樹脂充填基板の製造方法
【課題】
開口部に凹みの発生がない充填基板の製造方法を提供することである。
【解決手段】
基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填する工程(a)と、
非接触ロール(R)及びドクター(Z)を基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させて過剰の樹脂ペースト(J)を除去する工程(b)とを含み、
ドクター(Z)を非接触ロール(R)の直線移動方向の反対側面に近接又は接触するように配すると共に、ドクター(Z)の先端部を基板面に接触させて、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が直線移動方向と逆となるようにして移動速度(i)よりも大きな周速度(v)(mm/秒)で非接触ロール(R)を回転させることを特徴とする樹脂充填基板の製造方法を用いる。
開口部に凹みの発生がない充填基板の製造方法を提供することである。
【解決手段】
基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填する工程(a)と、
非接触ロール(R)及びドクター(Z)を基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させて過剰の樹脂ペースト(J)を除去する工程(b)とを含み、
ドクター(Z)を非接触ロール(R)の直線移動方向の反対側面に近接又は接触するように配すると共に、ドクター(Z)の先端部を基板面に接触させて、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が直線移動方向と逆となるようにして移動速度(i)よりも大きな周速度(v)(mm/秒)で非接触ロール(R)を回転させることを特徴とする樹脂充填基板の製造方法を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂充填基板の製造方法に関する。さらに詳しくは基板{プリント配線板やシリコンウェハー等の電子基板等}に設けられた開口部(凹部や貫通孔等)を樹脂ペースト(J)で充填した樹脂充填基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空雰囲気下で、開口部(下端部が閉鎖された有底孔)を有する基板の全面に、スキージを用いて樹脂ペースト層を形成し、次いで、真空度を低下(大気圧に近づける)させることにより、開口部に樹脂ペーストを充填させた後、大気圧下で樹脂層(過剰の樹脂ペースト)をスキージでかき取ることにより、樹脂充填基板を製造する方法(特許文献1)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−188308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の製造方法では、基板の開口部へ充填されたなかった過剰の樹脂ペースト(樹脂層)がスキージで掻き取る際に、開口部の上部の樹脂ペーストも除去されてしまうため、開口部に凹みが発生するという問題がある。
本発明の目的は、開口部に凹みの発生がない充填基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果本発明に達した。すなわち本発明の樹脂充填基板の製造方法は、基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填すると共に、少なくとも開口部上に樹脂層を形成する工程(a)と、
非接触ロール(R)及びドクター(Z)を基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させて樹脂層を除去する工程(b)とを含み、
ドクター(Z)を非接触ロール(R)の直線移動方向の反対側面に近接又は接触するように配すると共に、ドクター(Z)の先端部を基板面に接触させて、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が直線移動方向と逆となるようにして移動速度(i)よりも大きな周速度(v)(mm/秒)で非接触ロール(R)を回転させる点を要旨とする。
ここで、非接触ロール(R)及びドクター(Z)の直線移動は、非接触ロール(R)及びドクター(Z)と基板とが相対的に直線移動すればよい。従って、停止している基板に対して非接触ロール(R)及びドクター(Z)が移動してもよく、停止している(回転運動は行っている)非接触ロール(R)及びドクター(Z)に対して基板が移動してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によると、開口部に凹みの発生がない。すなわち、本発明の製造方法によると、基板の開口部へ充填されたなかった過剰の樹脂ペースト(樹脂層)を掻き取る際に、開口部の上部の樹脂ペーストが除去されることがないため、開口部に凹みが発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法に適用できる基板としては、JIS C6480−1994「プリント配線板用銅張積層板通則」で定義されるプリント配線板用銅張積層板(ガラス布基材エポキシ樹脂、ガラス布基材ポリイミド樹脂、ガラス布基材ビスマレイミド/トリアジン/エポキシ樹脂等)が好ましいが、熱可塑性樹脂(ポリフェニレンエーテル等)や無機フィラー(シリカ等)が混合された銅張積層板や、他の電子基材(シリコンウェハー、ガラス等)等にも適用できる。また銅張積層板を用いて回路形成や絶縁層形成がなされたプリント配線板用コア基板にも適用できる。さらに、金属、石、ガラス、コンクリート及び/又はプラスチック等で製造された基材にも適用できる。
【0008】
開口部とは、基板にドリルや炭酸ガスレーザー等を用いて形成した貫通孔(いわゆるスルーホール)であったり、基板上の有底孔(いわゆるビアホール)であったり、基板上に回路が形成された後の回路間の凹部や基板の一部を削り取って形成された凹部や基板上に感光性樹脂を用いて形成したパターン間の凹部等を意味する。開口部の深さは、開口部がスルーホールである場合は基板厚みとなり、通常0.2〜3.0mm程度であるが、0.2mm未満の薄板基板や3.0mmを超える厚板基板等にも適用できる。一方、開口部がビアホールや回路間等の凹部の場合、開口部の深さは、0.1mm以下である場合が多い。開口部の開口面積は、開口部がスルーホールやビアホールの場合、穴径が0.05〜0.5mm程度であるので、0.002〜0.2mm2程度である。開口部が回路間の凹部等の場合、回路間隔が0.01〜1mm程度、回路長さが1mm〜100mm程度であるので0.01〜100mm2程度である。開口部の深さや開口面積はJIS C5012−1993「プリント配線板試験方法」に準拠して測定される。
【0009】
工程(a)は基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填すると共に、少なくとも開口部上に樹脂層を形成できる方法であれば特に制限はなく、公知の充填方法{たとえば、スクリーン印刷法(特開2002−158441号等)、ロール圧入法(特開2001−358433号等)、吸引法(特開2000−151097号等)、ディスペンス法(特開平7−188391号等)及び真空封止法(特開平11−298138号等)}等が適用できる。
これらの公知方法では通常印刷版(メタルマスク印刷版及びスクリーン印刷版等)が使用されるが、工程(a)においては印刷版を使用しなくても構わない。印刷版を使用する場合でも、開口部の位置や大きさに対応したパターンを有する高精度の印刷版である必要はなく、基板面全体に印刷するような印刷版で構わない。
なお、これらの公知方法では開口部の容積以上の樹脂を過剰に供給し樹脂を硬化させた後に過剰の樹脂を研磨して除去する方法が採用されているのに対して、本発明の製造方法では過剰の樹脂を供給するが樹脂を硬化させずに、過剰の樹脂を除去した後に樹脂を硬化させる点で相違するものである。
また、工程(a)には、ディップ法(特開平6−45734号等)、差圧充填法(特開2003−188308号等)、非接触ロール充填法(ロール圧入法の一種;特開2005−229094号、PCT/JP2005/22146等:記載内容を引用により明細書に取り入れる)も適用できる。
これらの充填方法のうち、ロール圧入法(非接触ロール充填法を含む)、吸引法及び差圧充填法が好ましく、さらに好ましくはロール圧入法、特に好ましくは非接触ロール充填法である。
【0010】
工程(a)において、樹脂ペースト(J)は開口部の容積よりも過剰の容量を供給する。このような過剰な容量としては、工程(a)により、開口部上(基板表面全体であってもよい)に樹脂層が形成されればよく、この樹脂層の厚み(μm)は1〜5000が好ましく、さらに好ましくは10〜1000、特に好ましくは50〜500である。
【0011】
工程(b)において、周速度(v)は移動速度(i)よりも大きければ制限はないが、移動速度(i)の1.2〜12倍が好ましく、さらに好ましくは1.7〜10倍、特に好ましくは2.5〜7.5倍である。この範囲内であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0012】
非接触ロール(R)の周速度(v)(mm/秒)は、{非接触ロール(R)の角速度(ω)}×{非接触ロール(R)の半径(r)}で表される。たとえば、直径50mmのロールが毎秒1回転する場合、この周速度は、2π(rad/秒)×25(mm)=157(mm/秒)となる。
【0013】
非接触ロール(R)の材質としては、金属(ステンレス等)、セラミックス(アルミナやジルコニア等)及び樹脂(エポキシ樹脂やポリウレタン等)等が使用できる。これらのうち、耐摩耗性や製造コストの観点等から、金属が好ましく、さらに好ましくはステンレスである。ロール表面は平滑であっても、凸部や凹部を有していてもよい。これらのうち、平滑であることが好ましい。
【0014】
非接触ロール(R)及びドクター(Z)は、非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向、かつ基板面に対して水平方向に直線移動できればその速度に制限はないが、この移動速度(i)(mm/秒)は、1〜100が好ましく、さらに好ましくは10〜70、特に好ましくは20〜50である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0015】
なお、非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向とは、移動方向と回転軸との角度が厳密に90°となる方向だけではなく、60〜120°となる方向を含むものである。
非接触ロール(R)の回転方向は、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と逆となる方向、すなわち、直線移動方向に非接触ロール(R)が転がるように回転する方向である。この反対方向(非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と同じとなる方向、すなわち、非接触ロール(R)が、直線移動方向と逆方向に非接触ロール(R)が転がるように回転する方向)に回転すると、本発明の目的を達成し得ない。
【0016】
非接触ロール(R)には、ドクター(Z){樹脂ペースト(J)掻き取り用スキージー}を配している。ドクター(Z)は、非接触ロール(R)の移動方向とは反対側に、非接触ロール(R)と近接又は接触するように配され、非接触ロール(R)と共に直線移動するものである。
【0017】
また、ドクター(Z)の先端部は、基板面に接触しながら、直線移動する。
ドクター(Z)の先端部の基板面への接触圧{基板面に対し垂直方向にかかるドクター(Z)の単位長さ当たりの荷重(荷重/ドクター長さ);線圧}(N/m)は、10〜2000が好ましく、さらに好ましくは100〜1600、特に好ましくは200〜1200である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0018】
また、ドクターの先端部の移動方向側には、基板表面に対して10〜70°の角度をもつ平面を有することが好ましく、さらに好ましく15〜60°、特に好ましくは20〜50°である(図1、2参照)。すなわち、ドクター(Z)は、直線移動方向の基板表面に対して上記の角度をもつ平面を有する先端部をもつことが好ましい。したがって、図1、2のような形状であってもよいし、直方体のドクターを傾斜させて保持することにより上記の角度をもつ先端部としてもよい。また、このような角度をもつ平面を有する先端部としては、曲面{円柱面、楕円柱面、双曲柱面、放物柱面及びこれらの一部分}を有する先端部を含む(図12参照)。曲面の曲率半径(mm)は、1〜100が好ましく、さらに好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜30である。なお、曲面の曲率半径は、基板面に対して垂直であり、ドクター(Z)の移動方向(ベクトル)を含む断面(ドクターの断面)によって形成される曲線であって、接触圧が印可していない状態における基板との接触する部分(先端部)の曲線についての曲率半径を意味する(図12)。
【0019】
ドクター(Z)の先端部の材質は、金属(ステンレス等)、セラミックス(アルミナやジルコニア等)及び樹脂(ポリアセタールやポリウレタン等)等が使用できる。これらのうち、樹脂が好ましく、さらに好ましくはポリアセタール及びポリウレタンである。
ドクター(Z)の先端部の硬度は、50〜95が好ましく、さらに好ましくは55〜85、特に好ましくは60〜80である。なお、硬度はJIS K6253−1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法 5.デュロメーター硬さ試験」に準拠して測定される。
ドクターの先端部以外の部分について、材質、硬度は、ドクターの先端部と同じでも相違していてもよい。また、ドクターの取り付け角度に制限はなく、垂直であってもよく、傾斜させてもよい。
