説明

樹脂成形体

【課題】より簡単な作業で、基材の側面および裏面を表皮材で覆うことができる樹脂成形体を提供する。
【解決手段】樹脂成形体20は、合成樹脂製の基材21と、基材21の表面側に設けられる表皮材22と、基材21の側面23に一体成形されるヒンジ25と、ヒンジ25に一体成形されて基材21の裏面33に折り返される板状の折り返し片26と、表皮材22で構成されてヒンジ25および折り返し片26の表面に圧着される表皮片27と、基材21に設けられて折り返し片26を逃がす凹み28と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体に関し、特に、合成樹脂製の基材と、基材の表面に設けられる表皮材とを有する板状の樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の基材と、基材の表面に設けられる表皮材とを有する板状の樹脂成形体が広く利用されている。板状の樹脂成形体を成形する方法として、ブロー成形、シートブロー成形など基材用の成形材料と表皮材用の成形材料を一対の金型で挟み、キャビティに沿うように成形することで、基材に表皮材を一体化させる成形法が知られている。
【0003】
この種の成形法では、表皮材は、基材の表面側を成形する一方の金型に配置される。また、一対の金型の分割位置(パーティングライン)は、基材の側面に設定されることが一般的である。したがって、表皮材は、基材の表面からパーティングラインまでの側面を覆うように成形される。すなわち、基材の側面の少なくとも下部と裏面は、表皮材で覆われない。
【0004】
このような樹脂成形体は、たとえば、車両の荷室に置かれるデッキボードに使用される。デッキボードに使用される場合、パーティングラインが基材の側面に設定されると、パーティングラインにおいてバリを切断した際の端部が突出して荷室の接触面を傷つけおそれがあった。さらに、デッキボード側面が露出していると、基材の側面が外から見えるため、荷室の外観が損なわれてしまう。また、基材の裏面をフロアの支持部に直接載せると、硬い部品同士が接触するため、走行時に異音が発生したり接触面が摩耗したりするおそれがある。この対策として、基材の裏面に不織布を部分的に貼ることが行われるが、基材の裏面に緩衝材として不織布を別途貼ると、その分、デッキボードの生産性が低下する。
【0005】
そこで、特許文献1では、基材の側面と裏面を表皮材で覆う技術が提案されている。図9は、特許文献1に記載される樹脂成形体の成形方法を示す図である。この成形方法では、先ず、基材用の成形材料(いわゆるパリソン)と表皮材用の成形材料を一対の金型101,102で挟み、パリソンを内に圧力エアを吹き込み膨らます。これにより、中空の基材104に表皮材105が一体化した樹脂成形体100が得られる。
【0006】
キャビティ103からはみ出した成形材料の端部(いわゆるバリ)104a,105bは、キャビティ103外側のピンチオフ部106で潰される。特許文献1の技術では、このピンチオフ部106外側のスペース107を広く確保することにより、端部104a,105bの接着を防止する。
【0007】
次に、樹脂成形体100を金型101,102から取り出した後、パリソンの端部104aを除去する。そして、図10(a)および(b)に示すように、基材104の側面108と裏面109を覆うように、端部105aを基材104に接着する。結果、樹脂成形体100の見栄えが良くなる。また、端部105aにより、樹脂成形体100裏面のクッション性が高まるので、裏面に緩衝材として不織布を別途貼る必要もなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−115980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術では、表皮材用成形材料の端部105aを樹脂成形体100に残しつつ、パリソンの端部104aのみを樹脂成形体100から切り離す必要がある。このため、端部104aの切除作業に手間がかかる。樹脂成形体の生産性向上が求められる中、より簡単な作業で、基材の側面と裏面を表皮材で覆う技術が望まれる。
【0010】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡単な作業で、基材の側面と裏面を表皮材で覆うことができる樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、合成樹脂製の基材と、前記基材の表面側に設けられる表皮材とを有する板状の樹脂成形体において、前記基材の側面に一体成形されるヒンジと、前記ヒンジに一体成形されて前記基材の裏面に折り返される折り返し片と、前記表皮材で構成されて前記ヒンジおよび前記折り返し片の表面に圧着される表皮片と、前記基材に設けられて前記折り返し片を逃がす凹みと、を有することを特徴とする。
