説明

歯の修復物の製作のための印象スキャニング

本発明は、歯の印象の正確な三次元模型を得る方法に関する。本方法は、上顎の印象および/または下顎の印象の少なくとも一部をスキャンするステップと、印象のスキャンを得るステップと、印象のスキャン品質を評価するステップと、この印象のスキャンを用いて三次元模型を得ることによって歯の印象の正確な三次元模型を得るステップとを含む。本発明はまた、印象および/またはプレパレーションの品質を評価する方法を提供し、この方法は、評価対象の印象および/またはプレパレーションの三次元コンピュータ模型を得るステップと、印象および/またはプレパレーションを前記三次元模型に基づき評価するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の印象をスキャンし位置合わせすることによって歯および咬合の三次元模型を作成するためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
当該出願または本願明細書に引用されている特許および非特許文献は、それぞれの内容全体を参照により本願明細書に援用するものとする。
【背景技術】
【0003】
本発明は、歯冠、ブリッジ、アバットメント、およびインプラントなどの歯科修復物の製作分野に関する。患者が歯の修復を必要とすると、歯科医は歯を準備する。たとえば、歯冠を接着する箇所のプレパレーションを行うために、損傷した歯を削って滑らかにする。代替治療では、インプラント(チタン製ネジ)を患者の顎に挿入し、このインプラントに歯冠またはブリッジを取り付ける。歯の準備またはインプラントの挿入後、歯科医は通常、上顎、下顎の印象、および咬み合わせ記録、あるいは片面印象を両面トレー(トリプルトレーとしても公知)に作成する。
【0004】
これらの印象は歯科技工士に送られ、修復物、たとえばブリッジ、が実際に製作される。修復物を製作する第1のステップでは、伝統的には、上顎および下顎の印象から上顎および下顎の歯の模型がそれぞれ成型される。図1aおよび図8は、歯の模型および印象をそれぞれ示す。これらの模型は、通常、石膏で作られ、咬合記録を用いて歯科用咬合器において位置合わせされることが多い。咬合器は、実際の咬合および咀嚼運動をシミュレートする。歯科技工士は、美しい外観および咬合機能を保証するために、歯科修復物を咬合器内で組み上げる。咬合器内での成型物の適正な位置合わせは、最終的な修復物のために重要である。
【0005】
歯科修復物を製作するためのCAD技術は急速に発展し、品質が改良され、コストが低減し、他の方法では利用不能な魅力的な材料で製作しやすくなってきている。CAD製作工程の第1のステップでは、患者の歯の三次元模型を作成する。これは、伝統的には、歯科用石膏模型の一方または両方を三次元スキャンすることによって行われる。歯の三次元レプリカはCADプログラムにインポートされ、そこで歯科修復物全体またはブリッジ部分構造が設計される。次に、修復物の最終的な三次元設計が製作される。これには、たとえば、フライス盤、三次元プリンタ、ラピッドプロトタイピング製作、または他の製作装置が用いられる。歯科修復物に対する精度要件は極めて高い。そうでなければ、歯科修復物は見た目が悪く、歯に嵌らなくなり、痛みまたは感染症を引き起こすこともあり得る。
【0006】
理想的な三次元スキャナおよび歯科用CAD/CAMソリューションにおいては、歯科技工所または歯科医は、印象から石膏模型を作成する必要はなく、印象を直接スキャンする。これにより、取り扱いが容易になり、コストが低減されるであろう。さらに、印象の形状寸法は、これの区分化された石膏コピーに比べ、より精度が高いので、修復物がより高精度になるであろう。CTまたはMRスキャン装置によって印象のスキャンを行えるとしても、このようなスキャナは法外に高価であり、かつ必要な精度が得られない。これに対して、レーザまたは白色光三次元スキャナなどの光学スキャナは、より安価であり、より高い精度および詳細レベルが得られる。光学表面スキャナの問題は、一般に、歯の印象の狭い窩洞を効率的にスキャンできない点である。一般に、これらのスキャンでは、印象の深く狭い部分においてデータが不足するか、または精度が下がるであろう。
【0007】
印象スキャナの代替は、直接口内スキャナである。ただし、印象のスキャンは、口内スキャナに比べ、明らかな利点がいくつかある。これらの利点として、歯科医院において装置投資が必須ではない点、印象採得のためのトレーニングが実質的に不要である点、チェアタイムが短縮される点、スキャンに問題がある場合は、物理的模型の注型が常に可能であり、口内スキャナの低精度を補償するための物理的基準として注型模型を用いることができる点、患者の口腔のパウダリングが不要である点、およびより大きな対合領域を捕捉する際の困難さが著しく軽減される点、および口内スキャンと異なり、印象は、明確に見えるマージンラインを有する点、が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
石膏模型の代わりに印象をスキャンすると、歯科技工所での伝統的な歯の模型の作成が不要になり得る。製作された修復物の嵌合および設計をチェックまたは修正するために歯科技工所または歯科医が伝統的な歯の模型を依然として必要とする場合は、そのような模型を印象のスキャンから用意することも可能である。この場合は、データを反転し、仮想ベースまたは他の特徴を追加してから、この模型を適切な三次元製作装置で製作する。
【0009】
本発明は、印象を直接スキャンすることによって、石膏模型の作成に必要な手間とコストを省くと共に、最終的な修復物に要求される精度を得るためのソリューションを提供する。したがって、本発明は、歯の印象の正確な三次元コンピュータ模型を得る方法に関する。この方法は、
1)上顎の印象および/または下顎の印象の少なくとも一部をスキャンすることによって印象のスキャンを得るステップと、
2)この印象のスキャン品質を評価するステップと、
3)この品質が当該歯の印象の正確な三次元模型を可能にしない場合は、
当該歯の印象の1つ以上の窩洞に充填材を充填してこれらの窩洞の模型を得てから、この模型をスキャンすることによって模型のスキャンを得るステップと、
当該模型のスキャンと当該印象のスキャンとを位置合わせし組み合わせることによって、三次元模型を得るステップ、
および/または
当該歯の印象の1つ以上の着目領域を再スキャンするステップと、
当該着目領域のスキャンと当該印象のスキャンとを位置合わせし組み合わせることによって三次元模型を得るステップ、
または、
4)当該品質が当該歯の印象の正確な三次元模型を可能にする場合は、
当該印象のスキャンを用いて三次元模型を得ることによって、当該歯の印象の正確な三次元模型を得るステップと、を含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、歯の印象の三次元模型を得る方法であって、正確な咬合を得るために複数のスキャンを位置合わせする方法に関する。したがって、本発明は、歯の印象の三次元模型を得る方法にさらに関する。この方法は、
両面印象の上顎の印象および下顎の印象をスキャンして当該両面印象のスキャンを得るステップと、
当該両面印象の上顎の印象のスキャンと下顎の印象のスキャンとを位置合わせするステップと、
それによって当該歯の印象の三次元模型を得るステップ、を含む。
【0011】
もちろん、上記2つの方法を組み合わせることによって、歯の片面印象の正確な三次元コンピュータ模型を得るための方法によって片面印象のスキャンを行えるようにしてもよい。
【0012】
第3の局面において、本発明は、印象および/またはプレパレーションの品質を評価する方法に関する。この方法は、
a.評価対象の印象および/またはプレパレーションの三次元コンピュータ模型を得るステップと、
b.この三次元模型に基づき当該印象および/またはプレパレーションを評価するステップと、を含む。
【0013】
このような評価によって、患者が歯科医院にいる間に素早いフィードバックが可能になるため、コストおよび/または精神的緊張が著しく軽減され得る。もちろん、このような評価は、特に本発明の他の局面と組み合わせた場合に、有益な情報を歯科医に提供し得る。
【0014】
第4の局面において、本発明は、少なくとも1つの歯と隣接組織とを含む三次元模型を得る方法に関する。この方法は、
a.上顎の印象および/または下顎の印象および/または両面印象の少なくとも一部をスキャンすることによって印象のスキャンを得るステップと、
b.少なくとも1つの印象のスキャンを用いて三次元予備模型を得るステップと、
この三次元予備模型とCTおよび/またはMRおよび/またはX線スキャンの少なくとも一部とを位置合わせすることによって新しい三次元模型を得るステップと、を含む。この局面において、本発明は、ドリルガイドの設計に特に適している。
【0015】
第5の局面において、本発明は、歯冠の少なくとも一部を製作する方法に関する。本方法は、
a.歯冠を配置する部位に関する情報を含む歯の印象の少なくとも一部をスキャンすることによって三次元模型を得るステップと、
b.この三次元模型内で、および/またはこの三次元模型に対して、当該歯冠の少なくとも一部のCAD設計を行うことによって当該歯冠の少なくとも一部のコンピュータ模型を得るステップと、
c.得られたコンピュータ模型の少なくとも一部から歯冠全体すなわち完全な歯冠を製作するステップと、を含む。
【0016】
このため、今日手作業で行われている作業の少なくとも一部を電子的に案内される製作装置によって実施し得るので、低コスト化および高精度化を実現し得る。
【0017】
第6の局面において、本発明は、少なくとも1つの歯科用インプラントの向きおよび位置を求める方法に関する。本方法は、
a.少なくとも1つの歯科用インプラントに対応する少なくとも1つの固定された印象アバットメントを含む印象を取得するステップ、
および/または
