説明

歌唱支援装置

【課題】リズム感の乏しい歌唱者によるカラオケの歌唱を好適に支援する仕組みを提供すること。
【解決手段】カラオケの歌唱音声から特定したリズムと楽曲データの歌唱メロディトラックから特定した基準となるリズムとのずれ量を検出する。そして、検出したずれ量が所定値よりも大きくなった時、刺激制御部24による制御の下に電気刺激生成部25が生成した低周波電流を、電極26を介して歌唱者の皮膚に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歌唱支援装置にかかり、特に、リズム感の乏しい歌唱者の歌唱を支援する歌唱支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カラオケ歌唱の嗜好性や利便性を高めるための様々な仕組みが考案されてきた。その結果、今日のカラオケ装置の多くは、歌唱する楽曲の伴奏と歌詞を提供するという必須の機能のみならず、歌唱の巧拙を評価したり、歌唱者の歌唱音声の声質を別人のものに変換してから放音したり、あるいは歌詞のスクリプトを点字列化して提示するといったような(この技術の詳細については「特許文献1」を参照)、各種の予備的な機能をも搭載するに至っている。
【特許文献1】特開平10−340093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、カラオケを利用する歌唱者の中には、カラオケ装置から提供される伴奏を聴取しただけでは自身が歌唱する楽曲のリズムを取ることができない者も少なからず存在する。しかしながら、このようなリズム感の乏しい歌唱者の歌唱を好適に支援する仕組みを搭載したカラオケ装置はこれまでに考案されていなかった。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、リズム感の乏しい歌唱者によるカラオケの歌唱を好適に支援する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の好適な態様である歌唱支援装置は、歌唱曲の楽曲データを記憶する記憶手段と、前記記憶された楽曲データを読み出し、読み出した楽曲データから歌唱の基準となるテンポを特定する基準テンポ特定手段と、前記基準テンポ特定手段が特定したテンポに応じた所定の刺激を歌唱者の皮膚に伝達する刺激伝達手段とを備える。
【0005】
この態様において、歌唱者の歌唱音声を入力する入力手段と、前記入力された歌唱音声のテンポを特定する歌唱テンポ特定手段とを更に備え、前記刺激伝達手段は、前記基準テンポ特定手段が特定したテンポと前記歌唱テンポ特定手段が特定したテンポのずれ量が所定値よりも大きい時、前記所定の刺激を歌唱者の皮膚に伝達するようにしてもよい。
【0006】
また、前記刺激伝達手段は、歌唱者の皮膚に低周波電流を伝達する電極と、前記基準テンポ特定手段が特定したテンポを振幅に変換して得た低周波電流を前記電極に供給する手段とを有してもよい。
【0007】
更に、前記刺激伝達手段は、歌唱者の皮膚に振動を伝達するバイブレータと、前記基準テンポ特定手段が特定したテンポに応じて前記バイブレータの振動の大きさを制御する手段とを有してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、リズム感の乏しい歌唱者によるカラオケの歌唱を好適に支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1実施形態)
本願発明の第1実施形態について説明する。まず、本実施形態の特徴について、図1を参照して概説する。
図1は、本実施形態にかかるカラオケ装置の特徴を表す概念図である。図に示すように、本実施形態は、カラオケ歌唱曲の楽曲データから取得した伴奏をスピーカから放音し、歌詞をモニタに表示するだけでなく、楽曲データから歌唱の基準となるリズムを特定し、そのリズムを低周波電流として電極から歌唱者へ伝達するようにした点に特徴を有する。
【0010】
図2は、カラオケ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。以下に各部を説明する。
CPU11は、RAM12をワークエリアとして利用し、ROM13に格納されている各種プログラムを実行することで装置各部を制御する。通信I/F(インタフェース)14は、図示しないホストコンピュータより楽曲データを受信し、受信した楽曲データをHDD(Hard Disk Drive)15へと転送する。
【0011】
この楽曲データは、ヘッダと複数のトラックとを有している。ヘッダには、楽曲の曲番号、曲名、ジャンルなどといった各種属性を特定するデータのほか、標準テンポデータとタイムベースデータが含まれている。標準テンポデータは、楽曲の標準的なテンポを1分あたりの四分音符の数として表したデータである。タイムベースデータは、楽曲の再生時における4部音符1つあたりのティック数を表したデータである。一方、ヘッダに続く複数のトラックには、楽曲の歌詞を表すスクリプトデータを記述した歌詞トラック、伴奏のメロディを表すMIDI(Musical Instrument Digital Interface:登録商標)データを記述した伴奏メロディトラック、歌唱のメロディを表すMIDIデータを記述した歌唱メロディトラックがある。
