構造体および構造体の構成部材および構造体の製造方法
【課題】 本発明は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体を対象とし、構造体の製造に関わる作業工程、特に溶接工程の大幅な効率化を図り、もって生産効率の向上を達成し得る構造体、構造体の構成部材、および構造体の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明に関わる構造体は、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開する特定の構成部材に、溶接線を露呈させる開放部を設けている。
また、本発明に関わる構造体の構成部材は、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、溶接線を露呈させる開放部を有している。
さらに、本発明に関わる構造体の製造方法は、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、溶接線を露呈させる開放部を有する構成部材を用いて構造体を仮組みする工程と、仮組みした構造体の溶接線を溶接して所定の構成部材同士を接合する工程とを含んでいる。
【解決手段】 本発明に関わる構造体は、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開する特定の構成部材に、溶接線を露呈させる開放部を設けている。
また、本発明に関わる構造体の構成部材は、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、溶接線を露呈させる開放部を有している。
さらに、本発明に関わる構造体の製造方法は、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、溶接線を露呈させる開放部を有する構成部材を用いて構造体を仮組みする工程と、仮組みした構造体の溶接線を溶接して所定の構成部材同士を接合する工程とを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接して製造される構造体に関し、さらに本発明は上記構造体の構成部材、および上記構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示した従来の油圧ショベル(作業車輌)Aは、クローラ形式の走行機構を有する下部走行体Bと、該下部走行体Bに搭載支持された上部旋回体Cとを備え、この上部旋回体Cには運転室Eが設置されている。
【0003】
ここで、建設機械や農業機械等の作業車輌における運転室は、通常、鋼管から成るピラーやビーム等の複数の構成部材を組み立て、これら構成部材同士を溶接により接合してフレーム構造体を製造し、このフレーム構造体の外面に外装パネルを取り付けることによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11に示す如く、上記運転室Eのフレーム構造体Hは、ベースIに立設された左前方ピラーLFと左後方ピラーLBとを左ルーフピラーLTで連結するとともに、この左ルーフピラーLTとベースIとの間に中間ピラーSを連結し、またベースIに立設された右前方ピラーRFと右後方ピラーRBとを右ルーフピラーRTで連結するとともに、上記左ルーフピラーLTと右ルーフピラーRTとを、左右に延びる前後のルーフビームJ、Kで連結し、かつ上記左後方ピラーLBと右後方ピラーRBとを、左右に延びる上部リヤビームMおよび中間リヤビームNで連結して基本的な骨格を構成するとともに、この骨格に補強用のパッチプレートや装備品を搭載するためのブラケット等、多種多様な構成部材を組み付けて接合することによって構成されている。
【0005】
そして、上述の如く構成されたフレーム構造体Hの外面に、ルーフパネルPt、リヤパネルPb、およびサイドパネルPl(右側のサイドパネルは省略)等、各種の外装パネルを溶接によって取付けることで、図10に示した油圧ショベルAの運転室Eが構成されている。
【特許文献1】特開2000−161552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記運転室Eのフレーム構造体Hは、上述した如く多種多様な構成部材の集合体であるため、全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした場合、構成部品同士の溶接線が他の構成部材によって隠されてしまう箇所や、構成部品同士を溶接しようとする溶接トーチに他の構成部品が干渉する箇所の生じることは否めず、これにより全ての構成部材を一括して溶接することは困難であった。
【0007】
すなわち、上記フレーム構造体Hを製造する場合には、先ず、溶接線が隠されたり溶接トーチと干渉したりすることのない構成部材の組合せで仮組みを行い、溶接によって構成部材同士を接合したのち検査を実施する。
【0008】
次いで、他の構成部材同士の溶接線を隠したり、溶接トーチと干渉する等の理由で溶接されていなかった残りの構成部材を仮組みし、溶接によって構成部材同士を接合したのち検査を実施することとなる。
【0009】
このように、従来のフレーム構造体Hを製造する場合には、構成部材の仮組みと溶接と検査との一連の工程を二度に亘って繰り返さねばならず、非効率な作業に伴う工数の増大によって生産性の低下を招く不都合があった。
【0010】