スキャンインプラント/アナログを取り付ける少なくとも1つの歯科用インプラントに対応する少なくとも1つの固定された印象アバットメントを含む印象、
および/または
上顎および/または下顎の少なくとも一部のポジ模型であって、少なくとも1つの模型インプラント/アナログを含み、その向きおよび位置が当該歯科用インプラントの向きおよび位置に対応するジ模型、
および/または
上顎および/または下顎の少なくとも一部のポジ模型であって、少なくとも1つの模型インプラント/アナログを含み、その向きおよび位置がスキャンアバットメントが取り付けられる当該歯科用インプラントの向きおよび位置に対応するポジ模型、を得るステップと、
b.当該印象アバットメントおよび/またはスキャンインプラント/アナログおよび/または模型インプラント/アナログおよび/またはスキャンアバットメントの形状の所定の情報を得るステップと、
c.当該印象の少なくとも一部をスキャンすることによってスキャンデータを得るステップであって、当該一部は当該少なくとも1つの印象アバットメントおよび/またはスキャンインプラント/アナログを含むステップと、
および/または
当該ポジ模型の少なくとも一部をスキャンすることによってスキャンデータを得るステップであって、当該一部は少なくとも1つの模型インプラント/アナログおよび/またはスキャンアバットメントを含むステップと、
当該所定の情報と当該スキャンデータとに基づき、当該歯科用インプラントの向きおよび位置を求めるステップと、を含む。本発明のこの局面は、インプラントの正確な位置および向きを必要とする、当該インプラントに接続される義歯などのCAD設計を可能にする。
【0018】
第7の局面において、本発明は、上顎および/または下顎の少なくとも一部の歯の模型を製作する方法に関する。本方法は、
a.印象スキャン、口内スキャン、CT、MR、またはX線スキャン、ポジ模型のスキャン、あるいはこれらの組み合わせのいずれかによって、前記上顎および/または下顎の少なくとも一部の三次元模型を得るステップと、
取得された三次元模型から歯の模型を製作するステップと、を含む。このように取得されたデータから歯の模型を製作する方法は、データのみを保存し、必要に応じて物理的模型を作成し得るので、歯の模型の保存を容易にし得る。このような模型を利用すると、アバットメントの製作場所および模型の取り扱いおよび/またはスキャン場所などのサイト間での印象および/または模型の輸送も不要にし得る。
【0019】
第8の局面において、本発明は、本発明の他の複数の局面のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0020】
第9の局面において、本発明は、三次元コンピュータ模型および/または歯冠/ブリッジの少なくとも一部を作成するためのシステムに関する。このシステムは、本発明の他の複数の局面のステップを実行するための1つ以上のコンピュータ命令が格納されたコンピュータ可読媒体を含む。
【0021】
第10の局面において、本発明は、歯の片面または両面の印象を取得するために適したトレーに関する。このトレーは、このトレーを三次元スキャナ内に保持するために適した取り付け手段をさらに備えることを特徴とする。この局面により、追加の据え付け手段がスキャナに不要になり、スキャン工程が著しく簡略化され得る。
【0022】
第11の局面において、本発明は、歯の両面の印象を取得するために適したトレーに関する。このトレーは、金属、鋼鉄、および繊維複合材のうちの少なくとも1つの材料による補強によって機械的に安定していることを特徴とする。このような強化されたトレーによって、片面の印象を不要にし得る。
【0023】
さらに、本発明は、歯の印象の正確な三次元コンピュータ模型を得る方法に関する。本方法においては、1つのセンサ、すなわちカメラ、と光源とを用いて印象をスキャンする。このときの光源とカメラとの間の角度はAである。その後に別のセンサを用いて複数の着目領域を再スキャンする。この別のセンサの場合は、光源とカメラとの間の角度はBであり、角度Bは角度Aより小さい。したがって、角度Aを有するスキャナを1つだけ用いた場合に比べ、より深い窩洞のスキャンが可能になる。本発明は、再スキャンステップを実施する前に、印象のスキャンに基づき角度Bを求めるステップをさらに含み得る。角度Bは、角度Aの95%より小さく、角度Aの90%より小さく、角度Aの85%より小さく、角度Aの80%より小さく、角度Aの70%より小さく、角度Aの60%より小さく、角度Aの50%より小さく、角度Aの40%より小さく、角度Aの30%より小さく、角度Aの20%より小さく、角度Aの10%より小さく、角度Aの5%より小さいことが好ましい。
【0024】
最後に、本発明は、歯の印象の正確な三次元コンピュータ模型を得る方法に関する。本方法は、
1)光源とカメラとの間の角度がAである三次元センサを用いて、上顎の印象および/または下顎の印象の少なくとも一部をスキャンすることによって印象のスキャンを得るステップと、
2)この印象のスキャン品質を評価するステップと、
3)この品質が当該歯の印象の正確な三次元模型を可能にしない場合は、
光源とカメラとの間の角度Bが、角度Aより小さい角度Bである別の三次元センサを選択し、
この選択したセンサを用いて歯の印象の1つ以上の着目領域を再スキャンし、
この着目領域のスキャンと印象のスキャンとを位置合わせし組み合わることによって三次元模型を得るステップ、あるいは、
4)上記品質が当該歯の印象の正確な三次元模型を可能にする場合は、
印象スキャンを用いて三次元模型を得る、
それによって、当該歯の印象の正確な三次元模型を得るステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(定義)
歯の印象:好ましくはトレーに作成された歯のネガ印象。
【0026】
歯の模型:歯の印象から作成された歯のポジレプリカ。
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明の目的は、高価で時間のかかる歯科用石膏模型の製作を不要にする、歯科修復物のCAD製作のための入力として用いられる歯の印象をスキャンするための改良されたスキャンおよび位置合わせ方法である。伝統的な注型工程および歯の模型の分割は誤差を取り込むので、印象のスキャンは品質も向上させる。さらに、印象のスキャンは、歯科医での患者のチェアタイムを長引かせず、歯科医にとっては義務的なエントリコストがなく、歯科医の教育は一切不要であり、かつ総製作時間が短縮されるため、患者の満足感が向上するほか、仮修復も不要にし得る。
【0028】
(正確な三次元模型)
光学三次元スキャナによる歯の印象のスキャンは、主に窩洞内の可視性不足のために極めて難しい。したがって、伝統的な三次元スキャンは被写域の不足という結果に至る。すなわち、伝統的な三次元スキャンでは、スキャンされなかった穴または欠落領域が存在し得る。本発明は、このような問題に対する解決策を提供する。上記のように、1つの解決策は、印象の1つ以上の着目領域を再スキャンすることによって、場合によっては異なるスキャナおよび/または異なるスキャナ設定を用いて再スキャンすることによって、着目領域内の穴の数が減るか皆無になるなど、より高品質のスキャンを提供することである。
【0029】
ここで、スキャン「品質」という用語は、スキャンの被写域および精度に関する品質を意味する。表面の三角測量とその後の表面上の穴の位置の突き止めによって、不十分な被写域を自動的に検出し得る。良好な品質の要件は、着目領域に穴が皆無であるか、または穴の数が極めて少ないことである。いずれかの穴が許容されるとしても、そのような穴の位置は正確な三次元模型の作成を妨げてはならない。実際に、このことは、穴がプレパレーション域に存在してはならないことを意味する。プレパレーション域は、手作業による選択に基づき位置決めすることも、または好ましくは、たとえば特徴検出を用いて、自動的に検出することもできる。プレパレーション域における致命的な穴1000の例が図10に示されている。
【0030】
さらに、ノイズもスキャンの精度を低下させ得る。ノイズは、印象のような窩洞内へのスキャン時に特に重要な問題である。その理由は、窩洞は、かなりの量のトラッキングおよびハーフオクルージョンノイズを生じさせるからである。ハーフオクルージョンノイズは、Curless and Levoy(1995)に詳細に説明されている。ノイズ1001による精度不足が図10に示されている。ハーフオクルージョンノイズおよび被写域は、印象スキャンの実用化の主な制限要因であり、スキャンポイントがノイズポイントであるか真のポイントであるかの判定は、歯科修復物の最終品質にとって極めて重要である。したがって、ノイズおよび被写域の問題を自動的に判定することは極めて重要である。ノイズポイントは、レーザトラッキング、捕捉時の表面の向き、複数のカメラの視野、局所的な表面統計データ、表面の曲率、形状の統計データ、または逆レイトレーシングから導出されたポイント品質を用いて自動的に検出されるようにしてもよい。
【0031】
「正確な三次元模型」という用語は、歯科修復物の製作にそのまま使用し得るような精度を有する模型を意味する。
【0032】
スキャンから即座に導出できる別の重要な品質評価は、印象およびプレパレーションのそれぞれの品質である。実際に、歯科医によって作成された低品質の印象および粗末なプレパレーションは、最終的な修復物にとって最も大きな品質上の問題のうちの2つである。ただし、印象およびプレパレーションの品質は、スキャンに基づき、たとえばアンダーカットの検出、気泡の検出、ノイズレベル、印象材料の評価、形状の評価または形状寸法の測定値によって評価することができる。この評価の結果を三次元スキャンに視覚的に表示することによって、印象またはプレパレーションを改良するように歯科医を導くことができる。
【0033】
