説明

槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置

【課題】槽内攪拌装置からの吐出反力や衝撃によって着脱フランジ部と固定側フランジ部との接続がずれることを防止する。
【解決手段】ポンプ槽1内に着脱自在に設置される水中ポンプ本体3と、水槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置4とを備えた槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置2であって、水中ポンプ本体3に設けられ、水中ポンプ本体3がポンプ槽1内に設置されるときにポンプ槽1内に設けられた固定排出管6の基端フランジ部18に当接して接続される着脱フランジ部16と、着脱フランジ部16に設けられ、着脱フランジ部16が基端フランジ部18と当接するときに基端フランジ部18の上端縁と係合して着脱フランジ部16と基端フランジ部18との当接状態を保持するフック17とをさらに備え、水中ポンプ本体3には、着脱フランジ部16を基端フランジ部18に押し付けるモーメントを生じさせるウェイト部材34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中ポンプ本体と、運転開始時に一定時間噴流を吐出して水槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置とを備えた槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転開始時に一定時間噴流を吐出して水槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置を備えた水中ポンプ装置が知られている。例えば、特許文献1に係る水中ポンプ装置は、水中ポンプのポンプケーシング側面に取り付けられた槽内攪拌装置を備えている。また、特許文献2に係る水中ポンプ装置は、水中ポンプの吐出側に連結されて、水槽内の排水管に接合される着脱フランジ部の側面に取り付けられた槽内攪拌装置を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1,2に係る水中ポンプ装置においては、水中ポンプ装置の運転開始時に一定時間、水中ポンプの吐出流の一部又は全部を該槽内攪拌装置を用いて槽内に吐出させて槽内の攪拌を行う。この槽内攪拌装置の内部にはボール弁が設けられており、水中ポンプ装置の運転開始後しばらく経つと、ボール弁が閉じられ、槽内攪拌装置からの噴流の吐出が停止される。このように、槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置は、運転開始後の一定時間だけ槽内攪拌装置から噴流を吐出させて、水槽内の砂、汚泥、浮遊油脂、スカム等を攪拌して、その後のポンプ運転によって該砂等を下水と共に水槽外に排出することができる。よって、水槽内に砂や汚泥が滞留ないしは堆積したり、浮遊油脂やスカムが槽壁等に固着することが抑制され、槽内攪拌装置によって槽内が洗浄される効果が得られる。
【0004】
この水中ポンプ装置は、水槽の上方から水槽内に降ろされ、水中ポンプ本体の吐出部に設けられた着脱フランジ部を、水槽内に固定された排水部に設けられた固定側フランジ部に接続させることによって、水槽内に設置される。詳しくは、前記着脱フランジ部の上部に係合保持部が設けられており、該着脱フランジ部を前記固定側フランジ部と当接させると共に、そのときに前記係合部を該固定側フランジ部の上縁部に係合させることによって着脱フランジ部と固定側フランジ部とを密に当接させた状態で接続する。
【特許文献1】実開平11−86号公報
