段付き軸状物の製造方法および段付き軸状物の製造装置
【課題】歯部が形成される段付き軸状物を鍛造加工によって製造できる段付き軸状物の製造方法を提供する。
【解決手段】素材60の下端部から上端部までを、下型10および上型20によって拘束した状態で、素材60を下端側に向けて材料流動させて歯部51を成形する第一の工程と、下型10による素材60の拘束状態を維持した状態で、下型10と上型20との間にクリアランスCを形成し、上型20による素材60の段部52を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程と、第二の工程において形成されたクリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させて段部52を成形する第三の工程と、を行う。
【解決手段】素材60の下端部から上端部までを、下型10および上型20によって拘束した状態で、素材60を下端側に向けて材料流動させて歯部51を成形する第一の工程と、下型10による素材60の拘束状態を維持した状態で、下型10と上型20との間にクリアランスCを形成し、上型20による素材60の段部52を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程と、第二の工程において形成されたクリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させて段部52を成形する第三の工程と、を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端部に歯部が形成されるとともに、歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造方法および段付き軸状物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータのシャフト等に用いられる段付き軸状物は、一端部に歯部(歯形)が形成されるとともに、歯部よりも他端側に段部(フランジ)が形成される(図6(c)参照)。
【0003】
このような段付き軸状物を製造するための技術として、例えば、特許文献1(より詳細には第三の実施の形態)に開示される製造方法がある。特許文献1に開示される製造方法では、段付き軸状物と略同一形状の中空部が形成される下型、および素材を押圧する上型を用いて、段付き軸状物を成形する。
【0004】
特許文献1に開示される製造方法では、まず、段付き軸状物の軸状部分と略同一の外径を有する素材を下型にセットし、上型により素材を他端側へ押圧して、素材の下端部にセレーションを成形する。
そして、セレーションを成形した後で、上型をさらに素材を他端側へ押圧して、素材の上端部に大径部(段部)を成形する。
【0005】
特許文献1に開示される製造方法では、段付き軸状物と略同一形状の中空部が形成される下型を用いる都合上、下型に素材をセットしたときに、素材の上側と下型との間に隙間が形成されてしまう。つまり、素材は、下型にセットされる部分よりも上側が拘束されない。
このような特許文献1に開示される製造方法を用いて素材の下端部に歯部を成形する場合、成形時の流動抵抗が大きいため、拘束されない部分が径方向外側に座屈してしまう。
【0006】
また、座屈の発生を防止するために、素材の上端部から下端部までを拘束する下型および上型を用いて歯部を成形した後で、歯部を成形した素材を下型および上型から離型させ、段部を成形する別の下型および上型を用いて段部を成形することが考えられる。
この場合、段部を成形する下型へ歯部が形成された素材を挿入する際には、前記下型と前記歯部との間に所定のクリアランスが必要となるため、下型と歯部との間に隙間が形成された状態で段部を成形することとなるが、このときに材料流動によって歯部が引っ張られ、隙間の分だけ歯部が変形してしまう。つまり、歯部の精度を確保できない。
【0007】
以上のように、特許文献1に開示される製造方法では、鍛造加工だけで歯部が形成される段付き軸状物を成形した場合、座屈や歯部の変形が生じるため、段付き軸状物を製造できなかった。
従って、歯部以外の部分を鍛造加工で成形した後で、歯部を機械加工(中空の段付き軸状物の場合、ホブ加工)で成形する必要があった。この場合、段付き軸状物の加工コストが増大してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−346681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、歯部が形成される段付き軸状物を鍛造加工によって製造できる段付き軸状物の製造方法および段付き軸状物の製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1においては、一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造方法であって、前記素材の一端部から他端部までを、下型および上型によって拘束した状態で、前記素材を一端側に向けて材料流動させて前記歯部を成形する第一の工程と、前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程と、前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持した状態で、前記素材を前記クリアランスに向けて材料流動させて前記段部を成形する第三の工程と、を行う、ものである。
【0011】