特に、スキャンを歯科医院で直接実施する場合は、印象およびプレパレーションの品質評価によって新しい印象の取得またはプレパレーションの改良に導くことも可能であろう。患者が待っている間に評価を行えるように、3Shape D250スキャナなどの高速スキャナの使用が好ましい。これは、修復物の大幅な品質向上をもたらし、さらに/または印象を再取得するための2回目の診察に伴う遅延および手間を省くことによって患者の不快感および費用の軽減を可能にし得る。
【0034】
修復物の最終的な結果に影響する他の種類の品質も評価し得る。
【0035】
上記の品質評価は、口腔領域の他の種類のスキャン、たとえば石膏模型の伝統的な三次元スキャン、直接口内スキャン、CT、MR、またはX線スキャンなど、に対しても実施し得る。
【0036】
歯の印象のような窩洞内へのスキャンは、価格競争力のある構造の光スキャナを使用する挑戦的な問題である。この問題は、1つの光源によって1つのパターンを対象物に対して投影し、1つ以上のセンサがこの投影されたパターンの画像を取得するという基本的構成に由来する。三次元の復元を行うには、光源とセンサとの間の角度を一般に20〜30度にする必要がある。三次元の復元を行うために必要な角度と、センサとレーザとが同時に表面上の同じポイントを見る必要があるという事実とによって、スキャナの窩洞スキャン能が大きく制限される。最適な結果を達成するには、実際の視点が重要になる。少なくとも3つの軸を有するスキャナ、たとえば3Shape D200、D250、またはD300スキャナなど、は対象物の向きを三次元に変えることができるので、相対的な視点を変えることができる。PCT出願第WO2006/007855号明細書に記載されているように、難しい歯の印象において被写域を得るには、個々の対象物に適応した視点の切り替えおよびスキャンシーケンスを適用できる。
【0037】
一実施形態において、印象のスキャン品質は、1つ以上の着目領域を選択するか、または自動的に検出し、このような着目領域を再スキャンすることによって向上される。この再スキャンは、特定の着目領域に対して最適化されたスキャナおよび/またはスキャナ設定を用いて実施し得る。
【0038】
欠落領域の再スキャンを行うには、これらの領域を初期三次元データセットで検出し、次に追加の自動スキャンセッションにおいてこれらの欠落領域を対象として含むために、印象または三次元センサの最適な機械的位置決めをそれぞれの相対位置に関して行う。最適化機能は、検出された穴の正確な位置と、光源および/またはカメラの視野を掩蔽し得る周囲の印象形状とを考慮する。
【0039】
再スキャンは、追加の三次元センサ(カメラおよび光源)を用いて行うことも、スキャナ内の1つ以上の付加カメラを用いて行うこともできる。このような追加のセンサは、光源とカメラとの間の角度をより小さくすることによって、深さ対幅の比率がより大きい窩洞を覗き込めるようにする。このような実施形態においては、初回のスキャンを実施するには、光源とカメラとの間の角度がより大きいカメラと光源との組み合わせを使用し、次に窩洞の最も深い領域をカバーするために、光源/カメラの角度がより小さい追加のカメラまたは光源を用いることができるであろう。
【0040】
再スキャンは、可視性を上げるために、印象を切断した後に実施してもよい。必要な切断によって必要な情報を有する領域が破壊される場合は、切断前のスキャンと切断後のスキャンとを位置合わせし組み合わせることによって完全な三次元模型を形成することができる。一般に、切断前のスキャンは、マージンライン領域を含む。次に、残っている歯の最上部の印象に対応する深い窩洞内への可視性をもたらすために、このマージンライン領域が切り取られる。ただし、正確なスキャンを実現するために、模型を1回以上切断してもよい。各切断前に模型をスキャンし、次に対応する三次元模型同士を順次または同時に位置合わせしてもよい。
【0041】
別の実施形態において、窩洞内へのスキャンの問題は、1つ以上の窩洞に充填材を充填して窩洞の模型を作成することによって解決される。次に、この窩洞の模型をスキャンし、窩洞のスキャンと印象のスキャンとを位置合わせし組み合わせてもよい。一実施形態においては、少なくとも2つの窩洞、たとえば少なくとも3つの窩洞、を充填する。これらの窩洞は隣接し合う窩洞でも、または1つ以上の充填されない窩洞によって隔てられた窩洞でもよい。
【0042】
本工程は、図10aおよび図10bに示されている。ここでは、2つのプレパレーションにおいて被写域1000が不足し、1つのプレパレーションにおいてノイズの問題1001があるために、品質上の問題が生じる。次に、3つの問題のあるプレパレーションのための模型が、印象を用いて個々の石膏模型1100として注型される。これらの3つの「ポジ」模型は、次に品質上の問題なくスキャンされ1200、これらのスキャンは印象において対応する各プレパレーション1102に位置合わせされマージされる1103。この位置合わせを行うには、2つのスキャン上で対応するポイント1104を選択し、その後にICP位置合わせ(Besl and McKay、1992)を実施してもよい。さらに別の実施形態において、窩洞へのスキャンの問題は、着目領域の再スキャンと模型のスキャンとを組み合わせることによって解決される。一部の実施形態においては、複数の模型を用意することが好ましい。これらの模型は、手作業で作成し、たとえば歯の輪郭を示す線を明確に含めることによって、これらの明確な線がスキャンにも含まれるようにしてもよい。
【0043】
印象材料の外観上の特性もスキャン品質に極めて重要である。これは、特に深い歯または薄い歯の場合に当てはまる。このような歯の場合、相互反射によって画像追跡ソフトウェアの問題および著しいノイズが生じ得るからである。掩蔽部の縁端におけるハーフオクルージョンノイズの問題によって、著しいスキャンアーチファクトが作成されることがあるが、これらは逆レイトレーシングアルゴリズムによって除去し得る。
【0044】
位置合わせされたスキャンを組み合わせる。この組み合わせを行うには、たとえば、印象スキャンの各部分を模型のスキャンまたは着目領域のスキャンの対応部分、あるいはこの両方の対応部分に置き換え、これらのスキャンの共通表面をマージする。スキャンの位置合わせは、咬合情報を含む三次元模型に関して以下に説明するように行ってもよい。
【0045】
本発明による方法は、印象のスキャンを行うステップの前に、印象を予備スキャンするステップをさらに含んでもよい。予備スキャンから取得した情報によって、スキャナ設定とスキャンシーケンスとの調整が可能になる。この調整には、印象のスキャンまたは着目領域のスキャンをより高精度にするための動作の調整を含む。
【0046】
正確な三次元模型に基づき作成される修復物に応じて、印象全体のスキャンを用いて模型を用意してもよいし、または印象のスキャンの一領域のみを用いてもよい。したがって、一実施形態においては、位置合わせの前に印象のスキャンの領域が画定される。さらに別の実施形態においては、画定された領域に対してのみ位置合わせが行われる。一例において、位置合わせは少なくとも2つの歯、たとえば少なくとも3つの歯など、に対して行われる。
【0047】
通常、印象材料の反射率は、できる限り小さい必要がある。一実施形態においては、スキャン前に無反射被膜などで印象材料を被覆することによって、スキャン品質を向上させる。別の実施形態においては、印象自体を反射特性が皆無か少ない材料から製造する。
【0048】
上顎のスキャンと下顎のスキャンとの位置合わせは、いずれか適切な方法で行い得る。一実施形態において、位置合わせは、上下顎のCTスキャンまたはMRスキャンを用いて行う。このようなスキャンの1つの利点として、顎および神経の情報も含むことが挙げられる。別の実施形態において、上顎のスキャンと下顎のスキャンとの位置合わせは、以下に説明するように、たとえば両面印象スキャンを用いて行ってもよい。
【0049】
もちろん、必要であれば、他の位置合わせ目的のために、CTスキャンおよびMRスキャンを使用してもよい。たとえば、インプラント用のドリルガイドの設計のために、あるいは単に改良された三次元模型を提供するために、CTまたはMRスキャンをさらに印象スキャンと組み合わせ、および/または位置合わせしてもよい。
【0050】
(咬合情報を含む三次元模型)
スキャンのための基礎は、少なくとも2つの歯型印象である。1つの印象は、上顎と、下顎と、咬合とを1つの印象に取り込む両面印象である。残念なことに両面トレーは、物理的安定性を欠き、より低品質の印象が作成されることがあり、多くの歯科医によって受け入れられない。この問題を補償するために、少なくとも1つの片面印象をさらに作成することによって、上顎または下顎の一方のみをマッピングする。片面印象は、物理的安定性が極めて高く、高品質の印象を提供する伝統的なトレーに作成される。
【0051】
両面印象に伴い得る品質上の問題は、両面印象のスキャンと1つまたは2つの片面印象スキャンとを位置合わせし組み合わせることによって解決できる。準備された歯領域における精度要件は20ミクロンであるが、咬合および対合歯の精度要件は50〜100ミクロンに過ぎない。準備された領域に対して片面スキャンを適用し、咬合および対合歯に対して両面スキャンを適用することによって、精度要求は満たされる。場合によっては、対合歯側についても追加の片面スキャンを作成する。
【0052】
以下のスキャンを任意の順番で作成する必要がある:
1.修復用に準備された片面印象の三次元スキャン100(場合に応じて)、図1aを参照。
【0053】
2.両面印象の上側の三次元スキャン200、図2を参照
3.両面印象の下側の三次元スキャン300、図3を参照
4.対合歯側の片面印象の三次元スキャン(場合に応じて)
なお、準備された歯101、準備されていない正常な隣接歯201、および対合歯301に注目されたい。
【0054】
