説明

止水処理方法、ワイヤハーネス、止水材注入装置及びワイヤハーネスの製造装置

【課題】設備費を抑えつつ容易に処理することができ、しかも、装置の小型化及び自動化が容易な止水処理方法、ワイヤハーネス、止水材注入装置及びワイヤハーネスの製造装置を提供すること。
【解決手段】芯線12の周囲を外被13で覆った電線11の一端11aに圧着端子14が接続されたワイヤハーネス10の止水処理方法であって、電線11の一端11aにおける端面から芯線12間へ止水材を注入する止水材注入工程と、電線11の一端11aにおける外被13を切断除去して芯線12を露出させる皮むき工程と、芯線12を露出させた電線11の一端11aに圧着端子14を圧着して取り付ける端子圧着工程と、を含むこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端末を止水処理する止水処理方法、ワイヤハーネス、止水材注入装置及びワイヤハーネスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の端末を止水処理するために、加圧室内と加圧室外とに圧力差が生じるように加圧室外から加圧室内に加圧気体を送り込み且つ加圧気体を絶縁被覆内を通して被覆電線の加圧室外に位置する部分から排出し、芯線の露出部分に止水材を配置し、止水材を芯線の露出部分から芯線の間に強制的に浸透させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、互いに突き合わされる一対の型の間にワイヤハーネスの一部を挟み、型の間に形成される加圧空間内に芯線の露出部分を配置させて密封し、加圧空間内に止水材を充填し、加圧空間内を加圧する止水方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、成形金型の成型空洞であるモールド部の底面に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端子接続部の底面を密接させてセットし、モールド部に溶融状態の高粘度シール樹脂を射出して注入することにより、この高粘度シール樹脂を端子接続部の底面を除く両側面と上面の三方に溶着させて冷却硬化後に離型することも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−141569号公報
【特許文献2】特開2008−186675号公報
【特許文献3】特開2001−167821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1から3に記載の技術では、端子へ止水材が付着してしまう。この端子への止水材の付着を抑えることは困難であり、この端子に付着した止水材を拭き取るという煩雑な作業を要する。また、端子の圧着後に、電線を止水するので、端子の大きさ等を考慮して設備を大型化せざるを得ず、よって、設備費が嵩み、また、自動機への組み込みが困難であった。
【0007】
特に、特許文献2,3に記載の技術では、金型に液漏れ防止のための複雑なシール構造を要する。また、複数本(2本)の電線の端部に端子を圧着するダブリ圧着の場合、そのシール構造がさらに複雑化し、設備費が嵩んでしまう。また、金型にシール材が付着することがあるため、このシール材の拭き取り作業を要する。しかも、止水材供給路に止水材が残留するため、止水材の無駄が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、設備費を抑えつつ容易に処理することができ、しかも、装置の小型化及び自動化が容易な止水処理方法、ワイヤハーネス、止水材注入装置及びワイヤハーネスの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る止水処理方法は、下記(1)を特徴としている。
(1) 導体の周囲を外被で覆った電線の一端に圧着端子が接続されたワイヤハーネスの止水処理方法であって、
前記電線の一端における端面から前記導体間へ止水材を加圧して注入する止水材注入工程と、
前記電線の一端における前記外被を切断除去して前記導体を露出させる皮むき工程と、
前記導体を露出させた前記電線の一端に圧着端子を圧着して取り付ける端子圧着工程と、を含むこと。
【0010】
上記(1)の止水処理方法では、電線の一端における端面から導体間へ止水材を、電線周囲の気圧差でなく加圧して注入し、電線の一端における外被を切断除去して導体を露出させ、圧着端子を圧着して取り付けるので、圧着端子を圧着した後に導体へ止水材を充填する場合と比較し、圧着端子への止水材の付着を防止することができる。これにより、圧着端子に付着した止水材を拭き取る煩雑な拭き取り作業を不要とすることができ、容易に止水処理を行うことができる。また、導体を露出させる前に止水材を注入するので、導体のばらけによって作業が滞るような不具合なく円滑に作業を行うことができる。しかも、導体を露出させる前に止水材を加圧して注入するので、圧力差のロスを抑え、導体間への止水材の浸透時間を短縮させて作業性を向上させることができる。
