説明

残圧保持弁およびサスペンションストラット

【課題】残圧保持弁およびサスペンションストラットを提供する。
【解決手段】自動車のハイドロニューマチックサスペンションストラット用の残圧保持弁1であって、弁体6が、空気入口4に空気圧が加えられると、空気が弁体6を通過して空気出口5まで流れるのを可能にするために、弁体6が弁ハウジング3の弁体座部8から持ち上げられ得るように、弁ハウジング3に動作可能に連結され、弁要素7が、空気出口5に空気圧が加えられると、空気が弁要素を通過して空気入口4まで流れるのを可能にするために、弁要素が弁体6の弁要素座部から持ち上げられ得るように、弁体6に動作可能に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残圧保持弁、および特に自動車用の、こうした残圧保持弁を有するサスペンションストラット(strut)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明をいかなる車両にも適用することができるが、本発明について、それが基づく問題とともに、乗用車に関してより詳細に説明する。
【0003】
自動車のハイドロニューマチック(hydropneumatic)サスペンションシステムは、ばねシステムを、都合のよい、高速で汎用性のある方法で、道路の状態、自動車の有効積載量、および/または車両の運転手が望む自動車のシャシの運転特性に適合させることができる。こうしたサスペンションシステムのばね効果は、ガス充填ばねベローズによって確保され、ばねベローズ内のガス圧力を、たとえばコンプレッサを用いて調整することができる。圧力保持弁と呼ばれるものを使用して、たとえばコンプレッサの故障または空気圧系統における漏れによる圧力損失時に、ばねシステムの機能が維持される。こうした圧力保持弁により、空気がばねベローズから流出することができなくなる。したがって、ばねベローズにおいて十分な残留保持圧力が常に維持される。
【0004】
下記特許文献1は、こうした圧力保持弁について記載している。その圧力保持弁は、ポンプ側ハウジング部品および消費側ハウジング部品を有し、それらはいくつかの部分で互いに差し込まれ、流入口および出口を有している。流入口を出口から気密式に分離するために、それらハウジング部品の間に可撓性のゴム製ダイヤフラムが配置されている。流入口に空気圧が加えられると、ゴム製ダイヤフラムのダイヤフラム面に空気圧がかかり、その結果、ダイヤフラムの封止面が、弁ばねの力に反してポンプ側ハウジング部品の弁座から持ち上げられる。たとえば、コンプレッサの圧送能力が低下し、その結果、作動圧力が、弁ばねによって予め確定された閾値より低下すると、ダイヤフラムの封止面は再びその弁座上に載ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第19854540C2号明細書
【特許文献2】独国特許第19918157C1号明細書
【特許文献3】米国特許第4779560A号明細書
【特許文献4】特開2000−199577号公報
【特許文献5】特開平01−124440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この構成では、ハウジング部品が非常に複雑でありかつ製造にコストがかかり、流入空気圧に反して作用する弁ばねによる残留保持圧力の事前設定を、非常に不正確にしか調整することができないということが不都合であることが分かった。
【0007】
したがって、本発明は、上述した不都合をなくす改善された残圧保持弁を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する残圧保持弁により、かつ/または請求項14の特徴を有するサスペンションストラットにより、本発明に従って達成される。
【0009】
したがって、以下が提供される。
【0010】
