説明

樹脂成形品の製造方法

【課題】複数の層の樹脂による積層体の部分を含む樹脂成型品を製造する場合であっても、各層の樹脂の厚みを正確かつ容易に制御できる樹脂成型品の製造方法を提供する。
【解決手段】隣り合うように並べられた2つのTダイ28の押出スリット34それぞれから、シート状パリソンが単層で押し出され、この2枚の単層シート状パリソンが接着されて積層体を形成する。各シート状パリソンの厚みは、Tダイ28のスリットからの押出速度や、調整ローラ30の回転速度などにより精密に調整できるようになっている。このため、少なくとも2層の樹脂による積層体を成型する際にも、この積層体における各層の厚さを個別に、正確かつ容易に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層の樹脂による積層体の部分を少なくとも含む樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、芯材の少なくとも一面が複数の層の樹脂による多層積層体で覆われた樹脂成形品や、こうした多層積層体による中空の樹脂成形品を製造する場合、これら複数の樹脂をTダイの1つの押出スリットから溶融状態で多層樹脂シートとして押し出し、成形する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、本出願人により先に出願されている成形技術として、溶融状態の樹脂シート2枚を押出スリットから下方に押し出し、この2枚の樹脂シート間に補強芯材を挟み込んで分割金型により成形するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3804528号公報
【特許文献2】WO2009/157197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1のように、Tダイの1つの押出スリットから複数の樹脂を溶融状態で多層樹脂シートとして押し出す方法では、Tダイ内の樹脂流路中でこれら複数の樹脂が積層されることとなる。このため、押し出される多層樹脂シートにおける各層の厚さを個別に精密調整することは困難であった。
【0006】
また、上述した特許文献2のものは、複数の層の樹脂による多層積層体を製造することについてまで考慮されたものではなかった。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、複数の層の樹脂による積層体の部分を含む樹脂成形品を製造する場合であっても、各層の樹脂の厚みを正確かつ容易に制御することができる樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、
少なくとも2つの押出スリットのそれぞれから溶融状態の樹脂シートを押し出す押出工程と、
前記樹脂シートを分割金型で挟み込んで樹脂成形品を成形する成形工程と、を有し、
前記成形工程では、前記押出工程で押し出された前記樹脂シートの内、単層で押し出された少なくとも2枚の樹脂シートが、互いに接着された状態で成形されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、複数の層の樹脂による積層体の部分を含む樹脂成形品を製造する場合についても、各層の樹脂の厚みを正確かつ容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態による樹脂成形品100の構成例を示す縦断面図である。
【図2】第1の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図3】第1の実施形態における押出装置12の構成例を模式的に示す図である。
【図4】第1の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図5】第1の実施形態による製造方法例を説明するための第3の図である。
【図6】第2の実施形態による樹脂成形品200の構成例を示す縦断面図である。
【図7】第2の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図8】第2の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図9】第3の実施形態による樹脂成形品300の構成例を示す縦断面図である。
【図10】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図11】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図12】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第3の図である。
【図13】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第4の図である。
【図14】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第5の図である。
【図15】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図16】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図17】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第3の図である。
【図18】第5の実施形態による樹脂成形品400の構成例を示す縦断面図である。
【図19】第5の実施形態による製造方法例を説明するための図である。
【図20】第3〜第5の実施形態による樹脂成形品300、400の他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る樹脂成形品の製造方法を適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明に係る樹脂成形品は、例えば自動車のデッキボード、建材などの各種用途に用いることができる。
【0012】
まず、本発明の各実施形態に共通する概略について説明する。
図1は、樹脂成形品100の構成例を示し、図2、図3は、樹脂成形品100の製造方法例を示す。
【0013】
本発明の各実施形態で用いる樹脂成形品の成形装置10は、図2に示すように、少なくとも2つのTダイ28を、各Tダイの押出スリット34が下向きに略平行となるように並べて備える。
こうして隣り合うように並べられた2つのTダイ28の押出スリット34それぞれから溶融樹脂シートが単層で押し出され、この2枚の単層溶融樹脂シートが接着されて積層体を形成する。
【0014】
各溶融樹脂シートの厚みは、後述のように、Tダイ28のスリットからの押出速度や、調整ローラ30の回転速度などにより精密に調整できるようになっている。このため、少なくとも2層の樹脂による積層体を成形する際にも、この積層体における各層の厚さを個別に、正確かつ容易に調整することができる。
【0015】
〔第1の実施形態〕
<樹脂成形品100の構成例>
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。
まず、図1を参照しながら、本実施形態により成形する樹脂成形品100の構成例について説明する。
