説明

歩行支援装置、及び歩行支援プログラム

【課題】歩行面の種類に応じた歩行支援を行う。
【解決手段】装着型ロボット1は、装着者が歩行のために関節モーメントを発生させる際に、各アシストアクチュエータを駆動して装着者が発生させる関節モーメントを軽減する。装着型ロボット1は、各関節の角度を計算することができ、これら関節の角度とつま先や踵の接地の有無から、装着者が歩行する歩行面の種類を判定する。装着型ロボット1は、判定した歩行面の種類に応じて各アシストアクチュエータの力を調節することにより、平地を歩行しているのと同程度の力加減で階段や坂道を上り下りできるようにする。このように、装着型ロボット1は、各歩行シーンを判定し、歩行シーンに応じたアシスト力を与えることで歩行シーンの違いで人が出力する力を意識することなく歩けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援装置、及び歩行支援プログラムに関し、例えば、歩行をアシストするものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、介護ビジネスなどを中心に、人の動作(歩行や持ち上げなど)に使われる筋力を補助する装着型ロボット(パワーアシストスーツ)などが開発されている。
装着型ロボットには、上半身の筋力を補助するもの、下半身の筋力を補助するもの、あるいは、全身の筋力を補助するものなど各種のものがある。
【0003】
装着型ロボットは、例えば、装着者の筋電から筋肉の動きを解析して関節モーメントを算出し、これに応じたアシスト力を発生させる。これによって、装着者は、重量物の持ち上げや歩行を楽に行うことができる。
【0004】
このような技術に、特許文献1の「装着式動作補助装置、装着式動作補助装置の制御方法および制御用プログラム」がある。
この技術は、装着者に設置したセンサによって生体信号を検出し、これを用いて装着者の意思に従った動力をアクチュエータに発生させるものである。
【0005】
しかし、従来の装着型ロボットは、装着者の関節に発生する関節モーメントに対してアシスト力を一様に発生させるものであり、平地、階段、坂道といった歩行面の種類(歩行シーン)の違いに応じて歩行を支援している訳ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−95561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、歩行面の種類に応じた歩行支援を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、歩行支援対象者が歩行する歩行面の情報を取得する歩行面情報取得手段と、前記取得した歩行面の情報に基づいて前記歩行面の種類を特定する歩行面種類特定手段と、前記特定した歩行面の種類に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援手段と、を具備したことを特徴とする歩行支援装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記歩行支援手段は、歩行面の種類が平地の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させる前記軽減後のモーメントを基準として、他の種類の歩行面の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントが所定範囲となるように、前記脚部に作用させる力を決定することを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記歩行面の種類と、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントの軽減率と、の対応を記憶する軽減率対応記憶手段を具備し、前記歩行支援手段は、前記特定した歩行面の種類に前記軽減率対応記憶手段で対応する軽減率となるように歩行を支援することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記歩行支援手段は、前記脚部の関節に発生させるモーメントが、歩行面の種類が平地の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントの最大値以内となるように歩行を支援することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、前記歩行支援対象者の脚部の姿勢を検出する足姿勢検出手段と、前記歩行支援対象者のつま先の接地を検出するつま先接地検出手段と、前記歩行支援対象者の踵の接地を検出する踵接地検出手段と、を具備し、前記歩行面種類特定手段は、前記検出した脚部の姿勢、つま先の接地の有無、及び踵の接地の有無の組合せによって歩行面の種類を特定することを特徴とする請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項6に記載の発明では、歩行支援対象者が歩行する歩行面の情報を取得する歩行面情報取得機能と、前記取得した歩行面の情報に基づいて前記歩行面の種類を特定する歩行面種類特定機能と、前記特定した歩行面の種類に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援機能と、をコンピュータに実現させる歩行支援プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歩行面の種類を特定することにより、歩行面の種類に応じた歩行支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】装着型ロボットの装着状態を示した図である。
【図2】装着型ロボットのシステム構成を示した図である。
【図3】制御部が歩行支援を行う手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】後方移動処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】アシスト力の決定方法を説明するための図である。
