説明

樹脂カバーの取付構造

【課題】部品点数が少なく、見栄えが良好な樹脂カバーの取付構造を提供する。
【解決手段】樹脂カバー取付構造1は、取付孔10Aを有する取付対象物10と、取付孔10Aに螺着され取付対象物10に固定されるねじ部材12と、取付対象物10に固定されたねじ部材12に取り付けられる樹脂カバー14とにより構成される。樹脂カバー14は、ねじ部材12の頭部12Aが樹脂カバー14の凹部14Aに嵌入されることによって、ねじ部材12に取り付けられる。樹脂カバー14の凹部14Aの開口端の内径aは、ねじ部材12の頭部12Aの最大外径bよりも小さい。ねじ部材12の頭部12Aは、頭部12Aの底面側から頂面側に向かって拡径する第1テーパ部12Bを有し、樹脂カバー14の凹部14Aは、凹部14Aの開口端側から奥方向に向かって拡径し、ねじ部材12の頭部12Aの第1テーパ部12Bに対応したテーパ形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂カバーの取付構造に係り、特に、取付対象物の開口部を閉じたり、取付対象物の見栄えが悪い部分(隙間等)を隠す目的で取付対象物に樹脂カバーを取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、取付対象物の開口部を閉じたり、取付対象物の見栄えが悪い部分(隙間等)を隠す目的で取付対象物に樹脂カバーを取り付けることが一般に行われている。
【0003】
取付対象物への樹脂カバーの固定手法には、例えば、取付対象物及び樹脂カバーに取り付けたロックファスナー(面ファスナー)を貼り合せたり、取付対象物及び樹脂カバーの一方に設けた爪部を他方に設けた穴に嵌合させる方法がある。
【0004】
しかしながら、ロックファスナーを用いると、任意の位置で貼り合せることができてしまうため、取付対象物と樹脂カバーとの合い沿いにばらつきが生じたり、ロックファスナーの固定力が十分でなくロックファスナーが剥がれてしまうことがある。また、取付対象物及び樹脂カバーを爪部と穴の嵌合により固定する場合、取付対象物及び樹脂カバーを高精度に加工して、爪部と穴の嵌合調整を行う必要がある。
【0005】
そこで、取付対象物と樹脂カバーとをねじ止めにより固定することが考えられる。
【0006】
例えば、特許文献1には、ハウジングにカバー体をねじ止めで固定することで、ハウジングの開口部を閉じるようにしたカバー取付構造が記載されている。また、このカバー取付構造では、カバー体に形成されたねじ装着穴をキャップで閉塞することで、カバー体のハウジングへの固定に用いたねじをキャップで覆うようになっている。
【0007】
また、カバー取付構造ではないが、特許文献2及び3には、ねじ取付部をキャップで覆うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−47011号公報
【特許文献2】実開昭59−52271号公報
【特許文献3】実開昭62−151418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたカバー取付構造は、ハウジングにカバー体をねじ止めで固定するとともに、カバー体に形成されたねじ装着穴をキャップで閉塞しているため、部品点数が多く、製造コストがかさんでしまう。
【0010】
また、カバー体に形成されたねじ装着穴をキャップで閉塞しているが、カバー体とキャップとが別体であるため、両者の間の境界線が目立ってしまい、見栄えが十分に良いとはいえなかった。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、部品点数が少なく、見栄えが良好な樹脂カバーの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る樹脂カバーの取付構造は、取付孔を有する取付対象物と、頭部が該頭部の底面側から頂面側に向かって拡径する第1テーパ部を有し、先端部が前記取付孔に螺着され前記取付対象物に固定されるねじ部材と、前記ねじ部材の前記頭部が嵌入される凹部を有し、該凹部が前記ねじ部材の前記頭部の前記第1テーパ部を係止することで前記ねじ部材に固定される樹脂カバーとを備え、前記樹脂カバーの前記凹部は、前記ねじ部材の前記頭部の最大外径よりも小径の開口端を有するとともに、該開口端側から奥方向に向かって拡径し、前記ねじ部材の前記頭部の前記第1テーパ部に対応したテーパ形状を有し、前記樹脂カバーは、前記凹部の前記開口端の周囲が少なくとも一箇所切り欠かれていることを特徴とする。
