残存容量の算出装置
【課題】複数のバッテリスタックが設けられた蓄電システムにおいて、各バッテリスタックの残存容量の違いを考慮した全体的な残存容量を算出する。
【解決手段】第1バッテリスタックの第1残存容量S1と、第2バッテリスタックの第2残存容量S2との和が大きい場合は、大きい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。第1バッテリスタックの第1残存容量S1と、第2バッテリスタックの第2残存容量S2との和が小さい場合は、小さい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。優先残存容量SMAINに応じて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。第2係数W2は、第1係数W1よりも小さくなるように設定される。第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方の残存容量との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量STOTALが算出される。
【解決手段】第1バッテリスタックの第1残存容量S1と、第2バッテリスタックの第2残存容量S2との和が大きい場合は、大きい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。第1バッテリスタックの第1残存容量S1と、第2バッテリスタックの第2残存容量S2との和が小さい場合は、小さい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。優先残存容量SMAINに応じて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。第2係数W2は、第1係数W1よりも小さくなるように設定される。第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方の残存容量との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量STOTALが算出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残存容量の算出装置に関し、特に、第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置とが設けられた蓄電システムの残存容量を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源として搭載した電気自動車が知られている。このような車両には、電力を蓄える、バッテリおよびキャパシタなどの蓄電装置が搭載される。電動モータには、蓄電装置に蓄えられた電力が供給される。電動モータは、所望のパワーを出力するように制御される。
【0003】
電気自動車の課題の一つは、1回の充電で走行可能な距離が、内燃機関を駆動源として有する車両に比べて短いことである。走行可能な距離を伸ばす一つの方策は、たとえば蓄電装置を複数搭載するなどにより、車両全体としての容量を増やすことである。
【0004】
電気自動車の別の課題は、蓄電装置を過放電および過充電から保護することである。たとえば、蓄電装置の残存容量が低い場合においては、過放電を避けるため、電動モータの出力パワーを制限することが好ましい。蓄電装置の残存容量が高い場合には、過充電を避けるため、蓄電装置への充電電力を制限することが好ましい。電動モータの出力パワー、および蓄電装置への充電電力を好適に制限するためには、蓄電装置の残存容量を監視する必要がある。
【0005】
特開2006−112786号公報(特許文献1)は、電流の積算に基づいて電池の残容量を第1残容量として演算し、電圧に基づいて電池の残容量を第2残容量として演算し、第1残容量および第2残容量を加重平均した合成算容量を電池の残容量として演算する、残容量検出方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−112786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開2006−112786号公報に記載の残容量検出方法は、一つの蓄電装置の残存容量を算出するものであって、複数の蓄電装置を有する蓄電システムの全体的な残存容量を算出するものではない。仮に、各蓄電装置の残存容量の単なる総和を蓄電システムの全体的な残存容量として算出すると、次のような問題が考えられる。
【0008】
たとえば、一方の蓄電装置の残存容量が90%であり、他方の蓄電装置の残存容量が60%である場合は、蓄電システムの全体的な残存容量が変わらなくても、2つの蓄電装置の残存容量が共に75%である場合に比べて、充電電力を制限する必要がある。しかしながら、各蓄電装置の残存容量の単なる総和を蓄電システムの全体的な残存容量として算出すると、各々の蓄電装置の残存容量が異なる場合と、2つの蓄電装置の残存容量が同じ場合とを区別することが困難である。したがって、充電電力を制限する必要性があることを判定することが困難になり得る。
【0009】
同様に、一方の蓄電装置の残存容量が10%であり、他方の蓄電装置の残存容量が40%である場合は、蓄電システムの全体的な残存容量が変わらなくても、2つの蓄電装置の残存容量が共に25%である場合に比べて、放電電力を制限する必要がある。しかしながら、各蓄電装置の残存容量の単なる総和を蓄電システムの全体的な残存容量として算出すると、各々の蓄電装置の残存容量が異なる場合と、2つの蓄電装置の残存容量が同じ場合とを区別することが困難である。したがって、放電電力を制限する必要性があることを判定することが困難になり得る。
【0010】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の蓄電装置が設けられた蓄電システムにおいて、各々の蓄電装置の残存容量の違いを考慮した全体的な残存容量を算出することができる残存容量の算出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る残存容量の算出装置は、第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置とが設けられた蓄電システムの残存容量の算出装置である。算出装置は、第1の蓄電装置の第1の残存容量を算出するための手段と、第2の蓄電装置の第2の残存容量を算出するための手段と、第1の残存容量と第2の残存容量との和が予め定められた第1の値以上である場合は、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、第1の残存容量と第2の残存容量との和が第1の値よりも小さい場合は、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択するための選択手段と、選択された残存容量に応じて第1の係数を設定するとともに、第1の係数よりも小さくなるように第2の係数を設定するための設定手段と、第1の係数と選択された残存容量との積を、第2の係数と他方の残存容量との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量を算出するための算出手段とを備える。
【0012】
この構成によると、第1の蓄電装置の第1の残存容量と、第2の蓄電装置の第2の残存容量との和が大きい場合は、大きい方の残存容量に応じて第1の係数および第2の係数が設定される。大きい方の残存容量と第1の係数との積を、小さい方の残存容量と第2の係数との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量が算出される。第1の係数は第2の係数よりも大きいため、大きい方の残存容量に応じて蓄電システムの残存容量が比較的大きくなるように算出される。逆に、第1の蓄電装置の第1の残存容量と、第2の蓄電装置の第2の残存容量との和が小さい場合は、小さい方の残存容量に応じて第1の係数および第2の係数が設定される。小さい方の残存容量と第1の係数との積を、大きい方の残存容量と第2の係数との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量が算出される。第1の係数は第2の係数よりも大きいため、小さい方の残存容量に応じて蓄電システムの残存容量が比較的小さくなるように算出される。したがって、各々の蓄電装置の残存容量の違いを考慮した全体的な残存容量を算出することができる。
【0013】
第2の発明に係る残存容量の算出装置においては、第1の値は、予め定められた第2の値の2倍の値である。選択手段は、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値以上である場合、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値よりも小さい場合、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択する。
【0014】
この構成によると、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が予め定められた第2の値以上である場合には、蓄電システムの残存容量が比較的大きくなるように算出される。逆に、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値よりも小さい場合には、蓄電システムの残存容量が比較的小さくなるように算出される。これにより、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値以上である場合には、残存容量が大きいことを早めに検出することができる。第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値よりも小さい場合には、残存容量が小さいことを早めに検出することができる。
【0015】
第3の発明に係る残存容量の算出装置においては、設定手段は、選択された残存容量が、第2の値が中心になるように予め定められた範囲内にある場合、第1の係数と第2の係数とが同じになるように設定する。
【0016】
この構成によると、選択された残存容量が、第2の値が中心になるように予め定められた範囲内にある場合、第1の係数と第2の係数とが同じである。したがって、選択される残存容量が入れ替わるときに第1の残存容量および第2の残存容量の両方が予め定められた範囲内にあれば、選択される残存容量が入れ替わる前後において、算出される蓄電システムの残存容量を同じにすることができる。よって、算出される蓄電システムの残存容量の連続性を確保することができる。
【0017】
第4の発明に係る残存容量の算出装置においては、設定手段は、第1の残存容量と第2の残存容量との第1の差が、予め定められた範囲の幅よりも大きい場合、第1の差と予め定められた範囲の幅との第2の差に応じて第2の値に近づくように選択された残存容量を補正することにより得られた値に応じて、第1の係数および第2の係数を設定する。
【0018】
この構成によると、選択された残存容量が予め定められた範囲外にあっても、選択された残存容量が予め定められた範囲内にあるように補正することにより、第1の係数と第2の係数とが同じであるように設定される。したがって、選択される残存容量が入れ替わるときに第1の残存容量および第2の残存容量の両方が予め定められた範囲外にあっても、選択された残存容量が予め定められた範囲内にあるように補正することにより、選択される残存容量が入れ替わる前後において、算出される蓄電システムの残存容量を同じにすることができる。よって、算出される蓄電システムの残存容量の連続性を確保することができる。
【0019】
第5の発明に係る残存容量の算出装置においては、設定手段は、選択された残存容量と、第2の値との差が大きいほど、第1の係数が大きくなり、かつ第2の係数が小さくなるように、第1の係数および第2の係数を設定する。
【0020】
この構成によると、この構成によると、第1の蓄電装置の第1の残存容量と、第2の蓄電装置の第2の残存容量との和が大きい場合は、大きい方の残存容量が上限値に近いほど、蓄電システムの残存容量がより大きくなるように算出される。逆に、第1の残存容量と第2の残存容量との和が小さい場合は、小さい方の残存容量が下限値に近いほど、蓄電システムの残存容量がより小さくなるように算出される。これにより、算出された残存容量により、一方の残存容量が上限値に近い状態、または下限値に近い状態を示すことができる。
【0021】
第6の発明に係る残存容量の算出装置においては、第2の値は、第1の蓄電装置および第2の蓄電装置の残存容量の上限値と下限値との相加平均値である。
【0022】
この構成によると、残存容量の上限値と下限値との相加平均値を基準にして、第1の蓄電装置の第1の残存容量および第2の蓄電装置の第2の残存容量の相加平均値が大きいか小さいかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電気自動車を示す概略構成図である。
