説明

機能膜付き金属箔、フレキシブル金属張り積層板、電子部品実装モジュールおよびその製造方法

【課題】粗面化処理することなく、平坦な表面を有する導電性金属箔を用いてなる、有機基材や異方導電フィルムとの密着性を向上させた金属箔部材を提供する。
【解決手段】導電性金属箔1の片面に、絶縁性機能膜2を有する機能膜付き金属箔であって、前記絶縁性機能膜が、一般式(I)RM(ORm−n…(I)(式中、Rは非加水分解性基、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Mはケイ素、チタン、ジルコニウムおよびアルミニウムの中から選ばれる金属原子を示し、mは金属原子Mの価数で、3または4であり、nは、mが4の場合は0〜2の整数、mが3の場合は0〜1の整数である。)で表される金属アルコキシド化合物を、加水分解−縮合反応してなるM−Oの繰り返し単位を主骨格とする縮合物を含む塗工液を用いて形成されてなる機能膜付き金属箔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能膜付き金属箔、それを用いたフレキシブル金属張り積層板、電子部品実装モジュールおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、熱融着性ポリイミドフィルムなどの絶縁性有機基材上に、金属箔を密着性よく積層することができる機能膜付き金属箔、前記絶縁性有機基材の少なくとも片面に、金属箔が密着性よく積層されてなるフレキシブル金属張り積層板、この金属張り積層板と異方導電フィルムを用いて作製された品質の良好な電子部品実装モジュール、およびこのものを効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高度化などの多様化に伴い、フレキシブル配線板の需要が増大している。このフレキシブル配線板は、一般に電気絶縁性フィルムと金属箔を必要により接着剤を介して積層一体化したフレキシブル印刷配線用基板(金属張り積層板)上に回路を作製し、このフレキシブル回路板に、該回路の保護用としてカバーレイを、半硬化状態の接着剤層を介して貼合・硬化させ、一体化してなるものである。
【0003】
このようなフレキシブル配線板は、屈曲性を有するため、電気機器や電子機器などの配線用として使用されており、この要求特性としては、接着性、耐熱性、耐溶剤性、電気特性、寸法安定性、長期耐熱性などに優れることが挙げられる。
【0004】
さらに、近年においては、このフレキシブル配線板は、折り畳み型の携帯電話部品のように、繰り返し屈曲、摺動部分の配線に多く使用されるようになり、また、その特徴を活かして、筐体空間への高密度配置のため、そのもの自体の薄さと、使用時における折り曲げなどの信頼性や極狭間隙への組み込みといった要望がますます強くなってきている。したがって、該フレキシブル配線板に対しては、前記の要求特性以外に、それ自体の薄さと共に、折り曲げ特性及び屈曲特性に優れることが要求される。
【0005】
一方、近年、電子部品の小型化、薄型化、高性能化が進んでおり、それに伴い、高密度実装技術の開発が活発に行われている。この電子部品の高密度実装には回路電極の微細化は必須であり、最小対応回路ピッチが100μm以上である従来のハンダやゴムコネクターでは対応が困難である。このため、分解能に優れた異方導電性の接着剤が多用されるようになってきた。この方法は、例えば液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)のガラス基板とTCP(Tape Carrier Package)またはFPC(Flexible Print Circuit)の微細電極同士を接続する際に、導電性微粒子を所定量含有した接着剤からなる異方導電フィルム(Anisotropic Conductive Film;ACF)を対峙させた電極の間に挟み、加熱および加圧を与えることによって両者の電極同士が電気的に接続されると共に、隣接する電極間には絶縁性を付与して、電子部品と電極とが接着固定されるものである。
【0006】
電子部品のACF実装は転写、位置合わせ、圧着の3つのプロセスから成っている。始めに一方の電子部品もしくは基板にACFを貼り付ける。次にもうひとつの電子部品もしくは基板の電極の位置合わせを行う。最後に150℃〜180℃程度の加熱と2〜3MPa程度の加圧を同時に行うことにより接続する電極間のACF樹脂が排除され、導電性微粒子が電極間に捕捉されることで、電極が電気的に導通する。その後ACF樹脂が硬化することで接続する電極間が物理的に接着される。このとき、樹脂流動、樹脂硬化および電極接続を行う。異方導電性は、向かい合う電極の導通と隣接した電極間の絶縁を導電粒子の直径3〜10μmおよびそれを充填する密度を最適化することにより発現する(非特許文献1参照)。
【0007】
ところで、このようなフレキシブル配線板に用いられるフレキシブル金属張り積層板としては、一般にポリイミドフィルムと銅箔を積層した銅張り積層板(CCL)が使用されている。この銅張り積層板においては、銅箔とポリイミドフィルムとの強固な密着性が要求されるために、例えば銅箔表面に対して、粗化処理とバリヤ処理を組み合わせた表面処理、あるいは粗化処理とバリヤ処理と防錆処理を組み合わせた表面処理が施されている(特許文献1参照)。このような表面処理により、銅箔とポリイミドフィルムのアンカー効果により密着性が改善され、また、エッチングにより銅を除去した後にも銅箔の粗面化形状がポリイミドフィルム表面に転写され凹凸形状が形成される。この形状により配線形成後に接着して使用される異方導電フィルムとの密着性もアンカー効果により確保され良好な密着性を示す。