本発明の目的は上記実状に鑑みて、構造体の製造に関わる作業工程、特に溶接工程の大幅な効率化を図り、もって生産効率の向上を達成し得る構造体、構造体の構成部材、および構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく、請求項1の発明に関わる構造体は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体において、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開する特定の構成部材に、上記溶接線を露呈させる開放部を設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明に関わる構造体は、請求項1の発明に関わる構造体において、上記構造体が作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明に関わる構造体の構成部材は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の構成部材であって、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、上記溶接線を露呈させる開放部を有することを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明に関わる構造体の構成部材は、請求項3の発明に関わる構造体の構成部材において、上記構造体が作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明に関わる構造体の製造方法は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の製造方法において、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、上記溶接線を露呈させる開放部を有する構成部材を用いて構造体を仮組みする工程と、仮組みした構造体の溶接線を溶接して所定の構成部材同士を接合する工程とを含んで成ることを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明に関わる構造体の製造方法は、請求項5の発明に関わる構造体の製造方法において、上記構造体が作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に関わる構造体によれば、特定の構成部材に溶接線を露呈させる開放部を設けたことで、構造体を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、構造体の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0018】
請求項2の発明に関わる構造体によれば、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体の生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【0019】
請求項3の発明に関わる構造体の構成部材によれば、溶接線を露呈させる開放部を有していることから、構造体を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、構造体の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0020】
請求項4の発明に関わる構造体の構成部材によれば、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体の生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【0021】
請求項5の発明に関わる構造体の製造方法によれば、構造体を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、構造体の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0022】
請求項6の発明に関わる構造体の製造方法によれば、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体の生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は、油圧ショベル(作業車輌)の運転室を構成するフレーム構造体に、本発明を適用した実施例を示しており、このフレーム構造体(構造体)1における外面の所定箇所に、所要の外装パネルを取付けることで運転席が構成される。なお、油圧ショベルの全体構成は、図10に示した一般的な油圧ショベルAと変わるところはない。
【0024】
上記フレーム構造体1は、ベースフレーム2、左前方ピラー3Lと左ルーフピラー4Lとを一体成形した左サイドフレーム5L、右前方ピラー3Rと右ルーフピラー4Rとを一体成形した右サイドフレーム5R、中間ピラー6、左後方ピラー7Lおよび右後方ピラー7R、前方ルーフビーム8Fおよび中間ルーフビーム8M、上部リヤビーム9T、中間リヤビーム9Mおよび下部リヤビーム9B等、複数の構成部材を具備しており、これら構成部材同士を溶接により接合することで主要の骨格を形成している。
【0025】
すなわち、ベースフレーム2に立設した左サイドフレーム5Lと左後方ピラー7Lの上部とを接合し、かつ左ルーフピラー4Lとベースフレーム2との間に中間ピラー6を接合するとともに、ベースフレーム2に立設した右サイドフレーム5Rと右後方ピラー7Rの上部とを接合し、左サイドフレーム5Lと右サイドフレーム5Rとを、前方ルーフビーム8Fおよび中間ルーフビーム8Mによって接合するとともに、上記左後方ピラー7Lと右後方ピラー7Rとを、上部リヤビーム9T、中間リヤビーム9Mおよび下部リヤビーム9Bによって接合している。
【0026】
さらに、上記フレーム構造体1は、上述した如き主要な骨格を形成する構成部材と併せ、上記骨格に装備品を搭載するためのブラケットや補強用のパッチプレート等、多種多様な複数の構成部材をも具備しており、全ての構成部材を所定の位置態様で組み付け、溶接により互いに接合することによって製造されている。
【0027】
図1〜図3に示す如く、上記フレーム構造体1を構成する中間リヤビーム9Mの上面左右には、左後方ピラー7Lおよび右後方ピラー7Rとの間に、補強用のリブ(構成部材)10、10が夫々取り付けられており、また、上記中間リヤビーム9Mの上面中央には、エアコンディショナ(図示せず)を装着するためのブラケット(構成部材)11が取り付けられている。
【0028】
上記ブラケット11は、中間リヤビーム9Mの長手方向に沿って延在する背板部11Aと、この背板部11Aの上縁から前方へ向けて拡がる上板部11Bとを有しており、上記背板部11Aにおける下方の左右端部には、夫々切欠き(開放部)11a、11aが形成されているとともに、上記上板部11Bにおける前方の左右端部には、夫々切欠き(開放部)11b、11bが形成されている。
【0029】