【0013】
上記樹脂カバーの取付構造では、取付対象物の取付孔に螺着されたねじ部材の頭部を、樹脂カバーの凹部に嵌入することによって、ねじ部材が樹脂カバーの凹部で閉塞されるとともに、ねじ部材を介して樹脂カバーが取付対象物に固定される。
【0014】
このように、ねじ部材の頭部を樹脂カバーの凹部に嵌入して樹脂カバーを取付対象物に固定するようにしたので、従来のカバー取付構造においてねじ部材を閉塞するために用いていたキャップを省略して、部品点数を減らすことができる。
【0015】
また、従来のように樹脂カバーと別体のキャップでねじ部材を閉塞するのではなく、樹脂カバーの凹部でねじ部材を閉塞するようにしたので、樹脂カバーとキャップとの境界線が目立ってしまい、見栄えが悪くなることがない。
【0016】
しかも、ロックファスナーや爪部と穴の嵌合を利用したカバー取付構造に比べて、良好な合い沿い状態で樹脂カバーを取付対象物に確実に固定することができるとともに、爪部と穴との嵌合調整が不要になり、取付対象物及び樹脂カバーの加工コストを低減することができる。
【0017】
上記樹脂カバーの取付構造において、前記樹脂カバーの前記凹部は、前記開口端に向かって前記テーパ形状から円筒形状に連続的に変化する壁面で形成されることが好ましい。
【0018】
このように樹脂カバーの凹部を形成する壁面の形状を、該凹部の開口端に向かってテーパ形状から円筒形状に連続的に変化するようにすることで、ねじ部材の頭部を係止する樹脂カバーの凹部の樹脂肉厚を厚くするとともに、凹部の開口端の内径を大きくすることができる。したがって、樹脂カバーの凹部にねじ部材の頭部を嵌入しやすく、かつ、一旦嵌入するとねじ部材の頭部が樹脂カバーの凹部から抜けにくくなる。
【0019】
上記樹脂カバーの取付構造において、前記ねじ部材の前記頭部は、前記底面側に前記第1テーパ部が設けられており、前記頂面側に前記第1テーパ部とは逆に前記底面側から前記頂面側に向かって縮径する第2テーパ部が設けられていることが好ましい。
【0020】
このように、ねじ部材の頭部の頂面側に、底面側から頂面側に向かって縮径する第2テーパ部を設けることで、樹脂カバーの凹部にねじ部材の頭部を嵌入しやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、取付対象物の取付孔に螺着されたねじ部材の頭部を、樹脂カバーの凹部に嵌入することによって、ねじ部材が樹脂カバーの凹部で閉塞されるとともに、ねじ部材を介して樹脂カバーが取付対象物に固定される。
【0022】
このように、ねじ部材の頭部を樹脂カバーの凹部に嵌入して樹脂カバーを取付対象物に固定するようにしたので、従来のカバー取付構造においてねじ部材を閉塞するために用いていたキャップを省略して、部品点数を減らすことができる。
【0023】
また、従来のように樹脂カバーと別体のキャップでねじ部材を閉塞するのではなく、樹脂カバーの凹部でねじ部材を閉塞するようにしたので、樹脂カバーとキャップとの境界線が目立ってしまい、見栄えが悪くなることがない。
【0024】
しかも、ロックファスナーや爪部と穴の嵌合を利用したカバー取付構造に比べて、良好な合い沿い状態で樹脂カバーを取付対象物に確実に固定することができるとともに、爪部と穴との嵌合調整が不要になり、取付対象物及び樹脂カバーの加工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】樹脂カバー取付構造の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】図1の樹脂カバー取付構造におけるねじ部材と樹脂カバーとの関係を示す断面図である。
【図3】(a)は図1の樹脂カバー取付構造におけるねじ部材の樹脂カバーの凹部への嵌入状態を示す図であり、(b)は図3(a)の3B−3B面を下側から見た平面図であり、(c)は図3(b)の3C−3C面に沿った断面図である。
【図4】樹脂カバーの凹部の他の形状例を示す断面図である。
【図5】ねじ部材の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る樹脂カバーの取付構造の構成例を示す分解斜視図である。同図に示すように、樹脂カバー取付構造1は、主として、取付孔10Aを有する取付対象物10と、取付孔10Aに螺着され取付対象物10に固定されるねじ部材12と、取付対象物10に固定されたねじ部材12に取り付けられる樹脂カバー14とにより構成される。
