説明

樹脂組成物、電子写真用トナー、電子写真用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】特定の温度に加熱することにより消色又は変色する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)電子供与性有機化合物と、(B)電子受容性化合物と、(C)下記一般式(1)で表される化合物と、(D)窒素を含む基で置換された脂肪族化合物、窒素を含む基で置換された芳香族化合物、固形アルコール、及び、ステロール化合物又はその誘導体からなる群から選ばれる化合物を一種以上含む消色成分と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、電子写真用トナー、電子写真用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物問題および限られた資源の有効活用がされており、光化学反応を用いた消色技術が提案されている。具体的には、呈色剤と顕色剤を活性化温度まで加熱し消色する技術(例えば、特許文献1参照)、特定の電子供与性無色染料を加熱し消色する技術(例えば、特許文献2参照)、呈色剤・顕色剤・消色剤で構成されるトナーを加熱し消色する技術(例えば、特許文献3参照)、がそれぞれ提案されている。
【特許文献1】特開2006−272887号公報
【特許文献2】特開2000−191932号公報
【特許文献3】特開平6−27738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、本構成を有さない場合に比べて、特定の温度に加熱することにより消色又は変色する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、
樹脂中に、(A)電子供与性有機化合物と、(B)電子受容性化合物と、(C)下記一般式(1)で表される化合物と、(D)窒素を含む基で置換された脂肪族化合物、窒素を含む基で置換された芳香族化合物、固形アルコール、及び、ステロール化合物又はその誘導体からなる群から選ばれる化合物を一種以上含む消色成分と、を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0005】
【化1】

【0006】
(式(1)中、Rは炭素数10〜30の炭化水素基を表し、Xはフェニル基、アルコキシフェニルエーテル基、アルコキシフェニル基、アルキルエーテル基を表す。)
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記(A)電子供与性有機化合物、前記(B)電子受容性化合物、及び前記(C)一般式(1)で表される化合物を含有するドメインと、前記(D)消色成分を含有するドメインと、に分かれていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする電子写真用トナーである。
【0009】
請求項4に係る発明は、
請求項3に記載の電子写真用トナーを含有することを特徴とする電子写真用現像剤である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
画像形成装置本体に対して着脱可能であり、トナーが少なくとも収められ、該トナーが請求項3に記載の電子写真用トナーであることを特徴とするトナーカートリッジである。
【0011】
請求項6に係る発明は、
画像形成装置本体に対して着脱可能であり、現像剤保持体を少なくとも備え、請求項4に記載の電子写真用現像剤を収容することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0012】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、該像保持体上に形成された静電荷像を現像剤により現像像として現像する現像手段と、像保持体上に形成された現像像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写された転写像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤が請求項4に記載の電子写真用現像剤であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、特定の温度に加熱することにより消色又は変色する組成物が提供される。
請求項2に係る発明によれば、ドメインが分かれていない場合に比べて、経時退色を防ぐという効果がより顕著になる
【0014】
請求項3に係る発明によれば、本構成の樹脂組成物を含有しない電子写真用トナーを用いる場合に比べて、画像形成装置で使用した際に、特定の温度領域での消色挙動に優れる電子写真用トナーが提供される。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、特定の温度領域でシャープな消色挙動を示し、経時退色が少ない電子写真用現像剤が提供される。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、本構成の樹脂組成物を含有しない電子写真用トナーを用いる場合に比べて、画像形成装置で使用した際に、特定の温度領域での消色挙動に優れる電子写真用トナーを収納するトナーカートリッジが提供される。
請求項6に係る発明によれば、本構成の樹脂組成物を含有しない電子写真用トナーを用いる場合に比べて、画像形成装置で使用した際に、特定の温度領域での消色挙動に優れる画像が得られるプロセスカートリッジが提供される。
請求項7に係る発明によれば、本構成の樹脂組成物を含有しない電子写真用トナーを用いる場合に比べて、特定の温度領域での消色挙動に優れる画像が得られる画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物について説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、(A)電子供与性有機化合物と、(B)電子受容性化合物と、(C)下記一般式(1)で表される化合物と、(D)窒素を含む基で置換された脂肪族化合物、窒素を含む基で置換された芳香族化合物、固形アルコール、及び、ステロール化合物又はその誘導体からなる群から選ばれる化合物を一種以上含む消色成分と、を含有することを特徴とする。
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(1)中、Rは炭素数10〜30の炭化水素基を表し、Xはフェニル基、アルコキシフェニルエーテル基、アルコキシフェニル基、アルキルエーテル基を表す。
【0019】
