説明

機能膜の製造方法および機能膜製造装置

【課題】基材の全面にわたって均質な機能膜を製造することができる機能膜の製造方法を提供する。
【解決手段】機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液(有機発光材料インク14)を溶液吐出ノズル6から連続的に吐出して、その吐出された前記機能膜溶液を、溶液吐出ノズル6に対して相対的に移動する基材1に塗布する際に、溶液吐出ノズル6の近傍に配置された静圧ノズル7から、弾性体層4に支持された基材1へ気体13を噴出して、その噴出された気体13による加圧力で基材1を変形させ、基材1上面の偏肉よる凹凸を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイの有機発光層などの機能膜を塗布技術を用いて製造する機能膜の製造方法および機能膜製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、低消費電力、軽量のディスプレイの要望が高まる中、ディスプレイの機能膜を低コストの塗布方式によって製造する技術が注目を集めている。例えば、有機ELディスプレイの有機発光層を製造する際に、インクジェット法や凸版印刷法によって有機発光材料インクを基材に印刷する技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、インクジェット法は、ノズル表面の僅かな濡れ具合のムラが液滴の飛翔方向を狂わせて狙った部分にインクを着弾しそこねたり、僅かな時間の吐出休止中に不吐出ノズルが発生するなどの問題を有し、凸版印刷法は、版の伸縮によってディスプレイの周辺部で印刷の位置精度が確保できないなどの問題を有していた。
【0004】
そこで、不吐出ノズルの発生しにくいディスペンサータイプの溶液吐出ヘッドを、高精度に位置決めできるステージ上に搭載し、高い位置精度でノズル先端を基材へ近接させて、有機発光材料インクを基材に塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下、ディスペンサータイプの溶液吐出ヘッドを用いて有機発光材料インクを基材に塗布する従来の機能膜製造装置について、図面を交えて説明する。図11は従来の機能膜製造装置の一部を示す図、図12は図11に示す正面方向Jから見た断面図、図13は図11に示す側面方向Fから見た断面図である。
【0006】
図11ないし図13において、101は基材、102は基材101上に設けられた隔壁、103は基材101が載置される基材載置テーブル、104は溶液吐出ヘッド、105は溶液吐出ヘッド104の溶液吐出ノズル、106は溶液吐出ヘッド104のマニホールド、107は溶液吐出ヘッド104の溶液押し出し用配管、108は溶液押し出し用配管107へ供給される溶液押し出し用気体、109は有機発光材料インクである。また、図12および図13に示すGは基材101と溶液吐出ノズル105との間の隙間を示す。
【0007】
図11ないし図13には、隔壁102によって基材101上にストライプ状に形成された溝部に、溶液吐出ノズル105から連続的に吐出される有機発光材料インク109を塗布する様子を示している。
【0008】
溶液吐出ヘッド104は、溶液吐出ノズル105と、溶液吐出ノズル105の上部に連結するマニホールド106と、マニホールド106の上部に連結する溶液押し出し用配管107とを備え、溶液押し出し用配管107は、溶液押し出し用気体108を供給する不図示の溶液押し出し用気体供給手段に接続している。
【0009】
また、この溶液吐出ヘッド104は、不図示の駆動手段により、基材101と溶液吐出ノズル105との間に一定の隙間Gをあけた状態で、基材101上の溝部に沿って、基材101の全面にわたって移動する。
【0010】
続いて、上記のように構成された従来の機能膜製造装置による有機発光材料インクの塗布動作について説明する。隔壁102が設けられた基材101が基材載置テーブル103に載置されると、基材101上の溝部の溝方向の延長線上であって、基材101上の隔壁102が設けられていない外側の領域に溶液吐出ノズル105を位置決めする。次に、溝方向に沿った溶液吐出ヘッド104の移動を開始し、溶液吐出ノズル105が溝部の上部に到達するまで、溶液吐出ヘッド104を加速させる。そして、溶液吐出ノズル105が溝部の上部に到達した時点で溶液吐出ヘッド104の加速を停止し、以降、溝部の終端まで溶液吐出ヘッド104を一定速度で移動させる。その一方、溶液吐出ノズル105が溝部の上部に到達した時点で溶液押し出し用気体108の供給を開始し、溶液吐出ノズル105が溝部の上部を移動している間、溶液吐出ノズル105から有機発光材料インク109を連続的に吐出させて、有機発光材料インク109を溝部へ塗布する。そして、溶液吐出ノズル105が溝部の終端に到達した時点で溶液押し出し用気体108の供給を停止して、有機発光材料インク109の塗布を停止する。以降、他の溝部に対しても同様の塗布動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−189192号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上説明したように、有機ELディスプレイの有機発光層を製造する機能膜製造装置として、ディスペンサータイプの溶液吐出ヘッドを用いて有機発光材料インクを基材に塗布する装置が従来より提案されている。しかしながら、このようにディスペンサータイプの溶液吐出ヘッドを用いて有機発光材料インクを塗布する方法には、基材の偏肉により、基材に溶液吐出ノズルが充分に近接しない部分が生じると、その部分で有機発光材料インクの塗布状態が途切れてしまい、溝部に有機発光材料インクが1本の線状に塗布されず、均一な有機発光層を製造できないという問題があった。
