説明

機器管理装置および機器管理システム

【課題】機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷を抑制する。
【解決手段】コントローラ10は、異常検出部11a、異常発報部11b、入力部16および発報制御部11cを備え、空気調和装置40aを遠隔から管理する遠隔管理サーバ20に接続される。異常検出部11aは、空気調和装置40aに関する機器データに基づいて、空気調和装置40aにおける異常を検出する。異常発報部11bは、異常検出部11aにより検出された異常に関する異常情報を遠隔管理サーバ20に向けて発報する。入力部16は、空気調和装置40aが保守中であるか否かを示す保守情報を取得する。発報制御部11cは、入力部16により取得された保守情報に基づいて、空気調和装置40aが保守中であるか否かを判断し、空気調和装置40aが保守中であると判断した場合には、異常発報部11bによる発報を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機器および遠隔管理装置に接続される機器管理装置、ならびにこれを備える機器管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置や防災機器等の設備機器を当該設備機器の遠隔に配置した遠隔管理装置によって管理する遠隔管理システムが利用されている。そして、一般に、こうした遠隔管理システムでは、設備機器と同じ物件内に機器管理装置が配置されている。かかる機器管理装置は、定期的に、設備機器に関する情報である機器情報を収集して当該設備機器における異常の有無を判断し、異常が検出された場合にはその旨を通知するべく遠隔管理装置に向けて異常発報を行う。一方、異常発報を受けた遠隔管理装置側では、当該異常に対処するべくサービスマンを現地に派遣する等する。
【0003】
ところで、従来、こうした遠隔管理システムにおいては、一度異常が発生すると、当該異常が解消するまでの間、同じ異常を通知する異常発報が繰り返し行われることになる。この場合、遠隔管理装置側では、機器管理装置から繰り返し送られてくる異常発報にかかる異常情報が、既にサービスマンへの出動を要請する等した対処中の異常についてのものであったとしても、その区別がつかない場合には、異常情報を受け取るたびに何らかの対処を検討しなくてはならなくなる。
【0004】
そこで、特許文献1では、異常発報時に機器管理装置から遠隔管理装置へと送信される異常情報に、初期発報であるか再送であるかを示す発報種別情報を含ませる構成としている。これにより、遠隔管理装置側においては、機器管理装置からの異常発報が未対処の異常についてのものであるのか、対処中の異常についてのものであるのかを区別することが可能になり、機器管理装置から送られてくる異常情報に対して対処中のものを処理対象外とするようにマスクをかけることが可能になる。
【特許文献1】特開2005−196340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかる構成では、サービスマン等の保守作業者による保守作業中であっても機器管理装置から遠隔管理装置へと異常情報が送信され続けることに代わりはなく、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷が増大する傾向にある。
【0006】
本発明の課題は、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明にかかる機器管理装置は、情報収集部と、異常検出部と、異常発報部と、情報取得部と、発報制御部とを備え、設備機器および遠隔管理装置に接続される。遠隔管理装置は、設備機器を遠隔から管理する。情報収集部は、機器情報を収集する。機器情報は、設備機器に関する情報である。異常検出部は、情報収集部により収集された機器情報に基づいて、設備機器における異常を検出する。異常発報部は、異常情報を遠隔管理装置に向けて発報する。異常情報は、異常検出部により検出された異常に関する情報である。情報取得部は、設備機器が保守中であるか否かを示す保守情報を取得する。発報制御部は、情報取得部により取得された保守情報に基づいて、設備機器が保守中であるか否かを判断し、設備機器が保守中であると判断した場合には、異常発報部による発報を禁止する。
【0008】
この機器管理装置では、設備機器における異常が検出された場合であっても、設備機器が保守中であると判断される場合には、遠隔管理装置に向けた異常発報が禁止される。すなわち、一般に、サービスマン等の保守作業者が現地に居合わせる等する保守中においては、保守作業者の派遣要請等を行う遠隔管理装置へ異常の発生を直ちに通知する必要はない。そこで、この機器管理装置は、保守情報を取得して設備機器が保守中であるか否かを判断し、保守中と判断される場合おいては異常発報を行わないように構成されている。これにより、この機器管理装置では、不必要な異常発報が低減され、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷が抑制される。
【0009】
なお、本発明にかかる機器管理装置は、1の機器から構成されるものであっても、複数の機器から構成されるものであってもよい。すなわち、例えば、本発明にかかる機器管理装置は、設備機器と同じ建物内において設備機器を管理するコントローラと、保守作業中にコントローラに接続される保守作業用の端末とを組み合わせたものであってもよい。この例において、機器管理装置に含まれる上記情報収集部、異常検出部、異常発報部、情報取得部および発報制御部等の各部は、それぞれコントローラに組み込まれていても、保守作業用の端末に組み込まれていてもよい。
【0010】
第2発明にかかる機器管理装置は、第1発明にかかる機器管理装置であって、情報収集部は、複数の設備機器から機器情報を収集する。異常検出部は、設備機器ごとに異常を検出する。情報取得部は、設備機器を指定する態様の保守情報を取得する。発報制御部は、少なくともいずれかの設備機器が保守中であると判断した場合には、全ての設備機器についての発報を禁止する。
【0011】
この機器管理装置は、複数の設備機器を個別に管理する。すなわち、この機器管理装置では、設備機器ごとに異常の有無が判断され、設備機器ごとに保守中であるか否かが判断される。そして、この機器管理装置では、管理対象である複数の設備機器のうちの少なくとも1つの設備機器が保守を受けている間は、全ての設備機器についての異常発報が禁止される。保守作業者が現地に居合わせる等する保守中においては、保守作業者の派遣要請等を行う遠隔管理装置へ異常の発生を直ちに通知する必要はないからである。これにより、この機器管理装置では、不必要な異常発報がさらに低減され、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷がさらに抑制される。
【0012】
第3発明にかかる機器管理装置は、第2発明にかかる機器管理装置であって、出力部をさらに備える。出力部は、発報制御部により発報が禁止されている間に、発報制御部により保守中でないと判断されている設備機器における異常が異常検出部により検出された場合には、異常が発生した旨を出力する。
【0013】
この機器管理装置では、管理対象である複数の設備機器のうちの少なくとも1つの設備機器が保守を受けている間、すなわち、異常発報が禁止されている間に他の保守中でない設備機器において異常が検出された場合には、その旨が出力される。したがって、この機器管理装置では、現地で保守作業中の保守作業者が、現地に派遣される原因となった異常にかかる設備機器だけでなく他の設備機器における異常にもその場で対処することが可能となる。