【0016】
本実施形態の樹脂成形品100は、異なる樹脂による樹脂層1および樹脂層2からなる中空の多層積層体となっている。各樹脂層は、発泡層であってもよく、非発泡層であってもよく、後述のように、公知の各種樹脂材料を用いて構成されるものであってよい。
【0017】
このため、例えば、樹脂成形品100の外側を構成する樹脂層2を、色や光沢によって選択し、樹脂成形品100の内側を構成する樹脂層1を剛性に優れた材料とすることにより、表面の色や光沢と剛性とを併せ持つ中空の樹脂成形品100とすることなどが可能である。
【0018】
<樹脂成形品100の製造方法例>
次に、図2〜図5を参照しながら、本実施形態の樹脂成形品100の製造方法例について説明する。図2〜図5は、本実施形態による樹脂成形品100の製造方法例を説明する図である。
【0019】
図2、図3に示すように、本実施形態で用いる樹脂成形品の成形装置10は、押出装置12(12a、12b)と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有して構成される。
【0020】
押出装置12(12a、12b)は、2枚の溶融樹脂シートP1、P2が並んで配置されるよう、これら2枚の溶融樹脂シートを各Tダイ28(28a、28b)の押出スリット34(34a〜34b)から押し出し、調整ローラ30で厚さ等の調整を行う。こうして押し出された溶融樹脂シートP1、P2を、後述する分割金型50A,50Bで挟み込んで型締めし、成形する。
【0021】
2台の押出装置12(12a、12b)は、それぞれ同じ構成であるため、1つの押出装置12について、図3を参照して説明する。図2中では押出装置12の構成の内、Tダイ28と調整ローラ30のみを示し、他の構成は省略する。
【0022】
押出装置12は、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ24と、アキュムレータ24内に設けられたプランジャー26と、Tダイ28と、一対の調整ローラ30とを有して構成される。
【0023】
ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ24に移送されて一定量貯留され、プランジャー26の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送る。こうして、Tダイ28下端の押出スリット34から、溶融状態の樹脂による連続的な溶融樹脂シートが押し出され、間隔を隔てて配置された一対の調整ローラ30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出され、分割金型50A、50Bの間に垂下される。
【0024】
また、Tダイ28には、押出スリット34のスリット間隔を調整するためのダイボルト46が設けられる。スリット間隔の調整機構は、このダイボルト46を用いた機械式の機構に加え、公知の各種調整機構を他に備えてもよい。
【0025】
こうした構成により、後に詳細に説明するように、2つのTダイ28それぞれの押出スリット34から溶融樹脂シートPが、上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で分割金型50A、50Bの間に配置される。
【0026】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、各溶融樹脂シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択してよい。実用的な観点から具体例を挙げると、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、各溶融樹脂シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、溶融樹脂シートPの押出工程はなるべく短い時間で行われることが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、例えば押出工程は40秒以内、好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、例えば50kg/時cm2以上、好ましくは150kg/時cm2以上である。
【0027】
一対の調整ローラ30の回転により一対の調整ローラ30間に挟み込まれた溶融樹脂シートPを下方に送り出すことで、溶融状態のシート状樹脂を延伸薄肉化することが可能である。このため、押し出されるシート状樹脂の押出速度と、一対の調整ローラ30による溶融樹脂シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能である。このため、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0028】
図3に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された連続シート状の溶融樹脂は、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔が調整できるようになっているため、このスリット間隔の調整により、押し出されるシート状樹脂が発泡層や非発泡層など各種のものであっても、予め設定された様々な厚みに対応することができる。
【0029】
こうしたシート状樹脂を構成するための熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂などが適用可能である。但し、溶融樹脂シートが発泡層である場合、この発泡層を構成する熱可塑性樹脂としては、プロピレン単体を有するものが好ましく、具体的には、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体であることが好ましい。これにより、溶融張力が高くなるため、発泡層によるシート状樹脂を発泡し易くしたり、気泡セルも均一化し易くしたりすることができる。
【0030】
また、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体は、0.9以下の重量平均分岐指数を有するプロピレン単独重合体であることが好ましい。また、重量平均分岐指数は、v1/v2で表され、v1が分岐ポリオレフィンの極限粘度数、v2が分岐ポリオレフィンと同じ重量平均分子量を有する線状ポリオレフィンの極限粘度数である。
【0031】
また、押し出されるシート状樹脂を構成するための熱可塑性樹脂は、230℃におけるメルトテンション(MT)が30〜350mNの範囲内のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。ここで、MTとは、溶融張力を意味する。
溶融樹脂シートが発泡層である場合、この発泡層を構成する熱可塑性樹脂のMTが30〜350mNの範囲内であると、ポリプロピレン系樹脂は歪み硬化性を示し、高い発泡倍率を得ることができる。なお、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示すものである。
【0032】
なお、本実施形態において発泡倍率は、後述する本実施形態の成形方法で用いた熱可塑性樹脂の密度を、本実施形態の成形方法により得られた樹脂成形品100の各樹脂層壁面における見かけ密度で割った値を発泡倍率とした。