【0020】
ドクター(Z)と非接触ロール(R)と基板との間に密閉空間が形成されるように、「ドクター(Z)と非接触ロール(R)と基板」の両末端に、ガード(堰板)(図9及び10参照)を配することが好ましい。このガードは、非接触ロール(R)及びドクターと共に直線移動する。
ドクター(Z)とガードには、非接触ロール(R)の回転により集められる樹脂ペースト(J)を(R)と共に移動方向に移動させる働きがある。さらに、ドクター(Z)と非接触ロール(R)と基板との間に掻き集められる樹脂ペースト(J)を加圧状態に保持する働きがある{非接触ロール(R)の回転により加圧状態が促進される。この加圧状態が、開口部の凹みの発生を抑制する}。
【0021】
基板表面と非接触回転ロール表面との最短間隔(mm)は、充填性の観点等から、0.1〜5が好ましく、さらに好ましくは0.3〜3、特に好ましくは0.5〜1.5である。この範囲であると、凹みの発生がさらに抑制される。
【0022】
工程(b)の後に充填基板上に残る樹脂層(樹脂ペーストの除去残渣)は、後工程で支障が無ければ多少残っても構わないが、平坦化(研磨)を実施する場合の負荷を低減する観点等から、20μm以下になるようにすることが好ましく、さらに好ましくは10m以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0023】
樹脂ペースト(J)は、工程(a)及び工程(b)の後に硬化工程(c)で硬化される。
硬化工程(c)は、樹脂ペースト(J)が熱硬化性樹脂の場合、加熱処理、(J)が活性エネルギー線硬化型樹脂の場合、活性エネルギー線(紫外線等)の照射処理、又は(J)が熱可塑性樹脂の場合、冷却処理により達成される。
硬化工程(c)の次に平坦化工程(d)を実施する場合、平坦化(研磨)の負荷を低減させるため、樹脂ペースト(J)は完全硬化させず、不完全硬化とすることが好ましい。不完全硬化とは、例えば樹脂ペースト(J)が熱硬化性樹脂で150℃で30分間のエネルギーで完全硬化する場合、硬化工程(c)を150℃で10分間程度の加熱処理を実施することを意味する。または樹脂ペースト(J)が活性エネルギー線硬化型樹脂と熱硬化性樹脂とを含み、1J/cm2の紫外線照射と150℃で30分間の熱エネルギーにより完全硬化する場合、硬化工程(c)を1J/cm2の紫外線の照射処理を実施することを意味する。
【0024】
硬化工程(c)の後に必要に応じて設けられる平坦化工程(d)は、基板表面に残った硬化樹脂(薄膜状残渣)を研磨して取り除いて平坦化するためである。従来の製造方法による場合、使用する印刷マスクの厚みに相当する膜厚10〜100μm程度の硬化樹脂が基板表面に残るため、平坦化工程(d)において、ベルトサンダーやセラミックロールバフ等の強力な研磨力を有する装置が必要である。一方、本発明の製造方法による場合、基板表面に残る硬化樹脂の膜厚は数μm以下であるので、不繊布ロールバフ研磨、デスミア処理(過マンガン酸塩処理)及びプラズマ処理等の弱い研磨のみで容易に平坦化できる。したがって、従来の製造方法のように強力な研磨力で平坦化すると、その負荷により基板に伸びが発生して、基板の反りや変形が生じるという問題が、本発明の製造方法を適用することにより防止できる。すなわち、本発明の製造方法を適用すると、弱い研磨力で平坦化できるため、基板の反りや変形を防止することができる(不良品の発生を低減できる)。さらに本発明の製造方法によると、平坦化工程(d)の時間も削減できる。
平坦化工程(d)の後、樹脂ペースト(J)を完全硬化させるため、後硬化工程(e)を設けてもよい。後硬化工程(e)は、平坦化工程(d)における研磨負荷を低減するために硬化工程(c)において樹脂ペースト(J)を不完全硬化とした場合等に、硬化を完全とするために実施される。後硬化工程(e)の条件は、樹脂ペースト(J)が完全に硬化すれば制限がないが、例えば樹脂ペースト(J)が熱硬化性樹脂の場合、100〜200℃で10分〜4時間程度であり、また、樹脂ペーストが活性エネルギー線硬化型樹脂の場合、1〜5J/cm2程度である。
【0025】
樹脂ペースト(J)は特に制限はなく公知のものが使用できるが、周波数1Hzにおけるtanδ{損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)}が3〜30である樹脂ペーストが好ましく、さらに好ましくは5〜25、特に好ましくは7〜20である樹脂ペーストである。この範囲であると、開口部の凹みの発生がさらに抑制できる。
【0026】
tanδ{損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)}は、「レオロジー工学とその応用技術」(株)フジ・テクノシステム、2001年1月12日 初版第1刷発行、第204〜206頁や米国特許第6635315号公報(記載内容を引用により明細書に取り入れる)に記載の応力制御方式で測定可能な粘弾性測定装置(例えば、HAAKE社製レオストレスRS75)を用いて充填時と同じ温度で測定した値であり、次のようにして求められる。
測定治具{上部コーン型円盤と下部平面円盤(図3参照、図3中の矢印は正弦振動の方向を示す)との間}に測定サンプルを挟み込み、上部コーン型円盤の上面に対して垂直な中心軸を軸として角速度(ω)(単位:rad/秒)を変化させながら正弦振動させることにより、測定サンプルに応力(σ)(単位:Pa)をかけて、その結果発生するひずみ(ε)(単位:rad)と位相角(δ)(単位:rad)とを測定する。周波数が1〜10Hzにおける位相角(δ)よりtanδを求める。
【0027】
以下に測定条件を示す。
測定装置:動的粘弾性測定装置(たとえば、HAAKE社製レオストレスRS75)
測定治具:直径20mmアルミニウム製円盤(上部コーン型円盤角度2度)
サンプル量:0.5mL
回転ずり応力:10Pa
測定温度:23℃
周波数:1〜10Hz
【0028】
上記のtanδを有する樹脂ペースト(J)としては、フィラー(F)と硬化性樹脂(K)及び/又は熱可塑性樹脂(N)との混合物等から構成される。
フィラー(F)としては、公知の無機フィラー及び有機フィラーが使用できる。
無機フィラーとしては、酸化物{シリカ(酸化ケイ素)、チタニア(酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、チタン酸バリウム等}、炭酸塩{炭酸カルシウム等}、硫酸塩{硫酸バリウム等}、金属{金、白金、銅、銀、ニッケル、スズ、タングステン、鉄等及びこれらの複合体(これらの混合成形体及び固溶体等を含む)等}等が挙げられる。これらのうち、シリカ、銅及び銀が好ましい。
有機フィラーとしては、アクリル樹脂粉、エポキシ樹脂粉、フッ素樹脂粉、ポリエーテルスルフォン樹脂粉、シリコーン樹脂粉及びナイロン樹脂粉等が挙げられる。これらのうち、アクリル樹脂粉が好ましい。
【0029】
フィラー(F)の含有量(重量%)は、硬化収縮率及び熱膨張係数の観点等から、樹脂ペースト(J)の重量に基づいて、30〜95が好ましく、さらに好ましくは50〜90、特に好ましくは60〜85である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0030】
フィラー(F)の体積平均粒子径(μm)は、0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20、特に好ましくは1.0〜10である。この範囲であると、開口部の未充填や充填過多、ボイドの発生がさらに抑制される。
なお、体積平均粒子径は、JIS Z8825−1−2001「粒子径解析−レーザー回折法」に準拠した測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所製 商品名SALD−1100型等)で測定される。
【0031】
フィラー(F)の形状は、球状、涙滴状、角状、樹枝状、片状、粒状、不規則形状、針状、繊維状{JIS Z2500:2000「粉末や金用語」4.用語および定義、4)粉末の粒子形状}等のいずれでもよいが、開口部の充填性の観点等から、球状、涙滴状、片状及び粒状が好ましく、さらに好ましくは球状である。
【0032】
フィラー(F)は単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、球状のシリカと球状の銅粉と粒状の硫酸バリウムの組み合わせ等である。
【0033】
硬化性樹脂(K)としては、熱硬化性樹脂及び活性エネルギー線硬化性樹脂等が含まれる。
熱硬化性樹脂としては、特開2004−149758号公報に記載されたエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等が使用できる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特開2004−149758号公報に記載のエポキシ樹脂や、特開2001−330951号公報に記載された重合性二重結合を有する化合物及び光ラジカル発生剤からなる組成物等が使用できる。
【0034】
熱硬化性樹脂のうち、液状エポキシ樹脂(液状エポキシド及び硬化剤から構成される)が好ましい。
液状エポキシドは25℃で液状であるエポキシドを意味するが、25℃で固状であるエポキシドを液状であるエポキシドと共に用いて全体として液状となるものも含まれる。液状エポキシドのうち、ビスフェノールF型エポキシド、ビスフェノールA型エポキシド及びグリシジルアミン型エポキシドが好ましく、さらに好ましくはビスフェノールF型エポキシド及びビスフェノールA型エポキシド、特に好ましくはビスフェノールF型エポキシドである。これらの液状エポキシドは1種又は2種以上の混合物でもよい。
硬化剤のうち、フェノール化合物、有機酸無水物、アミン化合物、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、有機酸ヒドラジド化合物及び固体分散型アミンアダクト(潜在性硬化剤)が好ましく、さらに好ましくはフェノール化合物、有機酸無水物、イミダゾール化合物である。これら硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては重合性二重結合を有する化合物及び光ラジカル発生剤からなる組成物が好ましい。
重合性二重結合を有する化合物のうち、多価アルコール又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル{ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等}、ウレタン(メタ)アクリレート{イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、多価イソシアネートと活性水素含有基(ヒドロキシ基、カルボキシ基及びアミノ基等)を有する(メタ)アクリレートとの反応物:ヘキサメチレンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの反応物等}及びエポキシ(メタ)アクリレート{多官能エポキシドと(メタ)アクリル酸との反応物:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート及びフェノールノボラック(メタ)アクリレート等}が好ましく、さらに好ましくは多価アルコール又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである。
これらの重合性二重結合を有する化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、「・・・(メタ)アクリ・・」とは、「・・・アクリ・・」、「・・・メタクリ・・」を意味する。
【0036】
光ラジカル発生剤としては、ジフェニル−(2,4,6−トリエチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン等が好ましい。これらの光ラジカル発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
これら硬化性樹脂(K)は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化性樹脂を用いる場合、硬化性樹脂の含有量(重量%)は、フィラー(F)の重量に基づいて、5〜200が好ましく、さらに好ましくは10〜100、特に好ましくは20〜65である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0038】
熱可塑性樹脂(N)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリウレタン及びフェノキシ樹脂等が使用できる。 熱可塑性樹脂は、溶剤(水、有機溶媒等)に溶解して液状化し、充填後、溶剤を留去することにより、固状とするか、または、充填の際に、その融点以上の温度で溶融液状化し、充填後に室温(25℃程度)に戻すことにより、固状とするものである。したがって、後者の場合、この融点が高すぎると樹脂の劣化や装置の耐熱性等の問題が懸念されるため、熱可塑性樹脂の融点(℃)は、100〜250が好ましく、さらに好ましくは120〜200、特に好ましくは140〜180である。一方、前者の場合、熱可塑性樹脂の融点に制限はなく、高融点のものも使用できる。
【0039】
熱可塑性樹脂(N)を用いる場合、熱可塑性樹脂の含有量(重量%)は、フィラー(F)の重量に基づいて、5〜200が好ましく、さらに好ましくは10〜100、特に好ましくは20〜65である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0040】
硬化性樹脂(K)及び熱可塑性樹脂(N)を用いる場合、硬化性樹脂の含有量(重量%)は、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、40〜99が好ましく、さらに好ましくは50〜95、特に好ましくは60〜90である。また、この場合、熱可塑性樹脂の含有量(重量%)は、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、1〜60が好ましく、さらに好ましくは5〜50、特に好ましくは10〜40である。これらの範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0041】