特に自動車のハイドロニューマチックサスペンションストラット用の残圧保持弁であって、空気入口および空気出口を備えた弁ハウジングと、弁ハウジング内に変位可能に配置されている弁体と、弁体内に変位可能に配置されている弁要素と、を有し、弁体が、空気入口に空気圧が加えられると、空気が弁体を通過して空気出口まで流れるのを可能にするために、弁体が弁ハウジングの弁体座部から持ち上げられ得るように、弁ハウジングに動作可能に連結され、弁要素が、空気出口に空気圧が加えられると、空気が弁要素を通過して空気入口まで流れるのを可能にするために、弁要素が弁体の弁要素座部から持ち上げられ得るように、弁体に動作可能に連結されている、残圧保持弁。
【0011】
こうした残圧保持弁を有する、サスペンションストラット、特に自動車用のハイドロニューマチックサスペンションストラット。
【0012】
本発明の基本概念は、弁ハウジングの空気入口から空気出口までの空気通過流を制御する弁体と、弁ハウジングの空気出口から空気入口までの空気通過流を制御する弁要素とを有する、残圧保持弁を提供することである。これにより、弁要素および弁要素座部の構造上の構成のみにより残留保持圧力を正確に調整することが可能になる。さらに、残圧保持弁の個々の部品は、上述した残圧保持弁に比較して構造的に単純であり、したがって、製造の費用効率のよい方法で具現化される。
【0013】
従属請求項には、請求項1で明記している残圧保持弁および請求項14で明記しているサスペンションストラットの有利な精緻形態および改良形態がある。
【0014】
1つの好ましい発展形態によれば、空気入口に、所定弁体閾値を上回る空気圧が加えられると、弁体が弁ハウジングの弁体座部から持ち上げられ、空気入口に加えられる空気入口圧力は、空気出口に加えられる空気出口圧力より高い。これにより、空気入口に規定空気圧力がある時、空気入口から空気出口への方向における残圧保持弁の開放が確実に保証される。
【0015】
さらなる好ましい例示的な実施形態によれば、空気出口に、所定弁要素閾値を上回る空気圧が加えられると、弁要素が弁体の弁要素座部から持ち上げられ、空気出口に加えられる空気出口圧力は、空気入口に加えられる空気入口圧力より高い。これにより、空気入口圧力より高くかつ所定弁要素閾値より高い空気出口圧力の場合、空気が空気入口から空気出口まで流れることができるように、残圧保持弁が開放されることが保証される。
【0016】
さらなる好ましい発展形態によれば、弁要素は、空気出口の方向にばね圧力を加えられた(spring−prestressed)球として具現化される。これにより、弁要素を、構造的に単純でありかつ費用効率のよい方法で製造することができる。
【0017】
さらなる好ましい発展形態によれば、弁体に、球を保持する段付き円筒状貫通部と、弁体内の球に対し空気出口の方向にばね圧力を加える第1円筒ばねとが設けられる。これにより、弁体内の球に対して信頼性が高くかつ確実な軸方向案内が可能になり、球に対して空気出口の方向にばね圧力を加えるために、製造が容易な費用効率のよい円筒ばねを使用することができる。その結果、残圧保持弁を製造する製造コストが低減する。
【0018】
さらなる好ましい例示的な実施形態では、弁要素座部が半球形状であり、これにより、弁要素座部が球によって封止されることが確実に保証される。これにより、残圧保持弁の信頼性が向上する。
【0019】
さらなる好ましい発展形態によれば、弁体は、空気入口に対してばね圧力が加えられかつ平面の弁フェースを有する円筒として具現化される。これにより、弁体を単純かつ費用効率のよい方法で製造することができ、それにより、残圧保持弁の製造コストが低減する。
【0020】
さらなる好ましい実施形態によれば、弁体の少なくともいくつかの部分を包囲し、かつ弁ハウジング内の弁体に対し空気入口の方向にばね圧力を加える第2円筒ばねが、弁ハウジングの端壁と弁体の肩部との間に設けられる。第2円筒ばねのばね硬さを選択することにより、弁体閾値を都合よく調整することができる。弁体に対し空気入口の方向に圧力を加えるために費用効率のよい円筒ばねを使用することにより、残圧保持弁の製造コストを低減することができる。
【0021】
1つの好ましい実施形態によれば、円筒ばねは互いに対して同軸状に配置され、第2円筒ばねは第1円筒ばねの少なくともいくつかの部分を包囲し、それら円筒ばねは、異なるばね硬さ値を有し、それら円筒ばねのばね力は反対方向に作用する。これにより、円筒ばねを小さい取付け空間に収容することができ、ばね硬さ値の異なるばねを使用することにより、弁体閾値および弁要素閾値の正確な調整が可能になる。
