説明

欠陥解析システム、欠陥解析方法及び欠陥解析プログラム

【課題】 解析精度を向上し、且つ解析時間の増大を抑制する欠陥解析システム、欠陥解析方法及び欠陥解析プログラムを提供する。
【解決手段】 一連の製造工程で製造された製品のレイアウト情報に基づき、製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成するメッシュ候補作成部31と、一連の製造工程のそれぞれにおいて検査装置11〜1nによって検査された欠陥検査の結果及びテスタ2によって試験された製品の特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測し、その予測に基づき複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択するメッシュ選択部32と、最適メッシュで分割された領域毎に欠陥検査の結果及び特性試験の結果を照合して、製品の不良原因の欠陥を特定する特定部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の不良原因である欠陥の解析技術に係り、特に欠陥検査の結果と特性試験の結果を照合する欠陥解析システム、欠陥解析方法及び欠陥解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製品の不良原因を解析する方法として、製造工程途中の欠陥検査の結果(以下において、「検査データ」という。)と、製品の良否判定試験である電気的特性試験の結果(以下において、「テストデータ」という。)を照合して、製造工程中に生じる欠陥の致命性を定量化する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、「欠陥の致命性を定量化する」とは、検出された全欠陥に対する、製品の不良原因となった欠陥の割合(致命率)を推定することである。通常、欠陥の致命率は、製造工程毎に推定される。不良原因に直結する致命性の高い欠陥から対処することにより、製品の歩留りを早期に改善することができる。
【0004】
しかし、上記の方法における欠陥解析の解析精度は、製品の欠陥解析対象領域における欠陥の発生密度、及び電気的特性試験の特性不良の発生密度に大きく左右される。ここで、「解析精度」とは、欠陥解析によって不良原因と特定された欠陥が、実際に不良原因であることの正確さである。検査データとテストデータを照合する領域の面積が広く、且つ検出される欠陥の数が多い場合に、特性不良の原因である欠陥を正確に特定できずに解析精度が低下することがある。例えば、ウェハ上に形成される半導体装置のチップ単位に検査データとテストデータを照合する場合、チップ面積が広いほど高い解析精度を維持することが困難である。検査データとテストデータを照合する領域の面積を小さくすることにより、解析精度を上げることができる。しかし、照合の回数が増大するために、検査データとテストデータの照合に膨大な時間を要するという問題があった。
【特許文献1】特開平11−264797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、解析精度を向上し、且つ解析時間の増大を抑制する欠陥解析システム、欠陥解析方法及び欠陥解析プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、(イ)一連の製造工程で製造された製品のレイアウト情報に基づき、製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成するメッシュ候補作成部と、(ロ)一連の製造工程のそれぞれにおいて検査装置によって検査された欠陥検査の結果及びテスタによって試験された製品の特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測し、その予測に基づき複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択するメッシュ選択部と、(ハ)最適メッシュで分割された領域毎に欠陥検査の結果及び特性試験の結果を照合して、製品の不良原因の欠陥を特定する特定部とを備える欠陥解析システムが提供される。
【0007】