一般的に、記録された画像の消色を、近赤外光の照射などにより行なう場合、消色を行う上で専用装置が必要もしくは記録装置が複雑化し、記録媒体再生にも時間がかかる。さらには、シアニン色素等の特定色しか再現できず、出力体自体に求められる色再現に限度がある。特に、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物の電子授受による着色を、加熱により消去するこれらの技術では、記録材料自体の加工段階で加える熱によっても淡色化が進む不具合がある。また、消色に必要とする熱エネルギーも高い。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)電子供与性有機化合物及び(B)電子受容性化合物により発色する。
また、本実施形態の樹脂組成物は、特定の温度領域でシャープな消色挙動を示す。これは(C)一般式(1)で表される化合物を含有することにより、(A)電子供与性有機化合物及び(B)電子受容性化合物の結晶性が増し、発色する温度域が制御される一方で、(D)消色成分を含有することにより、樹脂の溶融と共に、(A)電子供与性有機化合物及び(B)電子受容性化合物による発色が抑制されることで、熱による淡色化も抑制され、高い熱エネルギーを必要とせずに特定の温度領域で速やかに消色反応を示すためであると推定される。
【0021】
現在、省資源の観点で、一過性の掲示・印字出力物は記録媒体の再利用容易性が求められているが(リライタブル技術)、本実施形態の樹脂組成物は、特定の温度領域でシャープな消色挙動を示すため、特定の温度領域で加熱することにより、トナーに含有させた場合、記録された画像が消色され、記録媒体の再利用が容易となる。
また、接着などの材料加工において、一時的に加工部位を着色可視化し、最終加工後は不可視とする産業、特定温度域への暴露履歴を可視化する示温表示材料にも適用される。
以下、本実施形態の樹脂組成物を各構成要素毎に説明する。
【0022】
(A)電子供与性有機化合物
本実施形態の樹脂組成物に用いられる(A)電子供与性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、トリフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ポリアリールカルビノール類、スピロピラン類またはジアザローダミンラクトン類等が挙げられ、ポリアリールカルビノール類、フルオラン類が好ましい。(A)電子供与性有機化合物の具体例としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール、N−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、または1,2−ベンズ−6−ジエチルアミノフルオラン等が挙げられ、クリスタルバイオレットカルビノール、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオランが好ましい。
また、(A)電子供与性有機化合物として、キナゾリン系化合物、ビスキナゾリン系化合物、またはピリジン化合物などが蛍光色を得るために好適に用いられる。
【0023】
(B)電子受容性化合物
本実施形態の樹脂組成物に用いられる(B)電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物、例えばモノフェノール類・ポリフェノール類などのフェノール性水酸基を有する化合物;電子空孔を有する化合物等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、t−ブチルカテコール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル)フェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、レゾルシン、没食子酸ヘキシル、没食子酸オクチル、または没食子酸ドデシル等が挙げられ、これらフェノール性水酸基を有する化合物の置換基として、アルキル基、カルボキシル基、アミド基、ハロゲン基を有するもの、あるいはこれらの金属塩も適用可能である。この中でも、ドデシルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、没食子酸ヘキシル、ハロゲン化サリチル酸が好ましい。
【0024】
(C)一般式(1)で表される化合物
本実施形態の樹脂組成物は、(C)一般式(1)で表される化合物を含有する。本実施形態の樹脂組成物は、(C)一般式(1)で表される化合物を含有することによって、消色反応の境界温度を制御でき、その境界温度は経時・環境変化によっても変化しないものとなる。一方、(C)一般式(1)で表される化合物を含有しないと、経時退色が発生し、消色反応も鈍化する。本実施形態の樹脂組成物は、(C)一般式(1)で表される化合物の種類を変更することにより、消色(変色)温度を制御することが出来る。
【0025】
一般式(1)において、Rは炭素数10〜30の炭化水素基を表す。一般式(1)におけるRの炭素数が10より小さいと、100℃未満の温度で容易に変色(消色)してしまい、例えば、本実施形態の樹脂組成物をトナーに含有させた場合、画像形成時の定着工程において消色してしまう。一方、Rの炭素数が30を超えると、(D)消色成分との反応を妨げやすくなり、消色に必要なエネルギーが過多となる。
【0026】
一般式(1)におけるRの炭素数は、12〜28であることが好ましく、14〜24であることがより好ましい。また、該炭化水素基は、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。Rの具体例としては、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ノナデシル、ヘンイコシル、ドコシル、テトラコシル、ペンタコシル、オクタコシルが挙げられ、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−ノナデシル、n−ヘンイコシル、n−ドコシル、n−テトラコシルが好ましい。
【0027】
Xで表されるフェニル基は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、エーテル結合を介したフェニル基、エーテル結合を介したアルコキシフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルエーテル基が挙げられる。
【0028】
(C)一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
一般式(2)〜(4)におけるRは、一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。一般式(2)におけるR、及び一般式(3)におけるRは、一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0031】
以下、一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例として、例示化合物(1−1)〜例示化合物(1−5)、例示化合物(2−1)〜例示化合物(2−6)、例示化合物(3−1)〜例示化合物(3−6)を示すが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
