樹脂部材の接合方法及びその接合構造
【課題】 第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができ、接合品質を向上させることができる樹脂部材の接合方法とその接合構造を提供する。
【解決手段】 樹脂部材の接合方法は、バンパーフェース1に当接部1cと受止め部1d,1eとを予め形成すると共に、オーバーフェンダー20の接合片21に係合部21cと受止め部21d,21eとを予め形成し、バンパーフェース1のスリット孔12にオーバーフェンダー20の接合片21を挿入して、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、スリット孔12から突出する接合片21をバンパーフェース1の接合部へ折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部に超音波溶着器で溶着する。
【解決手段】 樹脂部材の接合方法は、バンパーフェース1に当接部1cと受止め部1d,1eとを予め形成すると共に、オーバーフェンダー20の接合片21に係合部21cと受止め部21d,21eとを予め形成し、バンパーフェース1のスリット孔12にオーバーフェンダー20の接合片21を挿入して、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、スリット孔12から突出する接合片21をバンパーフェース1の接合部へ折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部に超音波溶着器で溶着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材の接合方法及びその接合構造に関し、特に第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して第2樹脂部材を第1樹脂部材に組付ける際に生じる位置ズレを防止し、第1,第2樹脂部材間の相対位置を適切に保持できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車において、樹脂部材に金属部材を締結する場合、タッピングスクリューやボルト等で締結されるが、熱可塑性を有する樹脂部材の比較的低温で溶融し常温で冷却固化する性質を利用して、樹脂部材を熱によってかしめる接合方法が周知である。
【0003】
特許文献1に記載の熱かしめ構造体及び熱かしめ接合方法には、鉄板のスリット穴に熱可塑性樹脂部材のかしめ突起を挿入した後、超音波加熱器でかしめ突起の先端側を加熱しながら加圧することで、鉄板に熱可塑性樹脂部材を溶着する技術が開示されている。
このように、異なる材質からなる部材を溶着すると、リサイクル時に鉄板と樹脂部材とを切断しなければならず、リサイクル性が低下する。リサイクル性を高める為には同じ材質の部材同士を溶着した方が望ましく、樹脂部材同士を溶着する接合方法として、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合方法が採用されている。
【特許文献1】特開2004−58391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バンパーフェース(第1樹脂部材)にオーバーフェンダー(第2樹脂部材)を接合する場合、バンパーフェースのスリット孔にオーバーフェンダーの接合片を挿入して接合片を溶着すると、バンパーフェースに対するオーバーフェンダーの組付け時にスリット孔と接合片との間で位置ズレが生じやすく、バンパーフェースとオーバーフェンダーとの相対位置を均一に保持することは困難である。それ故、バンパーフェースとオーバーフェンダーとの接合品質が低下する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができ、接合品質を向上させることができる樹脂部材の接合方法とその接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の樹脂部材の接合方法は、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合方法において、前記第1樹脂部材に、スリット孔に隣接する当接部と、スリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に第1樹脂部材の当接部と係合可能な係合部を形成し且つ第2樹脂部材にスリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成する第1工程と、前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部とを当接させ、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付ける第2工程と、前記第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着する第3工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
尚、第1樹脂部材としてバンパーフェースなどが適用可能であり、第2樹脂部材としてはオーバーフェンダーなどが適用可能である。また、溶着手段には、超音波溶着器や振動溶着器や熱溶着器などが適用可能である。この樹脂部材の接合方法では、先ず第1工程において、第1樹脂部材に、スリット孔に隣接する当接部と、スリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に第1樹脂部材の当接部と係合可能な係合部を形成し且つ第2樹脂部材にスリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成しておく。次に第2工程において、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部とを当接させ、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付ける。
【0008】