【0033】
また、押し出されるシート状樹脂を構成するための熱可塑性樹脂は、230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が1〜10であることが好ましい。ここで、MFRとは、JIS K−7210に順じて測定した値である。MFRが1未満であると、MFRが1〜10の範囲内にある場合と比較し、押出速度を上げることが困難になる傾向があり、MFRが10を超えると、MFRが1〜10の範囲内にある場合と比較し、ドローダウン等の発生によりブロー成形が困難になる傾向がある。
【0034】
溶融樹脂シートが発泡層である場合、この発泡層に混合させるスチレン系エラストマーとしては、分子内に水素が添加されたスチレン単位を有するエラストマーなどが適用可能である。例えば、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体等の水素添加エラストマーなどが適用可能である。スチレン系エラストマーの配合割合は、熱可塑性樹脂に対して、成形性の観点から40wt%未満の範囲であることが好ましい。また、スチレン系エラストマー中のスチレンの含有量は、低温時の衝撃強度の観点から、30wt%未満であることが好ましく、20wt%未満であることがより好ましい。
【0035】
また、発泡層に混合させるポリエチレンとしては、低温時の衝撃強度の観点から、密度0.91g/cm3以下のものが適用可能である。特に、メタロセン系触媒により重合された直鎖状超低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。低密度ポリエチレンの配合割合は、上述した熱可塑性樹脂に対して、剛性及び耐熱性の観点から40wt%未満の範囲であることが好ましい。
【0036】
また、発泡層を構成する基材樹脂には、上述したスチレン系エラストマー、低密度のポリエチレン及び発泡剤以外に、核剤、着色剤等を添加することも可能である。
【0037】
発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系発泡剤、または、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系発泡剤が挙げられる。これらの中でも、発泡剤は、空気、炭酸ガスまたは窒素ガスを用いることが好ましい。この場合、有機物の混入がなく、耐久性等の低下がない。
【0038】
発泡方法としては、例えば超臨界流体を用いる方法などがある。この場合、炭酸ガス、または、窒素ガスを超臨界状態とし、発泡層を構成する基材樹脂を発泡させることが好ましい。この超臨界流体を用いる方法を用いれば、均一かつ確実に発泡させることができる。なお、窒素の超臨界流体は、窒素を臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上とすることにより得られ、二酸化炭素の超臨界流体は、二酸化炭素を臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。
【0039】
図2、図3に示す一対の調整ローラ30は、押出スリット34の下方に配置され、各ローラの回転軸が互いに平行かつほぼ水平に配置される。
また、図2、図3に示すように、一対の調整ローラ30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される溶融樹脂シートに対して、線対称となるように配置される。
【0040】
それぞれのローラの直径およびローラの軸方向長さは、押し出されるシート状樹脂の押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定してよい。例を挙げると、ローラの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、溶融樹脂シートとの接触においてローラの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても溶融樹脂シートがローラへ巻き付く不具合の原因となる。
【0041】
一対の調整ローラ30それぞれの外表面には、凹凸状のシボが設けられる。凹凸状のシボは、外表面において、シート状樹脂と接触する面全体に亘って均一に分布するように設けるのが好ましく、その深さおよび密度は、一対の調整ローラ30によりシート状樹脂を円滑に下方に送り出すことが可能なように、一対の調整ローラ30それぞれの外表面と、対応するシート状樹脂の表面との間に滑りが生じない観点から適宜に定めればよい。このような凹凸状のシボは、たとえば、従来既知のサンドブラスト処理によって形成されるが、ブラスト機において、たとえば粗さ60番程度を採用する。
【0042】
一対の調整ローラ30は、一方が回転駆動ローラ30Aであり、他方が被回転駆動ローラ30Bであり、不図示の駆動源による回転が回転駆動ローラ30Aに伝達され、さらに被回転駆動ローラ30Bにも伝達されるように構成される。
【0043】
こうして回転駆動ローラ30Aの回転駆動力を被回転駆動ローラ30Bに伝達させることで、両ローラの回転速度を一致させた状態で、両ローラにより溶融樹脂シートを挟み込んで、下方に送り出すことが可能となる。
一対の調整ローラ30の駆動機構の詳細については、公知の構成と同様であり、説明を省略する。
【0044】
回転駆動ローラ30Aの回転速度は、シート状樹脂が押出スリット34から押し出される押出速度と、一対の調整ローラ30の回転により溶融樹脂シートPが下方に送り出される送り出し速度との相対速度差を、シート状樹脂の押出速度に応じて調整するといった方法により定められる。
【0045】
溶融樹脂シートP1、P2のローラによる送り出し速度は、例えば直径100mmの一対の調整ローラ30を用いて、送り出し方向に長さ2000mmの溶融樹脂シートを15秒間で送り出す場合、1ショット15秒間で約6.4回転することとなり、ローラの回転速度は約25.5rpmと算出することができる。回転駆動ローラ30Aの回転速度を上げ下げすることで、各溶融樹脂シートP1、P2の送り出し速度を容易に調整することができる。
【0046】
一対の調整ローラ30は、金属製、たとえばアルミニウム製であり、一対の調整ローラ30にはそれぞれ、溶融状態のシート状樹脂の温度に応じて、ローラの表面温度を調整する表面温度調整手段(不図示)が付設される。こうして温度調整を行うことにより、各ローラの表面が、挟み込まれた溶融状態のシート状樹脂により過度に加熱されないように熱交換するようにしている。
【0047】
一対の調整ローラ30間の間隔は、シート状樹脂の最下部がこの調整ローラ30の位置まで供給される前、供給されるシート状樹脂の厚みより広げておき、シート状樹脂が円滑に一対の調整ローラ30の間に供給されるようにしておく。その後、所定のタイミングで一対の調整ローラ30同士の間隔を狭めて、一対の調整ローラ30によりシート状樹脂を挟み込み、ローラの回転により溶融樹脂シートPを下方に送り出すようにしている。
なお、シート状樹脂の最下部がこの調整ローラ30の位置まで供給される前から、一対の調整ローラ30の間隔を適切な間隔に調整しておいてもよい。また、一対の調整ローラ30の間隔を固定せず、一対の調整ローラ30で挟み込む力が一定になるように構成してもよい。この場合、一対の調整ローラ30間にシートが巻き込まれることで、ローラ間隔が自動的に所定の間隔に広がることになる。