【0013】
図14は従来の機能膜製造装置において有機発光材料インクの塗布状態が途切れる様子を示す図、図15は図14に示す側面方向Fから見た断面図である。なお、図14および図15において、図11ないし図13に示す部材に対応する部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0014】
有機発光材料インクのような粘度が数100mPa・sec以下のインクの場合、インク自体が千切れやすいため、図15に示すように基材101と溶液吐出ノズル105との間の隙間Gが広がると、有機発光材料インク109がより一層千切れやすくなる。そのため、基材101の偏肉により、場所によって基材101の厚みが異なると、基材101と溶液吐出ノズル105との間の隙間Gが広がったときに、溶液吐出ノズル105から吐出された有機発光材料インク109が引きちぎれ、図14に示すように有機発光材料インク109が1本の線状に塗布されずに、断続的に塗布される。
【0015】
以上説明した有機発光材料インクの塗布状態が断続的に途切れる問題は、複数の溶液吐出ノズルが設けられた溶液吐出ヘッドを用いて有機発光材料インクを基材に塗布する場合に顕著となる。即ち、1本の溶液吐出ノズルを用いて基材の全面に有機発光材料インクを塗布する場合には、溶液吐出ノズルと基材との間の間隙を逐次微少量に調整することにより、有機発光材料インクを1本の線状に塗布することができるが、複数の溶液吐出ノズルから同時に有機発光材料インクを吐出する場合には、各溶液吐出ノズルと基材と間の間隙をそれぞれ個別に調整することができず、任意の1本の溶液吐出ノズルと基材との間の間隙を調整しても、他の溶液吐出ノズルから吐出される有機発光材料インクが途切れる可能性がある。
【0016】
図16は複数の溶液吐出ノズルが設けられた溶液吐出ヘッドを用いて有機発光材料インクを基材に塗布する従来の機能膜製造装置の一部を示す図、図17は図16に示す正面方向Jから見た断面図である。また、図18は複数の溶液吐出ノズルが設けられた従来の溶液吐出ヘッドを裏側から見た斜視図である。なお、図16および図17において、図11ないし図13に示す部材に対応する部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0017】
図16ないし図18において、110は溶液吐出ヘッド、111は溶液吐出ヘッド110の溶液吐出ノズル、112は溶液吐出ヘッド110のノズルプレート、113は溶液吐出ヘッド110のマニホールド、114は溶液吐出ヘッド110の溶液押し出し用配管、115は溶液押し出し用配管114へ供給される溶液押し出し用気体である。
【0018】
図16および図17には、偏肉がある基材101上にストライプ状に形成された溝部のうちの一部に、複数の溶液吐出ノズル111から同時に連続的に吐出される有機発光材料インク109を塗布する様子を示している。
【0019】
溶液吐出ヘッド110は、複数の溶液吐出ノズル111が1列に形成されたノズルプレート112と、ノズルプレート112の上部に連結するマニホールド113と、マニホールド113の上部に連結する溶液押し出し用配管114とを備え、溶液押し出し用配管114は、溶液押し出し用気体115を供給する不図示の溶液押し出し用気体供給手段に接続している。このように構成された溶液吐出ヘッド110は、溶液押し出し用配管114への溶液押し出し用気体115の供給により、ノズルプレート112に形成された複数の溶液吐出ノズル111から有機発光材料インク109を同時に連続的に吐出する。
【0020】
また、この溶液吐出ヘッド110は、不図示の駆動手段により、基材101と各溶液吐出ノズル111との間に一定の隙間があくように高さ方向に位置決めされた状態で、基材101上の溝部に沿って移動する。
【0021】
以上説明したような複数の溶液吐出ノズル111が設けられた溶液吐出ヘッド110を用いて、基材101上の複数の溝部の一部に同時に有機発光材料インク109を塗布することで、塗布タクトを短くすることができる。しかし、図16および図17に示すように、基材101に偏肉があると、基材101の最も薄い部分で溶液吐出ノズル111が基材101に十分に近接せず、断続的な塗布状態が発生してしまう。
【0022】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、偏肉がある基材に対して、機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液を溶液吐出ノズルから連続的に吐出して、その基材に機能膜溶液を塗布する場合においても、基材全面にわたって均質な機能膜を製造することができる機能膜の製造方法および機能膜製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の請求項1記載の機能膜の製造方法は、機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液を溶液吐出ノズルから連続的に吐出して、その吐出された前記機能膜溶液を、前記溶液吐出ノズルに対して相対的に移動する基材に塗布し、前記機能膜溶液の塗布後に、前記機能膜溶液の前記溶媒を蒸発させて機能膜を製造する機能膜の製造方法であって、前記溶液吐出ノズル近傍に配置された静圧ノズルから、弾性体層に支持された前記基材へ気体を噴出して、その噴出された前記気体による加圧力で前記基材を変形させながら、前記機能膜溶液を前記基材に塗布することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