【0008】
他方で、実際にフレキシブルプリント配線材料として使用する場合、近年、電気信号の高周波化が進められている中で、上記の様な手法による銅箔の粗面化を行う場合、送電信号の遅延が起こり課題となっている。このため、銅箔の表面(ポリイミドフィルムとの界面)を平坦な状態に保ったままで、ポリイミドフィルムとの密着性を確保する必要があるが、この場合は銅箔表面にシランカップリング剤処理などの表面処理を行い、ポリイミドフィルムとの化学的な相互作用を発現させて密着性を向上させる手法が提案されているが、本手法においては銅箔とポリイミドフィルムとの密着性は確保されるが、エッチング処理など施した後の異方導電フィルムとの密着性が充分ではない。
【0009】
【特許文献1】特開2003−86936号公報
【非特許文献1】MATERIAL STAGE Vol.7, No.11 2008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情のもとで、平坦な表面を有する導電性金属箔を用いる場合であっても、絶縁性有機基材や異方導電フィルムとの密着性が良好な金属箔部材、前記絶縁性有機基材の少なくとも片面に、前記金属箔部材が密着性よく積層されてなるフレキシブル金属張り積層板、異方導電フィルムとの密着性などの品質の良好な電子部品実装モジュールおよびこのものを効率よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、導電性金属箔の表面に、特定の金属アルコキシド化合物を加水分解−縮合反応させて得られた縮合物を含む塗工液を用いて形成されてなる絶縁性機能膜付き金属箔が、金属箔部材としてその目的に適合し得ること、そして、絶縁性有機基材の少なくとも片面に、上記機能膜付き金属箔を、該機能膜を介して積層することにより、所望のフレキシブル金属張り積層板が得られることを見出した。
【0012】
さらに、このフレキシブル金属張り積層板と異方導電フィルムを用い、特定の工程を施して電子部品を実装することにより、品質の良好な電子部品実装モジュールが効率よく得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1) 導電性金属箔の片面に、絶縁性機能膜を有する機能膜付き金属箔であって、前記絶縁性機能膜が、一般式(I)
M(ORm−n …(I)
(式中、Rは非加水分解性基、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Mはケイ素、チタン、ジルコニウムおよびアルミニウムの中から選ばれる金属原子を示し、mは金属原子Mの価数で、3または4であり、nは、mが4の場合は0〜2の整数、mが3の場合は0〜1の整数であり、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される金属アルコキシド化合物を、加水分解−縮合反応してなるM−Oの繰り返し単位を主骨格とする縮合物を含む塗工液を用いて形成されてなることを特徴とする、機能膜付き金属箔、
(2) 金属アルコキシドの金属原子Mが2種以上である、上記(1)項に記載の機能膜付き金属箔、
(3) 塗工液がさらに絶縁性粒子を含む、上記(1)または(2)項に記載の機能膜付き金属箔、
(4) 導電性金属箔が銅箔である、上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の機能膜付き金属箔、
(5) 絶縁性有機基材の少なくとも片面に、上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の機能膜付き金属箔を、該機能膜を介して積層してなることを特徴とする、フレキシブル金属張り積層板、
(6) 絶縁性有機基材が熱融着性ポリイミドフィルムである、上記(5)項に記載のフレキシブル金属張り積層板、
(7) 上記(5)または(6)項に記載のフレキシブル金属張り積層板、および異方導電フィルムを用いて、電子部品を実装してなることを特徴とする、電子部品実装モジュール、および
(8) (a)上記(5)または(6)項に記載のフレキシブル金属張り積層板の金属箔にエッチング処理を施して回路パターンを形成し、フレキシブル配線板を作製する工程、(b)前記フレキシブル配線板の回路パターン上に異方導電フィルムを仮圧着する工程、(c)前記異方導電フィルム上に電子部品を載置し、該電子部品の接続端子とフレキシブル配線板における回路パターンの所定の回路とが接続できるように位置合わせをする工程、および(d)加熱加圧処理により、異方導電フィルムのマトリックス樹脂を硬化させて本圧着させる工程、を含むことを特徴とする、電子部品実装モジュールの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱融着性ポリイミドなどの絶縁性有機基材上に、金属箔を密着性よく積層することができる機能膜付き金属箔、前記絶縁性有機基材の少なくとも片面に、金属箔が密着性よく積層されてなるフレキシブル金属張り積層板、この金属張り積層板の金属箔部分をパターニング処理したフレキシブル配線板と異方導電フィルムを用いてなる、品質の良好な電子部品実装モジュール、およびこの電子部品実装モジュールを効率よく製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の機能膜付き金属箔について説明する。