【0048】
以上のように、押出スリット34からのシート状樹脂の押出速度と、一対の調整ローラ30の間隔、回転速度、温度などを調整することで、押し出される溶融樹脂シートP1、P2が発泡層、非発泡層といった各種樹脂材料によるものであっても、それぞれの溶融樹脂シートを、各溶融樹脂シートについて予め定められた厚みに正確に調整することができる。また、ドローダウンやネックインを発生させることなく、円滑に動作させることができる。
【0049】
型締装置14は、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bと、分割金型50A、50Bを溶融状態の樹脂シートP1、P2の供給方向(押出方向)に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる不図示の金型駆動装置とを有する。
【0050】
図2に示すように、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bは、キャビティ面51A、51Bを対向させた状態で配置され、それぞれのキャビティ面51A、51Bの底面が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ面51A、51Bの表面には、溶融状態の樹脂シートP1、P2から成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられたものであってもよい。
本実施形態では、キャビティ面51A、51Bの底面が凹凸のない平坦面となっている場合を例として説明する。
【0051】
また、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bそれぞれについて、キャビティ面51A、51Bのまわりには、ピンチオフ部52A、52Bが形成される。このピンチオフ部52A、52Bは、キャビティ面51A、51Bのまわりに環状に形成され、対向する分割金型に向かって突出する。これにより、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bを型締めする際、それぞれのピンチオフ部52A、52Bの先端部が当接し、挟み込まれた溶融状態の樹脂シートP1、P2の周縁にパーティングラインが形成されるようにしている。
【0052】
2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bはそれぞれ、不図示の金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型50A、50Bの間に、各押出スリット34から垂下された全ての溶融樹脂シートを配置可能なようにされる。また、閉位置において、2つの分割金型50A、50Bのピンチオフ部52A、52Bで溶融状態の樹脂シートの周縁にパーティングラインを形成する所定位置まで2つの分割金型50A、50Bを近接させ、環状のピンチオフ部52A、52Bにより、2つの分割金型50A、50B内に密閉空間が形成されるようにしている。
金型駆動装置の詳細については、従来と同様のものであり、説明を省略する。
【0053】
本実施形態では、分割金型50Aの内部に孔55Aが設けられ、不図示の送風手段からキャビティ面51Aに連通した構成となっている。このため、不図示の送風手段からのエアーを、ブローとして水平方向(押出方向と略垂直な方向)に吹きかけるようになっている。
【0054】
また、本実施形態の分割金型50Bの内部には、真空吸引室53Bが設けられ、真空吸引室53Bは吸引孔54Bを介してキャビティ面51Bに連通した構成となっている。このため、不図示の減圧手段により真空吸引室53B内部を減圧し、その真空吸引室53Bから吸引孔54Bを介して吸引することにより、キャビティ面51Bに向かって溶融樹脂シートを吸着させ、キャビティ面51Bの外表面に沿った形状とさせるようになっている。
【0055】
以上のような成形装置10により、図2に示すように、分割金型50A、50Bが開位置にある状態で、Tダイ28aの押出スリット34aから樹脂層1を形成する溶融樹脂シートP1が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Aa、30Baにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
また、Tダイ28bの押出スリット34bから樹脂層2を形成する溶融樹脂シートP2が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Ab、30Bbにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
【0056】
こうして各溶融樹脂シートP1〜P3がそれぞれ押し出され、下方の所定位置まで垂下されると、図4に示すように、型締装置14は分割金型50A、50Bを移動させ、閉まる直前、すなわちピンチオフ部52Aが溶融樹脂シートP1に接触し、ピンチオフ部52Bが溶融樹脂シートP2に接触する位置まで移動させる。
【0057】
次に、図5に示すように、分割金型50Aから溶融樹脂シートP1、P2の厚み方向(押出方向と略垂直な方向)にエアーを吹きかけると同時に、分割金型50Bからキャビティ面51Bに吸引する。つまり、溶融樹脂シートを挟んで一方の空間(キャビティ面51A側)の圧力を他方の空間(キャビティ面51B側)の圧力よりも高めることで、溶融樹脂シートP1、P2を分割金型におけるキャビティ面51B側に移動させて、当該キャビティ面51Bで成形する。
【0058】
この時、分割金型50Aでは、不図示の送風手段からブローのためのエアーを孔55Aに送り込むことで、キャビティ面51Aからエアーを吹きかける。
また、分割金型50Bでは、不図示の減圧手段により真空吸引室53B内部を減圧し、その真空吸引室53Bから吸引孔54Bを介して吸引することにより、キャビティ面51Bに向かって溶融樹脂シートP1、P2を吸着させる。
このことにより、溶融樹脂シートP1、P2間が互いに接着されると共に、接着されて積層体となった溶融樹脂シート積層体がキャビティ面51Bに吸着される。
【0059】
こうして積層体となった溶融樹脂シートP1、P2がキャビティ面51Bに吸着されると、型締装置14は分割金型50A、50Bを閉位置まで移動させる。型締めにより、分割金型50Bのキャビティ面51Bの形状に沿った形状の樹脂成形品を成形した後、分割金型50A、50Bを型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、パーティングラインまわりに形成されたバリを除去する。
各押出スリット34(34a、34b)から溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、樹脂成形品100を次々に成形することができる。
【0060】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、2枚の溶融樹脂シートP1、P2を、それぞれに対して設けられた押出装置12a、12bから押し出している。すなわち、押出スリット34a、34bから押し出されたシート状樹脂を、それぞれに対して個別に設けられた調整ローラ30により厚さ調整を行い、分割金型50A、50B間に垂下させている。
