説明

機械部品のシャワー洗浄装置

【課題】ロボットを含めた装置全体を防水室内に収める必要がなく、且つ、ロボット自体を高度の防塵防水仕様とする必要がないため、これら防水手段配備のための手間及びコストを削減できる機械部品のシャワー洗浄装置を提供することを課題する。
【解決手段】洗浄槽1が、互いに反対方向に移動してその上面開口を開閉する一対のシャッター7、8から成る飛散防止カバーを備え、前記飛散防止カバーは、洗浄するワークをクランプしたロボットハンド81が洗浄槽1内に進入した際に、ロボットハンド81を抱持するようにして閉じ、ロボットハンド81が横方向に移動する際には、その閉じた状態においてシャッター7、8が一体となって、ロボットハンド81の横方向の動きに追随して移動可能にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品のシャワー洗浄装置に関するものであり、より詳細には、例えば、エンジンのシリンダブロックやシリンダヘッド等の機械部品の製造過程において、それらの機械部品に付着した切粉、油脂等を、シャワーノズルによる洗浄によって除去する機械部品のシャワー洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記シリンダブロック等の機械部品(以下「ワーク」という)は、多くの場合表面が平坦ではなく、複数の溝や孔が形成されるため、その溝や孔に切粉や油脂等が入り込んで付着する。そのため、これらのワークについては、一旦製造した後、その溝や孔に付着した切粉や油脂等を除去するために洗浄される。
【0003】
この洗浄作業は、ロボットハンドの先端においてワークを把持し、そのまま洗浄槽内の水タンク内に浸漬させて、高圧洗浄ノズルから洗浄液を噴射して洗浄する水中洗浄方式(特許第4317502号公報、特開2007−113072公報等参照)と、ロボットハンドの先端部において把持したワークを洗浄槽内に保持させ、シャワーノズルを噴射して行うシャワーノズル方式(特許第3497135号公報、特開2009−279564号公報、特開平10−118884号公報等参照)とがある。
【0004】
このうち水中洗浄は、水タンク内において行われるために、高圧洗浄ノズルから噴射される洗浄液が周囲に飛散して周辺部を汚損するおそれはなく、また、ロボット本体も水中に晒されることがないため、高度の防塵防水仕様とする必要がないという利点がある。しかし、その半面、水中においてワークを回転させなければならないため、その動きは一定の限られたものとなり、また、ワークに対して洗浄液の高速噴射が及ばない部分が生じやすく、十分な洗浄を効率よく行うことができないという欠点がある。
【0005】
一方、シャワーノズルによる洗浄の場合には、ワークの回転に自由性があるため、ワークの各部に対して洗浄液の高速噴射を行き渡らせることができて、洗浄効率がよいという利点がある半面、洗浄液が周囲に飛散して周辺部を汚損するおそれがあり、また、ロボットも洗浄液に晒されることになるので、ロボットを含めた装置全体を防水室内に収めると共に、ロボット自体高度の防塵防水仕様とする必要がある。そのため、シャワーノズル方式の場合は、水中洗浄方式の場合に比較して装置が大掛かりになり、コストも嵩むという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4317502号公報
【特許文献2】特開2007−113072公報
【特許文献3】特許第3497135号公報
【特許文献4】特開2009−279564号公報
【特許文献5】特開平10−118884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したようなシャワーノズル方式における利点を生かし、その欠点である、洗浄液が周囲に飛散して周辺部を汚損するおそれがあり、また、ロボットを含めた装置全体を防水室内に収めると共に、ロボット自体高度の防塵防水仕様とする必要があることから、装置が大掛かりになってコストが嵩むという問題点を改善すべくなされたものである。
【0008】
即ち、本発明の課題は、ロボットを含めた装置全体を防水室内に収める必要がなく、且つ、ロボット自体を高度の防塵防水仕様とする必要がないため、これら防水手段配備のための手間及びコストを削減でき、しかも、シャワーノズルによってワークの各面に対して洗浄液の高速噴射をなすことにより、切粉等の除去のための洗浄を十分且つ効率よく行なうことができる機械部品のシャワー洗浄装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、シャワーノズルによる機械部品の洗浄装置であって、その洗浄槽は、互いに反対方向に移動してその上面開口を開閉する一対のシャッターから成る飛散防止カバーを備え、前記飛散防止カバーは、洗浄するワークをクランプしたロボットハンドが前記洗浄槽内に進入した際に、前記ロボットハンドを抱持するようにして閉じ、前記ロボットハンドが横方向に移動する際には、その閉じた状態において前記一対のシャッターが一体となって、前記ロボットハンドの横方向の動きに追随して移動可能であることを特徴とする機械部品のシャワー洗浄装置である。
