説明

樹脂製容器の成形方法及び樹脂製容器

【課題】生産コストが抑えられ、安定した品質の樹脂製容器を成形できる樹脂製容器の成形方法、及びこれにより成形された樹脂容器を提供する
【解決手段】ブロー成形金型3に、ストレッチロッド2の先端側へ小さい第2の口部22が位置するようにプリフォーム20を装填し、ストレッチロッド2の先端2Aを、当該第2の口部22を閉塞するようにプリフォーム本体23の内面下端部分23aに当接させて当該第2の口部22を内側からエアシールし、エアシール状態を保てるように、ブローエアー50を吹き込むと共にストレッチロッド2を下降させ、当該ブローエアー50を漏洩させずにプリフォーム本体23を2軸延伸する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の内容物を収容するために用いられる樹脂製容器とその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤等が含まれた輸液を患者に投与するために用いるものとして、輸液を収容した輸液ボトル等の輸液容器が広く普及している。このような輸液容器として、輸液を収容した可撓性のある容器本体、及びこの容器本体に形成された互いに対向する2つの口部を備えたものが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。これらの輸液容器は、一般に、インフレーション法によって成形機から押し出したチューブ状の樹脂に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨らませ、さらにこれを引き取りと空気の注入によるチューブラー2軸延伸する方法で成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4048337号公報
【特許文献2】特開平5−337163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の成形方法では生産速度が遅いため、高コストとなる。さらに、厚みの制御が難しいことから、品質もバラツキ易いといった欠点が存在する。一方、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる容器の成形法としてブロー成形法が普及しており、同成形法によって食品、飲料品、薬品、工業用品向けの容器が製造されている。
【0005】
ブロー成形法を採用した場合、生産速度が比較的早く生産効率が良い。また、厚みの制御は上述の成形法を採用する場合よりも容易であるために、品質のバラツキは少ない。しかしながら、特許文献1や特許文献2のように、2つの口部を備えた樹脂製容器をブロー成形法で成形しようとしても、一方の口部からブローエアーが抜けてしまうため、当該成形法で成形することができない。その対策として、成形ごとに一方の口部を別の栓部材で閉じてブローエアーを抜けないようにすることも考えられるが、この場合には、成形ごとに栓部材を設ける作業が必要であり、作業状態によってはブローエアーの抜けが生じることや、場合によっては口部形状を変形させてしまうという問題が生じる。
【0006】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、生産コストが抑えられ、安定した品質の樹脂製容器を成形できる樹脂製容器の成形方法、及びこれにより成形された樹脂容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明の樹脂製容器の成形方法は、容器本体、及びこの容器本体に形成された互いに対向する第1、第2の口部を備え、当該第2の口部が当該第1の口部より小さい内寸法を有する樹脂製容器の成形方法であって、前記樹脂製容器の形状が型取られたブロー成形金型に、前記容器本体となる筒状のプリフォーム本体とこのプリフォーム本体に形成された前記第1、第2の口部とを備えるプリフォームを、このプリフォームに挿入されるストレッチロッドの先端側に当該第2の口部が位置するように装填し、前記第2の口部の内寸法よりも大きい先端寸を有する前記ストレッチロッドの先端を当該第2の口部を閉塞するように前記プリフォーム本体の内面下端部分に当接させて当該第2の口部を内側からエアシールし、エアシール状態を保てるように、ブローエアーを吹き込むと共に前記ストレッチロッドを下降させ、当該ブローエアーを漏洩させずに前記プリフォーム本体を2軸延伸することを特徴とするものである。