樹脂ペースト(J)には、さらに通常使用される添加剤{消泡剤、分散剤、有機・無機着色剤、難燃剤及び/又は揺変剤}を添加してもよい。消泡剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.05〜5が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3、特に好ましくは1〜2である。分散剤を添加する場合、この含有量(重量%)はフィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。有機・無機着色剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。難燃剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.5〜10が好ましく、さらに好ましくは0.8〜8、特に好ましくは1〜5である。揺変剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。
【0042】
樹脂ペースト(J)にはさらに溶剤を含んでもよいが、充填時に大気圧以下にする場合、ボイド発生を防ぐために充填時の真空度及び温度における(J)に含まれる揮発分は10重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。なお、揮発分はJIS K0067−1992「化学製品の減量及び残分試験方法」4.1.4(1)第1法 大気圧下で加熱乾燥する方法(105±2℃、2時間)に準拠して測定される。このような溶剤としては、炭化水素溶剤(トルエン及びキシレン等)、グリコールエーテル溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びトリエチレングリコールジメチルエーテル等)及びケトン溶剤(メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)等が使用できる。
溶剤を含有させる場合、溶剤の含有量(重量%)は、樹脂ペースト(J)の重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5、特に好ましくは0.1〜1.0である。
【0043】
樹脂ペースト(J)のtanδは、フィラー(F){含有量、体積平均粒子径及び/又は形状等}、硬化性樹脂(K)、熱可塑性樹脂(N)、添加剤(特に揺変剤;種類や含有量等)によって調整できる。
すなわち、tanδに影響を及ぼす因子は、フィラー等の粒子間相互作用が主であり、粒子間相互作用が小さいとtanδは大きくなる傾向があり、粒子間相互作用が大きいとtanδが小さくなる傾向がある{「レオロジー工学とその応用技術」(株)フジ・テクノシステム、2001年1月12日 初版第1刷発行、第170〜198頁}。
そして、フィラーや揺変剤等を含有しない場合、tanδは10000以上の値となり、フィラーや揺変剤を多量に含有する場合はtanδは0に近い値まで下げることができる。
【0044】
樹脂ペースト(J)の硬化工程における体積収縮率(体積%)は開口部の凹みを小さくするために2.0体積%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。体積収縮率(体積%)はJIS K6901−1999「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」付属書3体積収縮率に準拠して測定される。
【0045】
樹脂ペースト(J)は、フィラー(F)、硬化性樹脂(K)及び/又は熱可塑性樹脂、必要により添加剤が均一撹拌混合することにより得られる。混合機としては、均一撹拌混合できるものであれば制限がなく、たとえば、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、2本ロールミル、ニーダー、エクストルーダー及びハイスピードディスパーサーが使用できる。
【0046】
撹拌・混合温度(℃)としては、硬化性樹脂(K)の異常硬化やゲル化の防止の観点等から、5〜40が好ましく、さらに好ましくは10〜35、特に好ましくは20〜30である。
混合時間としては、混合機の種類や大きさなどによって適宜決定でき、均一混合できれば制限がないが、30〜200分が好ましく、さらに好ましくは45〜120分、特に好ましくは60〜90分である。なお、混合の際、減圧しながら混合してもよい。
【0047】
樹脂ペースト(J)は市場から入手でき、サンノプコ株式会社製のノプコキュアSVC−710(熱硬化性穴埋め樹脂ペースト)、ノプコキュアSVC−712(熱硬化性穴埋め樹脂ペースト)、ノプコキュアSVC−720(熱硬化性銅ペースト);タツタシステムエレクトロニクス株式会社製のDDペーストAE3030(導電性銅ペースト)、DDペーストAE1125HD(熱硬化性銅ペースト);化研テック株式会社製のTKペーストCT−1129(導電性銀ペースト)等が挙げられる。
【0048】
本発明の製造方法により得られた樹脂充填基板に、絶縁層及び/又は配線層を(交互に)積層することによって(必要により、さらに上記の充填工程を設けてもよい)、いわゆるビルドアップ多層プリント配線板を得ることができる{「ぷりんとばんじゅくIV 新入社員のためのビルドアップ配線板入門」、社団法人日本電子回路工業会発行(2001年)}。
例えば、配線層は、開口部へ樹脂ペースト(J)を充填し、これを硬化させた後(基板表面に樹脂層を形成した場合を含む)、デスミア処理等により粗化し、無電解めっき(銅等)及び電解めっき(銅等)等により導電体層を形成し、さらに、不要部分をエッチング等して除去することにより形成される。
本発明の製造方法では、樹脂ペースト(J)の充填後の開口部が平坦性に優れているため(凹みが発生しないため)、導体の厚みや幅が均一な配線層を容易に形成できる。
【実施例】
【0049】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下に示す充填装置、樹脂ペースト及び基板を用いて、樹脂充填基板を製造した。
<充填装置(図4〜11を参照)>
充填装置は、真空チャンバー(3)内に、基板固定台(4)、ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(13)を配している。ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(13)は一体になって、基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(8)の回転軸に対して垂直方向に直線移動できるようになっている。
ドクター(7)の先端部と基板面の間隔は任意に設定できるようになっており、基板と接触させて基板上に残る過剰の樹脂ペースト(9)をかきとることができるようになっている。また、ドクター(7)は硬度80度のポリウレタン樹脂製であり、幅70mm、厚み20mm、長さ510mmであり、この先端部は図11に図示した形状(上下2カ所)を持つ。そして、非接触ロール(8)の移動方向の変化に追従するため、非接触ロール(8)の回転軸(10)を中心軸として回転させて、非接触ロール(8)の移動方向と反対側に配することができるように構成されている。ドクター(7)は上下を反対に配することにより、基板面と接する角度を変更できるようになっている{工程(a)では図11のA側(角度15°側で樹脂ペーストが掻き取られる)を使用し、工程(b)では上下を反転してB側(角度45°側で樹脂ペーストが掻き取られる)を使用する}。
ガード(13)は、ドクター(7)及び非接触ロール(8)の両末端部から樹脂ペースト(J)がはみ出すの防止できるようになっている。ガード(13)は、ポリアセタール製板(高さ80mm、幅100mm、厚さ20mm)の中央部に直径51mmの貫通孔を設けたものである{貫通孔は非接触ロール(8)と基板固定台(4)との間が0.1mmとなる位置に存在する}。そして、この穴に、非接触ロール(8)の末端部がはめ込まれるようになっている。また、ガード(13)は、基板固定台(4)の上面、及びドクター(7)の両末端部と接するようになっている。
非接触ロール(8)は、基板面との最短間隔を任意に設定出来るようになっている。また、非接触ロール(8)の回転軸より基板側の部分の回転方向がドクター(7)及び非接触ロール(8)の移動方向とは逆となるようにして{非接触ロール(8)の直線移動方向に前転するようにして}、周速度(v)(mm/秒)で回転できるようになっている。
非接触ロール(8)の材質は表面が平滑なステンレス製であり、この大きさは直径50mm、長さ550mmである。
真空チャンバー(3)内は、減圧にすることができる。
基板固定台(4)には基板の下面より吸引できるように排気口(14)が設けられている。
【0050】
<樹脂ペースト>
表1に示した組成及び比率(重量部)で、プラネタリーミキサー(商品名「PLM−50」、株式会社井上製作所製、公転回転数:20rpm、温度:22℃、時間:30分間)でプレミックスした後、3本ロール(商品名「HHC−178X356」、株式会社井上製作所製、ロール間の圧力:3MPa、温度:22℃、パス回数:2回)で混練することにより、樹脂ペーストJ1〜J9を得た。
粘弾性測定装置(HAAKE社製レオストレスRS75)を用いて、温度23℃、周波数1Hzにおけるtanδを測定し表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
シリカ :龍森(株)製 TH6V(体積平均粒子径6μm球状シリカ)
硫酸バリウム :堺化学工業(株)製 B34
(体積平均粒子径0.3μmの粒状硫酸バリウム)
炭酸カルシウム :日東粉化工業(株)製 TSS#1000
(体積平均粒子径1.2μmの重質炭酸カルシウム)
銅粉 :日本アトマイズ加工(株)製 HXR−Cu
(体積平均粒子径5μm球状銅粉)
ビスフェノールF型エポキシド:大日本インキ製造(株)製 エピクロン830
ビスフェノールA型エポキシド:大日本インキ製造(株)製 エピクロン850
硬化剤 :四国化成(株)製イミダゾール 2MZ−A
(2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕 −エチル−s−トリアジン)
DPE−6 :ジペンタエリストールヘキサアクリレート
{共栄社(株)製 DPE−6A}
光ラジカル発生剤:チバスペシャリティーケミカルス(株)製 イルガキュア184
消泡剤 :共栄社(株)製 フローレンAC326F(アクリル共重合物)
揺変剤 :楠本化成(株)製 ディスパロン3900(ポリアマイド)
【0053】
<基板>
FR−4両面銅張積層板(JIS C6480−1994「プリント配線板用銅張積層板通則」に準拠したもの)を用いて、表2に示す開口部を有するコア基板を特開2002−141661号公報に準拠して作成した。
【0054】
【表2】
【0055】
<実施例1>
工程(a):離型フィルム(5){基板と同じサイズのポリエステルフィルム(パナック株式会社製 再剥離フィルムGS 厚み50μm)}を基板K1(6)の裏面に貼り付けた。これを、基板固定台(4)の凹部(基板厚みと離型フィルム(5)厚み合計と同じ深さ)にはめ込み、排気口(15)から排気吸引して固定した。次いで、樹脂ペーストJ1を基板(6)の端部に載せた後(図4)、真空チャンバー(3)内を0.15kPaまで減圧にし、移動速度(ia)30.0mm/秒、周速度(va)75.0mm/秒、非接触ロール(8)と基板(6)との最短間隔1.2mm、ドクター(7)の先端部と基板(6)との間隔0.5mm、ドクター面と基板面との角度が15°(図11のA側)にして、充填を行った後、真空チャンバー内(3)を大気圧に戻し(図4〜6)、樹脂層を有する基板を得た。
【0056】
工程(b):工程(a)に引き続き(基板を取り除かないでそのまま)、ドクター(7)を、非接触ロール(8)の回転軸(10)を中心軸として反転させ、非接触ロール(8)に対し反対側に配置し、大気圧の真空チャンバー内で、工程(a)の移動方向とは反対方向に移動速度(i)20mm/秒、周速度(v)50mm/秒、ドクター(7)の先端部の基板面への接触圧800N/m、ドクター面と基板面との角度を45°(図11のB側)にして、基板上の過剰の樹脂をかき取り(図7、8)、充填基板を得た。
【0057】
充填基板を、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱硬化{硬化工程(c)}させた後、離型フィルム(5)を取り除き硬化基板を得た。次いで、1軸不繊布バフ研磨装置(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化{平坦化工程(d)}した後、循風式加熱オーブン中で150℃、30分間加熱硬化{後硬化工程(e)}させて、樹脂充填基板1を得た。次いで、開口部のあった充填箇所について、無作為に各100箇所を選択し、次のようにして充填不良発生数を評価した。
【0058】
<充填不良発生数>
卓上ハンドカッター(商品名「ハンドカッターPC−300」サンハヤト株式会社製)を用いて基板を基板面に対して垂直に切断し、研磨/琢磨機(商品名「Struers Planopol−3」、丸本工業株式会社製)を用いて切断面を研磨して開口部のあった充填断面を整面した。そして、この充填断面を顕微鏡(倍率100倍)で観察し、開口部に発生した凹みを数え、この数(不良発生数)を表3に示した。
なお、充填された樹脂の表面と開口部周辺の基板面との段差が10μm以上あるものを凹みとした。
【0059】
<実施例2〜46>