【0014】
第4発明にかかる機器管理装置は、第3発明にかかる機器管理装置であって、出力部は、発報制御部により発報が禁止されている間に異常検出部により検出された異常の履歴をさらに出力する。
【0015】
この機器管理装置では、異常発報が禁止されている間に発生した異常の履歴を出力可能になっている。したがって、この機器管理装置では、現地で保守作業中の保守作業者が、現地に派遣される原因となった異常にかかる設備機器以外の設備機器における異常に対処する場合において、その異常に関する詳細な情報を得ることができる。
【0016】
第5発明にかかる機器管理装置は、第1発明から第4発明のいずれかにかかる機器管理装置であって、記憶部をさらに備える。記憶部は、発報制御部により発報が禁止されている間に発生した異常に関する異常情報を記憶する。発報制御部は、記憶部に記憶されている異常情報を、発報の禁止を解除した後に異常発報部に遠隔管理装置に向けて発報させるように制御する。
【0017】
この機器管理装置では、異常発報が禁止されている間に発生した異常に関する異常情報が、少なくとも異常発報の禁止が解除されるまでの間記憶部に確保され、異常発報の禁止の解除後に遠隔管理装置へと送信される。これにより、遠隔管理装置において異常の履歴を確実に保存しておくことができる。
【0018】
第6発明にかかる機器管理装置は、第1発明から第5発明のいずれかにかかる機器管理装置であって、異常情報には、異常検出部により異常が検出される前の所定の期間に情報収集部により収集された機器情報が含まれる。
【0019】
この機器管理装置では、遠隔管理装置に向けて、異常が発生した旨を通知する情報だけでなく、当該異常が検出される前の所定の期間に収集された機器情報も送信される。これにより、遠隔管理装置において異常の様子をより詳細に把握することができる。
【0020】
第7発明にかかる機器管理装置は、第1発明から第6発明のいずれかにかかる機器管理装置であって、情報取得部は、設備機器の保守作業の開始時刻および終了時刻を取得する。発報制御部は、情報取得部により取得された開始時刻および終了時刻を遠隔管理装置に向けて送信する。
【0021】
この機器管理装置では、遠隔管理装置に向けて、保守作業の開始時刻および終了時刻が送信される。これにより、遠隔管理装置において保守作業の開始時刻および終了時刻を把握し、保守作業者の派遣状況を管理することができる。
【0022】
第8発明にかかる機器管理装置は、第1発明から第7発明のいずれかにかかる機器管理装置であって、問い合わせ部をさらに備える。問い合わせ部は、発報制御部により発報が禁止されている期間が所定の時間を超えた場合には、発報の禁止を継続するか否かを示す情報の入力を求めてユーザに問い合わせる。発報制御部は、問い合わせ部による問い合わせの結果、ユーザから発報の禁止を継続する旨を示す情報の入力があった場合には、発報の禁止を継続させる。
【0023】
この機器管理装置では、異常発報の禁止期間、すなわち保守作業を行っている期間が所定の時間を超えた場合には、ユーザに対して異常発報の禁止を継続するか否か、すなわち保守作業を継続するか否かを問う問い合わせが行われる。例えば、ユーザに視認可能なディスプレイに当該質問がポップアップで表示され、タッチパネル機能を搭載したディスプレイがユーザの応答入力を受け付ける。これにより、保守作業が終了したにもかかわらず保守作業者が異常発報の禁止の設定を解除し忘れた場合にも、当該設定を解除することが可能になる。
【0024】
第9発明にかかる機器管理システムは、機器管理装置と、保守用端末とを備える。機器管理装置は、設備機器および遠隔管理装置に接続される。遠隔管理装置は、設備機器を遠隔から管理する。保守用端末は、設備機器の保守中に機器管理装置に接続される。保守用端末は、入力部を有する。入力部は、設備機器が保守中であるか否かを示す保守情報の入力を受け付ける。機器管理装置は、情報収集部と、異常検出部と、異常発報部と、情報取得部と、発報制御部とを有する。情報収集部は、機器情報を収集する。機器情報は、設備機器に関する情報である。異常検出部は、情報収集部により収集された機器情報に基づいて、設備機器における異常を検出する。異常発報部は、異常情報を遠隔管理装置に向けて発報する。異常情報は、異常検出部により検出された異常に関する情報である。情報取得部は、入力部を介して入力された保守情報を取得する。発報制御部は、情報取得部により取得された保守情報に基づいて、設備機器が保守中であるか否かを判断し、設備機器が保守中であると判断した場合には、異常発報部による発報を禁止する。
【0025】
この機器管理システムでは、機器管理装置において設備機器における異常が検出された場合であっても、設備機器が保守中であると判断される場合には、機器管理装置から遠隔管理装置に向けた異常発報が禁止される。すなわち、一般に、サービスマン等の保守作業者が現地に居合わせる等する保守中においては、機器管理装置から保守作業者の派遣要請等を行う遠隔管理装置へ異常の発生を直ちに通知する必要はない。そこで、この機器管理システムでは、機器管理装置が保守用端末に入力された保守情報を取得して設備機器が保守中であるか否かを判断し、保守中と判断される場合おいては異常発報を行わないように構成されている。これにより、この機器管理システムでは、不必要な異常発報が低減され、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷が抑制される。
【0026】
第10発明にかかる機器管理システムは、第9発明にかかる機器管理システムであって、機器管理装置は、接続状態検知部をさらに有する。接続状態検知部は、機器管理装置と保守用端末との接続状態を検知する。発報制御部は、発報を禁止している間に、接続状態検知部により機器管理装置と保守用端末との接続が切断されたことを検知した場合には、異常発報部による発報の禁止を解除する。
【0027】
この機器管理システムでは、機器管理装置が保守用端末との接続状態を検知することが可能となっており、機器管理装置において保守用端末との接続が切断されたことが検知されると、機器管理装置における異常発報の禁止の設定が自動的に解除される。すなわち、この機器管理システムでは、保守作業に用いられる保守用端末が機器管理装置から取り外されることによって、保守作業の終了が自動的に認識されることになる。これにより、保守作業の終了時に異常発報の禁止の設定を確実に解除することができる。
【0028】
第11発明にかかる機器管理システムは、第9発明にかかる機器管理システムであって、機器管理装置は、接続状態検知部をさらに有する。接続状態検知部は、発報が禁止されている期間が所定の時間を超えた場合には、機器管理装置と保守用端末との接続状態を検知する。発報制御部は、接続状態検知部による検知の結果に基づいて、機器管理装置と保守用端末とが接続されていると判断した場合には、発報の禁止を継続させ、機器管理装置と保守用端末が接続されていないと判断した場合には、発報の禁止を解除する。
【0029】
この機器管理システムでは、機器管理装置が保守用端末との接続状態を検知することが可能となっており、異常発報の禁止期間が所定の時間を超えると、機器管理装置が保守用端末との接続状態を検知する。そして、機器管理装置において保守用端末との接続が切断されたことが検知された場合には、機器管理装置における異常発報の禁止の設定が自動的に解除される。すなわち、この機器管理システムでは、異常発報の禁止期間が所定の時間を超えた場合において、保守作業に用いられる保守用端末が機器管理装置から取り外されている場合には、保守作業が終了したものとして取り扱われる。これにより、保守作業が終了したにもかかわらず保守作業者が異常発報の禁止の設定を解除し忘れた場合にも、当該設定を解除することができる。