【特許文献2】特許第3570861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記槽内攪拌装置によって噴流を水槽内に吐出するときには、その反力が水中ポンプ本体に作用する。また、前記槽内攪拌装置の吐出停止に伴ってボール弁が閉じられるときには、ボール弁が閉じられるときの衝撃が水中ポンプ本体に作用する。水中ポンプ装置は、着脱フランジ部の係合保持部が固定側フランジ部の上端縁部に係合することによって固定側フランジ部に接続されているだけなので、槽内攪拌装置の反力や衝撃が水中ポンプ本体に作用すると、水中ポンプ本体に着脱フランジ部の軸回りのモーメントが作用し、水中ポンプ装置が該軸回りに回動する虞がある。その結果、着脱フランジ部が固定フランジ部に対してずれて、水漏れが生じ、水中ポンプ装置のポンプ効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、槽内攪拌装置からの吐出反力や衝撃によって着脱フランジ部と固定側フランジ部との接続がずれることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべく、水中ポンプ本体に、着脱フランジ部を前記固定側フランジ部に押し付けるモーメントを生じさせるウェイト部材を設けるようにしたものである。
【0008】
詳しくは、第1の発明は、水槽内に着脱自在に設置される水中ポンプ本体と、該水中ポンプ本体の運転開始時に一定時間噴流を吐出して水槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置とを備えた槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置が対象である。そして、前記水中ポンプ本体に設けられ、該水中ポンプ本体が水槽内に設置されるときに水槽内に設けられた排水部の固定側フランジ部に当接して接合される着脱フランジ部と、該着脱フランジ部に設けられ、該着脱フランジ部が前記固定側フランジ部と当接するときに該固定側フランジ部の上端縁と係合して該着脱フランジ部と固定側フランジ部との当接状態を保持する係合保持部とをさらに備え、前記水中ポンプ本体には、前記着脱フランジ部を前記固定側フランジ部に押し付けるモーメントを生じさせるウェイト部材が設けられているものとする。
【0009】
前記の構成の場合、前記ウェイト部材によって前記着脱フランジ部には前記固定側フランジ部に押し付けられる方向のモーメントが作用するため、槽内攪拌装置の作動に伴ってその噴流の吐出反力が着脱フランジ部に作用した場合であっても、槽内攪拌装置が作動状態から停止状態に移行したときの衝撃が着脱フランジ部に作用した場合であっても、着脱フランジ部と固定側フランジ部との接続がずれることを防止することができる。
【0010】
このように、槽内攪拌装置の作動に伴う吐出反力、衝撃により着脱フランジ部が固定側フランジ部に対してずれることが防止されるため、着脱フランジ部からの水漏れが防止され、水中ポンプ装置の効率が低下することを防止することができ、また、着脱フランジ部及び固定側フランジ部の耐久性、特に着脱フランジ部と固定側フランジ部との当接面の耐久性を向上させることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記ウェイト部材は、平面視で前記水中ポンプ本体の重心を挟んで、前記着脱フランジ部とは対向する位置に設けられているものとする。
【0012】
前記の構成の場合、前記ウェイト部材の着脱フランジ部からの距離が長くなるため、着脱フランジ部により大きなモーメントを作用させることができる。つまり、ウェイト部材を平面視で水中ポンプ本体の重心を挟んで着脱フランジ部と対向する位置に配置することによって、より効果的に着脱フランジ部のずれを防止することができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ウェイト部材は、前記水中ポンプ本体の底部に設けられているものとする。
【0014】
前記の構成の場合、前記ウェイト部材が水中ポンプ本体の底部に設けられているため、水中ポンプ本体の安定性を向上させることができる。つまり、ウェイト部材を水中ポンプ本体の上部に取り付けると、水中ポンプ装置の重心が上方に位置することになるため、水中ポンプ装置の安定性が低下する。その結果、水中ポンプ装置を水槽内から取り出して地面に置く場合に、該水中ポンプ装置が容易に転倒してしまう。それに対して、本発明は、ウェイト部材を水中ポンプ本体の底部に設けることによって、該ウェイト部材を含めた水中ポンプ装置の重心が下方に移動するため、該水中ポンプ装置の安定性を向上させることができる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、前記水中ポンプ本体は、その底面に吸込口が設けられていると共に、該吸込口の外周囲に少なくとも1つの脚部が設けられており、前記ウェイト部材は、前記水中ポンプ本体の底部において前記吸込口の外周囲に設けられており、前記吸込口の外周囲において、前記脚部と前記ウェイト部材との間には隙間が設けられているものとする。