【0008】
上記本発明の樹脂製容器の成形方法では、樹脂製容器の形状が型取られたブロー成形金型に、ストレッチロッドの先端側に小さい第2の口部が位置するようにプリフォームを装填し、ストレッチロッドの先端をプリフォーム本体の内面下端部分に当接させて当該第2の口部を内側からエアシールし、このエアシール状態を保てるように、ブローエアーを吹き込むと共にストレッチロッドを下降させ、当該ブローエアーを漏洩させずにプリフォーム本体を2軸延伸する。つまり、本発明に係る成形方法によってブロー成形法の採用が可能となるため、生産速度が早く生産効率が良い。また、厚みの制御は容易であるため、品質のバラツキを少なくすることができる。
【0009】
前記プリフォーム本体の内面下端部分に当接する前記ストレッチロッドの先端当接部が断面凸状又は断面凹状のアールに形成されていると共に、当該プリフォーム本体の内面下端部分がこの先端当接部に沿った断面凹状又は断面凸状のアールに形成されていることが好ましい。
この場合、ストレッチロッドの先端当接部とプリフォーム本体の内面下端部分との間のシール性が高まるため、確実なエアシール状態を得ることができる。これにより、生産管理が容易となり、樹脂製容器の品質をより安定させることができる。
【0010】
前記ストレッチロッドの先端を当接させる前記プリフォーム本体の内面下端部分が、当該ストレッチロッドの進行方向へ向かうに従って横断面を小さくするテーパー状とされていてもよい。この場合においても、ストレッチロッドの先端当接部とプリフォーム本体の内面下端部分との間のシール性が高まるため、確実なエアシール状態を得ることができる。これにより、生産管理が容易となり、樹脂製容器の品質をより安定させることができる。
【0011】
前記ストレッチロッドが円柱状に形成されていると共に前記プリフォームの第1、第2の口部が円筒状に形成され、当該ストレッチロッドの先端寸としての直径が前記第2の口部の内寸法としての内径よりも2mm以上大きくなっていることが好ましい。
この場合、ストレッチロッドの軸芯とプリフォームの軸芯のずれに基づくシール性の低下が抑えられるため、生産管理が容易となり、樹脂製容器の品質をより安定させることができる。
【0012】
本発明の樹脂製容器は、容器本体、及びこの容器本体に形成された互いに対向する第1、第2の口部を備え、当該第2の口部が当該第1の口部より小さい内寸法を有する樹脂製容器であって、当該樹脂製容器の形状が型取られたブロー成形金型に、前記第1、第2の口部を備えるプリフォームを装填し、このプリフォームをブロー成形して得られる樹脂製容器において、ストレッチロッドの先端で前記第2の口部を閉塞するようにして当該第2の口部を内側からエアシールし、エアシール状態を保てるように当該ストレッチロッドによる縦延伸をブローエアーによる横延伸に通常よりも先行させて成形された2軸延伸状態の容器本体を有することを特徴とするものである。
【0013】
上記本発明の樹脂製容器では、ストレッチロッドによる縦延伸をブローエアーによる横延伸に通常よりも先行させ、当該縦延伸と横延伸の比率をより安定させた状態で成形された容器本体を備えているため、用途に応じた要求特性を確実に満たし、高い品質を維持することができる。
【0014】
上記の樹脂製容器として、例えば、薬剤等が含まれた輸液を収容するための輸液容器が挙げられ、コストが抑えられ、安定した品質の当該輸液容器を生産することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記の通り、本発明によれば、ブローエアーを漏洩させずにプリフォーム本体を2軸延伸するブロー成形法の採用が可能となり、生産速度が早くなるため、生産コストが抑えられる。また、厚みの制御は容易となり、品質のバラツキを少なくできるため、安定した品質の樹脂製容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る樹脂製容器の成形方法を実施するための成形機の概略横断面図であり、(b)はその概略縦断面図である。
【図2】樹脂製容器の成形方法に用いるプリフォームの断面図とこれに挿入されるストレッチロッドの図である。