【発明の効果】
【0030】
第1発明にかかる機器管理装置では、設備機器における異常が検出された場合であっても、設備機器が保守中であると判断される場合には、遠隔管理装置に向けた異常発報が禁止される。これにより、この機器管理装置では、不必要な異常発報が低減され、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷が抑制される。
【0031】
第2発明にかかる機器管理装置では、管理対象である複数の設備機器のうちの少なくとも1つの設備機器が保守を受けている間は、全ての設備機器についての異常発報が禁止される。これにより、この機器管理装置では、不必要な異常発報がさらに低減され、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷がさらに抑制される。
【0032】
第3発明にかかる機器管理装置では、管理対象である複数の設備機器のうちの少なくとも1つの設備機器が保守を受けている間、すなわち、異常発報が禁止されている間に他の保守中でない設備機器において異常が検出された場合には、その旨が出力される。したがって、この機器管理装置では、現地で保守作業中の保守作業者が、現地に派遣される原因となった異常にかかる設備機器だけでなく他の設備機器における異常にもその場で対処することが可能となる。
【0033】
第4発明にかかる機器管理装置では、異常発報が禁止されている間に発生した異常の履歴を出力可能になっている。したがって、この機器管理装置では、現地で保守作業中の保守作業者が、現地に派遣される原因となった異常にかかる設備機器以外の設備機器における異常に対処する場合において、その異常に関する詳細な情報を得ることができる。
【0034】
第5発明にかかる機器管理装置では、異常発報が禁止されている間に発生した異常に関する異常情報が、少なくとも異常発報の禁止が解除されるまでの間記憶部に確保され、異常発報の禁止の解除後に遠隔管理装置へと送信される。これにより、遠隔管理装置において異常の履歴を確実に保存しておくことができる。
【0035】
第6発明にかかる機器管理装置では、遠隔管理装置に向けて、異常が発生した旨を通知する情報だけでなく、当該異常が検出される前の所定の期間に収集された機器情報も送信される。これにより、遠隔管理装置において異常の様子をより詳細に把握することができる。
【0036】
第7発明にかかる機器管理装置では、遠隔管理装置に向けて、保守作業の開始時刻および終了時刻が送信される。これにより、遠隔管理装置において保守作業の開始時刻および終了時刻を把握し、保守作業者の派遣状況を管理することができる。
【0037】
第8発明にかかる機器管理装置では、異常発報の禁止期間、すなわち保守作業を行っている期間が所定の時間を超えた場合には、ユーザに対して異常発報の禁止を継続するか否か、すなわち保守作業を継続するか否かを問う問い合わせが行われる。これにより、保守作業が終了したにもかかわらず保守作業者が異常発報の禁止の設定を解除し忘れた場合にも、当該設定を解除することが可能になる。
【0038】
第9発明にかかる機器管理システムでは、機器管理装置において設備機器における異常が検出された場合であっても、設備機器が保守中であると判断される場合には、機器管理装置から遠隔管理装置に向けた異常発報が禁止される。これにより、この機器管理システムでは、不必要な異常発報が低減され、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷が抑制される。
【0039】
第10発明にかかる機器管理システムでは、機器管理装置が保守用端末との接続状態を検知することが可能となっており、機器管理装置において保守用端末との接続が切断されたことが検知されると、機器管理装置における異常発報の禁止の設定が自動的に解除される。これにより、保守作業の終了時に異常発報の禁止の設定を確実に解除することができる。
【0040】
第11発明にかかる機器管理システムでは、機器管理装置が保守用端末との接続状態を検知することが可能となっており、異常発報の禁止期間が所定の時間を超えると、機器管理装置が保守用端末との接続状態を検知する。そして、機器管理装置において保守用端末との接続が切断されたことが検知された場合には、機器管理装置における異常発報の禁止の設定が自動的に解除される。これにより、保守作業が終了したにもかかわらず保守作業者が異常発報の禁止の設定を解除し忘れた場合にも、当該設定を解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置(設備機器)40a,40b,40c,・・・のコントローラ(機器管理装置)10を含む遠隔管理システム100について説明する。
【0042】
〔全体の構成〕
遠隔管理システム100は、物件1内に設置されている複数の空気調和装置40a,40b,40c,・・・を遠隔管理センター2において管理するためのシステムである。遠隔管理システム100は、図1に示されるように、主として、物件1内の空気調和装置40a,40b,40c,・・・と、物件1内において空気調和装置40a,40b,40c,・・・を管理するコントローラ10と、物件1の遠隔の遠隔管理センター2内に設置されている遠隔管理サーバ20と、遠隔管理サーバ20にインターネット回線4およびFAX回線5を介して接続されているサービスセンター3内のサービス端末30とから構成されている。コントローラ10と遠隔管理サーバ20とは、インターネット回線4を介して双方向に通信することが可能である。なお、簡単のために、図1においては物件1が1つしか示されていないが、実際には遠隔管理システム100には複数の物件1,1,・・・が含まれているものとする。同様に、図1においてはサービスセンター3が1つしか示されていないが、実際には全国に数か所設置されているものとする。
【0043】
〔空気調和装置の構成〕
以下、空気調和装置40aの構成について説明するが、その他の空気調和装置40b,40c,・・・についても同様であるものとする。
【0044】
物件1の室内を空気調和する空気調和装置40aは、図示されない圧縮機や熱交換器等から構成される冷媒回路を有している。また、空気調和装置40aには、各種センサ42a,42b,42c,42d,42e,・・・が取り付けられている。センサ42aは、空気調和装置40aの設置されている部屋の温度を検出する。センサ42bは、空気調和装置40aの設置されている物件1付近の外気の温度を検出する。センサ42cは、空気調和装置40aに含まれる圧縮機(図示されない)の吐出管における冷媒の温度である吐出温度を検出する。センサ42dは、空気調和装置40aに含まれる圧縮機(図示されない)の吐出管における冷媒の圧力である吐出圧を検出する。センサ42eは、空気調和装置40aに含まれる圧縮機(図示されない)の吸入管における冷媒の圧力である吸入圧を検出する。
【0045】
また、空気調和装置40aは、制御部41を有している。制御部41は、コントローラ10を介して物件1の管理者から入力された制御命令や、リモコン43を介して物件1内の一般の利用者から入力された制御命令に従って、空気調和装置40aの動作を制御する、すなわち、冷媒回路に含まれる圧縮機等の各部の動作を制御する。
【0046】