[機能膜付き金属箔]
本発明の機能膜付き金属箔は、導電性金属箔の片面に、絶縁性機能膜を有する機能膜付き金属箔であって、前記絶縁性機能膜が、下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物を、加水分解−縮合反応してなるM−Oの繰り返し単位を主骨格とする縮合物を含む塗工液を用いて形成されてなることを特徴とする。
【0016】
(導電性金属箔)
本発明の機能膜付き金属箔における導電性金属箔としては、特に制限はなく、従来金属張り積層板に用いられている金属箔の中から、任意のものを適宜選択して使用することができる。
【0017】
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等を用いることができるが、回路形成など後工程を考慮すると、銅箔であることが好ましく、ここで用いられる銅箔の種類としては圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、いずれも使用することができる。
【0018】
本発明に使用される金属箔の厚さは3〜35μmであることが好ましく、より好ましくは、5〜18μmである。金属箔の厚さが3μmより薄いと金属箔の機械的特性が低下するため、作業効率が著しく低下し、35μmより厚いとエッチング時に金属エッジをシャープにすることが困難になり、100μm以下のファインパターンの回路作製に際しては、目的の回路ピッチに調整するのが極めて難しくなる。
【0019】
(塗工液)
本発明の機能膜付き金属箔において、機能膜形成に用いられる塗工液は、一般式(I)
M(ORm−n …(I)
で表される金属アルコキシド化合物を、加水分解−縮合反応してなるM−Oの繰り返し単位を主骨格とする縮合物を含む塗工液である。
【0020】
上記一般式(I)において、Rは非加水分解性基、例えば炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基やアルケニル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。この他にも、水酸基やチオール、イミダゾールなどの置換基を含む官能基も挙げることが出来る。
【0021】
このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基としては、上記置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。この置換基を有するアルキル基の例としては、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ―アミノプロピル基、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル基、3−フェルアミノプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、また、このアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0022】
一方、Rは炭素数1〜6のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。Mは珪素、チタン、ジルコニウムおよびアルミニウムの中から選ばれる金属原子を示し、mは金属原子Mの価数で、3または4であり、nは、mが4の場合は0〜2の整数、mが3の場合は0〜1の整数である。Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、またORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
上記一般式(I)で表されるアルコキシド化合物において、Mが4価のチタン、珪素、ジルコニウムであって、mが4で、nが0〜3の整数である場合のアルコキシド化合物の例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、メチルトリエトキシチタン、メチルトリプロポキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、エチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、プロピルトリエトキシチタン、ブチルトリメトキシチタン、フェニルトリメトキシチタン、フェニルトリエトキシチタン、ビニルトリメトキシチタン、ビニルトリエトキシチタン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシチタン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシチタン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシチタン、ジメチルジメトキシチタン、メチルフェニルジメトキシチタンなど、および上記化合物におけるチタンを、シランまたはジルコニウムに置き換えた化合物を挙げることができる。