請求項2においては、前記上型として、前記素材の他端側部を拘束するとともに、前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持する拘束手段を備える、上型を用いるものである。
【0012】
請求項3においては、前記上型として、前記素材の他端側部を拘束する拘束手段を備える第一の上型と、前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段を備える第二の上型と、を用い、前記第一の上型は、前記第一の工程で用いられ、前記第二の上型は、前記第二の工程および前記第三の工程で用いられる、ものである。
【0013】
請求項4においては、一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、前記素材の一端側部を拘束する下型と、前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える上型と、を具備し、前記下型と前記上型とは、互いに近接離間可能に構成され、前記下型と前記上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記上型の拘束手段によって拘束した状態で、前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型の拘束手段による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、前記下型と前記上型との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、ものである。
【0014】
請求項5においては、前記上型の拘束手段は、前記クリアランスを保持する機能を備える、ものである。
【0015】
請求項6においては、一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、前記素材の一端側部を拘束する下型と、前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第一の上型と、前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第二の上型と、を具備し、前記下型と前記第一の上型および前記第二の上型とは、互いに近接離間可能に構成され、前記下型と前記第一の上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記第一の上型の拘束手段によって拘束した状態で、前記素材を前記第一の上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記第二の上型とを近接させて、前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間にクリアランスを形成し、前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記第二の上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、ものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、歯部を成形した素材を下型から離型させることなく段部を成形することで、座屈の発生を防止できるとともに段付き軸状物に形成される歯部の精度を確保できるため、歯部が形成される段付き軸状物を鍛造加工によって製造できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】製造装置の全体的な構成を示す断面図。
【図2】下型および上型を閉塞状態にした状態を示す断面図。
【図3】歯部を成形した状態を示す断面図。
【図4】クリアランスを形成した状態を示す断面図。
【図5】段部を成形した状態を示す断面図。
【図6】素材の形状を示す断面図。(a)成形前の状態を示す図。(b)歯部が成形された状態を示す図。(c)段部が成形された状態を示す図。
【図7】第二実施形態の製造装置の構成を示す断面図。
【図8】第一の上型および第二の上型をスライドさせる状態を示す断面図。
【図9】第二実施形態の製造装置で段部を成形する状態を示す説明図。
【図10】素材の内周面に歯部を成形する状態を示す説明図。
【図11】内周面に歯部を成形した素材に段部を成形する状態を示す説明図。
【図12】座屈が発生した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、第一実施形態の段付き軸状物の製造方法について説明する。
【0019】
まず、段付き軸状物50の形状について説明する。
【0020】
図6(c)に示すように、段付き軸状物50は、その両端部が外部に開口するとともに、その中途部に段部52が形成される略円筒状の軸状部材である。段付き軸状物50には、歯部51が形成される。
【0021】
歯部51は、段付き軸状物50の軸方向に対して平行な平歯車であり、段付き軸状物50の一端側の外周面に形成される。第一実施形態の歯部51は、段付き軸状物50の一端部にて、一端側に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ部分の中途部から、段付き軸状物50の一端まで連続して形成される。
つまり、段部52は、歯部51よりも他端側に形成される。
【0022】
なお、歯部51の形状は、平歯車に限定されるものでなく、例えば、はすば歯車等であっても構わない。