【0022】
1つの好ましい発展形態によれば、弁体座部は平面として具現化される。これにより、弁体座部における弁体の信頼性が高くかつ気密な封止が可能になり、それにより残圧保持弁の信頼性が向上する。
【0023】
さらなる好ましい発展形態によれば、封止装置、特にOリングが、弁体と弁ハウジングの弁体座部との間に配置される。これにより、閉鎖状態にある残圧保持弁により空気の望ましくない流れが確実に防止される。
【0024】
好ましい実施形態によれば、弁ハウジングは、中空円筒形状で具現化され、弁体は、弁ハウジングの内壁上の外壁に軸方向に案内され、かつ弁体座部に対して中心に置かれる。これにより、弁体が、弁ハウジング内における軸方向変位中に傾くことが確実に防止され、それにより、残圧保持弁の動作安全性および信頼性が向上する。
【0025】
1つの例示的な実施形態によれば、弁ハウジングは、内壁に軸方向に伸びるダクト(ducts)を有し、ダクトは、弁体が軸方向に変位すると、空気が弁体を通過して流れるのを可能にするために、前記ダクトが少なくともいくつかの部分において開放されることが可能であるように具現化される。これにより、十分に大容量の流れが残圧保持弁内を流れ、それにより、残圧保持弁の可能な使用が拡張されることが保証される。
【0026】
1つの好ましい例示的な実施形態によれば、残圧保持弁は、サスペンションストラットのばねベローズ内に組み込まれる。これにより、サスペンションストラットの必要な取付け空間が低減し、その使用範囲が拡大する。
【0027】
本発明を、例示的な実施形態に基づいてかつ図面として添付した概略図を参照して以下により詳細に説明する。
【0028】
図面の各図において、同じ参照符号は、特に明記しない限り同一のまたは機能的に同一の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好ましい実施形態による残圧保持弁の断面図を示す。
【図2】図1による残圧保持弁の好ましい実施形態の弁ハウジングの断面斜視図を示す。
【図3】図2の断面線III−IIIによる弁ハウジングの例示的な実施形態の断面図を示す。
【図4】図1による残圧保持弁の好ましい実施形態における弁体の断面斜視図を示す。
【図5】初期状態にある本発明の好ましい実施形態による残圧保持弁の断面斜視図を示す。
【図6】第1動作状態にある本発明の好ましい実施形態による残圧保持弁の断面斜視図を示す。
【図7】第2動作状態にある本発明の好ましい実施形態による残圧保持弁の断面斜視図を示す。
【図8】図7の細部Aの図に一致する残圧保持弁の拡大図を示す。
【図9】残圧保持弁の例示的な応用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
残圧保持弁の好ましい例示的な実施形態について、以下同時に参照する図1〜図8に基づいて説明する。
【0031】
図1は、特に自動車のハイドロニューマチックサスペンションストラット用の残圧保持弁1を示す。残圧保持弁1は、空気入口4および空気出口5を備えた弁ハウジング3を有している。弁ハウジング3は、中空円筒の形状の基本形態を有している。弁ハウジング3は、たとえば、ボウル型下部26およびボウル型下部26の終端をなすカバー27から構成されている。空気入口4は下部26に割り当てられ、空気出口5はカバー27に割り当てられている。部品26、27は、たとえば継ぎ目により気密に互いに溶接されている。弁ハウジングの別の実施形態では、部品26、27を、たとえば互いにねじ留めするかまたは接着接合することも可能である。カバー27は、たとえばカラー29により弁ハウジング3の内壁18に沿って中心に案内される。弁ハウジング3の別の実施形態では、弁ハウジング3を、たとえば3つ以上の部品から構成することも可能である。空気入口4は、たとえば、圧縮空気クイックリリースカップリングの形態の段付きボアとして具現化される。空気入口の第1直径d1は、相対的に大きい第2直径d2とくっつけられている。2つの直径d1、d2の間の遷移は、たとえば面取り30として具現化される。
【0032】