本願発明の他の態様によれば、検査装置、テスタおよび解析装置を備える欠陥解析システムを用いる欠陥解析方法であって、(イ)検査装置が一連の製造工程のそれぞれにおける欠陥検査を行うステップと、(ロ)テスタが一連の製造工程で製造された製品の特性試験を行うステップと、(ハ)解析装置のメッシュ候補作成部が、製品のレイアウト情報に基づき、製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成するステップと、(ニ)解析装置のメッシュ選択部が、欠陥検査の結果及び特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測し、その予測に基づき複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択するステップと、(ホ)解析装置の特定部が、最適メッシュで分割された領域毎に欠陥検査の結果及び特性試験の結果を照合して、製品の不良原因の欠陥を特定するステップとを含む欠陥解析方法が提供される。
【0008】
本願発明の更に他の態様によれば、(イ)検査装置に、一連の製造工程のそれぞれにおける欠陥検査を行わせる命令と、(ロ)テスタに、一連の製造工程で製造された製品の特性試験を行わせる命令と、(ハ)解析装置のメッシュ候補作成部に、製品のレイアウト情報に基づき、製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成させる命令と、(ニ)解析装置のメッシュ選択部に、欠陥検査の結果及び特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測させ、その予測に基づき複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択させる命令と、(ホ)解析装置の特定部に、最適メッシュで分割された領域毎に欠陥検査の結果及び特性試験の結果を照合して、製品の不良原因の欠陥を特定させる命令とを実行させるための欠陥解析プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解析精度を向上し、且つ解析時間の増大を抑制する欠陥解析システム、欠陥解析方法及び欠陥解析プログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本発明の実施の形態に係る欠陥解析システムは、図1に示すように、一連の製造工程で製造された製品のレイアウト情報に基づき、製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成するメッシュ候補作成部31と、一連の製造工程のそれぞれにおいて検査装置11〜1nによって検査された欠陥検査の結果及びテスタ2によって試験された製品の特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測し、その予測に基づき複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択するメッシュ選択部32と、最適メッシュで分割された領域毎に欠陥検査の結果及び特性試験の結果を照合して、製品の不良原因の欠陥を特定する特定部33とを備える(n:自然数)。メッシュ候補作成部31、メッシュ選択部32及び特定部33は、解析装置3の中央演算処理装置(CPU)30に含まれる。
【0012】
「欠陥解析対象領域」は、検出された欠陥と不良箇所の照合を行い、不良原因の欠陥を特定する領域である。例えば、半導体装置の欠陥検査で、ウェハ全体ではなく、ウェハの一部の領域だけについて欠陥検査が行われる場合がある。その場合に、ウェハの検査領域を欠陥解析対象領域とする。
【0013】
「メッシュ候補」は、欠陥解析対象領域を複数の格子状の領域に分割するメッシュの候補である。メッシュ候補のメッシュのピッチは、互いに他のメッシュ候補のメッシュのピッチと異なる。メッシュは、欠陥検査の結果(検査データ)に含まれる検出された欠陥の座標情報と特性試験の結果(テストデータ)に含まれる製品の不良箇所の座標情報を照合する際の、照合の単位として使用される。
【0014】
製品のレイアウト情報からメッシュ候補を作成するとき、例えば同一パターンの繰り返しからなるレイアウトにおいて、繰り返されるパターンを1つのメッシュとするメッシュ候補を作成する。半導体メモリが搭載されたチップの欠陥解析を行う場合には、例えば、16kビットのメモリブロックがレイアウトされた領域、或いは64kビットのメモリブロックがレイアウトされた領域等を、それぞれ1つのメッシュとする複数のメッシュ候補が作成される。
【0015】