上記背板部11Aに形成した切欠き11a、11aによって、中間リヤビーム9Mの上面とリブ10の下縁との溶接線、詳しくはフレーム構造体1の外方に臨んだ溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0030】
また、上記上板部11Bに形成した切欠き11b、11bによって、中間リヤビーム9Mの上面とリブ10の下縁との溶接線、詳しくはフレーム構造体1の内方に臨んだ溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0031】
すなわち、背板部11Aに切欠き11a、11aがない場合、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(外方側)の一部が、該溶接線に沿って展開する背板部11Aで隠されるために溶接作業が困難となる。
【0032】
また、上板部11Bに切欠き11b、11bがない場合、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(内方側)に沿って展開する上板部11Bが、上記溶接線にアクセスしようとする溶接トーチと干渉するために溶接作業が困難となる。
【0033】
〔中間リヤビーム9Mとリブ10との外方側溶接線〕
これに対して、背板部11Aに切欠き11a、11aを形成し、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(外方側)を露呈させたことにより、上記切欠き11aを介して容易に溶接トーチWを外方側の溶接線にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接作業を実施することが可能となる。
【0034】
〔中間リヤビーム9Mとリブ10との内側溶接線〕
また、上板部11Bに切欠き11b、11bを形成し、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(内方側)を露呈させたことにより、上記切欠き11bを介して容易に溶接トーチWを内方側の溶接線にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接作業を実施することができる。
【0035】
一方、図1と図4および図5とに示す如く、ベースフレーム2における前方右隅部には、補強用のパッチプレート(構成部材)12が取り付けられているとともに、上記ベースフレーム2の前部には、ガラス受けパネル(構成部材)13が取り付けられている。
【0036】
上記ガラス受けパネル13の右方下縁部には、切欠き(開放部)13aが形成されており、該切欠き13aには、上記ベースフレーム2に取り付けられたパッチプレート12の前端部12aが嵌合している。
【0037】
ここで、上記ガラス受けパネル13に形成した切欠き13aによって、ベースフレーム2とパッチプレート12の前縁部との溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0038】
すなわち、ガラス受けパネル13に切欠き13aがない場合、ベースフレーム2とパッチプレート12の前縁部との溶接線が、該溶接線に沿って展開するガラス受けパネル13で隠されるために溶接作業が困難となる。
【0039】
これに対して、ガラス受けパネル13に切欠き13aを形成し、ベースフレーム2とパッチプレート12の前縁部との溶接線を露呈させたことにより、構成部材と何ら干渉することなく容易に溶接トーチWを上記溶接線にアクセスさせることができ、もってベースフレーム2とパッチプレート12との溶接作業を確実に実施できる。
【0040】
一方、図6に示す如く、左ルーフピラー4Lには中間ピラー6の上端部が接合されているとともに、上記左ルーフピラー4Lの内方側面(フレーム構造体1の内方に臨んだ側面)には、レール取付板(構成部材)14を介してレール15が取り付けられている。
【0041】
また、上記レール取付板14には、開口(開放部)14oが形成されており、この開口14oによって、左ルーフピラー4Lの下面と中間ピラー6の上端面との溶接線、詳しくはフレーム構造体1の内方に臨んだ溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0042】
すなわち、上記レール取付板14に開口14oがない場合、左ルーフピラー4Lと中間ピラー6との溶接線(内方側)が、該溶接線に沿って展開するレール取付板14で隠されるために溶接作業が困難となる。
【0043】
これに対して、レール取付板14に開口14oを形成し、左ルーフピラー4Lの下面と中間ピラー6の上端面との溶接線を露呈させたことにより、上記開口14oを介して容易に溶接トーチWを上記溶接線(内方側)にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、左ルーフピラー4Lと中間ピラー6との溶接作業を実施することができる。
【0044】
一方、図7および図8に示す如く、右サイドフレーム5Rのフロントインナーパネル(構成部材)5Pには、前方ルーフビーム8Fの端部が取り付けられているとともに、レール取付板(構成部材)14を介してレール15が取り付けられている。
【0045】
また、上記レール取付板14の上縁部には、切欠き(開放部)14aが形成されており、この切欠き14aによって、フロントインナーパネル5Pと前方ルーフビーム8Fのリブ8lとの溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0046】
すなわち、レール取付板14の切欠き14aがない場合、言い換えれば、図中に鎖線で示す位置までレール取付板14の上縁部が在る場合には、フロントインナーパネル5Pとリブ8lとの溶接線に沿って展開するレール取付板14が、上記溶接線にアクセスしようとする溶接トーチと干渉するために溶接作業が困難となる。
【0047】
これに対して、レール取付板14に切欠き14aを形成し、フロントインナーパネル5Pと前方ルーフビーム8Fのリブ8lとの溶接線を露呈させたことにより、上記切欠き14aを介して容易に溶接トーチWを上記溶接線にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、フロントインナーパネル5Pと前方ルーフビーム8Fとの溶接作業を実施することができる。
【0048】