【0023】
段部52は、段付き軸状物50の軸状部分より径方向外側に突出するフランジである。
【0024】
段付き軸状物50は、素材60に対して鍛造加工が行われることで製造される。
素材60は、図6(a)および図6(c)に示すように、段付き軸状物50の内径寸法と略同一の内径を有する略筒状の軸状部材である。素材60は、段付き軸状物50の軸状部分と略同一の外径を有するとともに、段付き軸状物50の軸方向の長さよりも短い。
【0025】
段付き軸状物の製造方法では、段付き軸状物50の製造装置1(以下、単に「製造装置1」と表記する)を用いて、段付き軸状物50を製造する(図5参照)。
【0026】
次に、製造装置1の構成について説明する。
【0027】
なお、以下では、説明の便宜上、図1における紙面の上下方向を基準として「製造装置1の上下方向」を規定する。
【0028】
図1に示すように、製造装置1は、下型10および上型20を具備する。
【0029】
下型10は、素材60の下側部(一端側部)を拘束するためのものである。下型10は、ガイドダイス11、歯形ダイス12、およびノックアウト13を備える。
【0030】
ガイドダイス11は、上型20を下型10内にガイドするためのものであり、歯形ダイス12の上側に配置される。ガイドダイス11には、上下方向に貫通する中空部が形成される。当該中空部は、後述する上型20のパンチ22の外径と略同一の内径を有する。
【0031】
歯形ダイス12は、素材60の下側部を拘束するとともに、素材60の下端部に歯部51を成形するためのものである。歯形ダイス12は、上下方向に貫通する円柱状の中空部が形成される。
当該中空部は、段付き軸状物50の一端部と略同一の形状を有する。中空部において、歯部51の外周形状と略同一の内周形状を有する部分は、素材60に歯部51を成形する歯形成形部12aとして形成される。
【0032】
なお、図1から図5、図7から図9、および図12においては、図面を見やすくするために、歯形成形部12aの形状の記載を左右両端部だけに留めている。
【0033】
ノックアウト13は、鍛造加工後に素材60を下型10から離型させるためのものであり、歯形ダイス12の下方に配置される。
【0034】
上型20は、下型10に対して近接離間する方向へ移動可能に構成され、素材60を下端側(一端側)へ押圧し、素材60を所望の形状に成形するためのものである。上型20は、スリーブパンチ21、パンチ22、およびマンドレル23を備える。
【0035】
スリーブパンチ21は、素材60を下端側へ押圧するための押圧手段である。スリーブパンチ21は、その下端部が素材60の上端部と略同一の円筒形状に形成され、素材60の上方に配置される。スリーブパンチ21は、下型10に対して近接離間可能に構成されるとともに、所望の力で素材60を下端側へ押圧可能に構成される(図1に黒塗りで示す矢印および図3に示すメイン力P11参照)。
【0036】
パンチ22は、素材60の上側部(他端側部)を拘束する拘束手段である。パンチ22は、上下方向に貫通する中空部が形成される。パンチ22における中空部の上部から下端部までは、素材60の外径と略同一の内径を有し、素材60を拘束する。
パンチ22は、スリーブパンチ21およびマンドレル23に対して相対的に上下方向に移動可能に構成される(図1に白塗りで示す矢印参照)。
パンチ22は、鍛造加工時に作用する内圧で、上方向に移動しない程度の力で下方向に押圧可能に構成されるとともに、内圧に対して所望の位置を保持できるように構成される(図3に示す閉塞力P21および図5に示す保持力P22参照)。
【0037】
なお、第一実施形態のパンチ22は、流体式のシリンダを駆動源として動作するものとするが、これに限定されるものでない。
【0038】
マンドレル23は、素材60の内周面を支持するためのものである。図1および図2に示すように、マンドレル23は、その下端部が素材60の内径と略同一の外径を有する軸状部材であり、その軸心位置を素材60の軸心位置に合わせた状態で、素材60の上方に配置される。マンドレル23は、スリーブパンチ21の移動に伴って一体的に移動する。
【0039】
次に、製造装置1が用いられて行われる段付き軸状物の製造方法について説明する。
【0040】
まず、製造装置1は、図1に示すように、下型10の歯形ダイス12に素材60をセットする(図1に二点鎖線で示す素材60参照)。
【0041】
下型10の歯形ダイス12に素材60をセットした後で、図2に示すように、製造装置1は、上型20を下型10に近接させて、パンチ22の下端面を歯形ダイス12の上端面に当接させる。つまり、製造装置1は、下型10および上型20を閉塞状態にする。
【0042】
このとき、製造装置1は、素材60の上端部から下端部までを、下型10(歯形ダイス12)およびパンチ22によって隙間なく拘束している状態である。
【0043】
下型10および上型20を閉塞状態にした後で、図3に示すように、製造装置1は、素材60をスリーブパンチ21により下端側へ押圧する(図3に示すメイン力P11参照)。
【0044】
このとき、製造装置1は、パンチ22に対して作用する内圧で、パンチ22が上方向に移動しないように、パンチ22による下方向への押圧動作を行う(図3に示す閉塞力P21参照)。
これにより、製造装置1は、歯形ダイス12の歯形成形部12aに素材60を材料流動させて、歯部51を成形する。つまり、製造装置1は、鍛造加工によって歯部51を成形する。
【0045】