また、制御部41は、空気調和装置40aに関する機器データ(機器情報)をコントローラ10に送信する。例えば、制御部41は、所定の間隔(本実施形態では1分)で制御部41に接続されている各種センサ42a,42b,42c,42d,42e,・・・において検出された値(機器情報)をコントローラ10に向けて送信する。また、制御部41は、所定の間隔(本実施形態では1分)で各種センサ42a,42b,42c,42d,42e,・・・から取得した値を所定の閾値と比較する等し、所定の閾値を超える等の異常を検出した場合には、その旨を示すデータ(機器情報)をコントローラ10に向けて送信する。また、制御部41は、リモコン43を介して制御命令が入力されると、直ちに当該入力された制御命令(機器情報)をコントローラ10に向けて送信する。
【0047】
〔コントローラの構成〕
コントローラ10は、物件1内に設置されており、専用の通信ネットワーク6を介して同じく物件1内に設置されている複数の空気調和装置40a,40b,40c,・・・を管理している。また、コントローラ10は、インターネット回線4を介して遠隔管理センター2内の遠隔管理サーバ20に接続されている。
【0048】
図3に示すように、コントローラ10は、主として、制御部11、記憶部12、第1通信部13、第2通信部14、出力部15および入力部16から構成されている。
【0049】
第1通信部13は、コントローラ10のインターネット回線4への接続を可能にしている。第2通信部14は、コントローラ10の専用の通信ネットワーク6への接続を可能にしており、空気調和装置40a,40b,40c,・・・の制御部41から送られてくる機器データを収集する。
【0050】
記憶部12には、機器データ記憶領域12a、日報データ記憶領域12bおよび保守用データ記憶領域12cが確保されている。
【0051】
機器データ記憶領域12aには、第2通信部14により収集される空気調和装置40a,40b,40c,・・・に関する機器データが記憶される。すなわち、機器データ記憶領域12aには、空気調和装置40a,40b,40c,・・・の制御部41から送られてくる機器データ、例えば、空気調和装置40a,40b,40c,・・・の運転履歴や運転状態に関するデータが記憶される。なお、空気調和装置40a,40b,40c,・・・の運転履歴に関するデータとは、空気調和装置40a,40b,40c,・・・を制御するために選択された電源のオン・オフ、運転モード(冷房モード、暖房モード、送風モードなど)および設定温度などの履歴に関するデータ等を意味し、空気調和装置40a,40b,40c,・・・の運転状態に関するデータとは、空気調和装置40a,40b,40c,・・・に取り付けられている各種センサ42a,42b,42c,42d,42e,・・・において所定の間隔(本実施形態では1分)で検出された値等を意味する。機器データ記憶領域12aは、このような機器データを所定の期間(本実施形態では30分)分記憶しておくことが可能な程度の記憶容量のみを有しており、新しい機器データが取得されるたびに、順次、最も古い機器データが消去されてゆくようになっている。
【0052】
日報データ記憶領域12bには、コントローラ10から遠隔管理サーバ20に向けて1日1回送信される日報データの元データが記憶されている。日報データとは、1日分の空気調和装置40a,40b,40c,・・・の運転履歴や運転状態をまとめたデータであり、その1日にセンサ42a,42b,42c,42d,42e,・・・において検出された値の最大値・最小値や、その1日の空気調和装置40aの累積稼働時間などを含む。日報データ記憶領域12bに記憶されている日報データの元データとは、最終的に遠隔管理サーバ20に向けて送信されることになる日報データが完成する前の加工途中のデータである。日報データは、所定の間隔(本実施形態では30分)で制御部11によって機器データ記憶領域12aに記憶されている機器データに基づいて加工されてゆき、1日1回、所定の時間に第1通信部13を介して遠隔管理サーバ20に向けて送信されることになる。そして、日報データの遠隔管理サーバ20への送信が完了すると、送信済みの日報データは日報データ記憶領域12bから消去される。すなわち、日報データ記憶領域12bは、新たに次の日の日報データを作成するために明け渡される。
【0053】
制御部11は、記憶部12に記憶されている異常検出プログラム(図示されない)に従って、異常検出部11a、異常発報部11b、発報制御部11c、試運転部11dおよび問い合わせ部11eとして動作し得る。
【0054】
異常検出部11aは、所定の間隔(本実施形態では5分)で機器データ記憶領域12aに記憶されている機器データに基づいて、空気調和装置40a,40b,40c,・・・における異常の有無を判定する。このとき、異常検出部11aは、空気調和装置40a,40b,40c,・・・ごとに異常の有無を判定する。そして、異常検出部11aにより異常が検出された場合には、異常発報部11bは、その旨を示すデータに、機器データ記憶領域12aに記憶されている過去の所定の期間(本実施形態では30分)分の機器データを付加した異常発報データ(異常情報)を作成し、遠隔管理サーバ20に向けて送信する(異常発報)。また、第2通信部14が空気調和装置40a,40b,40c,・・・の制御部41から異常を検出した旨のデータを受信した場合にも、異常検出部11aは、当該データに基づいてその空気調和装置40a,40b,40c,・・・における異常を認識することができる。この場合にも、異常発報部11bは、異常が検出された旨を示すデータに、機器データ記憶領域12aに記憶されている過去の所定の期間(本実施形態では30分)分の機器データを付加した異常発報データ(異常情報)を作成し、遠隔管理サーバ20に向けて直ちに送信する(異常発報)。
【0055】
発報制御部11cは、異常発報部11bによる異常発報を制御する。発報制御部11c、試運転部11dおよび問い合わせ部11eの動作についは、後述する。
【0056】
出力部15および入力部16は、タッチパネル機能およびスピーカ機能付きディスプレイとして一体的に構成されている。当該ディスプレイ上には、空気調和装置40a,40b,40c,・・・およびコントローラ10に対する制御命令の入力を受け付けるボタン等が並ぶ入力画面が表示され、当該ボタンに利用者が触れると、そのボタンに対応する処理がコントローラ10内で実行されることになる。例えば、当該ディスプレイ上のボタンを操作することにより利用者により空気調和装置40a,40b,40c,・・・の電源をオンすることが選択された場合には、第2通信部14を介して空気調和装置40a,40b,40c,・・・の制御部41に空気調和装置40a,40b,40c,・・・の電源をオンすることを指令する制御命令が送信されることになる。
【0057】
なお、空気調和装置40a,40b,40c,・・・において異常が発生すると、当該異常に対処するべく、物件1にサービスセンター3からサービスマンが派遣されてくる。物件1において空気調和装置40a,40b,40c,・・・の保守作業を担当するサービスマンは、入力部16を操作することにより、出力部15にかかるディスプレイ上に保守作業用画面70(図6参照)を表示させることができる。
【0058】
〔遠隔管理サーバの構成〕
遠隔管理サーバ20は、遠隔管理センター2内に設置されており、インターネット回線4を介して全国各地に点在する物件1内のコントローラ10に接続されている。また、遠隔管理サーバ20は、インターネット回線4およびFAX回線5を介してサービスセンター3内のサービス端末30に接続されている。
【0059】
