説明

歯質強化剤及びこれを含有する口腔用組成物並びに飲食物とそれらの製造方法

【課題】口腔用組成物や飲食物に使用しても安全性において問題がなく、しかも、脱灰した歯牙エナメル質の再石灰化を効果的に促進するとともに、歯牙エナメル質及び歯牙象牙質の耐酸性を向上することができる歯質強化剤及びこれを含有した口腔用組成物並びに飲食物とそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】石化海藻と酸を有効成分とする歯質強化剤、あるいはまた、石化海藻と酸とキシリトールを有効成分とする歯質強化剤とする。石化海藻と酸は、あらかじめ混合処理して配合しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯質強化剤及びこれを含有する口腔用組成物並びに飲食物とそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、齲蝕は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)やストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)等の口腔内レンサ球菌(虫歯菌)が歯牙表面に付着し、これらの細菌が持っているグルコシルトランスフェラーゼ酵素の働きでグルカンを産生し、プラーク(歯垢)を形成することから始まる。そのプラーク中で、上記細菌が食物残渣中の砂糖やデンプン等を代謝することにより生成される酸が、歯牙エナメル質を脱灰し、いわゆる初期の齲蝕状態とする。
【0003】
唾液にはカルシウムとりん酸塩が存在し、これらが、上記脱灰部分を修復すなわち再石灰化することによって、歯を元の状態に戻す作用をしている。つまり、歯牙表面では、脱灰と再石灰化という相反する現象が常に生起し、通常は所要のバランスを保っている。しかし、そのバランスはプラークが増大すると脱灰の方に傾き、齲蝕が進行する。
【0004】
歯牙表面のエナメル質を構成する結晶は、六方晶系のハイドロキシアパタイトCa10(POOHで、りん酸カルシウムから構成されている。初期の齲蝕で認められる脱灰は歯牙エナメル質無機成分の溶解であり、再石灰化は溶け残った既存のりん酸カルシウム結晶の修復と再成長および本来のエナメル質には存在していない結晶の出現であるということができる。齲蝕予防とは、虫歯菌に対する付着阻害、抗菌、あるいはまた虫歯菌のグルカン合成に関わるグルコシルトランスフェラーゼに対する阻害、歯の再石灰化促進、歯の耐酸性向上等をいい、その中でも特に歯の再石灰化促進、耐酸性向上等の効果を付与することを歯質強化という。
【0005】
また、象牙質の知覚過敏症は酸等が露出した象牙質から石灰分を溶出せしめることで象牙細管が開口し、そこに入り込んだ液体が熱や物理的な力などを受け、歯随の神経を刺激し痛みを感じるものである。従って、治療及び予防のためには象牙細管を閉塞もしくは象牙質の耐酸性を向上させる必要がある。根面う蝕の予防および治療においても、セメント質ならびに象牙質の耐酸性を向上させる必要がある。
【0006】
従来、齲蝕予防のために、虫歯菌に対する歯牙付着阻害剤、抗菌剤、あるいはまた、虫歯菌のグルカン形成を抑制するグルコシルトランスフェラーゼ酵素阻害剤等が開発されている。しかし、たとえば抗菌剤は虫歯菌のみに抗菌作用を示す特異的な素材ではなく、安全性に問題があり、グルコシルトランスフェラーゼ酵素阻害剤は唾液による影響を受けやすいという問題がある。
【0007】
また、歯牙の無機成分と類似の結晶構造を有するハイドロキシアパタイトとフッ化物を配合し、歯脱灰表層部を再石灰化する虫歯予防組成物が知られているが(例えば、特許文献1参照)、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムまたはフッ化第一スズ等のフッ化物を口腔用組成物や飲食物に配合することは、安全性の点から問題がある。
【0008】
さらに、ハイドロキシアパタイトの微粒子とキシリトールを組み合せ使用することによって、脱灰した歯牙エナメル質を再石灰化することが知られているが(例えば、特許文献2参照)、工業的に製造されたハイドロキシアパタイトは、化学的に安定な化合物で反応性に乏しく、厳密には生体における歯牙を構成するハイドロキシアパタイトとはその結晶構造が異なるため、再石灰化の効果が十分でない。
【0009】
なお、食品等への使用を考慮すると天然物由来の組成物を齲蝕予防組成物として用いることが適当であると考えられ、この条件に合うものを探してみると例えば茶抽出物がある。しかし、単なる茶抽出物では、従来、抗菌やグルコシルトランスフェラーゼ阻害等の齲蝕予防効果は知られているが、再石灰化促進や耐酸性向上等といった歯質強化効果は全く知られていない。また、茶抽出物からポリフェノール類を除去することにより、歯質強化にとってプラスに働くミネラルの比率を相対的に高めた歯質強化剤が知られているが(例えば、特許文献3参照)、この歯質強化剤は、天然物由来ではあるが、安全性、効果の面で十分とは言えないものである。
【0010】
また、象牙質の知覚過敏症の治療に用いられてきた薬剤としては、フッ化ジアミン銀、硝酸銀、塩化ストロンチウム、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化亜鉛、水酸化カルシウム、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドなどの化合物がある。これらのうち、銀化合物は、象牙細管の閉塞性には優れるものの、著しい着色性を有し、一般的な使用には適していないという欠点を有している。また、それ以外の化合物についても、未だ充分な効果が得られているとはいえない。
【0011】