弁ハウジング3の本質的に円筒状の内部31は、内壁18によりかつ2つの端壁8、13により境界が画されている。端壁13には、ここでは、円錐状ドリル穴の形態で空気出口5が設けられており、空気出口5の円錐の先端は、内部31から弁ハウジング3の外部領域内に向いている。端壁8は、空気入口4に割り当てられている。端壁8は、好ましくは、平面の弁体座部8として具現化される。弁体座部8の表面は、たとえば研磨されている。空気入口4を包囲し、かつたとえばOリング16の形態の封止装置16を保持する目的である環状溝32を、たとえば弁体座部8に設けることができる。空気入口4および空気出口5は、たとえば、空気ラインを連結する連結装置4、5として具現化される。空気入口4および空気出口5は、好ましくは、クイックリリースカップリングとして具現化される。空気出口5を気密に連結するために、たとえば、Oリングの形態の封止装置33を設けることが可能である。Oリング33は、たとえば空気出口5を包囲する。こうした封止装置を空気入口4に設けることも可能である。空気出口5を、たとえば、ハイドロニューマチックサスペンションストラットのばねベローズに直接連結することも可能である。
【0033】
たとえば図3に示すように、弁ハウジング3の内壁18に、ダクト19〜24が設けられている。ダクト19〜24は、弁ハウジング3の中心軸34に関して軸方向に伸びている。ダクト19〜24は、弁体座部8から距離t1に配置されており、たとえば長さt2である。図3には、たとえば6つのダクト19〜24を示す。しかしながら、弁ハウジング3の別の実施形態では、弁ハウジング3は、6つより少ないかまたは6つより多いダクト19〜24を有していてもよい。ダクト19〜24は、好ましくは、内面18において互いに均一な間隔で配置されている。
【0034】
残圧保持弁1はまた、弁ハウジング内に変位可能に配置されている弁体6も有している。図4によれば、弁体6は段付きの円筒状基本形状を有している。弁体6は、好ましくは、外壁17を備えた第1円筒部分35を有している。第1円筒部分35の直径d3は、弁ハウジング3の内部31の直径d4におよそ対応する。直径d3、d4は、ここでは、外壁17が、好ましくは、弁ハウジング3の中心線34に関して、内壁18に遊びなしに軸方向に案内されるように互いに一致している。第1円筒部分35の高さt3は、好ましくは、ダクト19〜24の長さt2より小さい。第1円筒部分35の、すなわち弁体6の端面12は、弁ハウジング3の弁体座部8に面している平面の弁フェース12として具現化される。円筒部分35の、弁フェース12から離れる方向に面している端面に、弁体6の第2円筒部分36が配置されている。円筒部分35、36は、好ましくは、互いに対して同心円状に配置されている。円筒部分36は、直径d5および高さt4を有している。直径d5は、好ましくは直径d3より小さい。
【0035】
弁ハウジング3の内壁18で弁体6の外壁17を案内するため、弁フェース12は、弁ハウジング3の弁体座部8に対して中心に置かれる。
【0036】
弁体6の中心に、好ましくは、弁要素7および第1ばね装置11、特に第1円筒ばね11を保持する段状の貫通部10が設けられている。貫通部10は、弁要素7に対して弁要素座部9を有している。弁要素座部9は、好ましくは半球形状で具現化され、弁要素7は、たとえば球7として、特に鋼球7として具現化される。球7は、ここでは、貫通部10を球7によって気密に閉鎖することができるように、弁体6の弁要素座部9に適合される。
【0037】
貫通部10は、弁体6の弁フェース12から直径d6で伸びており、直径d6は、弁要素座部9から直径d7まで低減している。貫通部10は、弁体6の軸方向長さのおよそ4/5を、直径d6で弁体6を貫通している。弁体6の残りの軸方向長さは、直径d7で弁体6を通過して通っている。貫通部10はまた環状溝37も有し、そこには、好ましくはサークリップ(circlip)38が配置されている。固定リング39がサークリップ38を圧迫し、第1円筒ばね11が固定リング39を圧迫している。第1円筒ばね11と球7との間に球受座40が設けられている。したがって、球7には、球受座40、第1円筒ばね11および固定リング39を介して、サークリップ38に対抗してばね応力が与えられる。したがって、球7には、弁ハウジング3の空気出口5に対してばね応力が与えられる。球受座40は、たとえば軸方向に伸びる溝41を有し、簡略化のために、そのうちの1つの溝41のみに参照符号を付している。たとえば、好ましくは球受座40の外面に均一に配置されている4つの溝41が設けられている。