(D)消色成分
本実施形態の樹脂組成物に用いられる(D)消色成分は、窒素を含む基で置換された脂肪族化合物、窒素を含む基で置換された芳香族化合物、固形アルコール、及びステロール化合物もしくはその誘導体からなる群から選ばれる化合物を一種以上含む。
(D)消色成分が含有されないと、冷却放置において可逆的な再発色が生じる。
【0036】
前記窒素を含む基で置換された脂肪族化合物、及び窒素を含む基で置換された芳香族化合物について説明する。該窒素を含む基としては、アミノ基、イミノ基、アミド基、またはイミド基が挙げられる。窒素を含む基で置換された脂肪族化合物、及び窒素を含む基で置換された芳香族化合物の具体例としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、イソヘキシルアミン、ヘプチルアミン、2−ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジ−2−ヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジ−2−オクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリオクタデシルアミン、N−メチルオクチルアミン、N−メチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、ヘキサメチレンイミン、トリデカメチレンイミン、テトラデカメチレンイミン、ヘキサデカメチレンイミン、ヘプタデカメチレンイミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ポリオキシエチレンモノアミンモノオール、アニリン、アミノフェノール、ジクロロアニリン、アミノナフタレン、インドール、ジフェニルアミン、メトキシアニリン、アミノピリジン、ジアミノトルエン、アミノアセトアミド、アミノキノリン、ジアミノフェノール、ジブロモアニリン、メチルインドール、3−(2−アミノエチル)インドール、アミノアセトアニリド、ジアミノベンゼン、アミノアセトフェノン、ニトロアニリン、ジアミノピリジン、トリブロモアニリン、ベンジジン、ジアミノジフェニルアミン、アミノフェナントレン、ペンタメチルアニリン、アミノフルオレノン、アセトアミド、カプロンアミド、カプリルアミド、N−メチルミリストアミド、N−メチルステアロアミド、ニコチンアミド、ベンズアミド、ウレア、セミカルバジド、トルアニリド、フェニルアセトアミド、ベンズアニリド、アセトアニリド、メトキシアセトアニリド、サクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミド等が挙げられる。
【0037】
前記固形アルコールとしては、ステアリルアルコール、トリプロピルカルビノール、ポリプロピレングリコール、ジメチルペンタグリセリン、1,2,3,4−テトラオキシブタン等が挙げられる。
【0038】
前記ステロール化合物又はその誘導体としては、、コレステロールスチグマステロール、プレグネノロン、エストラジオール、ベンゾエート、エピアンドロステン、ステノロン、β−シトステロール、β−コレスタロール、5α−プレグネン−3β−オール−20−オン、5−プレグネン−3β、17−ジオール−20−オン−21−アセテート、5−プレグネン−3β、17−ジオール−20−オン、17−アセテート、5−プレグネン−3β、21−ジオール−20−オン21−アセテート、5−プレグネン−3β,17−ジオールジアセテート、ロコゲニン、チゴゲニン、エスミラゲニン、ヘコゲニン、ジオスゲニン及びその誘導体などが挙げられる。
これらの消色剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合併用してもよい。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)電子供与性有機化合物、(B)電子受容性化合物、(C)一般式(1)で表される化合物、(D)消色成分の電子供受反応を安定化させる媒体成分として、アルコール化合物、エステル化合物、ケトン化合物、または酸アミド化合物を含有することが好適である。
前記アルコール化合物としては、炭素数10以上、より好ましくは16以上50以下の脂肪族の一価の飽和アルコールが好ましく、例えば、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、またはドコシルアルコール等が挙げられる。
【0040】
前記エステル化合物としては、カプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸n−デシル、ミリスチン酸3−メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p−tert−ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ−(n−ノニル)、1,18−オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリミリステート、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、またはキシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0041】
前記エーテル化合物としては、総炭素数16以上の脂肪族エーテルが有効であり、例えば、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、またはウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0042】
前記酸アミド化合物としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N−メチルアミド、カプリル酸N−メチルアミド、カプリン酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−メチルアミド、ミリスチン酸N−メチルアミド、パルミチン酸N−メチルアミド、ステアリン酸N−メチルアミド、ベヘニン酸N−メチルアミド、オレイン酸N−メチルアミド、エルカ酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−エチルアミド、ミリスチン酸N−エチルアミド、パルミチン酸N−エチルアミド、ステアリン酸N−エチルアミド、オレイン酸N−エチルアミド、ラウリン酸N−ブチルアミド、パルミチン酸N−ブチルアミド、ステアリン酸N−ブチルアミド、オレイン酸N−ブチルアミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、ミリスチン酸N−オクチルアミド、ステアリン酸N−オクチルアミド、オレイン酸N−オクチルアミド、ラウリン酸N−ドデシルアミド、ミリスチン酸N−ドデシルアミド、パルミチン酸N−ドデシルアミド、ステアリン酸N−ドデシルアミド、オレイン酸N−ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N−メチルアミド、アジピン酸N−メチルアミド、マロン酸N−メチルアミド、アゼライン酸N−メチルアミド、コハク酸N−エチルアミド、アジピン酸N−エチルアミド、マロン酸N−エチルアミド、アゼライン酸N−エチルアミド、コハク酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−ブチルアミド、グルタル酸N−ブチルアミド、マロン酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−オクチルアミド、またはアジピン酸N−ドデシルアミド等が挙げられる。