なお、フレーム構造体1における左サイドフレーム5Lと前方ルーフビーム8Fとの接合部分も、上述した右サイドフレーム5Rと前方ルーフビーム8Fとの接合部分と同様に構成されていることは勿論である。
【0049】
上述した構成のフレーム構造体1を製造する際には、先ず、フレーム構造体1を構成する全ての構成部材を、図示していない治具上において夫々所定の箇所に配置して組み立て、フレーム構造体1の仮組みを行なうとともに、構成部材同士をスポット溶接等で部分的に接合することにより、全ての構成部品の集合体である仮組みフレーム1′(図9参照)を作成する。
【0050】
次いで、治具(図示せず)から取り出した仮組みフレーム1′を、図9に示す如く、溶接装置100のポジショナー101にセットし、上記溶接装置100における溶接ロボット102によって、上記仮組みフレーム1′における溶接線を溶接し、所定の構成部材同士を互いに接合することによって、所期のフレーム構造体1が完成することとなる。
【0051】
因みに、仮組みフレーム1′に対する溶接作業は、上述したロボット溶接のみならず、作業員による手溶接であっても良いことは言うまでもない。
【0052】
上述した実施例の構成によれば、ブラケット11やガラス受けパネル13、あるいはレール取付板等の特定の構成部材に、溶接作業を妨げることなく溶接線を露呈させる開放部(切欠き11a、11b、切欠き13a、開口14o、切欠き14a)を設けたことで、フレーム構造体1を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、フレーム構造体1の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0053】
また、実施例の如くフレーム構造体1を製造することで、フレーム構造体1の全ての構成部材を仮組みする工程と、仮組みした構成部材を溶接により接合する工程とを完全に分離できるため、各工程を集約し得ることから生産性の大幅な向上を図ることが可能となる。
【0054】
ここで、構成部材に溶接線を露呈させる切欠きを形成している技術としては、、例えば特開2000−87462号公報に、建設現場での均一なフランジ溶接を可能とするべく、I型鋼を構成するウェブの上下にスカラップを設けた鋼部材の接合構造が開示されている。
【0055】
しかしながら、本発明が溶接線に沿って展開する構成部材に溶接線を露呈させる開放部を設けているのに対し、上記公報に開示されている構成においては、フランジに対して立設されるウェブの両側から溶接が可能であることと併せ、スカラップを設けたことで溶接が可能となる範囲が極めて狭いことから、上記公報に開示された構成を実施例のフレーム構造体に適用しても、本発明に関わる独自の作用効果を奏し得ないことは明かである。
【0056】
なお、本発明の適用される運転室のフレーム構造体は、実施例の構成に限定されるものではなく、油圧ショベルの大きさやデザインの相違に基づく、様々な構成のフレーム構造体に対しても、本発明を有効に適用し得ることは勿論である。
【0057】
また、上述した実施例においては、油圧ショベルの運転室を構成するフレーム構造体に本発明を適用しているが、上記油圧ショベル以外の様々な作業車輌における運転室のフレーム構造体、さらには運転室のフレーム構造体以外の様々な構造体に対しても、本発明を極めて有効に適用し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を作業車輌における運転室のフレーム構造体に適用した実施例を示す全体外観斜視図。
【図2】(a)および(b)は、図1に示したフレーム構造体の要部背面図および要部断面図。
【図3】(a)および(b)は、図2中の IIIa−IIIa 線断面図および IIIb−IIIb 線断面図。
【図4】図1に示したフレーム構造体における前方側の要部外観斜視図。
【図5】(a)および(b)は、図1に示したフレーム構造体の要部正面図および要部断面図。
【図6】(a)および(b)は、図1に示したフレーム構造体における側部上方の要部を内方から観た図および要部断面図。
【図7】図1に示したフレーム構造体における前部右上方の隅部を内方から観た図。
【図8】(a)および(b)は、図7に示したフレーム構造体における側部前上方の要部を内方から観た図および要部断面図。
【図9】フレーム構造体の製造工程における溶接作業を示す概念図。
【図10】一般的な作業車輌を示す概念的な全体側面図。
【図11】従来の作業車輌における運転室を構成するフレーム構造体および外装パネルを示す外観分解斜視図。
【符号の説明】
【0059】
1…フレーム構造体(構造体)、
2…ベースフレーム(構成部材)、
4L…左ルーフピラー(構成部材)、
5P…フロントインナーパネル(構成部材)、
6…中間ピラー(構成部材)、
8F…前方ルーフビーム(構成部材)、
9M…中間リヤビーム(構成部材)、
10…補強リブ(構成部材)、
11…ブラケット(構成部材)、
11a…切欠き(開放部)、
11b…切欠き(開放部)、
12…パッチプレート(構成部材)、
13…ガラス受けパネル(構成部材)、
13a…切欠き(開放部)、
14…レール取付板(構成部材)、
14a…切欠き(開放部)、
14o…開口(開放部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接して製造される構造体に関し、さらに本発明は上記構造体の構成部材、および上記構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示した従来の油圧ショベル(作業車輌)Aは、クローラ形式の走行機構を有する下部走行体Bと、該下部走行体Bに搭載支持された上部旋回体Cとを備え、この上部旋回体Cには運転室Eが設置されている。
【0003】
ここで、建設機械や農業機械等の作業車輌における運転室は、通常、鋼管から成るピラーやビーム等の複数の構成部材を組み立て、これら構成部材同士を溶接により接合してフレーム構造体を製造し、このフレーム構造体の外面に外装パネルを取り付けることによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11に示す如く、上記運転室Eのフレーム構造体Hは、ベースIに立設された左前方ピラーLFと左後方ピラーLBとを左ルーフピラーLTで連結するとともに、この左ルーフピラーLTとベースIとの間に中間ピラーSを連結し、またベースIに立設された右前方ピラーRFと右後方ピラーRBとを右ルーフピラーRTで連結するとともに、上記左ルーフピラーLTと右ルーフピラーRTとを、左右に延びる前後のルーフビームJ、Kで連結し、かつ上記左後方ピラーLBと右後方ピラーRBとを、左右に延びる上部リヤビームMおよび中間リヤビームNで連結して基本的な骨格を構成するとともに、この骨格に補強用のパッチプレートや装備品を搭載するためのブラケット等、多種多様な構成部材を組み付けて接合することによって構成されている。