次に第3工程において、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着する。すると、接合片の折り曲げ部分と第1樹脂部材の接合部が軟化し塑性流動することで接合片の折り曲げ部分が第1樹脂部材の接合部に溶着される。このように、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の組付け時に、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させるので、スリット孔と接合片との間で生じる位置ズレを防止することができ、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができる。
【0009】
請求項2の樹脂部材の接合方法は、請求項1の発明において、前記接合片は折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、第2工程において、接合片の弾性変形復元力で接合片の係合部が第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付けされることを特徴とする。
【0010】
請求項3の樹脂部材の接合方法は、請求項1の発明において、前記溶着手段は、超音波溶着器であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の樹脂部材の接合構造は、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合構造において、前記第1樹脂部材は、スリット孔に隣接した当接部と、スリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入した際に前記接合片に当接可能な受止め部を有し、前記第2樹脂部材は、第1樹脂部材の当接部と係合可能に接合片に形成された係合部と、スリット孔に接合片を挿入した際に前記受止め部に当接可能な受止め部を有し、前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、前記スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたことを特徴とする。この樹脂部材の接合構造では、請求項1と同様の作用を奏する。
【0012】
請求項5の樹脂部材の接合構造は、請求項4の発明において、前記第1樹脂部材が車両のバンパーフェースであり、前記第2樹脂部材が付属部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着するので、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の組付け時にスリット孔と接合片との間で生じる位置ズレを防止することができ、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができる。それ故、第1樹脂部材と第2樹脂部材との接合品質が向上する。しかも、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の相対位置を保持することができるので組付け性が良い。
【0014】
請求項2の発明によれば、接合片は折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、接合片の弾性変形復元力で接合片の係合部が第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付けされるので、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を安定的に適切に保持することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、溶着手段は、超音波溶着器であるので、第1樹脂部材に第2樹脂部材を確実に溶着することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたので、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の組付け時にスリット孔と接合片との間で生じる位置ズレを防止することができ、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができる。それ故、第1樹脂部材と第2樹脂部材との接合品質が向上する。しかも、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の相対位置を保持することができるので組付け性が良い。
【0017】
請求項5の発明によれば、第1樹脂部材が車両のバンパーフェースであり、第2樹脂部材が付属部品であるので、車両のバンパーフェースにオーバーフェンダーなどの付属部品を溶着する場合、バンパーフェースとオーバーフェンダー間の相対位置を適切に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の樹脂部材の接合方法は、第1樹脂部材に当接部と受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に係合部と受止め部とを予め形成し、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着するものである。
【0019】
また、本発明の樹脂部材の接合構造は、第1樹脂部材は当接部と受止め部とを有し、第2樹脂部材は係合部と受止め部とを有し、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたものである。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車Cの前部には、合成樹脂製のバンパーフェース1(これが第1樹脂部材に相当する)がボンネットフード2の前端や左右のフロントフェンダ3の前端に連なる曲面に沿って設けられ、バンパーフェース1の左右両端部には、円弧状の付属部品としての合成樹脂製のオーバーフェンダー20(これが第2樹脂部材に相当する)が夫々接合されている。
【0021】
先ず、バンパーフェース1について説明する。
図1、図4、図6、図7に示すように、バンパーフェース1の左右両端部には、車幅方向内側に屈曲する屈曲部1aと、屈曲部1aから後方に延びる延出部1bが夫々形成されている。延出部1bの前端部には、後述するオーバーフェンダー20の接合片21を挿入する為の4つのスリット孔12が、接合片21に対応する位置に円弧状に夫々配置形成され、延出部1bの後端部には3つのボルト穴11が、後述するオーバーフェンダー20のボルト穴32に対応する位置に円弧状に夫々配置形成されている。