【図2】電気自動車の電気システムを示す図(その1)である。
【図3】電気自動車の電気システムを示す図(その2)である。
【図4】充電ケーブルのコネクタを示す図である。
【図5】蓄電システムを示す図である。
【図6】ECUの機能ブロック図である。
【図7】第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図(その1)である。
【図8】第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図(その2)である。
【図9】第1係数W1を設定するために用いられるマップを示す図である。
【図10】第1バッテリスタックの第1残存容量S1と第2バッテリスタックの第2残存容量S2との差ΔSが許容誤差以下であるときの第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図である。
【図11】第1バッテリスタックの第1残存容量S1と第2バッテリスタックの第2残存容量S2との差ΔSが許容誤差より大きいときの第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図である。
【図12】補正前の優先残存容量SMAINおよび補正後の優先残存容量SMAINを示す図である。
【図13】ECUが実行する処理を示すフローチャートである。
【図14】蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
図1を参照して、電気自動車について説明する。この電気自動車には、電動モータ100と、第1バッテリスタック110と、第2バッテリスタック120とが搭載される。電気自動車は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120から電力が供給された電動モータ100を駆動源として走行する。電動モータ100に加えて内燃機関を搭載したハイブリッド車を用いるようにしてもよい。
【0026】
電動モータ100は、ECU(Electronic Control Unit)130により制御される。ECU130は複数のECUに分割するようにしてもよい。
【0027】
電動モータ100は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。電動モータ100は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に蓄えられた電力により駆動する。
【0028】
電動モータ100の駆動力は、減速機102を介して駆動輪104に伝えられる。これにより、電動モータ100は車両を走行させる。電気自動車の回生制動時には、減速機102を介して駆動輪104により電動モータ100が駆動され、電動モータ100が発電機として作動する。これにより電動モータ100は、制動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。電動モータ100により発電された電力は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に蓄えられる。
【0029】
第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120は、互いに並列に接続される。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120には、電動モータ100の他、車両の外部の電源から供給される電力が充電される。
【0030】
第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の容量(充電可能な最大充電量)は、同じもしくは略同じである。電気自動車の蓄電システムは、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120を含む。
【0031】
図2を参照して、電気自動車の電気システムについてさらに説明する。電気自動車には、コンバータ200と、インバータ210と、システムメインリレー230と、充電器240と、インレット250とが設けられる。
【0032】
コンバータ200は、リアクトルと、二つのnpn型トランジスタと、二つダイオードとを含む。リアクトルは、各バッテリの正極側に一端が接続され、2つのnpn型トランジスタの接続点に他端が接続される。
【0033】
2つのnpn型トランジスタは、直列に接続される。npn型トランジスタは、ECU130により制御される。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにダイオードがそれぞれ接続される。
【0034】
なお、npn型トランジスタとして、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。npn型トランジスタに代えて、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いることができる。
【0035】
第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120から放電された電力を電動モータ100に供給する際、電圧がコンバータ200により昇圧される。逆に、電動モータ100により発電された電力を第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に充電する際、電圧がコンバータ200により降圧される。
【0036】
インバータ210は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、電動モータ100の各コイルの中性点とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0037】
インバータ210は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120から供給される直流電流を交流電流に変換し、電動モータ100に供給する。また、インバータ210は、電動モータ100により発電された交流電流を直流電流に変換する。
【0038】
システムメインリレー230は、第1バッテリスタック110とコンバータ200との間に設けられる。システムメインリレー230が開いた状態であると、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120が電気システムから遮断される。システムメインリレー230が閉じた状態であると、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120が電気システムに接続される。
【0039】
システムメインリレー230の状態は、ECU130により制御される。たとえば、ECU130が起動すると、システムメインリレー230が閉じられる。ECU130が停止する際、システムメインリレー230が開かれる。
【0040】
充電器240は、システムメインリレー230とコンバータ200との間に接続される。図3に示すように、充電器240は、AC/DC変換回路242と、DC/AC変換回路244と、絶縁トランス246と、整流回路248とを含む。
【0041】
AC/DC変換回路242は、単相ブリッジ回路から成る。AC/DC変換回路242は、ECU130からの駆動信号に基づいて、交流電力を直流電力に変換する。また、AC/DC変換回路242は、コイルをリアクトルとして用いることにより電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路としても機能する。
【0042】
DC/AC変換回路244は、単相ブリッジ回路から成る。DC/AC変換回路244は、ECU130からの駆動信号に基づいて、直流電力を高周波の交流電力に変換して絶縁トランス246へ出力する。
【0043】
絶縁トランス246は、磁性材から成るコアと、コアに巻回された一次コイルおよび二次コイルを含む。一次コイルおよび二次コイルは、電気的に絶縁されており、それぞれDC/AC変換回路244および整流回路248に接続される。絶縁トランス246は、DC/AC変換回路244から受ける高周波の交流電力を一次コイルおよび二次コイルの巻数比に応じた電圧レベルに変換して整流回路248へ出力する。整流回路248は、絶縁トランス246から出力される交流電力を直流電力に整流する。
【0044】
ECU130は、車両外部の電源から第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120への充電が行なわれるとき、充電器240を駆動するための駆動信号を生成して充電器240へ出力する。
【0045】
インレット250は、たとえば電気自動車の側部に設けられる。インレット250には、電気自動車と外部の電源402とを連結する充電ケーブル300のコネクタ310が接続される。
【0046】
電気自動車と外部の電源402とを連結する充電ケーブル300は、コネクタ310と、プラグ320と、CCID(Charging Circuit Interrupt Device)330とを含む。
【0047】
充電ケーブル300のコネクタ310は、電気自動車に設けられたインレット250に接続される。コネクタ310には、スイッチ312が設けられる。充電ケーブル300のコネクタ310が、電気自動車に設けられたインレット250に接続された状態でスイッチ312が閉じると、充電ケーブル300のコネクタ310が、電気自動車に設けられたインレット250に接続された状態であることを表わすコネクタ信号CNCTがECU130に入力される。
【0048】
スイッチ312は、充電ケーブル300のコネクタ310を電気自動車のインレット250に係止する係止金具に連動して開閉する。係止金具は、コネクタ310に設けられたボタンを操作者が押すことにより揺動する。
【0049】
たとえば、充電ケーブル300のコネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250に接続した状態で、操作者が、図4に示すコネクタ310のボタン314から指を離した場合、係止金具316が電気自動車に設けられたインレット250に係合するとともに、スイッチ312が閉じる。操作者がボタン314を押すと、係止金具316とインレット250との係合が解除されるとともに、スイッチ312が開く。なお、スイッチ312を開閉する方法はこれに限らない。
【0050】
図3に戻って、充電ケーブル300のプラグ320は、家屋に設けられたコンセント400に接続される。コンセント400には、電気自動車の外部の電源402から交流電力が供給される。
【0051】
CCID330は、リレー332およびコントロールパイロット回路334を有する。リレー332が開いた状態では、電気自動車の外部の電源402から電気自動車へ電力を供給する経路が遮断される。リレー332が閉じた状態では、電気自動車の外部の電源402から電気自動車へ電力を供給可能になる。リレー332の状態は、充電ケーブル300のコネクタ310が電気自動車のインレット250に接続された状態でECU130により制御される。
【0052】
コントロールパイロット回路334は、充電ケーブル300のプラグ320がコンセント400、すなわち外部の電源402に接続され、かつコネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250に接続された状態において、コントロールパイロット線にパイロット信号(方形波信号)CPLTを送る。パイロット信号は、コントロールパイロット回路334内に設けられた発振器から発振される。
【0053】
コントロールパイロット回路334は、充電ケーブル300のプラグ320がコンセント400に接続されると、コネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250から外されていても、一定のパイロット信号CPLTを出力し得る。ただし、コネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250から外された状態で出力されたパイロット信号CPLTを、ECU130は検出できない。
【0054】
充電ケーブル300のプラグ320がコンセント400に接続され、かつコネクタ310が電気自動車のインレット250に接続されると、コントロールパイロット回路334は、予め定められたパルス幅(デューティサイクル)のパイロット信号CPLTを発振する。
【0055】
パイロット信号CPLTのパルス幅により、供給可能な電流容量が電気自動車に通知される。たとえば、充電ケーブル300の電流容量が電気自動車に通知される。パイロット信号CPLTのパルス幅は、外部の電源402の電圧および電流に依存せずに一定である。
【0056】
一方、用いられる充電ケーブルの種類が異なれば、パイロット信号CPLTのパルス幅は異なり得る。すなわち、パイロット信号CPLTのパルス幅は、充電ケーブルの種類毎に定められ得る。