図4に示すように、遠隔管理サーバ20は、主として、制御部21、記憶部22、インターネット通信部23、FAX通信部24、出力部25および入力部26から構成されている。なお、遠隔管理サーバ20は、実際には複数台のコンピュータからなるコンピュータ群であり、これらのコンピュータが協働することにより全体として遠隔管理サーバ20を構成している。
【0060】
インターネット通信部23は、遠隔管理サーバ20のインターネット回線4への接続を可能にしており、インターネット回線4を介してコントローラ10から送られてくる異常発報データおよび日報データを受信したり、サービスセンター3内のサービス端末30と電子メールの送受信を行ったりする。FAX通信部24は、遠隔管理サーバ20のFAX通信を可能にしている。
【0061】
記憶部22には、コントローラ10から送られてきた異常発報データおよび日報データが適当な形式に整理されて蓄積されてゆく。
【0062】
制御部21は、インターネット通信部23が受信したコントローラ10からの異常発報データを解析する。そして、制御部21は、その解析結果に基づいて、物件1へサービスマンを出動させる必要があるか否かを判断し、必要があると判断される場合には、サービスセンター3に通知すべき内容をまとめた報知データを作成する。サービスマンの出動を要請する報知データには、空気調和装置40a,40b,40c,・・・において異常が発生した旨や、その異常の詳細(異常の種別や異常の発生した物件1の名称および住所等)等を示すデータが含まれる。そして、制御部21により作成された報知データは、インターネット通信部23からサービス端末30に向けてインターネット回線4を介して電子メールとして送信されたり、FAX通信部24からサービス端末30に向けてFAX回線5を介して送信されたりする。なお、報知データの送信先となるサービスセンター3は、全国各地に点在するサービスセンター3のうち当該異常の発生した物件1に最寄りのサービスセンター3である。
【0063】
出力部25は、ディスプレイやスピーカ等から構成されており、制御部21による異常発報データの解析結果等を遠隔管理サーバ20の側にいる管理者に向けて出力する。例えば、空気調和装置40a,40b,40c,・・・において異常が発生した旨や、その異常の詳細(異常の種別や異常の発生した物件1の名称および住所等)等を表示する画面をディスプレイ上に表示したり、異常が発生した旨を知らせる音声をスピーカから流したりする。こうして、異常の発生を知った管理者は、サービスセンター3のサービスマンに電話等の手段によって連絡を取り、当該物件1への出動要請をすることも可能である。
【0064】
入力部26は、遠隔管理センター2の管理者やサービスセンター3のサービスマンによる異常への対処の結果等の入力を受け付ける。入力部26を介して入力された異常への対処の結果等は、当該異常にかかる異常発報データに関連付けられて記憶部22に記憶される。
【0065】
〔サービス端末の構成〕
サービス端末30は、サービスセンター3内に設置されており、インターネット回線4およびFAX回線5を介して遠隔管理センター2内の遠隔管理サーバ20に接続されている。
【0066】
図5に示すように、サービス端末30は、主として、制御部31、記憶部32、インターネット通信部33、FAX通信部34、出力部35および入力部36から構成されている。
【0067】
インターネット通信部33は、サービス端末30のインターネット回線4への接続を可能にしており、インターネット回線4を介して遠隔管理サーバ20と電子メールの送受信を行う。FAX通信部34は、サービス端末30のFAX通信を可能にしている。
【0068】
記憶部32には、遠隔管理サーバ20からインターネット回線4やFAX回線5を介して送られてきた報知データが記憶される。
【0069】
出力部35は、ディスプレイやスピーカ等から構成されている。そして、制御部31は、記憶部32に記憶されている報知データに基づいて、ディスプレイ上に警告画面を表示させたり、スピーカから警告音を流させたりして、空気調和装置40a,40b,40c,・・・における異常をサービス端末30の側にいるサービスマンに警告する。一方、警告を受けたサービスマンは、その異常の詳細を記憶部32に記憶されている報知データから知得し、その異常に対応するべくその異常の発生した物件1へ出動する。
【0070】
入力部36は、サービスマンによる異常への対処の結果等の入力を受け付ける。入力部26を介して入力された異常への対処の結果等は、インターネット回線4を介してインターネット通信部33により遠隔管理サーバ20に送信され、遠隔管理サーバ20の記憶部22に当該異常にかかる異常発報データに関連付けられて記憶される。
【0071】
〔異常発生時における処理の流れ〕
以下では、空気調和装置40aにおいて異常が発生した場合の遠隔管理システム100における処理の流れについて説明する。
【0072】
空気調和装置40aにおいて発生した異常は、空気調和装置40aを管理するコントローラ10の異常検出部11aにより検出される。そして、コントローラ10の異常発報部11bにより直ちにその旨を知らせる異常発報が遠隔管理サーバ20に向けて行われる。遠隔管理サーバ20は、コントローラ10からの異常発報にかかる異常発報データに基づいて、物件1へサービスマンを出動させる必要があるか否かを判断する。そして、必要があると判断した場合には、サービスセンター3内のサービス端末30に向けて報知データを送信する。一方、サービス端末30では、遠隔管理サーバ20からの報知データに基づいて、ディスプレイやスピーカ等からなる出力部35からサービスマンに物件1への出動を要請するメッセージが出力される。あるいは、遠隔管理サーバ20の出力部25からの出力に基づいて空気調和装置40aにおける異常の発生を知った遠隔管理センター2内の管理者がサービスセンター3に電話する等して、サービスマンに物件1への出動を要請する。
【0073】
こうした出動要請を受けて物件1へとたどりついたサービスマンは、物件1内のコントローラ10の出力部15および入力部16にかかるディスプレイ上のボタンを操作して、当該ディスプレイ上に図6(a)に示す保守作業開始前の保守作業用画面70を表示させる。
【0074】
保守作業開始前の保守作業用画面70には、「保守開始」ボタン70aと、「保守対象機器」プルダウンボタン70bと、「試運転開始」ボタン70cと、「異常履歴」ボタン70dとが表示されている。
【0075】
サービスマンは、保守作業の開始時に、「保守対象機器」プルダウンボタン70bにより保守対象となる空気調和装置40aを指定して「保守開始」ボタン70aを押す。すると、「保守開始」ボタン70aが押されたことが入力部16により検知され、その旨を示すデータ(保守情報)および保守対象となる空気調和装置40aを特定するデータが入力部16から発報制御部11cに直ちに送信される。また、このとき、保守作業用画面70上の「保守開始」ボタン70aは、図6(b)に示すように、「保守終了」ボタン70fに切り替わる。
【0076】
「保守開始」ボタン70aが押された旨を示すデータおよび保守対象となる空気調和装置40aを特定するデータを受け取った発報制御部11cは、これらのデータの受信時刻を保守作業の開始時刻とみなし、当該受信時刻を示すデータを直ちに第1通信部13を介して遠隔管理サーバ20に向けて送信する。遠隔管理サーバ20は、この受信時刻を示すデータを保守作業の開始時刻を示すデータとして記憶部22に記憶する。
【0077】