【0022】
図8〜図11に示すように、スリット孔12は、前方側の第1孔部12aと、この第1孔部12aの後端に連なり第1孔部12aよりも短い上下長の第2孔部12bとを有する。第2孔部12bの上下長は、第1孔部12aの上下長の約2/3の長さに形成され、第2孔部12bの前後長は、第1孔部12aの前後長の約2倍の長さに形成されている。延出部1bには、第2孔部12bの車幅方向内側において上側に、スリット孔12に隣接する当接部1cが夫々形成され、第2孔部12bの車幅方向外側において上側と下側に、スリット孔12にオーバーフェンダー20の接合片21を挿入した際に接合片21に当接可能な受止め部1d,1eが夫々形成されている。延出部1bにおいて第2孔部12bの後側には、接合部13が車幅方向内側へ僅かに突出するように設けられている。
【0023】
次に、オーバーフェンダー20について説明する。尚、オーバーフェンダー20はバンパーフェース1において左右両側に設けられるが、ここでは、左側のオーバーフェンダー20について説明する。
図2〜図7に示すように、オーバーフェンダー20は円弧状に形成され、このオーバーフェンダー20は、左側壁部20aと後壁部20bと接合片21とを有する。左側壁部20aの前端にはやや右側に屈曲する屈曲部20cが形成され、屈曲部20cの先端は、バンパーフェース1にオーバーフェンダー20を組付けた状態でバンパーフェース1の屈曲部1aと当接するように構成されている。
【0024】
次に、接合片21について説明する。尚、図8、図9、図10、図11に記載の方向を「前後左右」として説明する。
図8、図9に示すように、左側壁部20aの上端部と中央部分と下端部において、左側壁部20aの前端部の内面には、右方に延びる4つの接合片21が夫々設けられ、接合片21は、基部21aと折り曲げ部21bとを有する。折り曲げ部21bは、スリット孔12の第1孔部12aに挿入できるように第1孔部12aよりも小さな上下長に形成されている。接合片21は、折り曲げ部21bの左端部分において折り曲げ方向に弾性変形可能に構成されている。
【0025】
接合片21において折り曲げ部21bの左端部分の上側には切欠き部30が形成され、この切欠き部30の右面には、バンパーフェース1の当接部1cと係合可能な係合部21cが形成され、切欠き部30の左面には受止め部21dが形成されている。基部21aの下側の右面にも同様に受止め部21eが形成されており、スリット孔12の第2孔部12bに接合片21を挿入した際に、接合片21の2つの受止め部21d,21eがバンパーフェース1の受止め部1d,1eに当接可能に構成されている。
【0026】
また、折り曲げ部21bの左端部分の上下長は、第2孔部12bの上下長とほぼ同じ寸法に形成されているため、バンパーフェース1のスリット孔12に接合片21を挿入した状態で、接合片21を第2孔部12b側へ移行させた場合、接合片21の受止め部21d,21eがバンパーフェース1の受止め部1d,1eに夫々当接し、且つ接合片21の係合部21cがバンパーフェース1の当接部1cと係合するようになっている。
【0027】
それ故、バンパーフェース1のスリット孔12に接合片21を挿入し、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、第2孔部12bから車幅方向内側に突出する接合片21の折り曲げ部21bを、バンパーフェース1の接合部13へほぼ直角に折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に溶着手段としての超音波溶着器40(図14参照)で溶着することで、オーバーフェンダー20の前側部分がバンパーフェース1に接合される。
【0028】
左側壁部20aの上端部と中央部分と下端部分には、右方に凹む3つの凹部22〜24が夫々形成され、凹部22〜24のボルト穴32には、ボルト25〜27が夫々挿通されてオーバーフェンダー20がバンパーフェース1と車体に固定される。後壁部20bの上端部には、バンパーフェース1の後端にボルト結合する為のボルト穴28が形成されており、オーバーフェンダー20の後側部分がバンパーフェース1と車体にボルト結合される。後壁部20bの右端部の前面には、後壁部20bの全長に亙ってマッドガード4が取付けられている。
【0029】
次に、樹脂部材の接合方法について、図8〜図15に基づいて説明する。
先ず、図8に示すように、バンパーフェース1に当接部1cと受止め部1d,1eとを予め形成すると共に、オーバーフェンダー20の接合片21に係合部21cと受止め部21d,21eとを予め形成しておく。次に、図9、図10に示すように、バンパーフェース1のスリット孔12の第1孔部12aにオーバーフェンダー20の接合片21を挿入し、図11に示すように、バンパーフェース1の延出部1bの右側において、第1孔部12aの上下部分に接合片21の受止め部21d,21eを当接させた状態で、接合片21を第2孔部12bへ移行させ、バンパーフェース1の受止め部1d,1eとオーバーフェンダー20の受止め部21d,21eとを当接させ、接合片21の弾性変形復元力で接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに位置付ける。
【0030】
次に、図12、図13の2点鎖線で示すように、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、第2孔部12bから車幅方向内側に突出する接合片21の折り曲げ部21bを、バンパーフェース1の接合部13へほぼ直角に折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に接触させる。
【0031】
次に、図14に示すように、超音波溶着器40の先端部の溶着ホーンで接合片21の折り曲げ部21bを押圧し、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に溶着する。尚、溶着ホーンはローレットタイプのものが装着され、1ヶ所の溶着に要する超音波の発振時間を約0.75secに設定して行うものとする。すると、図15に示すように、接合片21の折り曲げ部21bとバンパーフェース1の接合部13が軟化し塑性流動することで接合片21の折り曲げ部21bがバンパーフェース1の接合部13に溶着され、優れた接合強度を有する接合部31を形成する。
【0032】
次に、以上説明した樹脂部材の接合方法及びその接合構造についての効果について説明する。
