説明

樹脂付き金属箔、金属張積層板、これを用いたプリント配線板およびその製造方法

【課題】絶縁樹脂組成物層と金属箔との界面の密着性と平坦性を両立し、かつ、経済性や取扱い性等のプリント配線板製造時に係る実用的な要素をも満たす金属張積層板または樹脂付き金属箔を提供することを目的とし、さらに、該金属張積層板または樹脂付き金属箔を用い、信頼性および回路形成性に優れ、導体損失の非常に少ないプリント配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁樹脂組成物層と、絶縁樹脂組成物層の片面もしくは両面に固着してなる金属箔とを有する樹脂付き金属箔において、金属箔の少なくとも絶縁樹脂組成物層側が表面処理されており、かつ金属箔の両面が実質的に粗し処理されていないことを特徴とする金属張積層板または樹脂付き金属箔を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付き金属箔、金属張積層板、これを用いたプリント配線板、およびその製造方法に関し、特に、絶縁樹脂組成物上に金属箔が固着してなる金属張積層板の当該金属箔を給電層としてパターン電気めっきを行うことで導体回路が形成されるプリント配線板に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・軽量化・高速化の要求が高まり、プリント配線板の高密度化が進んでおり、電気めっきを用いたセミアディティブ法によるプリント配線板の製造方法が注目されている。このセミアディティブ法は、特許文献1にあるように、回路を形成したい樹脂表面にレーザー等でインターステイシャルバイアホール(以下、IVHと表す)となる穴を形成した後に、化学粗化やプラズマ処理等により数μmの凹凸を樹脂上に形成し、Pd触媒を付与し、1μm程度の無電解めっきを行い、パターン電気めっきレジストを形成し、パターン電気めっきにより回路形成を行った後にレジスト及び回路以外の部分に存在する給電層を除去する手法であり、サイドエッチングの大きいサブトラクティブ法に比べ、より微細な配線形成を可能とするものである。
【0003】
さらに、樹脂付き金属箔上にセミアディティブ法により回路形成を行う方法もある。近年は金属箔の厚みを薄くするために、特許文献2や特許文献3にあるように支持金属箔上に5μm以下の厚みの金属箔が形成されている引き剥がし可能なタイプの金属箔が用いられる。この手法では、絶縁樹脂組成物層の表面に無電解めっきを施す必要がなく、より信頼性の高いプリント配線板を作製できる。
【0004】
このように、樹脂付き金属箔上にセミアディティブ法により回路形成を行う場合は、金属箔が薄いほど微細配線形成に有利だが、実際には特許文献4にあるように金属箔と樹脂硬化物の引き剥がし強さを得るための数μmの粗化層が金属箔に設けられ、これは金属箔の薄箔化を妨げている。また、セミアディティブ法においては回路以外の部分に存在する給電層を電気めっき後にエッチング除去する必要があるが、粗化層に存在する凹凸のため、ショート不良の原因となるエッチング残りが起き易い。さらに、粗化層の凹凸は導体回路の電気抵抗を増大させるため、伝送損失を大きくしてしまう。この電気抵抗の増大は信号が高周波になるほど顕著となることが知られている。また、金属箔に粗化層があると導体回路形成時に過剰なエッチングが必要となり導体トップ幅がボトム幅と比較して細くなってしまうため、良好な回路形成を得ることができない。
【0005】
上記のような課題を解決すべく、特許文献5には、粗化処理を施していない銅箔と、絶縁層となる過酸化物硬化性樹脂組成物とがシランカップリング剤またはチオール系カップリング剤よりなる接着下地を介して積層された銅張積層板が開示されている。これによれば銅箔と絶縁層とのピール強度を低下させることなく、前述の、金属箔を粗化処理することによって生じる種々の問題を解決することができる。
【特許文献1】特開平11−186716号
【特許文献2】特開平13−140090号
【特許文献3】特開平13−89892号
【特許文献4】特許第2927968号
【特許文献5】特開平8−309918号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法では、絶縁層として過酸化物硬化性樹脂を用いることを必須としており、その場合、これを構成に含む銅張積層板を用いて製造されたプリント配線板の信頼性が低下する恐れがある。また、過酸化物硬化性樹脂自体が危険性の高い物質であるため、その取り扱いおよび保存が非常に困難であり、さらには一般的に使用されている絶縁樹脂と比較すると高価であるため、実用的であるとはいえない。
【0007】
本発明は、絶縁樹脂組成物層と金属箔との界面の密着性と平坦性を両立し、かつ、経済性や取扱い性等のプリント配線板製造時に係る実用的な要素をも満たす金属張積層板または樹脂付き金属箔を提供することを目的とし、さらに、該金属張積層板または樹脂付き金属箔を用い、信頼性および回路形成性に優れ、導体損失の非常に少ないプリント配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(40)の記載に関する。
【0009】
(1)絶縁樹脂組成物層と、絶縁樹脂組成物層の片面もしくは両面に固着してなる金属箔とを有する樹脂付き金属箔において、金属箔の少なくとも絶縁樹脂組成物層側が表面処理されており、かつ金属箔の両面が実質的に粗し処理されていないことを特徴とする樹脂付き金属箔。
【0010】
(2)金属箔の表面粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の樹脂付き金属箔。
【0011】
(3)金属箔の厚みが3μm以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の樹脂付き金属箔。
【0012】
(4)絶縁樹脂組成物層と金属箔の界面粗さ(Rz)が2.0μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0013】
(5)表面処理が防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理のいずれか、もしくはこれらの組み合わせであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0014】
(6)防錆処理がニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトのいずれか、若しくはそれらの合金を用いて行われていることを特徴とする(5)に記載の樹脂付き金属箔。
【0015】
(7)絶縁樹脂組成物がシアネート樹脂を含み、かつ防錆処理がニッケルを主成分とする金属により行われていることを特徴とする上記(5)または(6)に記載の樹脂付き金属箔。
【0016】
(8)防錆処理上にクロメート処理が施されていることを特徴とする請求項(5)〜(7)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0017】
(9)シランカップリング処理が金属箔の最外層に施されていることを特徴とする上記(5)〜(8)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0018】
(10)シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤が加熱により絶縁樹脂組成物と化学反応するものであることを特徴とする上記(5)〜(9)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0019】
(11)絶縁樹脂組成物がエポキシ樹脂を含み、かつシランカップリング処理に用いるシランカップリング剤がアミノ官能性シランを含むものであることを特徴とする(5)〜(10)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0020】
(12)絶縁樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0021】
(13)絶縁樹脂組成物が常温で液状のエポキシ樹脂を含むことを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0022】
(14)絶縁樹脂組成物が潜在性硬化剤を含むことを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0023】
(15)硬化後の絶縁樹脂組成物の1GHzにおける比誘電率が3.0以下または誘電正接が0.01以下であることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔。
【0024】
(16)絶縁樹脂組成物層と、絶縁樹脂組成物層の片面もしくは両面に固着してなる金属箔とを有する金属張積層板において、金属箔の少なくとも絶縁樹脂組成物層側が表面処理されており、かつ金属箔の両面が実質的に粗し処理されていないことを特徴とする金属張積層板。
【0025】
(17)金属箔の表面粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることを特徴とする上記(16)に記載の金属張積層板。
【0026】
(18)金属箔の厚みが3μm以下であることを特徴とする上記(16)または(17)に記載の金属張積層板。
【0027】