【0016】
前記の構成の場合、水中ポンプ本体の底面には水槽内の水を吸い込むための吸込口が設けられていると共に、該吸込口の外周囲に水中ポンプ本体の脚部と前記ウェイト部材とが設けられている。つまり、吸込口の外周囲が脚部やウェイト部材で囲まれているため、吸込口から下水や該下水に含まれる汚泥等の異物を吸い込む際に、該脚部やウェイト部材が邪魔になる。特に、水中ポンプ装置が水槽内の底面近傍に設置され、該脚部やウェイト部材と水槽の底面との隙間が小さい場合には問題となる。そこで、本発明は、吸込口の外周囲において、脚部及びウェイト部材で吸込口の全周を囲むのではなくて、脚部とウェイト部材との間に隙間を設けるようにしたものである。こうすることによって、下水や該下水に含まれる異物を脚部とウェイト部材との隙間を通過させて、吸込口から吸い込むことができ、下水や異物の排出を円滑に行うことができる。
【0017】
第5の発明は、第4の発明において、前記脚部と前記ウェイト部材との隙間は、前記吸込口の口径よりも大きいものとする。
【0018】
前記の構成の場合、一般的に、通過粒径100%の水中ポンプ本体では吸込口の口径と同じ大きさの異物までは吸い込むことができるように構成されている。そこで、前記脚部とウェイト部材との隙間を該吸込口の口径よりも大きくすることによって、少なくとも該吸込口の口径と同じ大きさの異物までは該隙間を通過させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水中ポンプ本体に着脱フランジ部を前記固定側フランジ部に押し付けるモーメントを生じさせるウェイト部材を設けることによって、該着脱フランジ部が固定側フランジ部に強く押し付けられるため、槽内攪拌装置の吐出反力や衝撃が水中ポンプ本体に作用しても、水中ポンプ装置が着脱フランジ部の軸を中心に回動して着脱フランジ部と固定側フランジ部との接続がずれることを防止することができる。その結果、該着脱フランジ部と固定側フランジ部との当接面からの水漏れを防止して、水中ポンプ装置のポンプ効率が低下することを防止することができる。
【0020】
第2の発明によれば、ウェイト部材を、平面視で水中ポンプ本体の重心を挟んで着脱フランジ部と対向する位置に設けることによって、ウェイト部材と着脱フランジ部との距離が長くなるため、着脱フランジ部により大きなモーメント、即ち、より大きな固定側フランジ部への押し付け力を作用させることができる。
【0021】
第3の発明によれば、ウェイト部材を水中ポンプ本体の底部に設けることによって、水中ポンプ装置の安定性を向上させることができる。
【0022】
第4の発明によれば、水中ポンプ本体の底部に形成された吸込口の外周囲に脚部及びウェイト部材を設ける構成において、該脚部とウェイト部材との間に隙間を設けることによって、下水や該下水に含まれる異物を該隙間を通過させて吸込口から吸い込むことができる。
【0023】
第5の発明によれば、吸込口の外周における脚部とウェイト部材との隙間を、吸込口の口径よりも大きくすることによって、少なくとも該口径と同じ大きさの異物、即ち、水中ポンプ本体が想定している大きさの異物までは、脚部とウェイト部材との隙間を通過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1において、1は下水中継ポンプ槽(以下、ポンプ槽という)、2は水中ポンプ本体3に槽内攪拌装置4が付設された槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置(以下、水中ポンプ装置という)である。流入口5よりポンプ槽1内に流入した下水は、水中ポンプ装置2の作動により、固定排出管6から排出される。この水中ポンプ装置2の作動のために、ポンプ槽1内に水圧センサ7が設けられていると共に、ポンプ槽1の上方に制御盤10が設けられている。つまり、制御盤10は、水圧センサ7の検出結果に基づいて、ポンプ槽1内の水量が所定の運転水量以上になると、水中ポンプ装置2を作動させて下水の排出を行うと共に、該ポンプ槽1内の水量が所定の停止水量以下となると、水中ポンプ装置2の作動を停止させる。
