末からの音質調整作業を軽減することができる。
【0018】
第五に、第一ないし第四の効果を実現する全ての機能を構内交換機(PBX)内に設けることによって、従来のように外部に音声通話品質の試験調整装置等を設置する必要がなく、安価で保守性の向上を実現する電話システムの構築が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る構内電話機のブロック構成の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示したメインシステムのハイブリッドPBXの動作の一例を説明するための動作説明図である。
【図3】図1に示したメインシステムのハイブリッドPBXの動作の異なる例を説明するための動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による構内交換機、音声品質調整方法および音声品質調整プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による構内交換機および音声品質調整方法について説明するが、かかる音声品質調整方法をコンピュータにより実行可能な音声品質調整プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、音声品質調整プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0021】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、構内交換機(PBX:Private Branch Exchange)を含む電話システムにおける音声通話品質を、外部装置を使用することなく、PBX単独で、容易に調整することができる機能を有するPBXを提供することを主な特徴としている。
【0022】
つまり、本発明は、PBX内に、電話機や通信回線の種別ごとに、最適なエコーキャンセラの設定値、音声レベルの設定値をあらかじめ記憶しておき、PBX単独で、発信してきた電話番号に基づいて、エコーキャンセラやゲイン回路の最適な設定値を選択して設定することができ、さらに、通話途中であっても、入力されてくるダイヤル情報に基づいて、現在設定されている設定値の選択を変更することができるという仕組みを備えている。而して、電話機や通信回線の種別に応じた通話音声レベルや通話品質の調整を可能とし、良好な音声通話品質を確保することを可能としている。
【0023】
(実施形態の構成例)
次に、本発明に係る構内電話機(PBX)の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る構内電話機のブロック構成の一例を示す構成図であり、回線交換機能とVoIP(Voice over Internet Protocol)機能との両方の機能を有するハイブリッドPBXに音声品質調整機能をさらに付与して構成している場合の構成例を示している。なお、図1には、本発明に係る構内電話機の動作を分かり易く説明するために、本構内電話機が関連する電話システム全体のシステム構成を合わせて示している。つまり、本構内電話機に接続する電話機、本構内電話機とIPネットワークを介してリモート制御する他の構内交換機や、回線網と接続するデジタル回線やアナログ回線等の各構成要素も含めて示している。
【0024】
図1に示すように、本電話システムは、IPネットワーク300を介して相互に接続されるメインシステム100とリモートシステム200とからなり、メインシステム100はハイブリッドPBX110により構成され、リモートシステム200はハイブリッドPBX210により構成されている。メインシステム100のハイブリッドPBX110は、電話システム全体の動作を司る親側の主装置であり、IPネットワーク300を介して、リモートシステム200のハイブリッドPBX210をリモート制御する。
【0025】
メインシステム100のハイブリッドPBX110は、スイッチ111内に音声レベルを制御するゲイン回路112を備えるとともに、メインシステム100のみならずリモートシステム200をも含め電話システム全体の動作を制御するメイン制御部113を備えている。ハイブリッドPBX110のスイッチ111には、VoIP機能を実現するために、IPネットワーク300を介してIP電話機150、IP回線151、保守端末160等を接続するためのVoIPインターフェースカード120を接続している。また、VoIPインターフェースカード120には、音声通話品質を調整するためのエコーキャンセラ回路121、通話音声レベルを調整するためのゲイン回路122を備えている。
【0026】