一方、石化海藻については、免疫調節の不全に起因する体の異常を治療する効果や、固形又は半固形食品において官能特性や物理特性を向上させる効果、整腸効果等が知られている(例えば、特許文献4、5、6参照)。また、石化海藻には、高濃度にフッ素化合物が含まれていることが知られているが(例えば、特許文献7参照)、物理的方法による処理では、フッ素がほとんど作用せず、実際に歯質強化剤として使用することが出来ない。
【0012】
【特許文献1】特公平2−31049号公報
【特許文献2】特開平9−175963号公報
【特許文献3】特開2005−29496号公報
【特許文献4】特表2002−511056号公報
【特許文献5】特表2002−528104号公報
【特許文献6】特開2005−47820号公報
【特許文献7】特開2006−16354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記に鑑み、本発明は、口腔用組成物や飲食物に使用しても安全性において問題がなく、しかも、脱灰した歯牙エナメル質の再石灰化を効果的に促進するとともに、歯の耐酸性を向上することができる歯質強化剤及びこれを含有した口腔用組成物並びに飲食物とそれらの製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、フッ素化合物を高濃度に含む石化海藻と酸を有効成分とする歯質強化剤が上記目的を達成するとの知見を得て本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の歯質強化剤は、石化海藻と酸を有効成分とするもの、あるいはまた、石化海藻と酸とキシリトールを有効成分とするものである。本発明の歯質強化剤は、石化海藻と酸が入っていれば良く、あらかじめ石化海藻と酸を混合処理して配合しても良い。
【0016】
また、本発明の歯質強化用の口腔用組成物は、石化海藻と酸を配合するもの、あるいはまた、石化海藻と酸を混合処理したものを配合するもの、あるいはさらにキシリトールを配合するものである。
【0017】
さらに、本発明の歯質強化用の飲食物は、石化海藻と酸を配合するもの、あるいはまた、石化海藻と酸を混合処理したものを配合するもの、あるいはさらにキシリトールを配合するものである。
【0018】
また、本発明の歯質強化剤の製造方法は、石化海藻と酸を含有させる、もしくはあらかじめ石化海藻と酸を混合した処理物を混合するもの、あるいはさらにキシリトールを添加する方法である。
【0019】
さらに、本発明の口腔用組成物の製造方法は、歯質強化剤として石化海藻と酸を各別に配合させる、あるいはまた、歯質強化剤として石化海藻と酸を混合処理したものを配合する、あるいはそれらの歯質強化剤にさらにキシリトールを配合する方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の石化海藻と酸を有効成分とする歯質強化剤およびその製造方法であれば、従来のフッ素を含有するカルシウム剤に比して歯質の耐酸性促進及び再石化促進という二つの優れた効果を有する歯質強化剤を提供することができ、安全性においても問題がない。
【0021】
また、石化海藻と酸、さらにキシリトールを有効成分とする歯質強化剤およびその製造方法であれば、特に優れた歯質強化剤を提供することができる。
【0022】
さらに、本発明の歯質強化剤およびその製造方法は、歯牙エナメル質の耐酸性を向上させることのみならず、象牙質の耐酸性をも向上させることができるので、それによって齲蝕を積極的に抑制し、象牙質知覚過敏症をも予防、治療することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明で使用する石化海藻とは、海藻が海中のカルシウムやマグネシウム等のミネラル成分を吸着して得られるものであり、好ましくは紅藻類、より好ましくはサンゴモ科海藻の石灰質残渣である。
【0024】
例えば、Lithothamnium corallioides、Phymatolithon calcareum及びLithothamnium glaciale種等の、サンゴモ科の仲間を含む紅藻類の石灰質残渣が挙げられる。
【0025】
サンゴモの一種であるLithothamnium corallioides(Lithothamnium calcaleum、Phymatolithon calcareumともいう)は冷たく穏やかな海に非常に豊富にある海藻であり、このサンゴモが枯れた後に残る石灰質残渣は、90重量%以上が無機質であり、主に炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムからなる。
【0026】
上記した石化海藻は、海底より浚渫された状態でも使用できるが、砂、貝殻等が含まれているので、これらの一部又は全部が、海水及び/又は真水での洗浄、篩別、手作業による選別等の方法によって除去されていることが好ましく、更に、過酸化水素水処理や加熱処理等で殺菌し、乾燥したものは、飲食品用途として、細菌等の食品衛生規制に適合するため、より好ましい。なお、アクアミネラル(日本バイオコン株式会社製)、AQUAMIN(MARIGOT LTD.製)等、市販の飲食品用石化海藻粉末も使用できる。
【0027】
本発明で用いられる酸は、無機の強酸である塩酸や硫酸等、食品等への適用が認可されている酸味料等、酸味を呈するものであればよい。具体的には、アスコルビン酸、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、クエン酸(結晶)(無水)、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム(結晶)(無水)、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、二酸化炭素、酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸、イタコン酸、α−ケトグルタル酸、フィチン酸、ピロリン酸二水素二ナトリウム、酸性メタリン酸ナトリウムの他、食酢や果汁等が挙げられる。これらのものを1種類もしくは2種類以上用いて使用しても良い。