又、特性試験によって画定される試験領域の情報をレイアウト情報として、メッシュ候補のメッシュのピッチを規定してもよい。具体的には、同一の領域に配置され、同時に試験される機能ブロックを1つのメッシュとするメッシュ候補を作成する。例えば、半導体集積回路の電気的特性を確認する試験が回路ブロック単位で行われる場合、1つの回路ブロックを1つのメッシュとしてメッシュ候補を作成する。或いは、16kビット、64kビット等のビット単位の一まとまりのメモリブロックをそれぞれ1つのメッシュとして、半導体メモリが搭載されたチップのメッシュ候補を作成する。
【0016】
図2(a)〜図2(d)にメッシュ候補の例を示す。図2(a)は、半導体製品が形成されるチップ100の欠陥解析対象領域を256個の領域に分割するメッシュ候補の例である。図2(b)は、チップ100の欠陥解析対象領域を64個の領域に分割するメッシュ候補の例である。図2(c)は、チップ100の欠陥解析対象領域を16個の領域に分割するメッシュ候補の例である。図2(d)は、チップ100の欠陥解析対象領域を1つのメッシュ候補とする例である。
【0017】
図1に示すように、メッシュ選択部32は、算出部321、予測部322及び決定部323を備える。
【0018】
算出部321は、検査データに含まれる欠陥のレイアウト上の位置情報及びテストデータに含まれる特性不良箇所のレイアウト上の位置情報に基づき、メッシュあたりに換算した欠陥密度及びメッシュあたりに換算した不良密度を複数のメッシュ候補についてそれぞれ算出する。検査データは、製品の製造工程途中の検査工程において、複数の検査装置11〜1nによって取得される製品の欠陥の位置情報、欠陥のサイズ情報、欠陥モード情報等を含む。欠陥モードは、製品に付着する異物、パターン欠損、傷等である。検査装置11〜1nは、欠陥観察装置、欠陥検査装置等である。テストデータは、例えば、不良箇所の位置情報や不良モード等を含む。不良モードは、例えば半導体装置のショート故障、オープン故障等である。
【0019】
ここで、「欠陥密度」は、各欠陥検査で検出された欠陥の数を、少なくとも1つの欠陥が存在するメッシュの数で割った値である。つまり、欠陥密度は、1つ以上の欠陥を含むメッシュのみを対象として、メッシュあたりに換算した欠陥の個数である。「不良密度」は、特性試験で検出された不良箇所の数を、少なくとも1つの不良が存在するメッシュの数で割った値である。つまり、不良密度は、1つ以上の不良を含むメッシュのみを対象として、メッシュあたりに換算した不良の個数である。
【0020】
予測部322は、欠陥密度及び不良密度に基づき、解析精度及び解析時間を複数のメッシュ候補についてそれぞれ予測する。欠陥の解析精度は欠陥密度及び不良密度にそれぞれ依存し、解析時間はメッシュの総数に依存する。通常、欠陥密度或いは不良密度欠陥が高いほど欠陥の解析精度は高くなる。又、メッシュの総数が多いほど解析時間は長くなる。
【0021】
決定部323は、複数のメッシュ候補から最適なメッシュのピッチを有する最適メッシュを決定する。具体的には、決定部323は、欠陥解析において目標値として設定された解析精度及び解析時間を満足するメッシュ候補を最適メッシュとして決定する。解析精度及び解析時間が目標値を満足するメッシュ候補が複数あるときは、例えば解析精度と解析時間のどちらか優先して最適メッシュを決定する。その場合、解析精度と解析時間のどちらを優先するかを予め決定部323に設定しておく。そして、解析精度がより高いメッシュ候補を最適メッシュとする。或いは、解析時間がより短いメッシュ候補を最適メッシュとする。
【0022】
解析装置3は、更に記憶装置40、入力装置50及び出力装置60を備える。記憶装置40は、検査データ領域401、テストデータ領域402、製品情報領域403、解析条件領域404、メッシュ候補領域405、欠陥密度領域406、不良密度領域407、解析精度領域408、解析時間領域409、最適メッシュ領域410及び不良原因欠陥領域411を備える。
【0023】
検査データ領域401は、検査装置11〜1nによって取得される製品の検査データを格納する。テストデータ領域402は、テスタ2によって取得される製品のテストデータを格納する。
【0024】
製品情報領域403は、欠陥解析対象の製品の製品情報が格納される。「製品情報」は、レイアウト情報等を含む製品の基本的な情報であり、例えば欠陥解析対象が半導体装置である場合、ウェハ上に形成されるチップ数やチップの配置座標、及びチップを構成する各機能ブロック群の配置座標等のレイアウト情報等である。ここで、機能ブロック群は、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)等である。
【0025】
解析条件領域404は、欠陥解析者が指定する解析条件を格納する。「解析条件」は、例えば欠陥解析対象の工程名、ロット番号、欠陥解析において目標とする解析精度、解析時間、及び欠陥解析対象領域の範囲等である。