【0005】
そして、上述の如く構成されたフレーム構造体Hの外面に、ルーフパネルPt、リヤパネルPb、およびサイドパネルPl(右側のサイドパネルは省略)等、各種の外装パネルを溶接によって取付けることで、図10に示した油圧ショベルAの運転室Eが構成されている。
【特許文献1】特開2000−161552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記運転室Eのフレーム構造体Hは、上述した如く多種多様な構成部材の集合体であるため、全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした場合、構成部品同士の溶接線が他の構成部材によって隠されてしまう箇所や、構成部品同士を溶接しようとする溶接トーチに他の構成部品が干渉する箇所の生じることは否めず、これにより全ての構成部材を一括して溶接することは困難であった。
【0007】
すなわち、上記フレーム構造体Hを製造する場合には、先ず、溶接線が隠されたり溶接トーチと干渉したりすることのない構成部材の組合せで仮組みを行い、溶接によって構成部材同士を接合したのち検査を実施する。
【0008】
次いで、他の構成部材同士の溶接線を隠したり、溶接トーチと干渉する等の理由で溶接されていなかった残りの構成部材を仮組みし、溶接によって構成部材同士を接合したのち検査を実施することとなる。
【0009】
このように、従来のフレーム構造体Hを製造する場合には、構成部材の仮組みと溶接と検査との一連の工程を二度に亘って繰り返さねばならず、非効率な作業に伴う工数の増大によって生産性の低下を招く不都合があった。
【0010】
本発明の目的は上記実状に鑑みて、構造体の製造に関わる作業工程、特に溶接工程の大幅な効率化を図り、もって生産効率の向上を達成し得る構造体、構造体の構成部材、および構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく、請求項1の発明に関わる構造体は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体において、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開する特定の構成部材に、上記溶接線を露呈させる開放部を設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明に関わる構造体は、請求項1の発明に関わる構造体において、上記構造体が作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明に関わる構造体の構成部材は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の構成部材であって、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、上記溶接線を露呈させる開放部を有することを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明に関わる構造体の構成部材は、請求項3の発明に関わる構造体の構成部材において、上記構造体が作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明に関わる構造体の製造方法は、複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の製造方法において、接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、上記溶接線を露呈させる開放部を有する構成部材を用いて構造体を仮組みする工程と、仮組みした構造体の溶接線を溶接して所定の構成部材同士を接合する工程とを含んで成ることを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明に関わる構造体の製造方法は、請求項5の発明に関わる構造体の製造方法において、上記構造体が作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に関わる構造体によれば、特定の構成部材に溶接線を露呈させる開放部を設けたことで、構造体を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、構造体の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0018】
請求項2の発明に関わる構造体によれば、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体の生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【0019】
請求項3の発明に関わる構造体の構成部材によれば、溶接線を露呈させる開放部を有していることから、構造体を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、構造体の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0020】
請求項4の発明に関わる構造体の構成部材によれば、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体の生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【0021】
請求項5の発明に関わる構造体の製造方法によれば、構造体を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、構造体の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0022】