また、「保守開始」ボタン70aが押された旨を示すデータおよび保守対象となる空気調和装置40aを特定するデータを受け取った発報制御部11cは、入力部16により取得されたこれらのデータに基づいて、空気調和装置40a,40b,40c,・・・が保守中であるか否かを判断する。その結果、発報制御部11cは、空気調和装置40aについては保守中であると判断し、その他の空気調和装置40b,40c,・・・については保守中でないと判断する。そして、空気調和装置40aが保守中であると判断した発報制御部11cは、異常発報部11bによる異常発報の禁止制御を直ちに開始する。このとき、発報制御部11cは、保守作業の対象となっている空気調和装置40aについての異常発報のみならず、その他の空気調和装置40b,40c,・・・についての異常発報も禁止する。すなわち、発報制御部11cは、全ての空気調和装置40a,40b,40c,・・・のうちの少なくともいずれかが保守中であると判断される場合には、全ての空気調和装置40a,40b,40c,・・・についての異常発報を禁止する。なお、異常発報の禁止制御とは、例えば、異常発報部11bが異常発報の直前に確認することになっている、異常発報を行ってもよいか否か示すフラグの値を変更することにより行われる。また、発報制御部11cは、異常検出部11aによる異常の検出処理については何ら干渉しない。すなわち、異常検出部11aは、異常発報の禁止制御中であっても、空気調和装置40a,40b,40c,・・・における異常の検出処理を実行する。
【0078】
発報制御部11cにより全ての空気調和装置40a,40b,40c,・・・についての異常発報が禁止された状態にある異常発報部11bは、異常検出部11aにより空気調和装置40a,40b,40c,・・・のいずれかにおいて異常が検出された場合、以下のように動作する。すなわち、異常検出部11aにより空気調和装置40a,40b,40c,・・・のいずれかにおいて異常が検出されると、異常発報部11bは、異常発報が禁止されていない状態にあるときと同様の異常発報データ(異常情報)を作成し、保守用データ記憶領域12cに保存する。これにより、保守用データ記憶領域12cは、異常発報の禁止期間中に発生した異常が異常検出部11aにより検出される前の所定の期間(本実施形態では30分)における異常発報データを、確実に保存しておくことができる。
【0079】
ここで、例えば、空気調和装置40bにおいて新たな異常が発生した場合を考える。このとき、当該異常が異常検出部11aにより検出されると、発報制御部11cは、当該異常にかかる空気調和装置40bが保守中であるか否かを判断する。この判断は、発報制御部11cが保守作業の開始時に入力部16から受け取った、保守対象となる空気調和装置40aを特定するデータに基づいて行われる。そして、発報制御部11cは、空気調和装置40bが保守中でないと判断すると、空気調和装置40bにおいて異常が発生した旨を示すポップアップウィンドウ70eを出力部15にかかるディスプレイ上に表示させる(図7(a)参照)。また、発報制御部11cは、出力部15にかかるスピーカから警告音を出力させる。
【0080】
このとき、出力部15にかかるディスプレイ上には、ポップアップウィンドウ70eの他、「異常履歴」ボタン70dが表示されている。そこで、ポップアップウィンドウ70eおよび警告音により新たに異常が発生したことを知ったサービスマンが、当該異常の詳細を知りたいと思えば、「異常履歴」ボタン70dを押すことができる。「異常履歴」ボタン70dが押されると、その旨が入力部16により検知され、その旨を示すデータが入力部16から制御部11に直ちに送信される。このとき、制御部11は、保守用データ記憶領域12cに記憶されている、異常発報部11bにより先行して作成された異常発報データに基づいて、異常発報の禁止期間中に異常検出部11aにより検出された異常の履歴を示すデータを出力部15にかかるディスプレイ上に表示させる。なお、ここでいう異常の履歴とは、異常の発生時刻、異常の発生した空気調和装置40bを特定するための情報、異常の種別等が関連付けられたものである。したがって、サービスマンは、物件1への出動の要因となった空気調和装置40aにおける異常だけでなく、空気調和装置40bにおいて発生した異常にも対応することが可能である。なお、「異常履歴」ボタン70dは、図6(a)および図6(b)に示すように、ポップアップウィンドウ70eの表示時でなくとも保守作業用画面70上に常に表示されている。したがって、サービスマンは、保守作業用画面70が出力部15にかかるディスプレイ上に表示されている間はいつでも、異常発報の禁止期間中に空気調和装置40a,40b,40c,・・・において発生した異常の履歴を確認することができる。
【0081】
「試運転開始」ボタン70cは、空気調和装置40aの試運転を開始させるためのボタンである。したがって、保守作業を行うサービスマンは、この「試運転開始」ボタン70cを押すことにより、コントローラ10の試運転部11dに空気調和装置40aの試運転を制御させることができる。
【0082】
そして、サービスマンは、保守作業が終了すると、保守作業中の保守作業用画面70上の「保守終了」ボタン70fを押す。「保守終了」ボタン70fが押されたことが入力部16により検知されると、その旨を示すデータ(保守情報)が入力部16から発報制御部11cに直ちに送信される。そして、保守作業用画面70上の「保守終了」ボタン70fは、再び図6(a)に示す「保守開始」ボタン70aに切り替わる。
【0083】
「保守終了」ボタン70fが押された旨を示すデータを受け取った発報制御部11cは、当該データの受信時刻を保守作業の終了時刻とみなし、当該受信時刻を示すデータを直ちに第1通信部13を介して遠隔管理サーバ20に向けて送信する。遠隔管理サーバ20は、この保守作業の終了時刻を示すデータを記憶部22に記憶する。すなわち、遠隔管理サーバ20では、保守作業の開始時刻および終了時刻が記録されることになり、保守作業の履歴を管理することができる。
【0084】
また、「保守終了」ボタン70fが押された旨を示すデータを受け取った発報制御部11cは、当該データに基づいて空気調和装置40aの保守作業が終了したと判断し、異常発報部11bによる異常発報の禁止制御を直ちに解除する。
【0085】
なお、発報制御部11cは、異常発報の禁止制御を行っている間中(すなわち、保守作業中)、保守作業の開始時刻からの経過時間(すなわち、異常発報の禁止制御を行っている時間)を計測している。そして、保守作業の開始時刻から所定の時間(本実施形態では3時間)が経過すると、発報制御部11cは、保守作業を継続するか否か(すなわち、異常発報の禁止制御を継続するか否か)をサービスマンに問い合わせるポップアップウィンドウ70gを、出力部15にかかるディスプレイ上に表示させる。ポップアップウィンドウ70g上には、サービスマンが継続を希望する旨を入力する場合に押す「継続」ボタンと、終了を希望する旨を入力する場合に押す「終了」ボタンとが表示されている。そして、入力部16により当該「継続」ボタンが押されたことが検知されると、その旨を示すデータが入力部16から発報制御部11cに送信される。「継続」ボタンが押された旨を示すデータを受け取った発報制御部11cは、異常発報部11bによる異常発報の禁止制御を継続させる。一方、発報制御部11cは、「終了」ボタンが押された旨を示すデータを入力部16から受け取った場合、または、「継続」ボタンが押された旨を示すデータを所定の時間(例えば、10分)以上受け取ることがなかった場合には、異常発報の禁止制御を解除する。
【0086】