このため、溶融樹脂シートP1、P2間が互いに接着された積層体により樹脂成形品を製造するに当たっても、積層体を構成する各層の厚さを精密かつ容易に調整することができる。このため、樹脂層1、2が積層された積層体による樹脂成形品100を製造する際にも、各樹脂層の厚みを正確かつ容易に制御することができる。
【0061】
さらに、2枚の溶融樹脂シートP1、P2を溶融状態で接着させ、積層体としているため、Tダイ内部で2種類の樹脂を積層させて多層樹脂シートとして押し出す製造方法と比較しても、積層体を構成する各層間の接着強度を同様の強度とすることができる。
【0062】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0063】
上述した第1の実施形態では、2枚の溶融樹脂シートを押し出して垂下させ、ブローと吸引により分割金型50Bに吸着させると共に、接着された積層体としている。
第2の実施形態では、こうした動作に替えて、まず、2枚の溶融樹脂シートを押し出して垂下させ、芯材4が配置された分割金型50A、50Bで型締めすることにより、2枚の溶融樹脂シートを接着させ、積層体とするようにしたものである。
上述した第1の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0064】
<樹脂成形品200の構成例>
まず、図6を参照しながら、本実施形態により成形する樹脂成形品200の構成例について説明する。
【0065】
本実施形態の樹脂成形品200は、板状の芯材4の略半分が、異なる樹脂による樹脂層1および樹脂層2からなる多層積層体により覆われた構成となっている。樹脂層2は、この多層積層体の外側を構成し、樹脂層1は、多層積層体の内側を構成する。
各樹脂層は、発泡層であってもよく、非発泡層であってもよく、上述のように、公知の各種樹脂材料を用いて構成されるものであってよい。
【0066】
芯材4は、発泡体、非発泡体といった各種樹脂材料からなるものであってもよく、金属材料などからなるものであってもよい。このように、芯材4は、予め成形された任意の材料によるものを用いることができる。
【0067】
<樹脂成形品200の製造方法例>
次に、図7〜図8を参照しながら、本実施形態の樹脂成形品200の製造方法例について説明する。図7〜図8は、本実施形態による樹脂成形品200の製造方法例を説明する図である。
【0068】
まず、図7に示すように、本実施形態の分割金型50Aのキャビティ面51Aに、芯材4が取り付けられる。芯材4を取り付ける方法は、例えば吸着盤を有するマニピュレータにより押し付けた後、その吸着盤を芯材4から取り外す方法など、各種の方法であってよい。
【0069】
次に、図7に示すように、開位置にある分割金型50A、50Bの間に、Tダイ28aの押出スリット34aから樹脂層1を形成する溶融樹脂シートP1が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Aa、30Baにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
また、Tダイ28bの押出スリット34bから樹脂層2を形成する溶融樹脂シートP2が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Ab、30Bbにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
【0070】
次に、図8に示すように、型締装置14が分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
この時、分割金型50A、50Bの間に垂下されている溶融樹脂シートP1、P2は、芯材4と分割金型50Bのキャビティ面51Bとの間で圧着され、溶融樹脂シートP1、P2間が互いに接着されると共に、溶融樹脂シートP1と芯材4との間が接着される。
【0071】
また、分割金型50Bのキャビティ面51Bの形状によって、溶融樹脂シートP2とキャビティ面51Bとの間に空気だまりが残る可能性が考えられる場合には、不図示の減圧手段により分割金型50Bの真空吸引室53B内部を減圧し、その真空吸引室53Bから吸引孔54Bを介して吸引することにより、仮に空気だまりが発生している場合であってもなくすことができる。
【0072】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、分割金型50A、50B間に垂下された2枚の溶融樹脂シートP1、P2を、芯材4と分割金型50Bのキャビティ面51Bとの間で圧着させる。
このため、上述した第1の実施形態と同様の効果が得られると共に、溶融樹脂シートP1、P2間が互いに接着された積層体と、芯材4との間も接着することができる。このため、樹脂層1、2が積層された積層体で芯材4の略半分を被装した樹脂成形品200を製造する際にも、積層体における各樹脂層の厚みを正確かつ容易に制御することができる。
【0073】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0074】
上述した第2の実施形態では、2枚の溶融樹脂シートが垂下された状態で、芯材4が配置された分割金型50A、50Bで型締めし、成形している。
第3の実施形態では、こうした動作に替えて、分割金型50A、50Bで溶融樹脂シートを1枚ずつ吸引した後、さらに1枚の溶融樹脂シートと、芯材4とを型締めするようにしたものである。
上述した第1、第2の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0075】
<樹脂成形品300の構成例>
まず、図9を参照しながら、本実施形態により成形する樹脂成形品300の構成例について説明する。
【0076】
本実施形態の樹脂成形品300は、板状の芯材4の略半分が、単層の樹脂層1により覆われ、残りの略半分が、異なる樹脂による樹脂層2および樹脂層3からなる多層積層体により覆われた構成となっている。樹脂層3は、この多層積層体の外側を構成し、樹脂層2は、多層積層体の内側を構成する。
各樹脂層は、発泡層であってもよく、非発泡層であってもよく、上述のように、公知の各種樹脂材料を用いて構成されるものであってよい。
【0077】
芯材4は、発泡体、非発泡体といった各種樹脂材料からなるものであってもよく、金属材料などからなるものであってもよい。このように、芯材4は、予め成形された任意の材料によるものを用いることができる。
【0078】
<樹脂成形品300の製造方法例>
次に、図10〜図14を参照しながら、本実施形態の樹脂成形品300の製造方法例について説明する。図10〜図14は、本実施形態による樹脂成形品300の製造方法例を説明する図である。
【0079】
本実施形態における成形装置10は、上述した押出装置12を3台(12a〜12c)備え、3つのTダイ28(28a〜28c)それぞれの押出スリット34(34a〜34c)が下向きに略平行となるよう、並べて配置される。
【0080】