【0011】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記(2)を特徴としている。
(2) 導体の周囲を外被で覆った電線の一端における端面から前記導体間へ止水材が加圧されて注入され、
前記電線の一端における前記外被が切断除去されて前記導体が露出され、
前記導体が露出された前記電線の一端に圧着端子が圧着されて取り付けられたこと。
【0012】
上記(2)の構成のワイヤハーネスでは、電線の一端における端面から導体間へ止水材が加圧されて注入された後に電線の一端における外被が切断除去され、電線の一端に圧着端子が圧着されて取り付けられたものであるので、圧着端子を圧着した後に導体へ止水材を充填したものと比較して、圧着端子への止水材の付着のないワイヤハーネスとすることができる。これにより、圧着端子に付着した止水材による接触不良などの不具合のない信頼性の高いワイヤハーネスとすることができる。
【0013】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る止水材注入装置は、下記(3)を特徴としている。
(3) 導体の周囲を外被で覆った電線の一端における端面から前記導体間へ止水材を注入する止水材注入装置であって、
前記電線の一端に装着される筒体と、
該筒体に充填された止水材を加圧して前記電線の端面から前記導体間へ前記止水材を送り込む加圧手段とを備えること。
【0014】
上記(3)の構成の止水材注入装置では、電線の一端に筒体を装着して筒体に充填された止水材を加圧して電線の端面から導体間へ止水材を送り込むことにより、極めて容易に、導体間へ止水材を注入することができる。これにより、圧着端子が接続された電線の一端を上下の金型によって挟んだ状態で金型内へ止水材を充填するものと比較し、装置の簡略化及び小型化による設備費の削減を図ることができる。また、電線と金型とをシールするシール材が金型に付着し、その付着したシール材を拭き取るような煩雑な作業もなくすことができ、しかも、金型内の止水材供給路等に止水材が残留することによる無駄をなくすことができる。
【0015】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスの製造装置は、下記(4)を特徴としている。
(4) 上記(3)に記載の止水材注入装置と、
前記止水材の注入状態を検査する止水検査及び前記電線の一端における前記外被を切断除去して前記導体を露出させる皮むきを行う止水検査・皮むき装置と、
前記導体を露出させた前記電線の一端に圧着端子を圧着して取り付ける圧着装置とを備えること。
【0016】
上記(4)の構成のワイヤハーネスの製造装置では、電線の一端における端面から導体間へ止水材を加圧して注入し、止水材の注入状態の検査及び電線の一端における外被を切断除去して導体を露出させる皮むきを行い、圧着端子を圧着して取り付けることで、良好に止水処理が施されたワイヤハーネスを容易に製造することができ、また、これらの作業を行う装置を連続的に設置することにより、容易に全自動化または半自動化させることができる。また、複数本(2本)の電線の端部に端子を圧着するダブリ圧着のワイヤハーネスを製造する場合であっても、既に止水処理が施された複数本の電線に圧着端子を圧着してワイヤハーネスとすることができる。したがって、複数本の電線に圧着端子を圧着してダブリ圧着のワイヤハーネスとした後に、上下の金型によって端子を含む電線の一端を挟んだ状態で金型内へ止水材を充填する注入装置を用いる場合のように、電線と金型とのシール構造が複雑化するものと比較して、装置の簡略化及び小型化を図り、設備費を大幅に削減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、設備費を抑えつつ容易に処理することができ、しかも、装置の小型化及び自動化が容易な止水処理方法、ワイヤハーネス、止水材注入装置及びワイヤハーネスの製造装置を提供できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスの平面図である。
【図2】図2は、ワイヤハーネスの接続例を示す図であって、図2(a)〜図2(d)は、それぞれワイヤハーネスの平面図である。
【図3】図3は、実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置の構成を説明する概略構成図であって、図3(a)〜図3(d)はそれぞれ、ワイヤハーネス10を製造する一過程を説明する図である。
【図4】図4は、一端側で切断された電線の平面図である。
【図5】図5は、実施形態に係る止水材注入装置による止水材の注入の仕方を説明する図である。
【図6】図6は、止水検査機による止水検査を説明する図である。
【図7】図7は、止水検査機による止水検査の他の例を説明する図である。