基板(6)、樹脂ペースト(9)、工程(b)における移動速度(i)、周速度(v)、非接触ロールと基板との最短間隔を、表3に記載した内容に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂充填基板2〜46を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表3に示した。ただし、実施例42〜45の工程(b)においてドクター(7)は円柱面(曲率半径10mm)をもつ先端部を有するドクター(図12)を使用した。また、実施例29及び30については、硬化工程(c)の条件を1J/cm2の紫外線照射とした。
【0060】
【表3】
【0061】
<実施例47>
工程(a): 基板固定台(4)の上に離型フィルム(5){基板と同じサイズの不繊布シート(旭化成株式会社製 ベンコットM3)}を置き、基板K1(6)を固定台(4)の凹部(基板厚みと離型フィルム(5)厚み合計と同じ深さ)にはめ込むことにより固定した{離型フィルム(5)と基板K1(6)とは接着していない}。次いで、樹脂ペーストJ1を基板の端部に載せた後(図4)、基板固定台下部の排気口(15)から吸引しながら、移動速度(ia)30.0mm/秒、周速度(va)75.0mm/秒、非接触ロール(8)と基板(6)との最短間隔0.8mm、ドクター(7)の先端部と基板(6)との間隔0.1mm、ドクター面と基板面との角度が15°(図11のA側)にして充填を行った後、吸引を停止し(図4〜6)、樹脂層を有する基板を得た。
【0062】
工程(b):工程(a)に引き続き(基板を取り除かないでそのまま)、ドクター(7)を、非接触ロール(8)の回転軸(10)を中心軸として反転させ、非接触ロール(8)に対し反対側に配置し、大気圧の真空チャンバー内で、工程(a)の移動方向とは反対方向に移動速度(i)20mm/秒、周速度(v)50mm/秒、ドクター(7)の先端部の基板面への接触圧1200N/m、ドクター面と基板面との角度を45°(図11のB側)にして、基板上の過剰の樹脂をかき取り(図7、8)、充填基板を得た。
【0063】
充填基板を、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱硬化{硬化工程(c)}させた後、離型フィルム(5)を取り除き硬化基板を得た。次いで、1軸不繊布バフ研磨装置(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化{平坦化工程(d)}した後、循風式加熱オーブン中で150℃、30分間加熱硬化{後硬化工程(e)}させて、樹脂充填基板47を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表4に示した。
【0064】
<実施例48〜66>
基板(6)、樹脂ペースト(9)、工程(b)における移動速度(i)、周速度(v)、非接触ロールと基板との間隔を、表3に記載した内容に変更した以外は実施例47と同様にして、樹脂充填基板48〜66を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表4に示した。
【表4】
【0065】
<実施例67>
工程(a):離型フィルム(5){基板と同じサイズのポリエステルフィルム:パナック株式会社製 再剥離フィルムGS 厚み50μm}を基板K3(6)の裏面に貼り付けた。これを、基板固定台(4)の凹部(基板厚みと離型フィルム(5)厚み合計と同じ深さ)にはめ込むことにより固定した。次いで、樹脂ペーストJ1を基板の端部に載せた後(図4)、真空チャンバー(3)内を0.50kPaまで減圧にし、非接触ロール(8)の回転を停止させた状態でドクター(7)の移動速度(ia)20.0mm/秒、非接触ロール(8)と基板(6)との最短間隔5mm、ドクター(7)の先端部と基板(6)との間隔1.0mm、ドクター面と基板面との角度を15°(図11のA側)にして充填した後、真空チャンバー内(3)を大気圧に戻し(図4〜6)、樹脂層を有する基板を得た。
【0066】
工程(b):工程(a)に引き続き(基板を取り除かないでそのまま)、大気圧の真空チャンバー内で、移動速度(i)30mm/秒、周速度(v)75mm/秒、ドクター(7)の先端部の基板面への接触圧1200N/m、ドクター面と基板面との角度を45°(図11のB側)にして、基板上の過剰の樹脂をかき取り(図7、8)、充填基板を得た。
【0067】
充填基板を、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱硬化{硬化工程(c)}させた後、離型フィルム(5)を取り除き硬化基板を得た。次いで、1軸不繊布バフ研磨装置(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化{平坦化工程(d)}した後、循風式加熱オーブン中で150℃、30分間加熱硬化{後硬化工程(e)}させて、樹脂充填基板67を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表5に示した。
【0068】
<実施例68〜92>
基板(6)、樹脂ペースト(9)、工程(b)における移動速度(i)、周速度(v)、非接触ロールと基板との間隔を、表5に記載した内容に変更した以外は実施例67と同様にして、充填基板68〜92を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表5に示した。ただし、実施例72〜76及び82〜86については、工程(c)の条件を1J/cm2の紫外線照射とした。ただし、実施例87〜92の工程(b)において、ドクター(7)は円柱面(曲率半径15mmをもつ先端部を有するドクター(図12)を使用した。
【0069】
【表5】
【0070】
<比較例1>
実施例1と同じ条件で工程(a)を実施した後、スクリーン印刷装置{東海精機株式会社製スクリーン印刷装置「SSA−PC660」}を用い、スキージ移動速度20mm/秒、スキージの先端部の基板面への接触圧0.5kN、スキージ硬度80°、スキージ角度15°で、基板表面の過剰な樹脂を掻き取ることにより、充填基板を得た。
次いで、実施例1と同様に硬化工程(c)、平坦化工程(d)、後硬化工程(e)を行い、比較樹脂充填基板1を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0071】
<比較例2〜10>
基板(6)、樹脂ペースト(9)を、表6に記載した内容に変更した以外は比較例1と同様にして、比較例充填基板2〜10を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0072】
<比較例11>
基板裏面に離型フィルム(5){基板と同じサイズのポリエステルフィルム:パナック株式会社製 再剥離フィルムGS 厚み50μm}を貼り付けた基板K1(6)を、真空スクリーン印刷穴埋め充填装置{東レエンジニアリング株式会社製真空印刷封止装置「VE500C」の基板固定台に固定し、樹脂ペーストJ1を基板(6)の端部に載せた後、印刷速度20mm/秒、スキージ角度15°、スキージの先端部と基板との間隔0.5mm、チャンバー内圧力0.3kPaでスクリーン印刷した後、チャンバー内圧力を大気圧にして、過剰の樹脂層を有する基板を得た。
引き続き、印刷速度20mm/秒、スキージの先端部の基板面への接触圧0.5kN、スキージ硬度80°、スキージ角度15°で、基板表面の過剰な樹脂を掻き取ることにより、充填基板を得た。
次いで、実施例1と同様に硬化工程(c)、平坦化工程(d)、後硬化工程(e)を行い、比較樹脂充填基板11を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0073】
<比較例12〜20>
基板(6)、樹脂ペースト(9)を、表6に記載した内容に変更した以外は比較例11と同様にして、比較例充填基板12〜20を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0074】
<比較例21>
基板K1(6)をスクリーン印刷穴埋め充填装置{東海精機株式会社製スクリーン印刷装置「SSA−PC660」}の基板固定台に固定し、基板の開口径に対する1.2倍の通孔径をもつ厚み50μmのメタルマスクを用い、印刷速度20mm/秒、スキージの先端部の基板面への接触圧0.4kN、スキージ角度15度で、スクリーン印刷により樹脂ペーストJ1(9)を充填した後、実施例1と同様に硬化工程(c)、平坦化工程(d)、後硬化工程(e)を行い、比較樹脂充填基板21を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0075】
<比較例22〜30>
基板(6)、樹脂ペースト(9)を、表6に記載した内容に変更した以外は比較例11と同様にして、比較例充填基板22〜30を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0076】
【表6】
注)平坦化(表面研磨)することができず、基板表面に凸状の樹脂がそのまま残った。
【0077】
比較例に示した製造方法によると、凹み等の充填不良が多発するのに対して、本発明の製造方法では、開口部に凹み等の充填不良を発生させることなく樹脂充填基板を容易に製造できた。また、本発明の製造方法では、開口面積や深さが異なる開口部が存在しても、これらを同時に充填することができた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造法はプリント配線板(ビルドアッププリント配線板や多層積層プリント配線板、及び両面プリント配線板等)の製造過程で、開口部(凹部及び/又は貫通孔)に樹脂ペーストを充填して作成する樹脂充填基板の製造に使用できる。これ以外に、金属、石、ガラス、コンクリート及び/又はプラスチック等で製造された板状のものに形成された開口部を埋め、研磨して平面を平滑にする方法に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ドクターの先端部の先端形状の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】ドクターの先端部の先端形状の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明におけるtanδを測定するための粘弾性測定装置のうち、上部コーン型円盤及び下部平面円盤の構成部分を模式的に示した断面図である。
【図4】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(a)の開始時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図5】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(a)の充填中の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図6】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(a)の終了時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図7】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(b)のかき取り中の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図8】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(b)の終了時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図9】ガード(14)を模式的に示した斜視図である。
【図10】ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(14)の位置関係を概念的に示す斜視図である。
【図11】実施例において使用したドクター(7)の断面形状を模式的に示した垂直断面図である。
【図12】実施例において使用したドクターの断面形状(円柱面をもつ先端部)を模式的に示した垂直断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1.上部コーン型円盤
2.下部平面円盤
3.真空チャンバー
4.基板固定台
5.離型フィルム
6.基板
7.ドクター
8.非接触ロール(R)
9.樹脂ペースト(J)
10.非接触ロール(R)の回転軸
11.有底孔(ビアホール)
12.貫通孔(スルーホール)
13.ガード
14.排気口
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂充填基板の製造方法に関する。さらに詳しくは基板{プリント配線板やシリコンウェハー等の電子基板等}に設けられた開口部(凹部や貫通孔等)を樹脂ペースト(J)で充填した樹脂充填基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空雰囲気下で、開口部(下端部が閉鎖された有底孔)を有する基板の全面に、スキージを用いて樹脂ペースト層を形成し、次いで、真空度を低下(大気圧に近づける)させることにより、開口部に樹脂ペーストを充填させた後、大気圧下で樹脂層(過剰の樹脂ペースト)をスキージでかき取ることにより、樹脂充填基板を製造する方法(特許文献1)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−188308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の製造方法では、基板の開口部へ充填されたなかった過剰の樹脂ペースト(樹脂層)がスキージで掻き取る際に、開口部の上部の樹脂ペーストも除去されてしまうため、開口部に凹みが発生するという問題がある。
本発明の目的は、開口部に凹みの発生がない充填基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果本発明に達した。すなわち本発明の樹脂充填基板の製造方法は、基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填すると共に、少なくとも開口部上に樹脂層を形成する工程(a)と、