さらに、ハイブリッドPBX110のスイッチ111には、アナログ電話機140を接続するためのアナログ電話機制御カード130、デジタル電話機141を接続するためのデジタル電話機制御カード131、アナログ回線142を接続するためのアナログ回線制御カード132、デジタル回線143を接続するためのデジタル回線制御カード133を接続している。
【0027】
また、ハイブリッドPBX110のメイン制御部113は、メインシステム100とリモートシステム200とを含む電話システム全体の構成に関するデータをデータベースとして格納しているシステム構成DB114、電話機・通信回線から受信した番号情報(ダイヤル情報等)を分析するためのデータをデータベースとして格納している番号分析DB115、電話機・通信回線の種別の組み合わせごとの最適な通話音質特性に関するデータをデータベースとして格納している音質特性構成DB116、電話機・通信回線の接続経路に関するデータをデータベースとして格納している接続経路DB117を少なくとも備えている。
【0028】
システム構成DB114の情報は、電話システムの構築時に保守端末160からの入力によって登録され、アナログ電話機140,240、デジタル電話機141、241、IP電話機150,250それぞれの内線番号と、それぞれの電話機が接続されるアナログ電話機制御カード130,230、デジタル電話機制御カード131,231、VoIPインターフェースカード120,220と、アナログ回線142,242、デジタル回線143,243、IP回線151,251それぞれの通信回線情報と、それぞれの通信回線が接続されるアナログ回線制御カード132,232、デジタル回線制御カード133,233、VoIPインターフェースカード120,220と、を記憶するデータベースである。
【0029】
番号分析DB115の情報は、電話システムの構築時に保守端末160からの入力によって登録され、電話機または通信回線から接続先特定のために送信されてくるダイヤル番号と、該ダイヤル番号に対応する接続先の電話機または通信回線の組み合わせに関する情報と、通話中状態の電話機から音質調整値情報を変更するために音質調整要求ダイヤル番号として送信されてくるダイヤル番号と、該ダイヤル番号に対応する音質調整値情報の変更値の組み合わせに関する情報を記憶するデータベースである。
【0030】
音質特性構成DB116は、電話機種別や通信回線種別の組み合わせごとの音声通話の特性により分類されたグループ単位で最適な通話音質に関する情報を記憶し、全ての電話機種別と通信回線種別とについてのグループ分類の情報と、各グループの組み合わせごとに、必要なゲイン回路112,212,122,222への音声レベル調整設定値とエコーキャンセラ回路121,221の動作パラメータ設定値を含む最適な音質調整値情報を記憶するデータベースである。
【0031】
ここで、音質調整値情報は、電話システムの構築時における保守端末160からの入力によって、電話機または通信回線それぞれの特性を考慮した標準的な値が初期値として記憶されている。しかし、記憶されている該音質調整値情報および電話機種別と通信回線種別とに関するグループ分類のどちらも、保守端末160からの変更操作により任意に変更することが可能であり、音声通話特性のグループ分類については、電話機に割り当てられた内線番号ごと、または、通信回線情報ごとに任意のグループに変更することが可能であり、音質調整値情報については、グループ分類の組み合わせごとに任意に変更することが可能である。また、音質調整値情報は、通話中の電話機からの音質調整要求ダイヤル番号の入力によっても変更することが可能である。
【0032】
接続経路DB117の情報は、電話システムの構築時における保守端末160からの入力によって登録され、音声通話が可能な全ての電話機または通信回線の組み合わせを考慮した上で想定される、経由するスイッチ111,211内のスイッチ、経由するVoIPインターフェースカード120,220の組み合わせについて、ゲイン回路112,212,122,222やエコーキャンセラ回路121,221の経由数と経由順序とに関する情報をパターン化して、パターンごとに音声レベル調整を行うゲイン回路112,212,122,222と動作パラメータ設定を行うエコーキャンセラ回路121,221との部位を示す音質調整部位情報を記憶するデータベースである。
【0033】
以上の4つのデータベースを有するメイン制御部113は、電話システム全体の動作を制御し、メインシステム100とリモートシステム200とに含まれる全ての電話機制御カード、通信回線制御カード、スイッチ、VoIPインターフェースカードを制御する機能を備えた制御プログラムを備えており、該制御プログラムの一つとして電話機、通信回線の種別の組み合わせごとに通話音声の音質を調整する音声品質調整プログラムも備えている。つまり、メイン制御部113には、音質特性構成DB116と接続経路DB117とに格納されている情報に基づいて、ゲイン回路112,212,122,222への音声レベル調整値の設定と、エコーキャンセラ回路121,221の動作パラメータの設定を最適化する判断論理を備えている。また、メイン制御部113は、保守端末160との通信制御機能も備えており、保守端末160からの入力に応じて、以上の4つのデータベースの更新を行う機能を有している。