仮に、段部52を成形した後で歯部51を成形する場合、下型10および上型20による閉塞に段部52が干渉する。このため、図12に示すように、段部から歯形ダイスまでの間に大きな隙間が形成されてしまう。
この場合、下型および上型は、段部から歯形ダイスの上端部までの間において、素材を拘束できない(図12の歯部成形前に示す「型拘束なし」参照)。
【0046】
ここで、歯部51は、成形前後の素材60の変形度合いが大きいため、材料の流動抵抗が大きい。
このため、図12に示すような型拘束なしの状態で素材に歯部を成形した場合、歯部成形時に隙間にて座屈が発生してしまう(図12に示す座屈発生部位参照)。
【0047】
すなわち、鍛造加工によって歯部51を成形するとき、製造装置1は、素材60の上端部から下端部までを拘束する必要がある。
【0048】
そこで、段付き軸状物の製造方法では、図3に示すように、段部52よりも前に歯部51を成形することで、素材60の上端部から下端部まで隙間なく拘束し、歯部51を成形する。これにより、座屈が発生することなく歯部51を成形できる。
【0049】
このように、段付き軸状物の製造方法では、素材60の下端部から上端部までを、下型10および上型20によって拘束した状態で、素材60を下方向に向けて材料流動させて歯部51を成形する第一の工程を行う。
【0050】
歯部51を成形した後で、図4に示すように、製造装置1は、パンチ22を所定の間隔だけ上方向に移動させる。
このとき、製造装置1は、素材60およびパンチ22以外の製造装置1の構成部品(つまり、スリーブパンチ21、マンドレル23、ガイドダイス11、歯形ダイス12、およびノックアウト13)に対して、パンチ22を相対的に上方向に移動させる。
【0051】
つまり、製造装置1は、下型10による素材60の拘束状態を維持した状態で、上型20を下型10より離間させ、所定の間隔だけ素材60から上型20を引き上げる。
【0052】
このように、製造装置1は、素材60および下型10に対して、パンチ22を上方向に相対的に移動させ(パンチ22を下型10から離間する方向へ相対的に移動させ)、歯形ダイス12とパンチ22との間に所定の間隔のクリアランスCを形成する。このクリアランスCが形成された部分においては、上型20による素材60の拘束状態が解除される。
【0053】
クリアランスCを形成した後で、図5に示すように、製造装置1は、スリーブパンチ21により素材60を下端側へ押圧する(図5に示すメイン力P12参照)。
【0054】
このとき、製造装置1は、パンチ22に対して作用する内圧で、パンチ22が上方向に移動しないように、成形前と同じ位置を保持する(図5に示す保持力P22参照)。これにより、クリアランスCの大きさは保持されることとなる。
すなわち、製造装置1は、クリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させることにより、素材60の上下中途部に段部52を成形する。つまり、製造装置1は、鍛造加工によって段部52を成形する。
【0055】
このように、パンチ22は、クリアランスCを保持する機能を備える。
【0056】
段部52を成形した後で、製造装置1は、上型20を下型10より離間させて素材60を上型20より離型させ、ノックアウト13によって素材60を下型10より離型させる。
このようにして、製造装置1は、段付き軸状物50を製造する。
【0057】
ここで、段部52を成形するときには、成形前後の素材60の変形度合いが小さいため、段部52近傍の材料が流動するだけであるが、この材料流動に起因して、歯部51が引っ張られる。
【0058】
仮に歯部51と歯形成形部12aとの間に隙間がある場合、この引っ張りより隙間の分だけ歯部51が変形(例えば、歯部51の一部だけが拡径する等)してしまい、歯部51の精度を確保できない。
【0059】
このような場合としては、下型10および上型20によって歯部51を成形した後で素材60を下型10および上型20から離型させ、段部を成形する別の下型および上型を用いて段部52を成形する場合等がある。
【0060】
そこで、段付き軸状物の製造方法では、歯部51を成形した後で、パンチ22を上方向に移動させることで、素材60を下型10から離型させることなく、段部52を成形するためのクリアランスCを形成する。
【0061】
そして、この拘束状態を保持した状態で素材60に対して鍛造加工を行うことで、素材60を下型10から離型させることなく段部52を成形するのである。
【0062】
これによれば、歯形ダイス12と歯部51との間に隙間がない状態で段部52を成形できるため、引っ張りによる歯部51の変形を下型10(歯形ダイス12)によって規制できる。
つまり、段付き軸状物の製造方法によれば、段部52を成形するときに歯部51が変形しないため、歯部51の精度を確保できる。
【0063】
このように、段付き軸状物の製造方法および製造装置1では、座屈の発生を防止できるとともに歯部51の精度を確保できるため、歯部51が形成される段付き軸状物50を鍛造加工によって製造できる。
つまり、段付き軸状物の製造方法および製造装置1によれば、段付き軸状物50を鍛造加工だけで製造できるため、段付き軸状物50の加工コストを低減できる。
【0064】
また、第一実施形態のように、上型として一つの上型20で歯部51および段部52を成形する構成とすることで、段付き軸状物50の製造をより短時間で行うことができる。
【0065】