【図6】制御部が歩行支援を行う手順の変形例を説明するためのフローチャートである。
【図7】つま先高さ判定処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】踵高さ判定処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】後方移動処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】踵接地判定処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施形態の概要
装着型ロボット1(図1)は、股関節アシストアクチュエータ17で股関節の動作を支援し、膝関節アシストアクチュエータ18で膝関節の動作を支援し、足首関節アシストアクチュエータ19で足首関節の動作を支援する。
即ち装着型ロボット1は、装着者が歩行のために関節モーメントを発生させる際に、各アシストアクチュエータを駆動して装着者が発生させる関節モーメントを軽減する。
【0012】
装着型ロボット1は、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16、つま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値から各関節の角度を計算することができ、これら関節の角度と、つま先接地センサ10、踵接地センサ12によるつま先や踵の接地の有無から、装着者が、平地を歩行するのか、階段を歩行するのか、あるいは坂道を歩行するのか、などの装着者が歩行する歩行面の種類を判定する。
【0013】
装着型ロボット1は、判定した歩行面の種類に応じて各アシストアクチュエータの力を軽減することにより、平地を歩行しているのと同程度の力加減で階段や坂道を上り下りできるようにする。
このように、装着型ロボット1は、各歩行シーンを判定し、歩行シーンに応じたアシスト力を与えることで歩行シーンの違いで人が出力する力(筋力)を意識することなく歩けるようにする。
このため、装着型ロボット1は、健常者の歩行支援のほか、老人や障害者など通常の歩行が困難な人々の歩行動作を助けるのに用いることができる。
【0014】
(2)実施形態の詳細
図1は、装着型ロボット1の装着状態を示した図である。
装着型ロボット1は、装着者の腰部及び下肢に装着し、装着者の歩行を支援(アシスト)するものである。
装着型ロボット1は、腰部装着部21、上腿装着部22、下腿装着部23、足装着部24、上腿連結部材26、下腿連結部材27、制御装置2、つま先接地センサ10、つま先姿勢センサ11、踵接地センサ12、踵姿勢センサ13、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19などを備えている。なお、腰部装着部21、制御装置2、腰姿勢センサ14以外は、両足に設けられている。
【0015】
腰部装着部21は、装着者の腰部の周囲に取り付けられ装着型ロボット1を固定する。
腰姿勢センサ14は、腰部装着部21に取り付けられ、ジャイロなどによって腰部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、腰部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0016】
制御装置2は、腰部装着部21に取り付けられ、装着型ロボット1の動作を制御する。
股関節アシストアクチュエータ17は、装着者の股関節と同じ高さに設けられており、腰部装着部21に対して上腿連結部材26を前後方向に駆動する。なお、股関節アシストアクチュエータ17を3軸アクチュエータとして横方向にも駆動するように構成することもできる。
【0017】
上腿連結部材26は、装着者の上腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、股関節アシストアクチュエータ17と膝関節アシストアクチュエータ18を連結する。
上腿装着部22は、外側が上腿連結部材26の内側に固定されており、内側が装着者の上腿に固定される。
上腿姿勢センサ15は、上腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、上腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0018】
膝関節アシストアクチュエータ18は、装着者の膝関節と同じ高さに設けられており、上腿連結部材26に対して下腿連結部材27を前後方向に駆動する。
下腿連結部材27は、装着者の下腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、膝関節アシストアクチュエータ18と足首関節アシストアクチュエータ19を連結する。
【0019】
下腿装着部23は、外側が下腿連結部材27の内側に固定されており、内側が装着者の下腿に固定される。
下腿姿勢センサ16は、下腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、下腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0020】
足首関節アシストアクチュエータ19は、装着者の足首関節と同じ高さに設けられており、下腿連結部材27に対して足装着部24のつま先を上下する方向に駆動する。
足装着部24は、装着者の足部(足の甲、及び足裏)に固定される。一般に、足指の付け根の関節は歩行の際に屈曲するが、足装着部24も足指の付け根の部分が足指に従って屈曲するようになっている。
【0021】
つま先姿勢センサ11と踵姿勢センサ13は、それぞれ、足装着部24の先端と後端に設置され、それぞれ、つま先と踵の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、つま先や踵の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0022】