【0057】
本実施の形態においては、充電ケーブル300により電気自動車と外部の電源402とが連結された状態において、外部の電源402から供給された電力が第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に充電される。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の充電時には、システムメインリレー230、CCID330内のリレー332が閉じられる。
【0058】
図5を参照して、蓄電システムについてさらに説明する。蓄電システムは、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120を含む。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120は、互いに並列に接続される。なお、3つ以上のバッテリスタックを設けるようにしてもよい。
【0059】
第1バッテリスタック110の電圧は、電圧センサ141により検出される。第2バッテリスタック120の電圧は、電圧センサ142により検出される。
【0060】
第1バッテリスタック110の入出力電流は、電流センサ151により検出される。第2バッテリスタック120の入出力電流は、電流センサ152により検出される。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の総合的な入出力電流、すなわち、第1バッテリスタック110の入出力電流と、第2バッテリスタック120の入出力電流との和は、電流センサ153により検出される。
【0061】
第1バッテリスタック110と、第2バッテリスタック120とは、互いに並列に接続されているため、入出力電流が常に同じであるとは限らない。したがって、第1バッテリスタック110の第1残存容量(SOC:State Of Charge)S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とは、異なり得る。本実施の形態においては、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とが、個別に算出される。
【0062】
第1バッテリスタック110の第1残存容量S1は、第1監視ユニット161により算出される。第1監視ユニット161は、第1バッテリスタック110の電圧、第1バッテリスタック110の入出力電流および第1バッテリスタック110と第2バッテリスタック120との総合的な入出力電流などに基づいて、第1バッテリスタック110の残存容量を算出する。
【0063】
同様に、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2は、第2監視ユニット162により算出される。第2監視ユニット162は、第2バッテリスタック120の電圧、第2バッテリスタック120の入出力電流および第1バッテリスタック110と第2バッテリスタック120との総合的な入出力電流などに基づいて、第2バッテリスタック120の残存容量を算出する。
【0064】
第1監視ユニット161および第2監視ユニット162は、ECU130の一部として実装してもよい。各バッテリスタックの残存容量を算出する方法には、周知の一般的は方法を利用すればよいため、ここではそれらの詳細な説明は繰り返さない。
【0065】
本実施の形態においては、各バッテリスタックの残存容量を示すデータが、ECU130に入力される。ECU130は、各バッテリスタックの残存容量に基づいて、総合的な残存容量、すなわち蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する。
【0066】
ECU130は、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いて、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120への充電を制御する。たとえば、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALが大きい場合は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120への充電が制限される。
【0067】
また、ECU130は、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いて、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120からの放電を制御する。たとえば、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALが小さい場合は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120からの放電が制限される。
【0068】
さらに、ECU130は、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いて、電気自動車が走行可能な距離を算出する。たとえば、全体的な残存容量STOTALの現在値および変化率と、車速などから、残存容量STOTALがしきい値を下回るまでに走行可能な距離が算出される。
【0069】
なお、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いた制御はこれらに限らない。
【0070】
図6を参照して、ECU130の、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する機能ついてさらに説明する。なお、以下に説明する機能はソフトウエアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。
【0071】
ECU130は、選択部500と、設定部502と、算出部504とを備える。
選択部500は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が、予め定められた第1の値、たとえば、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの和以上である場合は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの大きい方を優先残存容量SMAINとして選択する。逆に、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が、上限値SMXと下限値SMNとの和よりも小さい場合は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの小さい方が優先残存容量SMAINとして選択される。
【0072】
具体的には、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、予め定められた第2の値、たとえば、残存容量の中心値SC以上であるか否かが判定される。残存容量の中心値SCは、要するに、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの相加平均値である。したがって、上限値SMXと下限値SMNとの和は、中心値SCの2倍である。第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、残存容量の中心値SC以上であるか否かを判定することは、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が、上限値SMXと下限値SMNとの和以上であるか否かを判定することを意味する。上限値SMXおよび下限値SMNは、残存容量の使用範囲を規定するために開発者により予め定められる。
【0073】
図7に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SC以上であると、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの大きい方が優先残存容量SMAINとして選択される。図7の例では、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1が選択される。
【0074】
一方、図8に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCより小さいと、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの小さい方が優先残存容量SMAINとして選択される。図8の例では、第2バッテリスタック120の第1残存容量S2が選択される。
【0075】
他方の残存容量、すなわち選択されなかった残存容量は、蓄電システムの全体的な残存容量を算出する際に、サブ残存容量SSUBとして用いられる。
【0076】
図6に戻って、設定部502は、優先残存容量SMAINに応じて第1係数W1を設定するとともに、第1係数W1以下になるように第2係数W2を設定する。本実施の形態においては、第1係数W1+第2係数W2=1となるように、第1係数W1および第2係数W2が設定される。すなわち、W2=1−W1である。また、0.5≦第1係数W1≦1である。したがって、0≦第2係数W2≦0.5である。
【0077】
図9に示すように、第1係数W1は、実験およびシミュレーションの結果などの基づいて作成されたマップに従って設定される。優先残存容量SMAINと中心値SCとの差が大きいほど、第1係数W1が大きくなるように、すなわち第2係数W2が小さくなるように設定される。言い換えると、優先残存容量SMAINが、残存容量の上限値SMXに近づくほど、第1係数W1が大きくなり、かつ第2係数W2が小さくなるように設定される。同様に、優先残存容量SMAINが、残存容量の下限値SMNに近づくほど、第1係数W1が大きくなり、かつ第2係数W2が小さくなるように設定される。
【0078】
中心値SCが中心になるように予め定められた範囲内に、優先残存容量SMAINがある場合、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。本実施の形態においては、第1係数W1および第2係数W2が、共に0.5になるように設定される。この範囲外では、第1係数W1よりも小さくなるように第2係数W2が設定される。
【0079】
第1係数W1および第2係数W2は、優先残存容量SMAINを百分率で表わした値SRATEを用いて設定されてもよい。値SRATEは、下記の式1を用いて算出される。
【0080】
SRATE=100・(SMAIN−SMN)/(SMX−SMN)…(1)
第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される範囲の幅ΔWは、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との許容誤差を基準に定められる。本実施の形態において、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との許容誤差は、残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの差のX%である。したがって、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定された範囲の幅ΔWは、残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの差のX%である。よって、上限値SMXと下限値SMNとの差のX%以内の範囲に優先残存容量SMAINがある場合、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。ここで、図9において、Y=(SMX−SMN)・X/100である。
【0081】
図10に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差ΔS(ΔS=|S1−S2|)が許容誤差以下である限り、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCと等しいときに、優先残存容量SMAINが、中心値SCからX%の範囲内にある。したがって、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。すなわち、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。
【0082】
一方、図11に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差ΔSが許容誤差より大きいと、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCと等しいときに、優先残存容量SMAINが、中心値SCからX%の範囲外にあり得る。したがって、第1係数W1と第2係数W2とが異なるように設定され得る。すなわち、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが異なるように設定され得る。