請求項6の発明に関わる構造体の製造方法によれば、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体の生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は、油圧ショベル(作業車輌)の運転室を構成するフレーム構造体に、本発明を適用した実施例を示しており、このフレーム構造体(構造体)1における外面の所定箇所に、所要の外装パネルを取付けることで運転席が構成される。なお、油圧ショベルの全体構成は、図10に示した一般的な油圧ショベルAと変わるところはない。
【0024】
上記フレーム構造体1は、ベースフレーム2、左前方ピラー3Lと左ルーフピラー4Lとを一体成形した左サイドフレーム5L、右前方ピラー3Rと右ルーフピラー4Rとを一体成形した右サイドフレーム5R、中間ピラー6、左後方ピラー7Lおよび右後方ピラー7R、前方ルーフビーム8Fおよび中間ルーフビーム8M、上部リヤビーム9T、中間リヤビーム9Mおよび下部リヤビーム9B等、複数の構成部材を具備しており、これら構成部材同士を溶接により接合することで主要の骨格を形成している。
【0025】
すなわち、ベースフレーム2に立設した左サイドフレーム5Lと左後方ピラー7Lの上部とを接合し、かつ左ルーフピラー4Lとベースフレーム2との間に中間ピラー6を接合するとともに、ベースフレーム2に立設した右サイドフレーム5Rと右後方ピラー7Rの上部とを接合し、左サイドフレーム5Lと右サイドフレーム5Rとを、前方ルーフビーム8Fおよび中間ルーフビーム8Mによって接合するとともに、上記左後方ピラー7Lと右後方ピラー7Rとを、上部リヤビーム9T、中間リヤビーム9Mおよび下部リヤビーム9Bによって接合している。
【0026】
さらに、上記フレーム構造体1は、上述した如き主要な骨格を形成する構成部材と併せ、上記骨格に装備品を搭載するためのブラケットや補強用のパッチプレート等、多種多様な複数の構成部材をも具備しており、全ての構成部材を所定の位置態様で組み付け、溶接により互いに接合することによって製造されている。
【0027】
図1〜図3に示す如く、上記フレーム構造体1を構成する中間リヤビーム9Mの上面左右には、左後方ピラー7Lおよび右後方ピラー7Rとの間に、補強用のリブ(構成部材)10、10が夫々取り付けられており、また、上記中間リヤビーム9Mの上面中央には、エアコンディショナ(図示せず)を装着するためのブラケット(構成部材)11が取り付けられている。
【0028】
上記ブラケット11は、中間リヤビーム9Mの長手方向に沿って延在する背板部11Aと、この背板部11Aの上縁から前方へ向けて拡がる上板部11Bとを有しており、上記背板部11Aにおける下方の左右端部には、夫々切欠き(開放部)11a、11aが形成されているとともに、上記上板部11Bにおける前方の左右端部には、夫々切欠き(開放部)11b、11bが形成されている。
【0029】
上記背板部11Aに形成した切欠き11a、11aによって、中間リヤビーム9Mの上面とリブ10の下縁との溶接線、詳しくはフレーム構造体1の外方に臨んだ溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0030】
また、上記上板部11Bに形成した切欠き11b、11bによって、中間リヤビーム9Mの上面とリブ10の下縁との溶接線、詳しくはフレーム構造体1の内方に臨んだ溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0031】
すなわち、背板部11Aに切欠き11a、11aがない場合、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(外方側)の一部が、該溶接線に沿って展開する背板部11Aで隠されるために溶接作業が困難となる。
【0032】
また、上板部11Bに切欠き11b、11bがない場合、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(内方側)に沿って展開する上板部11Bが、上記溶接線にアクセスしようとする溶接トーチと干渉するために溶接作業が困難となる。
【0033】
〔中間リヤビーム9Mとリブ10との外方側溶接線〕
これに対して、背板部11Aに切欠き11a、11aを形成し、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(外方側)を露呈させたことにより、上記切欠き11aを介して容易に溶接トーチWを外方側の溶接線にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接作業を実施することが可能となる。
【0034】
〔中間リヤビーム9Mとリブ10との内側溶接線〕
また、上板部11Bに切欠き11b、11bを形成し、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接線(内方側)を露呈させたことにより、上記切欠き11bを介して容易に溶接トーチWを内方側の溶接線にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、中間リヤビーム9Mとリブ10との溶接作業を実施することができる。
【0035】
一方、図1と図4および図5とに示す如く、ベースフレーム2における前方右隅部には、補強用のパッチプレート(構成部材)12が取り付けられているとともに、上記ベースフレーム2の前部には、ガラス受けパネル(構成部材)13が取り付けられている。
【0036】
上記ガラス受けパネル13の右方下縁部には、切欠き(開放部)13aが形成されており、該切欠き13aには、上記ベースフレーム2に取り付けられたパッチプレート12の前端部12aが嵌合している。
【0037】
ここで、上記ガラス受けパネル13に形成した切欠き13aによって、ベースフレーム2とパッチプレート12の前縁部との溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0038】
すなわち、ガラス受けパネル13に切欠き13aがない場合、ベースフレーム2とパッチプレート12の前縁部との溶接線が、該溶接線に沿って展開するガラス受けパネル13で隠されるために溶接作業が困難となる。