つま先接地センサ10は、足装着部24の足裏部前方に設置され、つま先の接地を検出する。
踵接地センサ12は、足装着部24の足裏部後方に設置され、踵の接地を検出する。
以上のように構成された装着型ロボット1は、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19を駆動することにより、装着者の歩行を支援する。
【0023】
図2は、装着型ロボット1のシステム構成を示した図である。
制御装置2は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、各種インターフェースなどを備えた電子制御ユニットであり、装着型ロボット1の各部を電子制御する。
【0024】
CPUで記憶媒体に記憶された歩行支援プログラムを実行することにより、センサ情報取得部3、歩行面種類判定部4、歩行アシスト力決定部5が構成される。
センサ情報取得部3は、つま先接地センサ10〜下腿姿勢センサ16の各センサから検出値を取得する。
歩行面種類判定部4は、センサ情報取得部3が取得した検出値を解析することにより歩行面の種類(歩行シーン)を判定する。
【0025】
歩行アシスト力決定部5は、歩行面種類判定部4が判定した歩行面の種類に応じて、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19に出力させるアシスト力を決定し、これに従ってこれらアシストアクチュエータを駆動する。なお、アシスト力とは、装着型ロボット1がアシストアクチュエータを駆動して脚部に作用させるモーメント(トルク)である。
【0026】
図3は、装着者が歩行周期を開始した場合に、制御装置2が歩行支援を行う手順を説明するためのフローチャートである。
以下の処理は、制御装置2のCPUが歩行支援プログラムに従って行うものであり、各センサからの信号の検出は、センサ情報取得部3が行い、歩行面の判定に伴う各判断は、歩行面種類判定部4が行い、アシスト力の決定は、歩行アシスト力決定部5が行う。
【0027】
まず、装着者が歩行周期を開始すると、CPUは、つま先接地センサ10、踵接地センサ12から検出値によって、足装着部24が歩行面から離れたことを検出し、片足が浮上したと判断する(ステップ5)。
【0028】
次に、CPUは、腰姿勢センサ14、浮上した足の上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16、つま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13(以下、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16、つま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13を姿勢センサと略記する)の検出値から各関節の角度を計算し、浮上した足の移動方向を検出する(ステップ10)。
次に、CPUは、浮上した足が前方方向に移動しているか否かを判断する(ステップ15)。
浮上した足が前方方向に移動していると判断した場合(ステップ15;Y)、CPUは、装着者が前方移動すると判断する(ステップ20)。
一方、前方方向に移動していないと判断した場合(ステップ15;N)、CPUは、後述の後方移動処理を行う(ステップ110)。
【0029】
CPUは、前方移動と判断した場合(ステップ20)、前方の足のつま先接地センサ10、踵接地センサ12からの検出値により、前方の足が歩行面に接地したか否かを判断する(ステップ25)。
前方の足が歩行面に接地していないと判断した場合(ステップ25;N)、CPUは、ステップ25にて前方の足が歩行面に接地したか否かの監視を継続し、前方の足が歩行面に接地したと判断した場合(ステップ25;Y)、CPUは、両足の姿勢センサの出力から両足の各関節の角度を算出し、これによって前後の足の高さを測定する(ステップ30)。
なお、足の高さは、例えば、踵(踵姿勢センサ13)の高さや、足首関節(足首関節アシストアクチュエータ19)の高さなど、適当な部位の高さを用いることができる。
【0030】
次に、CPUは、前後の足の高さに違いがあるか否かを判断し(ステップ35)、違いがない場合(ステップ35;N)、CPUは、歩行面の種類を平地であると判定し(ステップ40)、平地歩行で前進する場合のアシスト力を決定する(ステップ45)。
前後の足の高さに違いがある場合(ステップ35;Y)、CPUは、つま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値により、前に出した足の足装着部24の前後傾斜を測定する(ステップ50)。
【0031】
次に、CPUは、前後傾斜があるか否かを判断し(ステップ55)、前後傾斜がない場合(ステップ55;N)、CPUは、姿勢センサの検出値から前方の足が後方の足より高いか否かを判断する(ステップ60)。
前方の足が高くない場合、即ち、前方の足が低い場合(ステップ60;N)、CPUは、歩行面を下り階段であると判断し(ステップ65)、下り階段を前進する場合のアシスト力を決定する(ステップ70)。
【0032】
前方の足が後方の足よりも高い場合(ステップ60;Y)、CPUは、歩行面を上り階段であると判断し(ステップ75)、上り階段を前進する場合のアシスト力を決定する(ステップ80)。
また、前に出した足の足装着部24に前後傾斜がある場合(ステップ55;Y)、CPUは、前方の足のつま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値からつま先が踵よりも低いか否かを判断する(ステップ85)。
【0033】
つま先が踵よりも低い場合(ステップ85;Y)、CPUは、歩行面を下り坂道であると判断し(ステップ90)、下り坂道を前進する場合のアシスト力を決定する(ステップ95)。