(19)絶縁樹脂組成物層と金属箔の界面粗さ(Rz)が2.0μm以下であることを特徴とする上記(16)〜(18)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0028】
(20)表面処理が防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理のいずれか、もしくはこれらの組み合わせであることを特徴とする上記(16)〜(19)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0029】
(21)防錆処理がニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトのいずれか、若しくはそれらの合金を用いて行われていることを特徴とする上記(20)に記載の金属張積層板。
【0030】
(22)絶縁樹脂組成物がシアネート樹脂を含み、かつ防錆処理がニッケルを主成分とする金属により行われていることを特徴とする上記(20)または(21)に記載の金属張積層板。
【0031】
(23)防錆処理上にクロメート処理が施されていることを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0032】
(24)シランカップリング処理が金属箔の最外層に施されていることを特徴とする上記(20)〜(23)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0033】
(25)シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤が加熱により絶縁樹脂組成物と化学反応するものであることを特徴とする(20)〜(24)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0034】
(26)絶縁樹脂組成物がエポキシ樹脂を含み、かつシランカップリング処理に用いるシランカップリング剤がアミノ官能性シランを含むものであることを特徴とする上記(20)〜(25)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0035】
(27)絶縁樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする上記(16)〜(26)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0036】
(28)絶縁樹脂組成物が常温で液状のエポキシ樹脂を含むことを特徴とする上記(16)〜(27)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0037】
(29)絶縁樹脂組成物が潜在性硬化剤を含むことを特徴とする(16)〜(28)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0038】
(30)硬化後の絶縁樹脂組成物の1GHzにおける比誘電率が3.0以下または誘電正接が0.01以下であることを特徴とする(16)〜(29)のいずれかに記載の金属張積層板。
【0039】
(31)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔および/または上記(16)〜(30)のいずれかに記載の金属張積層板を用いて製造されることを特徴とするプリント配線板。
【0040】
(32)導体回路の表面粗さ(Rz)が2.0μm以下であることを特徴とする上記(31)に記載のプリント配線板。
【0041】
(33)絶縁樹脂組成物層と1mm幅の導体回路の引き剥がし強さが0.6kN/m以上であることを特徴とする上記(31)または(32)に記載のプリント配線板。
【0042】
(34)150℃で240時間加熱した後の絶縁樹脂組成物層と1mm幅の導体回路の引き剥がし強さが0.4kN/m以上であることを特徴とする(31)〜(33)のいずれかに記載のプリント配線板。
【0043】
(35)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の樹脂付き金属箔および/または上記(16)〜(30)のいずれかに記載の金属張積層板の金属箔を給電層としたパターン電気めっきにより導体回路を作製する工程を有するプリント配線板の製造方法。
【0044】
(36)金属箔上に無電解めっき層を形成することを特徴とする(35)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0045】
(37)導体回路形成後、給電層である金属箔をエッチング除去する際、化学反応律速となるエッチング液を用いることを特徴とする上記(35)または(36)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0046】
(38)エッチング液がハロゲン元素を含まない酸と過酸化水素とを主成分として含むことを特徴とする上記(37)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0047】
(39)ハロゲン元素を含まない酸が硫酸であることを特徴とする上記(38)に記載のプリント配線板の製造方法。
【0048】
(40)硫酸の濃度が5〜300g/L、過酸化水素の濃度が5〜200g/Lであることを特徴とする上記(39)に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0049】
以上より、本発明によれば、絶縁樹脂組成物層と金属箔との界面の密着性と平坦性を両立し、かつ、経済性や取扱い性等のプリント配線板製造時に係る実用的な要素をも満たす金属張積層板、または樹脂付き金属箔を提供することが可能であり、さらに、該金属張積層板または樹脂付き金属箔を用いて、信頼性および回路形成性に優れ、導体損失の非常に少ないプリント配線板およびその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の金属張積層板について詳細に説明する。
【0051】
本発明の金属張積層板は、例えば、図1(a)に示すように、プリプレグ1の両側に、その両面が実質的に粗し処理されていない金属箔2が積層一体化してなる金属張積層板である。
【0052】
プリプレグは基材に絶縁樹脂組成物のワニスを含浸又は塗工してなるものであり、基材としては各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。基材の材質の例としては、Eガラス,Dガラス,Sガラス又はQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル又はテトラフルオロエチレン等の有機繊維、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され必要により単独もしくは2種類以上の材質及び形状からの使用が可能である。基材の厚みには特に制限はないが、通常0.03〜0.5mm程度のものを使用し、シランカップリング剤等で表面処理したものや機械的に開繊処理を施したものは耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。また、プリプレグは、通常、その樹脂含有率が乾燥後で20〜90重量%となるように基材に樹脂を含浸又は塗工し、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化状態(Bステージ状態)とすることで得ることができる。さらに、このプリプレグを通常1〜20枚重ね、さらにその両面に金属箔を配置した構成で加熱加圧して積層することで、本願のような金属張積層板を得ることができる。複数枚のプリプレグ層の厚みは用途によって異なるが、通常0.1〜5mmの厚みのものが良い。積層方法としては通常の積層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、通常、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の条件で積層したり、真空ラミネート装置などを用いてラミネート条件50〜150℃、0.1〜5MPa、真空圧1.0〜760mmHgの条件でラミネートすることができる。
【0053】
本発明の絶縁樹脂組成物に用いる絶縁樹脂は、プリント配線板の絶縁材料として用いられる公知慣例の一般的な絶縁樹脂を用いることができ、通常、耐熱性、耐薬品性の良好な熱硬化性樹脂がベースとして用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビニル樹脂などが例示されるが、これらに限定されるわけではない。熱硬化性樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0054】
上記熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂は耐熱性、耐薬品性、電気特性に優れ、比較的安価であることから、絶縁樹脂として広く用いられており特に重要である。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などが例示される。エポキシ樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。また、このエポキシ樹脂とともに用いる硬化剤はエポキシ樹脂を硬化させるものであれば、限定することなく使用でき、例えば、多官能フェノール類、多官能アルコール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物及びこれらのハロゲン化物などがある。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0055】