【0028】
本発明の歯質強化剤における石化海藻と酸との割合は、本発明の効果が得られれば適宜選択しそれらの割合を決定することができるが、好ましくは石化海藻1重量部に対して0.1〜10重量部、更に好ましくは、0.3〜3重量部である。この範囲であれば、石化海藻中のフッ素の溶出性の向上が認められる。
【0029】
上述した本発明の歯質強化剤は、上記した石化海藻と酸を、もしくはあらかじめ石化海藻と酸を混合した溶液、石化海藻と酸を混合した溶液を乾燥させた処理物を適当な液体担体に溶解するか若しくは分散させ、あるいは、適当な粉末担体と混合するか若しくはこれに吸着させ、場合によっては、乳化剤,分散剤,懸濁剤,展着剤,浸透剤,湿潤剤又は安定剤等を添加し、乳剤,水和剤,粉剤又は錠剤等に製剤化して使用に供することも可能である。
【0030】
さらに、本発明の歯質強化剤は、石化海藻と酸を、もしくはあらかじめ石化海藻と酸を混合した処理物を使用しても、歯の耐酸性と再石灰化を促進することで歯質を十分に強化することができるが、さらにキシリトールを配合することにより、耐酸性と再石灰化を著しく促進させることができる。キシリトールの使用量としては、本発明の効果が得られれば適宜選択しその割合を決定することができるが、好ましくは石化海藻1重量部に対して1〜100重量部、更に好ましくは、10〜50重量部である。
【0031】
本発明においてあらかじめ石化海藻と酸を混合処理する方法としては、例えば、石化海藻と酸の粉末同士を混合しても、石化海藻と酸の粉末を水等の溶媒に溶解させて混合しても良い。もしくは、例えば、石化海藻を液状の酸や酸水溶液に溶解させて混合しても良い。また、石化海藻と酸を混合した石化海藻溶液を乾燥させた処理物を調製しても良く、石化海藻と酸との混合処理は、いずれの方法で行っても良い。
【0032】
石化海藻と酸を混合することにより、石化海藻中のフッ素の溶出性を向上させ、石化海藻中のミネラル成分も相乗的に作用し、歯の耐酸性と再石灰化を促進することで歯質を強化することができる。
【0033】
さらに、石化海藻と酸を有効成分とする歯質強化剤にキシリトールを併用することにより、歯の脱灰層深層からの再石灰化を促し、耐酸性と再石灰化を著しく促進させることができる。
【0034】
歯質強化剤として石化海藻と酸、または石化海藻と酸を混合処理したもの、あるいはさらにそれらにキシリトールを含有する歯質強化用の口腔用組成物としては、練り歯磨,粉歯磨又は液状歯磨き等の歯磨類、洗口剤、歯肉マッサージクリーム、うがい用錠剤又はトローチ等があげられる。
【0035】
また、歯質強化剤として石化海藻と酸、または石化海藻と酸を混合処理したもの、あるいはさらにそれらにキシリトールを含有する歯質強化用飲食物としては、チューインガム,キャンディ,錠菓,グミゼリー,チョコレート,ビスケット又はスナック等の菓子、アイスクリーム,シャーベット又は氷菓等の冷菓、飲料、パン、ホットケーキ、乳製品、ハム,ソーセージ等の畜肉製品類、カマボコ,チクワ等の魚肉製品、惣菜類、プリン、スープ又はジャム等が挙げられるが、口腔内に長く滞留することから本発明の効果が強く認められるチューインガム、キャンディ、錠菓が好ましい。
【0036】
口腔用組成物への石化海藻の添加量としては、好ましくは0.1〜20.0重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%が好適である。酸の添加量としては、石化海藻1重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部が好適である。また、石化海藻と併用するキシリトールの添加量は、利用する口腔用組成物種類や形態等により一概に決めることは困難であるが、好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは10〜70重量%である。
【0037】
飲食物への石化海藻の添加量としては、好ましくは0.1〜6.0重量%、さらに好ましくは0.5〜3重量%が好適である。酸の添加量としては、石化海藻1重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部が好適である。また、石化海藻と併用するキシリトールの添加量は、利用する飲食物の種類や形態等により一概に決めることは困難であるが、好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは10〜70重量%である。
【0038】
上述した本発明の口腔用組成物及び飲食物において、歯質強化剤を添加せしめる方法としては、石化海藻と酸を各別に、または石化海藻と酸をあらかじめ混合処理したものを口腔用組成物あるいは飲食物に添加してもよく、さらには製造過程のいかなる時に添加し、また、残余の原料と混合してもよい。なお、石化海藻と酸とキシリトールを併用する場合には、これらを予め混合して、当該口腔用組成物あるいは飲食物に添加してもよいし、各別に添加してもよい。
【0039】
以下に本発明実施例について説明するが、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
〔実施例1〕 酸添加による石化海藻からのフッ素溶出性
石化海藻中のフッ素量をアリザリンコンプレキソン吸光光度法によって調べたところ、1014ppmであった。石化海藻0.1%水溶液を調製し、クエン酸を添加後、フッ素イオン電極(オリオン社)を用い、フッ素イオン濃度を測定した。(溶液フッ素濃度)/(石化海藻中のフッ素量x0.1/100)x100を可溶化率(%)とした。
【0041】
【表1】