【0026】
水中ポンプ装置2は、下水中継ポンプ槽1のマンホール11よりガイドパイプ12を伝って槽内底部に降ろされ、着脱装置13により該下水中継ポンプ槽1に着脱自在に設置される。水中ポンプ装置2の昇降のためにマンホール11の蓋14と水中ポンプ本体3とが昇降用チェーン15によって連結されている。昇降用チェーン15は水中ポンプ装置2の重心を通る垂直線上で水中ポンプ本体3の頂面部に接続されている。
【0027】
前記水中ポンプ本体3は、図2,4に示すように、ポンプケーシング3aの底部に下水を吸い込む吸込口31が形成される一方、ポンプケーシング3aの側部に下水を吐き出す吐出部32が形成されている。また、水中ポンプ本体3は、ポンプケーシング3aの底部に脚部33とウェイト部材34とが設けられている。水中ポンプ本体3は、地上に引き上げたとき等に、この脚部33及びウェイト部材34によって地面等の上で自立することができる。つまり、ウェイト部材34は、脚部としての機能も果たす。尚、図2においては、槽内攪拌装置4を省略している。
【0028】
前記脚部33は、図2,4に示すように、ポンプケーシング3aの底部において吸込口31の外周囲であって、後述するケーシング側吐出部21の下方位置に設けられている。
【0029】
また、前記ウェイト部材34は、ポンプケーシング3aの底部において吸込口31の外周囲であって、該吸込口31を挟んで脚部33と対向する位置に設けられている。すなわち、ウェイト部材34は、図3に示すように、平面視で、水中ポンプ本体3の重心Gを挟んで着脱フランジ部16と対向する位置に設けられている。このウェイト部材34は、平面視円弧状をしている。また、ウェイト部材34は、図5に示すように、断面略方形状をしており、ポンプケーシング3aと一体形成されている。尚、ウェイト部材34は、ポンプケーシング3aと別体で形成され、ボルト等で締結される構成であってもよい。
【0030】
そして、吸込口31の外周囲において、前記脚部33とウェイト部材34との間には、隙間D,Dが設けられている。この各隙間Dは、吸込口31の口径よりも大きな値となっている。
【0031】
前記吐出部32は、図2,3に示すように、水中ポンプ本体3のポンプケーシング3aより側方へ突出したケーシング側吐出部21と、該ケーシング側吐出部21に接続された着脱用接続管22とによって構成されている。この着脱用接続管22には、該吐出部32を固定排出管6に接続するための着脱フランジ部16と、ガイドパイプ12,12にそれぞれ摺動自在に係合するガイド24,24が設けられている。
【0032】
前記着脱フランジ部16の上部にはフック17が設けられている。これら着脱フランジ部16とフック17と前記固定排出管6の基端フランジ部18とが前記着脱装置13を構成する。この着脱装置13は、水中ポンプ装置2をポンプ槽1内に固定された固定排出管6に結合するものであり、この結合により、水中ポンプ装置2はポンプ槽1内に設置される。
【0033】
詳しくは、図2に示すように、フック17は、着脱フランジ部16の上部から基端フランジ部18側に突出した後、下方に屈曲した鉤形状をしている。固定排出管6の基端フランジ部18の上端縁部には当該フック17が係合する係合部18aが形成されている。フック17及び係合部18aの互いの当接面には、前記係合を案内すると共に前記フランジ部16,18同士を密に接続するために、傾斜面が形成されている。前記フック17が係止保持部を、基端フランジ部18が固定側フランジ部をそれぞれ構成する。
【0034】
この着脱装置13の着脱動作について説明すると、まず、水中ポンプ装置2をガイドパイプ12,12に沿って上方からポンプ槽1内に降ろすことによって、フック17が基端フランジ部18の係合部18aに対して上方から係合し始める。
【0035】