【0038】
残圧保持弁1はまた、第2ばね装置15、好ましくは第2円筒ばね15も有しており、それは、弁ハウジング3の端面13と弁体6の肩部14との間に配置されている。肩部14は、第1円筒部分35の、弁フェース12から離れる方向に向いている端面を表す。第2円筒ばね15は、ここでは、弁体6に対し、弁ハウジング3の空気入口4に対抗してばね応力を与えるように具現化される。第2円筒ばね15は、弁体6の円筒部分36を包囲している。これに関して、円筒部分36の直径d5は、ばね15が、圧縮されると、好ましくは弁ハウジング3の内壁18と弁体6の第2円筒部分36との間で半径方向に自由に移動可能であり、内壁18および円筒部分36のいずれにも接触しないように具現化される。
【0039】
円筒ばね11、15は、好ましくは互いに対して同軸状に配置されている。第2円筒ばねは、第1円筒ばね11のここでは少なくともいくつかの部分を包囲する。円筒ばね11、15は、好ましくはばね硬さ値が異なり、第2円筒ばね15のばね硬さは、好ましくは第1円筒ばね11のばね硬さより大きい。円筒ばね11、15のばね力は、反対方向に作用する。第1円筒ばね11のばね力は、弁ハウジング3の空気出口5の方向を指し、第2円筒ばね15のばね力は、弁ハウジング3の空気入口4の方向を指す。第2円筒ばね15のばね硬さは、ここでは、空気圧が弁ハウジング3の空気入口4に加えられると、その空気入口4に加えられる空気圧が所定弁体閾値を上回るまで、弁体6が弁ハウジング3の弁体座部8から持ち上げられないように構成されている。
【0040】
さらに、第1円筒ばね11のばね硬さは、所定弁要素閾値を上回る空気圧が弁ハウジングの空気出口5に加えられるまで、弁要素7が弁体6の弁要素座部9から持ち上げられないように構成されている。図1の残圧保持弁1の図では、弁体閾値および弁要素閾値がともに超過していない。これは、残圧保持弁1が閉鎖しており初期状態にあることを意味する。
【0041】
残圧保持弁1の機能方法について以下に説明する。図5は、弁ハウジング3のさらなる実施形態の変形を含む閉鎖した残圧保持弁1を示す。弁ハウジング3は、管状部分42を有し、それはその内壁18にダクト19〜24を有している。弁ハウジング3の内壁31は、空気入口4側および空気出口5側の2つのカバー43、44によって閉鎖されている。カバー43、44および管状部分42は、弁ハウジング3のハウジングケーシング45内に配置されている。ハウジングケーシング45は、弁ハウジング3の内部31から離れる方向を指しているそれらの端面においてカバー43、44の少なくともいくつかの部分を包囲している。この目的で、ハウジングケーシング45は、たとえば、カバー43、44の上に圧着されている。
【0042】
図6は、動作状態における残圧保持弁1を示し、そこでは、空気入口に加えられる圧力が空気出口5に与えられる圧力より高く、空気入口に加えられる圧力は、第2円筒ばね15によって予め確定される弁体閾値を上回る。この動作状態では、弁体6は、第2円筒ばね15のばね応力に反して、弁体座部8から持ち上げられ、弁ハウジング3の空気出口5の方向において軸方向に変位する。これに関して、弁体6の外壁17は、弁ハウジング3の内壁18に沿って摺動する。弁体6は、ここでは、空気がダクト19〜24を通って弁体6を通過して流れることができるまで、弁体座部8からその弁フェース12と共に持ち上げられる。ダクト19〜24の断面は、ここでは、空気を最大限伝達するように構成されている。弁体6の円筒部分35の高さt3およびダクト19〜24の長さt2は、弁体6がダクト19〜24に沿って軸方向に変位する場合、ダクト19〜24の端面が、弁体6の円筒部分35の両側において軸方向に露出するように、互いに決められている。残圧保持弁1のこの動作状態では、空気は、矢印49、50によって示すように、弁ハウジング3の空気入口4から空気出口5まで流れる。空気入口4における空気圧は、空気出口5における空気圧より高い。空気入口4側の空気圧が、所定弁体閾値に達しなくなるまで低下する場合、弁体6は、再び弁体座部8に向かって移動し、そこで、空気流はダクト19〜24によって遮られる。