【0042】
その結果、石化海藻は酸の添加により、溶液中へのフッ素の溶出性が約8倍向上した。
【0043】
〔実施例2〕 石化海藻と酸との混合処理物のフッ素溶出性
石化海藻10gを1リットルの水に懸濁した溶液に、オートマチックタイトレーター(KYOTO ELECTRONICS社製)を用い、pHを7.0に設定し、1規定の塩酸を約170ミリリットル加え石化海藻を溶解した。石化海藻溶解液を濾過し、ろ液を凍結乾燥し、あらかじめ石化海藻と酸を混合した処理物(酸可溶化石化海藻)を得た。
【0044】
石化海藻および、酸可溶化石化海藻中のフッ素量をアリザリンコンプレキソン吸光光度法によって調べたところ、石化海藻中のフッ素量が1014ppm、酸可溶化石化海藻中のフッ素量が920ppmであった。これら0.5%水溶液を調製し、フッ素イオン電極(オリオン社)を用い、フッ素イオン濃度を測定した。(溶液フッ素濃度)/(粉体フッ素含量x0.5/100)x100を可溶化率(%)とした。
【0045】
【表2】

【0046】
以上より、石化海藻の酸処理により、水へのフッ素溶出性が約8倍向上した。
【0047】
〔実施例3〕 再石灰化効果確認試験
実施例2で調製した酸可溶化石化海藻を使用した。
【0048】
対照フッ素剤として、フッ化ナトリウム(和光純薬)、蛍石(フッ化カルシウム)(和光純薬)を使用した。
【0049】
歯科学報Vol.89,No.9,1441〜1455(1989).に記載されているヒト抜去歯を用いる再石灰化促進効果確認試験による方法を参考に次のとおり行った。ヒト抜去歯エナメル質ブロックの表面を、3×4mmの窓を残して、全体をスティッキーワックスで被覆し、これを、50℃に加温した0.01M酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)に2日間浸漬し、脱灰層を形成させた。その後、窓の半分をワックスで被覆し試験用歯牙エナメル質ブロックを調製した。
【0050】
再石灰化処理は、1mM CaCl、0.6mM KHPO、100mM NaClを含み、50mM KOH溶液で、pH7.3に調製した再石灰化溶液(1)とその再石灰化溶液を用いて次の8種類の再石灰化溶液(2〜9)を用意し、それを37℃とし、かつ、その各々に試験用歯牙エナメル質ブロック各1個を2週間浸漬した。ただし、各再石灰化溶液は2日置きに新しい溶液に交換した。
【0051】
1:再石灰化溶液
2:石化海藻を0.1重量%含んだ再石灰化溶液
3:キシリトールを5重量%含んだ再石灰化溶液
4:フッ化ナトリウムをフッ素として1.0ppm含んだ再石灰化溶液
5:フッ化カルシウムに塩酸を加え溶解し、溶解液をフッ素として1.0ppmとなるように添加した再石灰化溶液
6:本発明の歯質強化剤として、石化海藻を0.1重量%とクエン酸を0.1重量%含んだ再石灰化溶液
7:本発明の歯質強化剤として、石化海藻を0.1重量%とクエン酸を0.1重量%、キシリトールを5重量%含んだ再石灰化液
8:本発明の歯質強化剤として、実施例2の酸可溶化石化海藻を0.1重量%含んだ再石灰化溶液
9:本発明の歯質強化剤として、実施例2の酸可溶化石化海藻を0.1重量%、キシリトールを5重量%含んだ再石灰化溶液
【0052】
尚、本発明の歯質強化剤を使用した再石灰化溶液6,7,8,9のフッ素濃度は、実施例1及び2の結果より、ほぼ1ppmとなる。
【0053】
再石灰化処理後、各試験用歯牙エナメル質ブロックのワックスを除去、ポリエステル樹脂(Regolac樹脂)で包埋し、厚さ100μmの研磨切片を作製し、コンタクトマイクロラジオグラムを撮影した。撮影条件は10kV、3mA、照射時間30分間とし、基準としてアルミ箔ステップウェッジと同時に撮影した。現像は通法に準じ行った。
【0054】
また、マイクロラジオグラフィー(MR)による結果の再石灰化度を、視覚的に、次の5段階で評価することとした。
【0055】
・再石灰化度0:エナメル質脱灰層に石灰化が認められない。
・再石灰化度1:エナメル質脱灰表層で、かすかに再石灰化が認められる。
・再石灰化度2:エナメル質脱灰表層で、比較的強い再石灰化が認められる。又はエナメル質脱灰表層及び深層で再石灰化が認められる。
・再石灰化度3:エナメル質脱灰表層から深層にかけて全体的に再石灰化が認められる。又は、エナメル質脱灰表層で強い再石灰化が認められる。
・再石灰化度4:エナメル質脱灰表層で、強い再石灰化が認められる。なおかつ、表層から深層にかけて全体的に再石灰化が認められる。
・再石灰化度5:エナメル質脱灰表層から深層にかけて全体的に強い再石灰化が認められる。
【0056】
以下、上記実験の結果について述べる。
【0057】
MRの結果を表3に示す。
【0058】
脱灰直後のMRでは、再石灰化が認められなかった(再石灰化度0)。試験用歯エナメル質ブロックに脱灰層を形成させた後、再石灰化溶液1で処理した場合には、脱灰面全体に、ゆるやかな再石灰化が認められた(再石灰化度1)。同じく試験用歯エナメル質ブロックに脱灰層を形成させた後、再石灰化溶液2で処理した場合には、脱灰面全体に、ゆるやかな再石灰化が認められた(再石灰化度1)。再石灰化溶液3で処理した場合には、エナメル質脱灰表層だけでなく、深層にも再石灰化が認められた(再石灰化度2)。再石灰化溶液4および再石灰化溶液5で処理した場合には、エナメル質脱灰表層で強い再石灰化が認められた(再石灰化度3)。同じく試験用歯エナメル質ブロックに脱灰層を形成させた後、再石灰化溶液6および8で処理した場合には、エナメル質脱灰表層に強い再石灰化が、なおかつ表層から深層にかけて全体的に再石灰化が認められた(再石灰化度4)。同じく試験用歯エナメル質ブロックに脱灰層を形成させた後、再石灰化溶液7及び9で処理した場合には、エナメル質脱灰表層及び深層の全体に強い再石灰化が認められた(再石灰化度5)。
【0059】
【表3】