水中ポンプ装置2をさらに降ろすと、フック17と係合部18aとは前記傾斜面に沿って摺動する。こうしてフック17が係合部18aに対して摺動するにしたがって、着脱フランジ部16には基端フランジ部18側へ押し付ける方向の力が作用する。これにより、着脱フランジ部16と基端フランジ部18とは密着して接続される。そして、フック17が係合部18aに完全に嵌ったところで、着脱装置13による装着が完了する。このとき、該水中ポンプ装置2の自重によりフック17を中心として着脱フランジ部16を固定排出管6の基端フランジ部18に押し付ける方向のモーメントが働いており、着脱フランジ部16と基端フランジ部18とは隙間なく接続される。
【0036】
このように、水中ポンプ装置2は、ポンプ槽1内に設置されているときには、固定排出管6に支持されている。この固定排出管6が排水部を構成する。
【0037】
尚、着脱装置13を取り外すときには、水中ポンプ装置2を上方に引き上げることによって、フック17と係合部18aとの係合がはずれ、水中ポンプ装置2と固定排出管6との結合が解除される。
【0038】
次に、槽内攪拌装置4について説明する。この槽内攪拌装置4は、水中ポンプ装置2の運転開始時、水中ポンプ本体3の吐出流の一部又は全部を槽内に吐出させるものである。槽内攪拌装置4は、図3,4,6に示すように、水中ポンプ本体3のポンプケーシング3aに取り付けられるケーシング本体45と、その下側に結合されたダイヤフラムカバー46と、ケーシング本体45の上側に保護カバー47とを有している。
【0039】
ケーシング本体45とダイヤフラムカバー46とよりなるケーシング40内は、図6に示すように、下部ダイヤフラム48によって、ボール弁49を収容する上部の弁収容部51とオイルを収容する下部オイル室52とに区画形成されている。下部ダイヤフラム48はその周縁部がケーシング本体45とダイヤフラムカバー46とに挟持されている。
【0040】
一方、ケーシング本体45の頂部には内方に陥没する凹部が形成されていて、該凹部の周縁部と保護カバー47との間に上部ダイヤフラム53の周縁部が挟持されて、該ケーシング本体45の凹部と上部ダイヤフラム53とによって上部オイル室54が形成されている。保護カバー47は上部ダイヤフラム53を保護するものである。
【0041】
下部オイル室52と上部オイル室54とは、ケーシング本体45及びダイヤフラムカバー46に形成されたオイル通路55によって連通し、ダイヤフラムカバー46にオイル通路55のオイル流量を調整する調整弁56が取付けられている。
【0042】
ケーシング本体45の上部には、水中ポンプ本体3の噴流を該ケーシング本体45内部に導入するための流入部41が設けられている。ケーシング本体45を流入部41の上流端に形成されたフランジ41aによって水中ポンプ本体3のポンプケーシング3aに取り付けられる。そして、流入部41の内部には、水中ポンプ本体3と弁収容部51とを連通させる噴流用通路57が形成されており、この噴流用通路57を介して、水中ポンプ本体3から弁収容部51へ噴流が流入する。
【0043】
一方、ケーシング本体45の上部における、弁収容部51を挟んで流入部41の反対側には、該流入部41から流入した噴流を外部に吐出する吐出部42が設けられている。この吐出部42の内部には、噴孔58が形成されている。この吐出部42は、噴流をポンプ槽1内に吐出するノズル43とを備える。また、噴孔58の基端(弁収容部51側)には弁座59が設けられている。
【0044】
前記ダイヤフラムカバー46は、ケーシング40の底壁を構成し、この底壁は下部ダイヤフラム48を底壁に沿わせて収めるべく下方へ突出した凸曲面状に形成されている。そうして、該底壁の周囲に、当該槽内攪拌装置4を平坦面上で自立させる設置部を構成する3本の脚部44,44が設けられている(図6では2本のみ図示)。
【0045】
そして、前記3本の脚部44のうちの1つの脚部44の内側には、該脚部44の上部と凸曲面状底壁との間に亘って延びる下方へ膨出した膨出部が形成され、当該脚部44と膨出部とによって前記調整弁56の取付部44aが形成されている。すなわち、当該脚部44の外面から膨出部へ延びる調整弁取付孔が形成され、該取付孔に調整弁56が差し込まれている。
【0046】
このように構成された前記槽内攪拌装置4の作動について説明すると、ポンプ始動前は、図6の実線で示すように、ボール弁49が弁収容部51の下方にあって噴孔58は開状態にある。この状態で水中ポンプ本体3を始動すると、吸込口31からポンプ槽1内の下水がポンプケーシング3aに吸い込まれ、その下水の一部が流入部41の噴流用通路57より弁収容部51に流入し、ノズル43からポンプ槽1内へ吐出される。これにより、槽内の砂、汚泥、浮遊油脂、スカム等は、前記噴流によって攪拌される。ポンプケーシング3aに吸い込まれた下水の残りは、固定排出管6へ送り込まれ排水される。