また、発報制御部11cは、異常発報の禁止制御を解除すると、直ちに保守用データ記憶領域12cに記憶されている異常発報データを読み出して、異常発報部11bに第1通信部13を介して遠隔管理サーバ20に向けて送信させる。これにより、空気調和装置40a,40b,40c,・・・において発生した異常を遠隔管理サーバ20において一元管理することができる。
【0087】
〔特徴〕
(1)
上記実施形態では、保守作業の開始時および終了時にサービスマンが押すべきボタン70a,70fがコントローラ10に設けられている。これにより、空気調和装置40a,40b,40c,・・・が保守中であるか否かをコントローラ10が判断可能となっている。そして、コントローラ10は、空気調和装置40a,40b,40c,・・・が保守中であると判断される場合おいては、空気調和装置40a,40b,40c,・・・における異常が検出された場合であっても、遠隔管理サーバ20に向けた異常発報を行わない。これにより、コントローラ10と遠隔管理サーバとの間の通信負荷が抑制されるようになっている。
【0088】
(2)
上記実施形態では、空気調和装置40aの保守作業中に他の保守中でない空気調和装置40bにおいて異常が検出された場合には、その旨がディスプレイ上にポップアップ形式で表示されるようになっている。したがって、現地で保守作業中のサービスマンは、現地に派遣される原因となった異常にかかる空気調和装置40aだけでなく他の空気調和装置40bにおける異常にもその場で対処することができるようになっている。
【0089】
(3)
上記実施形態では、コントローラ10の記憶部12に、保守作業中(すなわち、異常発報の禁止期間中)の異常に関する異常発報データを保存しておくべき記憶領域(保守用データ記憶領域12c)が確保されている。これにより、保守作業中に発生した異常の履歴をサービスマンが現地において閲覧することや、保守作業の終了後にコントローラ10が保守作業中の異常にかかる異常発報データを一括して遠隔管理サーバ20に送ることが可能になっている。
【0090】
(4)
上記実施形態では、「保守開始」ボタン70aが押されてから「保守終了」ボタン70fが押されるまでの時間が計測されている。そして、当該時間が3時間を超える場合には、保守作業を継続するか否かを問い合わせるポップアップウィンドウ70gがコントローラ10のディスプレイ上に表示される。そして、ポップアップウィンドウ70g上の「終了」ボタンが押された場合、または、「継続」ボタンが10分以上押されることがなかった場合には、自動的に異常発報の禁止の設定が解除されるようになっている。これにより、保守作業が終了したにもかかわらずサービスマンが「保守終了」ボタン70fを押し忘れた場合にも、当該設定を解除することが可能となっている。
【0091】
〔変形例〕
(1)
コントローラ10の管理対象となる設備機器は、空気調和装置40a,40b,40c,・・・以外の設備機器であってもよい。例えば、防災機器であってもよいし、照明機器であってもよいし、複数の種類の設備機器が組み合わされたものであってもよい。
【0092】
(2)
コントローラ10と、遠隔管理サーバ20と、サービス端末30とが、インターネット回線4以外の回線で接続されていてもよい。例えば、電話回線で接続されていてもよい。
【0093】
(3)
コントローラ10が、互いに接続された複数の機器から構成されていてもよい。すなわち、図8および図9に示す遠隔管理システム200のように、コントローラ10の各部の機能が複数の機器に分散されていてもよい。
【0094】
図8および図9に示す例では、コントローラ10の機能が、互いに接続されたコントローラ110および保守用端末80に分散されており、上述したコントローラ10の試運転部11d、出力部15および入力部16の機能を、それぞれ保守用端末80の制御部81、出力部85および入力部86が担っている。保守用端末80は、例えば、サービスマンが物件1に派遣されてくる際に携帯している作業用のパソコンである。なお、図8および図9に示される構成要素のうち、上記実施形態と共通の参照符号が付されているものについては、上記実施形態と同様の構成および機能を有しているものとする。
【0095】
コントローラ110は、第3通信部17を有している。第3通信部17は、コントローラ110の保守用端末80への接続を可能にしており、保守用端末80の入力部86を介して入力された一切のデータを取得する。また、保守用端末80は、定期的に(例えば1秒間隔で)接続確認用のコマンドをコントローラ110の第3通信部17に向けて送信している。一方、コントローラ110側では、制御部11の接続状態検知部11fが、第3通信部17が受信した保守用端末80からの接続確認用のコマンドの取得状況を確認可能となっている。これにより、コントローラ110側においては、コントローラ110と保守用端末80との接続状態をリアルタイムで確認することができるようになっている。すなわち、接続状態検知部11fは、第3通信部17が接続確認用のコマンドを受信し続けている場合には、コントローラ110と保守用端末80との接続が有効であると判断し、第3通信部17が接続確認用のコマンドを受信できなければ、コントローラ110と保守用端末80とが接続された状態にないと判断することができる。
【0096】
そして、異常発報の禁止制御中(すなわち、保守作業中)に、接続状態検知部11fによりコントローラ110と保守用端末80との接続が切断されたことが検知された場合には、発報制御部11cは、異常発報の禁止制御を解除する。
【0097】
したがって、当該変形例にかかる遠隔管理システム200では、コントローラ110において保守用端末80との接続が切断されたことが検知されると、コントローラ110における異常発報の禁止制御の設定が自動的に解除される。すなわち、当該変形例では、保守作業に用いられる保守用端末80がコントローラ110から取り外されることによって、保守作業の終了が自動的に認識されることになる。これにより、保守作業の終了時に異常発報の禁止の設定を確実に解除することができる。
【0098】
また、当該変形例における処理が、以下のようになっていてもよい。
【0099】
すなわち、コントローラ110の発報制御部11cは、保守作業の開始時刻から所定の時間(本実施形態では3時間)が経過した時点において未だ「保守終了」ボタン70fが押された旨を示すデータを受け取っていない場合に、接続状態検知部11fにコントローラ110と保守用端末80との接続状態を検知させる。そして、その結果、接続状態検知部11fによりコントローラ110と保守用端末80との接続が有効であると判断された場合には、発報制御部11cは、異常発報部11bによる異常発報の禁止制御を継続させる。一方、接続状態検知部11fによりコントローラ110と保守用端末80とが接続された状態にないと判断された場合には、発報制御部11cは、保守作業を継続するか否か(すなわち、異常発報の禁止制御を継続するか否か)をサービスマンに問い合わせるポップアップウィンドウ70gを、出力部85にかかるディスプレイ上に表示させる。以後の処理は、同様である。
【0100】
また、当該変形例において、保守用データ記憶領域12cが保守用端末80に確保されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、機器管理装置と遠隔管理装置との間の通信負荷を抑制することができるという効果を有し、設備機器および遠隔管理装置に接続される機器管理装置、ならびにこれを備える機器管理システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態にかかるコントローラを含む遠隔管理システムの構成図。
【図2】空気調和装置の構成図。
【図3】コントローラの構成図。
