説明

歩行ロボット

【課題】2足歩行ロボットの安定歩行には、ジャイロやセンサー類を使い、特殊な計算を行うなど高度な技術が必要になる。従来、玩具用などに簡易化された歩行ロボットの試みもされているが、見栄えに問題がある。
【解決手段】安定した歩行のため、ロボットの足裏に摩擦の大きい部分と摩擦の小さい部分を設け、足裏を回転させることで床面に接する部分を切り替えるようにした。そして足を運ぶときは足裏を摩擦の少ない状態にして、床の上を滑らせた。反対側の足は摩擦の大きい状態にして床面を捉えるようにした。これによって常に両足が床に付いた状態で歩行でき、安定度が向上し、ジャイロなどを使わなくても安定で、見栄えの良い歩行が可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行ロボットの歩行や動作を簡単にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2足歩行ロボットは、左右の足の上に交互にのって、前後左右のバランスを取りながら移動しなければならないので、歩行を行わせるのは難しい。しかし、とくにホビーや玩具分野では、構造や制御の簡易化が求められる。
【0003】
従来例として、特開2002−360943にあるように、足裏の横幅を極端に大きくし、どちらの足で立っても、常にその足の上に体の重心線が通るようにして、何もしなくても常にバランスするように構成された歩行ロボットがある。しかし、静止時には左足と右足が重なるなど、不自然な形に構成されている。
【特許文献1】特開2002−360943
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ロボットに2足歩行させるには、ジャイロを使ってバランスを自動制御させるような複雑な制御技術が必須である。これを簡易化しようとすると従来例のように、デザイン的に不自然なロボットになってしまう。
特に、ゲーム用のロボットの場合、サッカーのシュート時には両足を大きく開いたり、素早く足を動かしたりで、バランスを崩しやすいが、その場合でも転ばないようにする必要がある。
【0005】
また従来、ゆっくり歩く場合、図1(a)のように歩行途中でも常に片方の足で立てる静的安定が必要なので、重心線12が足裏の中心部分を通るように歩行ポーズを作らなければならなかった。これは見かけが自然なポーズではなく、横方向の重心移動が大きいので、良い歩き方とはいえない。このときの側面図を図2(d)に、また足裏と重心安定域を図2(g)に示す。四角形が足裏11で、斜線部分が重心安定域14で、ロボットの重心11を小円で示す。
課題は、簡単な装置で歩行や素早い動作が安定してできて、デザイン的にも不自然さがない2足歩行ロボットを作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するために、図3、図4のように、足裏20の裏面を摩擦力の大きい部材21と摩擦力の小さい部材22が床面と接するように構成した。そして足裏の軸31を若干の回転などで、どちらが床面に接するかをコントロールできるようにした。
図1(b)または図1(c)の正面図、図2(b)の側面図は、本発明で安定して歩行する例を示す。そして側面図を図2(e)に示す。
歩行するには、(1)一方の足裏をすこし床面と傾斜させ、図1(b)のように摩擦を少ない側を床面に接しさせる、また、もう一方の足裏は図のように床面と平行にして全足裏を床面に接しさせる。摩擦力の大きい部材21と摩擦力の小さい部材22の両方が床に接するので、床面との摩擦は中程度であり、床を蹴って進むことができる。
【0007】
このときの重心安定域の図を図2(h)に示す。重心安定域14はたいへん大きく、ロボットの重心は11また11aの小円で示される。
これを繰り返すことで、前方に動いていく。
本発明の重心安定域図2(h),(i)は、従来例の図2(d)にくらべて非常に大きく、したがって非常に安定であることがわかる。
すべる部分をかかとや、つま先部分につけた場合、図2(f)のようにかかとをあげながらの歩行となり、より自然な歩行となる。ただし、図2(b)のような足裏の横縁を使うものにくらべて図2(i)のように重心安定域は小さく、安定度は悪くなる。
【発明の効果】
【0008】
左右の足裏の軸を左右に傾斜させながら、足を前後に動かすだけでも歩行が可能で、その場合はバランスのことをほとんど考慮する必要がないので、ジャイロなどのセンサー類がなくても、安定した2足歩行を行わすことができる。
歩行はジャイロを用いて、通常の歩行を行い、シュートなど特殊な動作でのみ足裏を滑らすことも可能である。
また、足の形状も自然な形状で良いため、デザイン上の問題は少ない。
【0009】
また、すべらせるときには、足裏をすこし傾斜させているので、足の甲部分が持ち上がり、当然高さを吸収するため膝も曲げることになるので足を上げながら歩行しているように見えて効果的である。また別の例では、すべり体が足裏を持ち上げる。
【0010】
従来のように、バランスを取るための左右に大きく重心を動かすことは必要はないので、ゆれの原因は入りにくい。さらに、常に両足が床面についていることで、片足での歩行に比べて、足回りの剛性が非常に大きくなり、上体のゆれも少なくなる。
そして、重心安定域に余裕があるので、横向きの加速度による外乱にも耐えられ、すばやい動きが可能になり、楽しくゲームをすることができる。
図12にサッカーボールを蹴る例を示しているが、(a)の状態から(b)の状態に移行してサッカーボール30を足裏20の先端の補助板31で蹴っている。強くボールを蹴るために右足を大きく前に出しているが、右足は床をスリップさせ、左足は床面に固定しているので、大きなストロークで高速に動作させても安定しており、転ぶこともなく、遠くにボールをとばすことが可能である。