【0047】
そして、弁収容部51を下水が通過することにより該弁収容部51に負圧が発生し、この負圧によって下部ダイヤフラム48が弁収容部51内側に没入するように上昇する。そして、下部ダイヤフラム48の上昇によってオイルが上部オイル室54から下部オイル室52に移動するとともに、上部ダイヤフラム53が上部オイル室54内側に没入するように下降する。こうして、下部ダイヤフラム48が上昇することにより、ボール弁49が持ち上がり始める(図6の二点鎖線参照)。
【0048】
運転開始から約20〜50秒経過すると、下部ダイヤフラム48は上方に突出した状態になり、ボール弁49は下部ダイヤフラム48に押し上げられ弁座59に当接して噴孔58を閉じる(図6の一点鎖線参照)。これにより、ノズル43からの下水の吐出が停止され、ポンプケーシング3aに吸い込まれた全ての下水が着脱用接続管22から固定排出管6へ流れるようになる。一方、弁収容部51内は、ボール弁49が弁座59に押し当てられた状態で正圧になり、下部ダイヤフラム48に押し下げる方向の力が作用するため、上部ダイヤフラム53、下部ダイヤフラム48及びオイルはポンプ始動前の状態に戻る。ポンプ作動が停止すると、ボール弁49は弁座59から離脱して下部ダイヤフラム48の上に落ちる。
【0049】
このように、水中ポンプ本体3の運転開始後の一定時間は、槽内攪拌装置4によってポンプ槽1内が攪拌される。そして、槽内の砂、汚泥、浮遊油脂、スカム等を含んだ状態の下水が水中ポンプ本体3の吸込口31から吸い込まれ、固定排出管6から排出される。このため、水槽内に砂や汚泥が滞留ないしは堆積したり、浮遊油脂やスカムが槽壁等に固着することが抑制される。
【0050】
その一方で、槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置2は、槽内攪拌装置4から噴流を吐出するときにその吐出反力が水中ポンプ本体3に作用する。また、該槽内攪拌装置4のボール弁49が閉じられるときの衝撃も水中ポンプ本体3に作用する。これらの反力や衝撃によって、水中ポンプ本体3には、着脱フランジ部16の軸L(詳しくは、フック17と係合部18aとの当接面を通り且つ軸Lと平行な軸)回りのモーメントが発生する。かかるモーメントが作用すると、特に水中ポンプ本体3が軽量の場合には、該水中ポンプ本体3が軸L回りに回動して、着脱フランジ部16が基端フランジ部18に対してずれる虞がある。
【0051】
ところが、本実施形態では、水中ポンプ本体3に前記ウェイト部材34を設けているため、水中ポンプ本体3が槽内攪拌装置4からの反力や衝撃を受けても、着脱フランジ部16が基端フランジ部18に対してずれないようになっている。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、前記ウェイト部材34を設けることによって、水中ポンプ装置2には前記フック17を中心に下方へのモーメントが発生する。その結果、着脱フランジ部16が基端フランジ部18に押し付けられる。つまり、水中ポンプ装置2の自重に加えてウェイト部材34の重さによって着脱フランジ部16が基端フランジ部18に強く押し付けられ、両者の接続がより確実なものになる。こうすることで、水中ポンプ本体3に槽内攪拌装置4からの反力や衝撃が作用しても、着脱フランジ部16が基端フランジ部18に対してずれることを防止することができ、その結果、着脱装置13における水漏れを防止して、水中ポンプ装置2のポンプ効率が低下することを防止することができる。
【0053】
さらに、前記ウェイト部材34を、平面視で水中ポンプ本体3の重心Gを挟んで着脱フランジ部16と対向する位置に設けることによって、ウェイト部材34と着脱フランジ部16との距離が長くなり、着脱フランジ部16に作用するモーメントを大きくすることができる。その結果、着脱フランジ部16が基端フランジ部18に対してずれることをより効果的に防止することができる。
【0054】