【図8】図8は、一端側で皮むきされた電線の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、実施形態に係るワイヤハーネスの平面図、図2は、ワイヤハーネスの接続例を示す図であって、図2(a)及び図2(b)は、それぞれワイヤハーネスの平面図、図3は、実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置の構成を説明する概略構成図、図4は、一端側で切断された電線の平面図、図5は、実施形態に係る止水材注入装置による止水材の注入の仕方を説明する図、図6は、止水検査機による止水検査を説明する図、図7は、止水検査機による止水検査の他の例を説明する図、図8は、一端側で皮むきされた電線の平面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネス10は、電線11を有している。この電線11は、芯線(導体)12を外被13で覆ったものである。電線11の一端11aは、外被13から芯線12が露出されており、この芯線12が露出された一端11aに、圧着端子14が圧着されている。また、電線11の他端11bは接続端15とされている。このワイヤハーネス10は、圧着端子14が圧着された一端11a側に止水処理が施されている。
【0023】
このワイヤハーネス10は、例えば、図2(a)に示すように、電線11の他端11bの接続端15に、車両の制御装置に繋がる信号線17が、外被が皮むきされて芯線が露出した状態で、超音波溶接、抵抗溶接あるいはレーザー溶接等によって接続され、図2(b)に示すように、その接続部に絶縁性を有する樹脂からなるキャップ18が被せられて防水処理及び絶縁処理が施される。また、このワイヤハーネス10は、例えば、図2(c)に示すように、電線11の他端11bに端子14aが接続され、さらにその他端11bには、端子14aを内部に収容するコネクタハウジング19が固定される。さらに、このワイヤハーネス10は、図2(d)に示すように、圧着端子14によって、2本の電線11のそれぞれの一端11aにおいて露出する芯線12を加締めることにより、これらの2本の電線をジョイントするようにしてもよい。
【0024】
図3に示すように、ワイヤハーネス10を製造する製造装置20は、皮むき・圧着装置21、止水材注入装置22、止水検査・皮むき装置23及び圧着装置24を備えた自動機から構成されている。
【0025】
次に、上記製造装置20で、圧着端子14が圧着される電線11の一端11a側に止水処理を施した上記のワイヤハーネス10を製造する場合について説明する。
【0026】
(接続端皮むき・圧着工程)
まず、図3(a)に示すように、止水処理を施す電線11の一端11aとは反対の他端11bを、一般的な上下型からなる皮むき・圧着装置21によって、接続端15を形成する。なお、電線11の他端11bを別の電線の端部にジョイントする場合が想定される。この場合、形成される接続端15は、外被13から芯線12を露出させた皮むき状態とする。
【0027】
(止水材注入工程)
次に、止水処理を施す電線11の一端11aに、止水材注入装置22によって止水材を注入する。
【0028】
止水材注入装置22は、図3(b)に示すように、切断機30と、注入機31と、電線11を搬送する搬送機構32とを備えている。そして、図4に示すように、止水材注入装置22の切断機30のカッタ30aによって、電線11の一端11aを切断し、電線11を所定長さにする。
【0029】
次に、止水材注入装置22の注入機31によって、切断した電線11の一端11aから芯線12内に止水材を注入する。
【0030】
注入機31は、シリンジ33と、このシリンジ33を電線11側へ移動させる移動機構34とを備えている。図5に示すように、シリンジ33は、外筒(筒体)35と、この外筒35に挿入されたプランジャ(加圧手段)36とを有している。外筒35の先端には、挿通孔37が形成されており、プランジャ36が電線11側へ移動させることにより、クランプ38によって保持された電線11の一端11aが挿通孔37へ挿し込まれる。挿通孔37の縁部には、ゴム等からなるシール材39が設けられており、挿通孔37へ挿し込まれた電線11と外筒35の挿通孔37とがシールされる。
【0031】
そして、この注入機31では、搬送機構32によって移動される電線11が正面に配置されると、移動機構34によってシリンジ33が電線11側へ移動されて挿通孔37に電線11の一端11aが挿し込まれる。すると、プランジャ36が外筒35内へ押し込まれる。これにより、この外筒35内に充填されている止水材Sが加圧され、電線11の一端11aから外被13内の芯線12間へ強制的に注入される。止水材Sの注入量は、外筒35に対するプランジャ36のストローク量で管理する。
【0032】
なお、上記の注入機31では、外筒35にプランジャ36を挿入して電線11へ止水材Sを圧入するメカ式を例示したが、外筒35へ高圧空気を送り込んで外筒35内の止水材Sを電線11へ圧入するエア式でも良い。エア式の注入機31では、外筒35内へ付与する圧力と時間との積(圧力×時間)で注入量を管理する。
【0033】
また、電線11側を移動させてシリンジ33の挿通孔37へ電線11の一端11aを挿し込むようにしても良い。
【0034】
(乾燥・硬化工程)