【0026】
メッシュ候補領域405は、メッシュ候補作成部31が作成するメッシュ候補を格納する。欠陥密度領域406は、算出部321が算出する欠陥密度を格納する。不良密度領域407は、算出部321が算出する不良密度を格納する。解析精度領域408は、予測部322が予測する、各メッシュ候補の欠陥の解析精度を格納する。解析時間領域409は、予測部322が予測する、各メッシュ候補の欠陥の解析時間を格納する。最適メッシュ領域410は、メッシュ選択部32がメッシュ候補から選択する最適メッシュを格納する。不良原因欠陥領域411は、特定部33が特定する製品の不良原因である欠陥を格納する。
【0027】
入力装置50は、キーボード、マウス、ライトペン又はフレキシブルディスク装置等で構成される。入力装置50より欠陥解析実行者は、欠陥解析に使用する検査データやテストデータを指定したり、解析情報を設定できる。又、欠陥解析の実行や中止等の指示の入力も可能である。
【0028】
又、出力装置60としては、欠陥解析結果を表示するディスプレイやプリンタ、或いはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存する記録装置等が使用可能である。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、例えばコンピュータの外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等の電子データを記録することができるような媒体等を意味する。具体的には、フレキシブルディスク、CD−ROM、MOディスク等が「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」に含まれる。
【0029】
図3に、製品の検査データ及びテストデータを取得する処理フローの例を示す。図3の処理フローは、製品の製造工程が工程1〜工程nを含み、製造工程後に製品の特性試験が実施されることを示す。工程1〜工程nの各工程後に、図1に示した検査装置11〜1nがそれぞれ製品の欠陥検査を行う。検査装置11〜1nは、検査データD1〜Dnをそれぞれ取得する。製造工程後に、テスタ2が製品の特性試験を行い、テストデータTDを取得する。
【0030】
欠陥解析対象の製品が半導体装置の場合、工程1〜工程nは、例えば拡散領域形成工程、ゲート電極形成工程、或いは配線形成工程等である。又、製品の特性試験は、電気的に半導体装置の論理動作を確認する機能試験や半導体メモリ製品等に適用されるビルトイン・セルフテスト(BIST)等である。BISTによって、ビットレベルの詳細な不良位置を知ることができる。そのため、BISTが適用される製品では、ビット単位でメッシュを設定することが可能である。
【0031】
以下に、図1に示した欠陥解析システムによって欠陥解析を行う方法の例を、図4に示したフローチャートを用いて説明する。以下では、図3に示した処理フローが適用される製品(以下において、「製品A」とする。)の欠陥解析を行う例を説明する。
【0032】
(イ)ステップS11において、図1に示した検査装置11〜1nが工程1〜工程n後に製品Aの欠陥検査をそれぞれ行い、検査データD1〜Dnを取得する。検査データD1〜Dnは、入力装置50を介して検査データ領域401に格納される。
【0033】
(ロ)ステップS12において、テスタ2が製品Aの特性試験を行い、テストデータTDを取得する。テストデータTDは、入力装置50を介してテストデータ領域402に格納される。
【0034】
(ハ)ステップS13において、製品Aの製品情報が入力装置50を介して製品情報領域403に格納される。又、製品Aに対する解析条件が入力装置50を介して解析条件領域404に格納される。
【0035】
(ニ)ステップS14において、メッシュ候補作成部31が、製品Aの製品情報及び解析条件を、製品情報領域403及び解析条件領域404からそれぞれ読み出す。メッシュ候補作成部31は、製品情報に含まれる製品Aのレイアウト情報及び解析条件に含まれる製品Aの欠陥解析対象領域に基づき、例えば図2(a)〜図2(d)に示すようなメッシュ候補を作成する。作成されたメッシュ候補は、図1に示したメッシュ候補領域405に格納される。
【0036】