【0060】
以上によれば、本発明の石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻(混合処理物)に再石灰化促進効果が認められた。さらに本発明の石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻は、再石灰化溶液に溶かしたときに同じフッ素濃度になるフッ化ナトリウム、蛍石(フッ化カルシウム)溶液と比較し、より強い再石灰化促進効果があることが確認され、しかも、石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻にキシリトールを併用することにより、その再石灰化促進効果が顕著に高まることが認められた。
【0061】
〔実施例4〕 歯牙エナメル質の耐酸性向上効果確認試験1
Caries Research 38:551〜556,2004に記載されているヒト抜去歯を用いる耐酸性向上効果確認試験による方法を参考に次のとおり行った。ヒト抜去歯エナメル質ブロックの表面を、3×4mmの窓を残して、全体をスティッキーワックスで被覆し、これを、37℃に加温した、500mg/lのハイドロキシアパタイト、20g/lのカルボポール、0.1M乳酸を含む脱灰溶液(pH4.8)に2日間浸漬し、脱灰層を形成させた。その後、窓の1/3をワックスで被覆し試験用歯牙エナメル質ブロックを調製した。
【0062】
再石灰化処理は、1mM CaCl、0.6mM KHPO、100mM NaClを含み、50mM KOH溶液で、pH7.3に調製した再石灰化溶液を用いて、実施例3の9種類の再石灰化溶液を用意し、それを37℃とし、かつ、その各々に試験用歯牙エナメル質ブロック各1個を2週間浸漬した。ただし、各再石灰化溶液は2日おきに新しい溶液に交換した。
【0063】
再石灰化処理後、窓の半分をワックスで被覆し、耐酸性試験用歯牙エナメル質ブロックを調製した。耐酸性処理は、上記37℃に加温した脱灰溶液に2日間浸漬した。
【0064】
耐酸性処理後、各試験用歯牙エナメル質ブロックのワックスを除去、ポリエステル樹脂(Regolac樹脂)で包埋し、100μmの研磨切片を作製し、コンタクトマイクロラジオグラムを撮影した。撮影条件は10kV、3mA、照射時間30分間とし、基準としてアルミ箔ステップウェッジと同時に撮影した。現像は通法に準じ行った。
【0065】
また、マイクロラジオグラフィー(MR)による結果の石灰化度を、視覚的に、次の5段階で評価することとした。
【0066】
・石灰化度1:エナメル質表層から深層にかけて全体的に強い脱灰が認められる。
・石灰化度2:エナメル質表層から深層にかけて全体的に脱灰が認められる。
・石灰化度3:エナメル質表層または深層で比較的弱い脱灰が認められる。
・石灰化度4:エナメル質層にかすかに脱灰が認められる。
・石灰化度5: エナメル質層にほとんど脱灰が認められない。
【0067】
試験用歯エナメル質ブロックを脱灰溶液に浸漬した直後のマイクロラジオグラフィーの結果、再石灰化溶液に浸漬した直後のマイクロラジオグラフィーの結果、再度脱灰液浸漬後のマイクロラジオグラフィーの結果を表4に示す。
【0068】
【表4】