まず、図10に示すように、開位置にある分割金型50A、50Bの間に、Tダイ28aの押出スリット34aから樹脂層1を形成する溶融樹脂シートP1が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Aa、30Baにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
【0081】
次に、図11に示すように、型締装置14は分割金型50Aを移動させ、ピンチオフ部52Aが溶融樹脂シートP1に接触する位置まで移動させる。そして、不図示の減圧手段により分割金型50Aの真空吸引室53A内部を減圧し、その真空吸引室53Aから吸引孔54Aを介して吸引することにより、キャビティ面51Aに向かって溶融樹脂シートP1を吸着させる。
【0082】
次に、図12に示すように、キャビティ面51Aに吸着された溶融樹脂シートP1に対して、芯材4を水平方向に押し付けて接着させる。芯材4を押し付ける方法は、例えば吸着盤を有するマニピュレータにより押し付けた後、その吸着盤を芯材4から取り外す方法など、各種の方法であってよい。
【0083】
そして、開位置にある分割金型50A、50Bの間に、Tダイ28cの押出スリット34cから樹脂層3を形成する溶融樹脂シートP3が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Ac、30Bcにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
【0084】
次に、図13に示すように、型締装置14は分割金型50Bを移動させ、ピンチオフ部52Bが溶融樹脂シートP3に接触する位置まで移動させる。そして、不図示の減圧手段により分割金型50Bの真空吸引室53B内部を減圧し、その真空吸引室53Bから吸引孔54Bを介して吸引することにより、キャビティ面51Bに向かって溶融樹脂シートP3を吸着させる。
【0085】
そして、開位置にある分割金型50A、50Bの間に、Tダイ28bの押出スリット34bから樹脂層2を形成する溶融樹脂シートP2が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Ab、30Bbにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
【0086】
次に、図14に示すように、型締装置14が分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
この時、分割金型50A、50Bの間に垂下されている溶融樹脂シートP2は、分割金型50Bのキャビティ面51Bに吸着されている溶融樹脂シートP3と、芯材4との間で圧着され、溶融樹脂シートP2、P3間が互いに接着されると共に、溶融樹脂シートP2と芯材4との間が接着される。
【0087】
こうして型締めにより成形する際、分割金型50Bのキャビティ面51Bの形状によって、溶融樹脂シートP3とキャビティ面51Bとの間に空気だまりが残る可能性が考えられる場合には、分割金型50Bに設けられた空気抜き用の孔(不図示)から空気抜き用のパイプを挿入するなどの公知の方法により空気抜きを行うこととしてもよい。
【0088】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、分割金型50A、50Bで溶融樹脂シートP1、P3をそれぞれ吸引した後、溶融樹脂シートP2と、芯材4とを型締めしている。
このように、芯材4に対して溶融樹脂シートP1を一方の側に配置し、溶融樹脂シートP2、P3を他方の側に配置して成形することにより、板状の芯材4の略半分が樹脂層1により覆われ、残りの略半分が樹脂層2、3からなる多層積層体により覆われた樹脂成形品300を成形することができる。そしてこの製造方法について、上述した第1、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0090】
上述した第3の実施形態では、分割金型50A、50Bで溶融樹脂シートを1枚ずつ吸引した後、さらに1枚の溶融樹脂シートと、芯材4とを型締めし、成形している。
第4の実施形態では、こうした動作に替えて、芯材4に対して同じ側となる溶融樹脂シートP2、P3を圧着ローラ40A、40Bにより互いに接着させ、その後、分割金型50A、50Bでそれぞれ吸引し、芯材4を配置して型締めするようにしたものである。
上述した第1〜第3の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0091】
<樹脂成形品300の製造方法例>
次に、図15〜図17を参照しながら、本実施形態による樹脂成形品300の製造方法例について説明する。図15〜図17は、本実施形態による樹脂成形品300の製造方法例を説明する図である。
【0092】
本実施形態では、押出装置12が、一対の圧着ローラ40A、40Bを備え、この圧着ローラ40A、40Bにより、芯材4に対して同じ側となる溶融樹脂シートP2、P3を互いに接着させ、2層の溶融樹脂シート積層体を形成した後、分割金型50Bへ吸着させるようにしている。
【0093】
本実施形態では、一対の圧着ローラ40A、40B間で溶融樹脂シートP2、P3を挟み込んでいるため、各溶融樹脂シート間を広い面積で連続的に接着させることができ、かつ、形成される2層の溶融樹脂シート積層体の厚みも一定にすることができる。
【0094】
ここで、溶融樹脂シートP2、P3を圧着ローラ40A、40Bで挟み込む時の圧着ローラ40A、40Bの圧力は、最終成形品となる樹脂成形品300における見かけ密度を変化させない程度の圧力であることが好ましい。すなわち、例えば溶融樹脂シートP2、P3の何れかが発泡層である場合には、この発泡層の発泡倍率を低下させず、特に発泡層における気泡を極力潰さない程度の圧力であることが好ましく、具体的には、1kg/cm2以下であることが好ましい。これにより、仮に溶融樹脂シートP2、P3の何れかが発泡層である場合であっても、発泡層の気泡が潰れにくいので、最終成形品となる樹脂成形品300における見かけ密度をほとんど変化させないようにして2層の溶融樹脂シート積層体を形成することができる。
【0095】
また、圧着ローラ40A、40Bで溶融樹脂シートP2、P3を挟み込む際、形成される2層の溶融樹脂シート積層体の表面にしわが発生しないようにするために、挟み込む前に溶融樹脂シートP2、P3に対してプリブローを行うことが好ましい。この場合、Tダイ28b、28cの側からプリブロー用のエアーを溶融樹脂シートP2、P3に対して吹き込むなどの方法を用いることができる。
【0096】
また、圧着ローラ40A、40Bで溶融樹脂シートP2、P3を挟み込む際、Tダイ28b、28cの側から溶融樹脂シートP2、P3間の空気を吸引することが好ましい。これにより、溶融樹脂シートP2、P3が互いに接着される際に、その接着面に空気だまりが発生するのを好適に防止することができる。
なお、Tダイ28b、28cの側から上述したプリブロー用のエアーを吹き込み、かつ、溶融樹脂シートP2、P3間の空気を吸引する場合には、吹き込み処理と、吸引処理と、を動的に変更する必要がある。
【0097】
また、圧着ローラ40A、40Bは、溶融樹脂シートP2、P3が供給される前には、一対の圧着ローラ40A、40B間の距離を離しておき、溶融樹脂シートP2、P3が所定長さまで押し出された時点で、これら溶融樹脂シート間を互いに接着させる距離として予め設定された距離まで近づけるようにする。