【0010】
一実施形態において、前記一対のシャッターはそれぞれ、前記洗浄槽の上部に設置されたガイドレールに沿って反対方向及び同一方向にスライド可能にされ、また、前記シャッターのうちの少なくとも一方に、ロッド端が他方の前記シャッター側に連結される開閉シリンダーを備え、前記一対のシャッターは前記開閉シリンダーの作用で互いに反対方向に移動して前記洗浄槽の上面開口を開閉する。
【0011】
一実施形態においては、前記シャッターのうちの少なくとも一方の対向面上縁中央部に、前記ロボットハンドを抱持する凹陥部が形成され、好ましい実施形態においては、前記一対のシャッターは対称的形状にされ、それぞれの前記凹陥部が合わさって円孔が形成される。また、好ましい実施形態においては、前記開閉シリンダーは前記シャッターの双方に設置され、各ロッド端同士が連結される。
【0012】
また、一実施形態においては、前記シャッターの下面相当部に、前記一対のシャッターが一体となって、前記ロボットハンドの横方向の動きに追随して移動する際に、その一方のシャッターの動きに追随してスライドするスライドカバーが設置される。また、前記洗浄槽内にシャワーノズルが、縦方向及び横方向に移動可能に設置される。好ましい実施形態においては、前記シャワーノズルはエアノズル兼用とされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置は、その洗浄槽がその上面開口を開閉する一対のシャッターから成る飛散防止カバーを備えていて、その飛散防止カバーが、洗浄するワークをクランプしたロボットハンドが洗浄槽内に進入した際に閉じ、その閉じた状態のままロボットハンドの動きに追随して移動するので、シャワーノズルによる洗浄中に洗浄液が飛散するおそれがない。そのため、ロボット全体を洗浄室に入れる必要がなく、且つ、ロボット自体を高度の防塵防水仕様とする必要がないので、装置のコンパクト化及び低コスト化につながる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置の一実施形態を示す概略正面図である。
【図2】本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置の一実施形態を示す概略平面図である。
【図3】本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置の一実施形態における飛散防止カバーの動作を示す概略正面図である。
【図4】本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置の一実施形態における飛散防止カバーの動作を示す概略正面図である。
【図5】本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置の一実施形態における要部縦断面図である。
【図6】本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置におけるノズルユニット部の構成を示す正面図である。
【図7】本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置におけるシャワーノズル部の構成を示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について、図面に依拠して説明する。本発明に係る機械部品のシャワー洗浄装置は、シャワーノズルによってエンジン部品等の機械部品(ワーク)を洗浄する装置であって、洗浄槽1と、洗浄槽1の下側に配置されて、洗浄槽1から自然落下する洗浄液を回収する洗浄液回収槽2とから成る。洗浄槽1と洗浄液回収槽2はそれぞれ透視窓3、4を備え、洗浄液回収槽2には、回収した洗浄液のレベルを示す液面ゲージ5が設置される。
【0016】
洗浄槽1には、その上面開口6を開閉する、一対のシャッター7、8から成る飛散防止カバーが配備される。上面開口6は、この飛散防止カバーを構成するシャッター7、8が互いに近接方向に移動した際に閉じられ(図4参照)、シャッター7、8が互いに離隔方向に移動した際に開かれる(図3参照)。通例、シャッター7、8は、互いの対向面及び下面を欠いた箱状体とされる。図示された好ましい実施形態においては、シャッター7、8は、ほぼ同一形状に形成されて、洗浄槽1の上面開口6を覆い得るように対称的に配置される。