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物は、着色力及び消色安定性の観点から、組成比率が以下の値であることが好ましい(A)電子供与性有機化合物100質量部に対して、
(B)電子受容性化合物が、50〜2000質量部であることが好ましく、70〜1000質量部であることがより好ましい。
(C)一般式(1)で表される化合物が、5〜2000質量部であることが好ましく、40〜1000質量部であることがより好ましい。
(D)消色成分が、20〜500質量部であることが好ましく、50〜250質量部であることがより好ましい。
【0044】
また、本実施形態の樹脂組成物は、着色力及び消色安定性の観点から、(A)電子供与性有機化合物、(B)電子受容性化合物、(C)一般式(1)で表される化合物、及び(D)消色成分の含有量が、2〜80質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物は、相分離状態になり、経時退色を防ぐという効果がより顕著になる点で、(A)電子供与性有機化合物、(B)電子受容性化合物、及び前記(C)式(1)で表される化合物を含有するドメインと、前記(D)消色成分を含有するドメインと、に分かれていることが好ましい。尚、本実施形態において、ドメインとは、各構成成分が混ざり合っておらず、樹脂組成物内において偏在している状態のことをいい、ドメインが分かれているとは、実質的に分かれていることを示し、わずかに混入している場合も含む。本実施形態においては、試料を包埋処理したのち切削処理を行ない、切片試料を四酸化ルテニウム雰囲気下に処理し、透過型電子顕微鏡による観察を実施した際、ルテニウムによる染色状態が海島状のコントラストを呈している場合を、ドメインが分かれていると定義する。
【0046】
<電子写真用トナー>
本実施形態の樹脂組成物をトナーに含有させた場合について説明する。
本実施形態の電子写真用トナーは、既述の本実施形態の樹脂組成物を含有することを特徴とする。本実施形態の樹脂組成物を含有することにより、画像を形成後、本実施形態の樹脂組成物の消色(変色)温度よりも高い温度で加熱(例えば、定着手段によって)することにより、画像を消色(変色)することができる。
また、本実施形態の電子写真用トナーにおける本実施形態の樹脂組成物の含有量は、特定の温度領域でシャープな消色(変色)挙動を示し、経時退色が少ない画像となるという効果が発揮される点で、30〜100質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。
【0047】
(結着樹脂)
本実施形態の電子写真用トナーにおいて用いられる結着樹脂としては、公知のものを使用でき、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体及び共重合体が挙げられる。
【0048】
代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。更に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。
これらの中では、特に、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体が好ましい。
【0049】
本実施形態の電子写真用トナーには、樹脂組成物とは別の着色剤を含有させることにより、高温で加熱することにより、変色させることが出来る。このような着色剤としては、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0050】
(その他の添加剤)
本実施形態の電子写真用トナーには、必要に応じて離型剤を含有してもよい。離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナバワックス;等が挙げられる。これらの離型剤の融解温度は、50℃以上100℃以下が望ましく、60℃以上95℃以下がより望ましい。離型剤のトナー中の含有量は0.5質量%以上15質量%以下が望ましく、1.0質量%以上12質量%以下がより望ましい。離型剤の含有量が0.5質量%より少ないと、特にオイルレス定着において剥離不良となるおそれがある。離型剤の含有量が15質量%より多いと、トナーの流動性が悪化する等、画質および画像形成の信頼性を低下させるおそれがある。
【0051】
本実施形態の電子写真用トナーには、上記成分以外にも、更に必要に応じて、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加することができる。
【0052】
無機粒子としては、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みを調整することができる。無機粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用することができるが、発色性やOHP透過性等透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ粒子が好ましく用いられる。また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0053】
(トナーの特性)
本実施形態の電子写真用トナーの体積平均粒径は、4μm以上9μm以下の範囲であることが望ましく、より望ましくは4.5μm以上8.5μm以下の範囲であり、さらに望ましくは5μm以上8μm以下の範囲である。体積平均粒径が4μmより小さいと、トナー流動性が低下し、各粒子の帯電性が低下しやすく、また帯電分布が広がるため、背景へのかぶりや現像器からのトナーこぼれ等が生じやすくなる。また4μmより小さいと、格段にクリーニング性が困難となる場合がある。体積平均粒径が9μmより大きいと、解像度が低下するため、十分な画質が得られなくなり、近年の高画質要求を満たすことが困難となる場合がある。
【0054】