非接触ロール(R)及びドクター(Z)を基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させて樹脂層を除去する工程(b)とを含み、
ドクター(Z)を非接触ロール(R)の直線移動方向の反対側面に近接又は接触するように配すると共に、ドクター(Z)の先端部を基板面に接触させて、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が直線移動方向と逆となるようにして移動速度(i)よりも大きな周速度(v)(mm/秒)で非接触ロール(R)を回転させる点を要旨とする。
ここで、非接触ロール(R)及びドクター(Z)の直線移動は、非接触ロール(R)及びドクター(Z)と基板とが相対的に直線移動すればよい。従って、停止している基板に対して非接触ロール(R)及びドクター(Z)が移動してもよく、停止している(回転運動は行っている)非接触ロール(R)及びドクター(Z)に対して基板が移動してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によると、開口部に凹みの発生がない。すなわち、本発明の製造方法によると、基板の開口部へ充填されたなかった過剰の樹脂ペースト(樹脂層)を掻き取る際に、開口部の上部の樹脂ペーストが除去されることがないため、開口部に凹みが発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法に適用できる基板としては、JIS C6480−1994「プリント配線板用銅張積層板通則」で定義されるプリント配線板用銅張積層板(ガラス布基材エポキシ樹脂、ガラス布基材ポリイミド樹脂、ガラス布基材ビスマレイミド/トリアジン/エポキシ樹脂等)が好ましいが、熱可塑性樹脂(ポリフェニレンエーテル等)や無機フィラー(シリカ等)が混合された銅張積層板や、他の電子基材(シリコンウェハー、ガラス等)等にも適用できる。また銅張積層板を用いて回路形成や絶縁層形成がなされたプリント配線板用コア基板にも適用できる。さらに、金属、石、ガラス、コンクリート及び/又はプラスチック等で製造された基材にも適用できる。
【0008】
開口部とは、基板にドリルや炭酸ガスレーザー等を用いて形成した貫通孔(いわゆるスルーホール)であったり、基板上の有底孔(いわゆるビアホール)であったり、基板上に回路が形成された後の回路間の凹部や基板の一部を削り取って形成された凹部や基板上に感光性樹脂を用いて形成したパターン間の凹部等を意味する。開口部の深さは、開口部がスルーホールである場合は基板厚みとなり、通常0.2〜3.0mm程度であるが、0.2mm未満の薄板基板や3.0mmを超える厚板基板等にも適用できる。一方、開口部がビアホールや回路間等の凹部の場合、開口部の深さは、0.1mm以下である場合が多い。開口部の開口面積は、開口部がスルーホールやビアホールの場合、穴径が0.05〜0.5mm程度であるので、0.002〜0.2mm2程度である。開口部が回路間の凹部等の場合、回路間隔が0.01〜1mm程度、回路長さが1mm〜100mm程度であるので0.01〜100mm2程度である。開口部の深さや開口面積はJIS C5012−1993「プリント配線板試験方法」に準拠して測定される。
【0009】
工程(a)は基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填すると共に、少なくとも開口部上に樹脂層を形成できる方法であれば特に制限はなく、公知の充填方法{たとえば、スクリーン印刷法(特開2002−158441号等)、ロール圧入法(特開2001−358433号等)、吸引法(特開2000−151097号等)、ディスペンス法(特開平7−188391号等)及び真空封止法(特開平11−298138号等)}等が適用できる。
これらの公知方法では通常印刷版(メタルマスク印刷版及びスクリーン印刷版等)が使用されるが、工程(a)においては印刷版を使用しなくても構わない。印刷版を使用する場合でも、開口部の位置や大きさに対応したパターンを有する高精度の印刷版である必要はなく、基板面全体に印刷するような印刷版で構わない。
なお、これらの公知方法では開口部の容積以上の樹脂を過剰に供給し樹脂を硬化させた後に過剰の樹脂を研磨して除去する方法が採用されているのに対して、本発明の製造方法では過剰の樹脂を供給するが樹脂を硬化させずに、過剰の樹脂を除去した後に樹脂を硬化させる点で相違するものである。
また、工程(a)には、ディップ法(特開平6−45734号等)、差圧充填法(特開2003−188308号等)、非接触ロール充填法(ロール圧入法の一種;特開2005−229094号、PCT/JP2005/22146等:記載内容を引用により明細書に取り入れる)も適用できる。
これらの充填方法のうち、ロール圧入法(非接触ロール充填法を含む)、吸引法及び差圧充填法が好ましく、さらに好ましくはロール圧入法、特に好ましくは非接触ロール充填法である。
【0010】
工程(a)において、樹脂ペースト(J)は開口部の容積よりも過剰の容量を供給する。このような過剰な容量としては、工程(a)により、開口部上(基板表面全体であってもよい)に樹脂層が形成されればよく、この樹脂層の厚み(μm)は1〜5000が好ましく、さらに好ましくは10〜1000、特に好ましくは50〜500である。
【0011】
工程(b)において、周速度(v)は移動速度(i)よりも大きければ制限はないが、移動速度(i)の1.2〜12倍が好ましく、さらに好ましくは1.7〜10倍、特に好ましくは2.5〜7.5倍である。この範囲内であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0012】
非接触ロール(R)の周速度(v)(mm/秒)は、{非接触ロール(R)の角速度(ω)}×{非接触ロール(R)の半径(r)}で表される。たとえば、直径50mmのロールが毎秒1回転する場合、この周速度は、2π(rad/秒)×25(mm)=157(mm/秒)となる。
【0013】
非接触ロール(R)の材質としては、金属(ステンレス等)、セラミックス(アルミナやジルコニア等)及び樹脂(エポキシ樹脂やポリウレタン等)等が使用できる。これらのうち、耐摩耗性や製造コストの観点等から、金属が好ましく、さらに好ましくはステンレスである。ロール表面は平滑であっても、凸部や凹部を有していてもよい。これらのうち、平滑であることが好ましい。
【0014】
非接触ロール(R)及びドクター(Z)は、非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向、かつ基板面に対して水平方向に直線移動できればその速度に制限はないが、この移動速度(i)(mm/秒)は、1〜100が好ましく、さらに好ましくは10〜70、特に好ましくは20〜50である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0015】
なお、非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向とは、移動方向と回転軸との角度が厳密に90°となる方向だけではなく、60〜120°となる方向を含むものである。
非接触ロール(R)の回転方向は、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と逆となる方向、すなわち、直線移動方向に非接触ロール(R)が転がるように回転する方向である。この反対方向(非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と同じとなる方向、すなわち、非接触ロール(R)が、直線移動方向と逆方向に非接触ロール(R)が転がるように回転する方向)に回転すると、本発明の目的を達成し得ない。
【0016】
非接触ロール(R)には、ドクター(Z){樹脂ペースト(J)掻き取り用スキージー}を配している。ドクター(Z)は、非接触ロール(R)の移動方向とは反対側に、非接触ロール(R)と近接又は接触するように配され、非接触ロール(R)と共に直線移動するものである。
【0017】
また、ドクター(Z)の先端部は、基板面に接触しながら、直線移動する。
ドクター(Z)の先端部の基板面への接触圧{基板面に対し垂直方向にかかるドクター(Z)の単位長さ当たりの荷重(荷重/ドクター長さ);線圧}(N/m)は、10〜2000が好ましく、さらに好ましくは100〜1600、特に好ましくは200〜1200である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0018】
また、ドクターの先端部の移動方向側には、基板表面に対して10〜70°の角度をもつ平面を有することが好ましく、さらに好ましく15〜60°、特に好ましくは20〜50°である(図1、2参照)。すなわち、ドクター(Z)は、直線移動方向の基板表面に対して上記の角度をもつ平面を有する先端部をもつことが好ましい。したがって、図1、2のような形状であってもよいし、直方体のドクターを傾斜させて保持することにより上記の角度をもつ先端部としてもよい。また、このような角度をもつ平面を有する先端部としては、曲面{円柱面、楕円柱面、双曲柱面、放物柱面及びこれらの一部分}を有する先端部を含む(図12参照)。曲面の曲率半径(mm)は、1〜100が好ましく、さらに好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜30である。なお、曲面の曲率半径は、基板面に対して垂直であり、ドクター(Z)の移動方向(ベクトル)を含む断面(ドクターの断面)によって形成される曲線であって、接触圧が印可していない状態における基板との接触する部分(先端部)の曲線についての曲率半径を意味する(図12)。
【0019】
ドクター(Z)の先端部の材質は、金属(ステンレス等)、セラミックス(アルミナやジルコニア等)及び樹脂(ポリアセタールやポリウレタン等)等が使用できる。これらのうち、樹脂が好ましく、さらに好ましくはポリアセタール及びポリウレタンである。
ドクター(Z)の先端部の硬度は、50〜95が好ましく、さらに好ましくは55〜85、特に好ましくは60〜80である。なお、硬度はJIS K6253−1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法 5.デュロメーター硬さ試験」に準拠して測定される。
ドクターの先端部以外の部分について、材質、硬度は、ドクターの先端部と同じでも相違していてもよい。また、ドクターの取り付け角度に制限はなく、垂直であってもよく、傾斜させてもよい。
【0020】
ドクター(Z)と非接触ロール(R)と基板との間に密閉空間が形成されるように、「ドクター(Z)と非接触ロール(R)と基板」の両末端に、ガード(堰板)(図9及び10参照)を配することが好ましい。このガードは、非接触ロール(R)及びドクターと共に直線移動する。
ドクター(Z)とガードには、非接触ロール(R)の回転により集められる樹脂ペースト(J)を(R)と共に移動方向に移動させる働きがある。さらに、ドクター(Z)と非接触ロール(R)と基板との間に掻き集められる樹脂ペースト(J)を加圧状態に保持する働きがある{非接触ロール(R)の回転により加圧状態が促進される。この加圧状態が、開口部の凹みの発生を抑制する}。
【0021】
基板表面と非接触回転ロール表面との最短間隔(mm)は、充填性の観点等から、0.1〜5が好ましく、さらに好ましくは0.3〜3、特に好ましくは0.5〜1.5である。この範囲であると、凹みの発生がさらに抑制される。
【0022】
工程(b)の後に充填基板上に残る樹脂層(樹脂ペーストの除去残渣)は、後工程で支障が無ければ多少残っても構わないが、平坦化(研磨)を実施する場合の負荷を低減する観点等から、20μm以下になるようにすることが好ましく、さらに好ましくは10m以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0023】
樹脂ペースト(J)は、工程(a)及び工程(b)の後に硬化工程(c)で硬化される。
硬化工程(c)は、樹脂ペースト(J)が熱硬化性樹脂の場合、加熱処理、(J)が活性エネルギー線硬化型樹脂の場合、活性エネルギー線(紫外線等)の照射処理、又は(J)が熱可塑性樹脂の場合、冷却処理により達成される。
硬化工程(c)の次に平坦化工程(d)を実施する場合、平坦化(研磨)の負荷を低減させるため、樹脂ペースト(J)は完全硬化させず、不完全硬化とすることが好ましい。不完全硬化とは、例えば樹脂ペースト(J)が熱硬化性樹脂で150℃で30分間のエネルギーで完全硬化する場合、硬化工程(c)を150℃で10分間程度の加熱処理を実施することを意味する。または樹脂ペースト(J)が活性エネルギー線硬化型樹脂と熱硬化性樹脂とを含み、1J/cm2の紫外線照射と150℃で30分間の熱エネルギーにより完全硬化する場合、硬化工程(c)を1J/cm2の紫外線の照射処理を実施することを意味する。
【0024】
硬化工程(c)の後に必要に応じて設けられる平坦化工程(d)は、基板表面に残った硬化樹脂(薄膜状残渣)を研磨して取り除いて平坦化するためである。従来の製造方法による場合、使用する印刷マスクの厚みに相当する膜厚10〜100μm程度の硬化樹脂が基板表面に残るため、平坦化工程(d)において、ベルトサンダーやセラミックロールバフ等の強力な研磨力を有する装置が必要である。一方、本発明の製造方法による場合、基板表面に残る硬化樹脂の膜厚は数μm以下であるので、不繊布ロールバフ研磨、デスミア処理(過マンガン酸塩処理)及びプラズマ処理等の弱い研磨のみで容易に平坦化できる。したがって、従来の製造方法のように強力な研磨力で平坦化すると、その負荷により基板に伸びが発生して、基板の反りや変形が生じるという問題が、本発明の製造方法を適用することにより防止できる。すなわち、本発明の製造方法を適用すると、弱い研磨力で平坦化できるため、基板の反りや変形を防止することができる(不良品の発生を低減できる)。さらに本発明の製造方法によると、平坦化工程(d)の時間も削減できる。