【0034】
なお、IPネットワーク300を介してメインシステム100と接続されて、メインシステム100のハイブリッドPBX110からリモート制御されるリモートシステム200も、メインシステム100とほぼ同様の構成からなっており、リモートシステム200のハイブリッドPBX210は、スイッチ211とゲイン回路212とリモート制御部213とを備え、スイッチ211には、IPネットワーク300を介してIP電話機250、IP回線251等を接続するためのVoIPインターフェースカード220を接続し、VoIPインターフェースカード220には、エコーキャンセラ回路221、ゲイン回路222を備えている。
【0035】
さらに、スイッチ211には、アナログ電話機240を接続するためのアナログ電話機制御カード230、デジタル電話機241を接続するためのデジタル電話機制御カード231、アナログ回線242を接続するためのアナログ回線制御カード232、デジタル回線243を接続するためのデジタル回線制御カード233を接続している。
【0036】
なお、リモート制御部213は、メインシステム100のハイブリッドPBX110からの制御信号に基づいて、リモートシステム200内のハイブリッドPBX210全体の動作を制御するものであり、ハイブリッドPBX110のメイン制御部213が備えているシステム構成DB114等のようなデータベースを備える必要はない。つまり、リモート制御部213は、メインシステム100のハイブリッドPBX110のメイン制御部113と、リモートシステム200を構成する電話機制御カード230,231、通信回線制御カード232,233、スイッチ211、VoIPインターフェースカード220等との間の制御信号を中継する機能を有する制御プログラムを備えている。
【0037】
メインシステム100とリモートシステム200とは、前述したように、IPネットワーク300上で接続されており、リモートシステム200のハイブリッドPBX210を、使用する電話機の台数または通信回線数を拡張するために同一拠点に設置する場合と、異なる拠点に設置してIPネットワーク300上で動作する専用線のイメージで利用する場合のみならず、リモートシステム200のハイブリッドPBX210をメインシステム100のハイブリッドPBX110のゲートウェイとして利用する場合も想定される。
【0038】
いずれの場合であっても、回線交換の動作は、メインシステム100またはリモートシステム200に接続される電話機140,141,150または電話機240,241,250、あるいは、通信回線142,143,151または通信回線242,243,251から受信したダイヤル番号情報を、メイン制御部113において、番号分析DB115に記憶された情報に基づいて解析して、接続先の特定を行い、特定された接続先に関する情報を、システム構成DB114から読み出して、経由するスイッチ111,211やVoIPインターフェースカード120,220の接続処理を実行することになる。
【0039】
(実施形態の動作の説明)
次に、図2,図3の動作説明図を参照して、図1に示した電話システムにおける構内交換機の動作の一例を詳細に説明する。
【0040】
図2は、図1に示したメインシステム100のハイブリッドPBX110の動作の一例を説明するための動作説明図であり、太線にて示すように、メインシステム100のアナログ電話機140とIP電話機150とが接続された場合の接続経路RT1を例にとって、メインシステム100のハイブリッドPBX110の動作を説明している。
【0041】
また、図3は、図1に示したメインシステム100のハイブリッドPBX110の動作の異なる例を説明するための動作説明図であり、接続する電話機、通信回線の種別に応じて、音質調整値情報の設定を任意に変更する動作の一例として、太実線にて示すように、メインシステム100のアナログ回線142とデジタル電話機141とが接続された場合の接続経路RT2において通話中のデジタル電話機141からのダイヤル操作により音質調整値情報を変更する場合と、しかる後に、太波線にて示すように、メインシステム100のアナログ回線142とリモートシステム200のデジタル電話機241とが接続された場合の接続経路RT3において通話中のデジタル電話機141からのダイヤル操作により音質調整値情報を変更しようとする場合とに関する動作を説明している。
【0042】
まず、図2の動作説明図を参照して、発信端末のアナログ電話機140の発信操作から、着信端末のIP電話機150、接続経路、音質調整値情報、音質調整部位情報を特定するハイブリッドPBX110のプロセスについて、順を追って説明する。