スキャン後の次のステップでは、印象の片面スキャン100と対応する両面スキャン200とを領域ベースで位置合わせする。残念なことに、この2つの印象はプレパレーションラインの外側で異なることが多いという事実に由来する非共通データは、位置合わせ工程を極めて複雑にする。これが特に当てはまるのは、深い歯のスキャンのための可視性をもたらすために、オペレータが印象を刈り込む必要がある場合である。本発明の一実施形態においては、共通の高品質が存在する場所に領域400が画定される。この領域の画定は、たとえばオペレータが行うことも、またはコンピュータによって自動的に行うこともできる。この位置合わせ工程中は、当該領域のデータのみが使用される。この位置合わせには、たとえばICPアルゴリズム(Besl&McKay、1992)を使用できる。この位置合わせの重ね合わせ結果が図5に示されている。
【0055】
2つの両面印象スキャンの位置合わせには、共通データのスキャンを容易にするトレーが必要である。この共通データとして、トレーの鉛直側面600、および位置合わせ用の特別な特徴、たとえばT形状601、複数の点、または複数の鉛直線のスキャン、が挙げられる。共通データが存在すると、ICPなどの標準の位置合わせアルゴリズムを用いて2つのスキャンの位置合わせを行うことができる。この位置合わせのための初期化は、たとえばコンピュータによって行うことも、またはユーザが2つの対応するポイント602を選択することによって行うこともできる。この位置合わせの重ね合わせ結果が図7に示されている。このトレーは、取り扱いを容易にするために、スキャナに直接嵌まるように設計されてもよい。さらに、このトレーは、スキャナに直接接続するための取り付けシステムを含んでいてもよい。トレーまたは印象は、設計中に義歯/歯の外観が患者の顔面上の特徴に位置合わせされるように、患者の両目に位置合わせされる水平目線をさらに含んでもよい。明らかに、このようなトレーは、記載の方法およびシステムのいずれかと組み合されることが好ましい。
【0056】
本発明の別の実施形態においては、2つのスキャンに含まれるスキャン用取り付け具に両面トレーを配置することができる。この場合は、共通データおよび位置合わせ用の特徴は、取り付け具に含めるだけでよい。印象は、自動的に裏返される。
【0057】
最後に、位置合わせされたスキャンを組み合わせる。この組み合わせを行うには、たとえば、両面スキャンを片面スキャンの対応部分に置き換え、2つの両面スキャンの共通表面をマージする。
【0058】
場合によっては、片面スキャンを対合歯側において実施し、既存データとの位置合わせおよび組み合わせを同様の手順で行うこともできる。
【0059】
物理的安定性および適正な咬合マッピングなどの特性が改良された両面トレーの開発は、片面印象を不要にし得る。一実施形態においては、金属、鋼鉄、および/または繊維複合強化材などの補強材によって両面トレーの安定性が向上する。明らかに、このようなトレーは、上記のトレーの特徴と組み合されることが好ましいこともある。これらのトレーは何れも、本明細書に記載の方法およびシステムの何れに関しても、印象の取得に好適である。
【0060】
咬合情報を含む三次元模型に関する記述は、歯の印象のスキャンに関するものであるが、同じ方法およびシステムを歯の模型のスキャンにも使用し得ることは当業者には明らかである。
【0061】
上記のように、歯の印象の正確な三次元模型を得るための方法によって、片面スキャンを実施してもよい。
【0062】
別の局面において、本発明は、上で定義したような方法の各ステップを実行するためのプログラムコードを含む、歯の印象の三次元模型を作成するためのコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0063】
さらに別の局面において、本発明は、上で定義したような方法の各ステップを実行するための1つ以上のコンピュータ命令が格納されたコンピュータ可読メモリを含む、三次元模型を作成するためのシステムに関する。
【0064】
(歯冠の製作)
印象のスキャンは、完全な解剖学的歯冠のCAD設計と、その後の完全な歯冠の製作との組み合わせにおいて特に関心を引くものとなる。これらの歯冠はどちらも歯冠と称される。このようなアプローチにより、設計および製作を完成させるための模型は不要になる。ただし、コーピングの設計に印象のスキャンのみを使用する場合は、設計を完成させるために模型が依然として必要である。歯冠全体の設計は、設計された歯冠を2つ以上の層に分割するなどの適切な製作工程によって行い得る。この場合、内層はコーピングに対応し、外層はセラミックである。コーピングの製作は、フライス盤、三次元熱転写プリンタ、または焼結機などの公知の装置を用いて行うことができる。外層は、最初に蝋、プラスチック、ポリマー、または他の溶融可能な材料製のコピーを、たとえばフライス盤または三次元プリンタを用いて製作してもよい。この蝋製コピーを次にコーピングに取り付け、Ivoclars Impressなどのおよび過圧技術を用いてセラミック層を作成することができる。
【0065】
(インプラント)
本発明の別の実施形態において、歯科修復物はインプラント1200である。これは、歯肉1201および顎骨に挿入される、一般にチタン製またはジルコニア製の「ネジ」である。インプラントに取り付ける歯冠またはブリッジのCAD設計を行うには、インプラントの正確な位置および向きを印象のスキャンから突き止める必要がある。
【0066】
伝統的に、インプラント1200の位置および向きは、印象アバットメント1202を用いて患者の口腔から歯の模型に転写される。実際に、この転写は、印象アバットメントをインプラントに取り付けることによって行われる。次に歯の印象1203が取得される。このとき、印象アバットメントは印象材料1204に固定され、アバットメントはインプラントから外される。印象アバットメント1202を含む印象1203を患者の口腔から取り除く。次に、模型インプラント/アナログ1205を印象アバットメントに取り付け、模型1206を印象から、一般には石膏で、注型する。最終ステップとして、模型の硬化後に、印象1203と印象アバットメント1202とを取り除く。本発明の一実施形態においては、注型されたポジ模型をスキャンすることによって、インプラントの位置および向きを得る。この模型には、模型インプラント/アナログ位置および向き、ひいては、インプラントの位置および向き、の判定をスキャンデータから容易に行えるように、スキャンアバットメントが取り付けられている。スキャンアバットメントから得られたデータから向きおよび位置を求めるための1つの方法では、対応する模型データにスキャンアバットメントの形状のCADデータを重ね合わせる。ここで、スキャンアバットメントは、印象アバットメントと同じであっても、異なっていてもよい。
【0067】
本発明の別の実施形態においては、印象1203に取り付けられた印象アバットメント1202をスキャンすることによってインプラントの位置および向きを印象から直接求め、次に三次元形状および寸法、たとえばCAD模型、の知識を使用する。実際に、位置および向きは、印象アバットメントのCADをスキャンの対応部分に位置合わせすることによって、または特徴の抽出によって求めてもよい。
【0068】
残念なことに、印象アバットメントは、多くの場合、印象材料によって覆われるか、または印象の上方に殆ど現れない。本発明のさらに別の実施形態においては、スキャンアナログ1300を印象アバットメントに取り付けることができる。次に、このアナログを印象スキャンの一環としてスキャンし、既知の形状および寸法を適用することによって、たとえばCAD模型の位置合わせまたは特徴抽出を用いて、対応するインプラントの位置および向きを導出できる。この操作は、1つ以上のインプラントを組み合せて実施することも、あるいは反復手順で実施することもできる。
【0069】
従来技術(6,790,040)には、インプラントの種類およびその位置および向きの両方をスキャンから求めるために用いられるエンコーデッドヒーリングアバットメント(EHA)に基づく代替方法が説明されている。
【0070】
本発明の別の実施形態においては、一部のケースにおいて、インプラントの印象、または注型された模型、を直接スキャンすることによって位置および向きを上記と同様の方法で導出することも可能である。
【0071】
さらに別の実施形態においては、口内スキャンからのデータを含めることによって上記の何れの方法をも改良し得る。
【0072】
さらに、カスタマイズされたヒーリングアバットメントの製作も上記の各方法に基づき可能になり得る。
【0073】
(模型の製作)
歯科技工所または歯科医が、たとえば、製作された修復物の嵌合および設計をチェックまたは修正するために、依然として伝統的な歯の模型を必要とする場合は、そのような模型を印象のスキャンから製作することも可能である。区分化された伝統的な石膏模型が図1Aに示されている。スキャンからの実際の模型製作は、古典的な製作装置を用いて行うことも、あるいはフライス盤または三次元プリンタなど、より適したラピッドプロトタイプ装置を用いて行うこともできる。模型は、プラスチック、ポリマー、蝋、石膏、またはセラミックなど、いずれか適正な材料で製作し得る。
【0074】
製作装置は、通常、中実の3D/水密模型の作成を必要とする。図1Aの伝統的模型を参照のこと。印象のスキャン100は、表面のみを含み、中実模型を含まないことを思い出されたい。歯科技工所および歯科医にとって魅力的な模型を作成するには、以下の仮想ステップのうちの1つ以上をスキャンに対して行う必要がある:
・ネガからポジへの表面の反転
・余分な表面(材料)の切り取り
・仮想ベースの作成
・トリミング
・区分化
・ピンニングまたは他の位置決め手段
・咬合器界面の追加
・他の構造、たとえばインプラント/アナログ界面、の追加
印象スキャン技術が受け入れられるようにするには、歯科技工所で今日使用されている石膏模型と同様の性能を有する模型、たとえば、ベース上に歯があり、プレパレーションがトリミングされ1A00、区分化され1A01、およびピンニングされた模型、を製作できることが極めて重要である。