(ホ)ステップS15において、算出部321が、検査データD1〜Dn及びテストデータTDを検査データ領域401及びテストデータ領域402からそれぞれ読み出す。更に、算出部321は、解析条件及びメッシュ候補を解析条件領域404及びメッシュ候補領域405からそれぞれ読み出す。算出部321は、解析条件に含まれる欠陥解析対象領域を各メッシュ候補で分割し、検査データD1〜Dn及びテストデータTDに基づき、欠陥解析対象領域の欠陥密度及び不良密度を各メッシュ候補について算出する。既に述べたように、算出される欠陥密度は、1つ以上の欠陥を含むメッシュのみを対象として、メッシュあたりに換算した欠陥の個数であり、算出される不良密度は、1つ以上の不良を含むメッシュのみを対象として、メッシュあたりに換算した不良の個数である。算出された欠陥密度及び不良密度は、欠陥密度領域406及び不良密度領域407にそれぞれ格納される。
【0037】
(ヘ)ステップS16において、予測部322が、欠陥密度及び不良密度を欠陥密度領域406及び不良密度領域407からそれぞれ読み出す。予測部322は、欠陥密度及び不良密度に基づき、各メッシュ候補について欠陥の解析精度及び解析時間を予測する。例えば、予測部322は、図5(a)に示すメッシュあたりの欠陥密度と解析精度の関係を示すデータ、及び図5(b)に示すメッシュあたりの不良密度と解析精度の関係を示すデータを使用して、各メッシュ候補の欠陥の解析精度を予測する。既に述べたように、解析精度は、欠陥解析によって不良原因として特定された欠陥が実際に不良原因であることの正確さである。そのため、例えば不良原因と特定された欠陥のうち、欠陥が実際に不良原因である確率として解析精度は定義可能である。その場合、図5(a)及び図5(b)に示したように、解析精度の単位は「%」である。図5(a)及び図5(b)に示すように、一般に、メッシュあたりの欠陥密度或いは不良密度が低いほど解析精度は上がる。又、予測部322は、図6に示すメッシュの総数と解析時間の関係を示すデータを使用して、各メッシュ候補の欠陥の解析時間を予測する。図6に示すように、一般に、メッシュの総数が増加するほど解析時間は増大する。図5(a)、図5(b)及び図6に示したデータは、製品やメッシュのピッチに依存しないデータであり、過去の欠陥解析における実測値、或いはシミュレーションによって計算される理論値等が採用可能である。予測された解析精度及び解析時間は、解析精度領域408及び解析時間領域409にそれぞれ格納される。
【0038】
(ト)ステップS17において、決定部323が、解析精度及び解析時間を解析精度領域408及び解析時間領域409からそれぞれ読み出す。更に、決定部323は、欠陥解析において目標とする解析精度及び解析時間を解析条件領域404から読み出す。決定部323は、各メッシュ候補について予測された解析精度及び解析時間に基づき、欠陥解析において目標値とする解析精度及び解析時間を満足するメッシュ候補を最適メッシュとして決定する。決定された最適メッシュは、最適メッシュ領域410に格納される。
【0039】
(チ)ステップS18において、特定部33が、解析条件及び最適メッシュを解析条件領域404及び最適メッシュ領域410からそれぞれ読み出す。更に、特定部33は、検査データD1〜Dn及びテストデータTDを検査データ領域401及びテストデータ領域402からそれぞれ読み出す。特定部33は、欠陥解析対象領域を最適メッシュで分割し、分割された領域毎に検査データD1〜Dn及びテストデータTDを照合して、製品Aの不良原因の欠陥を特定する。不良原因の欠陥を特定する方法例は後述する。特定された不良原因の欠陥は、不良原因欠陥領域411に格納される。不良原因欠陥領域411に格納された不良原因の欠陥は、出力装置60を介して欠陥解析システムの外部に読み出すことが可能である。不良原因の欠陥が検出された工程を改善することにより、製品の歩留りを向上させることができる。
【0040】
図5(a)及び図5(b)に示したメッシュあたりの欠陥密度及び不良密度と解析精度の関係を示すデータ、及び図6に示したメッシュの総数と解析時間の関係を示すデータは、記憶装置40に格納されてもよいし、予測部322が備えてもよい。図5(a)、図5(b)及び図6に示したデータは、欠陥解析システムの外部から入力可能である。
【0041】
図7(a)〜図7(d)に、2Mビットのメモリが搭載されたチップ110に、上記で説明した欠陥解析方法を適用して作成したメッシュ候補の例を示す。図7(a)は、2Mビットを16kビットのメッシュで分割するメッシュ候補の例であり、メッシュの総数は256個である。図7(b)は、2Mビットを64kビットのメッシュで分割するメッシュ候補の例であり、メッシュの総数は64個である。図7(c)は、2Mビットを256kビットのメッシュで分割するメッシュ候補の例であり、メッシュの総数は16個である。図7(d)は、2Mビットを1つのメッシュとするメッシュ候補の例である。図7(a)〜図7(d)において、「×」印は検査装置11〜1nによって検出された欠陥の位置を示す。又、図7(a)〜図7(d)において、欠陥が存在するメッシュに斜線が施されている。