【0043】
アナログ電話機140からIP電話機150の内線番号のダイヤル情報が入力されてくると、ハイブリッドPBX110のメイン制御部113において、番号分析DB115に記憶されている情報に基づいて、入力されたダイヤル情報が分析され、IP電話機150との接続制御が要求されていることが特定される。
【0044】
しかる後、メイン制御部113は、システム構成DB114に格納された情報を参照することによって、アナログ電話機140とIP電話機150とが音声通話を行う場合の接続経路として、図2の太実線の接続経路RT1で示されるアナログ電話機140−アナログ電話機制御カード130−スイッチ111(ゲイン回路112)−VoIPインターフェースカード120(エコーキャンセラ回路121−ゲイン回路122)−IPネットワーク−IP電話機150の経路を選択することを決定する。
【0045】
さらに、メイン制御部113は、アナログ電話機140とIP電話機150との音声通話用の音声品質調整として、設定すべき音質調整値となるゲイン回路112,122への音声レベル調整値およびエコーキャンセラ回路121への動作パラメータ設定値を含む音質調整値情報と、調整の対象となる音声レベル調整を行うべきゲイン回路112,122および動作パラメータの設定を行うべきエコーキャンセラ回路121を示す音質調整部位情報とが必要となる。
【0046】
メイン制御部113は、音質特性構成DB116に記憶されている情報の中から、アナログ電話機140が属する音声通話特性のグループとIP電話機150が属する音声通話特性のグループとの組み合わせを検索することによって、接続経路RT1における音質調整値情報を読み出すことが可能である。また、接続経路RT1における音質調整部位情報は、接続経路DB117に記憶されている情報の中から、接続経路RT1に含まれるゲイン回路とエコーキャンセラ回路との経由数と経由順序である、ゲイン回路112−エコーキャンセラ回路121−ゲイン回路122のパターンの情報として読み出すことが可能である。
【0047】
したがって、メイン制御部113においては、接続経路RT1に含まれる情報に基づいて音質特性構成DB116、接続経路DB117の情報を検索する前述のようなプロセスによって、特定された音質調整値情報を、音質調整部位情報で示される回路(ゲイン回路112,122、エコーキャンセラ回路121)に対して設定することによって、接続経路RT1における最適な部位において最適な音質調整を行うことができる。
【0048】
次に、図3の動作説明図を参照して、接続する電話機、通信回線の種別に応じて、音質調整値情報の設定を任意に変更する動作の一例として、アナログ回線142から太実線の接続経路RT2を経由してメインシステム100のデジタル電話機141に着信する場合と、しかる後に、アナログ回線142から太破線の接続経路RT3を経由してリモートシステム200のデジタル電話機241に着信する場合とについて、メインシステム100のハイブリッドPBX110が、通話中の状態にあるデジタル電話機141,241からの音質調整値情報の更新を要求する音質調整要求ダイヤル番号に基づいて音質調整値情報の設定を変更する動作について、順を追って説明する。
【0049】
前述したように、メインシステム100のハイブリッドPBX110の音質特性構成DB116には、電話システム構築時に、電話機や通信回線の音声通話特性を考慮した標準的な音質調整値情報が初期値として記憶されている。しかし、電話機や通信回線の音声通話特性は、対向装置との線路距離等の影響を受けるため、各種の接続状態に応じて、電話機や通信回線の種別ごとに、それぞれに見合った音質調整値への変更を必要とすることが多い。かくのごとき音質調整値の調整作業は、実際に通信回線を使用した通話試験と、通話試験結果に基づく音質調整値情報の変更を繰り返すという手順になる。
【0050】
図3の太実線の接続経路RT2に示す、アナログ回線142−アナログ回線制御カード132−スイッチ111(ゲイン回路112)−デジタル電話機制御カード131−デジタル電話機141の接続経路について音質調整を行う場合は、まず、アナログ回線142とデジタル電話機141とを通話状態とした後、通話中の状態にあるデジタル電話機141において、調整したい音質調整値情報に対応したダイヤルボタンを音質調整要求ダイヤル番号として押下する。
【0051】
該音質調整要求ダイヤル番号をデジタル電話機141から受け取ったハイブリッドPBX110のメイン制御部113は、番号分析DB115に基づいて、受信した音質調整要求ダイヤル番号に対応する音質調整値情報の調整値を、当該接続経路RT2における音質調整値情報を更新すべき変更値として決定する。しかる後、メイン制御部113は、当該接続経路RT2のアナログ回線142が属するグループとデジタル電話機141が属するグループとに基づいて、音質特性構成DB116を検索して、当該アナログ回線142が属するグループと当該デジタル電話機141が属するグループとの組み合わせとして記憶されている音質調整値情報を、決定した該変更値によって更新する。