なお、上記体積平均粒子径の測定は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行うことができる。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行った。
【0055】
また、本実施形態の電子写真用トナーは、形状係数SF1が110以上140以下の範囲の球状形状であることが好ましい。形状がこの範囲の球状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像形成を行うことができる。
上記形状係数SF1は115以上138以下の範囲であることがより好ましい。
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0056】
前記SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出することができる。すなわち、スライドガラス表面に散布した高級アルコール粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0057】
本実施形態の電子写真用トナーの製造方法としては、乾式製法と湿式製法とが挙げられる。湿式製法としては、乳化凝集法、溶融懸濁法、溶解懸濁法等が挙げられ、乳化凝集法が好ましい。
【0058】
本実施形態の電子写真用トナーの好ましい製造方法としては、既述の本実施形態の樹脂組成物、結着樹脂を水系媒体中に分散し結着樹脂粒子分散液を凝集させて凝集粒子を形成する凝集工程と、該凝集粒子を融合させる融合工程と、を有する製造方法が挙げられる。
【0059】
以下、本実施形態の電子写真用トナーの製造方法の一例として、乳化凝集法による製造方法について説明する。
乳化凝集法は、既述の本実施形態の樹脂組成物、結着樹脂を含む樹脂粒子(乳化粒子)を形成する乳化工程と、該樹脂粒子の凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を融合させる融合工程と、を有する。乳化凝集法を用いた場合には、複数種の粒子を用いて、トナー粒子の内部から表面にかけての組成や構造が容易に制御される。
【0060】
(乳化工程)
例えば結着樹脂粒子の形成は、水系媒体と既述の本実施形態の樹脂組成物と、結着樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより行うことができる。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げて粒子を形成することができる。また分散した樹脂粒子の安定化のため、分散剤を使用することもできる。さらに、油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば樹脂をそれらの溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、本実施形態の樹脂組成物を含む結着樹脂粒子の分散液が作製される。
【0061】
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水のみであることが望ましい。
また、乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0062】
前記乳化工程における乳化液に含まれる樹脂粒子の含有量は、10質量%以上50質量%以下の範囲とすることが望ましく、より望ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲である。前記含有量が10質量%より少ないと粒度分布が広がり、トナー特性が悪化する場合がある。また50質量%を超えるとばらつきのない撹拌が困難となり、粒度分布が狭く特性の揃ったトナーを得ることが困難となる場合がある。
【0063】
前記乳化液の分散法としては、前記乳化液の分散に用いる分散機として、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
樹脂粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒径)で0.01μm以上1.0μm以下の範囲が望ましく、0.03μm以上0.6μm以下がより望ましく、0.03μm以上0.4μm以下がさらに望ましい。
【0064】
(凝集工程)
前記凝集工程においては、まず得られた結着樹脂粒子の分散液及び離型剤分散液等を混合して混合液とし、結着樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、2.2以上6以下の範囲がより望ましく、2.4以上5以下の範囲がさらに望ましい。この際、凝集剤を使用することも有効である。
【0065】
用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に望ましい。
【0066】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、より適している。
【0067】
(融合工程)
融合工程においては、前記凝集工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを3以上9以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、前記高分子量の非晶性ポリエステル樹脂のTg以上で、本実施形態の樹脂組成物の消色(変色)温度よりも低い温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。前記加熱の時間としては、融合がされる程度行えばよく、0.5時間以上10時間以下程度行えばよい。
【0068】
融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、結晶性樹脂の融解温度±15℃の範囲で冷却速度を減少させる、いわゆる徐冷をすることで結晶化を促進してもよい。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー粒子となる。
【0069】
本実施形態においては、トナー粒子表面に流動化剤や助剤等の外添剤を添加処理してもよい。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、カーボンブラック等の無機粒子や、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー粒子等、公知の粒子が使用できるが、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用し、該外添剤の少なくとも1種は、30nm以上200nm以下の範囲、さらには30nm以上180nm以下の範囲の平均1次粒子径を有することが望ましい。
【0070】