【0017】
シャッター7、8のうちの少なくとも一方(通例双方)の対向面上縁中央部に、ロボットハンド81を抱持するための、例えば、半円形の凹陥部9が形成される。図示された好ましい実施形態においては、後述する作用によってシャッター7、8が互いに近接方向に移動して突合した際に、双方の凹陥部9で以て円孔10が形成され、この円孔10内に、ロボットハンド81の軸が収まって抱持される(図2参照)。内周面がこのロボットハンド81に当接することになる凹陥部9には、通常、樹脂製の受け材11が、好ましくは交換可能に嵌め付けられる。
【0018】
シャッター7、8はそれぞれ、洗浄槽1の両端部上面の両側面側に配置されるスタンド12間に渡されるガイドレール13に沿って、スライド可能にされる(図1、3、4参照)。そのために、シャッター7、8の両側面16、17に、ガイドレール13に係わり合って転動又は摺動する手段が配備される。図示した例においては、この転動又は摺動する手段は、シャッター7、8の両側面16、17にガイドレール13を上下方向から挟むように配置される、上下一対のホイール19、20である。この上下一対のホイール19、20は、各シャッター7、8の移動方向前後に配備される。
【0019】
好ましくは、各シャッター7、8のホイール19、20のうちの、少なくとも左右一方の側のホイール19、20を、例えば、断面が山形の周溝を有する溝付きホイールとし、また、それが係合するガイドレール13を、その溝に対応する上面を有する山形レールとする(図5における左側のホイール19及びガイドレール13参照)。このような溝付きホイール19と山形ガイドレール13を用いることにより、シャッター7、8がその移動方向と直角方向へ横滑りすることが防止されて、脱線が防止される。
【0020】
また、少なくとも一方のシャッター7(8)に、シリンダーロッド端が他方のシャッター8(7)側に連結される開閉シリンダー21(22)が設置される。この開閉シリンダー21(22)は、好ましくは、図示された実施形態におけるように、双方のシャッター7、8の上面の両側にそれぞれ対称的に一対配備し、対向する開閉シリンダー21、22のロッド端同士を連結することとする(図2参照)。そのロッド端同士の連結は、例えば、一方のロッド端にI型ジョイントを取り付けると共に、他方のロッド端にこれに対応するY型ジョイントを取り付け、両ジョイントを連結することにより行う。
【0021】
このように開閉シリンダー21、22のロッド端同士が連結されることで、開閉シリンダー21、22が共に縮動作をすると、シャッター7、8が互いに近接方向に引き寄せられて飛散防止カバーが閉じ、以て、洗浄槽1の上面開口6が閉じられる。また、開閉シリンダー21、22が共に伸動作をすると、シャッター7、8が互いに離隔方向に移動して飛散防止カバーが開くことで、洗浄槽1の上面開口6が開放される。
【0022】
飛散防止カバーは、上述した作用により、洗浄するワークをクランプしたロボットハンド81が洗浄槽1内に進入した際に閉じるが、その際にロボットハンド81の軸は、シャッター7、8の凹陥部9によって形成される円孔10内に収まり、シャッター7、8の閉じ動作を阻害することはない。この状態において当該ロボットは、そのロボットハンド81に付設されているクランプユニット82を介し、クランプしているワークを種々の方向に回転させ(例えば、一度に600度程度回転させる。)、当該ワークの洗浄する部分を後述するシャワーノズル41に向ける。
【0023】
本発明に係る装置においては、洗浄動作の間、ロボットハンド81は、洗浄槽1内においてそのクランプユニット82が回動するだけでなく、ロボットハンド81自体がある程度のストロークにて横方向、即ち、シャッター7、8の移動方向と同じ方向に移動することが予定される。その横移動の際、飛散防止カバーは閉じたままであるため、その移動方向のシャッター7、8が、その凹陥部9の受け材11を介して横方向に移動しようとするロボットハンド81に押される。
【0024】
その際シャッター7、8は、ホイール19、20を介してガイドレール13に沿って移動自在であると共に、開閉シリンダー21、22を介して一体となっているため、ロボットハンド81が横方向に移動する際にシャッター7、8は、その動きに追随して自由に移動する。かくして、洗浄作業に際して、ロボットハンド81が回動する際のみならず、横移動する間にも飛散防止カバーは閉じたままであるので、洗浄作業中に洗浄液が飛散することが防止される。
【0025】