つま先が踵よりも低くない場合、即ち、踵がつま先よりも低い場合(ステップ85;N)、CPUは、歩行面を上り坂道であると判断し(ステップ100)、上り坂道を前進する場合のアシスト力を決定する(ステップ105)。
【0034】
以上のようにして、装着型ロボット1は、つま先、踵の接地の有無、及び、下肢の姿勢から装着者が平地、下り階段、上り階段、下り坂道、上り坂道の何れを前進歩行するのか、その歩行面の種類を判定することができる。
【0035】
図4は、ステップ110(図3)の後方移動処理を説明するためのフローチャートである。
CPUは、浮上した足が後方に移動する場合、後方移動であると判断する(ステップ120)。
次に、CPUは、つま先接地センサ10、踵接地センサ12の検出値により、後方の足が歩行面に接地したか否かを判断する(ステップ125)。
後方の足が歩行面に接地していない場合(ステップ125;N)、CPUは、ステップ125にて接地したか否かを監視する。
【0036】
後方の足が歩行面に接地した場合(ステップ125;Y)、CPUは、両足の姿勢センサの検出値により、両足の各関節の角度を計算し、これによって前後の足の高さを測定する(ステップ130)。
前後の足の高さに違いがない場合(ステップ135;N)、CPUは、歩行面を平地であると判断し(ステップ140)、平地歩行で後進する場合のアシスト力を決定する(ステップ145)。
【0037】
前後の足の高さに違いがある場合(ステップ135;Y)、CPUは、つま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値により、後方の足の足装着部24の前後傾斜を測定する(ステップ150)。
次に、CPUは、前後傾斜があるか否かを判断し(ステップ155)、前後傾斜がない場合(ステップ155;N)、CPUは、姿勢センサの検出値から前方の足が後方の足より高いか否かを判断する(ステップ160)。
前方の足が高い場合(ステップ160;Y)、CPUは、歩行面を下り階段であると判断し(ステップ165)、下り階段を後進する場合のアシスト力を決定する(ステップ170)。
【0038】
前方の足が高くない場合、即ち、前方の足が低い場合(ステップ160;N)、CPUは、歩行面を上り階段であると判断し(ステップ175)、上り階段を後進する場合のアシスト力を決定する(ステップ180)。
また、後方の足の足装着部24に前後傾斜がある場合(ステップ155;Y)、CPUは、後方の足のつま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値からつま先が踵よりも高いか否かを判断する(ステップ185)。
【0039】
つま先が踵よりも高い場合(ステップ185;Y)、CPUは、歩行面を下り坂道であると判断し(ステップ190)、下り坂道を後進する場合のアシスト力を決定する(ステップ195)。
つま先が踵よりも低い場合(ステップ185;N)、CPUは、歩行面を上り坂道であると判断し(ステップ200)、上り坂道を後進する場合のアシスト力を決定する(ステップ205)。
【0040】
以上のようにして、装着型ロボット1は、つま先、踵の接地の有無、及び、下肢の姿勢から装着者が平地、下り階段、上り階段、下り坂道、上り坂道の何れを後進歩行するのか、その歩行面の種類を判定することができる。
【0041】
図5の各図は、アシスト力の決定方法を説明するための図である。
図5(a)は、ある身長、体重の装着者が装着型ロボット1を装着せずに平地を前進歩行した場合に装着者が膝関節に発生させる関節モーメントの変化を1歩行周期に渡って記録したものである。なお、縦軸は関節モーメントであり、横軸は時間である。
平地歩行の場合に1歩行周期に渡る関節モーメントの力積、即ち、関節モーメントを時間で積分した値は、図の斜線部で示されている。
【0042】
図5(b)は、当該装着者が装着型ロボット1を装着せずに上り階段を前進歩行した場合に装着者が膝関節に発生させる関節モーメントの変化を1歩行周期に渡って記録したものである。同様に、1歩行周期に渡る関節モーメントの力積は、図の斜線で示されている。
【0043】
本実施の形態では、平地を前進歩行する場合の力積に対する上り階段を前進歩行する場合の力積の比が1.5倍であった場合、装着型ロボット1は、装着者が上り階段を前進歩行する場合に、アシスト力を1.5倍する。他の関節に対しても同様とする。
このように、本実施の形態では、装着型ロボット1を装着しない状態で、平地を歩行する場合に関節に発生させる関節モーメントの力積を基準とした他の歩行面での関節モーメントの力積の比率だけ、アシスト力を増大させる。
即ち、装着型ロボット1は、歩行面が平地の場合の力積に対する他の歩行面の場合の力積の比率を係数として、平地歩行の場合のアシスト力に乗じた値を、当該他の歩行面の場合のアシスト力とする。
【0044】
このように、平地歩行を基準として力積比に応じてアシスト力を増大させると、装着型ロボット1の装着者は、階段や坂道を平地歩行程度の力によって歩行することができる。
即ち、装着者は、装着型ロボット1の歩行支援により、歩行面の種類によらずに平地歩行程度の力加減で各種の歩行面を歩行することができる。
以上のように、装着型ロボット1は、装着者が平地歩行している程度の力で歩行できるように歩行面の種類に応じてアシスト力を調節する。
なお、上の例では、装着型ロボット1を装着しない場合の関節モーメントとしたが、例えば、歩行面の種類によらず一定割合(例えば、一律60%)アシストする装着型ロボット1を装着した場合の関節モーメントとしてもよい。
【0045】
図5(c)は、アシスト力テーブル35の論理的な構成の一例を示した図である。
アシスト力テーブル35は、制御装置2に備えた記憶媒体に記憶されており、CPUがアシスト力を決定する際に参照する。
アシスト力テーブル35は、身長、体重ごとに作成されており、図では、前進歩行の場合が示されている。同様に後退歩行の場合もある。
【0046】
アシスト力テーブル35は、「平地」、「坂道」、「階段」の各項目について、「股関節」、「膝関節」、「足首関節」に作用させるアシスト力の比率を記憶している。