【0039】
これに対して、ガラス受けパネル13に切欠き13aを形成し、ベースフレーム2とパッチプレート12の前縁部との溶接線を露呈させたことにより、構成部材と何ら干渉することなく容易に溶接トーチWを上記溶接線にアクセスさせることができ、もってベースフレーム2とパッチプレート12との溶接作業を確実に実施できる。
【0040】
一方、図6に示す如く、左ルーフピラー4Lには中間ピラー6の上端部が接合されているとともに、上記左ルーフピラー4Lの内方側面(フレーム構造体1の内方に臨んだ側面)には、レール取付板(構成部材)14を介してレール15が取り付けられている。
【0041】
また、上記レール取付板14には、開口(開放部)14oが形成されており、この開口14oによって、左ルーフピラー4Lの下面と中間ピラー6の上端面との溶接線、詳しくはフレーム構造体1の内方に臨んだ溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0042】
すなわち、上記レール取付板14に開口14oがない場合、左ルーフピラー4Lと中間ピラー6との溶接線(内方側)が、該溶接線に沿って展開するレール取付板14で隠されるために溶接作業が困難となる。
【0043】
これに対して、レール取付板14に開口14oを形成し、左ルーフピラー4Lの下面と中間ピラー6の上端面との溶接線を露呈させたことにより、上記開口14oを介して容易に溶接トーチWを上記溶接線(内方側)にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、左ルーフピラー4Lと中間ピラー6との溶接作業を実施することができる。
【0044】
一方、図7および図8に示す如く、右サイドフレーム5Rのフロントインナーパネル(構成部材)5Pには、前方ルーフビーム8Fの端部が取り付けられているとともに、レール取付板(構成部材)14を介してレール15が取り付けられている。
【0045】
また、上記レール取付板14の上縁部には、切欠き(開放部)14aが形成されており、この切欠き14aによって、フロントインナーパネル5Pと前方ルーフビーム8Fのリブ8lとの溶接線が、溶接作業を何ら妨げることなく露呈されることとなる。
【0046】
すなわち、レール取付板14の切欠き14aがない場合、言い換えれば、図中に鎖線で示す位置までレール取付板14の上縁部が在る場合には、フロントインナーパネル5Pとリブ8lとの溶接線に沿って展開するレール取付板14が、上記溶接線にアクセスしようとする溶接トーチと干渉するために溶接作業が困難となる。
【0047】
これに対して、レール取付板14に切欠き14aを形成し、フロントインナーパネル5Pと前方ルーフビーム8Fのリブ8lとの溶接線を露呈させたことにより、上記切欠き14aを介して容易に溶接トーチWを上記溶接線にアクセスさせることができ、もって構成部材と何ら干渉することなく、フロントインナーパネル5Pと前方ルーフビーム8Fとの溶接作業を実施することができる。
【0048】
なお、フレーム構造体1における左サイドフレーム5Lと前方ルーフビーム8Fとの接合部分も、上述した右サイドフレーム5Rと前方ルーフビーム8Fとの接合部分と同様に構成されていることは勿論である。
【0049】
上述した構成のフレーム構造体1を製造する際には、先ず、フレーム構造体1を構成する全ての構成部材を、図示していない治具上において夫々所定の箇所に配置して組み立て、フレーム構造体1の仮組みを行なうとともに、構成部材同士をスポット溶接等で部分的に接合することにより、全ての構成部品の集合体である仮組みフレーム1′(図9参照)を作成する。
【0050】
次いで、治具(図示せず)から取り出した仮組みフレーム1′を、図9に示す如く、溶接装置100のポジショナー101にセットし、上記溶接装置100における溶接ロボット102によって、上記仮組みフレーム1′における溶接線を溶接し、所定の構成部材同士を互いに接合することによって、所期のフレーム構造体1が完成することとなる。
【0051】
因みに、仮組みフレーム1′に対する溶接作業は、上述したロボット溶接のみならず、作業員による手溶接であっても良いことは言うまでもない。
【0052】
上述した実施例の構成によれば、ブラケット11やガラス受けパネル13、あるいはレール取付板等の特定の構成部材に、溶接作業を妨げることなく溶接線を露呈させる開放部(切欠き11a、11b、切欠き13a、開口14o、切欠き14a)を設けたことで、フレーム構造体1を構成する全ての構成部材を所定の箇所に配置して仮組みした状況で、全ての構成部材を一括して溶接することが可能となり、もって溶接工程の大幅な効率化を図ることができるため、フレーム構造体1の製造に関わる生産効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0053】
また、実施例の如くフレーム構造体1を製造することで、フレーム構造体1の全ての構成部材を仮組みする工程と、仮組みした構成部材を溶接により接合する工程とを完全に分離できるため、各工程を集約し得ることから生産性の大幅な向上を図ることが可能となる。
【0054】
ここで、構成部材に溶接線を露呈させる切欠きを形成している技術としては、、例えば特開2000−87462号公報に、建設現場での均一なフランジ溶接を可能とするべく、I型鋼を構成するウェブの上下にスカラップを設けた鋼部材の接合構造が開示されている。
【0055】
しかしながら、本発明が溶接線に沿って展開する構成部材に溶接線を露呈させる開放部を設けているのに対し、上記公報に開示されている構成においては、フランジに対して立設されるウェブの両側から溶接が可能であることと併せ、スカラップを設けたことで溶接が可能となる範囲が極めて狭いことから、上記公報に開示された構成を実施例のフレーム構造体に適用しても、本発明に関わる独自の作用効果を奏し得ないことは明かである。
【0056】
なお、本発明の適用される運転室のフレーム構造体は、実施例の構成に限定されるものではなく、油圧ショベルの大きさやデザインの相違に基づく、様々な構成のフレーム構造体に対しても、本発明を有効に適用し得ることは勿論である。
【0057】