このように、パンチ22を上方向に移動させる工程は、下型10による素材60の拘束状態を維持した状態で、下型10と上型20とを互いに離間させて、下型10と上型20との間にクリアランスCを形成し、上型20による素材60の段部52を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程として機能する。
また、段部52を成形する工程は、第二の工程において形成されたクリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させて段部52を成形する第三の工程として機能する。
そして、第一の工程から第三の工程においては、製造装置1の上型として、素材60の上側部を拘束するとともに、第二の工程において形成されたクリアランスCを保持する拘束手段としてのパンチ22を備える、上型20を用いる。
【0066】
なお、上型20の構成は、第一実施形態に限定されるものでなく、例えば、歯部51を成形した後でパンチ22を上方向に移動させ、歯形ダイス12とパンチ22との間にシムを挟む構成であっても構わない。
この場合、パンチ22は、内圧によって上方向に移動しない程度の力で下方向に押圧すればよい。従って、パンチ22は、内圧に対して所望の位置を保持する必要がなくなり、製造装置1の構成をより簡素にできる。
【0067】
また、第一実施形態では、パンチ22を上方向に移動させてクリアランスCを形成したが、これに限定されるものでない。すなわち、下型10および素材60を上型20に対して相対的に下方向に移動させて、クリアランスCを形成しても構わない。つまり、下型10と上型20とを互いに離間させてクリアランスCを形成することができればよい。
【0068】
次に、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法について説明する。
第二実施形態では、図7に示すように、製造装置101が用いられて、段付き軸状物の製造方法が行われる。
【0069】
製造装置101は、下型110、上型としての第一の上型130、および上型としての第二の上型140を具備する。
【0070】
第二実施形態の下型110は、第一実施形態の下型10と同一の構成である。つまり、第二実施形態の下型110は、第一実施形態のガイドダイス11、歯形ダイス12、およびノックアウト13と同様に構成されるガイドダイス111、歯形ダイス112、およびノックアウト113を備える。
【0071】
第一の上型130は、第一実施形態の上型20と同一形状のスリーブパンチ131、パンチ132、およびマンドレル133を備える。
パンチ132は、スリーブパンチ131およびマンドレル133に対して相対的に上下方向に移動可能に構成されるとともに、鍛造加工時に作用する内圧で、上方向に移動しない程度の力で下方向に押圧可能に構成される。
つまり、第一の上型130は、内圧に対して所望の位置を保持するための機能を備えないという点が、第一実施形態の上型20と異なる。
【0072】
第二の上型140は、パンチ142の上下方向の長さが、第一の上型130のパンチ132の上下方向の長さよりも短い点を除いて、第一の上型130と同一の構成である(図7に示す矢印H参照)。つまり、第二の上型140は、第一の上型130のスリーブパンチ131およびマンドレル133と同様に構成されるスリーブパンチ141およびマンドレル142を備える。
【0073】
すなわち、下型110と第一の上型130と第二の上型140とは、互いに近接離間可能に構成される。
【0074】
また、第一の上型130および第二の上型140は、下型110に対して水平方向に相対的に移動可能に構成される(図7における紙面左右方向、図7に示す矢印参照)。
【0075】
次に、第二実施形態の製造装置101が用いられて行われる第二実施形態の段付き軸状物の製造方法について説明する。
なお、第二実施形態では、第一実施形態の素材60と同一形状の素材から、第一実施形態の段付き軸状物50と同一形状の段付き軸状物を製造するものとする。このため、段付き軸状物50および素材60は、第二実施形態においても、同一の符号を付して説明する。
【0076】
まず、製造装置101は、下型110の歯形ダイス112に素材60をセットするとともに、第一の上型130を下型110の上方にスライドさせる(図7に示す素材60の中心線Lおよび二点鎖線で示す素材60参照)。
そして、第一実施形態と同様に、下型110と第一の上型130とを近接させて、下型110および第一の上型130を閉塞状態にし、素材60の外周面の上端部から下端部までを、下型110および第一の上型130のパンチ132によって拘束する。
この状態で、素材60を第一の上型130のスリーブパンチ131により下端側へ押圧することにより材料流動させて、素材60に歯部51を成形する(図2および図3参照)。
【0077】
素材60に歯部51を成形した後で、図8に示すように、製造装置101は、第一の上型130を素材60から離型させ、第二の上型140を下型110の上方にスライドさせる(図8に示す矢印および素材60の中心線L参照)。
【0078】
第二の上型140を下型110の上方にスライドさせた後で、図9に示すように、製造装置101は、第二の上型140を下型110に近接させ、下型110および第二の上型140を閉塞状態にする(図9に示す段部成形前参照)。
このとき、第二の上型140のパンチ142は、第一の上型130のパンチ132よりもその上下方向の長さが短いため、下型110との間に上下方向に所定の長さのクリアランスCが形成される。このクリアランスCが形成された部分においては、第二の上型140のパンチ142による素材60の拘束状態が解除される。