【0083】
そこで、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差が許容誤差より大きい場合、優先残存容量SMAINを補正することにより得られた値を用いて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。
【0084】
より具体的には、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1および第2バッテリスタック120の第2残存容量S2の差ΔSと、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される範囲の幅ΔWとを用いて、優先残存容量SMAINが補正される。
【0085】
図12に示すように、差ΔSと幅ΔWとの差(ΔS−ΔW)に応じて、中心値SCに近づくように、優先残存容量SMAINが補正される。たとえば、差ΔSと幅ΔWとの差だけ中心値SCに近づくように、優先残存容量SMAINが補正される。補正された優先残存容量SMAINに応じて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。
【0086】
これにより、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCと等しいときに、優先残存容量SMAINが上述した範囲内あるように、優先残存容量SMAINが補正される。そのため、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。
【0087】
優先残存容量SMAINを百分率で表わした値SRATEを用いて第1係数W1および第2係数W2が設定される場合は、値SRATEを補正することにより得られた値を用いて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。
【0088】
値SRATEは、下記の式2を用いて算出される補正値SADJを用いて補正される。
SADJ=100・(SMAIN−SSUB)/(SMX−SMN)…(2)
補正値SADJ>Xである場合、下記の式3に示すように、補正値SADJから「X」が減算される。
【0089】
SADJ=SADJ−X…(3)
上述したように、「X」は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との許容誤差である。言い換えると、「X」は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差ΔSの許容上限を、上限値SMXと下限値SMNとの差に対する百分率で表わした値である。
【0090】
補正値SADJ<−Xである場合、下記の式4に示すように、補正値SADJに「X」が加算される。
【0091】
SADJ=SADJ+X…(4)
−X≦補正値SADJ≦Xである場合は、補正値SADJが「0」にされる。
【0092】
下記の式5に示すように、値SRATEから補正値SADJを減算することにより、値SRATEが補正される。
【0093】
SRATE=SRATE−SADJ…(5)
このようにして値SRATEを補正することと、差ΔSと幅ΔWとの差だけ中心値SCに近づくように、優先残存容量SMAINを補正することとは実質的に同じである。そのため、上述のようにして補正された値SRATEを用いて、第1係数W1および第2係数W2を設定するようにしてもよい。
【0094】
図6に戻って、算出部504は、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2とサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する。すなわち、下記の式6を用いて、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALが算出される。
【0095】
STOTAL=W1・SMAIN+W2・SSUB…(6)
すなわち、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALは、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との加重平均値として算出される。
【0096】
式6は、第2係数W2の代わりに第1係数W1のみを用いて、下記の式7のように表わしてもよい。
【0097】
STOTAL=W1・SMAIN+(1−W1)・SSUB…(7)
図13を参照して、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出するためにECU130が実行する処理について説明する。
【0098】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU130は、残存容量の中心値SCを算出する。
【0099】
S102にて、ECU130は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値を算出する。
【0100】
S104にて、ECU130は、優先残存容量SMAINを選択する。
S106にて、ECU130は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差が許容誤差よりも大きい場合には、優先残存容量SMAINを補正する。
【0101】
S108にて、ECU130は、優先残存容量SMAINに応じて、第1係数W1および第2係数W2を設定する。
【0102】
S110にて、ECU130は、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方のサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する。
【0103】
以上のような構造およびフローチャートに基づいて算出される、蓄電システムの残存容量STOTALについて、図14を参照してさらに説明する。図14において、実線は、蓄電システムの残存容量STOTALを示す。破線は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1を示す。一点鎖線は、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2を示す。図14では、一例として、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1が、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2よりも高いと仮定する。
【0104】
本実施の形態においては、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が大きい場合は、大きい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。優先残存容量SMAINが中心値SCからX%の範囲よりも上にあれば、第1係数W1が第2係数W2よりも大きくなるように設定される。したがって、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方のサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより算出される残存容量STOTALは、図14に示すように、大きい方の残存容量、すなわち第1バッテリスタック110の第1残存容量S1に片寄る。したがって、比較的大きくなるように残存容量STOTALが算出される。
【0105】
逆に、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が小さい場合は、小さい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。優先残存容量SMAINが中心値SCからX%の範囲よりも下にあれば、第1係数W1が第2係数W2よりも大きくなるように設定される。したがって、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方のサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより算出される残存容量STOTALは、図14に示すように、小さい方の残存容量、すなわち第2バッテリスタック120の第2残存容量S2に片寄る。したがって、比較的小さくなるように残存容量STOTALが算出される。
【0106】
これにより、各々のバッテリスタックの残存容量の違いを考慮した、全体的な残存容量SMAINが算出される。
【0107】
第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が大きい場合は、大きい方の残存容量が上限値SMXに近いほど大きくなるように残存容量STOTALが算出されるため、一方の残存容量が上限値SMXに近い状態が示される。
【0108】
逆に、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が大きい場合は、小さい方の残存容量が下限値SMNに近いほど小さくなるように残存容量STOTALが算出されるため、一方の残存容量が下限値SMNに近い状態が示される。
【0109】
したがって、本実施の形態において算出される残存容量STOTALを用いることによって、一方の残存容量が上限値SMXまたは下限値SMNに近いことを示すことができる。よって、充電または放電を好適に制限することができる。
【0110】
優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定されるため、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において同じであるように残存容量STOTALが算出される。そのため、図14に示すように、算出される残存容量STOTALの連続性を確保することができる。これにより、残存容量STOTALから走行可能距離を算出する際に、走行可能距離を連続的に算出することができる。すなわち、走行可能距離が突然大きく変化するということを避けることができる。
【0111】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
100 電動モータ、110 第1バッテリスタック、120 第2バッテリスタック、130 ECU、141,142 電圧センサ、151,152,153 電流センサ、161 第1監視ユニット、162 第2監視ユニット、500 選択部、502 設定部、504 算出部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、残存容量の算出装置に関し、特に、第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置とが設けられた蓄電システムの残存容量を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源として搭載した電気自動車が知られている。このような車両には、電力を蓄える、バッテリおよびキャパシタなどの蓄電装置が搭載される。電動モータには、蓄電装置に蓄えられた電力が供給される。電動モータは、所望のパワーを出力するように制御される。
【0003】
電気自動車の課題の一つは、1回の充電で走行可能な距離が、内燃機関を駆動源として有する車両に比べて短いことである。走行可能な距離を伸ばす一つの方策は、たとえば蓄電装置を複数搭載するなどにより、車両全体としての容量を増やすことである。
【0004】
電気自動車の別の課題は、蓄電装置を過放電および過充電から保護することである。たとえば、蓄電装置の残存容量が低い場合においては、過放電を避けるため、電動モータの出力パワーを制限することが好ましい。蓄電装置の残存容量が高い場合には、過充電を避けるため、蓄電装置への充電電力を制限することが好ましい。電動モータの出力パワー、および蓄電装置への充電電力を好適に制限するためには、蓄電装置の残存容量を監視する必要がある。
【0005】
特開2006−112786号公報(特許文献1)は、電流の積算に基づいて電池の残容量を第1残容量として演算し、電圧に基づいて電池の残容量を第2残容量として演算し、第1残容量および第2残容量を加重平均した合成算容量を電池の残容量として演算する、残容量検出方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−112786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開2006−112786号公報に記載の残容量検出方法は、一つの蓄電装置の残存容量を算出するものであって、複数の蓄電装置を有する蓄電システムの全体的な残存容量を算出するものではない。仮に、各蓄電装置の残存容量の単なる総和を蓄電システムの全体的な残存容量として算出すると、次のような問題が考えられる。