【0024】
また、上記一般式(I)で表されるアルコキシド化合物において、Mが3価のアルミニウムであって、mが3で、nが0〜1の整数である場合のアルコキシド化合物の例としては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、メチルジメトキシアルミニウム、メチルジエトキシアルミニウム、メチルジプロポキシアルミニウム、エチルジメトキシアルミニウム、エチルジエトキシアルミニウム、プロピルジエトキシアルミニウムなどを挙げることができる。
【0025】
これらのアルコキシド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記一般式(I)で表されるアルコキシド化合物の加水分解−縮合反応は、例えばアルコール系、セロソルブ系、ケトン系、エーテル系などの極性溶媒、特に好ましくはイソプロパノール中において、該アルコキシド化合物を、水又は水と塩酸、硫酸、硝酸などの酸、あるいは固体酸としてのカチオン交換樹脂を用い、通常0〜60℃、好ましくは20〜40℃の温度にて加水分解処理し、固体酸を用いた場合には、それを除去したのち、さらに、所望により溶媒を留去または添加することにより行うことができ、上記反応により、M−O(Mは上記と同じである。)の繰り返し単位を主骨格とする縮合物を所定濃度で含む塗工液を得ることができる。
【0027】
上記M−Oの繰り返し単位を主骨格とする縮合物は、銅箔などの金属箔に対する接着性に優れると共に、一般式(I)におけるORの加水分解により生じるOH基が残存しているために、ポリイミドフィルムなどの有機基材や、後述の異方導電フィルムにおけるマトリックス樹脂に対する接着性にも優れている。また、一般式(I)において、nが1以上の場合、Rとしてγ−グリシドキシプロピル基や、3,4−エポキシシクロヘキシル基などのエポキシ含有基、γ−アミノプロピル基、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル基や3−フェルアミノプロピル基を用いると、これらの基が該縮合物中に存在するため、ポリイミドフィルムなどの有機基材や異方導電フィルムに対する密着性がさらに向上する。
【0028】
当該塗工液における上記縮合物の濃度については、金属箔上に塗工可能な濃度であればよく、特に制限はないが、通常50.0〜0.05質量%程度、好ましくは30.0〜0.5質量%である。
【0029】
<絶縁性粒子>
当該塗工液には、金属箔、有機基材、異方導電フィルムなどに対する密着性を向上させる目的で、絶縁性粒子を含有させることができる。
【0030】
絶縁性粒子としては、アンカー効果による密着性向上の観点から、平均粒径が、好ましくは10〜2000nm、より好ましくは50〜500nmの範囲にあるシリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化イットリウム粒子、酸化セリウム粒子などを用いることができる。上記絶縁性粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アンカー効果を増大させるために、比較的平均粒径の小さい粒子が凝集した2次粒子を使用しても良い。
【0031】
このような絶縁性粒子を含む塗工液を、金属箔上に塗工した場合、金属箔上に表面が凹凸形状を有する絶縁性機能膜が形成し、絶縁性有機基材と貼り合せの際にアンカー効果が付与され、密着性よく接合する。また、金属箔と絶縁性有機基材とを熱により圧着する場合、使用する絶縁性有機基材、例えばポリイミドフィルムは表面に熱可塑性樹脂層を有するものが好ましく、熱圧着の際に上記有機基材の表面が可塑化して、金属箔表面に形成された絶縁性機能膜の凹凸粒子が、該有機基材の表面層に埋め込まれる。
【0032】
後述のように、配線形成するために前記金属箔のエッチング処理を行う際に、埋め込まれた粒子が有機基材表面に凹凸を形成し、この形成された凹凸が、異方導電フィルムを熱圧着する際にアンカー効果として働き、異方導電フィルムと前記有機基材との密着性を向上させる。凝集した2次粒子を使用する場合、形成される凹凸形状が高次構造となりより効果的である。
【0033】
また、より積極的に絶縁性有機基材面に凹凸構造を形成させるためには、塗工液の塗膜形成成分である、前記加水分解−縮合反応による縮合物として、金属箔エッチング時に該金属箔と同時にエッチングされる材料を採用することができる。これにより、エッチング時に有機基材表面に該粒子による凹凸を形成しやすくなる。
【0034】
さらに、添加する絶縁性粒子として、金属箔エッチング時に、該金属箔と同時にエッチングされる粒子を使用してもよい。この場合、添加した絶縁性粒子が、金属箔エッチング時に同時に溶解し、粒子形状とは対称となる凹凸が有機基材表面に形成され、アンカー効果として寄与する。
【0035】
このようなアンカー効果をより良く発揮させるためには、添加する絶縁性粒子は、その平均粒径が、金属箔上に形成された機能膜の厚さよりも大きいものであることが好ましい。
【0036】