【0012】
上記発明は、前記表皮片が前記基材の裏面よりも張り出すように構成されることを特徴とする。
上記発明は、略長方形の樹脂成形体であり、前記折り返し片は、対向する2つの辺部に設けられることを特徴とする。
上記発明では、前記折り返し片は、前記基材の側面に沿う側板と、前記側板に連なり前記基材の裏面に沿う底板と、を有し、略L字状に成形されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、折り返し片を基材の裏面に折り返すだけの簡単な作業で、基材の側面と裏面を表皮材で覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる第1実施形態の樹脂成形体の使用例を説明する図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】第1実施形態の樹脂成形体の成形方法を説明する図であり、(a)は成形金型を型開きした状態を示す図、(b)は成形金型を型閉めした状態を示す図である。
【図4】第1実施形態の樹脂成形体の斜視図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】第2実施形態の樹脂成形体の断面図であり、第1実施形態における図2に相当する図である。
【図7】第2実施形態の樹脂成形体の成形方法を説明する図であり、(a)は成形金型を型開きした状態を示す図、(b)は成形金型を型閉めした状態を示す図である。
【図8】第2実施形態の樹脂成形体の断面図であり、第1実施形態における図5に相当する図である。
【図9】従来の樹脂成形体の成形方法を説明する図である。
【図10】従来の樹脂成形体の基本構成を説明する図であり、(a)はパリソンの端部を切除した形態を示す図、(b)は表皮材用成形材料の端部を折り返した形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための第1実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0016】
第1実施形態は、本発明の樹脂成形体を車両用デッキボードに使用した例である。図1に示すように、車両10は、リヤシート11の後方に荷室12を有する。荷室12のフロア13には、物品を収納する収納ボックス14が設けられる。収納ボックス14の車両前後方向の両端には、車両幅方向に延びる支持部15が設けられる。樹脂成形体20は、収納ボックス14の開口部を塞ぐ略長方形のデッキボードであり、対向する辺部(ここでは前後の長辺部)が支持部15に支持される。
【0017】
図2に示すように、樹脂成形体20は、基材21と、基材21の表面側に設けられる表皮材(いわゆるカーペット)22と、を有する。また、樹脂成形体20は、基材21の側面23に一体成形される第1のヒンジ25と、第1のヒンジ25に一体成形される板状の折り返し片26と、折り返し片26の表面に設けられる表皮片27と、基材21に設けられて折り返し片26を逃がす凹み28と、を有する。
【0018】
以下、各部の構成について詳細に説明する。
基材21は、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂からなる中空の成形体である。なお、中空部分29に発泡材料を充填することで、高い剛性と高い断熱性を有する基材21を得ることができる。
【0019】
表皮材22は、基材21の少なくとも表面(ここでは表面および側面23の上端)を覆う表皮本体31と、折り返し片26に圧着される表皮片27と、を有する。表皮本体31と表皮片27は、1枚のシート材料で構成される。表皮材22の材質は、たとえば、不織布、織物、編物、あるいは、これらを起毛した布地等から適宜選択される。
【0020】
第1のヒンジ25は、側面23のパーティングラインPL上に設けられ、基材21の本体部分よりも薄肉に成形される。また、第1のヒンジ25は、側面23の左右両端(左右の角)を避けて形成される。
【0021】
折り返し片26は、側面23に沿う側板32と、側板32に連なり基材21の裏面33に沿う底板34と、を有する。側板32と底板34は、薄肉の第2のヒンジ35を介して一体成形される。第1のヒンジ25と第2のヒンジ35が曲がることで、折り返し片26は、基材21の側面23および裏面33に合わさる。