【0008】
たとえば、一方の蓄電装置の残存容量が90%であり、他方の蓄電装置の残存容量が60%である場合は、蓄電システムの全体的な残存容量が変わらなくても、2つの蓄電装置の残存容量が共に75%である場合に比べて、充電電力を制限する必要がある。しかしながら、各蓄電装置の残存容量の単なる総和を蓄電システムの全体的な残存容量として算出すると、各々の蓄電装置の残存容量が異なる場合と、2つの蓄電装置の残存容量が同じ場合とを区別することが困難である。したがって、充電電力を制限する必要性があることを判定することが困難になり得る。
【0009】
同様に、一方の蓄電装置の残存容量が10%であり、他方の蓄電装置の残存容量が40%である場合は、蓄電システムの全体的な残存容量が変わらなくても、2つの蓄電装置の残存容量が共に25%である場合に比べて、放電電力を制限する必要がある。しかしながら、各蓄電装置の残存容量の単なる総和を蓄電システムの全体的な残存容量として算出すると、各々の蓄電装置の残存容量が異なる場合と、2つの蓄電装置の残存容量が同じ場合とを区別することが困難である。したがって、放電電力を制限する必要性があることを判定することが困難になり得る。
【0010】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の蓄電装置が設けられた蓄電システムにおいて、各々の蓄電装置の残存容量の違いを考慮した全体的な残存容量を算出することができる残存容量の算出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る残存容量の算出装置は、第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置とが設けられた蓄電システムの残存容量の算出装置である。算出装置は、第1の蓄電装置の第1の残存容量を算出するための手段と、第2の蓄電装置の第2の残存容量を算出するための手段と、第1の残存容量と第2の残存容量との和が予め定められた第1の値以上である場合は、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、第1の残存容量と第2の残存容量との和が第1の値よりも小さい場合は、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択するための選択手段と、選択された残存容量に応じて第1の係数を設定するとともに、第1の係数よりも小さくなるように第2の係数を設定するための設定手段と、第1の係数と選択された残存容量との積を、第2の係数と他方の残存容量との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量を算出するための算出手段とを備える。
【0012】
この構成によると、第1の蓄電装置の第1の残存容量と、第2の蓄電装置の第2の残存容量との和が大きい場合は、大きい方の残存容量に応じて第1の係数および第2の係数が設定される。大きい方の残存容量と第1の係数との積を、小さい方の残存容量と第2の係数との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量が算出される。第1の係数は第2の係数よりも大きいため、大きい方の残存容量に応じて蓄電システムの残存容量が比較的大きくなるように算出される。逆に、第1の蓄電装置の第1の残存容量と、第2の蓄電装置の第2の残存容量との和が小さい場合は、小さい方の残存容量に応じて第1の係数および第2の係数が設定される。小さい方の残存容量と第1の係数との積を、大きい方の残存容量と第2の係数との積に加えることにより、蓄電システムの残存容量が算出される。第1の係数は第2の係数よりも大きいため、小さい方の残存容量に応じて蓄電システムの残存容量が比較的小さくなるように算出される。したがって、各々の蓄電装置の残存容量の違いを考慮した全体的な残存容量を算出することができる。
【0013】
第2の発明に係る残存容量の算出装置においては、第1の値は、予め定められた第2の値の2倍の値である。選択手段は、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値以上である場合、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値よりも小さい場合、第1の残存容量および第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択する。
【0014】
この構成によると、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が予め定められた第2の値以上である場合には、蓄電システムの残存容量が比較的大きくなるように算出される。逆に、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値よりも小さい場合には、蓄電システムの残存容量が比較的小さくなるように算出される。これにより、第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値以上である場合には、残存容量が大きいことを早めに検出することができる。第1の残存容量と第2の残存容量との相加平均値が第2の値よりも小さい場合には、残存容量が小さいことを早めに検出することができる。
【0015】
第3の発明に係る残存容量の算出装置においては、設定手段は、選択された残存容量が、第2の値が中心になるように予め定められた範囲内にある場合、第1の係数と第2の係数とが同じになるように設定する。
【0016】
この構成によると、選択された残存容量が、第2の値が中心になるように予め定められた範囲内にある場合、第1の係数と第2の係数とが同じである。したがって、選択される残存容量が入れ替わるときに第1の残存容量および第2の残存容量の両方が予め定められた範囲内にあれば、選択される残存容量が入れ替わる前後において、算出される蓄電システムの残存容量を同じにすることができる。よって、算出される蓄電システムの残存容量の連続性を確保することができる。
【0017】
第4の発明に係る残存容量の算出装置においては、設定手段は、第1の残存容量と第2の残存容量との第1の差が、予め定められた範囲の幅よりも大きい場合、第1の差と予め定められた範囲の幅との第2の差に応じて第2の値に近づくように選択された残存容量を補正することにより得られた値に応じて、第1の係数および第2の係数を設定する。
【0018】
この構成によると、選択された残存容量が予め定められた範囲外にあっても、選択された残存容量が予め定められた範囲内にあるように補正することにより、第1の係数と第2の係数とが同じであるように設定される。したがって、選択される残存容量が入れ替わるときに第1の残存容量および第2の残存容量の両方が予め定められた範囲外にあっても、選択された残存容量が予め定められた範囲内にあるように補正することにより、選択される残存容量が入れ替わる前後において、算出される蓄電システムの残存容量を同じにすることができる。よって、算出される蓄電システムの残存容量の連続性を確保することができる。
【0019】
第5の発明に係る残存容量の算出装置においては、設定手段は、選択された残存容量と、第2の値との差が大きいほど、第1の係数が大きくなり、かつ第2の係数が小さくなるように、第1の係数および第2の係数を設定する。
【0020】
この構成によると、この構成によると、第1の蓄電装置の第1の残存容量と、第2の蓄電装置の第2の残存容量との和が大きい場合は、大きい方の残存容量が上限値に近いほど、蓄電システムの残存容量がより大きくなるように算出される。逆に、第1の残存容量と第2の残存容量との和が小さい場合は、小さい方の残存容量が下限値に近いほど、蓄電システムの残存容量がより小さくなるように算出される。これにより、算出された残存容量により、一方の残存容量が上限値に近い状態、または下限値に近い状態を示すことができる。
【0021】
第6の発明に係る残存容量の算出装置においては、第2の値は、第1の蓄電装置および第2の蓄電装置の残存容量の上限値と下限値との相加平均値である。
【0022】
この構成によると、残存容量の上限値と下限値との相加平均値を基準にして、第1の蓄電装置の第1の残存容量および第2の蓄電装置の第2の残存容量の相加平均値が大きいか小さいかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電気自動車を示す概略構成図である。
【図2】電気自動車の電気システムを示す図(その1)である。
【図3】電気自動車の電気システムを示す図(その2)である。
【図4】充電ケーブルのコネクタを示す図である。
【図5】蓄電システムを示す図である。
【図6】ECUの機能ブロック図である。
【図7】第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図(その1)である。
【図8】第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図(その2)である。
【図9】第1係数W1を設定するために用いられるマップを示す図である。
【図10】第1バッテリスタックの第1残存容量S1と第2バッテリスタックの第2残存容量S2との差ΔSが許容誤差以下であるときの第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図である。
【図11】第1バッテリスタックの第1残存容量S1と第2バッテリスタックの第2残存容量S2との差ΔSが許容誤差より大きいときの第1バッテリスタックの第1残存容量S1および第2バッテリスタックの第2残存容量S2を示す図である。
【図12】補正前の優先残存容量SMAINおよび補正後の優先残存容量SMAINを示す図である。
【図13】ECUが実行する処理を示すフローチャートである。
【図14】蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
図1を参照して、電気自動車について説明する。この電気自動車には、電動モータ100と、第1バッテリスタック110と、第2バッテリスタック120とが搭載される。電気自動車は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120から電力が供給された電動モータ100を駆動源として走行する。電動モータ100に加えて内燃機関を搭載したハイブリッド車を用いるようにしてもよい。
【0026】
電動モータ100は、ECU(Electronic Control Unit)130により制御される。ECU130は複数のECUに分割するようにしてもよい。
【0027】
電動モータ100は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。電動モータ100は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に蓄えられた電力により駆動する。
【0028】
電動モータ100の駆動力は、減速機102を介して駆動輪104に伝えられる。これにより、電動モータ100は車両を走行させる。電気自動車の回生制動時には、減速機102を介して駆動輪104により電動モータ100が駆動され、電動モータ100が発電機として作動する。これにより電動モータ100は、制動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。電動モータ100により発電された電力は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に蓄えられる。
【0029】
第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120は、互いに並列に接続される。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120には、電動モータ100の他、車両の外部の電源から供給される電力が充電される。
【0030】
第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の容量(充電可能な最大充電量)は、同じもしくは略同じである。電気自動車の蓄電システムは、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120を含む。
【0031】
図2を参照して、電気自動車の電気システムについてさらに説明する。電気自動車には、コンバータ200と、インバータ210と、システムメインリレー230と、充電器240と、インレット250とが設けられる。
【0032】
コンバータ200は、リアクトルと、二つのnpn型トランジスタと、二つダイオードとを含む。リアクトルは、各バッテリの正極側に一端が接続され、2つのnpn型トランジスタの接続点に他端が接続される。
【0033】