項2記載の機能膜の製造方法は、請求項1記載の機能膜の製造方法であって、前記溶液吐出ノズルと前記基材の相対的な移動方向に沿って前記溶液吐出ノズルを挟むように配置された前記静圧ノズルから前記気体を噴出しながら前記機能膜溶液を前記基材に塗布する際に、前記相対的な移動方向の上流側の前記静圧ノズルから、前記相対的な移動方向の下流側の前記静圧ノズルから噴出される前記気体による加圧力よりも大きい加圧力で前記基材が加圧されるように前記気体を噴出することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項3記載の機能膜の製造方法は、請求項1もしくは2のいずれかに記載の機能膜の製造方法であって、前記基材は場所によって厚みが異なることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項4記載の機能膜の製造方法は、請求項1ないし3のいずれかに記載の機能膜の製造方法であって、前記溶液吐出ノズルと前記基材との間の隙間が100μm以下であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項5記載の機能膜の製造方法は、請求項4記載の機能膜の製造方法であって、前記機能膜溶液として粘度が10mPa・secから500mPa・secの範囲の機能膜溶液を用いることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項6記載の機能膜の製造方法は、請求項1ないし5のいずれかに記載の機能膜の製造方法であって、前記基材上に複数の塗布領域が一定間隔で形成されており、前記塗布領域に前記機能膜溶液を塗布することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項7記載の機能膜の製造方法は、請求項6記載の機能膜の製造方法であって、複数の前記溶液吐出ノズルから前記機能膜溶液を吐出して、複数の前記塗布領域の一部に同時に前記機能膜溶液を塗布する際に、複数の前記溶液吐出ノズルの近傍に配置された複数の前記静圧ノズルから前記気体を噴出することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項8記載の機能膜製造装置は、基材上に、機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液を塗布して機能膜を製造する機能膜製造装置であって、前記基材を弾性変形可能に支持する弾性体層と、前記基材上方に間隙をあけて配置された前記機能膜溶液を吐出する溶液吐出ノズルと、前記溶液吐出ノズル近傍に配置された静圧ノズルとを備え、前記弾性体層に支持された前記基材と前記溶液吐出ノズルとを相対的に移動させるとともに、前記基材へ前記静圧ノズルから気体を噴出しその噴出された前記気体による加圧力で前記基材を変形させながら、前記機能膜溶液を前記基材に連続的に塗布することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の請求項9記載の機能膜製造装置は、請求項8記載の機能膜製造装置であって、前記弾性体層は基材載置ステージ上に設けられていることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の請求項10記載の機能膜製造装置は、請求項8記載の機能膜製造装置であって、シート状の前記基材を搬送する1組のロールと、前記弾性体層が表面に設けられた基材押圧ロールとを備え、前記基材押圧ロールは、前記1組のロールにより搬送される前記基材を挟んで前記溶液吐出ノズルに対向して配置されることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の請求項11記載の機能膜製造装置は、請求項8ないし10のいずれかに記載の機能膜製造装置であって、前記溶液吐出ノズルと前記基材との相対的な移動方向に沿って前記溶液吐出ノズルを挟むように複数の前記静圧ノズルが配置されており、前記相対的な移動方向の上流側の前記静圧ノズルから、前記相対的な移動方向の下流側の前記静圧ノズルから噴出される前記気体による加圧力よりも大きい加圧力で前記基材が加圧されるように前記気体を噴出させることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の請求項12記載の機能膜製造装置は、請求項8ないし11のいずれかに記載の機能膜製造装置であって、複数の前記溶液吐出ノズルおよび、複数の前記溶液吐出ノズル近傍に配置された複数の前記静圧ノズルを備え、複数の前記溶液吐出ノズルは、前記基材上に一定間隔で形成されている複数の塗布領域の一部に前記機能膜溶液が同時に塗布されるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の好ましい形態によれば、偏肉がある基材に対して、機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液を溶液吐出ノズルから連続的に吐出して、その基材に機能膜溶液を塗布する場合においても、静圧ノズルから噴出する気体による加圧力で基材を変形させ、基材の凹凸を減少させることができ、基材全面にわたって均質な機能膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1における機能膜製造装置の要部を示す図
【図2】図1に示す正面方向Jから見た断面図
【図3】図1に示す側面方向Fから見た断面図