当該塗工液における前記絶縁性粒子の含有量は、アンカー効果などの観点から、前記一般式(I)で表される金属アルコキシドの加水分解−縮合物100質量部に対して、通常5〜900質量部程度、好ましくは20〜500質量部である。
【0037】
当該塗工液を金属箔上に塗工する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えばスピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより塗工し、成膜したのち、自然乾燥または加熱乾燥することにより、所望の機能膜を形成することができる。機能膜の厚さは、通常0.01〜3.00μm程度、好ましくは0.05〜1.00μmである。
【0038】
(成分傾斜膜)
本発明の機能膜付き金属箔においては、機能膜として、以下に示すような成分傾斜膜を金属箔上に形成することができる。
【0039】
この成分傾斜膜は金属箔側が実質上金属酸化物成分であり、その反対側(開放面側)が実質上有機高分子化合物成分であって、両者の含有割合が膜厚方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有する機能膜である。
【0040】
このような成分傾斜膜は、金属箔との密着性が良好であると共に、絶縁性有機基材との密着性および異方導電フィルムとの密着性も良好である。
【0041】
当該成分傾斜膜は、例えば(A)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基を有する有機高分子化合物と共に、(B)加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物を加水分解処理してなるコーティング剤を用いて形成させることができる。
【0042】
前記(A)成分の加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物は、例えば(a)加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(b)金属を含まないエチレン性不飽和単量体を共重合させることにより、得ることができる。
【0043】
一方、(B)成分の加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物としては、テトラアルコキシシラン類、テトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類、トリアルコキシアルミニウム類などを挙げることができる。
【0044】
なお、前記コーティング剤については、特開2000−336281号公報に、その詳細が記載されている。
【0045】
このようにして作製された本発明の機能膜付き金属箔は、以下に示す金属箔が密着性よく積層されてなるフレキシブル金属張り積層板および品質の良好な電子部品実装モジュールを作製するための材料として用いることができる。
【0046】
[フレキシブル金属張り積層板]
本発明のフレキシブル金属張り積層板(以下、単に金属張り積層板と称することがある。)は、絶縁性有機基材の少なくとも片面に、前述した本発明の機能膜付き金属箔を、該機能膜を介して積層してなることを特徴とする。
【0047】
(絶縁性有機基材)
本発明の金属張り積層板に用いられる絶縁性有機基材については特に制限はなく、従来金属張り積層板において慣用されている絶縁性有機基材の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような絶縁性有機基材としては、例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム等が例示され、中でも耐熱性、寸法安定性及び機械特性などの観点からポリイミドフィルムが好ましい。このポリイミドフィルムとしては、表面が熱可塑性である熱融着性ポリイミドフィルムが、本発明の機能膜付き金属箔との密着性の観点から好ましい。
【0048】
前記ポリイミドフィルム表面の熱可塑性ポリイミドとしては、例えば、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル及び、3,3’−ジアミノベンゾフェノンから選ばれた少なくとも1種のジアミンと、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれた少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物から合成されたポリイミドなどを挙げることができる。
【0049】
本発明の金属張り積層板においては、前記絶縁性有機基材の片面に、前述した本発明の機能膜付き金属箔を、該機能膜を介して積層した構造を有するものであってもよいし、絶縁性有機基材の両面に、それぞれ機能膜付き金属箔を、該機能膜を介して積層した構造を有するものであってもよい。
【0050】
前記絶縁性有機基材と機能膜付き金属箔との積層は、該絶縁性有機基材の接合面と、機能膜付き金属箔の機能膜とを対面させて、例えば該絶縁性有機基材がポリイミドの場合は、加圧下、180〜350℃の温度において接合することにより、片面金属張り積層板、または両面金属張り積層板を作製することができる。
【0051】