【0042】
図8(a)及び図8(b)は、図7(a)〜図7(d)に示した各メッシュ候補のメッシュあたりの欠陥密度における解析精度、及び不良密度における解析精度をそれぞれ示す。図8(a)及び図8(b)において、2Mビットを16kビット、64kビット、256kビット、2Mビットのメッシュでそれぞれ分割したメッシュ候補の解析精度を、「16k」、「64k」、「256k」、「2M」で示す。
【0043】
図8(a)及び図8(b)に示した例では、目標の解析精度を満足する、即ち解析精度が目標値以上のメッシュ候補は、2Mビットを16kビットのメッシュで分割するメッシュ候補と64kビットのメッシュで分割するメッシュ候補である。
【0044】
図9は、図7(a)〜図7(d)に示した各メッシュ候補のメッシュの総数と解析時間の関係を示す。図9において、2Mビットを16kビット、64kビット、256kビット、2Mビットのメッシュでそれぞれ分割したメッシュ候補の解析時間を、「16k」、「64k」、「256k」、「2M」で示す。図9に示した例では、目標の解析時間を満足する、即ち解析時間が目標値以下のメッシュ候補は、2Mビットを64kビットのメッシュで分割するメッシュ候補、256kビットのメッシュで分割するメッシュ候補、及び2Mビットを1つのメッシュとするメッシュ候補である。
【0045】
図8(a)、図8(b)及び図9から、目標とする解析精度及び解析時間を満足するメッシュ候補は、2Mビットを64kビットのメッシュで分割するメッシュ候補である。そのため、2Mビットを64kビットのメッシュで分割するメッシュを最適メッシュとして2Mビットを分割し、分割した領域、即ち64kビットのメッシュ毎に検査データD1〜Dn及びテストデータTDを照合する。
【0046】
一般に、メッシュのピッチを小さくすると1つのメッシュに含まれる欠陥及び不良の個数が減少するため、欠陥密度及び不良密度が減少する。その結果、図5(a)、図5(b)、図8(a)及び図8(b)に示したように、解析精度は向上する。しかし、メッシュのピッチを小さくするとメッシュの総数が増加し、図6及び図9に示したように、解析時間が増大する。つまり、解析精度の向上と解析時間の抑制はトレードオフの関係にある。図1に示した欠陥解析システムによれば、解析精度と解析時間のどちらを優先するかを目的に応じて設定することができる。
【0047】
次に、最適メッシュ毎に検査データD1〜Dn及びテストデータTDを照合して、不良原因である欠陥を特定する方法の例を説明する。以下は、欠陥の致命率を算出して、不良原因である欠陥を特定する方法の例である。
【0048】
ここで、欠陥の致命率KRは、式(1)〜(3)によって定義される。
【0049】

KR=1−(y1/y0) ・・・・・(1)
y1=NA/(NA+NC) ・・・・・(2)
y0=NB/(NB+ND) ・・・・・(3)

NA:欠陥が存在するが、不良は存在しない最適メッシュの総数。
【0050】
NB:欠陥及び不良が共に存在しない最適メッシュの総数。
【0051】
NC:欠陥及び不良が共に存在する最適メッシュの総数。
【0052】
ND:欠陥は存在しないが、不良は存在する最適メッシュの総数。
【0053】

各検査工程で検出される欠陥毎に、上記の式(1)〜(3)によって致命率を算出する。致命率が最も高い欠陥を、不良原因である欠陥と特定する。致命率の高い欠陥から対策を講ずることにより、製品の不良数を減少することができる。
【0054】
検査データD1〜DnとテストデータTDの照合を行う頻度は、不良品の発生率等に応じて設定可能である。例えば、製品の開発初期の段階では、製造工程が安定していない等の理由により、ロット、或いはウェハ単位で欠陥の発生率や製品の不良率が大きく異なる場合がある。そのため、ロット毎、或いはウェハ毎に検査データD1〜DnとテストデータTDの照合を行って、不良原因の欠陥の解析を実施する。その結果、製品の歩留りの早期向上を実現できる。一方、製造工程が安定した後は、欠陥の発生率や製品の不良率が一定になる。そのため、検査データD1〜DnとテストデータTDを照合する頻度を少なくすることが出来る。例えば照合を行う頻度を週一度、或いは月に一度程度にすることにより、欠陥解析を行うことによるコストを下げられる。
【0055】