所定量の止水材Sが注入されると、移動機構34によって注入機31が後退し、電線11の一端11aから外筒35が外され、止水材Sの乾燥が行われる。この止水材Sは、例えば、RTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコンが用いられる。なお、止水材Sとしては、湿気硬化型または光硬化型の導電性樹脂等も使用可能である。止水材Sが湿気硬化型である場合は湿気が付与されて湿気硬化され、また、止水材Sが光硬化型である場合は、光が照射されて光硬化される。乾燥・硬化工程では、止水材Sが十分硬質化するまで止水材Sを乾燥してもよいし、止水材Sが十分に硬質化する前に、止水材Sへの乾燥を終了してもよい。さらに言えば、止水材Sを硬化させる必要は必ずしもなく、したがって乾燥・硬化工程は必須の工程ではない。
【0035】
(止水検査・皮むき工程)
止水材Sの乾燥・硬化が終了したら、止水検査機と皮むき機とを備えた止水検査・皮むき装置23によって止水検査及び皮むきが行われる。この止水検査・皮むき装置23では、図3(c)に示すように、搬送機構41によって搬送される電線11に対して、まず、止水検査機が電線11に対する止水状態の検査を行う。
【0036】
図6に示すように、止水検査機42は、チャンバー43を備えている。このチャンバー43は、挿通孔44を有しており、この挿通孔44に電線11の一端11aが挿入されて気密的に接続される。このチャンバー43には、空気供給管45が接続されており、この空気供給管45からチャンバー43内に、所定圧力の空気が供給される。また、チャンバー43には、圧力計46が設けられており、この圧力計46によってチャンバー43内の圧力が測定される。
【0037】
そして、この止水検査機42で電線11の止水状態を検査する場合、チャンバー43の挿通孔44に電線11の一端11aが挿し込まれた状態で、空気供給管45から所定の圧力Aの空気が送り込まれ、圧力計46がチャンバー43内の圧力Bを測定する。その結果、圧力A,Bが同じ(A=B)であれば、電線11の一端11aにおける止水が良好であると判定し、供給される圧力Aよりもチャンバー43内の圧力Bが小さい場合(A>B)、電線11の一端11aに隙間が生じて止水不良が生じていると判定する。
【0038】
なお、図7に示すように、止水検査機42としては、電線11の他端11bに、圧力計46を有するチャンバー47を装着するものでも良い。この止水検査機42では、チャンバー43の挿通孔44に電線11の一端11aが挿し込まれた状態で、空気供給管45から所定の圧力Aの空気が送り込まれ、圧力計46がチャンバー47内の圧力Bを測定する。その結果、圧力Bに変動がない場合(B=0)、電線11の一端11aにおける止水が良好であると判定し、圧力Bに変動がある場合(B>0)、電線11の一端11aに隙間が生じて止水不良が生じていると判定する。
【0039】
上記の止水検査機42で電線11の一端11aにおける止水状態を検査したら、電線11の一端11aを皮むき機の皮むき用のプレス機の型に配置させ、皮むき機のカッタによって、図8に示すように、電線11の一端11aの外被13を除去し、芯線12を露出させる。
【0040】
なお、止水検査・皮むき装置23における止水検査・皮むき工程では、先に皮むき機による外被13の除去を行ってから止水検査機42による止水検査を行っても良い。
【0041】
(端子圧着工程)
止水検査及び皮むきが行われた電線11の一端11aに、図3(c)に示すように、圧着装置24によって圧着端子14を圧着する。この圧着装置24は、S/D圧着機からなるもので、搬送機構41によって正面に移動してきた電線11の一端11aを圧着端子14の圧着部に配置し、その状態でプレス機によって圧着させる。これにより、止水処理が施された電線11の一端11aに、圧着端子14が取り付けられる。また、この端子圧着工程では、複数本(2本)の電線11の一端11aに一つの圧着端子14を圧着するダブリ圧着も行われる。
【0042】
そして、この端子圧着工程によって圧着端子14を取り付けることにより、図3(d)に示すように、一端11aに止水処理が施されたワイヤハーネス10(図1参照)が完成される。
【0043】
以上、説明したように、実施形態に係る止水処理方法によれば、電線11の一端11aにおける端面から芯線12間へ止水材Sを、電線11の周囲の気圧差でなく加圧して注入し、電線11の一端11aにおける外被13を切断除去して芯線12を露出させ、圧着端子14を圧着して取り付けるので、圧着端子14を圧着した後に芯線12へ止水材Sを充填する場合と比較し、圧着端子14への止水材Sの付着を防止することができる。これにより、圧着端子14に付着した止水材Sを拭き取る煩雑な拭き取り作業を不要とすることができ、容易に止水処理を行うことができる。また、芯線12を露出させる前に止水材Sを注入するので、芯線12のばらけによって作業が滞るような不具合なく円滑に作業を行うことができる。しかも、芯線12を露出させる前に止水材Sを加圧して注入するので、圧力差のロスを抑え、芯線12間への止水材Sの浸透時間を短縮させて作業性を向上させることができる。
【0044】