図示された実施形態においては、上述したようにロボットハンド81が横移動する際における、シャッター7、8による洗浄液飛散防止機能を補助するための手段が講じられている。即ち、当該手段は、シャッター7、8の下面相当部に配置されるスライドカバー24であり、このスライドカバー24は、ロボットハンド81が横移動してシャッター7、8が同一方向に移動する際にのみ、シャッター7、8の動きに追随して移動する。
【0026】
各スライドカバー24は、シャッター7、8の移動方向前後端部に係止壁25、26を備えていて、洗浄槽1の上面開口6の両側縁辺に沿って配置されたスライドベース27間に跨がり、スライドベース27上を摺動自在となるようにされる(図5参照)。また、各スライドカバー24は、その前端部側の係止壁25が、シャッター7、8の前後面壁間に位置し、その後端部側の係止壁26が、シャッター7、8の後面壁の外側に位置するように配置される(図3、4参照)。
【0027】
上述したようにこのスライドカバー24は、ロボットハンド81が横移動してシャッター7、8が同一方向に移動する際にのみ、シャッター7、8の動きに追随して移動するものであって、シャッター7、8が開閉動作に際して逆方向に移動する際には移動しない。即ち、シャッター7、8が閉動作のために互いに近接方向に移動する際には、シャッター7、8の後面壁7a、8aが後端部側の係止壁26から離れるため、スライドカバー24に対して何ら作用を及ぼさない(図4参照)。また、シャッター7、8が開動作のために互いに離隔方向に移動する際には、シャッター7、8の後面壁7a、8aが後端部側の係止壁26に当接する元の位置に戻るだけであるので、やはり、スライドカバー24に対して何の作用も及ぼさない(図3参照)。
【0028】
これに対して、ロボットハンド81が横移動してシャッター7、8が同一方向に移動する際には、一方のシャッター7(8)が、その後面壁7a(8a)がスライドカバー24の前後の係止壁25、26に干渉しないその閉状態の位置を超えて、他方のシャッター8(7)の側へ移動することになる。その際、当該シャッター7(8)の後面壁7a(8a)が前端部側の係止壁25に当接し、更に移動することにより、当該スライドカバー24を他方のシャッター8(7)側へとスライドさせる。
【0029】
かくして、スライドカバー7、8の後端が上面開口6から外れることがあったとしても、上面開口6はスライドカバー24によってカバーされるため、ロボットハンド81の横移動に際し、上面開口6が露出して洗浄液が飛散するおそれは皆無となる。このようにしてスライドさせられたスライドカバー24は、その後、ロボットハンド81が逆方向に横移動して中央部に戻り、また、シャッター7(8)が開動作をするに伴い、その後部側の係止壁26が当該シャッター7(8)の後面壁7a(8a)に押されることにより、当初の位置に戻される。
【0030】
なお、図1及び図2において符号28で示すものは、シャッター7、8の開き端検出用リミットスイッチであり、符号29で示すものは、シャッター7、8の閉じ端検出用リミットスイッチである。これらリミットスイッチ28、29の作用により、シャッター7、8の動作端が規制される。また、符号72で示すものは、開閉シリンダー21、22等の配線等を担持するケーブルベアである。
【0031】
洗浄槽1内には、旋回式のシャワーノズル装置と、縦横方向に移動するシャワーノズル装置とが配備される。旋回式のシャワーノズル装置は、通例、1対対称的に配置される。それは、多数のシャワーノズル31を並設したノズルパイプ32と、ノズルパイプ32を支持すると共に、ノズルパイプ32に高圧水を供給する枢動部33と、枢動部33を軸支する軸支部34と、枢動部33を旋回駆動する駆動部とで構成される(図3〜5参照)。そして、駆動部は、洗浄槽1の側面に固定されるエアシリンダー35と、一端がエアシリンダー35のロッドに軸着され、他端が枢動部33に軸着されるコンロッド36で構成される。
【0032】
この構成において、エアシリンダー35の縮動作時においては、コンロッド36を介して枢動部33が引かれ、ノズルパイプ32は待機位置(図2参照)にあるが、エアシリンダー35が伸動作をすると、枢動部33は、コンロッド36を介して押されて軸支部34を軸に回動し、ノズルパイプ32は、その待機位置から内方向に所定角度旋回し(図2における軌跡38参照)、シャワーノズル31を、ロボットハンド81のクランプユニット82にクランプされているワークに向けてシャワー洗浄する。
【0033】
なお、ノズルパイプ32の旋回動作は、ロボットハンド81との接触を避けるため、ロボットハンド81が横移動して、中心位置からずれた位置にある時に行われることになる。
【0034】