上記シアネート樹脂は、加熱によりトリアジン環を繰り返し単位とする硬化物を生成する樹脂であり、硬化物は誘電特性に優れるため、特に高周波特性が要求される場合などに用いられることが多い。シアネート樹脂としては、例えば、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノールノボラック及びアルキルフェノールノボラックのシアネートエステル化物等が挙げられる。中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンは硬化物の誘電特性と硬化性のバランスが特に良好であり、コスト的にも安価であるため好ましい。ここで用いられるシアネート樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよく、また、予め一部が三量体や五量体にオリゴマー化されていても構わない。
【0056】
さらに、上記シアネート樹脂に対して硬化触媒や硬化促進剤を入れても良い。硬化触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属類が用いられ、具体的には、2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩等の有機金属塩及びアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。これらは、単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。硬化促進剤としてはフェノール類を使用することが好ましく、ノニルフェノール、パラクミルフェノールなどの単官能フェノールや、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの二官能フェノールあるいはフェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多官能フェノールなどを用いることができる。これらは、単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。
【0057】
本発明に用いる絶縁樹脂組成物には、誘電特性、耐衝撃性、フィルム加工性などを考慮して、熱可塑性樹脂がブレンドされてあっても良い。熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエンなどが例示されるが、これらに限定されるわけではない。熱可塑性樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0058】
上記熱可塑性樹脂の中で、ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルを配合すると、硬化物の誘電特性が向上するので有用である。ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリスチレンのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエンコポリマのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−無水マレイン酸コポリマのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリアミドのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエン−アクリロニトリルコポリマのアロイ化ポリマなどが挙げられる。また、ポリフェニレンエーテルに反応性、重合性を付与するために、ポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、スチリル基、メタクリル基などの官能基を導入したり、ポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、スチリル基、メタクリル基などの官能基を導入したりしてもよい。
【0059】
また、上記熱可塑性樹脂の中で、ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐湿性に優れることに加え、金属に対する接着性が良好であるので有用である。ポリアミドイミドの原料のうち、酸成分としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸モノクロライド、アミン成分としては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどが例示されるが、これに限定されるわけではない。乾燥性を向上させるためにシロキサン変性としても良く、この場合、アミノ成分にシロキサンジアミンが用いられる。フィルム加工性を考慮すると、分子量は5万以上のものを用いるのが好ましい。
【0060】
本発明に用いる絶縁樹脂組成物には、無機フィラーが混合されてあっても良い。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、溶融シリカ、ガラス粉、石英粉、シラスバルーンなどが挙げられる。これら無機フィラーは単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0061】
本発明に用いる絶縁樹脂組成物は、有機溶媒を含有しても良い。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒;テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノールのようなエーテルアルコール系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。プリプレグを作製する場合等に用いる絶縁樹脂組成物のワニス中の溶媒量は40〜80重量%の範囲とするのが好ましい。また、絶縁樹脂組成物ワニスの、25℃における粘度は20〜100cPの範囲とするのが好ましい。
【0062】
本発明に用いる絶縁樹脂組成物には、難燃剤が混合されてあっても良い。難燃剤としては、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、トリブロモフェノールなどの臭素化合物、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシリルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどのリン化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、赤リン及びその変性物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、メラミン、シアヌール酸、シアヌール酸メラミンなどのトリアジン化合物など公知慣例の難燃剤を用いることができる。
【0063】
本発明に用いる絶縁樹脂組成物には、さらに必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性粒子、着色剤、紫外線不透過剤、酸化防止剤、還元剤などの各種添加剤や充填剤を加えることができる。
【0064】
また、本発明の絶縁樹脂組成物として、硬化後の1GHzにおける比誘電率が3.0以下または誘電正接が0.01以下であるものを用いると、配線における誘電体損失の低減が可能となり、より一層伝送損失の小さい回路形成が可能となる。このような誘電特性に優れる樹脂としてはポリフェニレンエーテル樹脂やシアネート樹脂が例示される。ポリフェニレンエーテルを配線板材料に用いる場合は、耐熱性や耐薬品性を向上させるために熱硬化性を付与する必要があるが、この一例として、ポリフェニレンエーテルにエポキシ樹脂、シアネート樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂をブレンドする方法、ポリフェニレンエーテルの分子鎖中に二重結合やエポキシ基などの重合性官能基を導入する方法がある。
【0065】
本発明に用いる金属箔は、その表面にこぶ状の電着物層(俗にやけめっきといわれる:日本国特許公開第8−21618号参照)の形成や酸化処理、還元処理、エッチングなどによる粗し処理が実質的に施されていない。ここで「実質的に」という用語は、従来の、十分なピール強度が得られない程度に粗化処理された金属箔をも用いることができるという意味であり、好ましくは、粗し処理が全く施されていない金属箔を用いる。したがって、本発明に用いる金属箔の表面粗さはJIS B0601に示す10点平均粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。
【0066】
