説明

樹脂化粧木質材

【課題】 耐水性や耐摩耗性等の耐久性を向上させるとともに、木材が本来持っている風合いを有する樹脂化粧木質材を提供する。
【解決手段】 基材(1)上に貼着された突き板(2)に樹脂(4)が塗布含浸された化粧木質材であって、突き板木材面(2A)が全体表面の20%以上70%以下の割合で露出されている樹脂化粧木質材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、和風居室等に使用される造作部材や柱材等として有用な、無垢木材の風合いを有する表面に樹脂塗装された化粧木質材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、合板、パーティクルボード、硬質繊維板等の上に各種の銘木より得られた木質の突き板を貼着し、さらにその突き板の表面に樹脂層を設けた樹脂化粧木質材や突き板に樹脂を含浸させ、その表面に樹脂塗布した樹脂化粧木質材が知られている(たとえば、特許文献1の従来技術の説明、特許文献2−3を参照)。
【特許文献1】特開昭51−15603号公報
【特許文献2】特開2001−260103号公報
【特許文献3】特開2002−166401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の樹脂化粧木質材の場合には、耐水性や耐摩耗性等の耐久性を向上させることはできるものの、木材としての風合いが失われてしまい、無垢の木材のような風合いが重視される和風居室等で使用される造作部材や柱材としては使用することが難しいという問題があった。
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上のような従来の問題点を解消し、耐水性や耐摩耗性等の耐久性を向上させるとともに、木材が本来持っている風合いを有することのできる、新しい樹脂化粧木質材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この出願は、上記の課題を解決するものとして以下の発明を提供する。
第1:基材上に貼着された突き板に樹脂が塗布含浸された化粧木質材であって、突き板木材面が全体表面の20%以上70%以下の割合で露出されていることを特徴とする樹脂化粧木質材。
第2:突き板木材面が全体表面の30%以上50%以下の割合で露出されていることを特徴とする上記第1の樹脂化粧木質材。
第3:主として木繊維部分が露出されていることを特徴とする上記第1または第2の樹脂化粧木質材。
第4:突き板には0.1mm以上の深さまで樹脂が含浸されていることを特徴とする上記いずれかの樹脂化粧木質材。
第5:上記の樹脂化粧木質材の製造方法であって、基材上に突き板を貼着した後に樹脂を突き板表面の全体を覆うように塗布し、次いでサンディング加工により突き板木材面を露出させることを特徴とする樹脂化粧木質材の製造方法。
第6:突き板の木繊維(木目)方向にサンディング跡を残して表面を荒らすことを特徴とする上記第5の樹脂化粧木質材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
上記のとおりのこの出願の第1の発明によれば、突板への樹脂の含浸塗布により耐水性、耐摩耗性等の耐久性が向上されるとともに突き板の木材素地面が全体表面の20%以上露出されていることで木材本来の風合いが実現されることになる。また突き板の木材素地面が70%以下の割合で露出されているものとすることで、上記の耐久性も問題となることはない。このため、木材の風合いが重視される和風居室等のための造作部材や柱材等として使用される樹脂化粧木質材が提供される。
【0007】
突き板木材面が全体表面の30%以上50%以下の割合で露出される上記第2の発明によれば、上記の木質の風合いは、一般的にもより好適に実現されることになる。
【0008】
そして第3の発明のように、主として木繊維部分を露出させることで無垢の木材のような風合いはさらに向上することになる。
【0009】
突き板の0.1mm以上の深さまで樹脂を含浸させる上記第4の発明によれば、塗布された樹脂のアンカーリング効果がより確実になり、以上のような耐久性の向上と木材の風合いの効果が安定して実現される。
【0010】
さらにこの出願の上記第5の発明によれば、表面サンディング加工によって、上記のとおりの樹脂化粧木質材が簡易に製造可能となる。
【0011】
このサンディングについて、第6の発明によれば、突き板の木繊維、つまり木目方向にサンディング跡を残して表面を荒らすことで、表面の手触りをより木材らしく、さらに風合いのあるものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0013】
この出願の第1の発明の樹脂化粧木質材においては、たとえば図1にその概要を示したように、合板やパーティクルボード、硬質繊維板等からなる基材(1)の上に各種の銘木等から得られた木質の突き板(2)が接着材(3)を介して貼着されており、この貼着された突き板(2)には樹脂(4)が含浸塗布されている。そして、突き板の木材面(2A)は全体表面の20%以上70%以下の割合で露出されている。
【0014】
ここで、突き板(2)としては、針葉樹、広葉樹を厚さ0.15〜1mm程度にスライスしたものや、これらの小片を継ぎ合わせて成形したもの等の各種であってよい。より好適には、0.3mm〜0.8mm程度の厚みのものが考慮される。これら突き板(2)の基材(1)への接着材(3)についても各種のものであってよく、たとえばその付着力とともに、耐水・耐湿性や硬化性等を考慮して、メラミン系、尿素−メラニン系、イソシアネート系、ウレタン系、アクリル系等が例示される。
【0015】
図1においては、突き板(2)の部分を拡大して示してもいるが、突き板(2)の表面には微小な凹凸がある。そこで、この出願の第1の発明では、全体の20%以上70%以下の割合で、樹脂(4)に覆われることなく、突き板木材面(2A)が露出しているものとする。
【0016】
この露出の割合が20%未満の場合には突き板(2)の存在による木材としての風合いは充分には実現されにくい。一方、露出の割合が70%を超える場合には、樹脂(4)による含浸塗布の効果、つまり耐水性、耐摩耗性の向上が必ずしも充分とはならない。
【0017】
一般的に、木材としての風合いの発現のためにはこの露出は、この出願の第2の発明のように、30%以上50%以下であることが好適に考慮される。