【0075】
印象のスキャン1500(ネガ)から模型1501(ポジ)にスキャンを変換するには、表面の向きを反転する必要がある。スキャンは、さらに回転されることが好ましい。図15を参照のこと。一般に、次のステップでは、不要なスキャン表面(材料)を切り取る。この切り取りは、スプライスベースの切断工具1502、トライアングルセレクション、または他の選択/切断工具によって行うことができる。
【0076】
基本的な中実模型を作成するために、切り取り後のスキャン表面を仮想ベースに取り付けるか、または接続することができる。仮想ベースは、スキャン表面にベース模型を組み合わせることによって、たとえば、2つの表面間の接続面を作成してCADベースにスキャン表面を組み合わせることによって、作成することができる。本工程の変型例が図16に示されている。ここでは、切り取り後のスキャン表面1600が、ベース1601に組み合されている。ベース1601は、切断された表面を共通の面、この場合は1つの平面、に鉛直に延ばすことによって作成されている。この工程は、図9aから図9b、および図10aから図10bにも示されている。これは、2つの表面間に位置付けられない材料で構成された新しいベースを本来のスキャンから形成することとして認識され得る。
【0077】
修復のためには、上顎(上部)および下顎(下部)の模型を作成する必要がある。正確な物理的相対位置は、以前の位置合わせから既に分かっていることを思い出されたい。
【0078】
仮想ベースの重要な機能拡張は、製作された模型を標準の咬合器に挿入して咬合させられるように、中実模型への咬合器界面1605の追加である。最適な結果は、目盛り付き咬合器の使用によって得られるであろう。事前に製作された界面1606を模型と咬合器との間に挿入すると、模型の製作コストを極力抑えるために都合がよい場合がある。
【0079】
上記のように、ベースを取り付けるステップでは、主に切断後のスキャン表面が、製作された模型などの物理的表現に必要な中実形状の一部となるようにベースを取り付ける。したがって、その後に、仮想的に、または後製作によって、ベースの一部または全体を中実形状から切り取ってもよい。
【0080】
歯冠設計のために歯肉を削除してマージンライン領域に接近しやすくするために、伝統的にはプレパレーションをトリミングする。なお、プレパレーションの伝統的トリミングのために利用可能な情報は、すべて印象内に存在することに注目されたい。したがって、トリミングを仮想的に行うことができ1202、制御された環境によって品質の改良さえ行える。仮想トリミングは、模型上でトリミングする領域を選択することによって行ってもよい。この選択を行うための1つの方法では、スプラインなどの湾曲部をマージンラインに対応する表面部分に配置する。次に、マージンラインの外側の表面を除去することによってトリミングを行い、マージンラインを模型1802および/またはプレパレーション1701の残りの部分に接続する人工表面1701、1802を作成してもよい。多くの状況においては、模型を製作するためのベースを形成する同じ模型から歯冠および/または義歯、ブリッジなどを製作することが好ましい。このため、このブースを三次元模型から製作し、連係を物理的に調べてもよい。
【0081】
模型を一般には個々のプレパレーションに区分化する1A01ことによって、歯科技工士による歯冠へのアクセスおよび作業を容易にする。図1aを参照のこと。区分化の一環として、個々の区分を模型から除去でき、再び模型に挿入して本来の位置を維持できるようにするための位置決めシステムが必須である。一般に、位置決め手段は、各区分に取り付けられた、ベースに正確に嵌入するピンである。他の例として、ネジ、ボルト、ネジ山付きまたはネジ山無しの穴、および押しボタンが挙げられる。位置決め手段は、以下に説明する区分化によって作られる各区分のいずれかに含まれることが好ましい。
【0082】
仮想区分化1603は、図16に示すように平面切断を用いることによって、古典的な鋸引きによる区分化を再現できる。次に、ピン1700を追加し、対応する穴1604をCAD模型のブール加算およびブール減算によって作成できる。ただし、この仮想アプローチでは、より先進的な、場合によっては統合化された、区分化および位置決め手段1800を、たとえばブール関数によって、作成することも可能である。CAD設計工程の柔軟性により、円柱、三角形、球体、円錐1800、またはこれらの組み合わせ1800など、ほぼ如何なる形状でも区分化および位置決めに適用できる。取り外しおよび位置決めを容易にするためのハンドル1801を、たとえばブール関数を用いて、作成することもできる。
【0083】
製作された模型の例1900が標準の咬合器1901に取り付けられた様子が図19に示されている。この模型は、三次元印刷を用いて製作されている。
【0084】
歯科アイテムのための追加構造を追加してもよい。この構造は、全体的または部分的歯科アイテムにすることも、歯科アイテムに対する界面にすることもできる。1つの重要な例は、設計された構造、たとえばカスタマイズされたアバットメントまたは上部構造を模型に直接取り付けられるように、インプラント/アナログを模型の一部として直接印刷することである。難しいインプラント構造の場合、または材料要件によっては、製作された模型にインプラント/アナログを後付けできるように、インプラント/アナログ用の界面、たとえば細穴など、の追加が好ましい場合もある。他の歯科アイテムの例として、アタッチメント、固締システム、他の歯冠/ブリッジ設計支持構造が挙げられる。
【0085】
本明細書は歯の印象のスキャンに関するものであるが、同じ方法およびシステムを石膏模型の伝統的三次元スキャン、直接口内スキャン、CT、MR、またはX線スキャンなど、口腔領域の他の種類のスキャンにも使用し得ることは当業者には明らかである。歯冠の部分または全体の製作のほか、カスタマイズされたヒーリングアバットメントの製作も、上記の方法に基づき可能になり得る。
【0086】
(参考文献)
米国特許第6,579,095号明細書(Mating parts scanning and registration methods)
Brian CurlessおよびMarc Levoy、「Better optical triangulation through spacetime analysis」、1995 5th International Conference on Computer Vision、Boston、MA、20〜23、June 1995
P.J.BeslおよびN.D.McKay、「A Method for Registration of 3−D Shapes」、IEEE Trans. Pattern Anal. Machine Intell、February 1992(Vol.14、No.2)p.239−256
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1a】図1aは、歯の石膏模型である。
【図1b】図1bは、片面印象の三次元スキャンである。
【図2】図2は、両面印象の上部の三次元スキャンである。
【図3】図3は、両面印象の下部の三次元スキャンである。
【図4】図4は、位置合わせのための代表的部分である。
【図5】図5は、図4を重ね合わせた位置合わせである。
【図6】図6は、位置合わせのための代表的部分である。
【図7】図7は、図6を重ね合わせた位置合わせである。
【図8】図8は、歯の印象を示す。
【図9a】図9aは、良好な品質を有する図8の印象のスキャンを示す。
【図9b】図9bは、図9aのスキャンの反転スキャンを示す。
【図9c】図9cは、単一の歯のスキャン(図11b)と図9bの反転スキャンとの位置合わせの例を示す。
【図9d】図9dは、図9cにおける初回位置合わせ後の位置合わせされたブリッジを示す。
【図10a】図10aは、ノイズ1001と穴1000とのために精度の低い低品質の図8の印象のスキャンを示す。
【図10b】図10bは、ノイズおよび穴の結果を示す、図10aのスキャンの反転スキャンを示す。
【図10c】図10cは、単一の歯のスキャン(図11b)と図10bの反転スキャンとの位置合わせの例を示す。
【図10d】図10dは、図10cにおける初回位置合わせ後の位置合わせされたブリッジを示す。
【図10e】図10eは、すべての位置合わせ後の最終的に位置合わせされたブリッジを示す。
【図11a】図11aは、3つの異なる歯からの印象窩洞の型を示す。
【図11b】図11bは、図11aの型のスキャンを示す。
【図12】図12は、患者の口腔から歯の模型へのインプラントの位置および向きの伝統的な転写である。
【図13】図13は、インプラントの位置および向きを得るために印象アバットメントに取り付けられたスキャンアナログである。
【図14】図14は、エンコーデッドヒーリングアバットメント(EHA)の印象のスキャンである。
【図15】図15は、回転による印象(ネガ)から模型(ポジ)への転換および余分な表面の切り取りである。
【図16】図16は、印象のスキャンから仮想的に作成された、仮想ベース、トリミング、区分化、ピンニング、および咬合器界面を有する模型である。
【図17】図17は、仮想的に作成された、位置決め用ピンを有する模型である。
【図18】図18は、仮想的に作成された、より先進的な区分化および位置決め手段を有する模型である。
【図19】図19は、三次元印刷され、咬合器に取り付けられた模型である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の印象の正確な三次元模型を得る方法であって、前記方法は、
1)上顎の印象および/または下顎の印象の少なくとも一部をスキャンすることによって印象のスキャンを得るステップと、
2)前記印象のスキャンの品質を評価するステップと、
3)前記品質が前記歯の印象の正確な三次元模型を可能にしない場合は、