また、本発明に用いる金属箔としては、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔などを用いることができるが、通常は銅箔を使用する。本発明に用いる銅箔の製造方法としては、特に限定されず、例えば、キャリアを有するピーラブルタイプの銅箔を製造する場合、厚み10〜50μmのキャリア箔上に剥離層となる金属酸化物或いは有機物層を形成し、その上に硫酸銅浴であれば、硫酸50〜100g/L、銅30〜100g/L、液温20℃〜80℃、電流密度0.5〜100A/dmの条件で、ピロリン酸銅浴であれば、ピロリン酸カリウム100〜700g/L、銅10〜50g/L、液温30℃〜60℃、pH8〜12、電流密度1〜10A/dmの条件で製造することができ、銅箔の物性や平滑性を考慮して各種添加剤をいれる場合もある。なお、ピーラブルタイプの金属箔とは、キャリアを有する金属箔であり、キャリアが引き剥がし可能な金属箔である。
【0067】
また、本発明に用いる金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、3μm以下であることが好ましい。キャリアを有するピーラブルタイプの金属箔を用いる場合、キャリア引き剥がし後に金属箔が3μm以下になるものであることが好ましい。このような金属箔を給電層に用いた場合、後述するように配線形成性が良好なものを得ることができる。
【0068】
また、本発明に用いる金属箔の少なくとも絶縁樹脂組成物層側には、金属箔と絶縁樹脂組成物層との密着性を実用レベルもしくはそれ以上とするために表面処理が施される。金属箔上への表面処理としては、例えば、防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理のいずれか、もしくはこれらの組み合わせなどが挙げられ、どのような表面処理を施すかは絶縁樹脂組成物層に用いる樹脂系に合わせて適宜検討することが好ましい。
【0069】
上記防錆処理は、例えば、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトなどの金属のいずれか、若しくはそれらの合金を、スパッタや電気めっき、無電解めっきにより金属箔上に薄膜形成することで施すことができる。コストの面からは電気めっきが好ましい。金属イオンの析出を容易にするためにクエン酸塩、酒石酸塩、スルファミン酸等の錯化剤を必要量添加することも出来る。めっき液は通常酸性領域で用い、室温〜80℃の温度で行う。めっきは通常電流密度0.1〜10A/dm2、通電時間1〜60秒、好ましくは1〜30秒の範囲から適宜選択する。防錆処理金属の量は、金属の種類によって異なるが、合計で10〜2000μg/dm2が好適である。防錆処理が厚すぎるとエッチング阻害と電気特性の低下を引き起こし、薄すぎると樹脂とのピール強度低下の要因となりうる。
【0070】
また、絶縁樹脂組成物中にシアネート樹脂を含む場合には、防錆処理がニッケルを含む金属により行われていることが好ましい。この組み合わせにおいては、耐熱劣化試験や耐湿劣化試験におけるピール強度の低下が少なく有用である。
【0071】
上記クロメート処理として、好ましくは六価クロムイオンを含む水溶液を用いる。クロメート処理は単純な浸漬処理でも可能であるが、好ましくは陰極処理で行う。重クロム酸ナトリウム0.1〜50g/L、pH1〜13、浴温0〜60℃、電流密度0.1〜5A/dm、電解時間0.1〜100秒の条件で行うのことが好ましい。重クロム酸ナトリウムの代わりにクロム酸或いは重クロム酸カリウムを用いて行うことも出来る。また、上記クロメート処理は上記防錆処理上に施すことが好ましく、これにより絶縁樹脂組成物層と金属箔との密着性をより向上させることができる。
【0072】
上記シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ官能性シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のオレフィン官能性シラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランなどが用いられる。これらは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。これらのカップリング剤は、水などの溶媒に0.1〜15g/Lの濃度で溶解させて室温〜50℃の温度で金属箔に塗布したり、電着させたりして吸着させる。これらのシランカップリング剤は金属箔表面の防錆処理金属の水酸基と縮合結合することで皮膜を形成する。シランカップリング処理後は加熱、紫外線照射等によって安定的結合を形成する。加熱であれば100〜200℃の温度で2〜60秒乾燥させる。紫外線照射であれば200〜400nm、200〜2500mJ/cmの範囲で行う。また、シランカップリング処理は金属箔の最外層に行うことが好ましい。
【0073】
また、シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤としては、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80〜150℃の加熱により上記絶縁樹脂組成物と化学反応するものであることが好ましい。これによれば、絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応し、より優れた密着性を得ることが可能となる。例えば、エポキシ基が含まれる絶縁樹脂組成物に対しては、アミノ官能性シランを含むシランカップリング剤を用いることが好ましい。これは、熱によりエポキシ基とアミノ基が容易に強固な化学結合を形成し、この結合が熱や水分に対して極めて安定であることに起因する。このように化学結合を形成する組み合わせとして、エポキシ基−アミノ基、エポキシ基−エポキシ基、エポキシ基−メルカプト基、エポキシ基−水酸基、エポキシ基−カルボキシル基、エポキシ基−シアナト基、アミノ基−水酸基、アミノ基−カルボキシル基、アミノ基−シアナト基などが例示される。
【0074】
また、本発明に用いる絶縁樹脂組成物の絶縁樹脂として、常温で液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、この場合、溶融時の粘度が大幅に低下するため、接着界面における濡れ性が向上し、エポキシ樹脂とシランカップリング剤の化学反応が起こりやすくなり、その結果、強固なピール強度が得られる。具体的にはエポキシ当量200程度のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0075】
また、絶縁樹脂組成物が硬化剤を含む場合、硬化剤としては、特に加熱硬化型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。すなわち、絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応する場合は、絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応温度が絶縁樹脂組成物の硬化反応が開始される温度より低くなるように硬化剤を選択することが好ましい。これにより、絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応が優先的、選択的に行われ、金属箔と絶縁樹脂組成物の密着性がより高くなる。エポキシ樹脂を含む絶縁樹脂組成物に対する熱硬化型潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、アミン−エポキシアダクトなどの固体分散−加熱溶解型硬化剤や尿素化合物、オニウム塩類、ボロントリクロライド・アミン塩類、ブロックカルボン酸化合物などの反応性基ブロック型硬化剤が挙げられる。
【0076】
以上のような絶縁樹脂組成物を含有するプリプレグと、その表面が実質的に粗し処理されておらず、なおかつ上記表面処理が施された金属箔とを前述の方法により積層一体化することで、図1(a)に示すような本発明の金属張積層板を得ることができる。
【0077】
また、本発明の樹脂付き金属箔は、上記のような絶縁樹脂組成物のワニスを上記のような金属箔上に塗布、加熱、乾燥して得ることができる。塗布方法としては、例えば、キスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて行うことができ、加熱、乾燥条件は、100〜200℃の温度で1〜30分とすることが好ましく、加熱、乾燥後の絶縁樹脂組成物中における残留溶剤量は、0.2〜10%程度であることが好ましい。また、樹脂付き金属箔を作成する場合の絶縁樹脂組成物ワニス中の溶媒量は30〜70重量%の範囲とするのが好ましく、25℃におけるワニスの粘度は100〜500cPの範囲とするのが好ましい。また、フィルム状の絶縁樹脂組成物を金属箔にラミネートして本発明の樹脂付き金属箔とすることもでき、その場合には、50〜150℃、0.1〜5MPaの条件で樹脂フィルムを金属箔上にラミネートするのが適当である。
【0078】
また、本発明の金属張積層板、または樹脂付き金属箔の絶縁樹脂組成物層と金属箔の界面粗さ(Rz)は2.0以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましい。なお、本発明において、絶縁樹脂組成物層と金属箔の界面粗さとは、金属張積層板、樹脂付き金属箔又はプリント配線板の導体金属をエッチングし、現れた樹脂面の粗さをJIS−B−0601に基づき測定した数値である。
【0079】
次に、上記のようにして得た本発明の金属張積層板を用いてプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0080】