【0022】
表皮片27は、折り返し片26の表面全体を覆うように設けられる。すなわち、表皮片27は、第1のヒンジ25、側板32、第2のヒンジ35および底板34を覆うように形成される。
【0023】
凹み28は、側板32が嵌る凹み36と、底板34が嵌る凹み37と、を有する。凹み36および凹み37は、それぞれ、基材21の側面23および裏面33の端部に設けられる。凹み36に側板32が嵌ることで、表皮片27と表皮本体31とは、略同一面上に位置するため、滑らかに連なる。また、凹み37に底板34が嵌ることで、表皮片27と裏面33との段差も小さくなる。但し、ここでは、表皮片27が裏面33よりも張り出すように、凹み37の深さを設定する。これにより、表皮片27が支持部15に支持されるようになるため、裏面33が支持部15に接触することがなく、パーティングラインによる指示部5の傷つけもなくなる。
【0024】
続いて、樹脂成形体20の製造方法を図3〜図5に基づいて説明する。
この製造方法では、図3に示すように、成形金型40を用いる。なお、樹脂成形体20と、成形金型40の成形面とは、略同一の面形状であるため、以下の説明では、成形金型40の各成形面に、樹脂成形体20の各部位と共通の呼称を用いる。但し、成形金型40では、「部」を付けて区別する。たとえば、樹脂成形体20では「第1のヒンジ25」、「凹み36」としたが、成形金型40の成形面では「ヒンジ部25A」、「凹み部36A」とする。
【0025】
図3(a)および(b)に示すように、成形金型40は、樹脂成形体20の表面側を成形する第1の金型41と、樹脂成形体20の裏面側を成形する第2の金型42と、を有する。第1の金型41は、表皮本体部31Aと表皮片部27Aからなる成形面を有する。一方、第2の金型42は、裏面部33A、凹み部36A,37A、第1のヒンジ部25A、側板部32A、第2のヒンジ部35A、そして底板部34Aからなる成形面を有する。これらの成形面により、成形金型40には、キャビティ43が形成される。キャビティ43の内面形状は、樹脂成形体20の外面形状と略同一の形状に加工される。また、キャビティ43の外側には、キャビティ43で成形される部分と余分な部分の間を潰すピンチオフ部44が設けられる。
【0026】
次に、この成形金型40を用いた成形方法について説明する。
表皮材用の成形材料であるシート45を金型41に配置する。また、基材用の成形材料である溶融状態の筒状のパリソン46を金型41,42の間に押し出す。次に、金型41,42を合わせて型閉めし、シート45とパリソン46を金型41,42で挟む。この状態で、パリソン46に気体を吹き込んで、パリソン46を表皮本体部31A、裏面部33A、そして凹み部36A,37Aに向けて膨ます。これにより、樹脂成形体20の本体部分が成形される。
【0027】
一方、表皮片部27A、第1のヒンジ部25A、側板部32A、第2のヒンジ部35A、そして底板部34Aでは、シート45とパリソン46を潰して圧縮成形する。これにより、第1のヒンジ25、側板32、第2のヒンジ35および底板34が一体成形された折り返し片26が成形される。同時に、折り返し片26に表皮片27が圧着される。また、キャビティ43の外側では、ピンチオフ部44によって、シート45とパリソン46に切り取り線47が形成される。
【0028】
冷却後、金型41,42を型開きして樹脂成形体20を取り出し、切り取り線47を切断してバリ48を切除する。すると、図4に示すように、略平板状の折り返し片26を有する樹脂成形体20が得られる。
【0029】
そして、図5に示すように、第1のヒンジ25と第2のヒンジ35を曲げて、折り返し片26を凹み28に嵌め、両面テープ(図2中、符号49)で固定する。結果、基材21の側面23と裏面33の端部が表皮片27で覆われた樹脂成形体20が得られる。なお、折り返し片26と基材21との固定は、両面テープ49による固定に限られるものではなく、ビスやボルト等の締結手段による固定でもよく、手段は任意である。
【0030】
以上、説明した第1実施形態の樹脂成形体20によれば、折り返し片26を折り返すだけの簡単な作業で、基材21の側面23と裏面33を表皮材22で覆うことができる。また、表皮片27が基材21の裏面33よりも張り出すように構成したので、クッション性の高い表皮片27を支持部15に支持させることができる。同時に、基材21と支持部15との接触を防止して、基材21と支持部15の摩耗を防止することができる。加えて、基材21の2つの辺部に折り返し片26を設けたので、樹脂成形体20を2つの支持部15に安定的に支持させることができる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の樹脂成形体を図6〜図8に基づいて説明する。なお、前述した第1実施形態にかかる樹脂成形体と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0032】