このようにすることで、押出開始から2層の溶融樹脂シート積層体の形成に至る動作を円滑に進めることができる。
【0098】
こうして図15に示すように、分割金型50A、50Bが開位置にある状態で、芯材4に対して同じ側となる溶融樹脂シートP2、P3が、圧着ローラ40A、40Bにより2層の溶融樹脂シート積層体として形成され、分割金型50A、50B間に所定長さまで垂下される。
【0099】
また、芯材4に対して反対側となる溶融樹脂シートP1が、Tダイ28aの押出スリット34aから単層で押し出され、一対の調整ローラ30Aa、30Baにより、厚さや送り出し速度が正確に調整される。
【0100】
次に、図16に示すように、型締装置14は、分割金型50Aを、ピンチオフ部52Aが溶融樹脂シートP1に接触する位置まで移動させ、分割金型50Bを、ピンチオフ部52Bが溶融樹脂シートP3に接触する位置まで移動させる。
そして、分割金型50A、50Bそれぞれについて、不図示の減圧手段により真空吸引室53A、53B内部を減圧し、その真空吸引室53A、53Bから吸引孔54A、54Bを介して吸引する。このことにより、キャビティ面51Aに向かって溶融樹脂シートP1を吸着させ、キャビティ面51Bに向かって2層の溶融樹脂シート積層体(溶融樹脂シートP2およびP3)を吸着させる。
【0101】
次に、図17に示すように、キャビティ面51Aに吸着された溶融樹脂シートP1に対して、芯材4を水平方向に押し付けて接着させる。芯材4を押し付ける方法は、例えば吸着盤を有するマニピュレータにより押し付けた後、その吸着盤を芯材4から取り外す方法など、各種の方法であってよい。
【0102】
そして、型締装置14が分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
この時、芯材4と、キャビティ面51Bに吸着された2層の溶融樹脂シート積層体とが圧着され、芯材4の表面で接着されることとなる。
【0103】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、芯材4に対して同じ側となる溶融樹脂シートP2、P3を圧着ローラ40A、40Bにより互いに接着させた後、その溶融樹脂シート積層体と溶融樹脂シートP1とで芯材4を挟むように型締めしている。
このように、圧着ローラ40A、40Bにより互いに接着された溶融樹脂シートP2、P3を芯材4に対して一方の側に配置し、溶融樹脂シートP1を他方の側に配置して成形することにより、上述した第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、溶融樹脂シートP2、P3間に空気だまりができる可能性をさらに低くすることができ、より安定した状態で型締めを行うことができる。
【0104】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0105】
上述した第4の実施形態では、圧着ローラ40A、40Bにより積層させた溶融樹脂シート積層体と溶融樹脂シートP1とで芯材4を挟むように型締めしている。
第5の実施形態では、こうした動作に替えて、芯材4を挟まず、中空で仕上げるようにしたものである。
上述した第1〜第4の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0106】
<樹脂成形品400の構成例>
まず、図18を参照しながら、本実施形態により成形する樹脂成形品400の構成例について説明する。
【0107】
本実施形態の樹脂成形品400は、厚み方向における略半分が単層の樹脂層1により覆われ、厚み方向における残りの略半分が、異なる樹脂による樹脂層2および樹脂層3からなる多層積層体により覆われた中空の多層積層体となっている。樹脂層3は、多層積層体部分における外側を構成し、樹脂層2は、多層積層体部分における内側を構成する。
各樹脂層は、発泡層であってもよく、非発泡層であってもよく、上述のように、公知の各種樹脂材料を用いて構成されるものであってよい。
【0108】
<樹脂成形品400の製造方法例>
次に、図19を参照しながら、本実施形態による樹脂成形品400の製造方法例について説明する。図19は、本実施形態による樹脂成形品400の製造方法例を説明する図である。
【0109】
本実施形態では、上述した第4の実施形態における図15、図16で説明した工程と同様に、一対の圧着ローラ40A、40Bにより、中空部分に対して同じ側となる溶融樹脂シートP2、P3を互いに接着させ、2層の溶融樹脂シート積層体を形成した後、分割金型50Bへ吸着させるようにしている。
また、中空部分に対して反対側となる溶融樹脂シートP1が、分割金型50Aへ吸着される。
【0110】
次に、図19に示すように、型締装置14が分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
【0111】
こうして型締めにより成形する際、分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bの形状などの条件によって、中空部分がキャビティ面51A、51Bの形状に沿った形にきれいに仕上がらない可能性が考えられる場合には、分割金型50A、50Bに設けられたパイプ挿入用の孔(不図示)からパイプを挿入するなどの公知の方法により、中空部分に対してエアーを送り込み、ブローしてもよい。
【0112】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、中空部分に対して同じ側となる溶融樹脂シートP2、P3を圧着ローラ40A、40Bにより互いに接着させた後、その溶融樹脂シート積層体を分割金型50Bに吸着し、また、分割金型50Aには、溶融樹脂シートP1を吸着させる。こうして、分割金型50A、50Bにそれぞれ吸着させた状態で型締めすることにより、板状の樹脂成形品400における中空部分の周囲の略半分が樹脂層1により覆われ、残りの略半分が樹脂層2、3からなる多層積層体により覆われた樹脂成形品400を成形することができる。
本実施形態によれば、こうした製造方法においても、樹脂層2、3の積層体部分について、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
〔各実施形態について〕
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0114】
例えば、分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bにおける形状は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば芯材が配置されないキャビティ面については、凹凸を有する形状など任意の形状であってよい。
【0115】
また、上述した第3、第4の実施形態について、分割金型50A、50Bのキャビティ面における凹凸形状の高さを適宜調整することにより、例えば図20(a)(b)に示すように、挟み込まれる全ての溶融樹脂シートが押し潰される部分を含む樹脂成形品300を成形する場合であっても、本発明は同様に適用することができる。この場合、芯材4は全ての溶融樹脂シートが押し潰された状態の形状に合わせて予め加工されてもよい。また、芯材4が発泡体など硬度の低い材質である場合、分割金型50A、50Bによる型締めで芯材4も押し潰すようにしてもよい。