まず、図1(a)の金属張積層板に層間接続用の貫通スルーホール3を形成し、金属箔2上及びスルーホール3内部に触媒核を付与する。(図1(b))。スルーホール径が100μm以上であればドリルによる加工が適しており、スルーホール径が100μm以下であればCOやCO、エキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーが適している。また、触媒核の付与には、貴金属イオンやパラジウムコロイドを使用する。
【0081】
次に図1(c)に示すように触媒核を付与した金属箔2上及びスルーホール3内部に薄付けの無電解めっき層4を形成する。この無電解めっきには、CUST2000(日立化成工業株式会社製、商品名)やCUST201(日立化成工業株式会社製、商品名)等の市販の無電解銅めっきが使用できる。これらの無電解銅めっきは硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウムを主成分とする。めっきの厚さは次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、0.1〜1μm程度で十分である。
【0082】
次に図1(d)に示すように無電解めっきを行った上にめっきレジスト5を形成する。めっきレジストの厚さは、その後めっきする導体の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。めっきレジストに使用できる樹脂には、PMER P−LA900PM(東京応化株式会社製、商品名)のような液状レジストや、HW−425(日立化成工業株式会社、商品名)、RY−3025(日立化成工業株式会社、商品名)等のドライフィルムがある。ビアホール上と導体回路となるべき個所はめっきレジストを形成しない。
【0083】
次に図1(e)に示すように電気めっきにより回路パターン6を形成する。電気めっきには、通常プリント配線板で使用される硫酸銅電気めっきが使用できる。めっきの厚さは、回路導体として使用できればよく、1〜100μmの範囲である事が好ましく、5〜50μmの範囲である事がより好ましい。
【0084】
次にアルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いてレジストの剥離を行い、パターン部以外の銅をエッチング除去する(図1(f))。本発明に用いるエッチング液としては、特に限定されないが、従来の拡散律速タイプのエッチング液を用いた場合、配線の微細な部分はどうしても液の交換が悪くなるため回路形成性が悪化してしまう傾向がある。そこで、銅とエッチング液の反応が拡散律速ではなく、反応律速で進行するタイプのエッチング液を用いることが望ましい。銅とエッチング液の反応が反応律速であれば、拡散をそれ以上強めたとしてもエッチング速度は変わらない。即ち液交換の良い場所と悪い場所でのエッチング速度差が生じない。このような反応律速エッチング液としては、例えば、過酸化水素とハロゲン元素を含まない酸とを主成分とするものが挙げられる。酸化剤として過酸化水素を用いるので、その濃度を管理することで厳密なエッチング速度制御が可能になる。尚、エッチング液にハロゲン元素が混入すると、溶解反応が拡散律速になりやすい。ハロゲンを含まない酸としては、硝酸、硫酸、有機酸等が使用できるが、硫酸であることが安価で好ましい。更に硫酸と過酸化水素が主成分である場合には、それぞれの濃度を5〜300g/L,5〜200g/Lとする事がエッチング速度、液の安定性の面から好ましい。
【0085】
次に上記図1(f)を内層回路基板として、その両側に、片面金属張積層板または樹脂付き金属箔をラミネートとする(図1(g))。ここで用いる片面金属張積層板または樹脂付き金属箔は、前述した本発明の金属張積層板または樹脂付き金属箔と同様のものであることが好ましい。また、ここでは、絶縁層7の厚みは10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。さらに、金属箔8の厚みは0.3〜3μmが好適である。
【0086】
次いで図1(h)に示す様に金属箔8の上から絶縁層7にIVH9を形成した後、その内部の樹脂残さの除去を行う。IVHを形成する方法としては、レーザーを用いるのが好適である。ここで用いることが出来るレーザーとしては、COやCO、エキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーがある。COレーザーが容易に大出力を得られる事からφ50μm以上のIVHの加工に適している。φ50μm以下の微細なIVHを加工する場合は、より短波長で集光性のよいYAGレーザーが適している。また、樹脂残さの除去に用いる酸化剤としては、例えば、過マンガン酸塩、クロム酸塩、クロム酸などの酸化剤が挙げられる。
【0087】
次いで金属箔8上及びIVH9内部に触媒核を付与し、金属箔8上及びIVH9内部に薄付けの無電解めっき層10を形成する。触媒核の付与には、貴金属イオンやパラジウムコロイドを使用することができる。無電解めっきには、CUST2000(日立化成工業株式会社製、商品名)やCUST201(日立化成工業株式会社製、商品名)等の市販の無電解銅めっきが使用できる。これらの無電解銅めっきは硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウムを主成分とする。めっきの厚さは次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、0.1〜1μm程度で十分である。
【0088】
次に図1(j)に示すように無電解めっき層10を形成した上にめっきレジスト11を形成する。めっきレジストの厚さは、その後めっきする導体の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。めっきレジストに使用できる樹脂には、PMER P−LA900PM(東京応化株式会社製、商品名)のような液状レジストや、HW−425(日立化成工業株式会社、商品名)、RY−3025(日立化成工業株式会社、商品名)等のドライフィルムがある。ビアホール上と導体回路となるべき個所はめっきレジストを形成しない。
【0089】
次に図1(k)に示すように電気めっきにより導体回路パターン12を形成する。電気めっきには、通常プリント配線板で使用される硫酸銅電気めっきが使用できる。めっきの厚さは、回路導体として使用できればよく、1〜100μmの範囲である事が好ましく、5〜50μmの範囲である事がより好ましい。
【0090】
次にアルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いてレジストの剥離を行い、さらに導体回路パターン部以外の銅を、好ましくは反応律速である前述のエッチング液により除去することで回路形成を行う(図1(l))。
【0091】
さらに、図1(l)の基板の導体回路上に金めっきを行うことも出来る。金めっきの方法としては、従来公知の方法でよく、特に限定されないが、例えば、SA―100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような活性化処理液で導体界面の活性化処理を行い、NIPS―100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような無電解ニッケルめっきを1〜10μm程度行い、HGS―100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような置換金めっきを0.01〜0.1μm程度行った後にHGS―2000(日立化成工業株式会社製、商品名)のような無電解金めっきを0.1〜1μm程度行うなどの方法がある。
【0092】
以上のように本発明の金属張積層板を用い、場合によっては樹脂付き金属箔を併用することで、信頼性および回路形成性に優れ、なおかつ導体損失の非常に少ないプリント配線板およびその製造方法を提供することが可能となる。勿論、樹脂付き金属箔のみを用いて本発明のプリント配線板を製造することも可能である。また、絶縁樹脂組成物層と導体回路となる金属箔の密着性も実用上十分な値を満たすため、プリント配線板の製造工程においてライン剥がれによる不良も少ない。本発明のプリント配線板において、絶縁樹脂組成物層と1mm幅の導体回路の引き剥がし強さは0.6kN/m以上であることが好ましく、0.8kN/m以上であることがより好ましい。さらに、150℃で240時間加熱した後の絶縁樹脂組成物層と1mm幅の導体回路の引き剥がし強さは0.4kN/m以上であることが好ましく、0.6kN/m以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0094】
(金属箔1の作製)
幅510mm、厚み35μmの電解銅箔(キャリア銅箔)の光択面に下記の条件でクロムめっきを連続的に行って1.0mg/dmの厚さのクロムめっき層(剥離層)を形成した。クロムめっき形成後の表面粗さRz=0.5μmであった。なお、表面粗さはJIS−B−0601に基づき測定した。
クロムめっき条件
・液組成:三酸化クロム250g/L、硫酸2.5g/L
・浴温:25℃
・アノード:鉛
・電流密度20A/dm
【0095】
次に下記に示す光択めっき条件で厚さ1.0μmの電気銅めっきを行った。電気銅めっき終了後の金属箔表面粗さRz=0.6μmであった。
硫酸銅めっき条件
・液組成:硫酸銅5水和物100g/L、硫酸150g/L、塩化物イオン30ppm
・浴温:25℃
・アノード:鉛
・電流密度:10A/dm