また、縦横移動式のシャワーノズル装置は、洗浄槽1の一側面側に配置される。それは、先端に、縦方向に複数のシャワーノズル41を並設したノズルブロック42を備えたノズル支持アーム43と、ノズル支持アーム43を支持してこれを縦横(垂直及び水平)方向に移動させる機構を担持するベース板48とを含んで構成される(図1、2参照)。
【0035】
ベース板48は、洗浄槽1の上面一端部に延設された担持板44上に敷設された一対のLMガイド45上にスライド自在に設置される。そして、担持板44上に、LMガイド45と平行に延びるボールネジ46と、このボールネジ46を回転駆動するための横(水平)移動用モーター47とが配備され、そのボールネジ46が、ベース板48の下部に設けられるメネジ部にねじ込まれる。ボールネジ46は、回転自在に軸支され、同じ位置で回転するだけで、移動はしない。
【0036】
かくして、横方向移動用モーター47がボールネジ46を正反回転駆動すると、ボールネジ46は回転するのみで移動はしないので、ボールネジ46がそのメネジ部にねじ込まれているベース板48の方が、LMガイド45上を前進方向又は後退方向に移動することになる。その動きに伴い、ベース板48に設置されているノズルユニットの下端部に支持されているシャワーノズル41が、図2において符号41で示す位置と符号41bで示す位置との間を往復動して、ワークに対するシャワー洗浄を行う。
【0037】
また、ベース板48に組み込まれるノズルユニット昇降機構は、ベース板48の上方に配置される縦方向移動用モーター50を含む昇降駆動部と、該昇降駆動部により昇降駆動されるノズルユニットとから成る。昇降駆動部の縦方向移動用モーター50は、その出力軸からカップリング51を介して延びる図示せぬ駆動軸を回転駆動する。
【0038】
ノズルユニットは、シャワーノズル41に洗浄水を供給するための、例えば一対配置される中空シャフト54と、中空シャフト54間に配置されていて中空シャフト54と一体に上下動する、蛇腹状のスクリュウカバー55aで覆われたボールネジ55とから成る(図6参照)。各中空シャフト54は、ベース板48に設置されたリニアブッシュ56により摺動自在に支持される。
【0039】
一対の中空シャフト54とボールネジ55は、その上部及び下部が連結部材57、58によって連結され、一体化される。各中空シャフト54の上端には、ケーブルベア71に担持された洗浄水供給用配管59が接続される。また、各中空シャフト54の下端は、下部の連結部材58に形成された液路に接続され、当該液路の下端に、ノズルブロック42から延びる送液用配管60が接続される(図7参照)。ノズル支持アーム43は、この下部連結部材58に取り付けられる。
【0040】
各中空シャフト54のリニアブッシュ56の上側及び下側に、ノズルユニットの昇降ストロークを規制するためのセットカラー61、62が取り付けられる。また、ノズルユニットの中間部に、洗浄槽1におけるノズルユニットの移動部分を覆う蛇腹カバー63が配置される。即ち、洗浄槽1の当該部分上面に、両側に蛇腹カバー63を取り付けた可動板64を水平方向に移動可能に配置し、この可動板64に、各中空シャフト54とボールネジ55を包囲するスクリュウカバー55aを遊挿する。
【0041】
ボールネジ55は、上下方向への移動が規制されたタイミングプーリ66にねじ込まれ、昇降駆動部の縦方向移動用モーター50の出力軸の延長線上にある駆動軸に、このタイミングプーリ66に対応するタイミングプーリ(図示してない)が設置される。そして、これら2つのタイミングプーリ間にタイミングベルト67が掛け回される。
【0042】
この構成において、縦方向移動用モーター50により駆動軸が回転駆動されると、タイミングベルト67を介してタイミングプーリ66が回転するが、タイミングプーリ66は上下方向への移動が押さえられているため、ボールネジ55の方が上下動することになる。かくして、ノズルユニット全体が上下動し、シャワーノズル41が、図1において符号41で示す位置と符号41aで示す位置との間を往復動する。
【0043】
このように本発明に係る装置においては、洗浄槽1の上面開口6を閉じた状態で、ロボットハンド81の作用でワークを回転及び横移動させると共に、シャワーノズル41を縦横方向に移動させつつワークの洗浄を行うため、たとえ多くの溝や孔を含む複雑な形状のワークであっても、隅々までむらなく洗浄することが可能となり、また、その洗浄効率も向上し、何より、洗浄槽1の上面開口6を閉じた状態で洗浄作業を行うため、大掛かりな囲いを設けたり、ロボットを防水仕様にしたりすることなく、周囲に洗浄液が飛散して周辺部を汚損することを防止し得る利点がある。
【0044】