【0116】
また、このように挟み込まれる全ての溶融樹脂シートが押し潰される部分を含む樹脂成形品300を成形する場合、例えば図20(a)に示すように、分割金型50A、50Bの何れか一方のキャビティ面が凹凸を含む形状であってもよく、図20(b)に例示するように、分割金型50A、50Bの両方のキャビティ面が凹凸を含む形状であってもよい。
【0117】
また、上述した第5の実施形態についても、分割金型50A、50Bのキャビティ面における凹凸形状の高さを適宜調整することにより、例えば図20(c)(d)に示すように、挟み込まれる全ての溶融樹脂シートが押し潰される部分を含む中空の樹脂成形品400を成形する場合であっても、本発明は同様に適用することができる。
この場合についても、例えば図20(c)に示すように、分割金型50A、50Bの何れか一方のキャビティ面が凹凸を含む形状であってもよく、図20(d)に例示するように、分割金型50A、50Bの両方のキャビティ面が凹凸を含む形状であってもよい。
【0118】
また、上述した第2の実施形態についても、分割金型のキャビティ面における凹凸形状の高さを適宜調整することにより、芯材4が不連続に配置された形状の樹脂成形品200を成形する場合であっても、本発明は同様に適用することができる。この場合についても、芯材4は全ての溶融樹脂シートが押し潰された状態の形状に合わせて予め加工されてもよく、分割金型50A、50Bによる型締めで芯材4を押し潰すようにしてもよい。
【0119】
また、上述した各実施形態では、一対の分割金型50A、50Bの両方について、キャビティ面が巨視的には凹型となる形状として説明したが、この形状に限定されず、例えば一方のキャビティ面が凹型、他方のキャビティ面が凸型であっても、本発明は同様に実現することができる。
【0120】
また、上述した各実施形態では、一対の分割金型50A、50Bを用いた場合について説明した。しかし、分割金型の分割数は、2つに限定されず、任意の数に分割された分割金型を用いても、本発明は同様に実現することができる。
【0121】
また、Tダイの数は上述した各実施形態で例示した数に限定されず、目的とする成形品の形状などに応じて任意の数であってよい。すなわち、少なくとも隣り合う2枚以上の単層溶融樹脂シートを接着させる構成であれば、配置される溶融樹脂シートの枚数は限定されず、任意の枚数であってよい。
【0122】
また、押出装置12の構成は、上述した実施形態の構成に限定されず、溶融状態の樹脂シートを押し出すことができれば任意の構成であってよい。
【符号の説明】
【0123】
100、200、300、400 樹脂成形品
1、2、3 樹脂層
P1、P2、P3 溶融樹脂シート
10 成形装置
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパー
18 シリンダー
20 油圧モーター
24 アキュムレータ
26 プランジャー
28 Tダイ
30A、30B 調整ローラ
34 押出スリット
40A、40B 圧着ローラ
50A、50B 分割金型
51A、51B キャビティ面
52A、52B ピンチオフ部
53A、53B 真空吸引室
54A、54B 吸引孔
55A、55B 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの押出スリットのそれぞれから溶融状態の樹脂シートを押し出す押出工程と、
前記樹脂シートを分割金型で挟み込んで樹脂成形品を成形する成形工程と、を有し、
前記成形工程では、前記押出工程で押し出された前記樹脂シートの内、単層で押し出された少なくとも2枚の樹脂シートが、互いに接着された状態で成形されることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記単層で押し出された少なくとも2枚の樹脂シートは、前記成形工程で成形される際に互いに接着されることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程では、分割金型で挟み込んだ前記樹脂シートの全てに対して、一方の面側からブローすると共に、他方の面側から吸引することを特徴とする請求項2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程では、前記押出工程で押し出された前記樹脂シートと、芯材とを前記分割金型で挟み込んで成形し、
前記単層で押し出された少なくとも2枚の樹脂シートは、前記分割金型で挟み込まれる際、押出方向と略垂直な方向について、前記芯材に対して同じ側に配置されることを特徴とする請求項2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記押出工程では、少なくとも3つの押出スリットのそれぞれから溶融状態の樹脂シートを押し出し、
前記成形工程では、前記単層で押し出された少なくとも2枚の樹脂シートが前記芯材に対して一方の側に配置され、少なくとも1枚の樹脂シートが該芯材に対して他方の側に配置されることを特徴とする請求項4記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記単層で押し出された少なくとも2枚の樹脂シートは、押し出された後で押出方向と略垂直な方向に圧着ローラで圧着され、前記成形工程よりも前に互いに接着されることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記押出工程では、少なくとも3つの押出スリットのそれぞれから溶融状態の樹脂シートを押し出し、
前記成形工程では、前記押出工程で押し出された前記樹脂シートと、芯材とを前記分割金型で挟み込んで成形し、
前記圧着ローラで圧着された少なくとも2枚の樹脂シートが前記芯材に対して一方の側に配置され、少なくとも1枚の樹脂シートが該芯材に対して他方の側に配置されることを特徴とする請求項6記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記成形工程では、接着された前記少なくとも2枚の樹脂シートを、前記分割金型における分割された少なくとも1つから吸引することを特徴とする請求項6記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記押出工程では、少なくとも3つの押出スリットのそれぞれから溶融状態の樹脂シートを押し出し、
前記成形工程では、前記圧着ローラで圧着された少なくとも2枚の樹脂シートが中空部分に対して一方の側に配置されるよう前記分割金型に吸着され、少なくとも1枚の樹脂シートが該中空部分に対して他方の側に配置されるよう前記分割金型に吸着されることを特徴とする請求項8記載の樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−28031(P2013−28031A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164718(P2011−164718)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】