【0012】
操作部16は、各種キーを有する操作パネルである。歌唱者は、この操作部16を用いて自らが歌唱する楽曲を指定する。
歌唱者が楽曲を指定すると、指定された楽曲の楽曲データがHDD15からRAM12内のMIDI記憶領域に転送される。CPU11は、MIDI記憶領域に楽曲データが転送されると、その楽曲データのヘッダに含まれる標準テンポデータとタイムベースデータとを基にトラックを参照する時間間隔を決定し、決定した時間間隔が経過する毎に各トラックからデータを順次読み出していく。そして、歌詞トラックから読み出したスクリプトデータを表示制御部17へ、伴奏メロディトラックから読み出したMIDIデータを音源装置19へ、歌唱メロディトラックから読み出したMIDIデータを刺激制御部24へ夫々供給する。
【0013】
表示制御部17は、自身に供給されたスクリプトデータが示す歌詞を所定の映像と共にモニタ18へ表示させる。また、音源装置19は、自身に供給されたMIDIデータと対応する楽音信号を生成して効果用DSP20へ出力する。効果用DSP20にてリバーブやエコーといった効果を付与された楽音信号は、アンプ21による増幅を経てスピーカ22から伴奏音として放音される。刺激制御部24は、自身に供給されたMIDIデータに応じて電気刺激生成部25の動作を制御する。この刺激制御部24の振る舞いの詳細については後述する。
歌唱者は、スピーカ22から放音される伴奏音を聴取しつつ、モニタ18に表示される歌詞を歌唱する。歌唱者の歌唱音声はマイク23により集音され、アンプ21を経由してスピーカ22から放音される。
【0014】
ここで、本実施形態においては、歌唱者の皮膚の表面に電極26が付されることになっている。この電極26は、熱可塑性樹脂のケースに導電性樹脂からなるパッドを収めてなり、電気刺激生成部25から供給される低周波電流を歌唱者の皮膚の表面に伝達する。そして、電気刺激生成部25の動作を制御する手段である刺激制御部24は、CPU11からMIDIデータが供給されると、そのMIDIデータがノートオンイベントを示すものであるか否か判断し、ノートオンイベントを示すものであると判断した時、低周波電流の生成を指示する制御信号を電気刺激生成部25へ直ちに供給する。この結果、歌唱者が歌詞を発音すべきタイミングが到来するたびに、電気刺激生成部25が生成した低周波電流が電極26を通じて歌唱者の皮膚へ伝達されることなる。
【0015】
以上説明した本実施形態では、歌唱者が歌詞を発音すべきタイミングが到来するたびに、低周波電流が電極26を通じて歌唱者の皮膚に伝達されるようになっている。従って、リズム感の乏しい歌唱者であっても、自らの皮膚へ伝達される刺激に合わせて歌詞を発音していくことにより、リズミカルな歌唱を行うことができる。
【0016】
(第2実施形態)
本願発明の第2実施形態について説明する。図3は、本実施形態の特徴を示す概念図である。図に示すように、本実施形態は、マイクが集音する歌唱音声から特定したリズムと楽曲データから特定したリズムのずれ量を検出し、検出したずれ量が所定値よりも大きくなっている間だけ低周波電流を伝達するようにした点に特徴を有する。
本実施形態にかかるカラオケ装置のハードウェア構成は第1実施形態と同様なので、ここでは各部の説明を割愛する。
【0017】
本実施形態においては、図2に示すマイク23が集音した歌唱音声の音声信号が刺激制御部24にも供給されるようになっている。そして、刺激制御部24は、以下に示す特徴的な処理を行う。
図4は、刺激制御部24の処理を示すフローチャートである。図に示す処理は、楽音データの歌唱メロディトラックから読み出されたMIDIデータが供給されるたびに実行される。MIDIデータが供給されると、刺激制御部24は、そのMIDIデータがノートオンを示すものであるか否か判断する(Sa1)。ステップSa1にて、MIDIデータがノートオンを示すものであると判断した刺激制御部24は、そのMIDIデータと対応する音声を発音する基準となるタイミングを算定する(Sa2)。基準となるタイミングは、音源装置19による波形データの読出しや効果用DSP20の効果付与に要する予測時間などを基に算定するとよい。
【0018】
発音の基準となるタイミングを算出した刺激制御部24は、その後にマイク23から供給される音声信号の波形の振幅が所定値を上回ったタイミングを、歌唱音声が実際に発音されたタイミングとして特定する(Sa3)。
更に、刺激制御部24は、ステップSa2で算出したタイミングとステップSa3で特定したタイミングのずれ量を検出する(Sa4)。
【0019】
刺激制御部24は、ステップSa4で検出したずれ量が所定値より大きいか否か判断する(Sa5)。ずれ量が所定値より大きければ、適切なタイミングで発音が行われていない、つまり、歌唱者の歌唱のリズムが歌唱メロディトラックのリズムから外れているということになる