【0096】
次に下記に示すように電気めっきにより亜鉛防錆処理を行った。
・液組成:亜鉛20g/L,硫酸70g/L
・浴温:40℃
・アノード:鉛
・電流密度:15A/dm
・電解時間:10秒
【0097】
次に引き続き下記に示すクロメート処理を行った。
・液組成:クロム酸5.0g/L
・pH:11.5
・浴温:55℃
・アノード:鉛
・浸漬時間:5秒
【0098】
次に下記に示すシランカップリング処理を行った。
・液組成:3−アミノプロピルトリメトキシシラン5.0g/L
・液温:25℃
・浸漬時間:10秒
【0099】
シランカップリング処理後、金属箔を120℃で乾燥してカップリング剤を金属箔表面に吸着させた。そのときの金属箔表面粗さはRz=0.6μmであった。
【0100】
(金属箔2の作製)
金属箔1の亜鉛防錆処理の代わりに下記に示す電気ニッケルめっきで防錆処理を行った以外は金属箔1と同様に金属箔を作製した。そのときの金属箔表面粗さRz=0.6μmであった。
電気ニッケルめっき
・液組成:亜鉛20g/L,硫酸70g/L
・浴温:40℃
・アノード:鉛
・電流密度:15A/dm
・電解時間:10秒
【0101】
(金属箔3の作製)
金属箔1のシランカップリング剤にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は金属箔1と同様に金属箔を作製した。そのときの金属箔表面粗さはRz=0.6μmであった。
【0102】
(金属箔4の作製)
金属箔2のシランカップリング剤にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は金属箔2と同様に金属箔を作製した。そのときの金属箔表面粗さはRz=0.6μmであった。
【0103】
(金属箔5の作製)
金属箔1のクロメート処理を行わなかった他は金属箔1と同様に金属箔を作製した。そのときの金属箔表面粗さはRz=0.6μmであった。
【0104】
(金属箔6の作製)
金属箔1のカップリング剤処理を行わなかった他は金属箔1と同様に金属箔を作製した。そのときの金属箔表面粗さはRz=0.6μmであった。
【0105】
(金属箔7の作製)
金属箔1の亜鉛防錆処理を行わなかった他は金属箔1と同様に金属箔を作製した。そのときの金属箔表面粗さはRz=0.6μmであった。
【0106】
(金属箔8の作製)
光沢銅めっき後に下記に示すやけめっき条件で厚さ2.0μmの電気銅めっきを行った他は金属箔1と同様に金属箔を作製した。そのときの金属箔表面粗さはRz=2.7μmであった。
やけめっき条件
・液組成:硫酸銅5水和物50g/L、硫酸100g/L、塩化物イオン30ppm
・浴温:25℃
・アノード:鉛
・電流密度:10A/dm
【0107】
(絶縁樹脂組成物1の作製)
常温で液状であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL、油化シェル株式会社製商品名)30重量%、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−673、大日本インキ株式会社製商品名)30重量%、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YDB−500、東都化成株式会社製商品名)30重量%をメチルエチルケトンに攪拌しながら80℃で加熱溶解させ、そこに潜在性エポキシ硬化剤である2、4−ジアミノ−6−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)−1、3、5−トリアジン・イソシアヌル酸付加物4重量%、更に微粉砕シリカ2重量%、三酸化アンチモン4重量%を添加し、エポキシ系絶縁樹脂組成物ワニスを作製した。
【0108】
(絶縁樹脂組成物2の作製)
ポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社製商品名)20重量%、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社製商品名)40重量%、リン含有フェノール化合物(HCA−HQ、三光化学株式会社製商品名)8重量%、ナフテン酸マンガン(Mn含有量=6重量%、日本化学産業株式会社製)0.1重量%、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン(DER331L、ダウケミカル日本株式会社製商品名)32重量%をトルエンに80℃で加熱溶解させ、ポリフェニレンエーテル−シアネート系絶縁樹脂組成物ワニスを作製した。
【0109】
(絶縁樹脂組成物3の作製)
シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂(KS−6600、日立化成工業株式会社製商品名)80重量%、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−703、東都化成株式会社商品名)20重量%をNMP(N―メチルピロリドン)に80℃で溶解させ、シロキサン変性ポリアミドイミド系絶縁樹脂組成物ワニスを作製した。
【0110】
(実施例1)
絶縁樹脂組成物1のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ120℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔1を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、キャリア銅箔を剥離し、図2(a)に示すような絶縁層13と銅箔14よりなる銅張積層板を製造した。
【0111】
図2(b)に示すように、金属箔上から炭酸ガスインパクトレーザー穴あけ機L−500(住友重機械工業株式会社製、商品名)により、直径80μmの貫通スルーホール15をあけ、過マンガン酸カリウム65g/リットルと水酸化ナトリウム40g/リットルの混合水溶液に、液温70℃で20分間浸漬し、スミアの除去を行った。
【0112】
その後、パラジウム溶液であるHS−202B(日立化成工業株式会社製、商品名)に、25℃で15分間浸漬し、触媒を付与した後、CUST−201(日立化成工業株式会社製、商品名)を使用し、液温25℃、30分の条件で無電解銅めっきを行い、図2(c)に示すように厚さ0.3μmの無電解銅めっき層16を形成した。
【0113】
図2(d)に示すように、ドライフィルムフォトレジストであるRY−3025(日立化成工業株式会社製、商品名)を、無電解めっき層16の表面にラミネートし、電解銅めっきを行う箇所をマスクしたフォトマスクを介して紫外線を露光し、現像してめっきレジスト17を形成した。
【0114】
図2(e)に示すように、硫酸銅浴を用いて、液温25℃、電流密度1.0A/dmの条件で、電解銅めっきを20μmほど行い、最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=25/15μmとなるようにパターン電気銅めっき18を形成した。
【0115】
次に図2(f)に示すように、レジスト剥離液であるHTO(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)でドライフィルムの除去を行った後にHSO20g/L、H10g/Lの組成のエッチング液を用いてパターン部以外の銅をエッチング除去した。エッチング時は基板を片面1dmの小片に切断した後、1Lビーカーに入れ、マグネティックスターラーを用いて40℃で5分間エッチングを行った。
【0116】
最後に表1に示す条件で導体回路にニッケルめっき層19と金めっき層20を形成した(図2(g))。回路形成後の最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=20/20μmであった(ボトム幅)。
【0117】
【表1】

【0118】
(実施例2)
絶縁樹脂組成物1のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ120℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔2を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0119】
(実施例3)
絶縁樹脂組成物2のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔2を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0120】
(実施例4)
絶縁樹脂組成物2のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔4を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0121】
(実施例5)
絶縁樹脂組成物3のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔1を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0122】
(実施例6)
絶縁樹脂組成物3のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔2を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0123】