【0052】
更新された音質特性構成DB116の音質調整値情報は、アナログ回線142とデジタル電話機141との通話中状態が維持された状態のままで、該通話に使用されている接続経路RT2内のスイッチ111のゲイン回路112に即時に反映される。したがって、通話中の状態にあるデジタル電話機141において、更新後の音質調整値情報が反映された音声通話品質を直ちに再確認することができ、さらなる音質調整値情報の更新が必要である場合には、デジタル電話機141において、再度、調整したい音質調整値情報に対応したダイヤルボタンを音質調整要求ダイヤル番号として押下する操作と更新後の音声通話品質の再確認動作とを繰り返す。
【0053】
かくのごとき音質調整値情報の更新と音声通話品質の再確認との繰り返しによって、音質特性構成DB116の音質調整値情報を、接続経路RT2における最適な音質調整値に調整することができる。
【0054】
次に、図3の太実線の接続経路RT2の接続経路による通話が終了した後、同じアナログ回線142から、今度は、図3の太破線の接続経路RT3に示すように、リモートシステム200のデジタル電話機241に着信する場合の音質調整値情報の更新プロセスについて説明する。すなわち、図3の太実線の接続経路RT2の接続経路による通話終了後に、太破線の接続経路RT3に示すアナログ回線142−アナログ回線制御カード132−スイッチ111(ゲイン回路112)−VoIPインターフェースカード120(エコーキャンセラ回路121−ゲイン回路122)−IPネットワーク300−VoIPインターフェースカード220(ゲイン回路222−エコーキャンセラ回路221)−スイッチ211(ゲイン回路212)−デジタル電話機制御カード231−デジタル電話機241の接続経路について音質調整を行う場合について説明する。
【0055】
かかる場合、太破線の接続経路RT3に示すアナログ回線142とデジタル電話機241との組み合わせは、通信回線種別や電話機種別の組み合わせとしては、直前に通話が終了した太実線の接続経路RT2のアナログ回線142とデジタル電話機141との組み合わせと同一である。したがって、太破線の接続経路RT3における音質調整作業段階において参照される音質特性構成DB116の情報は、前述したように、太実線の接続経路RT2の場合と同様であり、アナログ回線が属するグループとデジタル電話機が属するグループの組み合わせの音質調整値情報である。
【0056】
したがって、直前に通話が終了した太実線の接続経路RT2の通話音質調整作業段階において、音質特性構成DB116の音質調整値情報は最適な調整値に更新済みであり、一般的には、太破線の接続経路RT3における音質調整作業は不要である。
【0057】
しかし、太破線の接続経路RT3の場合、太実線の接続経路RT2の場合とは異なり、VoIP機能を利用した通話形態であり、VoIPインターフェースカード120(エコーキャンセラ回路121−ゲイン回路122)−IPネットワーク300−VoIPインターフェースカード220(ゲイン回路222−エコーキャンセラ回路221)−スイッチ211(ゲイン回路212)という接続経路を新たに経由することになり、音質調整を要する部位として新たな部位が含まれている。
【0058】
したがって、アナログ回線142とデジタル電話機241とを通話状態した段階で、通話中の状態にあるデジタル電話機241において、音声通話音質を再確認する通話品質試験を行う。ここで、デジタル電話機241において音質の調整を行いたい場合には、調整したい音質調整値情報に対応したダイヤルボタンを音質調整要求ダイヤル番号として押下する。かかる音質調整要求ダイヤル番号が入力されてくることにより、メインシステム100のハイブリッドPBX110のメイン制御部113は、メインシステム100のハイブリッドPBX110のゲイン回路112以外のエコーキャンセラ回路121,ゲイン回路122、リモートシステム200のハイブリッドPBX210のゲイン回路222,エコーキャンセラ回路221、ゲイン回路212の音質調整部位をも含む形態で、太実線の接続経路RT2の場合と同様に、音質特性構成DB116の音質調整値情報を、接続経路RT3における最適な音質調整値として調整することができる。
【0059】