平坦化工程(d)の後、樹脂ペースト(J)を完全硬化させるため、後硬化工程(e)を設けてもよい。後硬化工程(e)は、平坦化工程(d)における研磨負荷を低減するために硬化工程(c)において樹脂ペースト(J)を不完全硬化とした場合等に、硬化を完全とするために実施される。後硬化工程(e)の条件は、樹脂ペースト(J)が完全に硬化すれば制限がないが、例えば樹脂ペースト(J)が熱硬化性樹脂の場合、100〜200℃で10分〜4時間程度であり、また、樹脂ペーストが活性エネルギー線硬化型樹脂の場合、1〜5J/cm2程度である。
【0025】
樹脂ペースト(J)は特に制限はなく公知のものが使用できるが、周波数1Hzにおけるtanδ{損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)}が3〜30である樹脂ペーストが好ましく、さらに好ましくは5〜25、特に好ましくは7〜20である樹脂ペーストである。この範囲であると、開口部の凹みの発生がさらに抑制できる。
【0026】
tanδ{損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)}は、「レオロジー工学とその応用技術」(株)フジ・テクノシステム、2001年1月12日 初版第1刷発行、第204〜206頁や米国特許第6635315号公報(記載内容を引用により明細書に取り入れる)に記載の応力制御方式で測定可能な粘弾性測定装置(例えば、HAAKE社製レオストレスRS75)を用いて充填時と同じ温度で測定した値であり、次のようにして求められる。
測定治具{上部コーン型円盤と下部平面円盤(図3参照、図3中の矢印は正弦振動の方向を示す)との間}に測定サンプルを挟み込み、上部コーン型円盤の上面に対して垂直な中心軸を軸として角速度(ω)(単位:rad/秒)を変化させながら正弦振動させることにより、測定サンプルに応力(σ)(単位:Pa)をかけて、その結果発生するひずみ(ε)(単位:rad)と位相角(δ)(単位:rad)とを測定する。周波数が1〜10Hzにおける位相角(δ)よりtanδを求める。
【0027】
以下に測定条件を示す。
測定装置:動的粘弾性測定装置(たとえば、HAAKE社製レオストレスRS75)
測定治具:直径20mmアルミニウム製円盤(上部コーン型円盤角度2度)
サンプル量:0.5mL
回転ずり応力:10Pa
測定温度:23℃
周波数:1〜10Hz
【0028】
上記のtanδを有する樹脂ペースト(J)としては、フィラー(F)と硬化性樹脂(K)及び/又は熱可塑性樹脂(N)との混合物等から構成される。
フィラー(F)としては、公知の無機フィラー及び有機フィラーが使用できる。
無機フィラーとしては、酸化物{シリカ(酸化ケイ素)、チタニア(酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、チタン酸バリウム等}、炭酸塩{炭酸カルシウム等}、硫酸塩{硫酸バリウム等}、金属{金、白金、銅、銀、ニッケル、スズ、タングステン、鉄等及びこれらの複合体(これらの混合成形体及び固溶体等を含む)等}等が挙げられる。これらのうち、シリカ、銅及び銀が好ましい。
有機フィラーとしては、アクリル樹脂粉、エポキシ樹脂粉、フッ素樹脂粉、ポリエーテルスルフォン樹脂粉、シリコーン樹脂粉及びナイロン樹脂粉等が挙げられる。これらのうち、アクリル樹脂粉が好ましい。
【0029】
フィラー(F)の含有量(重量%)は、硬化収縮率及び熱膨張係数の観点等から、樹脂ペースト(J)の重量に基づいて、30〜95が好ましく、さらに好ましくは50〜90、特に好ましくは60〜85である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0030】
フィラー(F)の体積平均粒子径(μm)は、0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20、特に好ましくは1.0〜10である。この範囲であると、開口部の未充填や充填過多、ボイドの発生がさらに抑制される。
なお、体積平均粒子径は、JIS Z8825−1−2001「粒子径解析−レーザー回折法」に準拠した測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所製 商品名SALD−1100型等)で測定される。
【0031】
フィラー(F)の形状は、球状、涙滴状、角状、樹枝状、片状、粒状、不規則形状、針状、繊維状{JIS Z2500:2000「粉末や金用語」4.用語および定義、4)粉末の粒子形状}等のいずれでもよいが、開口部の充填性の観点等から、球状、涙滴状、片状及び粒状が好ましく、さらに好ましくは球状である。
【0032】
フィラー(F)は単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、球状のシリカと球状の銅粉と粒状の硫酸バリウムの組み合わせ等である。
【0033】
硬化性樹脂(K)としては、熱硬化性樹脂及び活性エネルギー線硬化性樹脂等が含まれる。
熱硬化性樹脂としては、特開2004−149758号公報に記載されたエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等が使用できる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特開2004−149758号公報に記載のエポキシ樹脂や、特開2001−330951号公報に記載された重合性二重結合を有する化合物及び光ラジカル発生剤からなる組成物等が使用できる。
【0034】
熱硬化性樹脂のうち、液状エポキシ樹脂(液状エポキシド及び硬化剤から構成される)が好ましい。
液状エポキシドは25℃で液状であるエポキシドを意味するが、25℃で固状であるエポキシドを液状であるエポキシドと共に用いて全体として液状となるものも含まれる。液状エポキシドのうち、ビスフェノールF型エポキシド、ビスフェノールA型エポキシド及びグリシジルアミン型エポキシドが好ましく、さらに好ましくはビスフェノールF型エポキシド及びビスフェノールA型エポキシド、特に好ましくはビスフェノールF型エポキシドである。これらの液状エポキシドは1種又は2種以上の混合物でもよい。
硬化剤のうち、フェノール化合物、有機酸無水物、アミン化合物、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、有機酸ヒドラジド化合物及び固体分散型アミンアダクト(潜在性硬化剤)が好ましく、さらに好ましくはフェノール化合物、有機酸無水物、イミダゾール化合物である。これら硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては重合性二重結合を有する化合物及び光ラジカル発生剤からなる組成物が好ましい。
重合性二重結合を有する化合物のうち、多価アルコール又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル{ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等}、ウレタン(メタ)アクリレート{イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、多価イソシアネートと活性水素含有基(ヒドロキシ基、カルボキシ基及びアミノ基等)を有する(メタ)アクリレートとの反応物:ヘキサメチレンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの反応物等}及びエポキシ(メタ)アクリレート{多官能エポキシドと(メタ)アクリル酸との反応物:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート及びフェノールノボラック(メタ)アクリレート等}が好ましく、さらに好ましくは多価アルコール又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである。
これらの重合性二重結合を有する化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、「・・・(メタ)アクリ・・」とは、「・・・アクリ・・」、「・・・メタクリ・・」を意味する。
【0036】
光ラジカル発生剤としては、ジフェニル−(2,4,6−トリエチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン等が好ましい。これらの光ラジカル発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
これら硬化性樹脂(K)は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化性樹脂を用いる場合、硬化性樹脂の含有量(重量%)は、フィラー(F)の重量に基づいて、5〜200が好ましく、さらに好ましくは10〜100、特に好ましくは20〜65である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0038】
熱可塑性樹脂(N)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリウレタン及びフェノキシ樹脂等が使用できる。 熱可塑性樹脂は、溶剤(水、有機溶媒等)に溶解して液状化し、充填後、溶剤を留去することにより、固状とするか、または、充填の際に、その融点以上の温度で溶融液状化し、充填後に室温(25℃程度)に戻すことにより、固状とするものである。したがって、後者の場合、この融点が高すぎると樹脂の劣化や装置の耐熱性等の問題が懸念されるため、熱可塑性樹脂の融点(℃)は、100〜250が好ましく、さらに好ましくは120〜200、特に好ましくは140〜180である。一方、前者の場合、熱可塑性樹脂の融点に制限はなく、高融点のものも使用できる。
【0039】
熱可塑性樹脂(N)を用いる場合、熱可塑性樹脂の含有量(重量%)は、フィラー(F)の重量に基づいて、5〜200が好ましく、さらに好ましくは10〜100、特に好ましくは20〜65である。この範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0040】
硬化性樹脂(K)及び熱可塑性樹脂(N)を用いる場合、硬化性樹脂の含有量(重量%)は、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、40〜99が好ましく、さらに好ましくは50〜95、特に好ましくは60〜90である。また、この場合、熱可塑性樹脂の含有量(重量%)は、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、1〜60が好ましく、さらに好ましくは5〜50、特に好ましくは10〜40である。これらの範囲であると、凹みの発生がさらに少なくなる。
【0041】
樹脂ペースト(J)には、さらに通常使用される添加剤{消泡剤、分散剤、有機・無機着色剤、難燃剤及び/又は揺変剤}を添加してもよい。消泡剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.05〜5が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3、特に好ましくは1〜2である。分散剤を添加する場合、この含有量(重量%)はフィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。有機・無機着色剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。難燃剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.5〜10が好ましく、さらに好ましくは0.8〜8、特に好ましくは1〜5である。揺変剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。
【0042】
樹脂ペースト(J)にはさらに溶剤を含んでもよいが、充填時に大気圧以下にする場合、ボイド発生を防ぐために充填時の真空度及び温度における(J)に含まれる揮発分は10重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。なお、揮発分はJIS K0067−1992「化学製品の減量及び残分試験方法」4.1.4(1)第1法 大気圧下で加熱乾燥する方法(105±2℃、2時間)に準拠して測定される。このような溶剤としては、炭化水素溶剤(トルエン及びキシレン等)、グリコールエーテル溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びトリエチレングリコールジメチルエーテル等)及びケトン溶剤(メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)等が使用できる。
溶剤を含有させる場合、溶剤の含有量(重量%)は、樹脂ペースト(J)の重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5、特に好ましくは0.1〜1.0である。
【0043】
樹脂ペースト(J)のtanδは、フィラー(F){含有量、体積平均粒子径及び/又は形状等}、硬化性樹脂(K)、熱可塑性樹脂(N)、添加剤(特に揺変剤;種類や含有量等)によって調整できる。
すなわち、tanδに影響を及ぼす因子は、フィラー等の粒子間相互作用が主であり、粒子間相互作用が小さいとtanδは大きくなる傾向があり、粒子間相互作用が大きいとtanδが小さくなる傾向がある{「レオロジー工学とその応用技術」(株)フジ・テクノシステム、2001年1月12日 初版第1刷発行、第170〜198頁}。
そして、フィラーや揺変剤等を含有しない場合、tanδは10000以上の値となり、フィラーや揺変剤を多量に含有する場合はtanδは0に近い値まで下げることができる。
【0044】