【0069】
以上によれば、本発明の石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻(混合処理物)は、再石灰化溶液1や、再石灰化溶液に溶かしたときに同じフッ素濃度になるフッ化ナトリウム、蛍石(フッ化カルシウム)と比較し、より強い歯牙エナメル質の耐酸性を向上する効果があることが確認され、しかも、石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻にキシリトールを併用することにより、その耐酸性向上効果が顕著に高まることが認められた。
【0070】
〔実施例5〕 歯牙エナメル質の耐酸性向上効果確認試験2
ヒト抜去歯エナメル質ブロックの表面を、3×4mmの窓を残して、全体をスティッキーワックスで被覆した。
【0071】
試験溶液処理は、1mM CaCl、0.6mM KHPO、100mM NaClを含み、50mM KOH溶液で、pH7.3に調製した試験溶液を用いて、9種類の試験溶液(実施例3の9種類の再石灰化溶液と同じ)を用意し、それを37℃とし、かつ、その各々に試験用歯牙エナメル質ブロック各1個を2週間浸漬した。ただし、各試験溶液は2日置きに新しい溶液に交換した。
【0072】
尚、本試験においては、上記した9種類の試験溶液には前もって浸漬しない未処理の歯牙エナメル質ブロックについても、以下の試験を行った。
【0073】
試験溶液浸漬後、37℃に加温した0.1M乳酸を含む脱灰溶液(pH4.5)に8時間浸漬した。
【0074】
脱灰処理後、各試験用歯牙エナメル質ブロックのワックスを除去、ポリエステル樹脂(Regolac樹脂)で包埋し、厚さ100μmの研磨切片を作製し、コンタクトマイクロラジオグラムを撮影した。撮影条件は10kV、3mA、照射時間30分間とし、基準としてアルミ箔ステップウェッジと同時に撮影した。現像は通法に準じ行った。試験溶液を使用した試料の比較対照として、未処理のエナメル質ブロックを用いた。
【0075】
また、マイクロラジオグラフィー(MR)による結果の脱灰度を、視覚的に、次の5段階で評価することとした。
【0076】
・脱灰度0:エナメル質層にほとんど脱灰が認められない。
・脱灰度1:エナメル質層にかすかに脱灰が認められる。
・脱灰度2:エナメル質層表層または深層で脱灰が認められる。
・脱灰度3:エナメル質表層から深層にかけて全体的に脱灰が認められる。
・脱灰度4:エナメル質表層から深層にかけて全体的に強い脱灰が認められる。
【0077】
試験用歯エナメル質ブロックを試験溶液に浸漬した直後のマイクロラジオグラフィーの結果、脱灰液浸漬後のマイクロラジオグラフィーの結果を表2に示す。
【0078】
【表5】

【0079】
以上によれば、本発明の石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻(混合処理物)は、再石灰化溶液1や、再石灰化溶液に溶かしたときに同じフッ素濃度になるフッ化ナトリウム、蛍石(フッ化カルシウム)と比較し、より強い歯牙エナメル質の耐酸性を向上する効果があることが確認され、しかも、石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻にキシリトールを併用することにより、その耐酸性向上効果が顕著に高まることが認められた。
【0080】
〔実施例6〕 歯牙象牙質の耐酸性向上効果確認試験
健全な人歯牙の象牙質を切削により露出させたものを試料とした。ヒト抜去歯象牙質ブロックの表面を、3×4mmの窓を残して、全体をスティッキーワックスで被覆した。
【0081】
試験溶液処理は、1mM CaCl、0.6mM KHPO、100mM NaClを含み、50mM KOH溶液で、pH7.3に調製した試験溶液を用いて、実施例5の9種類の試験溶液を用意し、それを37℃とし、かつ、その各々に試験用歯牙象牙質ブロック各1個を2週間浸漬した。ただし、各試験溶液は2日置きに新しい溶液に交換した。
【0082】
尚、本試験においては、上記した9種類の溶液には前もって浸漬しない未処理の歯牙象牙質ブロックについても、以下の試験を行った。
【0083】
試験溶液浸漬後、37℃に加温した0.1M乳酸を含む脱灰溶液(pH4.5)に8時間浸漬した。
【0084】
脱灰処理後、各試験用歯牙象牙質ブロックのワックスを除去、ポリエステル樹脂(Regolac樹脂)で包埋し、厚さ100μmの研磨切片を作製し、コンタクトマイクロラジオグラムを撮影した。撮影条件は10kV、3mA、照射時間30分間とし、基準としてアルミ箔ステップウェッジと同時に撮影した。現像は通法に準じ行った。試験溶液を使用した試料の比較対照として、未処理の象牙質ブロックを用いた。
【0085】
また、マイクロラジオグラフィー(MR)による結果の脱灰度を、視覚的に、次の5段階で評価することとした。
【0086】
・脱灰度0:象牙質層に脱灰がほとんど認められない。
・脱灰度1:象牙質層にかすかに脱灰が認められる。
・脱灰度2:象牙質層表層または深層で脱灰が認められる。
・脱灰度3:象牙質表層から深層にかけて全体的に脱灰が認められる。
・脱灰度4:象牙質表層から深層にかけて全体的に強い脱灰が認められる。
【0087】
試験用歯象牙質ブロックを試験溶液に浸漬した直後のマイクロラジオグラフィーの結果、脱灰液浸漬後のマイクロラジオグラフィーの結果を表6に示す。
【0088】
【表6】

【0089】
以上によれば、本発明の石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻(混合処理物)は、再石灰化溶液1や、再石灰化溶液に溶かしたときに同じフッ素濃度になるフッ化ナトリウム、蛍石(フッ化カルシウム)と比較し、より強い歯牙象牙質の耐酸性を向上する効果があることが確認され、しかも、石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻にキシリトールを併用することにより、その耐酸性向上効果が顕著に高まることが認められた。石化海藻と酸の組み合わせおよび実施例2の酸可溶化石化海藻、さらにキシリトールを併用することにより、象牙質の耐酸性をも向上させることができるので、それによって歯根面および象牙質の齲蝕を積極的に抑制し、象牙質知覚過敏症をも予防、治療することができる。
【0090】
〔実施例7〕(チューインガム)
酸可溶化石化海藻とキシリトールを使用し、表7の配合による実施例7及び比較例1のチューインガムを作製した。
【0091】
【表7】