【図4】本発明の実施の形態1における機能膜製造装置の溶液吐出ヘッドを裏側から見た斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における機能膜製造装置の溶液吐出ヘッドの他例の一部を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態1における有機ELディスプレイの一実施例の構造を示す図
【図7】本発明の実施の形態1における有機ELディスプレイの有機発光層の製造工程の一実施例を示す図
【図8】本発明の実施の形態1における機能膜製造装置の溶液吐出ヘッドの一部を示す斜視図
【図9】本発明の実施の形態2における機能膜製造装置の要部を側面方向から見た断面図
【図10】本発明の実施の形態3における機能膜製造装置の要部を示す図
【図11】従来の機能膜製造装置の一部を示す図
【図12】図11に示す正面方向Jから見た断面図
【図13】図11に示す側面方向Fから見た断面図
【図14】従来の機能膜製造装置において有機発光材料インクの塗布状態が途切れる様子を示す図
【図15】図14に示す側面方向Fから見た断面図
【図16】従来の複数の溶液吐出ノズルが設けられた溶液吐出ヘッドを備える機能膜製造装置の一部を示す図
【図17】図16に示す正面方向Jから見た断面図
【図18】従来の複数の溶液吐出ノズルが設けられた溶液吐出ヘッドを裏側から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の各実施の形態における機能膜の製造方法および機能膜製造装置について、図面を参照しながら説明する。但し、先行して説明した部材に対応する部材については同一符号を付して、適宜説明を省略する。
【0038】
以下の各実施の形態では、有機ELディスプレイの有機発光層を製造する場合について説明する。有機発光層を製造する場合、機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液として、有機発光材料を溶媒に溶かした有機発光材料インクを用いる。
【0039】
なお、以下の各実施の形態では、パッシブマトリクス型の有機ELディスプレイの有機発光層を製造する場合を例に説明するが、本発明はアクティブマトリクス型の有機ELディスプレイの有機発光層を製造する場合にも実施することができる。
【0040】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における機能膜製造装置の要部を示す図、図2は図1に示す正面方向Jから見た断面図、図3は図1に示す側面方向Fから見た断面図、図4は本発明の実施の形態1における機能膜製造装置の溶液吐出ヘッドを裏側から見た斜視図である。
【0041】
図1ないし図4において、1は偏肉のある基材、2は隔壁、3は基材載置テーブル、4は弾性体層、5は溶液吐出ヘッド、6は溶液吐出ヘッド5の溶液吐出ノズル、7は溶液吐出ヘッド5の静圧ノズル、8は溶液吐出ヘッド5のノズルプレート、9は溶液吐出ヘッド5のマニホールド、10は溶液吐出ヘッド5の溶液押し出し用配管、11は溶液吐出ヘッド5の静圧ノズル用配管、12は溶液押し出し用配管10へ供給される溶液押し出し用気体、13は静圧ノズル用配管11へ供給される静圧ノズル用気体、14は有機発光材料インクである。
【0042】
基材1には偏肉があり、場所によって厚みが異なる。基材1上には隔壁2が設けられており、その隔壁2によって区切られた基材1上の領域が塗布領域である。ここでは、基材1上に、塗布領域として、溝部が一定間隔でストライプ状に形成されている場合について説明する。基材載置テーブル3上には弾性体層4が設けられており、その弾性体層4が基材1を弾性変形可能に支持する。
【0043】
溶液吐出ヘッド5は、複数の溶液吐出ノズル6および複数の静圧ノズル7が形成されたノズルプレート8を備える。複数の溶液吐出ノズル6は、有機発光材料インク14を基材1に塗布する際に、基材1上の複数の溝部の一部に有機発光材料インク14が同時に塗布されるように1列に配置する。複数の静圧ノズル7は複数の溶液吐出ノズル6の近傍に配置されている。具体的には、複数の静圧ノズル7は、基材1と溶液吐出ヘッド5の相対移動方向に沿って溶液吐出ノズル6の列を挟むように2列に配置する。
【0044】
また、溶液吐出ヘッド5は、ノズルプレート8の上部に連結するマニホールド9を備える。連結されたノズルプレート8とマニホールド9の内部には有機発光材料インク14を貯留する貯留槽が形成される。その貯留槽は溶液吐出ノズル6に連通している。
【0045】
また、溶液吐出ヘッド5は、マニホールド9の上部に連結する溶液押し出し用配管10および静圧ノズル用配管11を備える。溶液押し出し用配管10は、連結されたノズルプレート8とマニホールド9の内部に形成されている貯留槽に連通している。静圧ノズル用配管11は、マニホールド9の内部で分岐して各静圧ノズル7に連通している。
【0046】
溶液押し出し用配管10は、溶液押し出し用気体12を供給する不図示の溶液押し出し用気体供給手段に接続しており、その溶液押し出し用気体供給手段による溶液押し出し用気体12の供給により、連結されたノズルプレート8とマニホールド9の内部に形成されている貯留槽に貯留されている有機発光材料インク14が、ノズルプレート8に形成されている複数の溶液吐出ノズル6から同時に連続的に吐出される。
【0047】
静圧ノズル用配管11は、静圧ノズル用気体13を供給する不図示の静圧ノズル用気体供給手段に接続しており、その静圧ノズル用気体供給手段による静圧ノズル用気体13の供給により、静圧ノズル7から静圧ノズル用気体13が噴出する。
【0048】
なお、上記した溶液押し出し用気体供給手段および静圧ノズル用気体供給手段としては、例えば電気信号によって設定圧力を調整できる電空レギュレータを用いたものを用いてもよいし、電気信号によってバルブの開度を調節する方式のものを用いても構わない。