これらの比率は、図5(a)、図5(b)のように、平地を基準とした1歩行周期の関節モーメントの力積比である。
【0047】
例えば、図の例では、坂道を前進する場合、装着型ロボット1のCPUは、アシスト力テーブル35を参照して、股関節(股関節アシストアクチュエータ17)のアシスト力は、平地の場合のアシスト力を1.1倍したものに決定し、膝関節(膝関節アシストアクチュエータ18)のアシスト力は、平地の場合のアシスト力を1.3倍したものに決定し、足首関節(足首関節アシストアクチュエータ19)のアシスト力は、平地の場合のアシスト力を1.2倍したものに決定する。
なお、平地の歩行で装着者の関節モーメントをどの程度アシストによって軽減するかは(例えば、関節モーメントの30%を支援するなど)、ユーザが設定できるようになっている。
【0048】
以上、本実施の形態では、1歩行周期における関節モーメントの力積比を用いて、各歩行面の種類でのアシスト力を決定したが、これは一例であって、各種の決定方法が考えられる。
例えば、1歩行周期における力積の代わりに、半歩行周期における力積比を用いることもできる。
1歩行周期の力積を用いた場合は、1歩行周期の間、アシスト力を増減する比率を一定としたが、半周期の力積を用いる場合、装着者の歩行の半周期ごとに比率を変化させる。
更に、周期を短くすることが可能であり、周期を短くすると、より細やかにアシスト力を変化させることができ、装着者により自然な装着間を与えることができる。
【0049】
なお、関節モーメントの力積を用いたのは、力積をとる期間でアシスト力の増減比率を一定としてシステム構成を容易にするためであり、リアルタイムでアシスト力の増減比率を変化させることも可能である。
このように、装着型ロボット1は、各関節アシストアクチュエータで装着者が関節モーメントを発生させる方向に力を作用させることにより、装着者が脚部の各関節の周りに発生させる関節モーメントを軽減することができ、その軽減程度は、アシスト力テーブル35によって各歩行面の種類ごとに規定されている。
【0050】
図5(d)は、アシスト力の決定方法の変形例を説明するための図である。
図5(d)の実線は、装着型ロボット1を装着して平地を歩行している場合の膝の関節モーメントの時間的変化を1歩行周期に渡って記録したものである。
一方、破線は、平地歩行と同じアシストをして階段を上った場合の膝の関節モーメントの時間的変化である。
本変形例では、装着型ロボット1は、平地歩行の場合の関節モーメントの最大値36を越える領域37を歩行面の種類ごとに制御装置2に記憶しており、領域37で最大値36を越えた分をアシストの増大で補う。装着型ロボット1は、他の関節に対しても同様にアシスト力を増大する。
また、領域37は、アシスト力テーブル35と同様に身長、体重ごとに記憶されている。
【0051】
図6は、装着者が歩行周期を開始した場合に、制御装置2が歩行支援を行う手順の変形例を説明するためのフローチャートである。本変形例では、歩行面の状態に加え、装着者の歩行形態も判断する。
ステップ230〜ステップ250は、図3のステップ5〜ステップ25と同様であるので説明を省略する。
【0052】
前方の足が歩行面に接地した場合(ステップ250;Y)、CPUは、つま先接地センサ10の検出値によって前足のつま先が接地したか否かを判断する(ステップ255)。
つま先が接地していない場合(ステップ255;N)、CPUは、つま先接地センサ10、踵接地センサ12の検出値により後ろ足が離地したか否かを判断する(ステップ260)。
【0053】
後ろ足が離地していない場合(ステップ260;N)、CPUは、ステップ260で引き続き後ろ足の離地を監視し、後ろ足が離地した場合(ステップ260;Y)、CPUは、つま先接地センサ10の検出値により前方の足のつま先が接地したか否かを判断する(ステップ265)。
【0054】
前方の足のつま先が接地していない場合(ステップ265;N)、CPUは、踵高さ判定処理に移行する(ステップ357)。
一方、つま先が接地した場合(ステップ255;Y、ステップ265;Y)、CPUは、踵接地センサ12の検出値によって、前方の足の踵が接地したか否かを判断する(ステップ270)。
【0055】
前方の足の踵が接地していない場合(ステップ270;N)、CPUは、つま先高さ判定処理に移行する(ステップ360)。
一方、前方の足の踵が接地している場合(ステップ270;Y)、CPUは、姿勢センサの検出値から両足の各関節の角度を計算し、これによって左右のつま先の高さを測定する(ステップ275)。
つま先の高さに違いがない場合(ステップ280;N)、CPUは、平地を歩行すると判定し(ステップ285)、平地を歩行する場合のアシスト力を決定する(ステップ290)。
【0056】
一方、左右のつま先の高さに違いがある場合(ステップ280;Y)、CPUは、前方の足の足装着部24の前後傾斜をつま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値によって測定する(ステップ295)。
前後傾斜がない場合(ステップ300;N)、CPUは、各姿勢センサの検出値から前方の足が後方の足よりも高いか否かを判断する(ステップ305)。
【0057】
前方の足が後方の足よりも高くない場合(ステップ300;N)、CPUは、踵つき下り階段(下り階段を踵で下りている)と判定し(ステップ310)、この場合のアシスト力を決定する(ステップ315)。
一方、前方の足が後方の足よりも高い場合(ステップ305;Y)、CPUは、踵つき上り階段(上り階段を踵で上がる)と判定し(ステップ320)、この場合のアシスト力を決定する(ステップ325)。
【0058】
また、前方の足の前後傾斜がある場合(ステップ300;Y)、CPUは、つま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値から、前方の足のつま先が踵よりも低いか否かを判断する(ステップ340)。