以上に説明したように、工程1〜工程n後の各検査工程の検査データとテストデータを照合することにより、不良原因となる欠陥の発生した工程を特定できる。更に、欠陥モード或いは不良モード毎に検査データとテストデータを照合することにより、より詳細な欠陥解析が可能である。
【0056】
本発明の実施の形態に係る欠陥解析システムでは、複数のメッシュ候補を作成し、解析精度及び解析時間が目標値を満足するメッシュ候補を最適メッシュとして選択する。そして、欠陥解析対象領域を最適メッシュで分割し、分割した領域毎に検査データとテストデータを照合することより、不良原因の欠陥が特定される。その結果、図1に示した欠陥解析システムによれば、解析精度を向上し、且つ解析時間の増大を抑制できる。
【0057】
図4に示した一連の欠陥解析操作は、図4と等価なアルゴリズムのプログラムにより、図1に示した欠陥解析システムを制御して実行できる。このプログラムは、図1に示した欠陥解析システムを構成する記憶装置40に記憶させればよい。又、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存し、この記録媒体を図1に示した記憶装置40に読み込ませることにより、本発明の一連の欠陥解析操作を実行することができる。
【0058】

(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0059】
既に述べた実施の形態の説明において、工程1〜工程nはそれぞれ複数の工程を含む工程群であってもよい。工程群毎に欠陥検査を行うことにより、検査時間及び検査コストを抑制することができる。又、本発明は、半導体装置、液晶パネル等の基板上に形成される製品等の欠陥解析に適用できることは、上記説明から容易に理解できるであろう。欠陥データ以外の検査工程の結果とテストデータを照合する場合にも、本発明は適用可能である。
【0060】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る欠陥解析システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る欠陥解析方法によって作成されるメッシュ候補の例であり、図2(a)はチップ100を256個に分割するメッシュ候補の例、図2(b)はチップ100を64個に分割するメッシュ候補の例、図2(c)はチップ100を16個に分割するメッシュ候補の例、図2(d)はチップ100を1個のメッシュとするメッシュ候補の例である。
【図3】本発明の実施の形態に係る検査データ及びテストデータを取得する処理フローの例である。
【図4】本発明の実施の形態に係る欠陥解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る欠陥解析方法により算出される解析精度のデータの例であり、図5(a)は欠陥密度と解析精度の関係を示すデータ、図5(b)は不良密度と解析精度の関係を示すデータである。
【図6】本発明の実施の形態に係る欠陥解析方法により算出されるメッシュの総数と解析時間の関係を示すデータの例である。
【図7】本発明の実施の形態に係る欠陥解析方法によって作成されるメッシュ候補の例であり、図7(a)は2Mビットを16kビットで分割するメッシュ候補の例、図7(b)は2Mビットを64kビットで分割するメッシュ候補の例、図7(c)は2Mビットを256kビットで分割するメッシュ候補の例、図7(d)は2Mビットを1つのメッシュとするメッシュ候補の例である。
【図8】本発明の実施の形態に係る欠陥解析方法に用いる解析精度のデータの他の例であり、図8(a)は欠陥密度と解析精度の関係を示すデータ、図8(b)は不良密度と解析精度の関係を示すデータである。
【図9】本発明の実施の形態に係る欠陥解析方法に用いるメッシュの総数と解析時間の関係を示すデータの他の例である。
【符号の説明】
【0062】
11〜1n…検査装置
2…テスタ
3…解析装置
31…メッシュ候補作成部
32…メッシュ選択部
321…算出部
322…予測部
323…決定部
33…特定部
401…検査データ領域
402…テストデータ領域
403…製品情報領域
404…解析条件領域
405…メッシュ候補領域
406…欠陥密度領域
407…不良密度領域
408…解析精度領域
409…解析時間領域
410…最適メッシュ領域
411…不良原因欠陥領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の製造工程で製造された製品のレイアウト情報に基づき、前記製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成するメッシュ候補作成部と、
