説明

樹脂成形装置

【課題】樹脂成形装置において、相対向する成形型同士の平行度を良好に保つ。
【解決手段】樹脂成形装置1に、基台2と、基台2に対向する固定板3と、基台2と固定板3とを結合する4本のガイド部材4と、各ガイド部材4に対して摺動自在に設けられた可動板5と、基台2と可動板5との間に設けられ可動板5を進退させる駆動機構6と、固定板3に固定された上型14と、可動板5に固定された下型15と、下型15に設けられたキャビティ16と、キャビティ16に流動性樹脂を注入するディスペンサ17と、各ガイド部材4の側面に2個ずつ設けられたラック・ピニオン機構9と、隣接するラック・ピニオン機構9が各々有するピニオン8同士を連結する回転軸11と、回転軸11を可動板5に取り付ける軸受12とを備え、各ラック・ピニオン機構9のラック7は隣接するラック・ピニオン機構9のラック7と同一面に沿ってガイド部材4に一体的に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型が型締めされた状態でキャビティに充填された流動性樹脂を硬化させることによって成形品を製造する際に使用される樹脂成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形装置が有する相対向する成形型が型締めする際には、成形品における樹脂ばりの発生を抑制する目的で、成形型の型面相互間の平行度を維持する必要がある。そして、この目的でラック・アンド・ピニオン機構を使用する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この構成によれば、固定盤と固定フレームとが4本のタイバー(結合部材)によって連結され、タイバーに対して可動盤が移動自在に案内されている。固定盤の上面及び可動盤の下面には、それぞれ金型が取り付けられている。そして、固定フレーム及び可動盤の四隅はそれぞれ4個のラック及びピニオン機構によって連結されている。すなわち、ラック及びピニオン機構を構成するピニオンが、固定フレームに軸受によって回転可能に支持された回転軸と一体に回転するように設けられている。このピニオンと組合わせられるラックの一端が、可動盤の四隅にそれぞれ固定されている。2つのピニオンはそれぞれ同一の回転軸に設けられており、2つの回転軸が相対向するようにして固定フレームに設けられている。
【0004】
また、2つの回転軸は共に一端にかさ歯車を有しており、これらのかさ歯車は固定フレームに軸受によって回転可能に支持された別の回転軸の両端に設けられたかさ歯車とかみ合っている(かさ歯車及び回転軸がピニオン同期機構を構成する)。従って、4個のピニオンは同時に等量ずつ回転することになる。固定フレームには型締シリンダ(型締用駆動装置)が設けられており、これのピストンはロッドによって可動盤と連結されている。
【0005】
しかし、上述した従来の構成によれば、離間する別部材によってタイバーとラックとが構成されている。また、各ラックの一端が可動盤の四隅にそれぞれ固定されているので、各ラックが可動盤から長く突出しており、かつ各ラックの他端が自由状態にある。これらのことに起因して、次の問題が発生する。
【0006】
第1に、タイバーとラックとの間における組立精度が低下しやすくなるので、タイバーとラックとの間における寸法精度(平行度を含む)が低下しやすくなる。このことによって、1個のラック及びピニオン機構におけるかみ合わせ、及び、4個のラック及びピニオン機構相互間におけるかみ合わせが不安定になる。したがって、ラック及びピニオン機構による位置決め精度の低下、ひいては成形型の型面相互間の平行度の低下を招くおそれがある。
【0007】
第2に、ラックの他端に近い側においてピニオンがラックにかみ合う場合には、ラック及びピニオン機構を含む系全体において振動が発生しやすくなる。これにより、ラック及びピニオン機構による位置決め精度の低下、ひいては型面相互間の平行度の低下を招くおそれがある。加えて、振動が発生するとラック及びピニオン機構における摩耗が生じやすくなる。この点からも、型面相互間の平行度の低下を招くおそれがある。
【0008】