2つのnpn型トランジスタは、直列に接続される。npn型トランジスタは、ECU130により制御される。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにダイオードがそれぞれ接続される。
【0034】
なお、npn型トランジスタとして、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。npn型トランジスタに代えて、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いることができる。
【0035】
第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120から放電された電力を電動モータ100に供給する際、電圧がコンバータ200により昇圧される。逆に、電動モータ100により発電された電力を第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に充電する際、電圧がコンバータ200により降圧される。
【0036】
インバータ210は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、電動モータ100の各コイルの中性点とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0037】
インバータ210は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120から供給される直流電流を交流電流に変換し、電動モータ100に供給する。また、インバータ210は、電動モータ100により発電された交流電流を直流電流に変換する。
【0038】
システムメインリレー230は、第1バッテリスタック110とコンバータ200との間に設けられる。システムメインリレー230が開いた状態であると、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120が電気システムから遮断される。システムメインリレー230が閉じた状態であると、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120が電気システムに接続される。
【0039】
システムメインリレー230の状態は、ECU130により制御される。たとえば、ECU130が起動すると、システムメインリレー230が閉じられる。ECU130が停止する際、システムメインリレー230が開かれる。
【0040】
充電器240は、システムメインリレー230とコンバータ200との間に接続される。図3に示すように、充電器240は、AC/DC変換回路242と、DC/AC変換回路244と、絶縁トランス246と、整流回路248とを含む。
【0041】
AC/DC変換回路242は、単相ブリッジ回路から成る。AC/DC変換回路242は、ECU130からの駆動信号に基づいて、交流電力を直流電力に変換する。また、AC/DC変換回路242は、コイルをリアクトルとして用いることにより電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路としても機能する。
【0042】
DC/AC変換回路244は、単相ブリッジ回路から成る。DC/AC変換回路244は、ECU130からの駆動信号に基づいて、直流電力を高周波の交流電力に変換して絶縁トランス246へ出力する。
【0043】
絶縁トランス246は、磁性材から成るコアと、コアに巻回された一次コイルおよび二次コイルを含む。一次コイルおよび二次コイルは、電気的に絶縁されており、それぞれDC/AC変換回路244および整流回路248に接続される。絶縁トランス246は、DC/AC変換回路244から受ける高周波の交流電力を一次コイルおよび二次コイルの巻数比に応じた電圧レベルに変換して整流回路248へ出力する。整流回路248は、絶縁トランス246から出力される交流電力を直流電力に整流する。
【0044】
ECU130は、車両外部の電源から第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120への充電が行なわれるとき、充電器240を駆動するための駆動信号を生成して充電器240へ出力する。
【0045】
インレット250は、たとえば電気自動車の側部に設けられる。インレット250には、電気自動車と外部の電源402とを連結する充電ケーブル300のコネクタ310が接続される。
【0046】
電気自動車と外部の電源402とを連結する充電ケーブル300は、コネクタ310と、プラグ320と、CCID(Charging Circuit Interrupt Device)330とを含む。
【0047】
充電ケーブル300のコネクタ310は、電気自動車に設けられたインレット250に接続される。コネクタ310には、スイッチ312が設けられる。充電ケーブル300のコネクタ310が、電気自動車に設けられたインレット250に接続された状態でスイッチ312が閉じると、充電ケーブル300のコネクタ310が、電気自動車に設けられたインレット250に接続された状態であることを表わすコネクタ信号CNCTがECU130に入力される。
【0048】
スイッチ312は、充電ケーブル300のコネクタ310を電気自動車のインレット250に係止する係止金具に連動して開閉する。係止金具は、コネクタ310に設けられたボタンを操作者が押すことにより揺動する。
【0049】
たとえば、充電ケーブル300のコネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250に接続した状態で、操作者が、図4に示すコネクタ310のボタン314から指を離した場合、係止金具316が電気自動車に設けられたインレット250に係合するとともに、スイッチ312が閉じる。操作者がボタン314を押すと、係止金具316とインレット250との係合が解除されるとともに、スイッチ312が開く。なお、スイッチ312を開閉する方法はこれに限らない。
【0050】
図3に戻って、充電ケーブル300のプラグ320は、家屋に設けられたコンセント400に接続される。コンセント400には、電気自動車の外部の電源402から交流電力が供給される。
【0051】
CCID330は、リレー332およびコントロールパイロット回路334を有する。リレー332が開いた状態では、電気自動車の外部の電源402から電気自動車へ電力を供給する経路が遮断される。リレー332が閉じた状態では、電気自動車の外部の電源402から電気自動車へ電力を供給可能になる。リレー332の状態は、充電ケーブル300のコネクタ310が電気自動車のインレット250に接続された状態でECU130により制御される。
【0052】
コントロールパイロット回路334は、充電ケーブル300のプラグ320がコンセント400、すなわち外部の電源402に接続され、かつコネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250に接続された状態において、コントロールパイロット線にパイロット信号(方形波信号)CPLTを送る。パイロット信号は、コントロールパイロット回路334内に設けられた発振器から発振される。
【0053】
コントロールパイロット回路334は、充電ケーブル300のプラグ320がコンセント400に接続されると、コネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250から外されていても、一定のパイロット信号CPLTを出力し得る。ただし、コネクタ310が電気自動車に設けられたインレット250から外された状態で出力されたパイロット信号CPLTを、ECU130は検出できない。
【0054】
充電ケーブル300のプラグ320がコンセント400に接続され、かつコネクタ310が電気自動車のインレット250に接続されると、コントロールパイロット回路334は、予め定められたパルス幅(デューティサイクル)のパイロット信号CPLTを発振する。
【0055】
パイロット信号CPLTのパルス幅により、供給可能な電流容量が電気自動車に通知される。たとえば、充電ケーブル300の電流容量が電気自動車に通知される。パイロット信号CPLTのパルス幅は、外部の電源402の電圧および電流に依存せずに一定である。
【0056】
一方、用いられる充電ケーブルの種類が異なれば、パイロット信号CPLTのパルス幅は異なり得る。すなわち、パイロット信号CPLTのパルス幅は、充電ケーブルの種類毎に定められ得る。
【0057】
本実施の形態においては、充電ケーブル300により電気自動車と外部の電源402とが連結された状態において、外部の電源402から供給された電力が第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120に充電される。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の充電時には、システムメインリレー230、CCID330内のリレー332が閉じられる。
【0058】
図5を参照して、蓄電システムについてさらに説明する。蓄電システムは、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120を含む。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120は、互いに並列に接続される。なお、3つ以上のバッテリスタックを設けるようにしてもよい。
【0059】
第1バッテリスタック110の電圧は、電圧センサ141により検出される。第2バッテリスタック120の電圧は、電圧センサ142により検出される。
【0060】
第1バッテリスタック110の入出力電流は、電流センサ151により検出される。第2バッテリスタック120の入出力電流は、電流センサ152により検出される。第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の総合的な入出力電流、すなわち、第1バッテリスタック110の入出力電流と、第2バッテリスタック120の入出力電流との和は、電流センサ153により検出される。
【0061】
第1バッテリスタック110と、第2バッテリスタック120とは、互いに並列に接続されているため、入出力電流が常に同じであるとは限らない。したがって、第1バッテリスタック110の第1残存容量(SOC:State Of Charge)S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とは、異なり得る。本実施の形態においては、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とが、個別に算出される。
【0062】
第1バッテリスタック110の第1残存容量S1は、第1監視ユニット161により算出される。第1監視ユニット161は、第1バッテリスタック110の電圧、第1バッテリスタック110の入出力電流および第1バッテリスタック110と第2バッテリスタック120との総合的な入出力電流などに基づいて、第1バッテリスタック110の残存容量を算出する。
【0063】
同様に、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2は、第2監視ユニット162により算出される。第2監視ユニット162は、第2バッテリスタック120の電圧、第2バッテリスタック120の入出力電流および第1バッテリスタック110と第2バッテリスタック120との総合的な入出力電流などに基づいて、第2バッテリスタック120の残存容量を算出する。
【0064】
第1監視ユニット161および第2監視ユニット162は、ECU130の一部として実装してもよい。各バッテリスタックの残存容量を算出する方法には、周知の一般的は方法を利用すればよいため、ここではそれらの詳細な説明は繰り返さない。
【0065】
本実施の形態においては、各バッテリスタックの残存容量を示すデータが、ECU130に入力される。ECU130は、各バッテリスタックの残存容量に基づいて、総合的な残存容量、すなわち蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する。
【0066】
ECU130は、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いて、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120への充電を制御する。たとえば、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALが大きい場合は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120への充電が制限される。
【0067】