外添剤の平均1次粒子径が30nmより小さいと、初期的なトナーの流動性は良好であるが、トナーと感光体との非静電的付着力を減少させることができず、転写効率が低下しフィルミングが発生やすくなったり、画像における濃度ばらつきを大きくさせてしまったりする場合がある。また、経時による現像器内でのストレスによって粒子がトナー表面に埋め込まれ、帯電性が変化し、コピー濃度の低下や背景部へのカブリ等の問題を引き起こす場合がある。平均1次粒子径が200nmより大きいと、トナー表面から脱離しやすく、また流動性が悪化しフィルミングが生じたりする場合がある。
【0071】
<電子写真用現像剤>
本実施形態の電子写真用現像剤は、既述の本実施形態の電子写真用トナーを含有することを特徴とする。詳しくは本実施形態の電子写真用トナーをそのまま一成分現像剤として用いる、あるいはキャリアと混合して二成分現像剤として用いる。
【0072】
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、マトリックス樹脂中に磁性材料などが分散された磁性分散型キャリア等を挙げることができる。
【0073】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
被覆樹脂やマトリックス樹脂に添加される導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが望ましい。キャリアの芯材の体積平均粒径としては、一般的には10μm以上500μm以下の範囲にあり、望ましくは30μm以上100μm以下の範囲にある。
【0076】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
【0077】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0078】
前記二成分現像剤における本実施形態のトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が望ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより望ましい。
【0079】
<画像形成装置>
次に、前記の電子写真用トナーを用いた本実施形態の画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、該像保持体上に形成された静電荷像を現像剤により現像像として現像する現像手段と、像保持体上に形成された現像像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写された転写像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤が既述の本実施形態の電子写真用現像剤であることを特徴とする。
【0080】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、前記の本実施形態の電子写真用現像剤を収容する本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
以下、本実施形態の画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0081】
図1は、4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1〜第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに所定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0082】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に所定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0083】
上述した第1〜第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2〜第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0084】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を所定の電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0085】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V〜−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0086】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って所定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0087】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロー着色剤と既述の結着樹脂とを含む体積平均粒径が7μmのイエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き所定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が所定の1次転写位置へ搬送される。
【0088】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに所定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0089】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2〜第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0090】
第1〜第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に所定のタイミングで給紙され、所定の2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0091】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱(本実施形態の樹脂組成物の消色(変色)温度よりも低い温度)され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0092】
また、本実施形態では、画像が形成された記録紙Pを再度、本実施形態の樹脂組成物の消色(変色)温度よりも高い温度で加熱(例えば、定着手段によって)することにより、画像を消色(変色)することができる。
【0093】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
本実施形態のプロセスカートリッジは、現像剤保持体を少なくとも備え、既述の本実施形態の電子写真用現像剤を収容することを特徴とする。