ところで、上述した樹脂成形装置は、回路基板(例えば、プリント基板、リードフレーム等)に装着された半導体チップ等を樹脂封止する樹脂封止装置としても広く使用されている。半導体チップ等を樹脂封止して電子部品を製造するという技術分野においては、近年、電子部品に対する低価格化や小型化等の要請が高まっている。このことから、回路基板の大型化、硬化樹脂の薄肉化、及び、硬化樹脂厚の寸法精度の厳格化という傾向が強くなっている。その結果、樹脂封止装置(樹脂成形装置)において成形型の型面相互間の平行度を改善する要請が高まっている。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−199614号公報(第2〜3頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ラック・アンド・ピニオン機構を使用した樹脂成形装置において、平行度の低下を招くおそれがあることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下の説明における()内の数字は、図面における符号を示しており、説明における用語と図面に示された構成要素とを対比しやすくする目的で記載されたものである。また、これらの数字は、「説明における用語を、図面に示された構成要素に限定して解釈すること」を意味するものではない。
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明に係る樹脂成形装置は、基台(2)と、該基台(2)に対向して設けられた固定板(3)と、基台(2)と固定板(3)とを各々結合する複数のガイド部材(4)と、複数のガイド部材(4)の各々に対して摺動自在であるようにして設けられた可動板(5)と、基台(2)と可動板(5)との間に設けられ可動板(5)を進退させる駆動機構(6)と、固定板(3)に取り付けられた第1の成形型(14)と、該第1の成形型(14)に対向して可動板(5)に取り付けられた第2の成形型(15)と、第1の成形型(14)と第2の成形型(15)との少なくとも一方に設けられたキャビティ(16)と、該キャビティ(16)を流動性樹脂によって充填された状態にする樹脂供給機構(17)とを備える樹脂成形装置(1)であって、複数のガイド部材(4)の各々において1個ずつ又は2個ずつ設けられたラック・アンド・ピニオン機構(9)と、ラック・アンド・ピニオン機構(9)のうち隣接するラック・アンド・ピニオン機構(9)が各々有する相対向するピニオン(8)同士からなるピニオン対(10)が同期して回転するようにピニオン対(10)を連結する回転軸(11)と、回転軸(11)が回転自在になるように回転軸(11)を可動板(5)に取り付ける取付部材(12)とを備えるとともに、複数のガイド部材(4)の一端が各々基台(2)に固定され、複数のガイド部材(4)の他端が各々固定板(3)に固定され、ラック・アンド・ピニオン機構(9)が各々有する1個又は2個のラック(7)はガイド部材(4)の側面に一体的に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、複数のガイド部材(4)は4本設けられ、ピニオン対(10)は4組設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、複数のガイド部材(4)は4本設けられ、ピニオン対(10)は3組設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、取付部材(12)と回転軸(11)とピニオン(8)とは可動板(5)の側面側に設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、取付部材(12)と回転軸(11)とピニオン(8)とは可動板(5)の天面側又は底面側の少なくとも一方の側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各ガイド部材(4)の側面において、ラック(7)がガイド部材(4)に対して一体的に設けられている。また、各ガイド部材(4)の一端が基台(2)に固定され、かつ、他端が固定板(3)に固定されている。そして、固定板(3)に固定された第1の成形型(14)と、可動板(5)に固定された第2の成形型(15)とを型締めする(又は型開きする)過程において、可動板(5)に設けられている2個のピニオン(8)が、隣接するガイド部材(4)における2個のラック(7)にそれぞれかみ合いながら回転する。そして、それらの2個のピニオン(8)からなるピニオン対(10)は、回転軸(11)によって連結されているので、同期して回転する。これらのことにより、第1に、一体的に設けられているラック(7)とガイド部材(4)との間の寸法精度が極めて良好に維持されるので、固定板(3)と可動板(5)との間の平行度が維持される。したがって、第1の成形型(14)と第2の成形型(15)との型面相互間の平行度の低下が防止される。第2に、各ガイド部材(4)の両端が固定されているので、各ガイド部材(4)における振動の発生が抑制される。したがって、型面相互間の平行度の低下が防止される。加えて、ラック(7)とピニオン(8)とにおける摩耗が抑制されるので、この点からも型面相互間の平行度の低下が防止される。