【図4】遠隔管理サーバの構成図。
【図5】サービス端末の構成図。
【図6】(a)保守作業開始前の保守作業用画面を示す図。 (b)保守作業中の保守作業用画面を示す図。
【図7】(a)異常の発生を知らせるポップアップウィンドウが表示された様子を示す図。 (b)保守作業の継続の意思を問い合わせるポップアップウィンドウが表示された様子を示す図。
【図8】変形例にかかる遠隔管理システムの構成図。
【図9】変形例にかかるコントローラの構成図。
【符号の説明】
【0103】
10,110 コントローラ(機器管理装置)
11 制御部
11a 異常検出部
11b 異常発報部
11c 発報制御部
11e,81 問い合わせ部
11f 接続状態検知部
12c 保守用データ記憶領域(記憶部)
14 第2通信部(情報収集部)
15,85 出力部
16,86 入力部(情報取得部)
17 第3通信部(情報取得部)
20 遠隔管理装置(遠隔管理サーバ)
40a,40b,40c,・・・ 空気調和装置(設備機器)
80 保守用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備機器(40a,40b,40c,・・・)および前記設備機器を遠隔から管理する遠隔管理装置(20)に接続される機器管理装置(10,110,80)であって、
前記設備機器に関する情報である機器情報を収集する情報収集部(14)と、
前記情報収集部により収集された前記機器情報に基づいて、前記設備機器における異常を検出する異常検出部(11a)と、
前記異常検出部により検出された前記異常に関する情報である異常情報を前記遠隔管理装置に向けて発報する異常発報部(11b)と、
前記設備機器が保守中であるか否かを示す保守情報を取得する情報取得部(16,86)と、
前記情報取得部により取得された前記保守情報に基づいて、前記設備機器が保守中であるか否かを判断し、前記設備機器が保守中であると判断した場合には、前記異常発報部による前記発報を禁止する発報制御部(11c)と、
を備える、
機器管理装置(10,110,80)。
【請求項2】
前記情報収集部(14)は、複数の前記設備機器(40a,40b,40c,・・・)から前記機器情報を収集し、
前記異常検出部(11a)は、前記設備機器ごとに前記異常を検出し、
前記情報取得部(16,86)は、前記設備機器を指定する態様の前記保守情報を取得し、
前記発報制御部(11c)は、少なくともいずれかの前記設備機器が保守中であると判断した場合には、全ての前記設備機器についての前記発報を禁止する、
請求項1に記載の機器管理装置(10,110,80)。
【請求項3】
前記発報制御部(11c)により前記発報が禁止されている間に、前記発報制御部により保守中でないと判断されている前記設備機器(40a,40b,40c,・・・)における前記異常が前記異常検出部(11a)により検出された場合には、前記異常が発生した旨を出力する出力部(15,85)、
をさらに備える、
請求項2に記載の機器管理装置(10,110,80)。
【請求項4】
前記出力部(15,85)は、前記発報制御部(11c)により前記発報が禁止されている間に前記異常検出部(11a)により検出された前記異常の履歴をさらに出力する、
請求項3に記載の機器管理装置(10,110,80)。
【請求項5】
前記発報制御部(11c)により前記発報が禁止されている間に発生した前記異常に関する前記異常情報を記憶する記憶部(12c)、
をさらに備え、
前記発報制御部は、前記記憶部に記憶されている前記異常情報を、前記発報の禁止を解除した後に前記異常発報部(11b)に前記遠隔管理装置(20)に向けて発報させるように制御する、
請求項1から4のいずれかに記載の機器管理装置(10,110,80)。
【請求項6】
前記異常情報には、前記異常検出部(11a)により前記異常が検出される前の所定の期間に前記情報収集部(14)により収集された前記機器情報が含まれる、
請求項1から5のいずれかに記載の機器管理装置(10,110,80)。
【請求項7】
前記情報取得部(16,86)は、前記設備機器(40a,40b,40c,・・・)の保守作業の開始時刻および終了時刻を取得し、
前記発報制御部(11c)は、前記情報取得部により取得された前記開始時刻および前記終了時刻を前記遠隔管理装置(20)に向けて送信する、
請求項1から6のいずれかに記載の機器管理装置(10,110,80)。
【請求項8】
前記発報制御部(11c)により前記発報が禁止されている期間が所定の時間を超えた場合には、前記発報の禁止を継続するか否かを示す情報の入力を求めてユーザに問い合わせる問い合わせ部(11e,81)、
をさらに備え、
前記発報制御部は、前記問い合わせ部による前記問い合わせの結果、前記ユーザから前記発報の禁止を継続する旨を示す情報の入力があった場合には、前記発報の禁止を継続させる、
請求項1から7のいずれかに記載の機器管理装置(10,110,80)。
【請求項9】
設備機器(40a,40b,40c,・・・)および前記設備機器を遠隔から管理する遠隔管理装置(20)に接続される機器管理装置(110)と、
前記設備機器の保守中に前記機器管理装置に接続される保守用端末(80)と、
を備え、
前記保守用端末は、
前記設備機器が保守中であるか否かを示す保守情報の入力を受け付ける入力部(86)、
を有し、
前記機器管理装置は、
前記設備機器に関する情報である機器情報を収集する情報収集部(14)と、
前記情報収集部により収集された前記機器情報に基づいて、前記設備機器における異常を検出する異常検出部(11a)と、
前記異常検出部により検出された前記異常に関する情報である異常情報を前記遠隔管理装置に向けて発報する異常発報部(11b)と、
前記入力部を介して入力された前記保守情報を取得する情報取得部(17)と、
前記情報取得部により取得された前記保守情報に基づいて、前記設備機器が保守中であるか否かを判断し、前記設備機器が保守中であると判断した場合には、前記異常発報部による前記発報を禁止する発報制御部(11c)と、
を有する、
機器管理システム(110,80)。
【請求項10】
前記機器管理装置(110)は、
前記機器管理装置と前記保守用端末(80)との接続状態を検知する接続状態検知部(11f)、
をさらに有し、
前記発報制御部(11c)は、前記発報を禁止している間に、前記接続状態検知部(11f)により前記機器管理装置と前記保守用端末との接続が切断されたことを検知した場合には、前記異常発報部(11b)による前記発報の禁止を解除する、
請求項9に記載の機器管理システム(110,80)。
【請求項11】
前記機器管理装置(110)は、
前記発報が禁止されている期間が所定の時間を超えた場合には、前記機器管理装置と前記保守用端末(80)との接続状態を検知する接続状態検知部(11f)、
をさらに有し、
前記発報制御部(11c)は、前記接続状態検知部による前記検知の結果に基づいて、前記機器管理装置と前記保守用端末とが接続されていると判断した場合には、前記発報の禁止を継続させ、前記機器管理装置と前記保守用端末が接続されていないと判断した場合には、前記発報の禁止を解除する、
請求項9に記載の機器管理システム(110,80)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−217229(P2008−217229A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51585(P2007−51585)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】