図2は、本実施形態の電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱可能としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。なお、300は記録紙である。
【0094】
図2で示すプロセスカートリッジでは、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせることが可能である。本発明のプロセスカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備える。
【0095】
次に、本実施形態のトナーカートリッジについて説明する。本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収めるトナーカートリッジにおいて、前記トナーが既述の本実施形態の電子写真用トナーであることを特徴とする。なお、本実施形態のトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0096】
従って、トナーカートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置においては、本実施形態の電子写真用トナーを収めたトナーカートリッジを利用することにより、特に容器が小型化されたトナーカートリッジにおいても保存性を保つことができる。
【0097】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換することができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0099】
<実施例1>
(樹脂組成物A・B・C分散液−1の調製)
・クリスタルバイオレットカルビノール((A)電子供与性有機化合物):10部
・5−クロロサリチル酸((B)電子受容性化合物):10部
・前記例示化合物(1−4)((C)一般式(1)で表される化合物):10部
・ベヘン酸ベヘニル(媒体成分):30部
を使用した。具体的には、クリスタルバイオレットカルビノール:10部、5−クロロサリチル酸:10部を、酢酸エチル100部に溶解攪拌した後、溶剤を留去し着色物20部を得た。さらに得られた着色物に、例示化合物(1−4):10部、ベヘン酸ベヘニル:30部にアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)0.5部、イオン交換水240部を加え、混合して97℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、樹脂組成物A・B・C分散液−1(固形分濃度:20%)を調製した。樹脂組成物の分散液の体積平均粒径は0.20μmであった。
【0100】
(樹脂組成物D分散液−1の調製)
・ステアリン酸アミド((D)消色成分):12部
・ベヘン酸ベヘニル(媒体成分):28部
を使用した。具体的には、ステアリン酸アミド:12部、ベヘン酸ベヘニル:28部にアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)0.5部、イオン交換水160部を加え、混合して97℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、樹脂組成物D分散液−1(固形分濃度:20%)を調製した。樹脂組成物の分散液の体積平均粒径は0.24μmであった。
【0101】
ポリエステル樹脂分散液(1)の調製
非晶性ポリエステル樹脂(1)を160部と、酢酸エチルを233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)を0.1部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、75℃で加熱しスリーワンモーター(新東科学(株))により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を得た。非結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中の樹脂粒子の体積平均粒径は200nmであり、固形分量は30%であった。
【0102】
トナー母粒子1の製造
前記樹脂組成物A・B・C分散液−1:45部、樹脂組成物D分散液−1:45部、ポリエステル樹脂分散液(1):200部を乳化凝集法にて造粒し洗浄・乾燥を経て、平均粒径6.2μm、形状係数SF1が133である粉末状のトナー母粒子1を得た。
【0103】
現像剤1の製造
前記トナー母粒子1に、平均粒径18nmのシリカ粉末1.2%及び平均粒径45nmのシリカ粉末0.5%を添加しトナー1とした。更にPMMAコートキャリア(平均粒径40μm):100部とトナー1:7部とを混合し、現像剤1とした。
【0104】
(評価)
[着色濃度]
得られた現像剤1を用い、被転写体であるA4上質紙(坪量104g/m)に、DocuPrint2220で原稿率5%の画像を出力(定着温度125℃、出力プロセススピード104mm/s)した。X−Rite404(X−Rite社製)を用いて得られた画像の画像濃度を測定し、下記基準で評価した。評価結果を画像濃度の測定値と共に表1に示す。
◎:着色濃度が1.50以上。
○:着色濃度が1.25以上1.50未満。
△:着色濃度が1.00以上1.25未満。
×:着色濃度が1.00未満。
【0105】
[消色性]
着色濃度の評価で得られた画像形成された被転写体を、定着温度を155℃にしたDocuPrint2220で再通紙(通紙速度を半減;出力プロセススピード52mm/s、加熱のみ行う。消色処理)して、X−Rite404を用いて画像濃度を測定し、下記基準で評価した。評価結果を画像濃度の測定値と共に表1に示す。
◎:消色処理後の画像濃度が0.00以上0.10未満。
○:消色処理後の画像濃度が0.10以上0.25未満。
△:消色処理後の画像濃度が0.25以上0.40未満。
×:消色処理後の画像濃度が0.40以上。
【0106】
[保存性]
着色濃度の評価で得られた画像形成された被転写体を、25℃55%RHの室内環境に30日間保存後、X−Rite404を用いて画像濃度を測定し、下記基準で評価した。評価結果を画像濃度の測定値と共に表1に示す。
◎:保存後の画像濃度が1.50以上。
○:保存後の画像濃度が1.25以上1.50未満。
△:保存後の画像濃度が1.00以上1.25未満。
×:保存後の画像濃度が1.00未満。
【0107】
<実施例2>
実施例1における樹脂組成物A・B・C分散液−1の調製において、例示化合物(1−4)を、例示化合物(2−2)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、現像剤2を製造し、現像剤2を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0108】
<実施例3>