このように、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、スリット孔12の第2孔部12bから突出する接合片21をバンパーフェース1の接合部13へほぼ直角に折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に溶着し、この接合片21とスリット孔12が複数組適当間隔をあけて設けられるので、バンパーフェース1に対するオーバーフェンダー20の組付け時にスリット孔12と接合片21との間で生じる位置ズレを防止することができ、バンパーフェース1とオーバーフェンダー20との間の相対位置を適切(均一)に保持することができる。それ故、バンパーフェース1とオーバーフェンダー20との接合品質が向上する。しかも、バンパーフェース1に対するオーバーフェンダー20の相対位置を保持することができるので組付け性が良い。
【0033】
また、接合片21は折り曲げ部21bの左端部分において、折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、接合片21の弾性変形復元力で接合片21の係合部21cがバンパーフェース1の当接部1cに係合可能に位置付けされるので、バンパーフェース1とオーバーフェンダー20との間の相対位置を安定的に適切(均一)に保持することができる。また、超音波溶着器40で溶着するので、バンパーフェース1にオーバーフェンダー20を確実に溶着することができる。
【0034】
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1]上記実施例においては、接合片21の折り曲げ部21bを、バンパーフェース1の接合部13へ折り曲げた後、超音波溶着器40の先端部の溶着ホーンで接合片21の折り曲げ部21bを押圧して溶着したが、予め折り曲げておかずに、溶着ホーンで接合片21の折り曲げ部21bを押圧して接合片21の折り曲げ部21bを折り曲げながら溶着してもよい。これによりバンパーフェース1とオーバーフェンダー20の接合に要する作業時間を短縮することができる。
【0035】
2]溶着手段としては、超音波溶着器40以外にも振動溶着器や熱溶着器やスピンウェルド溶着器などが適用可能である。
3〕超音波溶着器40の溶着ホーンの先端形状は、その先端部に一体形成された複数の角部を備えたものであってもよい。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能で、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係る自動車前部の左側面図である。
【図2】オーバーフェンダーの左側面図である。
【図3】オーバーフェンダーの背面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV −V 線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のVII −VII 線断面図である。
【図8】組付け前のバンパーフェースとオーバーフェンダーの接合片の断面図である。
【図9】組付け時のバンパーフェースとオーバーフェンダーの接合片の断面図である。
【図10】図9のX 矢視図である。
【図11】図10において、バンパーフェースの受止め部と接合片の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部をバンパーフェースの当接部に係合させた状態を示す図である。
【図12】図11のXII −XII 線断面図である。
【図13】図12のXIII矢視図である。
【図14】図12において、バンパーフェースの接合部と接合片の折り曲げ部との溶着前の状態を示す図である。
【図15】図12において、バンパーフェースの接合部と接合片の折り曲げ部との溶着後の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 バンパーフェース
1c 当接部
1d,1e 受止め部
12 スリット孔
20 オーバーフェンダー
21 接合片
21c 係合部
21d,21e 受止め部
31 接合部
40 超音波溶着器
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材の接合方法及びその接合構造に関し、特に第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して第2樹脂部材を第1樹脂部材に組付ける際に生じる位置ズレを防止し、第1,第2樹脂部材間の相対位置を適切に保持できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車において、樹脂部材に金属部材を締結する場合、タッピングスクリューやボルト等で締結されるが、熱可塑性を有する樹脂部材の比較的低温で溶融し常温で冷却固化する性質を利用して、樹脂部材を熱によってかしめる接合方法が周知である。
【0003】
特許文献1に記載の熱かしめ構造体及び熱かしめ接合方法には、鉄板のスリット穴に熱可塑性樹脂部材のかしめ突起を挿入した後、超音波加熱器でかしめ突起の先端側を加熱しながら加圧することで、鉄板に熱可塑性樹脂部材を溶着する技術が開示されている。
このように、異なる材質からなる部材を溶着すると、リサイクル時に鉄板と樹脂部材とを切断しなければならず、リサイクル性が低下する。リサイクル性を高める為には同じ材質の部材同士を溶着した方が望ましく、樹脂部材同士を溶着する接合方法として、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合方法が採用されている。