図1および図2は、それぞれ本発明のフレキシブル金属張り積層板の異なる例の断面図であって、図1は、片面金属張り積層板の例を示し、図2は、両面金属張り積層板の例を示す。
【0052】
図1において、片面金属張り積層板10は、金属箔1と絶縁性有機基材3との間に、機能膜2が介在してなる構造を示している。一方、図2において、両面金属張り積層板20は、絶縁性有機基材13の両面に、それぞれ機能膜12aおよび12bを介して、金属箔11aおよび11bが積層されてなる構造を示している。
【0053】
なお、本発明の金属張り積層板においては、前述した本発明の機能膜付き金属箔を、該機能膜を介して積層した構造を有するもののほかに、前述した機能膜を有機基材表面側に形成した機能膜付き有機基材を、該機能膜を介して積層した構造を有するものであってもよく、同様の効果が得られる。
【0054】
このような構造を有する本発明のフレキシブル金属張り積層板は、以下に示す電子部品実装モジュール作製用の材料として用いることができる。
【0055】
[電子部品実装モジュール、その製造方法]
本発明の電子部品実装モジュールは、前述した本発明のフレキシブル金属張り積層板、および異方導電フィルムを用いて、電子部品を実装してなることを特徴とする。
【0056】
また、本発明の電子部品実装モジュールの製造方法は、(a)前述したフレキシブル金属張り積層板の金属箔にエッチング処理を施して回路パターンを形成し、フレキシブル配線板を作製する工程、(b)前記フレキシブル配線板の回路パターン上に異方導電フィルムを仮圧着する工程、(c)前記異方導電フィルム上に電子部品を載置し、該電子部品の接続端子とフレキシブル配線板における回路パターンの所定の回路とが接続できるように位置合わせをする工程、および(d)加熱加圧処理により、異方導電フィルムのマトリックス樹脂を硬化させて本圧着させる工程、を含むことを特徴とする。
【0057】
次に、図3は、本発明の電子部品実装モジュールの製造方法の1例を示す工程図であり、前記製造方法について、この図3を参照にして説明する。なお、図3は、フレキシブル金属張り積層板として、片面金属張り積層板を用いた例を示す。
【0058】
((a)工程)
本発明の電子部品実装モジュールの製造方法において、(a)工程は、前述した、金属箔1と絶縁性有機基材3との間に、機能膜2が介在してなる金属張り積層板10[(a)図参照]の金属箔1にエッチング処理を施して、回路パターン1aを形成しフレキシブル配線板30を作製する工程である[(b)図参照]。
【0059】
当該(a)工程における金属箔1のエッチング処理方法については特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。すなわち、まずフォトリソグラフィー技術により、所定のレジストパターンを形成し、次いで、このレジストパターンをマスクとして、金属箔1をエッチング処理して所定の回路パターン1aを形成すればよい。
【0060】
((b)工程)
この(b)工程は、前記(a)工程で作製したフレキシブル配線板30の回路パターン1a上に異方導電フィルム4を仮圧着する工程である[(c)図参照]。
【0061】
<異方導電フィルム>
当該(b)工程で用いる異方導電フィルム4に特に制限はなく、従来電子部品をフレキシブル配線板に実装する際に使用されている公知の異方導電フィルムの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0062】
異方導電フィルム4は、接着剤のマトリックス樹脂6中に、直径3〜10μm程度の大きさの導電粒子5を均一に分散した厚さ10〜50μm程度のフィルム状接着剤である。導電粒子5としては、ニッケル粒子やそれを金めっきしたもの、プラスチック核体にニッケル/金めっきした粒子などがあり、被着体の種類に応じて選択される。接着剤のマトリックス樹脂6としては、接続抵抗が低く、かつ耐熱性や接続信頼性に優れるエポキシ樹脂が、現在主流を占めている。
【0063】
適用する導電粒子5の粒径分布は、異方性発現のメカニズムからシャープなほどよく、材質は、例えばプリント基板(PWB)との接続にはニッケル粒子を、フレキシブルプリント配線板(FPC)とガラス基板電極との接続には、プラスチック核体にニッケル/金めっきした導電粒子を使用するのが有利である。
【0064】
この導電粒子に用いる核体の材質はプラスチックの方が接続時に偏平し薄膜電極にダメージを与えることなく、接触面積の大きな接続が出来、且つ導電粒子の変形回復力による電極への密着性により、高い接続信頼性が得られることからシリカ等の固い材質よりも良い。
【0065】
((c)工程)
この(c)工程は、異方導電フィルム4上に、電子部品7を載置し、該電子部品7の接続端子8と、フレキシブル配線板における回路パターン1aの所定の回路とが接続できるように位置合わせをする工程である[(d)図参照]。
【0066】
((d)工程)
この(d)工程は、前記(c)工程で位置合わせしたのち、2〜3MPa程度の加圧下、150〜180℃程度で加熱加圧処理を行い、異方導電フィルム4のマトリックス樹脂6を硬化させて本圧着させる工程である。
【0067】
上記の加熱加圧処理の際に、接着剤のマトリックス樹脂6は溶融し流動するので、導電粒子5は加圧された上下の接続端子8と回路パターン1a間にトラップされ、マトリックス樹脂は接続端子と回路パターン間のスペース部分に濡れ広がりながら充填する。またマトリックス樹脂は、通常熱硬化性があるので、溶融流動した直後から硬化反応を開始し、増粘、固化し、5〜10秒間程度の加熱・加圧を行う接続時間で接続プロセスは完了する[(e)図参照]。