【0049】
また、この機能膜製造装置は、溶液吐出ヘッド5を移動させる不図示の駆動手段を備える。この駆動手段により、溶液吐出ヘッド5と基材1を相対的に移動させることができる。ここでは、その駆動手段により、溶液吐出ヘッド5が、各溶液吐出ノズル6と基材1との間に所定の隙間があくように高さ方向に位置決めされた状態で、基材1上の溝部に沿って移動する。
【0050】
また、図示しないが、この機能膜製造装置は乾燥装置を備える。この不図示の乾燥装置は、基材1上の溝部に有機発光材料インク14が塗布された後に、有機発光材料インク14の溶媒を蒸発させる。
【0051】
以上説明したように構成された機能膜製造装置は、1列に並ぶ複数の溶液吐出ノズル6から有機発光材料インク14を同時に連続的に吐出するとともに、溶液吐出ノズル6に対して基材1を相対的に移動させて、基材1上に隔壁2によってストライプ状に形成された溝部のうちの一部に有機発光材料インク14を塗布し、その後有機発光材料インク14の溶媒を蒸発させて有機発光層を製造する。また有機発光材料インク14を塗布する際に、弾性体層4に支持された基材1へ静圧ノズル7から静圧ノズル用気体13を噴出して、その噴出された静圧ノズル用気体13による加圧力で基材1を変形させる。
【0052】
続いて、この機能膜製造装置の動作について、基材1の左端から赤色の有機発光層、緑色の有機発光層、青色の有機発光層が順次繰り返して配置されるように3原色の有機発光層を製造する場合を例に説明する。
【0053】
まず、隔壁2が設けられた基材1を弾性体層4上に吸着固定する。次に、基材1上に形成されている複数の溝部の一部の先頭の上方へ各溶液吐出ノズル6を位置決めする。具体的には、赤色の有機発光層を設ける各溝部の先頭の上方へ各溶液吐出ノズル6を位置決めする。
【0054】
次に、静圧ノズル用気体13の供給を開始し、静圧ノズル7から静圧ノズル用気体13を噴出させながら、溶液吐出ヘッド5を不図示の駆動手段により下降させ、静圧ノズル7から噴出された静圧ノズル用気体13による加圧力で基材1を変形させて、基材1上面の偏肉よる凹凸を減少させる。
【0055】
次に、溶液押し出し用気体12の供給を開始し、赤色の有機発光材料インク14を溶液吐出ノズル6から吐出させて、赤色の有機発光材料インク14の先端を溝部の先端に付着させる。
【0056】
次に、静圧ノズル用気体13および溶液押し出し用気体12の供給を続けながら、不図示の駆動手段により溶液吐出ヘッド5を溝部の終端方法へ向けて加速させ、その後一定速度で移動させて、溝部へ赤色の有機発光材料インク14を塗布する。溶液吐出ヘッド5の加速領域においては、その速度に応じて溶液押し出し用気体12の設定圧力を変化させることで、加速領域においても塗布量が一定量になるように調節するのが好適である。
【0057】
溶液吐出ノズル6が溝部の終端に到達すると、溶液押し出し用気体12の供給を停止するとともに溶液吐出ヘッド5の移動を停止させる。次に、溶液吐出ヘッド5を上昇させて基材1から遠ざけてから、静圧ノズル用気体13の供給を停止して塗布動作を終了する。その後、赤色の有機発光材料インク14を乾燥させて赤色の有機発光層を製造する。なお、溶液吐出ヘッド5の移動を停止させる際には、溶液吐出ノズル6が溝部の終端に到達するより前に溶液吐出ヘッド5を減速させるのが好適である。
【0058】
以降、緑色の有機発光層を設ける各溝部および青色の有機発光層を設ける各溝部に対しても、上記した赤色の有機発光層を製造する動作と同様の動作を繰り返すことで、有機ELディスプレイの有機発光層を製造することができる。なお、塗布する有機発光材料インクの色を変更するときには、例えば、変更する色の有機発光材料インクが貯留されている溶液吐出ヘッドに切り替える等すればよい。
【0059】
このように、有機発光材料インク14を基材1に塗布する際に、複数の溶液吐出ノズル6の近傍に配置された複数の静圧ノズル7から、弾性体層4に支持された基材1へ静圧ノズル用気体13を噴出することで、その噴出された静圧ノズル用気体13による加圧力で基材1を変形させて、基材1上面の偏肉よる凹凸を減少させることができる。
【0060】
すなわち、静圧ノズル7と基材1との間の間隙が広くなると、静圧ノズル用気体13による加圧力が弱まり、その間隙が狭くなるにつれて急激に加圧力が増加する。そのため、弾性体層4に支持された偏肉のある基材1に対して複数の静圧ノズル7を備えた溶液吐出ヘッド5を近づけると、基材1の凹部に比べて凸部がより強く加圧されてより大きく押し込まれ、基材1上面の凹凸を減少させることができる。
【0061】
したがって、凹凸の抑制された基材1へ有機発光材料インク14を塗布することができ、基材1の全面において、溶液吐出ノズル6と基材1との間の間隙をインクが途切れない間隔に保つことができ、有機発光材料インク14を途中で途切れることなく1本の線状に塗布でき、均一な有機発光層を製造することができるようになる。
【0062】
なお、ここでは、溶液吐出ヘッド5として、気体によってインクを押し出すタイプのものを用いたが、ピストン等で直接インクを押し出すタイプのものを用いても構わない。また、ここでは、有機発光材料インク14を塗布する際に溶液吐出ヘッド5を移動させたが、基材1側を移動させても構わない。また、図4には、平面に穴を開けた形状の溶液吐出ノズル6を示したが、その形状に限定されるものではなく、例えば図5に示すように、溶液吐出ノズル6は突出したノズルであっても構わない。
【0063】
続いて、この実施の形態1における機能膜の製造方法および機能膜製造装置の一実施例について、図面を交えて説明する。図6は本発明の実施の形態1における有機ELディスプレイの一実施例の構造を示す図であり、図6(a)はその平面図、図6(b)は、図6(a)のA−A線に沿った断面図である。また、図7は本発明の実施の形態1における有機ELディスプレイの有機発光層の製造工程の一実施例を示す図である。