前記歯の印象の1つ以上の窩洞に充填材を充填して前記窩洞の模型を得てから、前記模型をスキャンすることによって模型のスキャンを得るステップと、
前記模型のスキャンと印象のスキャンとを位置合わせし組み合わせることによって、三次元模型を得るステップ、
および/または
前記歯の印象の1つ以上の着目領域を再スキャンするステップと、
前記着目領域のスキャンと印象のスキャンとを位置合わせし組み合わせることによって三次元模型を得るステップ、
または、
4)前記品質が前記歯の印象の正確な三次元模型を可能にする場合は、
前記印象のスキャンを用いて三次元模型を得ることによって前記歯の印象の正確な三次元模型を得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記印象のスキャンの実施前に、前記印象の予備スキャンが実施される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記予備スキャンの結果に基づき、前記スキャナ設定が調整される、方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の方法であって、ステップ3)は、再スキャンするステップと、窩洞模型をスキャンするステップとの両方を含む、方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法であって、前記評価される品質は、被写域の評価を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記表面の三角測量とその後の前記表面上の穴の位置の突き止めによって、不十分な被写域/穴が自動的に検出される、方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、前記不十分な被写域の深刻度は、自動的および/または手作業で評価される、方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法であって、前記プレパレーション域には穴が一切存在しないことが求められる、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記プレパレーション域の位置の突き止めが手作業による選択および/または特徴検出により行われる、方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の方法であって、前記評価される品質は、トラッキングおよびハーフオクルージョンノイズなどのノイズの評価を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、ノイズポイントがレーザトラッキング、捕捉時の表面の向き、複数のカメラの視野、局所的表面統計、表面の曲率、形状統計、または逆レイトレーシングから導出されたポイント品質を用いて自動的に検出される、方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の方法であって、前記品質の評価および再スキャンの決定が自動的に行われる、方法。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の方法であって、前記位置合わせは、基準ポイントの位置合わせによって行われる、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記基準ポイントは、前記印象材料上に位置付けられた所定の基準ポイントである、方法。
【請求項15】
請求項14または14に記載の方法であって、前記基準ポイントは、前記印象および前記画像上の代表的な基準ポイントから選択される、方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法であって、基準ポイントを提供するスキャン用取り付け具に前記印象が取り付けられる、方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の方法であって、前記印象のスキャン領域が位置合わせ前に画定される、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記画定された領域に対してのみ位置合わせが行われる、方法。
【請求項19】
請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の方法であって、前記位置合わせは、少なくとも3つの歯など、少なくとも2つの歯に対して行われる、方法。
【請求項20】
請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の方法であって、前記スキャンは、少なくとも3つの軸を有する三次元スキャナを用いて行われる、方法。
【請求項21】
請求項1〜請求項20のいずれか1項に記載の方法であって、前記印象は、可視化のためにスキャン前に切断される、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記模型を切断してスキャンするプロセスは、1回以上繰り返される、方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の方法であって、前記切断前のスキャンに基づく1つ以上の三次元模型と前記切断後のスキャンに基づく1つ以上の三次元模型とが位置合わせされて新しい三次元模型が形成される、方法。
【請求項24】
請求項22または23に記載の方法であって、スキャンごとに三次元模型が得られ、前記三次元模型の位置合わせを同時にまたは順次行うことによって新しい三次元模型が形成される、方法。
【請求項25】
請求項1〜請求項24のいずれか1項に記載の方法であって、前記三次元模型は、ブリッジなどの歯科修復物の製作のために使用される、方法。
【請求項26】
請求項1〜請求項25のいずれか1項に記載の方法であって、前記印象のスキャンは、修復物を作成する少なくとも前記顎部分に対して行われる、方法。
【請求項27】
請求項1〜請求項26のいずれか1項に記載の方法であって、修復物を作成する顎に対向する少なくとも前記顎部分に対して印象のスキャンが実施される、方法。
【請求項28】
請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載の方法であって、前記印象は、前記スキャンステップの前に、無反射材料で被覆される、方法。
【請求項29】
請求項1〜請求項28のいずれか1項に記載の方法であって、前記スキャンステップおよび前記再スキャンステップは、前記印象を1つのセンサ、すなわちカメラ、と光源とによってスキャンするステップを含み、前記光源と前記カメラとの間の角度はAであり、前記品質評価によって必要とされた場合は、別のセンサを用いて着目領域を再スキャンするステップを含み、前記別のセンサの場合は、前記光源と前記カメラとの間の角度がBであり、前記角度Bは前記角度Aより小さい、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、角度Bは角度Aの95%より小さく、角度Aの90%より小さく、角度Aの85%より小さく、角度Aの80%より小さく、角度Aの70%より小さく、角度Aの60%より小さく、角度Aの50%より小さく、角度Aの40%より小さく、角度Aの30%より小さく、角度Aの20%より小さく、角度Aの10%より小さく、角度Aの5%より小さい、方法。
【請求項31】
歯の印象の三次元模型を得る方法であって、前記方法は、
両面印象の上顎の印象および下顎の印象をスキャンして両面印象のスキャンを得るステップと、
前記両面印象の前記上顎の印象のスキャンと前記下顎の印象のスキャンとを位置合わせするステップと、
それによって前記歯の印象の三次元模型を得るステップと
を含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、
前記上顎の印象および/または前記下顎の印象の片面印象をスキャンすることによって1つ以上の片面印象を得るステップと、
前記1つ以上の片面印象の少なくとも一部と前記両面印象のスキャンの対応部分とを位置合わせするステップと、
それによって前記歯の印象の三次元模型を得るステップと
を含む、方法。
【請求項33】
請求項31または32に記載の方法であって、前記両面印象の前記上顎の印象のスキャンおよび前記下顎の印象のスキャンは、基準ポイントの位置合わせによって位置合わせされる、方法。
【請求項34】
請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法であって、前記基準ポイントは、前記印象材料上で位置付けられた所定の基準ポイントである、方法。
【請求項35】
請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法であって、前記基準ポイントは、前記印象および前記画像上の代表的な基準ポイントから選択される、方法。
【請求項36】
請求項31〜35のいずれか1項に記載の方法であって、前記両面印象は、基準ポイントを提供するスキャン用取り付け具に配置される、方法。
【請求項37】
請求項31〜36のいずれか1項に記載の方法であって、位置合わせ前に前記印象のスキャン領域が画定される、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、前記画定された領域に対してのみ位置合わせが行われる、方法。
【請求項39】
請求項31〜38のいずれか1項に記載の方法であって、前記位置合わせされた片面印象のスキャンが前記両面印象のスキャンの対応部分の位置を取るように、前記位置合わせされたスキャンが組み合される、方法。
【請求項40】
請求項31〜39のいずれか1項に記載の方法であって、前記片面スキャンは、修復物を作成する少なくとも前記顎部分に対して行われる、方法。
【請求項41】