なお、音質特性構成DB116の音質調整値情報は、保守端末160からも、通話中の状態の電話機からの音質調整時の場合と同様に、更新することが可能である。また、保守端末160から音質特性構成DB116の音質調整値情報の更新を行う場合は、電話機の音質調整の場合と同様に、更新すべき電話機や通信回線を特定するためのダイヤル番号と音質調整要求ダイヤル番号とをダイヤルすることにより実施することも可能であるが、さらに簡略化したインターフェースを用いて実施することもできる。例えば、保守端末160から音質特性構成DB116の音質調整値情報の変更を行う場合、メインシステム100のメイン制御部113から、音質特性構成DB116に設定されている電話機種別や通信回線種別が属するグループの組み合わせを提供させて、該グループの組み合わせを指定するインターフェースを用いて、音質特性構成DB116に設定されているグループ単位と連動させる形で、電話機種別や通信回線種別が属するグループの1ないし複数の組み合わせそれぞれにより特定される1ないし複数の接続経路について、一括指定して変更するようにしても良い。
【0060】
かくのごとく、通話中状態にある電話機における音質調整要求ダイヤル番号のダイヤル操作による通話中の接続経路に対する任意の調整値への音質調整作業、あるいは、保守端末160における複数の接続経路を一括指定した音質調整要求ダイヤル番号のダイヤル操作による任意の調整値への音質調整作業によって、任意の接続経路について、電話機、通信回線の種別に応じた音質調整作業が可能となる。
【0061】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、次のような効果が得られる。
【0062】
第一に、通話中の状態にある電話機からのダイヤル操作による音質調整作業を可能とすることによって、従来のように電話機での音声品質の確認と保守端末での音質調整作業とを繰り返していた手順を、電話機のみによって音声品質の確認と音質調整作業とを実施することができ、音声通話品質の確認作業と調整作業とを軽減することが可能である。
【0063】
第二に、ゲイン回路やエコーキャンセラ回路の経由数および経由順序によってパターン化された音質調整部位情報を記憶するデータベースを接続経路DB117としてハイブリッドPBX110内に設けることによって、従来、専門技術者による判断が必要とされていた音質調整対象のゲイン回路やエコーキャンセラ回路の選択が不要となり、音声通話品質の調整作業を容易に行うことが可能である。
【0064】
第三に、電話機種別や通信回線種別の音声通話の特性に応じたグループ単位に音質調整値情報を構成して記憶するデータベースを音質特性構成DB116としてハイブリッドPBX110内に設けることによって、一回の音声通話品質の確認作業と音質調整作業とで、電話機種別や通信回線種別が同一の複数の接続経路に対する音質調整が可能となり、音声通話品質の確認作業と音質調整作業とを軽減することが可能である。
【0065】
第四に、保守端末160においては、音質特性構成DB116として電話機種別や通信回線種別のグループ単位に音質調整値情報を記憶するデータベースと連動する形で、電話機種別や通信回線種別が属するグループの組み合わせにより一括指定して、音質調整値情報を変更することにより、グループの組み合わせにより特定される複数の接続経路について一括して変更することが可能になり、保守端末160からの音質調整作業を軽減することができる。
【0066】
第五に、第一ないし第四の効果を実現する全ての機能をメインシステム100のハイブリッドPBX110内に設けることによって、従来のように外部に音声通話品質の試験調整装置等を設置する必要がなく、安価で保守性の向上を実現する電話システムの構築が可能である。
【0067】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0068】
100 メインシステム
110 ハイブリッドPBX
111 スイッチ
112 ゲイン回路
113 メイン制御部
114 システム構成DB
115 番号分析DB
116 音質特性構成DB
117 接続経路DB
120 VoIPインターフェースカード
121 エコーキャンセラ回路
122 ゲイン回路
130 アナログ電話機制御カード
131 デジタル電話機制御カード
132 アナログ回線制御カード
133 デジタル回線制御カード
140 アナログ電話機
141 デジタル電話機
142 アナログ回線
143 デジタル回線
150 IP電話機
151 IP回線
160 保守端末
200 リモートシステム
210 ハイブリッドPBX
211 スイッチ
212 ゲイン回路
213 リモート制御部
220 VoIPインターフェースカード
221 エコーキャンセラ回路
222 ゲイン回路
230 アナログ電話機制御カード
231 デジタル電話機制御カード
232 アナログ回線制御カード
233 デジタル回線制御カード
240 アナログ電話機
241 デジタル電話機
242 アナログ回線
243 デジタル回線
250 IP電話機
251 IP回線