【0068】
接続体は硬化した接着剤によって接着され、接続する電極同士は導電粒子を介して電気的な接続がなされ、隣接する電極間には絶縁性の接着剤が充填されているので絶縁が保持される。
【0069】
このようにして、品質の良好な電子部品実装モジュール40を効率よく作製することができる。
【実施例】
【0070】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、異方導電フィルム(ACF)の接着性の評価は、以下に示す方法により行った。
【0071】
(1)銅張り積層板の作製
銅箔と、熱融着性を有するポリイミドフィルム(宇部興産(株)製「ユーピレックスVT」、厚さ15μm)を重ね合わせてダブルベルトプレス装置(設定温度330℃、加圧時間2分)に投入し、銅張積層板を得た。
【0072】
(2)評価用フィルム基板の作製
上記(1)で得られた銅張積層板を、35質量%塩化第二鉄水溶液に30℃で30分間浸漬して銅箔をエッチング除去し、水洗した。次に日本化学産業(株)製「FLICKER−MH」に30℃で20分間浸漬し、3質量%塩酸水溶液でリンス後、水洗して、評価用フィルム基板を得た。
【0073】
(3)擬似ACFの作製
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1009」)22.5gを、トルエン13.75gとメチルエチルケトン13.75gとの混合溶媒に溶解させ、潜在性硬化剤(旭化成(株)製「HX3941HP」)22.5gとカップリング剤(信越シリコーン社製「KBM−403」)0.45gを加え、擬似ACF前駆体溶液を得た。
【0074】
離型フィルム(藤森工業(株)製「フィルムバイナ」)上に、擬似ACF前駆体溶液を液膜厚み75μmとなるように流延し、80℃の乾燥炉で9分間乾燥した。得られた塗膜を離型フィルムより剥離して、擬似ACFを得た。
【0075】
(4)擬似ACF圧着サンプルの作製
補強用の銅箔(日鉱金属(株)製「BHY−13H−T」、厚さ18μm)のマット面の上に、上記(3)で得た擬似ACFを、さらにその上に評価用フィルム基板を重ね合わせ、プレス機にて170℃、9MPa、5分の条件で圧着し、擬似ACF圧着サンプルを得た。
【0076】
(5)擬似ACF接着強度の測定
上記(4)で得た擬似ACF圧着サンプルを、(a)初期、(b)リフロー後、(c)PCT後の各状態で接着強度を測定した。ここで、(a)初期は擬似ACF圧着直後の状態であり、(b)リフロー後は最高250℃の温度プロファイルの乾燥炉に入れ、取り出して常温に戻した後の状態を指す。(c)PCT後は、(b)リフロー後のサンプルをさらに105℃/100%RHのプレッシャークッカー試験機に12時間投入し、取り出して常温に戻した後の状態を指す。
【0077】
擬似ACF圧着サンプルを2mm幅に切り、回転ドラム型支持具を備えた引張試験機にセットし、フィルム基板をチャックに挟み90°方向に引き剥がすことにより、擬似ACF接着強度を測定した。
【0078】
調製例1 縮合物1溶液の調製
テトライソプロポキシチタン(17.41g)をエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル(42.6g)に溶解させた。ここに、水(1.2g)、63質量%濃硝酸(2.8g)及びエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル(6.0g)を混合した溶液を滴下して、30℃で4時間縮合反応を行い、縮合物1溶液を調製した。
【0079】
調製例2 縮合物2溶液の調製
テトライソプロポキシチタン(7.31g)及びγ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(3.9g)をエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル(50.8g)に溶解させた。ここに、水(0.8g)及びエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル(7.3g)を混合した溶液を滴下して、30℃で4時間縮合反応を行い、縮合物2溶液を調製した。
【0080】
実施例1 アンカー効果なし
縮合物2溶液(2g)に対し、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル(12g)を混合して塗工液とした。得られた塗工液をマイヤーバー(No.5)で、銅箔(日鉱金属社製「BHYA−13H−HA」、18μm厚)に塗布し、120℃、1.5分間オーブンで乾燥した。得られた銅箔を用いて、『ACF密着性の評価』に従い密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
実施例2 アンカー効果あり