請求項31〜40のいずれか1項に記載の方法であって、修復物を作成する前記顎に対向する少なくとも顎部分に対して片面スキャンが実施される、方法。
【請求項42】
請求項31〜41のいずれか1項に記載の方法であって、前記片面スキャンの位置合わせは、少なくとも3つの歯など、少なくとも2つの歯に対して行われる、方法。
【請求項43】
請求項31〜42のいずれか1項に記載の方法であって、前記スキャンは、少なくとも3つの軸を有する三次元スキャナを用いて行われる、方法。
【請求項44】
請求項31〜43のいずれか1項に記載の方法であって、両面トレーを用いて両面印象が実施される、方法。
【請求項45】
請求項31〜44のいずれか1項に記載の方法であって、前記片面印象は、可視化のためにスキャン前に切断される、方法。
【請求項46】
請求項31〜45のいずれか1項に記載の方法であって、前記三次元模型は、ブリッジなどの歯科修復物の製作のために使用される、方法。
【請求項47】
請求項31〜46のいずれか1項に記載の方法であって、前記片面印象のスキャンは、請求項1〜22のいずれか1項に定義されているように実施される、方法。
【請求項48】
請求項20〜47のいずれか1項に記載の方法であって、前記両面印象の各面のスキャンは、前記請求項1〜22のいずれか1項に定義されているように実施される、方法。
【請求項49】
請求項1〜48のいずれか1項に記載の方法であって、前記片面および/または両面印象の三次元模型は、CTおよび/またはMRスキャンと位置合わせされる、方法。
【請求項50】
印象および/またはプレパレーションの品質を評価する方法であって、
a.前記評価対象の印象および/またはプレパレーションの三次元コンピュータ模型を得るステップと、
b.前記印象および/またはプレパレーションを前記三次元模型に基づき評価するステップと
を含む、方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、前記三次元コンピュータ模型は、印象のスキャン、口内スキャン、CT、MR、またはX線スキャン、あるいはこれらの組み合わせのうちの1つ以上の方法によって取得される、方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法であって、前記評価は、アンダーカットの検出、気泡の検出、ノイズレベルの評価、印象材料の評価、形状の評価、または形状寸法の測定値のうちの少なくとも1つによって行われる、方法。
【請求項53】
請求項50または52に記載の方法であって、前記印象および/または前記三次元模型は、請求項1〜49の特徴のいずれかを適用することによって取得される、方法。
【請求項54】
請求項50〜53のいずれか1項に記載の方法であって、前記印象またはプレパレーションを改良するように歯科医を導くために、前記評価結果が前記三次元模型上に視覚的に表示される、方法。
【請求項55】
少なくとも1つの歯および隣接組織を含む三次元模型を得る方法であって、
a.上顎の印象および/または下顎の印象および/または両面印象の少なくとも一部をスキャンすることによって印象のスキャンを得るステップと、
b.少なくとも1つの印象のスキャンを用いて三次元予備模型を得るステップと、
c.前記三次元予備模型とCTおよび/またはMRおよび/またはX線スキャンの少なくとも一部とを位置合わせすることによって新しい三次元模型を得るステップと
を含む、方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法であって、前記取得された三次元模型は、1つ以上のドリルガイドの設計に適している、方法。
【請求項57】
請求項55または56に記載の方法であって、前記三次元模型は、口内スキャンにさらに組み合わされる、方法。
【請求項58】
請求項55に記載の方法であって、前記三次元模型は、前記請求項1〜54のいずれか1項により取得される、方法。
【請求項59】
歯冠の少なくとも一部を製作する方法であって、
a.歯冠を配置する部位に関する情報を含む歯の印象の少なくとも一部をスキャンすることによって三次元模型を得るステップと、
b.前記三次元模型内で、および/または前記三次元模型に対して、前記歯冠の少なくとも一部のCAD設計を行うことによって前記歯冠の少なくとも一部のコンピュータ模型を得るステップと、
c.前記取得されたコンピュータ模型の少なくとも一部から歯冠全体すなわち完全な歯冠を製作するステップと
を含む、方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、前記三次元模型は、請求項1〜58に記載の方法のいずれか1項を用いて取得される、方法。
【請求項61】
請求項59または60に記載の方法であって、前記歯冠の少なくとも一部は、2つ以上の層で製作される、方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法であって、前記内層はコーピングに対応し、前記外層はセラミックに対応する、方法。
【請求項63】
請求項61または62に記載の方法であって、前記内層は、フライス、三次元印刷、および焼結のうちの少なくとも1つによって製作される、方法。
【請求項64】
請求項59〜63のいずれか1項に記載の方法であって、前記外層は、最初に蝋、プラスチック、ポリマー、または他の溶融可能な材料製のコピーをフライス盤または三次元プリンタを使用して製作し、前記コピーを前記内層に取り付け、Ivoclars Impressなどの過圧技術を適用して前記セラミック層を作成することによって製作される、方法。
【請求項65】
少なくとも1つの歯科用インプラントの向きおよび位置を求める方法であって、
a.前記少なくとも1つの歯科用インプラントに対応する少なくとも1つの固定された印象アバットメントを含む印象を得るステップ、
および/または
前記少なくとも1つの歯科用インプラントに対応する少なくとも1つの固定された印象アバットメントを含む印象を得るステップであって、前記少なくとも1つの歯科用インプラントに取り付けられる物は、スキャンインプラント/アナログ、
および/または
上顎および/または下顎の少なくとも一部のポジ模型であって、少なくとも1つの模型インプラント/アナログを含み、その向きおよび位置が前記歯科用インプラントの向きおよび位置に対応するポジ模型、
および/または
上顎および/または下顎の少なくとも一部のポジ模型であって、少なくとも1つの模型インプラント/アナログを備え、その向きおよび位置がスキャンアバットメントが取り付けられる前記歯科用インプラントの向きおよび位置に対応するポジ模型
であるステップと、
b.前記印象アバットメントおよび/またはスキャンインプラント/アナログおよび/または模型インプラント/アナログおよび/またはスキャンアバットメントの形状の所定の情報を得るステップと、
c.前記少なくとも1つの印象アバットメントおよび/またはスキャンインプラント/アナログを含む、前記印象の少なくとも一部をスキャンすることによってスキャンデータを得るステップ、
および/または
少なくとも1つの模型インプラント/アナログおよび/またはスキャンアバットメントを含む、前記ポジ模型の少なくとも一部をスキャンすることによってスキャンデータを得るステップと、
d.前記所定の情報と前記スキャンデータとに基づき、前記歯科用インプラントの向きおよび位置を求めるステップと
を含む、方法。
【請求項66】
請求項65に記載の方法であって、前記スキャンデータに基づき三次元模型を得るステップをさらに含む、方法。
【請求項67】
請求項65または66に記載の方法であって、前記向きおよび位置は、口内スキャン、CT、MR、またはX線スキャン、あるいはこれらの組み合わせのうちの1つ以上によって取得されたスキャンにさらに基づく、方法。
【請求項68】
請求項65〜67のいずれか1項に記載の方法であって、前記所定の情報は、CAD模型である、方法。
【請求項69】
請求項66〜68のいずれか1項に記載の方法であって、前記三次元模型は、前記請求項1〜58に記載の方法のいずれかを適用することによって取得される、方法。
【請求項70】
請求項65〜69のいずれか1項に記載の方法であって、前記請求項59〜64のいずれか1項によって歯冠の少なくとも一部を製作する方法をさらに含む、方法。
【請求項71】
請求項65〜70のいずれか1項に記載の方法であって、前記スキャンアバットメントは、前記ポジ模型を得る工程で用いられる印象アバットメントである、方法。
【請求項72】
請求項65〜71のいずれか1項に記載の方法であって、前記スキャンアバットメントは、前記ポジ模型を得る工程で用いられる印象アバットメントではない、方法。
【請求項73】
上顎および/または下顎の少なくとも一部の歯の模型を製作する方法であって、
a.印象のスキャン、口内スキャン、CT、MR、またはX線スキャン、ポジ模型のスキャン、あるいはこれらの組み合わせのいずれかによって、前記上顎および/または下顎の前記少なくとも一部の三次元模型を得るステップと、
b.前記得られた三次元模型から歯の模型を製作するステップと
を含む、方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法であって、前記三次元模型は、請求項1〜72に記載の方法のいずれかを適用することによって取得される、方法。
【請求項75】
請求項73または74に記載の方法であって、前記歯の模型は、フライス盤、三次元プリンタ、あるいはこれらの組み合わせなど、ラピッドプロトタイピング装置によって製作される、方法。
【請求項76】
請求項73〜75のいずれか1項に記載の方法であって、前記歯の模型は、少なくとも部分的に、プラスチック、ポリマー、蝋、石膏、またはセラミックで製作される、方法。
【請求項77】
請求項73〜76のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に前記三次元模型の表面の向きを反転するステップをさらに含む、方法。
【請求項78】