また、このとき下型110による素材60の拘束状態は維持されている。
【0079】
下型110および第二の上型140を閉塞状態にした後で、製造装置101は、第二の上型140のスリーブパンチ141により素材60を下端側へ押圧する(図9に示すメイン力P12参照)。
【0080】
このとき、製造装置101は、第二の上型140のパンチ142に対して作用する内圧で、第二の上型140のパンチ142が上方向に移動しないように、第二の上型140のパンチ142による下方向への押圧動作を行う(図9に示す閉塞力P122参照)。これにより、クリアランスCの大きさは保持されることとなる。
すなわち、製造装置101は、クリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させることにより、素材60の上下中途部に段部52を成形する。
【0081】
このように、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法は、歯部51を成形する第一の工程では、素材60の上側部を拘束する拘束手段として、パンチ132を備える第一の上型130を用いる。
また、クリアランスCを形成する第二の工程および段部52を成形する第三の工程では、素材60の上側部から段部52を成形する部分よりも上側までを拘束するパンチ142を備える第二の上型140を用いる。
【0082】
これによれば、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法および製造装置101は、歯部51を成形した素材60を下型110から離型させることなく段部52を成形できる。従って、座屈の発生を防止できるとともに歯部51の精度を確保できるため、歯部51が形成される段付き軸状物50を鍛造加工によって製造できる。
また、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法および製造装置101によれば、内圧に対してクリアランスCを保持する機能が必要なくなる。このため、第二実施形態の製造装置101の構成をより簡素にできる。
【0083】
なお、段付き軸状物の製造方法および製造装置にて製造可能な製品形状は、第一実施形態に限定されるものでなく、例えば、中実状の段付き軸状物や内周面に歯部が形成される段付き軸状物であっても構わない。
【0084】
内周面に歯部251が形成される段付き軸状物250を製造する場合、製造装置201は、図10に示すように、外周面に歯形成形部214aが形成されるマンドレル214を下型210が備える。また、歯形ダイス212は、その内周面に歯形成形部が形成されず、単に素材260の外周面を拘束する。
【0085】
このような製造装置201は、第一実施形態と同様に、素材260の内周面に歯部251を成形する(図10およびに示すメイン力P211および閉塞力P221参照)。
そして、製造装置201は、図11に示すように、上型220を上方向に移動させてクリアランスCを形成し、段部252を成形する(図11に示すメイン力P212および保持力P222参照)。
【符号の説明】
【0086】
1 製造装置
10 下型
20 上型
50 段付き軸状物
51 歯部
52 段部
60 素材
C クリアランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端部に歯部が形成されるとともに、歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造方法および段付き軸状物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータのシャフト等に用いられる段付き軸状物は、一端部に歯部(歯形)が形成されるとともに、歯部よりも他端側に段部(フランジ)が形成される(図6(c)参照)。
【0003】
このような段付き軸状物を製造するための技術として、例えば、特許文献1(より詳細には第三の実施の形態)に開示される製造方法がある。特許文献1に開示される製造方法では、段付き軸状物と略同一形状の中空部が形成される下型、および素材を押圧する上型を用いて、段付き軸状物を成形する。
【0004】
特許文献1に開示される製造方法では、まず、段付き軸状物の軸状部分と略同一の外径を有する素材を下型にセットし、上型により素材を他端側へ押圧して、素材の下端部にセレーションを成形する。
そして、セレーションを成形した後で、上型をさらに素材を他端側へ押圧して、素材の上端部に大径部(段部)を成形する。
【0005】
特許文献1に開示される製造方法では、段付き軸状物と略同一形状の中空部が形成される下型を用いる都合上、下型に素材をセットしたときに、素材の上側と下型との間に隙間が形成されてしまう。つまり、素材は、下型にセットされる部分よりも上側が拘束されない。
このような特許文献1に開示される製造方法を用いて素材の下端部に歯部を成形する場合、成形時の流動抵抗が大きいため、拘束されない部分が径方向外側に座屈してしまう。
【0006】
また、座屈の発生を防止するために、素材の上端部から下端部までを拘束する下型および上型を用いて歯部を成形した後で、歯部を成形した素材を下型および上型から離型させ、段部を成形する別の下型および上型を用いて段部を成形することが考えられる。
この場合、段部を成形する下型へ歯部が形成された素材を挿入する際には、前記下型と前記歯部との間に所定のクリアランスが必要となるため、下型と歯部との間に隙間が形成された状態で段部を成形することとなるが、このときに材料流動によって歯部が引っ張られ、隙間の分だけ歯部が変形してしまう。つまり、歯部の精度を確保できない。