前記一連の製造工程のそれぞれにおいて検査装置によって検査された欠陥検査の結果及びテスタによって試験された前記製品の特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を前記複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測し、該予測に基づき前記複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択するメッシュ選択部と、
前記最適メッシュで分割された領域毎に前記欠陥検査の結果及び前記特性試験の結果を照合して、前記製品の不良原因の欠陥を特定する特定部
とを備えることを特徴とする欠陥解析システム。
【請求項2】
前記メッシュ選択部が、
前記欠陥検査の結果及び前記特性試験の結果に基づき、メッシュあたりに換算した欠陥密度及びメッシュあたりに換算した不良密度を前記複数のメッシュ候補についてそれぞれ算出する算出部と、
前記欠陥密度及び前記不良密度に基づき、前記解析精度及び前記解析時間を前記複数のメッシュ候補のそれぞれについて予測する予測部と、
前記複数のメッシュ候補から、前記解析精度及び前記解析時間が目標値を満足する前記最適メッシュを決定する決定部
とを備えることを特徴とする請求項1に記載の欠陥解析システム。
【請求項3】
検査装置、テスタおよび解析装置を備える欠陥解析システムを用いる欠陥解析方法であって、
前記検査装置が一連の製造工程のそれぞれにおける欠陥検査を行うステップと、
前記テスタが前記一連の製造工程で製造された製品の特性試験を行うステップと、
前記解析装置のメッシュ候補作成部が、前記製品のレイアウト情報に基づき、前記製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成するステップと、
前記解析装置のメッシュ選択部が、前記欠陥検査の結果及び前記特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を前記複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測し、該予測に基づき前記複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択するステップと、
前記解析装置の特定部が、前記最適メッシュで分割された領域毎に前記欠陥検査の結果及び前記特性試験の結果を照合して、前記製品の不良原因の欠陥を特定するステップ
とを含むことを特徴とする欠陥解析方法。
【請求項4】
前記複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択するステップは、
算出部が、前記欠陥検査の結果及び前記特性試験の結果に基づき、メッシュあたりに換算した欠陥密度及びメッシュあたりに換算した不良密度を前記複数のメッシュ候補についてそれぞれ算出するステップと、
予測部が、前記欠陥密度及び前記不良密度に基づき、前記解析精度及び前記解析時間を前記複数のメッシュ候補のそれぞれについて予測するステップと、
決定部が、前記複数のメッシュ候補から、前記解析精度及び前記解析時間が目標値を満足する前記最適メッシュを決定するステップ
とを含むことを特徴とする請求項3に記載の欠陥解析方法。
【請求項5】
検査装置に、一連の製造工程のそれぞれにおける欠陥検査を行わせる命令と、
テスタに、前記一連の製造工程で製造された製品の特性試験を行わせる命令と、
解析装置のメッシュ候補作成部に、前記製品のレイアウト情報に基づき、前記製品の欠陥解析対象領域を分割するメッシュ候補を異なるピッチで複数作成させる命令と、
解析装置のメッシュ選択部に、前記欠陥検査の結果及び前記特性試験の結果に対して、欠陥の解析精度及び解析時間を前記複数のメッシュ候補を用いてそれぞれ予測させ、該予測に基づき前記複数のメッシュ候補から最適メッシュを選択させる命令と、
解析装置の特定部に、前記最適メッシュで分割された領域毎に前記欠陥検査の結果及び前記特性試験の結果を照合して、前記製品の不良原因の欠陥を特定させる命令
とを実行させるための欠陥解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−81055(P2007−81055A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265654(P2005−265654)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】