このように、本発明によるロボットは、バランスに余裕があるので、いろいろなゲームや作業に安定して対応することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図に従って、実施形態を説明する。
足裏の例を図3、図4に示す。いずれも足裏20の底面に、摩擦の大きい摩擦体21と、摩擦の小さなすべり体22を足裏面の横縁に貼ったものである。
【0012】
図3は、長い形状の摩擦体21と長い形状のすべり体22を使用し、図4は2個の円形の摩擦体21と2個の円形のすべり体22を使っているが、原理的にはほぼ同じで、足裏20を左右に傾けることにより床面を滑らせたり、摩擦で床面を捕らえたりできる。
足裏20を床と平行にすると、摩擦体21とすべり体22の両方が床と接するが、摩擦体22が接することで全体として床面を捉えることになる。足裏を支える剛性があまり大きくない場合、等分にロボットの重さがかかり、結果的に安定して床を捉えることになる。摩擦体は、ゴムなどの材質でゴムタイヤのような凹凸があるほうが摩擦力を維持しやすい。
【0013】
すべり体は、ポリテトラフルオロエチレンなど摩擦係数の小さな材質で作られたものが効果的であるが、他のプラスチックでも滑らかな形状であれば同様の効果が得られる。
摩擦体は図4のように、2個離れている方がモーメントの力に対する摩擦力は大きくて効果がある。
図5は足裏20とすべり体22を一体のプラスチックで作った例を示す。それに円盤型のゴム製の摩擦体21を2個接着することで簡単に足裏部分をつくることができる。
【0014】
図6はさらに簡単にした例であり、平らな足裏20の片端に摩擦体21を2個貼り付けただけの構造である。別の端がすべり体22の役目をはたす。ただし摩擦体21の高さ分だけ図6(a)のように足裏が傾いた状態で使う。
また、図9(a)正面図、(b)裏面図のように摩擦体を貼った部分が内側にくるようにするのが望ましい。理由は、
(1)摩擦体には、大きな力がかかることになるので、中心に近いほうが、モーメントが小さく、したがって動作によりロボット全体が回されにくいこと。
(2)図8(b)に示すように足を開いた状態では重力線12が押し広げる力として作用するが摩擦体21がそれを止めるように働き、いくら足が広がってもずっと摩擦体が床に面していて広がるのを食い止めるように働く。もし逆に滑り体が内側にあるとすると、いったん広がり出すと股を広げる力を止めることができず、破壊の危険性もある。
【実施例1】
【0015】
図10は、足裏20の摩擦の切り替えを、専用のモータを使って行わせる例である。図10(a)(b)(c)(d)は、足裏20の構造図の、それぞれ上面図、正面図、横面図、底面図である。足裏20には、図10(d)のように穴の開いた円形の摩擦体21eが4個はりつけてあり、この穴にはすべり体の棒22eが図のように入っていて、サーボモータ25が動くとアクチュエータ26を介してすべり体22eが出入する。
【0016】
図10(b)の状態はすべり体22eは引っ込んでいて、摩擦体21eが床を捉えている。サーボモータ25が動いて、図11(b)(c)のように、すべり体22eが外に出てくると、足裏20は、すべり体22eに乗って床をすべるようになる。
すべり体22eは、足裏20全体を持ち上げるので足を上げたように見える。さらに持ち上げる高さもサーボモータでコントロールできるのでスムーズな足の上げ下げを演出することができる。
さらに、摩擦で固定時も、滑り体で滑る時も、4点で支えるので安定した動作が行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】歩行ロボットのバランスを示す正面図
【図2】歩行ロボットのバランスを示す側面図と平面図
【図3】本発明の足裏図
【図4】本発明の足裏図
【図5】本発明の足裏図
【図6】本発明の足裏図
【図7】足裏の切り替え図
【図8】ロボットの説明図
【図9】本発明の足裏図
【図10】本発明の別の足裏図(摩擦体が働いている図)
【図11】本発明の別の足裏図(滑り体が働いている図)
【符号の説明】
【0018】
6 床面
10 ロボット
11 ロボットの重心
12 重心線
13 足裏
14 重心安定域
20 足裏
21 摩擦体
21a 摩擦体
21b 摩擦体
21c 摩擦体
21d 摩擦体
21e 摩擦体
21f 摩擦体
22 すべり体
22a すべり体
22b すべり体
22c すべり体
22d すべり体
22e すべり体
22f すべり体
25 サーボモータ
26 アクチュエータ
30 サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行ロボットであって、
両足裏のいずれかの辺に沿って摩擦の大きな摩擦部を構成し、
対抗辺に沿って前記摩擦部より摩擦の少ない滑り部を構成することと、
前記歩行ロボットの主要部に対して前記足裏の向きを変える手段と、
前記足裏の向きを変えることによって、前記滑り部を床面に接するようにするか前記摩擦部を床面に接するようにするかを切り替えることができることを特徴とする歩行ロボット。
【請求項2】
歩行ロボットであって、
足裏が摩擦の大きな部分と摩擦の小さな部分で構成され、
前記摩擦の小さな部分を前記足裏から突出させるか前記摩擦の大きな部分を前記足裏から突出させるかを切り替えることができるように構成されたことを特徴とする歩行ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−56568(P2009−56568A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227329(P2007−227329)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(300038435)
【Fターム(参考)】