【特許文献1】特開2004−58391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バンパーフェース(第1樹脂部材)にオーバーフェンダー(第2樹脂部材)を接合する場合、バンパーフェースのスリット孔にオーバーフェンダーの接合片を挿入して接合片を溶着すると、バンパーフェースに対するオーバーフェンダーの組付け時にスリット孔と接合片との間で位置ズレが生じやすく、バンパーフェースとオーバーフェンダーとの相対位置を均一に保持することは困難である。それ故、バンパーフェースとオーバーフェンダーとの接合品質が低下する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができ、接合品質を向上させることができる樹脂部材の接合方法とその接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の樹脂部材の接合方法は、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合方法において、前記第1樹脂部材に、スリット孔に隣接する当接部と、スリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に第1樹脂部材の当接部と係合可能な係合部を形成し且つ第2樹脂部材にスリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成する第1工程と、前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部とを当接させ、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付ける第2工程と、前記第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着する第3工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
尚、第1樹脂部材としてバンパーフェースなどが適用可能であり、第2樹脂部材としてはオーバーフェンダーなどが適用可能である。また、溶着手段には、超音波溶着器や振動溶着器や熱溶着器などが適用可能である。この樹脂部材の接合方法では、先ず第1工程において、第1樹脂部材に、スリット孔に隣接する当接部と、スリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に第1樹脂部材の当接部と係合可能な係合部を形成し且つ第2樹脂部材にスリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成しておく。次に第2工程において、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部とを当接させ、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付ける。
【0008】
次に第3工程において、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着する。すると、接合片の折り曲げ部分と第1樹脂部材の接合部が軟化し塑性流動することで接合片の折り曲げ部分が第1樹脂部材の接合部に溶着される。このように、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の組付け時に、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させるので、スリット孔と接合片との間で生じる位置ズレを防止することができ、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができる。
【0009】
請求項2の樹脂部材の接合方法は、請求項1の発明において、前記接合片は折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、第2工程において、接合片の弾性変形復元力で接合片の係合部が第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付けされることを特徴とする。
【0010】
請求項3の樹脂部材の接合方法は、請求項1の発明において、前記溶着手段は、超音波溶着器であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の樹脂部材の接合構造は、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合構造において、前記第1樹脂部材は、スリット孔に隣接した当接部と、スリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入した際に前記接合片に当接可能な受止め部を有し、前記第2樹脂部材は、第1樹脂部材の当接部と係合可能に接合片に形成された係合部と、スリット孔に接合片を挿入した際に前記受止め部に当接可能な受止め部を有し、前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、前記スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたことを特徴とする。この樹脂部材の接合構造では、請求項1と同様の作用を奏する。
【0012】
請求項5の樹脂部材の接合構造は、請求項4の発明において、前記第1樹脂部材が車両のバンパーフェースであり、前記第2樹脂部材が付属部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着するので、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の組付け時にスリット孔と接合片との間で生じる位置ズレを防止することができ、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができる。それ故、第1樹脂部材と第2樹脂部材との接合品質が向上する。しかも、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の相対位置を保持することができるので組付け性が良い。
【0014】
請求項2の発明によれば、接合片は折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、接合片の弾性変形復元力で接合片の係合部が第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付けされるので、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を安定的に適切に保持することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、溶着手段は、超音波溶着器であるので、第1樹脂部材に第2樹脂部材を確実に溶着することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたので、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の組付け時にスリット孔と接合片との間で生じる位置ズレを防止することができ、第1樹脂部材と第2樹脂部材との間の相対位置を適切に保持することができる。それ故、第1樹脂部材と第2樹脂部材との接合品質が向上する。しかも、第1樹脂部材に対する第2樹脂部材の相対位置を保持することができるので組付け性が良い。