第1実施形態においては、折り返し片を略平板状に成形したが、折り返し片は、略L字状に成形してもよい。すなわち、図6に示すように、第2実施形態の樹脂成形体50では、側板32と底板34の間に第2のヒンジを設けず、側板32と底板34が直接かつ略直角に連なるように、折り返し片38を一体成形する。
【0033】
このような略L字状の折り返し片38を成形する成形方法を説明する。図7(a)および(b)に示すように、第1の金型41および第2の金型42のそれぞれに、凹状の表皮片部27Aおよび凸状の折り返し片部38Aを設ける。表皮片部27Aと折り返し片部38Aは、型締め時に略L字状の隙間(キャビティ43の一部)を形成する。このような表皮片部27A、折り返し片部38Aを有する成形金型40を用い、第1実施形態と同様に成形を行う。
【0034】
すると、図8に示すように、略L字状の折り返し片38を有する樹脂成形体50が得られる。そして、第1のヒンジ25を曲げ、折り返し片38を凹み28に嵌め、両面テープ49(図6参照)で固定する。結果、基材21の側面23と裏面33の端部が表皮片27で覆われた樹脂成形体50が得られる。なお、折り返し片38を基材21に固定する手段は、第1実施形態と同様に、任意の手段から選択可能である。
【0035】
第2実施形態の樹脂成形体50によれば、前述した第1実施形態の樹脂成形体10と同様の作用効果を得ることができる。さらに、折り返し片38を略L字状に成形したので、側板に対して底板を曲げる手間が省ける。このため、折り返し片38を折り返す作業がさらに簡単になる。
【0036】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0037】
たとえば、実施形態では、筒状のパリソンを用いたブロー成形法により、基材を成形したが、成形方法は、ブロー成形法に格別に限定されるものではなく、任意である。たとえば、筒状のパリソンの代わりに2枚の溶融状態のシートを複数の分割金型の間に配置し、シートと分割金型との間の密閉空間を吸引することで、中空の基材を成形してもよい。このような成形法では、2枚のシートの間に発泡材料等を芯材として入れることが容易であるため、より剛性の高い樹脂成形体の製造に好適である。
【符号の説明】
【0038】
15 支持部
20 樹脂成形体
21 基材
22 表皮材
23 基材の側面
25 第1のヒンジ(ヒンジ)
26 折り返し片
27 表皮片
28 凹み
32 側板
33 基材の裏面
34 底板
38 折り返し片
50 樹脂成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の基材と、前記基材の表面側に設けられる表皮材とを有する板状の樹脂成形体において、
前記基材の側面に一体成形されるヒンジと、
前記ヒンジに一体成形されて前記基材の裏面に折り返される折り返し片と、
前記表皮材で構成されて前記ヒンジおよび前記折り返し片の表面に圧着される表皮片と、
前記基材に設けられて前記折り返し片を逃がす凹みと、を有することを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】
前記表皮片が前記基材の裏面よりも張り出すように構成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
略長方形の樹脂成形体であり、
前記折り返し片は、対向する2つの辺部に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記折り返し片は、前記基材の側面に沿う側板と、前記側板に連なり前記基材の裏面に沿う底板と、を有し、略L字状に成形されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−75555(P2013−75555A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215211(P2011−215211)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】