【0007】
以上のように、特許文献1に開示される製造方法では、鍛造加工だけで歯部が形成される段付き軸状物を成形した場合、座屈や歯部の変形が生じるため、段付き軸状物を製造できなかった。
従って、歯部以外の部分を鍛造加工で成形した後で、歯部を機械加工(中空の段付き軸状物の場合、ホブ加工)で成形する必要があった。この場合、段付き軸状物の加工コストが増大してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−346681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、歯部が形成される段付き軸状物を鍛造加工によって製造できる段付き軸状物の製造方法および段付き軸状物の製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1においては、一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造方法であって、前記素材の一端部から他端部までを、下型および上型によって拘束した状態で、前記素材を一端側に向けて材料流動させて前記歯部を成形する第一の工程と、前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程と、前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持した状態で、前記素材を前記クリアランスに向けて材料流動させて前記段部を成形する第三の工程と、を行う、ものである。
【0011】
請求項2においては、前記上型として、前記素材の他端側部を拘束するとともに、前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持する拘束手段を備える、上型を用いるものである。
【0012】
請求項3においては、前記上型として、前記素材の他端側部を拘束する拘束手段を備える第一の上型と、前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段を備える第二の上型と、を用い、前記第一の上型は、前記第一の工程で用いられ、前記第二の上型は、前記第二の工程および前記第三の工程で用いられる、ものである。
【0013】
請求項4においては、一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、前記素材の一端側部を拘束する下型と、前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える上型と、を具備し、前記下型と前記上型とは、互いに近接離間可能に構成され、前記下型と前記上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記上型の拘束手段によって拘束した状態で、前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型の拘束手段による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、前記下型と前記上型との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、ものである。
【0014】
請求項5においては、前記上型の拘束手段は、前記クリアランスを保持する機能を備える、ものである。
【0015】
請求項6においては、一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、前記素材の一端側部を拘束する下型と、前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第一の上型と、前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第二の上型と、を具備し、前記下型と前記第一の上型および前記第二の上型とは、互いに近接離間可能に構成され、前記下型と前記第一の上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記第一の上型の拘束手段によって拘束した状態で、前記素材を前記第一の上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記第二の上型とを近接させて、前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間にクリアランスを形成し、前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記第二の上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、ものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、歯部を成形した素材を下型から離型させることなく段部を成形することで、座屈の発生を防止できるとともに段付き軸状物に形成される歯部の精度を確保できるため、歯部が形成される段付き軸状物を鍛造加工によって製造できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】製造装置の全体的な構成を示す断面図。
【図2】下型および上型を閉塞状態にした状態を示す断面図。