(実施例7)
絶縁樹脂組成物3のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔3を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0124】
(実施例8)
絶縁樹脂組成物3のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔4を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0125】
(実施例9)
絶縁樹脂組成物1のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ120℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔3を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0126】
(実施例10)
絶縁樹脂組成物1のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ120℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔4を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0127】
(実施例11)
絶縁樹脂組成物2のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔1を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0128】
(実施例12)
絶縁樹脂組成物2のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔3を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0129】
(実施例13)
絶縁樹脂組成物3のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔5を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0130】
(実施例14)
絶縁樹脂組成物3のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔6を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0131】
(実施例15)
絶縁樹脂組成物3のワニスを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m)に含浸させ160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に金属箔7を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、図2(a)に示すような銅張積層板を製造したこと以外は実施例1と同様に基板を作製した。
【0132】
(比較例1)
金属箔8を用いた他は実施例1と同様に基板を作製した。
【0133】
(実施例16)
金属箔1の表面に、樹脂組成物1を乾燥後の厚みが50μmとなるようにロールコーターにて塗布し、図3(a)に示すようなキャリア付の樹脂付き金属箔を得た。
【0134】
その一方で、図3(b)に示すように、絶縁基材に、厚さ18μmの金属箔を両面に貼り合わせた厚さ0.2mmのガラス布基材エポキシ銅張積層板であるMCL−E−679(日立化成工業株式会社製、商品名)を用い、その不要な箇所の金属箔をエッチング除去し、スルーホール26を形成して、内層導体回路24を形成し、内層回路板25を作製した。
【0135】
その内層回路板25の内層導体回路24の処理を、MEC etch BOND CZ−8100(メック株式会社製、商品名)を用い、液温35℃、スプレー圧0.15MPの条件で、スプレー噴霧処理し、銅表面を粗面化して、粗さ3μm程度の凹凸を作り、MEC etch BOND CL−8300(メック株式会社製、商品名)を用いて、液温25℃、浸漬時間20秒間の条件で浸漬して、銅表面に防錆処理を行った。
【0136】
図3(c)に示すように、図3(a)で作製したキャリア付の樹脂付き金属箔を、170℃30kgf/cmの条件で60分加熱加圧ラミネートした後、キャリアである銅箔を引き剥がした。
【0137】
図3(d)に示すように、銅箔上から炭酸ガスインパクトレーザー穴あけ機L−500(住友重機械工業株式会社製、商品名)により、直径80μmの非貫通穴27をあけ、過マンガン酸カリウム65g/リットルと水酸化ナトリウム40g/リットルの混合水溶液に、液温70℃で20分間浸漬し、スミアの除去を行った。
【0138】
その後、パラジウム溶液であるHS−202B(日立化成工業株式会社製、商品名)に、25℃で15分間浸漬し、触媒を付与した後、CUST−201(日立化成工業株式会社製、商品名)を使用し、液温25℃、30分の条件で無電解銅めっきを行い、図3(e)に示すように厚さ0.3μmの無電解銅めっき層28を形成した。
【0139】
図3(f)に示すように、ドライフィルムフォトレジストであるRY−3025(日立化成工業株式会社製、商品名)を、無電解めっき層28の表面にラミネートし、電解銅めっきを行う箇所をマスクしたフォトマスクを介して紫外線を露光し、現像してめっきレジスト29を形成した。
【0140】
図3(g)に示すように、硫酸銅浴を用いて、液温25℃、電流密度1.0A/dmの条件で、電解銅めっきを20μmほど行い、最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=25/15μmとなるようにパターン電気めっき30を形成した。
【0141】
次に図3(h)に示すように、レジスト剥離液であるHTO(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)でドライフィルムの除去を行った後にHSO20g/L、H10g/Lの組成のエッチング液を用いてパターン部以外の銅をエッチング除去した。エッチング時は基板を片面1dmの小片に切断した後、1Lビーカーに入れ、マグネティックスターラーを用いて40℃で5分間エッチングを行った。
【0142】
最後に上記表1に示す条件で導体回路に金めっき31を行った(図3(i))。最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=20/20μmであった。
【0143】
(実施例17)
金属箔2の表面に樹脂組成物1を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0144】
(実施例18)
金属箔2の表面に樹脂組成物2を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0145】
(実施例19)
金属箔4の表面に樹脂組成物2を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0146】
(実施例20)
金属箔1の表面に樹脂組成物3を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0147】
(実施例21)
金属箔2の表面に樹脂組成物3を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0148】
(実施例22)
金属箔3の表面に樹脂組成物3を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0149】
(実施例23)
金属箔4の表面に樹脂組成物3を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0150】
(実施例24)
金属箔3の表面に樹脂組成物1を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0151】
(実施例25)
金属箔4の表面に樹脂組成物1を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0152】
(実施例26)
金属箔1の表面に樹脂組成物2を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0153】
(実施例27)
金属箔3の表面に樹脂組成物2を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0154】
(実施例28)
金属箔5の表面に樹脂組成物3を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0155】
(実施例29)
金属箔6の表面に樹脂組成物3を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0156】
(実施例30)
金属箔7の表面に樹脂組成物3を塗布し、キャリア付の樹脂付き金属箔を作製した他は実施例16と同様に基板を作製した。
【0157】
測定条件
(1) 導体表面粗さ
実施例および比較例で得られた基板の導体表面粗さをJIS−B−0601に基づき測定した。
【0158】
(2)引き剥がし強さ(ピール強度)