また、実施形態に係るワイヤハーネスによれば、電線11の一端11aにおける端面から芯線12間へ止水材Sが加圧されて注入された後に電線11の一端11aにおける外被13が切断除去され、電線11の一端11aに圧着端子14が圧着されて取り付けられたものであるので、圧着端子14を圧着した後に芯線12へ止水材Sを充填したものと比較して、圧着端子14への止水材Sの付着のないワイヤハーネス10とすることができる。これにより、圧着端子14に付着した止水材Sによる接触不良などの不具合のない信頼性の高いワイヤハーネス10とすることができる。
【0045】
さらに、実施形態に係る止水材注入装置によれば、電線11の一端11aに外筒35を装着して外筒35に充填された止水材Sを加圧して電線11の端面から芯線12間へ止水材Sを送り込むことにより、極めて容易に、芯線12間へ止水材Sを注入することができる。これにより、圧着端子14が接続された電線11の一端11aを上下の金型によって挟んだ状態で金型内へ止水材Sを充填するものと比較し、装置の簡略化及び小型化による設備費の削減を図ることができる。また、電線11と金型とをシールするシール材が金型に付着し、その付着したシール材を拭き取るような煩雑な作業もなくすことができ、しかも、金型内の止水材供給路等に止水材Sが残留することによる無駄をなくすことができる。また、小型化が図られることにより、この止水材注入装置22自体を移動させる構造とすることができ、電線11への着脱作業の容易化を図ることができる。
【0046】
また、この止水材注入装置22を有するワイヤハーネスの製造装置によれば、電線11の一端11aにおける端面から芯線12間へ止水材Sを加圧して注入し、止水材Sの注入状態の検査及び電線11の一端11aにおける外被13を切断除去して芯線12を露出させる皮むきを行い、圧着端子14を圧着して取り付けることで、良好に止水処理が施されたワイヤハーネス10を容易に製造することができ、また、これらの作業を行う装置を連続的に設置することにより、容易に全ての工程を自動化した全自動化または電線11を切断して止水材Sを注入する工程などの一部の工程を自動化した半自動化を図ることができる。また、複数本(2本)の電線11の端部に端子を圧着するダブリ圧着のワイヤハーネス10を製造する場合であっても、既に止水処理が施された複数本の電線11に圧着端子14を圧着してワイヤハーネス10とすることができる。したがって、複数本の電線11に圧着端子14を圧着してダブリ圧着のワイヤハーネスとした後に、上下の金型によって圧着端子14を含む電線11の一端11aを挟んだ状態で金型内へ止水材Sを充填する注入装置を用いる場合のように、電線11と金型とのシール構造が複雑化するものと比較して、装置の簡略化及び小型化を図り、設備費を大幅に削減させることができる。
【0047】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0048】
10 ワイヤハーネス
11 電線
11a 一端
12 芯線(導体)
13 外被
14 圧着端子
20 製造装置
21 皮むき・圧着装置
22 止水材注入装置
23 止水検査・皮むき装置
24 圧着装置
35 外筒(筒体)
36 プランジャ(加圧手段)
S 止水材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の周囲を外被で覆った電線の一端に圧着端子が接続されたワイヤハーネスの止水処理方法であって、
前記電線の一端における端面から前記導体間へ止水材を注入する止水材注入工程と、
前記電線の一端における前記外被を切断除去して前記導体を露出させる皮むき工程と、
前記導体を露出させた前記電線の一端に圧着端子を圧着して取り付ける端子圧着工程と、を含むことを特徴とする止水処理方法。
【請求項2】
導体の周囲を外被で覆った電線の一端における端面から前記導体間へ止水材が注入され、
前記電線の一端における前記外被が切断除去されて前記導体が露出され、
前記導体が露出された前記電線の一端に圧着端子が圧着されて取り付けられたことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
導体の周囲を外被で覆った電線の一端における端面から前記導体間へ止水材を注入する止水材注入装置であって、
前記電線の一端に装着される筒体と、
該筒体に充填された止水材を加圧して前記電線の端面から前記導体間へ前記止水材を送り込む加圧手段とを備えることを特徴とする止水材注入装置。
【請求項4】
請求項3に記載の止水材注入装置と、
前記止水材の注入状態を検査する止水検査及び前記電線の一端における前記外被を切断除去して前記導体を露出させる皮むきを行う止水検査・皮むき装置と、
前記導体を露出させた前記電線の一端に圧着端子を圧着して取り付ける圧着装置とを備えることを特徴とするワイヤハーネスの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−65403(P2013−65403A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201979(P2011−201979)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】