つま先が踵よりも低い場合(ステップ340;Y)、CPUは、下り坂道と判定し(ステップ330)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ335)。
一方、つま先が踵よりも高い場合(ステップ340;N)、CPUは、上り坂道と判定し(ステップ345)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ350)。
【0059】
図7は、ステップ360(図6)のつま先高さ判定処理の手順を説明するためのフローチャートである。
CPUは、両足の各姿勢センサの検出値から各関節の角度を計算し、左右のつま先の高さを測定する(ステップ365)。
次に、CPUは、左右のつま先の高さに違いがあるか否かを判断する(ステップ367)。
左右のつま先の高さに違いがない場合(ステップ367;N)、CPUは、つま先立ちと判定し(ステップ370)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ375)。
【0060】
一方、左右のつま先の高さに違いがある場合(ステップ367;Y)、CPUは、両足の各姿勢センサの検出値によって、前方の足が後方の足よりも高いか否かを判断する(ステップ378)。
前方の足が後方の足よりも高い場合(ステップ378;Y)、CPUは、踵浮き上り階段と判定し(ステップ380)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ383)。
前方の足が後方の足よりも高くない場合(ステップ378;N)、CPUは、踵浮き下り階段と判定し(ステップ385)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ388)。
【0061】
図8は、ステップ357(図6)の踵高さ判定処理の手順を説明するためのフローチャートである。
CPUは、両足の各姿勢センサの検出値から、左右の踵の高さを測定する(ステップ430)。
次に、CPUは、測定した踵の高さに違いがあるか否かを判断する(ステップ435)。
【0062】
踵の高さに違いがない場合(ステップ435;N)、CPUは、踵立ちと判定し(ステップ450)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ455)。
一方、踵の高さに違いがある場合(ステップ435;Y)、CPUは、両足の各姿勢センサの検出値から各関節の角度を計算し、前方の足が後方の足よりも高いか否かを判断する(ステップ460)。
【0063】
前方の足が後方の足よりも高くない場合(ステップ460;N)、CPUは、踵つき下り階段(下り階段を踵で下りる)と判定し(ステップ465)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ470)。
前方の足が後方の足よりも高い場合(ステップ460;Y)、CPUは、踵つき上り階段(上り階段を踵で上がる)と判定し(ステップ475)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ480)。
【0064】
図9は、ステップ355(図6)の後方移動処理の手順を説明するためのフローチャートである。
CPUは、後方の足のつま先接地センサ10の検出値により、後方の足のつま先が接地したか否かを判断する(ステップ505)。
後方の足のつま先が接地していない場合(ステップ505;N)、CPUは、踵接地判定処理に移行する(ステップ590)。
【0065】
後方の足のつま先が接地している場合(ステップ505;Y)、CPUは、両足の姿勢センサの検出値から各関節の角度を計算し、これによって左右のつま先の高さを測定する(ステップ510)。
次に、CPUは、左右のつま先の高さに違いがあるか否か判断する(ステップ515)。
【0066】
左右のつま先の高さに違いがない場合(ステップ515;N)、CPUは、平地通常後退歩行(平地を通常の歩行で後退する)と判定し(ステップ520)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ525)。
【0067】
左右のつま先の高さに違いがある場合(ステップ515;Y)、CPUは、後方の足のつま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値により、後ろに出したつま先の前後傾斜を測定する(ステップ530)。
傾斜がない場合(ステップ535;N)、CPUは、両足の各姿勢センサの検出値から各関節の角度を計算し、後方の足が前方の足よりも高いか否かを判断する(ステップ540)。
【0068】
後方の足が低い場合(ステップ540;N)、CPUは、下り階段通常後退歩行(下り階段を通常の歩行で後退する)と判定し(ステップ545)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ550)。
後方の足が高い場合(ステップ540;Y)、CPUは、上り階段通常後退歩行(上り階段を通常の歩行で後退する)と判定し(ステップ555)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ560)。
【0069】
後方の足のつま先に前後傾斜がある場合(ステップ535;Y)、CPUは、後方の足のつま先姿勢センサ11の検出値により、後方の足のつま先が前傾か否かを判断する(ステップ565)。
つま先が前傾の場合(ステップ565;Y)、CPUは、上り坂道通常後退歩行(上り坂道を通常の歩行で後退する)と判定し(ステップ570)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ575)。
つま先が前傾でない場合(ステップ565;N)、CPUは、下り坂道通常後退歩行(下り坂道を通常の歩行で後退する)と判定し(ステップ580)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ585)。
【0070】
図10は、ステップ590(図9)の踵接地判定処理の手順を説明するためのフローチャートである。