【0043】
図7および図8は、第2動作状態における残圧保持弁1を示す。図8は、図7からの詳細Aを示す。弁ハウジング3の空気入口4側における圧力が、たとえば空気ホースの欠陥のために著しく低下する場合、弁体6は、第2円筒ばね15によって弁体座部8に対して押圧される。そして、ダクト19〜24が閉鎖される。空気出口5に存在する圧力、たとえばハイドロニューマチックサスペンションシステムのばねベローズの残圧が、所定弁要素閾値より高い場合、弁要素7はその弁要素座部9から持ち上げられ(離れ)、空気は、矢印49、50によって示すように、球7を通過し球受座40の溝41および貫通部10を通って弁ハウジング3の空気入口4まで流れる。この動作状態では、空気出口5に存在する空気出口圧力は、空気入口4に存在する空気入口圧力より高く、その結果、空気は、空気出口5から弁ハウジング3の空気入口4まで流れる。
【0044】
図9は、残圧保持弁1の例示的な適用を示す。特にハイドロニューマチックサスペンションストラット2として具現化されるサスペンションストラット2は、ダンパ46およびばねベローズ25を有している。圧力を、たとえばコンプレッサ47によってばねベローズ25に加えることができる。コンプレッサ47は、空気ホース48を介してばねベローズ25に連結されている。残圧保持弁1は、空気ホース48とばねベローズ25との間に連結されている。この目的で、残圧保持弁1は、たとえば、ばねベローズ25の上に直接配置されるか、またはさらなる空気ホースによってばねベローズ25に連結される。コンプレッサ47の故障かまたは空気ホース48が場合によっては引きちぎられた場合に、ばねベローズ25における規定残圧を確保するために、弁要素7の弁要素閾値を、規定残圧がばねベローズ25において維持されるように第1円筒ばね11のばね硬さを選択することによって、調整することができる。
【0045】
したがって、残圧保持弁1により、空気圧系統に欠陥がある場合であっても、ばねベローズ25における事前に規定された残圧を都合よくかつ確実に維持することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 残圧保持弁
2 サスペンションストラット
3 弁ハウジング
4 空気入口
5 空気出口
6 弁体
7 弁要素
8 弁体座部
9 弁要素座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車のハイドロニューマチックサスペンションストラット(2)用の残圧保持弁(1)であって、
空気入口(4)および空気出口(5)を備えた弁ハウジング(3)と、
前記弁ハウジング(3)内に変位可能に配置されている弁体(6)と、
前記弁体(6)内に変位可能に配置されている弁要素(7)と、
を有し、
前記弁体(7)が、前記空気入口(4)に空気圧が加えられると、空気が前記弁体(6)を通過して前記空気出口(5)まで流れるのを可能にするために、前記弁体(6)が前記弁ハウジング(3)の弁体座部(8)から持ち上げられ得るように、前記弁ハウジング(3)に動作可能に連結され、前記弁要素(7)が、前記空気出口(5)に空気圧が加えられると、空気が前記弁要素(7)を通過して前記空気入口(4)まで流れるのを可能にするために、前記弁要素(7)が前記弁体(6)の弁要素座部(9)から持ち上げられ得るように、前記弁体(6)に動作可能に連結されている、残圧保持弁。
【請求項2】
前記空気入口(4)に、所定弁体閾値を上回る空気圧が加えられると、前記弁体(6)が前記弁ハウジング(3)の前記弁体座部(8)から持ち上げられ、前記空気入口(4)に加えられる空気入口圧力が、前記空気出口(5)に加えられる空気出口圧力より高いことを特徴とする、請求項1に記載の残圧保持弁。
【請求項3】