請求項73〜77のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に三次元模型を回転するステップをさらに含む、方法。
【請求項79】
請求項73〜78のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に前記三次元模型を切断するステップをさらに含む、方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、前記切断は、スプライスベースの切断工具またはトライアングルセレクションなどの選択/切断工具によって行われる、方法。
【請求項81】
請求項73〜80のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に前記三次元模型の前記表面をCADベースなどのベースに取り付けるステップをさらに含む、方法。
【請求項82】
請求項81に記載の方法であって、前記取り付けは、前記表面を共通表面まで鉛直に延ばすことによって行われる、方法。
【請求項83】
請求項73〜82のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に前記三次元模型から中実模型を得るステップをさらに含む、方法。
【請求項84】
請求項81〜83のいずれか1項に記載の方法であって、前記ベースは、前記中実模型から切断される、方法。
【請求項85】
請求項83または88に記載の方法であって、少なくとも1つの咬合器界面を前記中実模型に含めるステップをさらに含む、方法。
【請求項86】
請求項83〜85のいずれか1項に記載の方法であって、事前に製作された界面/ベースの模型を前記中実模型に追加するステップをさらに含む、方法。
【請求項87】
請求項73〜86のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に、プレパレーションに対応する部分の周囲のトリミングなど、前記三次元および/または中実模型をトリミングするステップをさらに含む、方法。
【請求項88】
請求項73〜87のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に前記三次元および/または中実模型を区分化するステップをさらに含む、方法。
【請求項89】
請求項73〜88のいずれか1項に記載の方法であって、製作の前に前記取得された模型に対して位置決めする手段をさらに含む、方法。
【請求項90】
請求項89に記載の方法であって、前記位置決め手段は、ピン、ネジ、ネジ付き穴またはネジ無し穴、および押しボタンのうちの少なくとも1種類を備える、方法。
【請求項91】
請求項88〜90のいずれか1項に記載の方法であって、区分化によって得られた少なくとも1つの小区分に位置決め手段が含まれる、方法。
【請求項92】
請求項91に記載の方法であって、前記区分化および位置決め手段は、プレパレーションの模型の除去および再挿入など、前記作成された歯の模型の複数部分の除去および再挿入を可能にする、方法。
【請求項93】
請求項88〜92のいずれか1項に記載の方法であって、前記区分化は、平面切断によって行われる、方法。
【請求項94】
請求項88〜92のいずれか1項に記載の方法であって、前記区分化は、円柱形、1つ以上の三角形、1つ以上の球体、1つ以上の円錐形、またはこれらの組み合わせに切断することによって行われる、方法。
【請求項95】
請求項88〜94のいずれか1項に記載の方法であって、少なくとも1つのハンドルが前記複数の区分のうちの少なくとも1つに配置される、方法。
【請求項96】
請求項88〜94のいずれか1項に記載の方法であって、前記1つ以上のハンドルおよび/または取り付け手段は、ブール関数を通じて前記設計工程に含まれる、方法。
【請求項97】
請求項73〜96のいずれか1項に記載の方法であって、上顎骨および下顎骨の両模型が製作される、方法。
【請求項98】
請求項73〜97のいずれか1項に記載の方法であって、歯冠の少なくとも一部が前記同じ三次元模型に基づき製作される、方法。
【請求項99】
請求項98に記載の方法であって、前記歯冠は、請求項59〜64のいずれか1項により製作される、方法。
【請求項100】
請求項73〜99のいずれか1項に記載の方法であって、少なくとも1つのインプラントアナログを前記歯の模型に含めるステップをさらに含む、方法。
【請求項101】
請求項100に記載の方法であって、前記インプラントアナログを取り付ける細穴を前記歯の模型に含めることによって前記アナログが含められる、方法。
【請求項102】
請求項100または101に記載の方法であって、前記インプラントアナログは、前記設計工程において含められる、方法。
【請求項103】
請求項100〜102のいずれか1項に記載の方法であって、前記インプラントアナログの製作は、前記製作工程の一環として行われる、方法。
【請求項104】
請求項100〜103のいずれか1項に記載の方法であって、前記インプラントアナログは、三次元印刷またはフライスなど、前記歯の模型と同じ工程によって製作される、方法。
【請求項105】
請求項100〜104に記載の方法であって、前記インプラントアナログの位置および向きは、請求項65〜72のいずれか1項に記載の前記歯科用インプラントの位置および向きを求める方法のいずれかによって求められる、方法。
【請求項106】
請求項100〜105に記載の方法であって、前記インプラントの位置および向きは、ヒーリングアバットメントの印象および/またはポジ模型をスキャンすることによって求められる、方法。
【請求項107】
請求項106に記載の方法であって、前記インプラントの位置および向きは、前記スキャンからのデータと、CAD模型など、前記ヒーリングアバットメントの所定の情報とを位置合わせすることによって求められる、方法。
【請求項108】
請求項106または107に記載の方法であって、前記ヒーリングアバットメントは、前記ヒーリングアバットメントの1つ以上の特性および/または前記ヒーリングアバットメントが接続される/されたインプラントの1つ以上の特性を特定するための1つ以上の印を備える、方法。
【請求項109】
歯の印象の正確な三次元コンピュータ模型を得る方法であって、前記印象は、1つのセンサ、すなわちカメラ、と光源とを用いてスキャンされ、前記光源と前記カメラとの間の角度はAであり、その後に別のセンサを用いて複数の着目領域が再スキャンされ、前記別のセンサの場合は、前記光源と前記カメラとの間の角度がBであり、前記角度Bは前記角度Aより小さい、方法。
【請求項110】
請求項109に記載の方法であって、角度Bは、角度Aの95%より小さく、角度Aの90%より小さく、角度Aの85%より小さく、角度Aの80%より小さく、角度Aの70%より小さく、角度Aの60%より小さく、角度Aの50%より小さく、角度Aの40%より小さく、角度Aの30%より小さく、角度Aの20%より小さく、角度Aの10%より小さく、角度Aの5%より小さい、方法。
【請求項111】
請求項1〜110にいずれか1項に記載の方法のステップを実行するためのプログラムコードを含む、歯の印象の三次元模型を作成するためのコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項112】
三次元コンピュータ模型および/または歯冠/ブリッジの少なくとも一部を作成するためのシステムであって、請求項1〜110のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するための命令を含む1つ以上のコンピュータ命令が格納されたコンピュータ可読メモリを含む、システム。
【請求項113】
歯の片面または両面の印象の取得に適したトレーであって、前記トレーを三次元スキャナに保持するために適した取り付け手段をさらに備えることを特徴とする、トレー。
【請求項114】
請求項113に記載のトレーであって、前記三次元スキャナは、光学スキャナである、トレー。
【請求項115】
請求項113または114に記載のトレーであって、前記印象を取得する人間の顔面の特徴との事前および/または事後位置合わせのための水平目線をさらに備える、トレー。
【請求項116】
請求項113〜115のいずれか1項に記載のトレーであって、T形状、点、または鉛直線などの位置合わせ用の特徴をさらに備える、トレー。
【請求項117】
両面の歯の印象の取得に適したトレーであって、金属、鋼鉄、および繊維複合材のうちの少なくとも1つの材料による補強によって機械的に安定していることを特徴とする、トレー。
【請求項118】
請求項117に記載のトレーであって、前記印象を取得する人間の顔面の特徴との事前および/または事後位置合わせのための水平目線をさらに備える、トレー。
【請求項119】
請求項117または118に記載のトレーであって、前記トレーを三次元スキャナに保持するために適した取り付け手段をさらに備える、トレー。
【請求項120】
請求項119に記載のトレーであって、前記三次元スキャナが光学スキャナである、トレー。
【請求項121】
請求項117〜120のいずれか1項に記載のトレーであって、T形状、点、または鉛直線などの位置合わせ用の特徴をさらに備える、トレー。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−517144(P2009−517144A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542605(P2008−542605)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000678
【国際公開番号】WO2007/062658
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508158023)
【Fターム(参考)】