【図3】樹脂製容器の成形方法を実施している状態を示す図である。
【図4】プリフォーム本体の延伸が進行している状態を説明する図である。
【図5】(a)は樹脂製容器の成形方法で成形された輸液ボトルの正面図であり、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂製容器の成形方法を実施するための成形機1の概略横断面図と概略縦断面図であり、図2は樹脂製容器の成形方法に用いるプリフォーム20の断面図とこれに挿入されるストレッチロッド2の図である。以下の説明において、図1及び図2の上下に対応する側を単に上下とする。図1に示す成形機1はブロー成形法を実施するための機器構成を備えており、2つ割のブロー成形金型3と、このブロー成形金型3の上方に位置されるストレッチロッド装置4と、ブローエアーを供給するためのブローエアー装置11と、これらストレッチロッド装置4及びブローエアー装置11を制御する制御部12とで主に構成されている。ブロー成形金型3の各金型3Aには、完成品である輸液ボトル(樹脂製容器)の形状が型取られており、型閉じによって輸液ボトルの形状のキャビティが形成されるようになっている。ブロー成形金型3の各金型3Aには、本体成形部分5と互いに対向する上下の2つの口部分6、7が形成されている。
【0018】
本体成形部分5は、横長で上下方向に伸びた筒状のキャビティが形成されるように横長部8と楕円部9とで構成されている。ストレッチロッド装置4は、円柱状のストレッチロッド2と、このストレッチロッド2を上下駆動可能に支持するブローノズル10と、ストレッチロッド2を上下駆動させる駆動部13とを備えている。ストレッチロッド装置4は、図示しない固定部材でストレッチロッド2の軸芯をブロー成形金型3のキャビティの軸芯と一致させるようにして固定されている。上下方向に制御駆動させられるストレッチロッド2は、所定速度で所定量だけブローノズル10から下方へ突出されて、ブロー成形金型3のキャビティへ進入するようになっている。
【0019】
図2に示すプリフォーム20は、ポリプロピレン(PP)からなり、上下方向に伸びる円筒状のプリフォーム本体23と、このプリフォーム本体23の上側に形成された円筒状の第1の口部21と、プリフォーム本体23の下側に形成された円筒状の第2の口部22とからなる。このプリフォーム20は、図示しない射出成形機等によって予め成形されたものである。プリフォーム本体23の内径(内寸法)n1は17.0mm、厚み中央径n2は19.4mm、中央部の肉厚t1は3.5mmである。第1の口部21はプリフォーム本体23と同じ内径を有しており、当該第1の口部21には、プリフォーム20の上端に位置する上鍔部24と、この上鍔部24の下側に所定間隔を空けて位置する中鍔部25が形成されている。
【0020】
第2の口部22の内径(内寸法)n3は7.4mmであり、当該第2の口部22はプリフォーム本体23から縮径されるようにして形成されている。従って、第2の口部22は、第1の口部21よりも小さい内径n3を有している。第2の口部22には、プリフォーム20の下端に位置する下鍔部26と、当該第2の口部22を閉塞する薄膜部27が形成されている。第2の口部22の長さh1は10.0mm、薄膜部27の厚みt2は0.5mmである。中鍔部25の下面から下鍔部26の上面までの長さh2は64.1mmとなっている。プリフォーム20に挿入されるストレッチロッド2は全長に渡って同径をなしており、その直径n4は15.0mmである。これにより、ストレッチロッド2がプリフォーム20に挿入された状態で、当該ストレッチロッド2と第1の口部21及びプリフォーム本体23との間に、十分なブローエアーを通せるだけの間隔が空けられる。
【0021】
ストレッチロッド2の直径(先端寸)n4は上記のとおり15.0mmであることから、第2の口部22の内径n3よりも2mm以上大きくなっている。これにより、ストレッチロッド2が下方へ向けて駆動(下降)され、その先端2Aがプリフォーム本体23の内面下端部分23aへ当接すると、第2の口部22が当該ストレッチロッド2によって閉塞される。なお、ここでいうプリフォーム本体23の内面下端部分23aとは、必ずしもプリフォーム本体23の領域のみをいうのではなく、第2の口部22の領域に入る部分をも含まれる。従って、ストレッチロッド2が当接するとは、第2の口部22の領域も含めた部分に当接する場合も含まれる。