なお、上記説明において、シャワーノズル31、41は、共に洗浄液噴射用として説明されているが、これらの一方又は双方を、洗浄したワークを乾燥するためのエア供給用エアノズルと兼用にすることができる。そのためには、例えば、洗浄水供給用配管59、あるいは、洗浄水供給用配管59が連結される配管に接続される、洗浄液タンク及びエアタンクから延びる配管のそれぞれに切換え弁を設け、その切換え弁の操作で、洗浄液又はエアを切り替え給送するようにすればよい。
【0045】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 洗浄槽
6 上面開口
7、8 シャッター
9 凹陥部
10 円孔
13 ガイドレール
19、20 ホイール
21、22 開閉シリンダー
24 スライドカバー
31 シャワーノズル
41 シャワーノズル
47 横方向移動用モーター
50 縦方向移動用モーター
81 ロボットハンド
82 クランプユニット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーノズルによる機械部品の洗浄装置であって、
その洗浄槽は、互いに反対方向に移動してその上面開口を開閉する一対のシャッターから成る飛散防止カバーを備え、
前記飛散防止カバーは、洗浄するワークをクランプしたロボットハンドが前記洗浄槽内に進入した際に、前記ロボットハンドを抱持するようにして閉じ、前記ロボットハンドが横方向に移動する際には、その閉じた状態において前記一対のシャッターが一体となって、前記ロボットハンドの横方向の動きに追随して移動可能であることを特徴とする機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項2】
前記一対のシャッターはそれぞれ、前記洗浄槽の上部に設置されたガイドレールに沿ってスライド可能にされる、請求項1に記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項3】
前記シャッターのうちの少なくとも一方に、ロッド端が他方の前記シャッター側に連結される開閉シリンダーを備え、前記一対のシャッターは前記開閉シリンダーの作用で互いに反対方向に移動して前記洗浄槽の上面開口を開閉する、請求項1又は2に記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項4】
前記シャッターのうちの少なくとも一方の対向面上縁中央部に、前記ロボットハンドを抱持する凹陥部が形成される、請求項1乃至3のいずれかに記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項5】
前記開閉シリンダーは前記シャッターの双方に設置され、各ロッド端同士が連結される、請求項3に記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項6】
前記一対のシャッターは対称的形状で、それぞれの前記凹陥部が合わさって円孔が形成される、請求項4に記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項7】
前記シャッターの下面相当部に、前記一対のシャッターが一体となって、前記ロボットハンドの横方向の動きに追随して移動する際に、その一方のシャッターの動きに追随してスライドするスライドカバーが設置された、請求項1乃至6のいずれかに記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄槽内にシャワーノズルが、縦横方向に移動可能に設置された、請求項1乃至7のいずれかに記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄槽内にシャワーノズルが、旋回可能に設置された、請求項1乃至8のいずれかに記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項10】
前記旋回可能なシャワーノズルは一対対称的に配置され、それぞれ前記ロボットハンドの横方向への移動を避けるように旋回する、請求項9に記載の機械部品のシャワー洗浄装置。
【請求項11】
前記シャワーノズルはエアノズル兼用とされる、請求項8乃至10のいずれかに記載の機械部品のシャワー洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218243(P2011−218243A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86756(P2010−86756)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(509071219)株式会社AQUA・J (2)
【Fターム(参考)】