【0064】
図6および図7において、15は第1電極、16は基材1上の溝部に設けられた赤色有機発光層、17は基材1上の溝部に設けられた緑色有機発光層、18は基材1上の溝部に設けられた青色有機発光層、19は第2電極、20は有機ELディスプレイの表示用画像領域である。
【0065】
図6に示すように、第1電極15は基材1上にストライプ状に形成されている。隔壁2は、第1電極15の一部が溝部に重なるように形成されている。赤色有機発光層16、緑色有機発光層17、青色有機発光層18は、基材1上に隔壁2によって区切られたストライプ状の溝部に順次繰り返して配置されている。具体的には、上述したように基材1の左端から赤色有機発光層16、緑色有機発光層17、青色有機発光層18が順次繰り返して配置されている。第2電極19は有機発光層16、17、18上に形成されている。
【0066】
ここでは、基材1として、偏肉が40μm、平均の板厚が0.7mmのガラス板を用いた。第1電極15は、例えばITOを用いてフォトリソグラフィー法によってパターニングして形成してもよい。有機発光層16、17、18の厚さは60nm程度とした。隔壁2は、例えば感光性樹脂材料を用いてフォトリソグラフィー法によってパターニングして形成してもよい。隔壁2の材料には、パターニング後に有機発光材料インクに対して撥液性を発現し、有機発光材料インクの接触角が50deg以上となるようにフッ素を含有させた感光性樹脂材料を用いるのが好適である。第2電極19の材料にはAlを用いた。第2電極19は、例えばマスク越しの真空蒸着法によってパターニングしてもよい。
【0067】
以上説明した構成の有機ELディスプレイの有機発光層の製造工程について、図7を用いて説明する。まず、図7(a)に示すように、隔壁2が形成された基材1を用意する。ここでは、隔壁2の幅を40μm、高さを1μm、隔壁2によってストライプ状の区切られる溝部の幅を60μm、溝部のピッチを100μmとした。
【0068】
次に、基材1上の複数の溝部の一部へ同時に赤色の有機発光材料インクを連続的に塗布し、その後乾燥させて、図7(b)に示すように、赤色有機発光層16を製造する。次に、赤色有機発光層16を設けた各溝部の隣の溝部へ同時に緑色の有機発光材料インクを連続的に塗布し、その後乾燥させて、図7(c)に示すように、緑色有機発光層17を製造する。最後に、緑色有機発光層17を設けた各溝部の隣の溝部へ同時に青色有機発光材料インクを連続的に塗布し、その後乾燥させて、図7(d)に示すように、青色有機発光層18を製造する。
【0069】
ここでは、各色の有機発光材料インクを基材1へ塗布するノズルプレート8として、溶液吐出ノズル6の穴の直径が30μm、溶液吐出ノズル6のピッチが300μm、溶液吐出ノズル6の穴数が1300穴、静圧ノズル7の列間のピッチNp1が40mm、静圧ノズル7の列方向のピッチNp2が15mm、静圧ノズル7の穴数が片側27個、合計54個、静圧パッドの溝幅Nwが2mm、静圧パッドの深さが0.5mmのものを用いた。図8に、静圧ノズル7の列間のピッチNp1、静圧ノズル7の列方向のピッチNp2、静圧パッドの溝幅Nwを示す。また、有機発光材料インクとして粘度が100mPa・secのものを用いた。
【0070】
上記のノズルプレートおよび有機発光材料インクを使用して、静圧ノズル7からの静圧ノズル用気体13の噴出しを止めた状態で有機発光材料インクを塗布した場合、基材1と溶液吐出ノズル6との間の間隙が最も狭くなる部分の間隙を10μmに設定したところ、基材1と溶液吐出ノズル6との間の間隙が40μm以上になる部分で有機発光材料インクの塗布状態が途切れて、断続塗布状態が出現した。一方、静圧ノズル7から静圧ノズル用気体13を噴出させた状態で有機発光材料インクを塗布した場合、基材1の全面において有機発光材料インクを溝部からはみ出すこと無く連続的に塗布することができた。
【0071】
なお、図6(b)には、有機発光層16、17、18を第1電極15上に設けた有機ELディスプレイを示したが、図6(c)に示すように、第1電極15上に正孔輸送層21、および中間層22をスピンコート法などで積層し、その上に隔壁2を形成した後、有機発光層16、17、18を製造してもよい。
【0072】
また、上記の実施例では、有機発光材料インクとして粘度が100mPa・secのものを用いたが、本発明は、粘度が10mPa・secから500mPa・secの範囲の有機発光材料インクに対して好適に実施できる。また、粘度が500mPa・secの有機発光材料インクを用いる場合、基材1の全面において溶液吐出ノズル6と基材1との間の隙間が100μm以下となるように静圧ノズル用気体13を噴出させるのが好適である。
【0073】
(実施の形態2)
図9は本発明の実施の形態2における機能膜製造装置の要部を側面方向から見た断面図である。図9において、7a、7bは静圧ノズル、11a、11bは静圧ノズル用配管、13a、13bは静圧ノズル用気体である。
【0074】
この実施の形態2における機能膜製造装置は、溶液吐出ヘッド5の構成が前述した実施の形態1と異なる。すなわち、前述した実施の形態1の溶液吐出ヘッド5は、1本の静圧ノズル用配管11がマニホールド9の内部で分岐して複数の静圧ノズル7に連通していた。これに対して、この実施の形態2における溶液吐出ヘッド5は、図9に示すように、2本の静圧ノズル用配管11a、11bがマニホールド9の上部に連結しており、一方の静圧ノズル用配管11aがマニホールド9の内部で分岐して、溶液吐出ヘッド5と基材1の相対的な移動方向の上流側の各静圧ノズル7aに連通し、他方の静圧ノズル用配管11bがマニホールド9の内部で分岐して、溶液吐出ヘッド5と基材1の相対的な移動方向の下流側の各静圧ノズル7bに連通している。このように、この実施の形態2では、ノズルプレート8に設けた2列の静圧ノズル7a、7bに接続する配管系をそれぞれ別の配管系とした。