【0018】
また、本発明によれば、4本のガイド部材(4)と4組のピニオン対(10)とを使用することができる。これによれば、樹脂成形装置において第1の成形型(14)と第2の成形型(15)との型面相互間の平行度の低下がいっそう効果的に防止される。
【0019】
また、本発明によれば、4本のガイド部材(4)と3組のピニオン対(10)とを使用することができる。これによれば、いっそう簡素な構造を使用して、樹脂成形装置において第1の成形型(14)と第2の成形型(15)との型面相互間の平行度の低下が防止される。
【0020】
また、本発明によれば、取付部材(12)と回転軸(11)とピニオン(8)とは可動板(5)の側面側に設けられている。これによれば、樹脂成形装置において、第1の成形型(14)と第2の成形型(15)とが対向する方向に小型化を図ることができる。
【0021】
また、本発明によれば、取付部材(12)と回転軸(11)とピニオン(8)とは可動板(5)の天面側又は底面側の少なくとも一方の側に設けられている。これによれば、樹脂成形装置において、第1の成形型(14)と第2の成形型(15)との型面に沿う方向に小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
樹脂成形装置(1)に、基台(2)と、基台(2)に対向する固定板(3)と、基台(2)と固定板(3)とに両端が各々固定された4本のガイド部材(4)と、各ガイド部材(4)に対して摺動自在に設けられた可動板(5)と、基台(2)と可動板(5)との間に設けられ可動板(5)を進退させる駆動機構(6)と、固定板(3)に固定された上型(14)と、可動板(5)に固定された下型(15)と、下型(15)に設けられたキャビティ(16)と、キャビティ(16)に流動性樹脂を注入するディスペンサ(17)とを備える。更に、各ガイド部材(4)の側面に2個ずつ設けられたラック・ピニオン機構(9)と、隣接するラック・ピニオン機構(9)が各々有するピニオン(8)同士を連結する回転軸(11)と、回転軸(11)を可動板(5)に取り付ける軸受(12)とを備える。各ラック・ピニオン機構(9)のラック(7)は、隣接するラック・ピニオン機構(9)のラック(7)と同一面に沿って各ガイド部材(4)に一体的に設けられる。
【実施例1】
【0023】
本発明に係る樹脂成形装置の特徴は、第1に、型締め機構としてラック・アンド・ピニオン機構(以下、「ラック・ピニオン機構」という。)が設けられていることである。第2に、ラックがガイド部材自体の側面においてガイド部材と一体的に設けられていることである。
【0024】
本発明に係る樹脂成形装置の実施例1について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施例に係る樹脂成形装置を示す正面図である。図2は、図1の樹脂成形装置の一部(固定板及び下型)を取り去った状態を仮想的に示す平面図である。図3は、図1の樹脂成形装置における1個のラック・ピニオン機構であるA部を示す拡大図である。なお、本出願書類に含まれているいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。
【0025】
図1に示された樹脂成形装置1は、基台2と、基台2に相対向して設けられた固定板3と、基台2と固定板3とを連結する4本のガイド部材4とを有する。ガイド部材4には、ガイド部材4が伸びる方向(図では上下方向)に摺動自在に可動板5が設けられている。基台2と可動板5との間は、油圧シリンダ、空圧シリンダ等からなる、可動板5を進退させる駆動機構6が設けられている。
【0026】
図1と図2とに示されているように、各ガイド部材4の側面において、ラック7がそれぞれ2個、ガイド部材4に対して一体的に設けられている。これらの2個のラック7は、各ガイド部材4が伸びる方向(図では上下方向)に沿って伸びるようにして設けられている。また、2個のラック7は、各ガイド部材4の側面において、平面視して直交する面に沿って設けられている。そして、図2に示されているように、各ガイド部材4における2個のラック7は、言い換えれば合計8個のラック7は、平面視した場合に矩形の四隅における隣接する2辺に沿ってそれぞれ設けられている。なお、各ラック7については、各ガイド部材4に別の部材としてのラックを取り付けてもよく、各ガイド部材4の側面自体に歯切りをしても(ラックの歯を形成しても)よい。
【0027】