【0092】
チューインガムの有効成分の抽出操作は、「食品および代用糖の齲蝕誘発性を総合的に評価するための基礎的研究(課題番号04304045)平成5年度科学研究費補助金研究成果報告書(研究代表者 山田 正);p86〜89」を参考にして行った。
【0093】
上記実施例7及び比較例1のチューインガムについて、それを細片化して10gを秤量した。その各々に、実施例3の場合と同じ組成の再石灰化溶液(60℃)50mlを加え、ガラス棒でよく擂り潰して含有成分を溶出し、それに、さらに上記再石灰化溶液(60℃)50mlを加えて再び溶出操作を行った後、遠心分離により細かいガムベースを取り除くことにより、実施例7及び比較例1のチューインガムに対応する2種類のチューインガム抽出液を得た。
【0094】
〔実施例8〕(チューインガム)
石化海藻とキシリトールを使用し、表8の配合による実施例8及び比較例2、3のチューインガムを作製した。
【0095】
【表8】

【0096】
チューインガムの有効成分の抽出操作は、「食品および代用糖の齲蝕誘発性を総合的に評価するための基礎的研究(課題番号04304045)平成5年度科学研究費補助金研究成果報告書(研究代表者 山田 正);p86〜89」を参考に、実施例7、比較例1と同様の方法で行った。実施例8及び比較例2、3のチューインガムに対応する3種類のチューインガム抽出液を得た。
【0097】
〔実施例9〕(錠菓)
酸可溶化石化海藻とキシリトールを使用し、表9の配合による実施例9及び比較例4の錠菓を作製した。
【0098】
【表9】

【0099】
錠菓の有効成分の抽出操作は、「食品および代用糖の齲蝕誘発性を総合的に評価するための基礎的研究(課題番号04304045)平成5年度科学研究費補助金研究成果報告書(研究代表者 山田 正);p86〜89」を参考に、実施例7、比較例1と同様の方法で行った。実施例9及び比較例4の錠菓に対応する2種類の錠菓抽出液を得た。
【0100】
〔実施例10〕(錠菓)
石化海藻とキシリトールを使用し、表10の配合による実施例10及び比較例5、6の錠菓を作製した。
【0101】
【表10】

【0102】
錠菓の有効成分の抽出操作は、「食品および代用糖の齲蝕誘発性を総合的に評価するための基礎的研究(課題番号04304045)平成5年度科学研究費補助金研究成果報告書(研究代表者 山田 正);p86〜89」を参考に、実施例7、比較例1と同様の方法で行った。実施例10及び比較例5、6の錠菓に対応する3種類の錠菓抽出液を得た。
【0103】
〔実施例11〕(キャンディ)
酸可溶化石化海藻とキシリトールを使用し、表11の配合による実施例11及び比較例7のキャンディを作製した。
【0104】
【表11】

【0105】
キャンディの有効成分の抽出操作は、「食品および代用糖の齲蝕誘発性を総合的に評価するための基礎的研究(課題番号04304045)平成5年度科学研究費補助金研究成果報告書(研究代表者 山田 正);p86〜89」を参考に、実施例7、比較例1と同様の方法で行った。実施例11及び比較例7のキャンディに対応する2種類のキャンディ抽出液を得た。
【0106】
〔実施例12〕(キャンディ)
石化海藻とキシリトールを使用し、表12の配合による実施例12及び比較例8、9のキャンディを作製した。
【0107】
【表12】

【0108】
キャンディの有効成分の抽出操作は、「食品および代用糖の齲蝕誘発性を総合的に評価するための基礎的研究(課題番号04304045)平成5年度科学研究費補助金研究成果報告書(研究代表者 山田 正);p86〜89」を参考に、実施例7、比較例1と同様の方法で行った。実施例12及び比較例8、9のキャンディに対応する3種類のキャンディ抽出液を得た。
【0109】
実施例7、8、9、10、11、12、比較例1、2、3、4、5、6、7、8、9で得られた抽出液について、実施例3の方法で再石灰化促進効果を、実施例4、5、6の方法で耐酸性向上効果を評価した。各試験のマイクロラジオグラフィーの評価結果を表13−1及び表13−2に示す。
【0110】
【表13−1】