【0075】
続いて、この機能膜製造装置の動作について説明する。この機能膜製造装置の動作は、有機発光材料インクを塗布する際に、上流側の静圧ノズル7aへ供給する静圧ノズル用気体13aの供給量を、下流側の静圧ノズル7bへ供給する静圧ノズル用気体13bの供給量よりも多く設定して、上流側の静圧ノズル7aから、下流側の静圧ノズル7bから噴出される静圧ノズル用気体13bによる加圧力よりも大きい加圧力で基材1が加圧されるように静圧ノズル用気体13aを噴出させる点で、前述した実施の形態1と異なる。
【0076】
このように上流側の加圧力を下流側よりも大きくすることにより、溶液吐出ノズル6と基材1との間に形成された溶液のビードが上流側へ押し戻されてビードが引きちぎれ難くなり、有機発光材料インク14の塗布状態が断裂し難くなる。
【0077】
この実施の形態2によれば、前述した実施の形態1と同様に、基材1の全面において、有機発光材料インク14を途中で途切れることなく1本の線状に塗布でき、均一な有機発光層を製造することができるようになる。例えば、前述した実施の形態1において説明した、図6に示す有機ELディスプレイの有機発光層を、図8に示すノズルプレート8を用いて、図7に示す製造工程で製造する実施例において、上流側と下流側で10kPaの圧力差を設定し、その他については同一の条件とした場合、偏肉が50μmの基材に対しても、塗布状態が断裂することなく有機発光材料インクを塗布することができた。
【0078】
(実施の形態3)
図10は本発明の実施の形態3における機能膜製造装置の要部を示す図である。図10において、23a、23bは搬送ロール、24は基材押圧ロールである。
【0079】
この機能膜製造装置は、長尺シート状の基材1に有機発光層を製造する構成となっている。具体的には、長尺シート状の基材1には、その長手方向に平行なストライプ状の溝部を形成する隔壁2が、その長手方向に沿って複数設けられており、1組の搬送ロール23a、23bによって搬送される長尺シート状の基材1に有機発光材料インク14を塗布する構成となっている。つまり、この機能膜製造装置は、溶液吐出ヘッド5と基材1を相対的に移動させる駆動手段として1組の搬送ロール23a、23bを備える。基材1には、例えばポリエチレンナフタレートのシートを用いるが、無論、基材1の材質はポリエチレンナフタレートに限定されるものではなく、例えば透明ポリイミドフィルムであっても構わない。
【0080】
さらに、この機能膜製造装置は、基材1を弾性変形可能に支持する弾性体層4が表面に設けられた基材押圧ロール24を備える。基材押圧ロール24は、搬送ロール23a、23bにより搬送される基材1を挟んで溶液吐出ヘッド5に対向して配置されている。
【0081】
続いて、この機能膜製造装置の動作について、基材1の左端から赤色の有機発光層、緑色の有機発光層、青色の有機発光層が順次繰り返して配置されるように3原色の有機発光層を製造する場合を例に説明する。
【0082】
まず、赤色の有機発光層を設ける各溝部の上方を各溶液吐出ノズル6が通過するように溶液吐出ヘッド5を位置決めして、一対の搬送ロール23a、23bによる長尺シートの基材1の搬送を開始する。有機発光材料インク14を基材1上に塗布する際には、長尺シートの基材1は、基材押圧ロール24と溶液吐出ヘッド5との間を一定速度で連続搬送される。その間、基材1は下面から基材押圧ロール24によって押圧され、上面からは静圧ノズル7から噴出される静圧ノズル用気体13によって加圧されて、基材1上面の偏肉による凹凸が減少される。
【0083】
このような状態で、各溶液吐出ノズル6の下方に基材1上に形成されている溝部の先頭が差し掛かると、溶液押し出し用気体12の供給を開始し、有機発光材料インク14を溶液吐出ノズル6から吐出させて、赤色の有機発光材料インク14の先端を溝部の先端に付着させる。その後、赤色の有機発光材料インク14を連続的に溶液吐出ノズル6から吐出させ、各溶液吐出ノズル6の下方に溝部の終端が到達した時点で溶液押し出し用気体12の供給を停止し、溶液吐出ノズル6からの赤色の有機発光材料インク14の吐出を停止させる。
【0084】
以上の動作を繰り返して、長尺シート状の基材1に設けられた各隔壁3によって形成されている溝部に赤色の有機発光材料インク14を塗布し、その後、赤色の有機発光材料インク14を乾燥させて赤色の有機発光層を製造する。
【0085】
以降、緑色の有機発光層を設ける各溝部および青色の有機発光層を設ける各溝部に対しても、上記した赤色の有機発光層を製造する動作と同様の動作を繰り返すことで、有機ELディスプレイの有機発光層を製造することができる。なお、塗布する有機発光材料インクの色を変更するときには、例えば、変更する色の有機発光材料インクが貯留されている溶液吐出ヘッドに切り替える等すればよい。
【0086】
この実施の形態3によれば、前述した実施の形態1と同様に、基材1の全面において、有機発光材料インク14を途中で途切れることなく1本の線状に塗布でき、均一な有機発光層を形成することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の機能膜の製造方法および機能膜製造装置は、偏肉がある基材に対して、機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液を溶液吐出ノズルから連続的に吐出して、その基材に機能膜溶液を塗布する場合においても、基材全面にわたって均質な機能膜を製造することができ、パッシブマトリクス型の有機ELディスプレイやアクティブマトリクス型の有機ELディスプレイに有用である。