可動板5の各側面においては、隣接するガイド部材4が有する2個のラック7にそれぞれかみ合うようにして、2個のピニオン8が設けられている。1個のラック7と1個のピニオン8とはラック・ピニオン機構9を構成する。対向して隣接している2個のピニオン8からなるピニオン対10は、回転軸11によって連結されている。回転軸11は軸受12によって回転自在に保持されている。軸受12は可動板5の各側面に固定されている。本実施例では、軸受12が、可動板5の各側面に設けられた溝13に固定されている。したがって、2個のピニオン8と回転軸11と軸受12との少なくとも一部分が、可動板5の各側面における溝13に収容されている。これにより、樹脂成形装置1における上下方向及び水平方向の双方において、樹脂成形装置1の小型化を図ることができる。
【0028】
固定板3の下面には上型14が、可動板5の上面には下型15が、それぞれ固定されている。下型15にはキャビティ16が設けられている。そして、固定板3と可動板5とが相対向している空間の外側には、流動性樹脂(図示なし)をキャビティ16に注入するディスペンサ17が進退自在に設けられている。
【0029】
ガイド部材4と可動板5とラック・ピニオン機構9とに関する構成をまとめると、次のようになる。各ガイド部材4における直交する側面において、2個のラック7がガイド部材4と一体的に設けられている。隣接するガイド部材4における2個のラック7にそれぞれかみ合うようにして、2個のピニオン8が対向して設けられている。この2個のピニオン8からなるピニオン対10は、回転軸11によって連結されている。そして、それぞれ1組のピニオン対10を連結する4本の回転軸11が、それぞれ軸受12を介して可動板5の各側面に取り付けられている。
【0030】
図1〜図3を参照して、本実施例に係る樹脂成形装置の動作を説明する。この樹脂成形装置は、回路基板に装着された半導体チップ等を樹脂封止する樹脂封止装置として使用されるものである。はじめに、上型14と下型15との型面同士の平行度が所定の規格を満たすようにして、固定板3に上型14を、可動板5に下型15を、それぞれ固定する。
【0031】
まず、上型14と下型15とが型開きしている状態において、ディスペンサ17を使用して、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂からなる流動性樹脂(図示なし)をキャビティ16に注入する。その後に、半導体チップが装着された回路基板(いずれも図示なし)を、半導体チップを下向きにして下型15の型面に配置する。これにより、半導体チップを流動性樹脂に浸漬することができる。
【0032】
次に、駆動機構6によって可動板5を上昇させる。このことにより、可動板5の各側面に設けられ回転軸11によって連結されている2個のピニオン8が、それぞれラック7にかみ合うようにして、図3の矢印によって示された方向に回転する。
【0033】
次に、引き続き可動板5を上昇させて、上型14と下型15とを型締めする。ここまでの過程において、可動板5の各側面に設けられている2個のピニオン8が、それぞれラック7にかみ合うようにして図3の矢印によって示された方向に回転する。
【0034】
次に、上型14と下型15とが型締めした状態で、熱硬化性樹脂からなる流動性樹脂を引き続き加熱することによって硬化させる。これにより、硬化樹脂を形成して半導体チップを樹脂封止することができる。
【0035】
次に、駆動機構6によって可動板5を下降させる。このことにより、可動板5の各側面に設けられ回転軸11によって連結されている2個のピニオン8が、それぞれラック7にかみ合うようにして、図3の矢印によって示された方向の反対方向に回転する。
【0036】
次に、上型14と下型15とが型開きした状態で、樹脂封止済の回路基板を、吸着等の周知の方法によって取り出す。ここまでの工程によって、半導体チップが装着された1枚の回路基板を樹脂封止する一連の工程が完了する。
【0037】
本実施例に係る樹脂成形装置によれば、可動板5が摺動自在に設けられている各ガイド部材4自体の側面において、ラック7がガイド部材4と一体的に設けられている。また、各ガイド部材4の下端が基台2に固定され、かつ、各ガイド部材4の上端が固定板3に固定されている。そして、上型14と下型15とを型締めする(又は型開きする)過程において、可動板5の各側面に設けられている2個のピニオン8が、隣接するガイド部材4における2個のラック7にそれぞれかみ合いながら回転する。そして、それらの2個のピニオン8は、回転軸11によって連結されているので、同期して回転する。
【0038】