まず、CPUは、後方の足の踵が接地したと判定する(ステップ605)。
次に、CPUは、両足の姿勢センサの検出値から各関節の角度を計算し、両足の踵の高さに違いがあるか否かを判断する(ステップ610)。
踵の高さに違いがない場合(ステップ610;N)、CPUは、不整地後退歩行(不整地を後退歩行する)と判定し(ステップ615)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ620)。
【0071】
一方、踵の高さに違いがある場合(ステップ610;Y)、CPUは、後方の足のつま先姿勢センサ11、踵姿勢センサ13の検出値により後ろに出した足の踵の前後傾斜を測定する(ステップ625)。
次に、CPUは、計測により後ろ足の踵に前後傾斜があるか否かを判断する(ステップ630)。
前後傾斜がない場合(ステップ630;N)、CPUは、両足の姿勢センサの検出値から各関節の角度を計算し、これによって後方の足が前方の足よりも高いか否かを判断する(ステップ635)。
【0072】
前方の足の方が高い場合(ステップ635;N)、CPUは、下り階段不整地後退歩行と判定し(ステップ640)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ645)。
後方の足の方が高い場合(ステップ635;Y)、CPUは、上り階段つま先浮き後退歩行と判定し(ステップ650)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ655)。
【0073】
また、後ろ足の踵に前後傾斜がある場合(ステップ630;Y)、CPUは、踵姿勢センサ13により後ろ足の踵が前傾であるか否かを判断する(ステップ660)。
踵が前傾である場合(ステップ660;Y)、CPUは、上り坂道不整地後退歩行であると判断し(ステップ665)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ670)。
踵が前傾でない場合(ステップ660;N)、CPUは、下り坂道不整地後退歩行であると判定し(ステップ675)、その場合のアシスト力を決定する(ステップ680)。
【0074】
以上に説明した実施の形態、及び変形例により、次のような効果を得ることができる。
(1)装着型ロボット1の装着者は、平地、階段、坂道などの歩行面の種類によらず、平地を歩行するのと同様の筋力でこれら各歩行面を歩行することができる。
(2)装着型ロボット1は、脚の姿勢やつま先・踵の接地の有無によって歩行面の種類を特定することができる。
(3)装着型ロボット1は、特定した歩行面の種類に応じたアシスト力を発揮し、装着者の歩行を歩行面の種類に応じて支援することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、各姿勢センサや接地センサからの検出値によって歩行面の種類を特定したが、この他に、例えば、ナビゲーションシステム、画像認識、ビーコンなどによって歩行面を特定するように構成することも可能である。
ナビゲーションを用いる場合、装着型ロボット1は、GPS(Global Positioning Systems)などを用いて装着者の歩行している地点を特定し、その地点に対応づけられた歩行面情報により歩行面の種類を特定する。
画像認識を行う場合、装着型ロボット1は、カメラで歩行面を撮影し、画像解析によって歩行面の種類を特定する。
ビーコンを用いる場合、装着型ロボット1は、ビーコンから送信される歩行面情報を受信して歩行面の種類を特定する。
【0076】
以上に説明した、実施の形態、及び変形例によって、次の構成を得ることができる。
装着型ロボット1は、各姿勢センサや各接地センサによって歩行面の種類を特定するための情報(各センサの検出値)を取得するため、歩行支援対象者(装着者)が歩行する歩行面の情報を取得する歩行面情報取得手段を備えている。
また、装着型ロボット1は、これらセンサの検出値から歩行面の種類を特定するため、前記取得した歩行面の情報に基づいて前記歩行面の種類を特定する歩行面種類特定手段を備えている。
また、装着型ロボット1は、各アシストアクチュエータを駆動して歩行面の種類に応じた力を出力させ、装着者が歩行に際して関節の周りに発生させる関節モーメントを軽減するため、前記特定した歩行面の種類に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部(腰部から下の部分)の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援手段を備えている。
【0077】
装着型ロボット1は、平地歩行の場合に装着者の脚部に作用させるアシスト力を増減して他の種類の歩行面の場合のアシスト力を決定するため、前記歩行支援手段は、歩行面の種類が平地の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させる前記軽減後のモーメントを基準としている。
そして、装着型ロボット1は、例えば、1歩行周期における関節モーメントの力積比を平地でのアシスト力に掛けた値を他の歩行面でのアシスト力とするなどすることにより、装着者が平地で発生させる関節モーメントを基準とする所定範囲内の関節モーメントで他の歩行面を歩行できるようにするため、前記歩行支援手段は、他の種類の歩行面の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントが所定範囲となるように、前記脚部に作用させる力を決定している。
【0078】
また、装着型ロボット1が記憶するアシスト力テーブル35は、平地歩行の場合に各アシストアクチュエータが発揮する力を基準として、他の歩行面で発揮する力の割合を規定しており、装着者が平地歩行程度の力で他の歩行面を歩けるようにするために装着者が関節に発生させる関節モーメントを軽減する割合を示している。このため、アシスト力テーブル35は、前記歩行面の種類と、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントの軽減率と、の対応を記憶する軽減率対応記憶手段として機能している。