樹脂ペースト(J)の硬化工程における体積収縮率(体積%)は開口部の凹みを小さくするために2.0体積%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。体積収縮率(体積%)はJIS K6901−1999「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」付属書3体積収縮率に準拠して測定される。
【0045】
樹脂ペースト(J)は、フィラー(F)、硬化性樹脂(K)及び/又は熱可塑性樹脂、必要により添加剤が均一撹拌混合することにより得られる。混合機としては、均一撹拌混合できるものであれば制限がなく、たとえば、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、2本ロールミル、ニーダー、エクストルーダー及びハイスピードディスパーサーが使用できる。
【0046】
撹拌・混合温度(℃)としては、硬化性樹脂(K)の異常硬化やゲル化の防止の観点等から、5〜40が好ましく、さらに好ましくは10〜35、特に好ましくは20〜30である。
混合時間としては、混合機の種類や大きさなどによって適宜決定でき、均一混合できれば制限がないが、30〜200分が好ましく、さらに好ましくは45〜120分、特に好ましくは60〜90分である。なお、混合の際、減圧しながら混合してもよい。
【0047】
樹脂ペースト(J)は市場から入手でき、サンノプコ株式会社製のノプコキュアSVC−710(熱硬化性穴埋め樹脂ペースト)、ノプコキュアSVC−712(熱硬化性穴埋め樹脂ペースト)、ノプコキュアSVC−720(熱硬化性銅ペースト);タツタシステムエレクトロニクス株式会社製のDDペーストAE3030(導電性銅ペースト)、DDペーストAE1125HD(熱硬化性銅ペースト);化研テック株式会社製のTKペーストCT−1129(導電性銀ペースト)等が挙げられる。
【0048】
本発明の製造方法により得られた樹脂充填基板に、絶縁層及び/又は配線層を(交互に)積層することによって(必要により、さらに上記の充填工程を設けてもよい)、いわゆるビルドアップ多層プリント配線板を得ることができる{「ぷりんとばんじゅくIV 新入社員のためのビルドアップ配線板入門」、社団法人日本電子回路工業会発行(2001年)}。
例えば、配線層は、開口部へ樹脂ペースト(J)を充填し、これを硬化させた後(基板表面に樹脂層を形成した場合を含む)、デスミア処理等により粗化し、無電解めっき(銅等)及び電解めっき(銅等)等により導電体層を形成し、さらに、不要部分をエッチング等して除去することにより形成される。
本発明の製造方法では、樹脂ペースト(J)の充填後の開口部が平坦性に優れているため(凹みが発生しないため)、導体の厚みや幅が均一な配線層を容易に形成できる。
【実施例】
【0049】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下に示す充填装置、樹脂ペースト及び基板を用いて、樹脂充填基板を製造した。
<充填装置(図4〜11を参照)>
充填装置は、真空チャンバー(3)内に、基板固定台(4)、ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(13)を配している。ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(13)は一体になって、基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(8)の回転軸に対して垂直方向に直線移動できるようになっている。
ドクター(7)の先端部と基板面の間隔は任意に設定できるようになっており、基板と接触させて基板上に残る過剰の樹脂ペースト(9)をかきとることができるようになっている。また、ドクター(7)は硬度80度のポリウレタン樹脂製であり、幅70mm、厚み20mm、長さ510mmであり、この先端部は図11に図示した形状(上下2カ所)を持つ。そして、非接触ロール(8)の移動方向の変化に追従するため、非接触ロール(8)の回転軸(10)を中心軸として回転させて、非接触ロール(8)の移動方向と反対側に配することができるように構成されている。ドクター(7)は上下を反対に配することにより、基板面と接する角度を変更できるようになっている{工程(a)では図11のA側(角度15°側で樹脂ペーストが掻き取られる)を使用し、工程(b)では上下を反転してB側(角度45°側で樹脂ペーストが掻き取られる)を使用する}。
ガード(13)は、ドクター(7)及び非接触ロール(8)の両末端部から樹脂ペースト(J)がはみ出すの防止できるようになっている。ガード(13)は、ポリアセタール製板(高さ80mm、幅100mm、厚さ20mm)の中央部に直径51mmの貫通孔を設けたものである{貫通孔は非接触ロール(8)と基板固定台(4)との間が0.1mmとなる位置に存在する}。そして、この穴に、非接触ロール(8)の末端部がはめ込まれるようになっている。また、ガード(13)は、基板固定台(4)の上面、及びドクター(7)の両末端部と接するようになっている。
非接触ロール(8)は、基板面との最短間隔を任意に設定出来るようになっている。また、非接触ロール(8)の回転軸より基板側の部分の回転方向がドクター(7)及び非接触ロール(8)の移動方向とは逆となるようにして{非接触ロール(8)の直線移動方向に前転するようにして}、周速度(v)(mm/秒)で回転できるようになっている。
非接触ロール(8)の材質は表面が平滑なステンレス製であり、この大きさは直径50mm、長さ550mmである。
真空チャンバー(3)内は、減圧にすることができる。
基板固定台(4)には基板の下面より吸引できるように排気口(14)が設けられている。
【0050】
<樹脂ペースト>
表1に示した組成及び比率(重量部)で、プラネタリーミキサー(商品名「PLM−50」、株式会社井上製作所製、公転回転数:20rpm、温度:22℃、時間:30分間)でプレミックスした後、3本ロール(商品名「HHC−178X356」、株式会社井上製作所製、ロール間の圧力:3MPa、温度:22℃、パス回数:2回)で混練することにより、樹脂ペーストJ1〜J9を得た。
粘弾性測定装置(HAAKE社製レオストレスRS75)を用いて、温度23℃、周波数1Hzにおけるtanδを測定し表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
シリカ :龍森(株)製 TH6V(体積平均粒子径6μm球状シリカ)
硫酸バリウム :堺化学工業(株)製 B34
(体積平均粒子径0.3μmの粒状硫酸バリウム)
炭酸カルシウム :日東粉化工業(株)製 TSS#1000
(体積平均粒子径1.2μmの重質炭酸カルシウム)
銅粉 :日本アトマイズ加工(株)製 HXR−Cu
(体積平均粒子径5μm球状銅粉)
ビスフェノールF型エポキシド:大日本インキ製造(株)製 エピクロン830
ビスフェノールA型エポキシド:大日本インキ製造(株)製 エピクロン850
硬化剤 :四国化成(株)製イミダゾール 2MZ−A
(2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕 −エチル−s−トリアジン)
DPE−6 :ジペンタエリストールヘキサアクリレート
{共栄社(株)製 DPE−6A}
光ラジカル発生剤:チバスペシャリティーケミカルス(株)製 イルガキュア184
消泡剤 :共栄社(株)製 フローレンAC326F(アクリル共重合物)
揺変剤 :楠本化成(株)製 ディスパロン3900(ポリアマイド)
【0053】
<基板>
FR−4両面銅張積層板(JIS C6480−1994「プリント配線板用銅張積層板通則」に準拠したもの)を用いて、表2に示す開口部を有するコア基板を特開2002−141661号公報に準拠して作成した。
【0054】
【表2】
【0055】
<実施例1>
工程(a):離型フィルム(5){基板と同じサイズのポリエステルフィルム(パナック株式会社製 再剥離フィルムGS 厚み50μm)}を基板K1(6)の裏面に貼り付けた。これを、基板固定台(4)の凹部(基板厚みと離型フィルム(5)厚み合計と同じ深さ)にはめ込み、排気口(15)から排気吸引して固定した。次いで、樹脂ペーストJ1を基板(6)の端部に載せた後(図4)、真空チャンバー(3)内を0.15kPaまで減圧にし、移動速度(ia)30.0mm/秒、周速度(va)75.0mm/秒、非接触ロール(8)と基板(6)との最短間隔1.2mm、ドクター(7)の先端部と基板(6)との間隔0.5mm、ドクター面と基板面との角度が15°(図11のA側)にして、充填を行った後、真空チャンバー内(3)を大気圧に戻し(図4〜6)、樹脂層を有する基板を得た。
【0056】
工程(b):工程(a)に引き続き(基板を取り除かないでそのまま)、ドクター(7)を、非接触ロール(8)の回転軸(10)を中心軸として反転させ、非接触ロール(8)に対し反対側に配置し、大気圧の真空チャンバー内で、工程(a)の移動方向とは反対方向に移動速度(i)20mm/秒、周速度(v)50mm/秒、ドクター(7)の先端部の基板面への接触圧800N/m、ドクター面と基板面との角度を45°(図11のB側)にして、基板上の過剰の樹脂をかき取り(図7、8)、充填基板を得た。
【0057】
充填基板を、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱硬化{硬化工程(c)}させた後、離型フィルム(5)を取り除き硬化基板を得た。次いで、1軸不繊布バフ研磨装置(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化{平坦化工程(d)}した後、循風式加熱オーブン中で150℃、30分間加熱硬化{後硬化工程(e)}させて、樹脂充填基板1を得た。次いで、開口部のあった充填箇所について、無作為に各100箇所を選択し、次のようにして充填不良発生数を評価した。
【0058】
<充填不良発生数>
卓上ハンドカッター(商品名「ハンドカッターPC−300」サンハヤト株式会社製)を用いて基板を基板面に対して垂直に切断し、研磨/琢磨機(商品名「Struers Planopol−3」、丸本工業株式会社製)を用いて切断面を研磨して開口部のあった充填断面を整面した。そして、この充填断面を顕微鏡(倍率100倍)で観察し、開口部に発生した凹みを数え、この数(不良発生数)を表3に示した。
なお、充填された樹脂の表面と開口部周辺の基板面との段差が10μm以上あるものを凹みとした。
【0059】
<実施例2〜46>
基板(6)、樹脂ペースト(9)、工程(b)における移動速度(i)、周速度(v)、非接触ロールと基板との最短間隔を、表3に記載した内容に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂充填基板2〜46を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表3に示した。ただし、実施例42〜45の工程(b)においてドクター(7)は円柱面(曲率半径10mm)をもつ先端部を有するドクター(図12)を使用した。また、実施例29及び30については、硬化工程(c)の条件を1J/cm2の紫外線照射とした。
【0060】
【表3】
【0061】
<実施例47>
工程(a): 基板固定台(4)の上に離型フィルム(5){基板と同じサイズの不繊布シート(旭化成株式会社製 ベンコットM3)}を置き、基板K1(6)を固定台(4)の凹部(基板厚みと離型フィルム(5)厚み合計と同じ深さ)にはめ込むことにより固定した{離型フィルム(5)と基板K1(6)とは接着していない}。次いで、樹脂ペーストJ1を基板の端部に載せた後(図4)、基板固定台下部の排気口(15)から吸引しながら、移動速度(ia)30.0mm/秒、周速度(va)75.0mm/秒、非接触ロール(8)と基板(6)との最短間隔0.8mm、ドクター(7)の先端部と基板(6)との間隔0.1mm、ドクター面と基板面との角度が15°(図11のA側)にして充填を行った後、吸引を停止し(図4〜6)、樹脂層を有する基板を得た。
【0062】
工程(b):工程(a)に引き続き(基板を取り除かないでそのまま)、ドクター(7)を、非接触ロール(8)の回転軸(10)を中心軸として反転させ、非接触ロール(8)に対し反対側に配置し、大気圧の真空チャンバー内で、工程(a)の移動方向とは反対方向に移動速度(i)20mm/秒、周速度(v)50mm/秒、ドクター(7)の先端部の基板面への接触圧1200N/m、ドクター面と基板面との角度を45°(図11のB側)にして、基板上の過剰の樹脂をかき取り(図7、8)、充填基板を得た。
【0063】
充填基板を、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱硬化{硬化工程(c)}させた後、離型フィルム(5)を取り除き硬化基板を得た。次いで、1軸不繊布バフ研磨装置(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化{平坦化工程(d)}した後、循風式加熱オーブン中で150℃、30分間加熱硬化{後硬化工程(e)}させて、樹脂充填基板47を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表4に示した。
【0064】
<実施例48〜66>
基板(6)、樹脂ペースト(9)、工程(b)における移動速度(i)、周速度(v)、非接触ロールと基板との間隔を、表3に記載した内容に変更した以外は実施例47と同様にして、樹脂充填基板48〜66を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表4に示した。
【表4】
【0065】
<実施例67>
工程(a):離型フィルム(5){基板と同じサイズのポリエステルフィルム:パナック株式会社製 再剥離フィルムGS 厚み50μm}を基板K3(6)の裏面に貼り付けた。これを、基板固定台(4)の凹部(基板厚みと離型フィルム(5)厚み合計と同じ深さ)にはめ込むことにより固定した。次いで、樹脂ペーストJ1を基板の端部に載せた後(図4)、真空チャンバー(3)内を0.50kPaまで減圧にし、非接触ロール(8)の回転を停止させた状態でドクター(7)の移動速度(ia)20.0mm/秒、非接触ロール(8)と基板(6)との最短間隔5mm、ドクター(7)の先端部と基板(6)との間隔1.0mm、ドクター面と基板面との角度を15°(図11のA側)にして充填した後、真空チャンバー内(3)を大気圧に戻し(図4〜6)、樹脂層を有する基板を得た。