これらのことによって、本実施例に係る樹脂成形装置によれば、次の効果が得られる。第1に、可動板5が摺動する各ガイド部材4の側面においてラック7がガイド部材4と一体的に設けられているので、ラック7とガイド部材4との間の寸法精度が極めて良好に維持される。これにより、上型14と下型15との型面相互間における平行度が維持されるという特有の効果が得られる。したがって、図の上下方向における上型14と下型15との位置決め精度の低下、ひいては型面相互間における平行度の低下が防止される。
【0039】
第2に、各ガイド部材4の両端が固定されているので、各ガイド部材4における振動の発生が抑制されるという特有の効果が得られる。したがって、この点からも型面相互間の平行度の低下が防止される。加えて、各ラック・ピニオン機構9における摩耗が抑制されるので、この点からも型面相互間の平行度の低下が防止される。
【0040】
なお、本実施例では、2個のピニオン8と回転軸11と軸受12との少なくとも一部分が、可動板5の各側面における溝13に収容されている。これに代えて、2個のピニオン8と回転軸11と軸受12とを、可動板5の各側面に取り付けてもよい。この場合には、可動板5の各側面における機械加工を簡略化できるとともに、樹脂成形装置1の上下方向において小型化を図ることができる。
【実施例2】
【0041】
本発明に係る樹脂成形装置の実施例2について、図4を参照して説明する。図4は、本実施例に係る樹脂成形装置の一部(固定板及び下型)を取り去った状態を仮想的に示す平面図である。本実施例の特徴は、対向して隣接している2個のピニオン8を連結する回転軸11が3本設けられていることである。したがって、隣接するガイド部材4が有する2個のラック7にそれぞれかみ合うピニオン対10も、3組設けられていることになる。
【0042】
本実施例に係る樹脂成形装置は、可動板5の3つの側面においてピニオン対10を設けている。樹脂成形装置が樹脂成形して製造する成形品の仕様によっては、3つの側面にピニオン対10が設けられている構成を使用して必要かつ十分な平行度が得られる場合がある。本実施例によれば、このような場合において、いっそう簡素な構成によって、上型14と下型15との型面相互間の平行度の低下が防止される。これにより、その樹脂成形装置にとっては十分な平行度が得られる。
【実施例3】
【0043】
本発明に係る樹脂成形装置の実施例3について、図5を参照して説明する。図5は、本実施例に係る樹脂成形装置における1個のラック・ピニオン機構を示す拡大図である。本実施例の特徴は、2個のピニオン8と回転軸11と軸受12とが、可動板5の下面に取り付けられていることである。
【0044】
本実施例によれば、実施例1と同様に、次の効果が得られる。第1に、可動板5が摺動する各ガイド部材4の側面においてラック7がガイド部材4と一体的に設けられていることによる、型面相互間の平行度の低下が防止される効果である。第2に、各ガイド部材4における振動の発生が抑制されることによる、型面相互間の平行度の低下が防止される効果である。
【0045】
また、本実施例によれば、可動板5における機械加工を簡略化できる。加えて、樹脂成形装置1の水平方向において小型化を図ることができるという特有の効果が得られる。
【0046】
ところで、本実施例によれば、2個のピニオン8と回転軸11と軸受12とが可動板5の下面に取り付けられていることとした。これに限らず、2個のピニオン8と回転軸11と軸受12とが可動板5の上面に取り付けられていることとしてもよい。更に、要求される平行度によっては、2個のピニオン8と回転軸11と軸受12とを、可動板5の上面と下面との双方に取り付けることもできる。
【0047】
なお、ここまでの各実施例では、ディスペンサ17を使用してキャビティ16に流動性樹脂を注入し、その後に型締めして流動性樹脂を硬化させるという、いわゆる圧縮成形について説明した。これに限らず、キャビティ16を流動性樹脂によって充填された状態にする方法として他の方法を使用することもできる。例えば、プランジャを使用して流動性樹脂を押圧して、樹脂流路を経由してキャビティ16に流動性樹脂を注入するトランスファ成形に本発明を適用してもよい。また、射出成形に本発明を適用してもよい。
【0048】
また、キャビティ16が設けられる態様については、上型14にキャビティ16が設けられていてもよい。更に、下型15と上型16との双方にキャビティ16が設けられていてもよい。
【0049】
また、各実施例では、上下方向に相対向する成形型である上型14と下型15とを有する樹脂成形型1について説明した。これに限らず、他の態様で相対向する成形型を有する樹脂成形装置に対して本発明を適用することができる。例えば、水平方向に相対向する成形型を有する樹脂成形装置に対して本発明を適用することができる。