【0022】
第2の口部22がストレッチロッド2によって閉塞されると、当該第2の口部22は内側からエアシールされる。図2の拡大図に示すように、プリフォーム本体23の内面下端部分23aに当接するストレッチロッド2の先端当接部2aは、断面凸状のアールに形成されていると共に、この先端当接部2aを当接させる当該プリフォーム本体23の内面下端部分23aは、先端当接部2aに沿った断面凹状のアールに形成されている。従って、ストレッチロッド2の先端当接部2aがプリフォーム本体23の内面下端部分23aへ当接すると、断面凸状のアールと断面凹状アールが合わさり、第2の口部22が内側から確実にエアシールされる。なお、第2の口部22は薄膜部27で閉塞されているが、この薄膜部27はブローエアーの圧力や、ストレッチロッド2の接触で破損してしまう程度の上記厚みしか有していない。
【0023】
ストレッチロッド2の先端当接部2a及びプリフォーム本体23の内面下端部分23aの形状に関し、上記の形状とは逆に、ストレッチロッド2の先端当接部を断面凹状のアールに形成し、プリフォーム本体23の内面下端部分をこの先端当接部に沿った断面凸状のアールに形成してもよい。この場合においても、ストレッチロッド2の先端当接部がプリフォーム本体23の内面下端部分へ当接すると、断面凹状のアールと断面凸状のアールとが合わさり、第2の口部22が内側から確実にエアシールされる。
【0024】
さらに、ストレッチロッド2の先端2Aを当接させるプリフォーム本体23の内面下端部分が下方(ストレッチロッド2の進行方向)へ向かうに従って横断面を小さくするテーパー状となっていてもよい。より具体的には、下方へ向かうに従って縮径するテーパー状となった内面下端部分が挙げられる。この場合、ストレッチロッド2をプリフォーム本体23の内面下端部分へ押し当てるのに伴ってシール性が上がっていき、第2の口部22が内側から確実にエアシールされる。
【0025】
上述の成形機1を用いて輸液ボトルを成形するための成形方法を説明する。図3は、樹脂製容器の成形方法を実施している状態を示す図であり、図4は、プリフォーム20の延伸が進行している状態を説明する図である。まず、図3のように、ブロー成形金型3に、プリフォーム20に挿入されるストレッチロッド2の先端側に第2の口部22が位置するように、当該プリフォーム20を装填する。その際、プリフォーム20の第1の口部21の中鍔部25を各金型3Aの上側の口部分6の上側に引っ掛けて、当該プリフォーム20の軸芯と各金型3Aで形成されたキャビティの軸芯が一致するように固定する。
【0026】
ストレッチロッド2を駆動させプリフォーム20の内部へ進入させる。ストレッチロッド2を、その先端2Aがプリフォーム本体23の内面下端部分23aへ当接するまで下げていく。そして、第2の口部22を閉塞するようにして内側からエアシールする。続いて、ブローエアー50を吹き込むと共にストレッチロッド2を下方へさらに駆動させ、ストレッチロッド2での縦延伸とブローエアー50での横延伸とで、プリフォーム本体23を2軸延伸する。
【0027】
その際、これらの動作で第2の口部22のエアシール状態が保てるように、ストレッチロッド装置4の駆動部13及びブローエアー装置11を制御部12で制御する。制御部12は、上記エアシール状態を保てるようにするために、ストレッチロッド2による縦延伸をブローエアー50による横延伸に通常よりも先行させるように、ストレッチロッド2の下方への駆動とブローエアー50の吹き込み圧を制御する。ストレッチロッド2による縦延伸がブローエアー50による横延伸よりも先行することで、ストレッチロッド2の先端2Aが常にプリフォーム本体23の内面下端部分23aへ当接した状態となり、エアシール状態を保てるようになる。
【0028】
本実施形態では、ブロー成形金型3の加熱によりプリフォーム温度が123℃となるようにし、ストレッチロッド2のストレッチスピードを1m/sとした。ブローエアー装置11による吹き込み圧を、このストレッチスピードでエアシール状態を保てるように制御部12により逐次制御した。図4のように、ストレッチロッド2による縦延伸をブローエアー50による横延伸に先行させながら、これらによる2軸延伸を第2の口部22がブロー成形金型3の下側の口部分7へ収まるまで進行させる。