【0111】
【表13−2】

【0112】
以上によれば、石化海藻と酸、もしくは、酸可溶化石化海藻を配合したガム、錠菓およびキャンディが歯牙エナメル質の再石灰化促進効果、歯牙エナメル質と象牙質の耐酸性向上効果を示した。
【0113】
以下に実施例13〜28の配合割合(数字は重量%)を示す。
【0114】
〔実施例13〕(チューインガム)
ガムベース 20.0
ソルビトール 55.0
マルチトール 23.8
軟化剤 1.0
酸可溶化石化海藻 0.2
【0115】
〔実施例14〕(チューインガム)
ガムベース 20.0
キシリトール 55.0
マルチトール 22.5
軟化剤 1.0
クエン酸 1.0
石化海藻 0.5
【0116】
〔実施例15〕(キャンディ)
キシリトール 48.0
還元麦芽糖水飴 36.5
酸可溶化石化海藻 1.0
香料 0.4
精製水 14.1
【0117】
〔実施例16〕(キャンディ)
パラチニット 48.0
還元麦芽糖水飴 36.0
酸可溶化石化海藻 0.5
香料 0.4
精製水 15.1
【0118】
〔実施例17〕(錠菓)
キシリトール 75.0
乳糖 20.9
グリセリン脂肪酸エステル 0.1
クエン酸 0.1
石化海藻 0.1
精製水 3.8
【0119】
〔実施例18〕(錠菓)
キシリトール 75.0
乳糖 12.1
グリセリン脂肪酸エステル 0.1
クエン酸 3.0
石化海藻 6.0
精製水 3.8
【0120】
〔実施例19〕(錠菓)
キシリトール 75.0
パラチニット 20.0
グリセリン脂肪酸エステル 0.2
酸可溶化石化海藻 0.5
精製水 4.3
【0121】
〔実施例20〕(チョコレート)
カカオマス 15.0
全脂粉乳 25.0
キシリトール 40.9
酸可溶化石化海藻 0.5
ココアバター 18.0
乳化剤 0.3
香料 0.3
【0122】
〔実施例21〕(アイスクリーム)
クリーム(脂肪率45%) 25.0
牛乳(脂肪率3.7%) 35.0
脱脂粉乳(無糖) 24.3
キシリトール 10.4
第2リン酸カルシウム 0.1
コーンシロップ 4.4
安定剤 0.75
酸可溶化石化海藻 0.15
【0123】
〔実施例22〕(飲料)
加糖ブドウ糖液糖 0.3
キシリトール 8.6
酸味料 1.0
香料 0.4
クエン酸 0.3
石化海藻 0.3
精製水 89.1
【0124】
〔実施例23〕(歯磨)
水酸化アルミニウム 35.0
無水ケイ酸 15.0
キシリトール 10.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料 0.5
酸可溶化石化海藻 0.5
精製水 38.0
【0125】
〔実施例24〕(歯磨)
水酸化アルミニウム 15.0
無水ケイ酸 15.0
キシリトール 10.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料 0.5
酸可溶化石化海藻 20.0
精製水 38.5
【0126】
〔実施例25〕(洗口剤)
キシリトール 20.0
グリセリン 10.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料 0.2
酸可溶化石化海藻 1.0
精製水 67.8
【0127】
〔実施例26〕(洗口剤)
キシリトール 7.4
酸可溶化石化海藻 0.5
グリセリン 10.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
香料 0.4
精製水 80.2
【0128】
〔実施例27〕(洗口剤)
ソルビトール 7.4
グリセリン 10.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
香料 0.6
酸可溶化石化海藻 0.5
精製水 80.0
【0129】
〔実施例28〕(洗口剤)
キシリトール 10.0
グリセリン 10.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料 0.2
酸可溶化石化海藻 20.0
精製水 58.8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石化海藻と酸を有効成分とすることを特徴とする歯質強化剤。
【請求項2】
あらかじめ石化海藻と酸を混合処理することを特徴とする請求項1記載の歯質強化剤。
【請求項3】
さらにキシリトールを添加することを特徴とする請求項1または2記載の歯質強化剤。
【請求項4】
歯の耐酸性促進効果及び再石灰化促進効果を有する請求項1乃至3記載の歯質強化剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歯質強化剤を含有する口腔用組成物。
【請求項6】
歯質強化剤として石化海藻と酸とを各別に添加することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項7】
歯質強化剤としてさらにキシリトールを各別に添加することを特徴とする請求項6記載の口腔用組成物。
【請求項8】
石化海藻の配合量が0.1重量%〜20重量%であることを特徴とする請求項5乃至7記載の口腔用組成物。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歯質強化剤を含有する飲食物。
【請求項10】
歯質強化剤として石化海藻と酸とを各別に添加することを特徴とする飲食物。
【請求項11】
歯質強化剤としてさらにキシリトールを各別に添加することを特徴とする請求項10記載の飲食物。
【請求項12】
石化海藻の配合量が0.1重量%〜6重量%であることを特徴とする請求項9乃至10のいずれかに記載の飲食物。
【請求項13】
石化海藻と酸をそれぞれ含有させる、あるいはあらかじめ粉末石化海藻と酸の粉末または液体を混合あるいは溶媒にて溶解させて混合するかまたはその混合液を乾燥処理して酸可溶化石化海藻物を得ることを特徴とする歯質強化剤の製造方法。
【請求項14】
さらにキシリトールを添加することを特徴とする請求項13記載の歯質強化剤の製造方法。
【請求項15】
歯質強化剤として石化海藻と酸を各別に添加することを特徴とする口腔用組成物の製造方法。
【請求項16】
歯質強化剤としてあらかじめ石化海藻と酸を混合処理したものを配合することを特徴とする口腔用組成物の製造方法。
【請求項17】
さらにキシリトールを添加することを特徴とする請求項15または16に記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−127304(P2008−127304A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312310(P2006−312310)
【出願日】平成18年11月18日(2006.11.18)
【出願人】(599066676)学校法人東京歯科大学 (6)
【出願人】(307013857)株式会社ロッテ (101)
【Fターム(参考)】