【0050】
また、本発明におけるラック・ピニオン機構9に、バックラッシ調整機能(バックラッシ補正機能)を持たせることもできる。例えば、かみ合い歯の一方を自転するローラに代え、もう一方の歯をローラに対応した転がり曲線カム(サイクロイド又はインボリュート)にして常時予圧をかけた状態で転がり接触させる機構を採用してもよい。また、テーパーラック・アンド・ピニオン、複リードウォームギヤ、分割されたピニオン等を使用する周知の機構を採用してもよい。
【0051】
また、本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例1に係る樹脂成形装置を示す正面図である。
【図2】図1の樹脂成形装置の一部(固定板及び下型)を取り去った状態を仮想的に示す平面図である。
【図3】図1の樹脂成形装置における1個のラック・ピニオン機構であるA部を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施例2に係る樹脂成形装置の一部(固定板及び下型)を取り去った状態を仮想的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施例3に係る樹脂成形装置における1個のラック・ピニオン機構を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0053】
1 樹脂成形装置
2 基台
3 固定板
4 ガイド部材
5 可動板
6 駆動機構
7 ラック
8 ピニオン
9 ラック・ピニオン機構(ラック・アンド・ピニオン機構)
10 ピニオン対
11 回転軸
12 軸受(取付部材)
13 溝
14 上型(第1の成形型)
15 下型(第2の成形型)
16 キャビティ
17 ディスペンサ(樹脂供給機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台に対向して設けられた固定板と、前記基台と前記固定板とを結合する複数のガイド部材と、前記複数のガイド部材の各々に対して摺動自在であるようにして設けられた可動板と、前記基台と前記可動板との間に設けられ前記可動板を進退させる駆動機構と、前記固定板に取り付けられた第1の成形型と、該第1の成形型に対向して前記可動板に取り付けられた第2の成形型と、前記第1の成形型と前記第2の成形型との少なくとも一方に設けられたキャビティと、該キャビティを流動性樹脂によって充填された状態にする樹脂供給機構とを備える樹脂成形装置であって、
前記複数のガイド部材の各々において1個ずつ又は2個ずつ設けられたラック・アンド・ピニオン機構と、
前記ラック・アンド・ピニオン機構のうち隣接するラック・アンド・ピニオン機構が各々有する相対向するピニオン同士からなるピニオン対が同期して回転するように前記ピニオン対を連結する回転軸と、
前記回転軸が回転自在になるように前記回転軸を前記可動板に取り付ける取付部材とを備えるとともに、
前記ラック・アンド・ピニオン機構が各々有する1個又は2個のラックは少なくとも前記ガイド部材の側面に一体的に設けられていることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂成形装置において、
前記複数のガイド部材は4本設けられ、
前記ピニオン対は3組設けられていることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載された樹脂成形装置において、
前記複数のガイド部材は4本設けられ、
前記ピニオン対は4組設けられていることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された樹脂成形装置において、
前記取付部材と前記回転軸と前記ピニオンは前記可動面の側面側に設けられていることを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載された樹脂成形装置において、
前記取付部材と前記回転軸と前記ピニオンは前記可動面の天面側又は底面側の少なくとも一方の側に設けられていることを特徴とする樹脂成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−17858(P2010−17858A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177665(P2008−177665)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】