【0029】
プリフォーム20の第1の口部21と第2の口部22の形状はほぼ不変であり、プリフォーム本体23のみが2軸延伸されて序々に薄くなっていく。プリフォーム本体23がキャビティの形状まで延伸され、図4に示す輸液ボトル30の容器本体31の形状となる。図5は、樹脂製容器の成形方法で成形された輸液ボトル30の正面図と側面図である。この輸液ボトル30は、プリフォーム本体23を2軸延伸させた容器本体31、及びこの容器本体31に形成された互いに対向する第1、第2の口部21、22を備えている。輸液ボトル30の各部の寸法は次のとおりである。第1、第2の口部21、22の内径はプリフォーム20のものと変わらず、胴外径(長辺)d1は68.5mmであり、胴外径(短辺)d2は41.5mmであり、中鍔部25の下面から下鍔部26の上面までの長さh3は96.0mmであり、容器本体31の厚み中央径は58.7mm(円換算)である。従って、縦延伸倍率:96.0/64.1=1.498、横延伸倍率:58.7/19.4=3.025となり、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率は約1:2となっている。
【0030】
上記本実施形態の樹脂製容器の成形方法では、輸液ボトル30の形状が型取られたブロー成形金型3に、ストレッチロッド2の先端側に小さい第2の口部22が位置するようにプリフォーム20を装填し、ストレッチロッド2の先端2Aをプリフォーム本体23の内面下端部分23aに当接させて当該第2の口部22を内側からエアシールし、このエアシール状態を保てるように、ブローエアー50を吹き込むと共にストレッチロッド2を下降させ、当該ブローエアー50を漏洩させずにプリフォーム本体23を2軸延伸する。このように、ブロー成形法の採用を可能としているため、生産速度が早い。これにより生産コストを抑えることができる。また、厚みの制御は容易であり、品質のバラツキを少なくできるため、安定した品質の輸液ボトル30を得ることができる。
【0031】
プリフォーム本体23の内面下端部分23aに当接するストレッチロッド2の先端当接部2aが断面凸状のアールに形成されていると共に、この先端当接部2aを当接させる当該プリフォーム本体23の内面下端部分23aがこの先端当接部2aに沿った断面凹状のアールに形成されているため、ストレッチロッド2の先端当接部2aとプリフォーム本体23の内面下端部分23aとの間のシール性が高まる。そのため、確実なエアシール状態を得ることができ、生産管理が容易となり、輸液ボトル30の品質をより安定させることができる。ストレッチロッド2の先端当接部2aが断面凹状のアールに形成されていると共に、この先端当接部2aを当接させる当該プリフォーム本体23の内面下端部分23aがこの先端当接部2aに沿った断面凸状のアールに形成されている場合や、プリフォーム本体23の内面下端部分23aがストレッチロッド2の進行方向へ向かうに従って横断面を小さくするテーパー状とした場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0032】
ストレッチロッド2の先端寸としての直径n4が第2の口部22の内寸法としての内径n3よりも2mm以上大きくなっているので、ストレッチロッド2の軸芯とプリフォーム20の軸芯のずれに基づくシール性の低下が抑えられ、生産管理が容易となり、輸液ボトル30の品質をより安定させることができる。
【0033】
本実施形態の輸液ボトル30は、ストレッチロッド2による縦延伸をブローエアー50による横延伸に通常よりも先行させて成形された2軸延伸状態の容器本体31を有しており、当該縦延伸と横延伸の比率をより安定させた状態で成形された当該容器本体31が得られているため、輸液ボトル30としての要求特性を確実に満たし、高い品質を維持することができる。
【0034】