また、ECU130は、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いて、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120からの放電を制御する。たとえば、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALが小さい場合は、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120からの放電が制限される。
【0068】
さらに、ECU130は、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いて、電気自動車が走行可能な距離を算出する。たとえば、全体的な残存容量STOTALの現在値および変化率と、車速などから、残存容量STOTALがしきい値を下回るまでに走行可能な距離が算出される。
【0069】
なお、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを用いた制御はこれらに限らない。
【0070】
図6を参照して、ECU130の、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する機能ついてさらに説明する。なお、以下に説明する機能はソフトウエアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。
【0071】
ECU130は、選択部500と、設定部502と、算出部504とを備える。
選択部500は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が、予め定められた第1の値、たとえば、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの和以上である場合は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの大きい方を優先残存容量SMAINとして選択する。逆に、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が、上限値SMXと下限値SMNとの和よりも小さい場合は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの小さい方が優先残存容量SMAINとして選択される。
【0072】
具体的には、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、予め定められた第2の値、たとえば、残存容量の中心値SC以上であるか否かが判定される。残存容量の中心値SCは、要するに、第1バッテリスタック110および第2バッテリスタック120の残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの相加平均値である。したがって、上限値SMXと下限値SMNとの和は、中心値SCの2倍である。第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、残存容量の中心値SC以上であるか否かを判定することは、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が、上限値SMXと下限値SMNとの和以上であるか否かを判定することを意味する。上限値SMXおよび下限値SMNは、残存容量の使用範囲を規定するために開発者により予め定められる。
【0073】
図7に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SC以上であると、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの大きい方が優先残存容量SMAINとして選択される。図7の例では、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1が選択される。
【0074】
一方、図8に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCより小さいと、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2とのうちの小さい方が優先残存容量SMAINとして選択される。図8の例では、第2バッテリスタック120の第1残存容量S2が選択される。
【0075】
他方の残存容量、すなわち選択されなかった残存容量は、蓄電システムの全体的な残存容量を算出する際に、サブ残存容量SSUBとして用いられる。
【0076】
図6に戻って、設定部502は、優先残存容量SMAINに応じて第1係数W1を設定するとともに、第1係数W1以下になるように第2係数W2を設定する。本実施の形態においては、第1係数W1+第2係数W2=1となるように、第1係数W1および第2係数W2が設定される。すなわち、W2=1−W1である。また、0.5≦第1係数W1≦1である。したがって、0≦第2係数W2≦0.5である。
【0077】
図9に示すように、第1係数W1は、実験およびシミュレーションの結果などの基づいて作成されたマップに従って設定される。優先残存容量SMAINと中心値SCとの差が大きいほど、第1係数W1が大きくなるように、すなわち第2係数W2が小さくなるように設定される。言い換えると、優先残存容量SMAINが、残存容量の上限値SMXに近づくほど、第1係数W1が大きくなり、かつ第2係数W2が小さくなるように設定される。同様に、優先残存容量SMAINが、残存容量の下限値SMNに近づくほど、第1係数W1が大きくなり、かつ第2係数W2が小さくなるように設定される。
【0078】
中心値SCが中心になるように予め定められた範囲内に、優先残存容量SMAINがある場合、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。本実施の形態においては、第1係数W1および第2係数W2が、共に0.5になるように設定される。この範囲外では、第1係数W1よりも小さくなるように第2係数W2が設定される。
【0079】
第1係数W1および第2係数W2は、優先残存容量SMAINを百分率で表わした値SRATEを用いて設定されてもよい。値SRATEは、下記の式1を用いて算出される。
【0080】
SRATE=100・(SMAIN−SMN)/(SMX−SMN)…(1)
第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される範囲の幅ΔWは、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との許容誤差を基準に定められる。本実施の形態において、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との許容誤差は、残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの差のX%である。したがって、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定された範囲の幅ΔWは、残存容量の上限値SMXと下限値SMNとの差のX%である。よって、上限値SMXと下限値SMNとの差のX%以内の範囲に優先残存容量SMAINがある場合、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。ここで、図9において、Y=(SMX−SMN)・X/100である。
【0081】
図10に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差ΔS(ΔS=|S1−S2|)が許容誤差以下である限り、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCと等しいときに、優先残存容量SMAINが、中心値SCからX%の範囲内にある。したがって、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。すなわち、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。
【0082】
一方、図11に示すように、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差ΔSが許容誤差より大きいと、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCと等しいときに、優先残存容量SMAINが、中心値SCからX%の範囲外にあり得る。したがって、第1係数W1と第2係数W2とが異なるように設定され得る。すなわち、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが異なるように設定され得る。
【0083】
そこで、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差が許容誤差より大きい場合、優先残存容量SMAINを補正することにより得られた値を用いて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。
【0084】
より具体的には、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1および第2バッテリスタック120の第2残存容量S2の差ΔSと、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される範囲の幅ΔWとを用いて、優先残存容量SMAINが補正される。
【0085】
図12に示すように、差ΔSと幅ΔWとの差(ΔS−ΔW)に応じて、中心値SCに近づくように、優先残存容量SMAINが補正される。たとえば、差ΔSと幅ΔWとの差だけ中心値SCに近づくように、優先残存容量SMAINが補正される。補正された優先残存容量SMAINに応じて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。
【0086】
これにより、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が、中心値SCと等しいときに、優先残存容量SMAINが上述した範囲内あるように、優先残存容量SMAINが補正される。そのため、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定される。
【0087】
優先残存容量SMAINを百分率で表わした値SRATEを用いて第1係数W1および第2係数W2が設定される場合は、値SRATEを補正することにより得られた値を用いて、第1係数W1および第2係数W2が設定される。
【0088】
値SRATEは、下記の式2を用いて算出される補正値SADJを用いて補正される。
SADJ=100・(SMAIN−SSUB)/(SMX−SMN)…(2)
補正値SADJ>Xである場合、下記の式3に示すように、補正値SADJから「X」が減算される。
【0089】
SADJ=SADJ−X…(3)
上述したように、「X」は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との許容誤差である。言い換えると、「X」は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差ΔSの許容上限を、上限値SMXと下限値SMNとの差に対する百分率で表わした値である。
【0090】
補正値SADJ<−Xである場合、下記の式4に示すように、補正値SADJに「X」が加算される。
【0091】
SADJ=SADJ+X…(4)
−X≦補正値SADJ≦Xである場合は、補正値SADJが「0」にされる。
【0092】
下記の式5に示すように、値SRATEから補正値SADJを減算することにより、値SRATEが補正される。
【0093】
SRATE=SRATE−SADJ…(5)
このようにして値SRATEを補正することと、差ΔSと幅ΔWとの差だけ中心値SCに近づくように、優先残存容量SMAINを補正することとは実質的に同じである。そのため、上述のようにして補正された値SRATEを用いて、第1係数W1および第2係数W2を設定するようにしてもよい。
【0094】
図6に戻って、算出部504は、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2とサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する。すなわち、下記の式6を用いて、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALが算出される。
【0095】
STOTAL=W1・SMAIN+W2・SSUB…(6)
すなわち、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALは、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との加重平均値として算出される。
【0096】
式6は、第2係数W2の代わりに第1係数W1のみを用いて、下記の式7のように表わしてもよい。