【0028】
図1では、取付対象物10の一例として、バスやトラック等のインストルメント・パネルに設けられる運転注意力モニターのハウジングを示している。この取付対象物10には、貫通孔である取付孔10Aが設けられており、ねじ部材12が取付孔10Aとインストルメント・パネルの取付孔(不図示)とに螺着されることで、取付対象物10(ハウジング)がインストルメント・パネルに固定されるようになっている。
【0029】
ねじ部材12は、先端部が取付対象物10の取付孔10Aに螺着されるとともに、その頭部に樹脂カバー14が取り付けられるようになっている。なお、ねじ部材12は、皿ビス16とワッシャ18とで構成されており、市販の皿ビス16を用いることで材料費を削減することができる。
【0030】
樹脂カバー14は、弾性を有する熱可塑性オレフィン系樹脂(TPO:Thermo Plastic Olefin)や熱可塑性エラストマー(TPE:Thermo Plastic Elastomer)を成形したものを用いることが好ましい。これにより、後述するようにねじ部材12の頭部を樹脂カバー14の凹部に嵌入する際に、樹脂カバー14が弾性変形するので、嵌入作業を容易に行うことができる。
【0031】
図2は、図1の樹脂カバー取付構造1におけるねじ部材12と樹脂カバー14との関係を示す断面図である。また図3(a)は、図1の樹脂カバー取付構造1における樹脂カバー14のねじ部材12への取り付け状態を示す断面図であり、図3(b)は図3(a)の3B−3B面を下側から見た平面図であり、図3(c)は図3(b)の3C−3C面に沿った断面図である。
【0032】
図2に示すように、樹脂カバー14の内側には突出部15が設けられており、この突出部15に、ねじ部材12の頭部12Aが嵌入される凹部14Aが形成されている。この凹部14Aの開口端の内径aは、ねじ部材12の頭部12Aの最大外径bよりも小さい。
【0033】
また、ねじ部材12の頭部12Aは、該頭部12Aの底面側に、頭部12Aの底面側から頂面側に向かって拡径する第1テーパ部12Bを有する。一方、樹脂カバー14の凹部14Aは、凹部14Aの開口端側から奥方向に向かって拡径し、ねじ部材12の頭部12Aの第1テーパ部12Bに対応したテーパ形状を有する。
【0034】
このような構成のねじ部材12及び樹脂カバー14によれば、図3(a)に示すようにねじ部材12の頭部12Aを樹脂カバー14の凹部14Aに嵌入することで、樹脂カバー14の凹部14Aによって、ねじ部材12の頭部12Aの第1テーパ部12Bが係止される。これにより、取付対象物10に固定されたねじ部材12の頭部12Aに樹脂カバー14を取り付けることができる。
【0035】
本実施形態では、ねじ部材12の頭部12Aの樹脂カバー14の凹部14Aへの嵌入を容易にするために、図3(b)に示すように、樹脂カバー14の凹部14Aの開口端の周囲には3個の切り欠き14Bが等間隔で配置されている。これにより、ねじ部材12の頭部12Aを樹脂カバー14の凹部14Aに嵌入させる際、樹脂カバー14が変形するので、嵌入作業を容易に行うことができる。なお、切り欠き14Bの個数は少なくとも一個以上であれば特に限定されない。
【0036】
また、図3(a)及び(c)に示すように、樹脂カバー14の凹部14Aが形成された突出部15は、凹部14Aの両側に配置されるリブ20(20A,20B)によって補強されることが好ましい。これにより、ねじ部材12の頭部12Aを樹脂カバー14の凹部14Aに嵌入させる際、樹脂カバー14の突出部15が損傷してしまうことを防止できる。
【0037】
以上説明したように、樹脂カバー取付構造1では、取付対象物10の取付孔10Aに螺着されたねじ部材12の頭部12Aを、樹脂カバー14の凹部14Aに嵌入することによって、ねじ部材12が樹脂カバー14の凹部14Aで閉塞されるとともに、ねじ部材12を介して樹脂カバー14が取付対象物10に固定される。
【0038】
このように、ねじ部材12の頭部12Aを樹脂カバー14の凹部14Aに嵌入して樹脂カバー14を取付対象物10に固定するようにしたので、従来のカバー取付構造においてねじ部材を閉塞するために用いていたキャップを省略して、部品点数を減らすことができる。
【0039】
また、従来のように樹脂カバーと別体のキャップでねじ部材を閉塞するのではなく、樹脂カバー14の凹部14Aでねじ部材12を閉塞するようにしたので、樹脂カバーとキャップとの境界線が目立ってしまい、見栄えが悪くなることがない。