そして、装着型ロボット1は、アシスト力テーブル35に従って各アシストアクチュエータの発揮するトルクを軽減して歩行を支援するため、前記歩行支援手段は、前記特定した歩行面の種類に前記軽減率対応記憶手段で対応する軽減率となるように歩行を支援している。
【0079】
また、アシスト力の決定方法として、平地歩行の場合に装着者が発生させる関節モーメントの最大値を超える領域でアシスト力を増大して超過分を補う方式も可能であり、この場合、前記歩行支援手段は、前記脚部の関節に発生させるモーメントが、歩行面の種類が平地の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントの最大値以内となるように歩行を支援している。
【0080】
各姿勢センサは、前記歩行支援対象者の脚部の姿勢を検出する足姿勢検出手段として機能し、つま先接地センサ10は、前記歩行支援対象者のつま先の接地を検出するつま先接地検出手段として機能し、踵接地センサ12は、前記歩行支援対象者の踵の接地を検出する踵接地検出手段として機能している。
装着型ロボット1は、各姿勢センサによる脚部の姿勢(各関節の角度)、つま先と踵の接地の有無の組合せによって、歩行面の種類を特定するため、前記歩行面種類特定手段は、前記検出した脚部の姿勢、つま先の接地の有無、及び踵の接地の有無の組合せによって歩行面の種類を特定している。
【0081】
また、装着型ロボット1は、制御装置2の記憶媒体に記憶した歩行支援プログラムをCPUで実行して各機能を発揮するため、歩行支援対象者が歩行する歩行面の情報を取得する歩行面情報取得機能と、前記取得した歩行面の情報に基づいて前記歩行面の種類を特定する歩行面種類特定機能と、前記特定した歩行面の種類に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援機能と、をコンピュータに実現させる歩行支援プログラムを記憶している。
【符号の説明】
【0082】
1 装着型ロボット
2 制御装置
3 センサ情報取得部
4 歩行面種類判定部
5 歩行アシスト力決定部
10 つま先接地センサ
11 つま先姿勢センサ
12 踵接地センサ
13 踵姿勢センサ
14 腰姿勢センサ
15 上腿姿勢センサ
16 下腿姿勢センサ
17 股関節アシストアクチュエータ
18 膝関節アシストアクチュエータ
19 足首関節アシストアクチュエータ
21 腰部装着部
22 上腿装着部
23 下腿装着部
24 足装着部
26 上腿連結部材
27 下腿連結部材
35 アシスト力テーブル
36 最大値
37 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行支援対象者が歩行する歩行面の情報を取得する歩行面情報取得手段と、
前記取得した歩行面の情報に基づいて前記歩行面の種類を特定する歩行面種類特定手段と、
前記特定した歩行面の種類に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援手段と、
を具備したことを特徴とする歩行支援装置。
【請求項2】
前記歩行支援手段は、歩行面の種類が平地の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させる前記軽減後のモーメントを基準として、他の種類の歩行面の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントが所定範囲となるように、前記脚部に作用させる力を決定することを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項3】
前記歩行面の種類と、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントの軽減率と、の対応を記憶する軽減率対応記憶手段を具備し、
前記歩行支援手段は、前記特定した歩行面の種類に前記軽減率対応記憶手段で対応する軽減率となるように歩行を支援することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の歩行支援装置。
【請求項4】
前記歩行支援手段は、前記脚部の関節に発生させるモーメントが、歩行面の種類が平地の場合に前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントの最大値以内となるように歩行を支援することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の歩行支援装置。
【請求項5】
前記歩行支援対象者の脚部の姿勢を検出する足姿勢検出手段と、
前記歩行支援対象者のつま先の接地を検出するつま先接地検出手段と、
前記歩行支援対象者の踵の接地を検出する踵接地検出手段と、
を具備し、
前記歩行面種類特定手段は、前記検出した脚部の姿勢、つま先の接地の有無、及び踵の接地の有無の組合せによって歩行面の種類を特定することを特徴とする請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載の歩行支援装置。
【請求項6】
歩行支援対象者が歩行する歩行面の情報を取得する歩行面情報取得機能と、
前記取得した歩行面の情報に基づいて前記歩行面の種類を特定する歩行面種類特定機能と、
前記特定した歩行面の種類に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援機能と、
をコンピュータに実現させる歩行支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143448(P2012−143448A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5037(P2011−5037)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】