上記実施形態の樹脂製容器の成形方法及び輸液ボトルは、本発明に係る樹脂製容器の成形方法及び樹脂製容器を例示したものである。本発明の樹脂製容器の成形方法に、必要に応じて他の工程を含めるようにしてもよく、ストレッチロッドで第2の口部をシールするために、ストレッチロッドの先端の形状や、プリフォーム本体の内面下端部分の形状を変更してもよい。成形する樹脂製容器や、ストレッチロッド等の形状を変更してもよい。本発明の樹脂製容器の成形方法で成形する樹脂製容器は、輸液ボトルに限られず、飲料用、薬品用、工業用等の他の用途に用いる容器であってもよい。成形に使用される樹脂は適宜変更されるものであり、ポリプロピレンの他、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の可撓性を有する公知のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 成形機
2 ストレッチロッド
2A 先端
2a 先端当接部
3 ブロー成形金型
4 ストレッチロッド装置
12 制御部
20 プリフォーム
21 第1の口部
22 第2の口部
23 プリフォーム本体
23a 内面下端部分
30 輸液ボトル
31 容器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体、及びこの容器本体に形成された互いに対向する第1、第2の口部を備え、当該第2の口部が当該第1の口部より小さい内寸法を有する樹脂製容器の成形方法であって、
前記樹脂製容器の形状が型取られたブロー成形金型に、
前記容器本体となる筒状のプリフォーム本体とこのプリフォーム本体に形成された前記第1、第2の口部とを備えるプリフォームを、このプリフォームに挿入されるストレッチロッドの先端側に当該第2の口部が位置するように装填し、
前記第2の口部の内寸法よりも大きい先端寸を有する前記ストレッチロッドの先端を当該第2の口部を閉塞するように前記プリフォーム本体の内面下端部分に当接させて当該第2の口部を内側からエアシールし、
エアシール状態を保てるように、ブローエアーを吹き込むと共に前記ストレッチロッドを下降させ、当該ブローエアーを漏洩させずに前記プリフォーム本体を2軸延伸することを特徴とする樹脂製容器の成形方法。
【請求項2】
前記プリフォーム本体の内面下端部分に当接する前記ストレッチロッドの先端当接部が断面凸状又は断面凹状のアールに形成されていると共に、当該プリフォーム本体の内面下端部分がこの先端当接部に沿った断面凹状又は断面凸状のアールに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製容器の成形方法。
【請求項3】
前記ストレッチロッドの先端を当接させる前記プリフォーム本体の内面下端部分が当該ストレッチロッドの進行方向へ向かうに従って横断面を小さくするテーパー状となっていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製容器の成形方法。
【請求項4】
前記ストレッチロッドが円柱状に形成されていると共に前記プリフォームの第1、第2の口部が円筒状に形成され、当該ストレッチロッドの先端寸としての直径が前記第2の口部の内寸法としての内径よりも2mm以上大きくなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製容器の成形方法。
【請求項5】
容器本体、及びこの容器本体に形成された互いに対向する第1、第2の口部を備え、当該第2の口部が当該第1の口部より小さい内寸法を有する樹脂製容器であって、
当該樹脂製容器の形状が型取られたブロー成形金型に、前記第1、第2の口部を備えるプリフォームを装填し、このプリフォームをブロー成形して得られる樹脂製容器において、
ストレッチロッドの先端で前記第2の口部を閉塞するようにして当該第2の口部を内側からエアシールし、エアシール状態を保てるように当該ストレッチロッドによる縦延伸をブローエアーによる横延伸に通常よりも先行させて成形された2軸延伸状態の容器本体を有することを特徴とする樹脂製容器。
【請求項6】
当該樹脂製容器は、薬剤等が含まれた輸液を収容するための輸液容器であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245642(P2012−245642A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117053(P2011−117053)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】