【0040】
しかも、ロックファスナーや爪部と穴の嵌合を利用したカバー取付構造に比べて、良好な合い沿い状態で樹脂カバーを取付対象物に確実に固定することができるとともに、爪部と穴との嵌合調整が不要になり、取付対象物及び樹脂カバーの加工コストを低減することができる。
【0041】
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0042】
例えば、樹脂カバー14の凹部14Aの形状は、上述の実施形態で説明したものに限られず、図4に示す形状であってもよい。すなわち、樹脂カバー14の凹部14Aは、図4に示すように、凹部14Aの開口端に向かってテーパ形状から円筒形状に連続的に変化する壁面22で形成されていてもよい。
【0043】
このように樹脂カバー14の凹部14Aを形成する壁面22の形状を、該凹部14Aの開口端に向かってテーパ形状から円筒形状に連続的に変化するようにすることで、ねじ部材12の頭部12Aを係止する樹脂カバー14の凹部14Aの樹脂肉厚を厚くするとともに、凹部14Aの開口端の内径を大きくすることができる。したがって、樹脂カバー14の凹部14Aにねじ部材12の頭部12Aを嵌入しやすく、かつ、一旦嵌入するとねじ部材12の頭部12Aが樹脂カバー14の凹部14Aから抜けにくくなる。
【0044】
また、ねじ部材12の構成は、上述の実施形態に説明したものに限られず、図5(a)〜(c)に示す構成であってもよい。
【0045】
すなわち、上述の実施形態ではねじ部材12が市販の皿ビス16とワッシャ18とで構成された例について説明したが、図5(a)に示すように、ねじ部材12として、頭部12Aが該頭部12Aの底面側から頂面側に向かって拡径する第1テーパ部12Bを有するねじを用いてもよい。
【0046】
さらに、図5(b)及び(c)に示すように、ねじ部材12の頭部12Aには、第1テーパ部12Bだけでなく、第1テーパ部12Bとは逆に頭部12Aの底面側から頂面側に向かって縮径する第2テーパ部12Cが頂面側に設けられていてもよい。
このように、ねじ部材12の頭部12Aの頂面側に、底面側から頂面側に向かって縮径する第2テーパ部12Cを設けることで、樹脂カバー14の凹部14Aにねじ部材12の頭部12Aを嵌入しやすくなる。
【符号の説明】
【0047】
1 樹脂カバー取付構造
10 取付対象物
10A 取付孔
12 ねじ部材
12A 頭部
12B 第1テーパ部
12C 第2テーパ部
14 樹脂カバー
14A 凹部
15 突出部
16 皿ビス
18 ワッシャ
20 リブ
22 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を有する取付対象物と、
頭部が該頭部の底面側から頂面側に向かって拡径する第1テーパ部を有し、先端部が前記取付孔に螺着され前記取付対象物に固定されるねじ部材と、
前記ねじ部材の前記頭部が嵌入される凹部を有し、該凹部が前記ねじ部材の前記頭部の前記第1テーパ部を係止することで前記ねじ部材に固定される樹脂カバーとを備え、
前記樹脂カバーの前記凹部は、前記ねじ部材の前記頭部の最大外径よりも小径の開口端を有するとともに、該開口端側から奥方向に向かって拡径し、前記ねじ部材の前記頭部の前記第1テーパ部に対応したテーパ形状を有し、
前記樹脂カバーは、前記凹部の前記開口端の周囲が少なくとも一箇所切り欠かれていることを特徴とする樹脂カバーの取付構造。
【請求項2】
前記樹脂カバーの前記凹部は、前記開口端に向かって前記テーパ形状から円筒形状に連続的に変化する壁面で形成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂カバーの取付構造。
【請求項3】
前記ねじ部材の前記頭部は、前記底面側に前記第1テーパ部が設けられており、前記頂面側に前記第1テーパ部とは逆に前記底面側から前記頂面側に向かって縮径する第2テーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂カバーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−127750(P2011−127750A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289880(P2009−289880)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】