【0018】
突き板(2)に含浸塗布される樹脂(4)としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のうちの1種または2種以上のものであってよく、これらは各種の強加化成分を配合した塗料組成物として突き板(2)に施されることになる。水素あるいは溶剤系の塗料として適用される。
【0019】
熱硬化性樹脂としては、たとえば一般的には不飽和ポリエステル樹脂が例示される。反応開始剤、たとえば過酸化ベンゾイルを樹脂100重量部に対して1.0〜3.0重量部の割合で配合した塗料組成物として適用される。
【0020】
また、熱可塑性樹脂としては、たとえばポリプロピレン樹脂が例示される。
【0021】
これらの熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれの場合であっても、これらの樹脂(4)を突き板(2)に含浸させるためには、その効率性や操作性等の観点から、平板プレス、ロールプレス、ブレードコーター等による手段を採用することが好ましい。そして、樹脂(4)の含浸と表面塗布による効果をより確実に安定して実現するためには、樹脂(4)の含浸にともなうアンカーリング(碇作用)が充分となるように、この出願の第4の発明のように、突き板(2)には、0.1mm以上の深さまで含浸されていることが好ましい。0.1mm未満の場合には、耐水性、耐摩耗性等において必ずしも充分でなく、また塗布された樹脂(4)の表面剥離という不都合の防止が必ずしも万全ではない。
【0022】
そして、この出願の第3の発明のように、上記の露出している突き板(2)の木材面(2A)が主として、つまりその5割以上が突き板(2)の木繊維部分であるようにすると、無垢の木材の風合いは更に増すことになる。
【0023】
木材面(2A)の好適な露出のためにも、この出願の発明の樹脂化粧木質材の製造には、たとえば次のプロセスを含む製造法が好適に施される。
【0024】
a)基材(1)上に突き板(2)を貼着する。
【0025】
b)貼着された突き板(2)にその表面を覆うように樹脂(4)を塗布し、突き板(2)に樹脂(4)を含浸塗布する。
【0026】
c)サンディング加工により突き板(2)の木材面(2A)を露出させる。
【0027】
ここでのサンディング加工の対象領域の設定、その強弱の調整によって、前記のとおりの突き板(2)の木材面(2A)の露出割合や、木繊維の選択的露出等が可能とされる。そして、この出願の第6の発明のように、突き板(2)の木繊維方向にサンディング跡を残して表面を荒らすことで、表面の手触りをより木材らしく、無垢の木材の風合いがあるものとすることができる。
【0028】
たとえば、ウッドデッキのような木の風合いをより発現させたい場合には荒仕上げで、また内装に使用するものには、細かい仕上げを施すこと等が考慮される。
【0029】
また、上記工程b)における前記のロールプレス等の含浸塗布のための手段とその操作条件の設定によって、突き板(2)への樹脂(4)の含浸深さも調整可能とされる。
【0030】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0031】
厚さ12mmの合板からなる基材の表面にメラミン樹脂系接着材を用いて、ホットプレスにより厚さ0.5mmのナラ材突き板を貼着した。
【0032】
この突き板の表面にその全体を覆うように不飽和ポリエステル樹脂を塗布してロールプレスした。突き板への不飽和ポリエステル樹脂の含浸深さは0.12mm〜0.14mmの範囲とした。
【0033】
次いで、樹脂を含浸塗布した表面をサンドペーパーでサンディングした。このサンディングにおいて、突き板の木材面が15%、20%、30%、70%、75%の割合で露出している5種類の試料を作製した。この各々の試料について木材の風合いを成人男人10名、成人女性10名により目視評価したところ、以下の結果を得た。
【0034】
15% 良好でない
20% 良好
30% 最良
70% 良好
75% 良好
木材面を30%露出させたものの風合いが最良であると評価された。
【0035】
一方、75%露出されたものについては、表面の耐摩耗性の点において難点が認められた。
【0036】
また、30%露出された試料として、サンディングにより木繊維方向にサンディング跡を残して荒した場合には、手触り感も天然木に近く、木材としての風合いはさらに良好なものとして評価された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この出願の発明の樹脂化粧木質材の概要について示した断面図(A)と要部拡大断面図(B)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に貼着された突き板に樹脂が塗布含浸された化粧木質材であって、突き板木材面が全体表面の20%以上70%以下の割合で露出されていることを特徴とする樹脂化粧木質材。
【請求項2】
突き板木材面が全体表面の30%以上50%以下の割合で露出されていることを特徴とする請求項1の樹脂化粧木質材。
【請求項3】
主として木繊維部分が露出されていることを特徴とする請求項1または2の樹脂化粧木質材。
【請求項4】
突き板には0.1mm以上の深さまで樹脂が含浸されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの樹脂化粧木質材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの樹脂化粧木質材の製造方法であって、基材上に突き板を貼着した後に樹脂を突き板表面の全体を覆うように塗布し、次いでサンディング加工により突き板木材面を露出させることを特徴とする樹脂化粧木質材の製造方法。
【請求項6】
突き板の木繊維方向にサンディング跡を残して表面を荒らすことを特徴とする請求項5樹脂化粧木質材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−7448(P2006−7448A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184220(P2004−184220)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】