また、このようにポンプケーシング3aの底部に脚部33及びウェイト部材34を設ける構成においては、ポンプケーシング3aの底部に設けられた吸込口31から下水及び下水に含まれる異物を吸い込む際に該脚部33及びウェイト部材34が邪魔になる虞がある。特に、図1に示すように、水中ポンプ装置2がポンプ槽1内の底面近傍に設けられている場合には、脚部33及びウェイト部材34とポンプ槽1の底面との間隔が僅かしかなく、その間隔を介して下水を吸い込むことはできても、下水に含まれる異物は脚部33やウェイト部材34の下端に引っ掛かって吸込口31から吸い込むことができない。
【0055】
そこで、本実施形態では、前述の如く、吸込口31の外周囲において脚部33とウェイト部材34との間に隙間D,Dを設けることによって、下水や下水に含まれる異物を該隙間D,Dを介して吸込口31から吸い込むことができる。
【0056】
また、本水中ポンプ本体3は、吸込口31の口径の大きさの異物までなら吸い込むことができるように構成された通過粒径100%の水中ポンプである。そこで、前記実施形態では、前記脚部33とウェイト部材34との隙間D,Dを該口径よりも大きくすることによって、少なくとも、該口径と同じ大きさ、即ち、水中ポンプ本体3が想定する大きさの異物までは、該隙間D,Dを通過させることができる。
【0057】
さらに、前記ウェイト部材34は、ポンプケーシング3aの底部に設けられているため、水中ポンプ装置2の重心が下方に移動し、水中ポンプ装置2を地上等に引き上げたときに、安定して自立させることができる。つまり、前記槽内攪拌装置4は、ポンプケーシング3aから側方に突出するように設けられているため、水中ポンプ装置2の重心は槽内攪拌装置4が突出する側に若干移動し、その結果、該水中ポンプ装置2には槽内攪拌装置4側へ転倒する方向のモーメントが作用する。ただし、該モーメントの大きさと水中ポンプ本体3の自重との関係により、水中ポンプ装置2は転倒せずに自立している。しかしながら、ウェイト部材34をポンプケーシング3aの上部に設けると、槽内攪拌装置4の側へずれている水中ポンプ装置2の重心が上方に移動することになり、その結果、水中ポンプ装置2に作用する、槽内攪拌装置4の側へ転倒する方向のモーメントが大きくなり、水中ポンプ装置2が転倒してしまう虞がある。それに対し、前記実施形態では、ウェイト部材34をポンプケーシング3aの底部に設けることによって、槽内攪拌装置4の側にずれた水中ポンプ装置2の重心を下方に移動させて、水中ポンプ装置2の安定感を向上させることができ、水中ポンプ装置2の転倒を防止することができる。
【0058】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0059】
前記実施形態では、槽内攪拌装置4をポンプケーシング3aに取り付けているが、これに限られるものではない。例えば、図7〜9に示すように、槽内攪拌装置4をケーシング側吐出部21と着脱用接続管22との間に挟持して設けるように構成してもよい。すなわち、槽内攪拌装置4には連結部23が一体に形成されており、この連結部23をケーシング吐出部21の下流側フランジ部21aと着脱用接続管22の上流側フランジ部22aとで挟持することによって槽内攪拌装置4が水中ポンプ本体3に取り付けられている。つまり、着脱用接続管22は、該槽内攪拌装置4、詳しくは連結部23を介して水中ポンプ本体3に設けられている。尚、連結部23内には、ケーシング吐出部21内の噴流通路と着脱用接続管22内の噴流通路と槽内攪拌装置4の流入部41とを連通させる連通路が形成されている。
【0060】
また、連結部23には、槽内攪拌装置4とは反対側にカウンタウェイト35が設けられている。このカウンタウェイト35は、槽内攪拌装置4の自重によって着脱フランジ部16の軸線L(紙面に直交する方向に延びる軸)回りに作用するモーメントを打ち消すためのウェイトである。このカウンタウェイト35を設けることによって、水中ポンプ装置2をポンプ槽1内に降ろしていくときに、水中ポンプ装置2が傾くことが防止され、ガイドパイプ12,12による案内を円滑に行うことができる。つまり、カウンタウェイト35によって槽内攪拌装置4の自重に起因するモーメントを抑制し、ウェイト部材34によって槽内攪拌装置4の吐出反力や衝撃に起因するモーメントを抑制することができる。