前記空気出口(5)に、所定弁要素閾値を上回る空気圧が加えられると、前記弁要素(7)が前記弁体(6)の前記弁要素座部(9)から持ち上げられ、前記空気出口(5)に加えられる空気出口圧力が、前記空気入口(4)に加えられる空気入口圧力より高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の残圧保持弁。
【請求項4】
前記弁要素(7)が、前記空気出口(5)の方向にばね応力が加えられる球(7)として具現化されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項5】
前記弁体(6)に、前記球(7)を保持する段付き円筒状貫通部(10)と、前記弁体(6)内の前記球(7)に対し前記空気出口(5)の方向にばね応力を加える第1円筒ばね(11)とが設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の残圧保持弁。
【請求項6】
前記弁要素座部(9)が半球形状であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項7】
前記弁体(6)が、前記空気入口(4)に対してばね応力が加えられかつ平面の弁フェース(12)を有する円筒(6)として具現化されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項8】
前記弁体(6)の少なくともいくつかの部分を包囲し、かつ前記弁ハウジング(3)内の前記弁体(6)に対し前記空気入口(4)の方向にばね応力を加える第2円筒ばね(15)が、前記弁ハウジング(3)の端壁(13)と前記弁体(6)の肩部(14)との間に設けられることを特徴とする、請求項7に記載の残圧保持弁。
【請求項9】
前記円筒ばね(11、15)が互いに対して同軸状に配置され、前記第2円筒ばね(15)が前記第1円筒ばね(11)の少なくともいくつかの部分を包囲し、前記円筒ばね(11、15)が、異なるばね硬さ値を有し、前記円筒ばね(11、15)のばね力が反対方向に作用することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項10】
前記弁体座部(8)が平面として具現化されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項11】
封止装置(16)、特にOリング(16)が、前記弁体(6)と前記弁ハウジング(3)の前記弁体座部(8)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項12】
前記弁ハウジング(3)が中空円筒形状で具現化され、前記弁体(6)が、前記弁ハウジング(3)の内壁(18)上にある外壁(17)で軸方向に案内され、かつ前記弁体座部(8)に対して中心に置かれることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項13】
前記弁ハウジング(3)が、内壁(18)に軸方向に伸びるダクト(19〜24)を有し、前記ダクト(19〜24)が、前記弁体(6)が軸方向に変位すると、空気が前記弁体(6)を通過して流れるのを可能にするために、前記ダクト(19〜24)が少なくともいくつかの部分において開放されることが可能であるように具現化されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の残圧保持弁。
【請求項14】
サスペンションストラット(2)、特に自動車用のハイドロニューマチックサスペンションストラット(2)であって、請求項1〜13のいずれか一項に記載の残圧保持弁(1)を有するサスペンションストラット。
【請求項15】
前記残圧保持弁(1)が、前記サスペンションストラット(2)のばねベローズ(24)内に組み込まれることを特徴とする、請求項14に記載のサスペンションストラット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251676(P2011−251676A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−85918(P2011−85918)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】