【0097】
STOTAL=W1・SMAIN+(1−W1)・SSUB…(7)
図13を参照して、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出するためにECU130が実行する処理について説明する。
【0098】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU130は、残存容量の中心値SCを算出する。
【0099】
S102にて、ECU130は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値を算出する。
【0100】
S104にて、ECU130は、優先残存容量SMAINを選択する。
S106にて、ECU130は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との差が許容誤差よりも大きい場合には、優先残存容量SMAINを補正する。
【0101】
S108にて、ECU130は、優先残存容量SMAINに応じて、第1係数W1および第2係数W2を設定する。
【0102】
S110にて、ECU130は、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方のサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより、蓄電システムの全体的な残存容量STOTALを算出する。
【0103】
以上のような構造およびフローチャートに基づいて算出される、蓄電システムの残存容量STOTALについて、図14を参照してさらに説明する。図14において、実線は、蓄電システムの残存容量STOTALを示す。破線は、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1を示す。一点鎖線は、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2を示す。図14では、一例として、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1が、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2よりも高いと仮定する。
【0104】
本実施の形態においては、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が大きい場合は、大きい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。優先残存容量SMAINが中心値SCからX%の範囲よりも上にあれば、第1係数W1が第2係数W2よりも大きくなるように設定される。したがって、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方のサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより算出される残存容量STOTALは、図14に示すように、大きい方の残存容量、すなわち第1バッテリスタック110の第1残存容量S1に片寄る。したがって、比較的大きくなるように残存容量STOTALが算出される。
【0105】
逆に、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との和が小さい場合は、小さい方の残存容量が優先残存容量SMAINとして選択される。優先残存容量SMAINが中心値SCからX%の範囲よりも下にあれば、第1係数W1が第2係数W2よりも大きくなるように設定される。したがって、第1係数W1と優先残存容量SMAINとの積を、第2係数W2と他方のサブ残存容量SSUBとの積に加えることにより算出される残存容量STOTALは、図14に示すように、小さい方の残存容量、すなわち第2バッテリスタック120の第2残存容量S2に片寄る。したがって、比較的小さくなるように残存容量STOTALが算出される。
【0106】
これにより、各々のバッテリスタックの残存容量の違いを考慮した、全体的な残存容量SMAINが算出される。
【0107】
第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が大きい場合は、大きい方の残存容量が上限値SMXに近いほど大きくなるように残存容量STOTALが算出されるため、一方の残存容量が上限値SMXに近い状態が示される。
【0108】
逆に、第1バッテリスタック110の第1残存容量S1と、第2バッテリスタック120の第2残存容量S2との相加平均値が大きい場合は、小さい方の残存容量が下限値SMNに近いほど小さくなるように残存容量STOTALが算出されるため、一方の残存容量が下限値SMNに近い状態が示される。
【0109】
したがって、本実施の形態において算出される残存容量STOTALを用いることによって、一方の残存容量が上限値SMXまたは下限値SMNに近いことを示すことができる。よって、充電または放電を好適に制限することができる。
【0110】
優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において、第1係数W1と第2係数W2とが同じになるように設定されるため、優先残存容量SMAINとして選択される残存容量が切換わる前後において同じであるように残存容量STOTALが算出される。そのため、図14に示すように、算出される残存容量STOTALの連続性を確保することができる。これにより、残存容量STOTALから走行可能距離を算出する際に、走行可能距離を連続的に算出することができる。すなわち、走行可能距離が突然大きく変化するということを避けることができる。
【0111】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
100 電動モータ、110 第1バッテリスタック、120 第2バッテリスタック、130 ECU、141,142 電圧センサ、151,152,153 電流センサ、161 第1監視ユニット、162 第2監視ユニット、500 選択部、502 設定部、504 算出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置とが設けられた蓄電システムの残存容量の算出装置であって、
前記第1の蓄電装置の第1の残存容量を算出するための手段と、
前記第2の蓄電装置の第2の残存容量を算出するための手段と、
前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との和が予め定められた第1の値以上である場合は、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との和が前記第1の値よりも小さい場合は、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択するための選択手段と、
選択された残存容量に応じて第1の係数を設定するとともに、前記第1の係数よりも小さくなるように第2の係数を設定するための設定手段と、
前記第1の係数と前記選択された残存容量との積を、前記第2の係数と他方の残存容量との積に加えることにより、前記蓄電システムの残存容量を算出するための算出手段とを備える、残存容量の算出装置。
【請求項2】
前記第1の値は、予め定められた第2の値の2倍の値であって、
前記選択手段は、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との相加平均値が前記第2の値以上である場合、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との相加平均値が前記第2の値よりも小さい場合、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択する、請求項1に記載の残存容量の算出装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記選択された残存容量が、前記第2の値が中心になるように予め定められた範囲内にある場合、前記第1の係数と前記第2の係数とが同じになるように設定する、請求項2に記載の残存容量の算出装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との第1の差が、前記予め定められた範囲の幅よりも大きい場合、前記第1の差と前記予め定められた範囲の幅との第2の差に応じて前記第2の値に近づくように前記選択された残存容量を補正することにより得られた値に応じて、前記第1の係数および前記第2の係数を設定する、請求項3に記載の残存容量の算出装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記選択された残存容量と、前記第2の値との差が大きいほど、前記第1の係数が大きくなり、かつ前記第2の係数が小さくなるように、前記第1の係数および前記第2の係数を設定する、請求項2に記載の残存容量の算出装置。
【請求項6】
前記第2の値は、前記第1の蓄電装置および前記第2の蓄電装置の残存容量の上限値と下限値との相加平均値である、請求項2〜5のいずれかに記載の残存容量の算出装置。
【請求項1】
第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置とが設けられた蓄電システムの残存容量の算出装置であって、
前記第1の蓄電装置の第1の残存容量を算出するための手段と、
前記第2の蓄電装置の第2の残存容量を算出するための手段と、
前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との和が予め定められた第1の値以上である場合は、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との和が前記第1の値よりも小さい場合は、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択するための選択手段と、
選択された残存容量に応じて第1の係数を設定するとともに、前記第1の係数よりも小さくなるように第2の係数を設定するための設定手段と、
前記第1の係数と前記選択された残存容量との積を、前記第2の係数と他方の残存容量との積に加えることにより、前記蓄電システムの残存容量を算出するための算出手段とを備える、残存容量の算出装置。
【請求項2】
前記第1の値は、予め定められた第2の値の2倍の値であって、
前記選択手段は、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との相加平均値が前記第2の値以上である場合、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの大きい方の残存容量を選択し、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との相加平均値が前記第2の値よりも小さい場合、前記第1の残存容量および前記第2の残存容量のうちの小さい方の残存容量を選択する、請求項1に記載の残存容量の算出装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記選択された残存容量が、前記第2の値が中心になるように予め定められた範囲内にある場合、前記第1の係数と前記第2の係数とが同じになるように設定する、請求項2に記載の残存容量の算出装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記第1の残存容量と前記第2の残存容量との第1の差が、前記予め定められた範囲の幅よりも大きい場合、前記第1の差と前記予め定められた範囲の幅との第2の差に応じて前記第2の値に近づくように前記選択された残存容量を補正することにより得られた値に応じて、前記第1の係数および前記第2の係数を設定する、請求項3に記載の残存容量の算出装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記選択された残存容量と、前記第2の値との差が大きいほど、前記第1の係数が大きくなり、かつ前記第2の係数が小さくなるように、前記第1の係数および前記第2の係数を設定する、請求項2に記載の残存容量の算出装置。
【請求項6】
前記第2の値は、前記第1の蓄電装置および前記第2の蓄電装置の残存容量の上限値と下限値との相加平均値である、請求項2〜5のいずれかに記載の残存容量の算出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−226805(P2011−226805A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94156(P2010−94156)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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