【0061】
尚、前記実施形態では、ウェイト部材34をポンプケーシング3aの底部に設けているが、これに限られるものではない。すなわち、着脱フランジ部16を基端フランジ部18に押し付けるモーメントを生じさせる位置であれば、例えばポンプケーシング3aの側部や上部等、任意の位置に設けることができる。
【0062】
また、ウェイト部材34の形状は、前述の円弧形状及び断面方形状に限られず、任意の構成を採用することができる。さらに、ウェイト部材34は1つである必要はなく、複数個設けてもよい。さらにまた、前記実施形態では、ウェイト部材34とは別に脚部33を設けているが、該脚部33をウェイト部材で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】実施形態の水中ポンプ装置の水槽内での設置状態を示す一部省略した側面図である。
【図3】水中ポンプ装置の平面図である。
【図4】水中ポンプ装置の底面図である。
【図5】ウェイト部材を示す図4のV−V線における断面図である。
【図6】槽内攪拌装置を示す一部省略した断面図である。
【図7】その他の実施形態の水中ポンプ装置の水槽内での設置状態を側面図である。
【図8】水中ポンプ装置の吐出部を示す正面図である。
【図9】水中ポンプ装置の平面図である。
【符号の説明】
【0064】
16 着脱フランジ部
17 フック(係合保持部)
18 基端フランジ部(固定側フランジ部)
2 水中ポンプ装置
3 水中ポンプ本体
31 吸込口
33 脚部
34 ウェイト部材
4 槽内攪拌装置
6 固定排出管(排水部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に着脱自在に設置される水中ポンプ本体と、該水中ポンプ本体の運転開始時に一定時間噴流を吐出して水槽内の撹拌を行なう槽内攪拌装置とを備えた槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置であって、
前記水中ポンプ本体に設けられ、該水中ポンプ本体が水槽内に設置されるときに水槽内に設けられた排水部の固定側フランジ部に当接して接続される着脱フランジ部と、
該着脱フランジ部に設けられ、該着脱フランジ部が前記固定側フランジ部と当接するときに該固定側フランジ部の上端縁と係合して該着脱フランジ部と固定側フランジ部との当接状態を保持する係合保持部とをさらに備え、
前記水中ポンプ本体には、前記着脱フランジ部を前記固定側フランジ部に押し付けるモーメントを生じさせるウェイト部材が設けられていることを特徴とする槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置において、
前記ウェイト部材は、平面視で前記水中ポンプ本体の重心を挟んで、前記着脱フランジ部とは対向する位置に設けられていることを特徴とする槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置において、
前記ウェイト部材は、前記水中ポンプ本体の底部に設けられていることを特徴とする槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置において、
前記水中ポンプ本体は、その底面に吸込口が設けられていると共に、該吸込口の外周囲に少なくとも1つの脚部が設けられており、
前記ウェイト部材は、前記水中ポンプ本体の底部において前記吸込口の外周囲に設けられており、
前記吸込口の外周囲において、前記脚部と前記ウェイト部材との間には隙間が設けられていることを特徴とする槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置において、
前記脚部と前記ウェイト部材との隙間は、前記吸込口の口径よりも大きいことを特徴とする槽内攪拌装置付き水中ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−25513(P2008−25513A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201115(P2006−201115)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】