【0066】
工程(b):工程(a)に引き続き(基板を取り除かないでそのまま)、大気圧の真空チャンバー内で、移動速度(i)30mm/秒、周速度(v)75mm/秒、ドクター(7)の先端部の基板面への接触圧1200N/m、ドクター面と基板面との角度を45°(図11のB側)にして、基板上の過剰の樹脂をかき取り(図7、8)、充填基板を得た。
【0067】
充填基板を、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱硬化{硬化工程(c)}させた後、離型フィルム(5)を取り除き硬化基板を得た。次いで、1軸不繊布バフ研磨装置(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化{平坦化工程(d)}した後、循風式加熱オーブン中で150℃、30分間加熱硬化{後硬化工程(e)}させて、樹脂充填基板67を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表5に示した。
【0068】
<実施例68〜92>
基板(6)、樹脂ペースト(9)、工程(b)における移動速度(i)、周速度(v)、非接触ロールと基板との間隔を、表5に記載した内容に変更した以外は実施例67と同様にして、充填基板68〜92を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表5に示した。ただし、実施例72〜76及び82〜86については、工程(c)の条件を1J/cm2の紫外線照射とした。ただし、実施例87〜92の工程(b)において、ドクター(7)は円柱面(曲率半径15mmをもつ先端部を有するドクター(図12)を使用した。
【0069】
【表5】
【0070】
<比較例1>
実施例1と同じ条件で工程(a)を実施した後、スクリーン印刷装置{東海精機株式会社製スクリーン印刷装置「SSA−PC660」}を用い、スキージ移動速度20mm/秒、スキージの先端部の基板面への接触圧0.5kN、スキージ硬度80°、スキージ角度15°で、基板表面の過剰な樹脂を掻き取ることにより、充填基板を得た。
次いで、実施例1と同様に硬化工程(c)、平坦化工程(d)、後硬化工程(e)を行い、比較樹脂充填基板1を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0071】
<比較例2〜10>
基板(6)、樹脂ペースト(9)を、表6に記載した内容に変更した以外は比較例1と同様にして、比較例充填基板2〜10を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0072】
<比較例11>
基板裏面に離型フィルム(5){基板と同じサイズのポリエステルフィルム:パナック株式会社製 再剥離フィルムGS 厚み50μm}を貼り付けた基板K1(6)を、真空スクリーン印刷穴埋め充填装置{東レエンジニアリング株式会社製真空印刷封止装置「VE500C」の基板固定台に固定し、樹脂ペーストJ1を基板(6)の端部に載せた後、印刷速度20mm/秒、スキージ角度15°、スキージの先端部と基板との間隔0.5mm、チャンバー内圧力0.3kPaでスクリーン印刷した後、チャンバー内圧力を大気圧にして、過剰の樹脂層を有する基板を得た。
引き続き、印刷速度20mm/秒、スキージの先端部の基板面への接触圧0.5kN、スキージ硬度80°、スキージ角度15°で、基板表面の過剰な樹脂を掻き取ることにより、充填基板を得た。
次いで、実施例1と同様に硬化工程(c)、平坦化工程(d)、後硬化工程(e)を行い、比較樹脂充填基板11を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0073】
<比較例12〜20>
基板(6)、樹脂ペースト(9)を、表6に記載した内容に変更した以外は比較例11と同様にして、比較例充填基板12〜20を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0074】
<比較例21>
基板K1(6)をスクリーン印刷穴埋め充填装置{東海精機株式会社製スクリーン印刷装置「SSA−PC660」}の基板固定台に固定し、基板の開口径に対する1.2倍の通孔径をもつ厚み50μmのメタルマスクを用い、印刷速度20mm/秒、スキージの先端部の基板面への接触圧0.4kN、スキージ角度15度で、スクリーン印刷により樹脂ペーストJ1(9)を充填した後、実施例1と同様に硬化工程(c)、平坦化工程(d)、後硬化工程(e)を行い、比較樹脂充填基板21を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0075】
<比較例22〜30>
基板(6)、樹脂ペースト(9)を、表6に記載した内容に変更した以外は比較例11と同様にして、比較例充填基板22〜30を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0076】
【表6】
注)平坦化(表面研磨)することができず、基板表面に凸状の樹脂がそのまま残った。
【0077】
比較例に示した製造方法によると、凹み等の充填不良が多発するのに対して、本発明の製造方法では、開口部に凹み等の充填不良を発生させることなく樹脂充填基板を容易に製造できた。また、本発明の製造方法では、開口面積や深さが異なる開口部が存在しても、これらを同時に充填することができた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造法はプリント配線板(ビルドアッププリント配線板や多層積層プリント配線板、及び両面プリント配線板等)の製造過程で、開口部(凹部及び/又は貫通孔)に樹脂ペーストを充填して作成する樹脂充填基板の製造に使用できる。これ以外に、金属、石、ガラス、コンクリート及び/又はプラスチック等で製造された板状のものに形成された開口部を埋め、研磨して平面を平滑にする方法に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ドクターの先端部の先端形状の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】ドクターの先端部の先端形状の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明におけるtanδを測定するための粘弾性測定装置のうち、上部コーン型円盤及び下部平面円盤の構成部分を模式的に示した断面図である。
【図4】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(a)の開始時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図5】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(a)の充填中の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図6】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(a)の終了時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図7】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(b)のかき取り中の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図8】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、工程(b)の終了時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図9】ガード(14)を模式的に示した斜視図である。
【図10】ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(14)の位置関係を概念的に示す斜視図である。
【図11】実施例において使用したドクター(7)の断面形状を模式的に示した垂直断面図である。
【図12】実施例において使用したドクターの断面形状(円柱面をもつ先端部)を模式的に示した垂直断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1.上部コーン型円盤
2.下部平面円盤
3.真空チャンバー
4.基板固定台
5.離型フィルム
6.基板
7.ドクター
8.非接触ロール(R)
9.樹脂ペースト(J)
10.非接触ロール(R)の回転軸
11.有底孔(ビアホール)
12.貫通孔(スルーホール)
13.ガード
14.排気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填すると共に、少なくとも開口部上に樹脂層を形成する工程(a)と、
非接触ロール(R)及びドクター(Z)を基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させて樹脂層を除去する工程(b)とを含み、
ドクター(Z)を非接触ロール(R)の直線移動方向の反対側面に近接又は接触するように配すると共に、ドクター(Z)の先端部を基板面に接触させて、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が直線移動方向と逆となるようにして移動速度(i)よりも大きな周速度(v)(mm/秒)で非接触ロール(R)を回転させることを特徴とする樹脂充填基板の製造方法。
【請求項2】
周速度(v)が移動速度(i)の1.2〜12倍である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
基板と非接触ロール(R)との最短間隔が0.1〜5mmである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ドクター(Z)の先端部が、直線移動方向の基板表面に対して10〜70°の角度をもつ平面を有する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ドクター(Z)の先端部が、円柱面、楕円柱面、双曲柱面、放物柱面又はこれらの一部分を有する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
樹脂ペースト(J)の周波数1Hzにおけるtanδ{損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)}が3〜30である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造され得る樹脂充填基板に、絶縁層及び/又は配線層を積層して構成される多層プリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載の多層プリント配線板を内蔵する電子機器。
【請求項1】
基板に設けられた開口部に樹脂ペースト(J)を充填すると共に、少なくとも開口部上に樹脂層を形成する工程(a)と、
非接触ロール(R)及びドクター(Z)を基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させて樹脂層を除去する工程(b)とを含み、
ドクター(Z)を非接触ロール(R)の直線移動方向の反対側面に近接又は接触するように配すると共に、ドクター(Z)の先端部を基板面に接触させて、非接触ロール(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が直線移動方向と逆となるようにして移動速度(i)よりも大きな周速度(v)(mm/秒)で非接触ロール(R)を回転させることを特徴とする樹脂充填基板の製造方法。
【請求項2】
周速度(v)が移動速度(i)の1.2〜12倍である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
基板と非接触ロール(R)との最短間隔が0.1〜5mmである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ドクター(Z)の先端部が、直線移動方向の基板表面に対して10〜70°の角度をもつ平面を有する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ドクター(Z)の先端部が、円柱面、楕円柱面、双曲柱面、放物柱面又はこれらの一部分を有する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
樹脂ペースト(J)の周波数1Hzにおけるtanδ{損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)}が3〜30である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造され得る樹脂充填基板に、絶縁層及び/又は配線層を積層して構成される多層プリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載の多層プリント配線板を内蔵する電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−235121(P2007−235121A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23334(P2007−23334)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】
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