【0017】
請求項5の発明によれば、第1樹脂部材が車両のバンパーフェースであり、第2樹脂部材が付属部品であるので、車両のバンパーフェースにオーバーフェンダーなどの付属部品を溶着する場合、バンパーフェースとオーバーフェンダー間の相対位置を適切に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の樹脂部材の接合方法は、第1樹脂部材に当接部と受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に係合部と受止め部とを予め形成し、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着するものである。
【0019】
また、本発明の樹脂部材の接合構造は、第1樹脂部材は当接部と受止め部とを有し、第2樹脂部材は係合部と受止め部とを有し、第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたものである。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車Cの前部には、合成樹脂製のバンパーフェース1(これが第1樹脂部材に相当する)がボンネットフード2の前端や左右のフロントフェンダ3の前端に連なる曲面に沿って設けられ、バンパーフェース1の左右両端部には、円弧状の付属部品としての合成樹脂製のオーバーフェンダー20(これが第2樹脂部材に相当する)が夫々接合されている。
【0021】
先ず、バンパーフェース1について説明する。
図1、図4、図6、図7に示すように、バンパーフェース1の左右両端部には、車幅方向内側に屈曲する屈曲部1aと、屈曲部1aから後方に延びる延出部1bが夫々形成されている。延出部1bの前端部には、後述するオーバーフェンダー20の接合片21を挿入する為の4つのスリット孔12が、接合片21に対応する位置に円弧状に夫々配置形成され、延出部1bの後端部には3つのボルト穴11が、後述するオーバーフェンダー20のボルト穴32に対応する位置に円弧状に夫々配置形成されている。
【0022】
図8〜図11に示すように、スリット孔12は、前方側の第1孔部12aと、この第1孔部12aの後端に連なり第1孔部12aよりも短い上下長の第2孔部12bとを有する。第2孔部12bの上下長は、第1孔部12aの上下長の約2/3の長さに形成され、第2孔部12bの前後長は、第1孔部12aの前後長の約2倍の長さに形成されている。延出部1bには、第2孔部12bの車幅方向内側において上側に、スリット孔12に隣接する当接部1cが夫々形成され、第2孔部12bの車幅方向外側において上側と下側に、スリット孔12にオーバーフェンダー20の接合片21を挿入した際に接合片21に当接可能な受止め部1d,1eが夫々形成されている。延出部1bにおいて第2孔部12bの後側には、接合部13が車幅方向内側へ僅かに突出するように設けられている。
【0023】
次に、オーバーフェンダー20について説明する。尚、オーバーフェンダー20はバンパーフェース1において左右両側に設けられるが、ここでは、左側のオーバーフェンダー20について説明する。
図2〜図7に示すように、オーバーフェンダー20は円弧状に形成され、このオーバーフェンダー20は、左側壁部20aと後壁部20bと接合片21とを有する。左側壁部20aの前端にはやや右側に屈曲する屈曲部20cが形成され、屈曲部20cの先端は、バンパーフェース1にオーバーフェンダー20を組付けた状態でバンパーフェース1の屈曲部1aと当接するように構成されている。
【0024】
次に、接合片21について説明する。尚、図8、図9、図10、図11に記載の方向を「前後左右」として説明する。
図8、図9に示すように、左側壁部20aの上端部と中央部分と下端部において、左側壁部20aの前端部の内面には、右方に延びる4つの接合片21が夫々設けられ、接合片21は、基部21aと折り曲げ部21bとを有する。折り曲げ部21bは、スリット孔12の第1孔部12aに挿入できるように第1孔部12aよりも小さな上下長に形成されている。接合片21は、折り曲げ部21bの左端部分において折り曲げ方向に弾性変形可能に構成されている。
【0025】
接合片21において折り曲げ部21bの左端部分の上側には切欠き部30が形成され、この切欠き部30の右面には、バンパーフェース1の当接部1cと係合可能な係合部21cが形成され、切欠き部30の左面には受止め部21dが形成されている。基部21aの下側の右面にも同様に受止め部21eが形成されており、スリット孔12の第2孔部12bに接合片21を挿入した際に、接合片21の2つの受止め部21d,21eがバンパーフェース1の受止め部1d,1eに当接可能に構成されている。
【0026】
また、折り曲げ部21bの左端部分の上下長は、第2孔部12bの上下長とほぼ同じ寸法に形成されているため、バンパーフェース1のスリット孔12に接合片21を挿入した状態で、接合片21を第2孔部12b側へ移行させた場合、接合片21の受止め部21d,21eがバンパーフェース1の受止め部1d,1eに夫々当接し、且つ接合片21の係合部21cがバンパーフェース1の当接部1cと係合するようになっている。
【0027】
それ故、バンパーフェース1のスリット孔12に接合片21を挿入し、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、第2孔部12bから車幅方向内側に突出する接合片21の折り曲げ部21bを、バンパーフェース1の接合部13へほぼ直角に折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に溶着手段としての超音波溶着器40(図14参照)で溶着することで、オーバーフェンダー20の前側部分がバンパーフェース1に接合される。
【0028】
左側壁部20aの上端部と中央部分と下端部分には、右方に凹む3つの凹部22〜24が夫々形成され、凹部22〜24のボルト穴32には、ボルト25〜27が夫々挿通されてオーバーフェンダー20がバンパーフェース1と車体に固定される。後壁部20bの上端部には、バンパーフェース1の後端にボルト結合する為のボルト穴28が形成されており、オーバーフェンダー20の後側部分がバンパーフェース1と車体にボルト結合される。後壁部20bの右端部の前面には、後壁部20bの全長に亙ってマッドガード4が取付けられている。