また、上述した実施例においては、油圧ショベルの運転室を構成するフレーム構造体に本発明を適用しているが、上記油圧ショベル以外の様々な作業車輌における運転室のフレーム構造体、さらには運転室のフレーム構造体以外の様々な構造体に対しても、本発明を極めて有効に適用し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を作業車輌における運転室のフレーム構造体に適用した実施例を示す全体外観斜視図。
【図2】(a)および(b)は、図1に示したフレーム構造体の要部背面図および要部断面図。
【図3】(a)および(b)は、図2中の IIIa−IIIa 線断面図および IIIb−IIIb 線断面図。
【図4】図1に示したフレーム構造体における前方側の要部外観斜視図。
【図5】(a)および(b)は、図1に示したフレーム構造体の要部正面図および要部断面図。
【図6】(a)および(b)は、図1に示したフレーム構造体における側部上方の要部を内方から観た図および要部断面図。
【図7】図1に示したフレーム構造体における前部右上方の隅部を内方から観た図。
【図8】(a)および(b)は、図7に示したフレーム構造体における側部前上方の要部を内方から観た図および要部断面図。
【図9】フレーム構造体の製造工程における溶接作業を示す概念図。
【図10】一般的な作業車輌を示す概念的な全体側面図。
【図11】従来の作業車輌における運転室を構成するフレーム構造体および外装パネルを示す外観分解斜視図。
【符号の説明】
【0059】
1…フレーム構造体(構造体)、
2…ベースフレーム(構成部材)、
4L…左ルーフピラー(構成部材)、
5P…フロントインナーパネル(構成部材)、
6…中間ピラー(構成部材)、
8F…前方ルーフビーム(構成部材)、
9M…中間リヤビーム(構成部材)、
10…補強リブ(構成部材)、
11…ブラケット(構成部材)、
11a…切欠き(開放部)、
11b…切欠き(開放部)、
12…パッチプレート(構成部材)、
13…ガラス受けパネル(構成部材)、
13a…切欠き(開放部)、
14…レール取付板(構成部材)、
14a…切欠き(開放部)、
14o…開口(開放部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体において、
接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開する特定の構成部材に、前記溶接線を露呈させる開放部を設けたことを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記構造体が、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴とする請求項1記載の構造体。
【請求項3】
複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の構成部材であって、
接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、前記溶接線を露呈させる開放部を有することを特徴とする構造体の構成部材。
【請求項4】
前記構造体が、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴とする請求項3記載の構造体の構成部材。
【請求項5】
複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の製造方法において、
接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、前記溶接線を露呈させる開放部を有する構成部材を用いて構造体を仮組みする工程と、
仮組みした構造体の溶接線を溶接して所定の構成部材同士を接合する工程と、
を含んで成ることを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項6】
前記構造体が、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴とする請求項5記載の構造体の製造方法。
【請求項1】
複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体において、
接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開する特定の構成部材に、前記溶接線を露呈させる開放部を設けたことを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記構造体が、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴とする請求項1記載の構造体。
【請求項3】
複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の構成部材であって、
接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、前記溶接線を露呈させる開放部を有することを特徴とする構造体の構成部材。
【請求項4】
前記構造体が、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴とする請求項3記載の構造体の構成部材。
【請求項5】
複数の構成部材を相互に組み付け、所定の構成部材同士を溶接により接合して成る構造体の製造方法において、
接合される構成部材同士の溶接線に沿って展開し、前記溶接線を露呈させる開放部を有する構成部材を用いて構造体を仮組みする工程と、
仮組みした構造体の溶接線を溶接して所定の構成部材同士を接合する工程と、
を含んで成ることを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項6】
前記構造体が、作業車輌の運転室を構成するフレーム構造体であることを特徴とする請求項5記載の構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−321371(P2006−321371A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146609(P2005−146609)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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