300 IPネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機や通信回線を通話用に接続する動作を行う構内交換機において、通話用に接続する電話機種別、回線種別のグループごとの組み合わせに応じて最適な通話音質が得られるゲイン回路やエコーキャンセラ回路の音質調整値を記憶する音質特性構成データベースと、通話用に接続する電話機、通信回線の組み合わせにより決まる接続経路に関する情報を記憶する接続経路データベースとを備え、電話機または通信回線からの接続要求があった際に、前記接続経路データベースを参照して決定した接続経路上に存在する前記ゲイン回路や前記エコーキャンセラ回路に対して設定すべき音質調整値を、前記音質特性構成データベースを参照することにより取得して、当該ゲイン回路や当該エコーキャンセラ回路に対して設定することを特徴とする構内交換機。
【請求項2】
通話中の状態にある電話機または通信回線から、通話中の電話機種別、回線種別の組み合わせに関して前記音質特性構成データベースに記憶されている音質調整値の変更を要求する音質調整要求ダイヤル番号を受け取った際に、該音質調整要求ダイヤル番号に該当する変更値によって、前記音質特性構成データベースの音質調整値を更新することを特徴とする請求項1に記載の構内交換機。
【請求項3】
通話中の状態にある電話機または通信回線からの前記音質調整要求ダイヤル番号を受け取って前記音質特性構成データベースの音質調整値を更新した際に、通話中の状態を維持したまま、当該通話に使用されている前記ゲイン回路や前記エコーキャンセラ回路に対して更新された音質調整値を再設定することを特徴とする請求項2に記載の構内交換機。
【請求項4】
構内電話機を保守するための保守端末から、前記音質特性構成データベースの電話機種別、回線種別のグループごとの組み合わせに応じて記憶されている音質調整値を、1ないし複数のグループを一括指定して更新させることができるインターフェースを備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の構内交換機。
【請求項5】
電話機や通信回線を通話用に接続する動作を行う構内交換機における音声品質調整方法であって、前記構内交換機に、通話用に接続する電話機種別、回線種別のグループごとの組み合わせに応じて最適な通話音質が得られるゲイン回路やエコーキャンセラ回路の音質調整値を記憶する音質特性構成データベースと、通話用に接続する電話機、通信回線の組み合わせにより決まる接続経路に関する情報を記憶する接続経路データベースとを備え、電話機または通信回線からの接続要求があった際に、前記接続経路データベースを参照して決定した接続経路上に存在する前記ゲイン回路や前記エコーキャンセラ回路に対して設定すべき音質調整値を、前記音質特性構成データベースを参照することにより取得して、当該ゲイン回路や当該エコーキャンセラ回路に対して設定することを特徴とする音声品質調整方法。
【請求項6】
通話中の状態にある電話機または通信回線から、通話中の電話機種別、回線種別の組み合わせに関して前記音質特性構成データベースに記憶されている音質調整値の変更を要求する音質調整要求ダイヤル番号を受け取った際に、該音質調整要求ダイヤル番号に該当する変更値によって、前記音質特性構成データベースの音質調整値を更新することを特徴とする請求項5に記載の音声品質調整方法。
【請求項7】
通話中の状態にある電話機または通信回線からの前記音質調整要求ダイヤル番号を受け取って前記音質特性構成データベースの音質調整値を更新した際に、通話中の状態を維持したまま、当該通話に使用されている前記ゲイン回路や前記エコーキャンセラ回路に対して更新された音質調整値を再設定することを特徴とする請求項6に記載の音声品質調整方法。
【請求項8】
構内電話機を保守するための保守端末から、前記音質特性構成データベースの電話機種別、回線種別のグループごとの組み合わせに応じて記憶されている音質調整値を、1ないし複数のグループを一括指定して更新させることができるインターフェースを備えていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の音声品質調整方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載の音声品質調整方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする音声品質調整プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−80494(P2012−80494A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226578(P2010−226578)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【特許番号】特許第4858887号(P4858887)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】