実施例および比較例で得られた基板の導体回路の引き剥がし強さを、引きはがし幅1mmとした以外は、JIS−C−6481に準拠した条件で測定した。測定は、基板作製後、150℃加熱試験後、PCT試験後の各3回行った。引き剥がし幅を細くすると、吸湿劣化が起こりやすく、引き剥がし強さは10mm幅で測定するよりも弱くなる傾向がある。
・150℃加熱試験用サンプル
実施例および比較例で得られた基板を150℃で240時間気相放置した。
・プレッシャークッカー試験(PCT試験)
実施例および比較例で得られた基板を121℃、2気圧、湿度100%の条件で72時間放置した。
【0159】
(3)比誘電率、誘電正接
絶縁樹脂組成物1〜3の硬化物を作製し、誘電特性を評価した。サンプルは実施例16、18、20で得た樹脂付き金属箔の樹脂側を重ね合わせてプレス硬化し、この後、金属箔をエッチングしたものを用いた。プレス条件は、昇温速度5℃/min、硬化温度180℃、硬化時間90min、圧力2.0MPaとした。得られた樹脂硬化物の1GHzにおける比誘電率及び誘電正接をヒューレットパッカード株式会社製インピーダンス−マテリアルアナライザHP4291Bで測定した。
【0160】
(4)導体トップ幅、スペース幅
実施例および比較例で得られた基板の回路形成後の回路導体幅/回路導体間隔(L/S)を光学顕微鏡にて上部から撮影し、画像処理を行ったデータ―を元に任意に20点測定し、平均を算術した。
【0161】
(結果)
実施例1〜15および比較例1で得られた基板の導体表面粗さ、比誘電率、誘電正接、ピール強度、導体トップ幅およびスペース幅の結果を表2に示す。また、同様に実施例16〜30で得られた基板の導体表面粗さ、比誘電率、誘電正接、ピール強度、導体トップ幅およびスペース幅の結果を表3に示す。
【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

【0164】
表2および3より、実施例1〜30で得られた基板は、導体トップ幅とスペース幅が略同一であり、良好な回路を形成していることがわかる。図4、5および6は、それぞれ実施例の樹脂組成物1,2および3を用い、実施例1と同様にして作製された基板の回路のSEM写真であるが、L/S=20/20μm、25/25μm、30/30μmのいずれにおいても回路形成が良好であること分かる。また、特に、実施例1〜14、16〜29で作製した基板は初期ピール強度と平坦性が共に優れており、さらに、実施例1〜8、11、12、16〜23、26、27は、加熱後のピール強度にも優れ、実施例1〜8、16〜23は、吸湿後のピール強度にも優れる。また、実施例3、4、11、12、18、19、26および27は誘電率や誘電正接が低く、電気信号の低損失が要求される用途に好適であり、特に、実施例3、4、18および19は、誘電率、誘電正接及びピール強度に極めて優れる。
【0165】
一方、比較例1は金属箔に粗化層があるために過剰なエッチングが必要となり導体トップ幅が細くなってしまい、また、導体表面が粗く、電気特性上好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の金属張積層板を用いてプリント配線板を製造する方法の一例を示す断面図である。
【図2】実施例1〜15および比較例1の評価に用いる基板の製造方法を示す断面図である。
【図3】実施例16〜30の評価に用いる基板の製造方法を示す断面図である。
【図4】実施例の樹脂組成物1を用いて作製された基板回路の写真。
【図5】実施例の樹脂組成物2を用いて作製された基板回路の写真。
【図6】実施例の樹脂組成物3を用いて作製された基板回路の写真。
【符号の説明】
【0167】
1 プリプレグ
2 金属箔
3 貫通スルーホール
4 無電解めっき層
5 めっきレジスト
6 回路パターン
7 絶縁層
8 金属箔
9 IVH
10 無電解めっき層
11 めっきレジスト
12 回路パターン
13 絶縁層
14 銅箔
15 貫通スルーホール
16 無電解銅めっき層
17 めっきレジスト
18 パターン電気銅めっき
19 ニッケルめっき層
20 金めっき層
21 キャリア金属箔
22 金属箔
23 樹脂
24 内層導体回路
25 絶縁層
26 スルーホール
27 IVH
28 無電解銅めっき
29 レジスト
30 パターン電気めっき
31 Ni/Auめっき

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂組成物層と、前記絶縁樹脂組成物層の片面もしくは両面に固着してなる金属箔とを有する樹脂付き金属箔において、前記絶縁樹脂組成物層が、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂を含有し、前記金属箔の絶縁樹脂組成物層と接する面または前記金属箔の両面が防錆処理、クロメート処理およびシランカップリング処理されており、かつ前記金属箔の表面粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることを特徴とする樹脂付き金属箔。
【請求項2】
前記防錆処理がニッケルを含む金属で処理されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂付き金属箔。
【請求項3】
150℃で240時間加熱した後の前記絶縁樹脂組成物層と前記金属箔の引き剥がし強さが0.8kN/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂付き金属箔。
【請求項4】
硬化後の前記絶縁樹脂組成物の1GHzにおける比誘電率が3.0以下または誘電正接が0.01以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂付き金属箔。
【請求項5】
絶縁樹脂組成物層と、前記絶縁樹脂組成物層の片面もしくは両面に固着してなる金属箔とを有する金属張積層板において、前記絶縁樹脂組成物層が、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂を含有し、前記金属箔の絶縁樹脂組成物層と接する面または前記金属箔の両面が防錆処理、クロメート処理およびシランカップリング処理されており、かつ前記金属箔の表面粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることを特徴とする金属張積層板。
【請求項6】
前記防錆処理がニッケルを含む金属で処理されていることを特徴とする請求項5に記載の金属張積層板。
【請求項7】
150℃で240時間加熱した後の前記絶縁樹脂組成物層と前記金属箔の引き剥がし強さが0.8kN/m以上であることを特徴とする請求項5に記載の金属張積層板。
【請求項8】
硬化後の前記絶縁樹脂組成物の1GHzにおける比誘電率が3.0以下または誘電正接が0.01以下であることを特徴とする請求項5に記載の金属張積層板。
【請求項9】
請求項1に記載の樹脂付き金属箔、請求項5に記載の金属張積層板またはこれらの組み合わせを用いて製造されることを特徴とするプリント配線板。
【請求項10】
前記絶縁樹脂組成物層と1mm幅の導体回路の引き剥がし強さが0.6kN/m以上であることを特徴とする請求項9に記載のプリント配線板。
【請求項11】
請求項1に記載の樹脂付き金属箔、請求項5に記載の金属張積層板の金属箔またはこれらの組み合わせを給電層としたパターン電気めっきにより導体回路を作製する工程を有するプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
導体回路形成後、給電層である前記金属箔をエッチング除去する際、化学反応律速となるエッチング液を用いることを特徴とする請求項11に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
前記エッチング液がハロゲン元素を含まない酸と過酸化水素とを主成分として含むことを特徴とする請求項12に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項14】
前記ハロゲン元素を含まない酸が硫酸であることを特徴とする請求項13に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項15】
前記硫酸の濃度が5〜300g/L、前記過酸化水素の濃度が5〜200g/Lであることを特徴とする請求項14に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載の樹脂付き銅箔、請求項5に記載の金属張積層板の金属箔またはこれらの組み合わせを給電層とし、該金属箔上にパターン電気めっきにより導体回路を形成する工程、
前記導体回路形成後、該導体回路部以外の前記金属箔を、化学反応律速となるエッチング液によりエッチング除去する工程、および
前記導体回路に無電解金めっきを施す工程、
を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18588(P2009−18588A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207015(P2008−207015)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【分割の表示】特願2003−57957(P2003−57957)の分割
【原出願日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】