【符号の説明】
【0088】
1、101 基材
2、102 隔壁
3、103 基材載置テーブル
4 弾性体層
5、104、110 溶液吐出ヘッド
6、105、111 溶液吐出ノズル
7、7a、7b 静圧ノズル
8、112 ノズルプレート
9、106、113 マニホールド
10、107、114 溶液押し出し用配管
11、11a、11b 静圧ノズル用配管
12、108、115 溶液押し出し用気体
13、13a、13b 静圧ノズル用気体
14、109 有機発光材料インク
15 第1電極
16 赤色(R)有機発光層
17 緑色(G)有機発光層
18 青色(B)有機発光層
19 第2電極
20 表示用画素領域
21 正孔輸送層
22 中間層
23a、23b 搬送ロール
24 基材押圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液を溶液吐出ノズルから連続的に吐出して、その吐出された前記機能膜溶液を、前記溶液吐出ノズルに対して相対的に移動する基材に塗布し、前記機能膜溶液の塗布後に、前記機能膜溶液の前記溶媒を蒸発させて機能膜を製造する機能膜の製造方法であって、前記溶液吐出ノズル近傍に配置された静圧ノズルから、弾性体層に支持された前記基材へ気体を噴出して、その噴出された前記気体による加圧力で前記基材を変形させながら、前記機能膜溶液を前記基材に塗布することを特徴とする機能膜の製造方法。
【請求項2】
前記溶液吐出ノズルと前記基材の相対的な移動方向に沿って前記溶液吐出ノズルを挟むように配置された前記静圧ノズルから前記気体を噴出しながら前記機能膜溶液を前記基材に塗布する際に、前記相対的な移動方向の上流側の前記静圧ノズルから、前記相対的な移動方向の下流側の前記静圧ノズルから噴出される前記気体による加圧力よりも大きい加圧力で前記基材が加圧されるように前記気体を噴出することを特徴とする請求項1記載の機能膜の製造方法。
【請求項3】
前記基材は場所によって厚みが異なることを特徴とする請求項1もしくは2のいずれかに記載の機能膜の製造方法。
【請求項4】
前記溶液吐出ノズルと前記基材との間の隙間が100μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の機能膜の製造方法。
【請求項5】
前記機能膜溶液として粘度が10mPa・secから500mPa・secの範囲の機能膜溶液を用いることを特徴とする請求項4記載の機能膜の製造方法。
【請求項6】
前記基材上に複数の塗布領域が一定間隔で形成されており、前記塗布領域に前記機能膜溶液を塗布することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の機能膜の製造方法。
【請求項7】
複数の前記溶液吐出ノズルから前記機能膜溶液を吐出して、複数の前記塗布領域の一部に同時に前記機能膜溶液を塗布する際に、複数の前記溶液吐出ノズルの近傍に配置された複数の前記静圧ノズルから前記気体を噴出することを特徴とする請求項6記載の機能膜の製造方法。
【請求項8】
基材上に、機能膜の成分を溶媒に溶かした機能膜溶液を塗布して機能膜を製造する機能膜製造装置であって、前記基材を弾性変形可能に支持する弾性体層と、前記基材上方に間隙をあけて配置された前記機能膜溶液を吐出する溶液吐出ノズルと、前記溶液吐出ノズル近傍に配置された静圧ノズルとを備え、前記弾性体層に支持された前記基材と前記溶液吐出ノズルとを相対的に移動させるとともに、前記基材へ前記静圧ノズルから気体を噴出しその噴出された前記気体による加圧力で前記基材を変形させながら、前記機能膜溶液を前記基材に連続的に塗布することを特徴とする機能膜製造装置。
【請求項9】
前記弾性体層は基材載置ステージ上に設けられていることを特徴とする請求項8記載の機能膜製造装置。
【請求項10】
シート状の前記基材を搬送する1組のロールと、前記弾性体層が表面に設けられた基材押圧ロールとを備え、前記基材押圧ロールは、前記1組のロールにより搬送される前記基材を挟んで前記溶液吐出ノズルに対向して配置されることを特徴とする請求項8記載の機能膜製造装置。
【請求項11】
前記溶液吐出ノズルと前記基材との相対的な移動方向に沿って前記溶液吐出ノズルを挟むように複数の前記静圧ノズルが配置されており、前記相対的な移動方向の上流側の前記静圧ノズルから、前記相対的な移動方向の下流側の前記静圧ノズルから噴出される前記気体による加圧力よりも大きい加圧力で前記基材が加圧されるように前記気体を噴出させることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の機能膜製造装置。
【請求項12】
複数の前記溶液吐出ノズルおよび、複数の前記溶液吐出ノズル近傍に配置された複数の前記静圧ノズルを備え、複数の前記溶液吐出ノズルは、前記基材上に一定間隔で形成されている複数の塗布領域の一部に前記機能膜溶液が同時に塗布されるように配置されていることを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の機能膜製造装置。

【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−259998(P2010−259998A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112408(P2009−112408)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】