縮合物1溶液(0.6g)、200nmのシリカ微粒子をメタノールに分散(25質量%)させた分散液(1.4g)及びエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル(8.0g)を混合して塗工液とした。得られた塗工液をマイヤーバー(No.7)で銅箔(日鉱金属社製「BHYA−13H−HA」、18μm厚)に塗布し、120℃、1.5分間オーブンで乾燥した。得られた銅箔を用いて、『ACF密着性の評価』に従い密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
実施例3 アンカー効果あり
縮合物2溶液(0.6g)、200nmのシリカ微粒子をメタノールに分散(25質量%)させた分散液(1.4g)及びエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル(8.0g)を混合して塗工液とした。得られた塗工液をマイヤーバー(No.7)で銅箔(日鉱金属社製「BHYA−13H−HA」、18μm厚)に塗布し、120℃、1.5分間オーブンで乾燥した。得られた銅箔を用いて、『ACF密着性の評価』に従い密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
比較例1
表面処理を施していない銅箔(日鉱金属社製「BHYA−13H−HA」、18μm厚)を用いて、『ACF密着性の評価』に従い密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の機能膜付き金属箔は、熱融着性ポリイミドフィルムなどの絶縁性有機基材の少なくとも片面に、金属箔が密着性よく積層されてなるフレキシブル金属張り積層板を与えることができ、さらに、この金属張り積層板を用いて、品質の良好な電子部品実装モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明のフレキシブル金属張り積層板の1例を示す断面図である。
【図2】本発明のフレキシブル金属張り積層板の異なる例を示す断面図である。
【図3】本発明の電子部品実装モジュールの製造方法の1例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0087】
1、11a、11b 金属箔
1a 回路パターン
2、12a、12b 機能膜
3、13 絶縁性有機基材
4 異方導電フィルム
5 導電粒子
6 マトリックス樹脂
7 電子部品
8 接続端子
10 片面金属張り積層板
20 両面金属張り積層板
30 フレキシブル配線板
40 電子部品実装モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属箔の片面に、絶縁性機能膜を有する機能膜付き金属箔であって、前記絶縁性機能膜が、一般式(I)
M(ORm−n …(I)
(式中、Rは非加水分解性基、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Mはケイ素、チタン、ジルコニウムおよびアルミニウムの中から選ばれる金属原子を示し、mは金属原子Mの価数で、3または4であり、nは、mが4の場合は0〜2の整数、mが3の場合は0〜1の整数であり、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される金属アルコキシド化合物を、加水分解−縮合反応してなるM−Oの繰り返し単位を主骨格とする縮合物を含む塗工液を用いて形成されてなることを特徴とする、機能膜付き金属箔。
【請求項2】
金属アルコキシドの金属原子Mが2種以上である、請求項1に記載の機能膜付き金属箔。
【請求項3】
塗工液がさらに絶縁性粒子を含む、請求項1または2に記載の機能膜付き金属箔。
【請求項4】
導電性金属箔が銅箔である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機能膜付き金属箔。
【請求項5】
絶縁性有機基材の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機能膜付き金属箔を、該機能膜を介して積層してなることを特徴とする、フレキシブル金属張り積層板。
【請求項6】
絶縁性有機基材が熱融着性ポリイミドフィルムである、請求項5に記載のフレキシブル金属張り積層板。
【請求項7】
請求項5または6に記載のフレキシブル金属張り積層板、および異方導電フィルムを用いて、電子部品を実装してなることを特徴とする、電子部品実装モジュール。
【請求項8】
(a)請求項5または6に記載のフレキシブル金属張り積層板の金属箔にエッチング処理を施して回路パターンを形成し、フレキシブル配線板を作製する工程、(b)前記フレキシブル配線板の回路パターン上に異方導電フィルムを仮圧着する工程、(c)前記異方導電フィルム上に電子部品を載置し、該電子部品の接続端子とフレキシブル配線板における回路パターンの所定の回路とが接続できるように位置合わせをする工程、および(d)加熱加圧処理により、異方導電フィルムのマトリックス樹脂を硬化させて本圧着させる工程、を含むことを特徴とする、電子部品実装モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138422(P2010−138422A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313079(P2008−313079)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】