【0029】
次に、樹脂部材の接合方法について、図8〜図15に基づいて説明する。
先ず、図8に示すように、バンパーフェース1に当接部1cと受止め部1d,1eとを予め形成すると共に、オーバーフェンダー20の接合片21に係合部21cと受止め部21d,21eとを予め形成しておく。次に、図9、図10に示すように、バンパーフェース1のスリット孔12の第1孔部12aにオーバーフェンダー20の接合片21を挿入し、図11に示すように、バンパーフェース1の延出部1bの右側において、第1孔部12aの上下部分に接合片21の受止め部21d,21eを当接させた状態で、接合片21を第2孔部12bへ移行させ、バンパーフェース1の受止め部1d,1eとオーバーフェンダー20の受止め部21d,21eとを当接させ、接合片21の弾性変形復元力で接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに位置付ける。
【0030】
次に、図12、図13の2点鎖線で示すように、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、第2孔部12bから車幅方向内側に突出する接合片21の折り曲げ部21bを、バンパーフェース1の接合部13へほぼ直角に折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に接触させる。
【0031】
次に、図14に示すように、超音波溶着器40の先端部の溶着ホーンで接合片21の折り曲げ部21bを押圧し、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に溶着する。尚、溶着ホーンはローレットタイプのものが装着され、1ヶ所の溶着に要する超音波の発振時間を約0.75secに設定して行うものとする。すると、図15に示すように、接合片21の折り曲げ部21bとバンパーフェース1の接合部13が軟化し塑性流動することで接合片21の折り曲げ部21bがバンパーフェース1の接合部13に溶着され、優れた接合強度を有する接合部31を形成する。
【0032】
次に、以上説明した樹脂部材の接合方法及びその接合構造についての効果について説明する。
このように、バンパーフェース1の受止め部1d,1eと接合片21の受止め部21d,21eを当接させ且つ接合片21の係合部21cをバンパーフェース1の当接部1cに係合させた状態で、スリット孔12の第2孔部12bから突出する接合片21をバンパーフェース1の接合部13へほぼ直角に折り曲げて、接合片21の折り曲げ部21bをバンパーフェース1の接合部13に溶着し、この接合片21とスリット孔12が複数組適当間隔をあけて設けられるので、バンパーフェース1に対するオーバーフェンダー20の組付け時にスリット孔12と接合片21との間で生じる位置ズレを防止することができ、バンパーフェース1とオーバーフェンダー20との間の相対位置を適切(均一)に保持することができる。それ故、バンパーフェース1とオーバーフェンダー20との接合品質が向上する。しかも、バンパーフェース1に対するオーバーフェンダー20の相対位置を保持することができるので組付け性が良い。
【0033】
また、接合片21は折り曲げ部21bの左端部分において、折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、接合片21の弾性変形復元力で接合片21の係合部21cがバンパーフェース1の当接部1cに係合可能に位置付けされるので、バンパーフェース1とオーバーフェンダー20との間の相対位置を安定的に適切(均一)に保持することができる。また、超音波溶着器40で溶着するので、バンパーフェース1にオーバーフェンダー20を確実に溶着することができる。
【0034】
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1]上記実施例においては、接合片21の折り曲げ部21bを、バンパーフェース1の接合部13へ折り曲げた後、超音波溶着器40の先端部の溶着ホーンで接合片21の折り曲げ部21bを押圧して溶着したが、予め折り曲げておかずに、溶着ホーンで接合片21の折り曲げ部21bを押圧して接合片21の折り曲げ部21bを折り曲げながら溶着してもよい。これによりバンパーフェース1とオーバーフェンダー20の接合に要する作業時間を短縮することができる。
【0035】
2]溶着手段としては、超音波溶着器40以外にも振動溶着器や熱溶着器やスピンウェルド溶着器などが適用可能である。
3〕超音波溶着器40の溶着ホーンの先端形状は、その先端部に一体形成された複数の角部を備えたものであってもよい。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能で、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係る自動車前部の左側面図である。
【図2】オーバーフェンダーの左側面図である。
【図3】オーバーフェンダーの背面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV −V 線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のVII −VII 線断面図である。
【図8】組付け前のバンパーフェースとオーバーフェンダーの接合片の断面図である。
【図9】組付け時のバンパーフェースとオーバーフェンダーの接合片の断面図である。
【図10】図9のX 矢視図である。
【図11】図10において、バンパーフェースの受止め部と接合片の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部をバンパーフェースの当接部に係合させた状態を示す図である。
【図12】図11のXII −XII 線断面図である。
【図13】図12のXIII矢視図である。
【図14】図12において、バンパーフェースの接合部と接合片の折り曲げ部との溶着前の状態を示す図である。
【図15】図12において、バンパーフェースの接合部と接合片の折り曲げ部との溶着後の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 バンパーフェース
1c 当接部
1d,1e 受止め部
12 スリット孔
20 オーバーフェンダー