刺激制御部24は、ずれ量が所定値より大きいと判断した時、低周波電流の生成を指示する制御信号を電気刺激生成部25へ供給する(Sa6)。制御信号の供給を受けた電気信号生成装置は、電極26を介して低周波電流を歌唱者に伝達する。
【0020】
以上説明した本実施形態では、楽曲データの歌唱メロディトラックを基に歌唱音声を発音する基準となるタイミングを算出する一方で、マイク23から入力された音声信号を基に歌唱者が音声を実際に発音したタイミングを特定する。そして、両者のタイミングのずれ量が所定値よりも大きくなった時だけ低周波電流が歌唱者に伝達されるようになっている。従って、歌唱者は、自らの歌唱のリズムが外れてきていることを電極26からの刺激を通じて了解することができる。
【0021】
(他の実施形態)
本実施形態は、種々の変形実施が可能である。
上記実施形態にかかるカラオケ装置は電気刺激生成部25と電極26とを備えており、楽曲データの歌唱メロディトラックを基に特定したリズムを電極26を介した低周波電流として歌唱者に伝達していた。これに対し、歌唱の基準となるリズムを触覚的に伝達し得る他の手段で電気刺激生成部25と電極26を置き換えてもよい。図5は、かかる変形例となるカラオケ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図に示す変形例においては、電気刺激生成部25と電極26がバイブレータ27に置き換えられている。そして、このバイブレータ27は、刺激制御部24による制御の下、歌唱者の皮膚に振動を伝達する。
【0022】
更に、基準となるリズムと歌唱者の歌唱音声のリズムのずれ量の大きさを、低周波電流の振幅やバイブレータの振動の大きさに変換するようにしてもよい。この変形例によれば、歌唱音声のリズムのずれ量に比例して振幅や振動の大きさも大きくなるため、リズム感の乏しい歌唱者の歌唱をより好適に支援することができる。
上記実施形態では、歌唱者の皮膚に刺激を伝達する手段である電極26やバイブレータ27とマイク23とを別手段として構成していたが、マイク23に電極26やバイブレータ27を埋設するなどして両者を一体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の特徴を示す概念図である。
【図2】カラオケ装置のハードウェア構成図である。
【図3】第2実施形態の特徴を示す概念図である。
【図4】刺激制御部の処理を示すフローチャートである(第2実施形態)。
【図5】カラオケ装置のハードウェア構成図である(変形例)。
【符号の説明】
【0024】
11…CPU、12…RAM、13…ROM、15…HDD、16…操作部、17…表示制御部、18…モニタ、19…音源装置、20…効果用DSP、21…アンプ、22…スピーカ、23…マイク、24…刺激制御部、25…電気刺激生成部、26…電極、27…バイブレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌唱曲の楽曲データを記憶する記憶手段と、
前記記憶された楽曲データを読み出し、読み出した楽曲データから歌唱の基準となるテンポを特定する基準テンポ特定手段と、
前記基準テンポ特定手段が特定したテンポに応じた所定の刺激を歌唱者の皮膚に伝達する刺激伝達手段と
を備えた歌唱支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歌唱支援装置において、
歌唱者の歌唱音声を入力する入力手段と、
前記入力された歌唱音声のテンポを特定する歌唱テンポ特定手段と
を更に備え、
前記刺激伝達手段は、
前記基準テンポ特定手段が特定したテンポと前記歌唱テンポ特定手段が特定したテンポのずれ量が所定値よりも大きい時、前記所定の刺激を歌唱者の皮膚に伝達する
歌唱支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歌唱支援装置において、
前記刺激伝達手段は、
歌唱者の皮膚に低周波電流を伝達する電極と、
前記基準テンポ特定手段が特定したテンポを振幅に変換して得た低周波電流を前記電極に供給する手段と
を有する歌唱支援装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の歌唱支援装置において、
前記刺激伝達手段は、
歌唱者の皮膚に振動を伝達するバイブレータと、
前記基準テンポ特定手段が特定したテンポに応じて前記バイブレータの振動の大きさを制御する手段と
を有する歌唱支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−308650(P2006−308650A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127804(P2005−127804)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】