実施例1における樹脂組成物A・B・C分散液−1の調製において、クリスタルバイオレットカルビノールの使用量を13部に、5−クロロサリチル酸の使用量を13部に、例示化合物(1−4):10部を例示化合物(3−6):4部に変更し、さらに樹脂組成物D分散液−1の調製において、ステアリン酸アミド:12部をジメチルペンタグリセリン((D)消色成分):12部としたこと以外、実施例1と同様にして、現像剤3を製造し、現像剤3を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0109】
<実施例4>
実施例1における樹脂組成物A・B・C分散液1の調製において、クリスタルバイオレットカルビノールの使用量を7部に、5−クロロサリチル酸の使用量を7部に、例示化合物(1−4)の使用量を16部に変更したこと以外、実施例1と同様にして、現像剤4を製造し、現像剤4を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0110】
<実施例5>
実施例1における樹脂組成物A・B・C分散液−1及び樹脂組成物D分散液−1の調製において、ベヘン酸ベヘニルを用いなかったこと以外、実施例1と同様にして、現像剤5を製造し、現像剤5を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0111】
<実施例6>
(樹脂組成物A・B・C・D分散液−1の調製)
・クリスタルバイオレットカルビノール((A)電子供与性有機化合物):10部
・5−クロロサリチル酸((B)電子受容性化合物):10部
・前記例示化合物(1−4)((C)一般式(1)で表される化合物):10部
・ステアリン酸アミド((D)消色成分):12部
・ベヘン酸ベヘニル(媒体成分):58部
を使用した。具体的には、クリスタルバイオレットカルビノール:10部、5−クロロサリチル酸:10部を、酢酸エチル:100部に溶解攪拌した後、溶剤を留去し着色物20部を得た。さらに得られた着色物に、例示化合物(1−4):10部、ステアリン酸アミド:12部、ベヘン酸ベヘニル:58部、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1.0部、イオン交換水:400部を加え、混合して97℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、樹脂組成物A・B・C・D分散液−1(固形分濃度:20%)を調製した。樹脂組成物の分散液の体積平均粒径は0.18μmであった。
【0112】
トナー母粒子6の製造
前記樹脂組成物A・B・C・D分散液−1:90部、ポリエステル樹脂分散液(1):200部を乳化凝集法にて造粒し洗浄・乾燥を経て、平均粒径6.4μm、形状係数SF1が131である粉末状のトナー母粒子6を得た。以下、実施例1と同様にして、現像剤6を製造し、現像剤6を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。、
【0113】
<比較例1>
実施例1における樹脂組成物A・B・C分散液−1の調製において、例示化合物(1−4)を用いなかったこと以外、実施例1と同様にして、現像剤7を製造し、現像剤7を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0114】
<比較例2>
実施例1における樹脂組成物D分散液−1の調製において、ステアリン酸アミドを用いなかったこと以外、実施例1と同様にして、現像剤8を製造し、現像剤8を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
実施例1〜6で得られた各トナーの内部構造観察(四酸化ルテニウム染色による透過型電子顕微鏡観察)の結果、実施例1、2、3、4で得られたトナーでは、(A)電子供与性有機化合物、(B)電子受容性化合物、及び(C)一般式(1)で表される化合物を含有するドメインと、(D)消色成分を含有するドメインとが確認された。一方、実施例5、6で得られたトナーでは、実施例1、2、3、4のようなドメインは確認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0118】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ、
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中に、(A)電子供与性有機化合物と、(B)電子受容性化合物と、(C)下記一般式(1)で表される化合物と、(D)窒素を含む基で置換された脂肪族化合物、窒素を含む基で置換された芳香族化合物、固形アルコール、及び、ステロール化合物又はその誘導体からなる群から選ばれる化合物を一種以上含む消色成分と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】


(式(1)中、Rは炭素数10〜30の炭化水素基を表し、Xはフェニル基、アルコキシフェニルエーテル基、アルコキシフェニル基、アルキルエーテル基を表す。)
【請求項2】
前記(A)電子供与性有機化合物、前記(B)電子受容性化合物、及び前記(C)一般式(1)で表される化合物を含有するドメインと、前記(D)消色成分を含有するドメインと、に分かれていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項4】
請求項3に記載の電子写真用トナーを含有することを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項5】
画像形成装置本体に対して着脱可能であり、トナーが少なくとも収められ、該トナーが請求項3に記載の電子写真用トナーであることを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項6】
画像形成装置本体に対して着脱可能であり、現像剤保持体を少なくとも備え、請求項4に記載の電子写真用現像剤を収容することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、該像保持体上に形成された静電荷像を現像剤により現像像として現像する現像手段と、像保持体上に形成された現像像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写された転写像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤が請求項4に記載の電子写真用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144008(P2010−144008A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321180(P2008−321180)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】