21 接合片
21c 係合部
21d,21e 受止め部
31 接合部
40 超音波溶着器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合方法において、
前記第1樹脂部材に、スリット孔に隣接する当接部と、スリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に第1樹脂部材の当接部と係合可能な係合部を形成し且つ第2樹脂部材にスリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成する第1工程と、
前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部とを当接させ、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付ける第2工程と、
前記第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着する第3工程と、
を備えたことを特徴とする樹脂部材の接合方法。
【請求項2】
前記接合片は折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、第2工程において、接合片の弾性変形復元力で接合片の係合部が第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付けされることを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材の接合方法。
【請求項3】
前記溶着手段は、超音波溶着器であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材の接合方法。
【請求項4】
第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合構造において、
前記第1樹脂部材は、スリット孔に隣接した当接部と、スリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入した際に前記接合片に当接可能な受止め部を有し、
前記第2樹脂部材は、第1樹脂部材の当接部と係合可能に接合片に形成された係合部と、スリット孔に接合片を挿入した際に前記受止め部に当接可能な受止め部を有し、
前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、前記スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたことを特徴とする樹脂部材の接合構造。
【請求項5】
前記第1樹脂部材が車両のバンパーフェースであり、前記第2樹脂部材が付属部品であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂部材の接合構造。
【請求項1】
第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合方法において、
前記第1樹脂部材に、スリット孔に隣接する当接部と、スリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成すると共に、第2樹脂部材の接合片に第1樹脂部材の当接部と係合可能な係合部を形成し且つ第2樹脂部材にスリット孔に接合片を挿入した際に当接可能な受止め部とを予め形成する第1工程と、
前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部とを当接させ、接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付ける第2工程と、
前記第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させた状態で、スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材の接合部に溶着手段で溶着する第3工程と、
を備えたことを特徴とする樹脂部材の接合方法。
【請求項2】
前記接合片は折り曲げ方向に弾性変形可能に予め構成され、第2工程において、接合片の弾性変形復元力で接合片の係合部が第1樹脂部材の当接部に係合可能に位置付けされることを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材の接合方法。
【請求項3】
前記溶着手段は、超音波溶着器であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材の接合方法。
【請求項4】
第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入して接合片を第1樹脂部材に溶着する樹脂部材の接合構造において、
前記第1樹脂部材は、スリット孔に隣接した当接部と、スリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入した際に前記接合片に当接可能な受止め部を有し、
前記第2樹脂部材は、第1樹脂部材の当接部と係合可能に接合片に形成された係合部と、スリット孔に接合片を挿入した際に前記受止め部に当接可能な受止め部を有し、
前記第1樹脂部材のスリット孔に第2樹脂部材の接合片を挿入し、第1樹脂部材の受止め部と第2樹脂部材の受止め部を当接させ、且つ接合片の係合部を第1樹脂部材の当接部に係合させ、前記スリット孔から突出する接合片を第1樹脂部材の接合部へ折り曲げて、接合片の折り曲げ部分を第1樹脂部材に溶着させて接合した接合部を備えたことを特徴とする樹脂部材の接合構造。
【請求項5】
前記第1樹脂部材が車両のバンパーフェースであり、前記第2樹脂部材が付属部品であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂部材の接合構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−44242(P2008−44242A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222387(P2006−222387)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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