【図3】歯部を成形した状態を示す断面図。
【図4】クリアランスを形成した状態を示す断面図。
【図5】段部を成形した状態を示す断面図。
【図6】素材の形状を示す断面図。(a)成形前の状態を示す図。(b)歯部が成形された状態を示す図。(c)段部が成形された状態を示す図。
【図7】第二実施形態の製造装置の構成を示す断面図。
【図8】第一の上型および第二の上型をスライドさせる状態を示す断面図。
【図9】第二実施形態の製造装置で段部を成形する状態を示す説明図。
【図10】素材の内周面に歯部を成形する状態を示す説明図。
【図11】内周面に歯部を成形した素材に段部を成形する状態を示す説明図。
【図12】座屈が発生した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、第一実施形態の段付き軸状物の製造方法について説明する。
【0019】
まず、段付き軸状物50の形状について説明する。
【0020】
図6(c)に示すように、段付き軸状物50は、その両端部が外部に開口するとともに、その中途部に段部52が形成される略円筒状の軸状部材である。段付き軸状物50には、歯部51が形成される。
【0021】
歯部51は、段付き軸状物50の軸方向に対して平行な平歯車であり、段付き軸状物50の一端側の外周面に形成される。第一実施形態の歯部51は、段付き軸状物50の一端部にて、一端側に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ部分の中途部から、段付き軸状物50の一端まで連続して形成される。
つまり、段部52は、歯部51よりも他端側に形成される。
【0022】
なお、歯部51の形状は、平歯車に限定されるものでなく、例えば、はすば歯車等であっても構わない。
【0023】
段部52は、段付き軸状物50の軸状部分より径方向外側に突出するフランジである。
【0024】
段付き軸状物50は、素材60に対して鍛造加工が行われることで製造される。
素材60は、図6(a)および図6(c)に示すように、段付き軸状物50の内径寸法と略同一の内径を有する略筒状の軸状部材である。素材60は、段付き軸状物50の軸状部分と略同一の外径を有するとともに、段付き軸状物50の軸方向の長さよりも短い。
【0025】
段付き軸状物の製造方法では、段付き軸状物50の製造装置1(以下、単に「製造装置1」と表記する)を用いて、段付き軸状物50を製造する(図5参照)。
【0026】
次に、製造装置1の構成について説明する。
【0027】
なお、以下では、説明の便宜上、図1における紙面の上下方向を基準として「製造装置1の上下方向」を規定する。
【0028】
図1に示すように、製造装置1は、下型10および上型20を具備する。
【0029】
下型10は、素材60の下側部(一端側部)を拘束するためのものである。下型10は、ガイドダイス11、歯形ダイス12、およびノックアウト13を備える。
【0030】
ガイドダイス11は、上型20を下型10内にガイドするためのものであり、歯形ダイス12の上側に配置される。ガイドダイス11には、上下方向に貫通する中空部が形成される。当該中空部は、後述する上型20のパンチ22の外径と略同一の内径を有する。
【0031】
歯形ダイス12は、素材60の下側部を拘束するとともに、素材60の下端部に歯部51を成形するためのものである。歯形ダイス12は、上下方向に貫通する円柱状の中空部が形成される。
当該中空部は、段付き軸状物50の一端部と略同一の形状を有する。中空部において、歯部51の外周形状と略同一の内周形状を有する部分は、素材60に歯部51を成形する歯形成形部12aとして形成される。
【0032】
なお、図1から図5、図7から図9、および図12においては、図面を見やすくするために、歯形成形部12aの形状の記載を左右両端部だけに留めている。
【0033】
ノックアウト13は、鍛造加工後に素材60を下型10から離型させるためのものであり、歯形ダイス12の下方に配置される。
【0034】
上型20は、下型10に対して近接離間する方向へ移動可能に構成され、素材60を下端側(一端側)へ押圧し、素材60を所望の形状に成形するためのものである。上型20は、スリーブパンチ21、パンチ22、およびマンドレル23を備える。
【0035】
スリーブパンチ21は、素材60を下端側へ押圧するための押圧手段である。スリーブパンチ21は、その下端部が素材60の上端部と略同一の円筒形状に形成され、素材60の上方に配置される。スリーブパンチ21は、下型10に対して近接離間可能に構成されるとともに、所望の力で素材60を下端側へ押圧可能に構成される(図1に黒塗りで示す矢印および図3に示すメイン力P11参照)。
【0036】
パンチ22は、素材60の上側部(他端側部)を拘束する拘束手段である。パンチ22は、上下方向に貫通する中空部が形成される。パンチ22における中空部の上部から下端部までは、素材60の外径と略同一の内径を有し、素材60を拘束する。
パンチ22は、スリーブパンチ21およびマンドレル23に対して相対的に上下方向に移動可能に構成される(図1に白塗りで示す矢印参照)。
パンチ22は、鍛造加工時に作用する内圧で、上方向に移動しない程度の力で下方向に押圧可能に構成されるとともに、内圧に対して所望の位置を保持できるように構成される(図3に示す閉塞力P21および図5に示す保持力P22参照)。
【0037】
なお、第一実施形態のパンチ22は、流体式のシリンダを駆動源として動作するものとするが、これに限定されるものでない。
【0038】
マンドレル23は、素材60の内周面を支持するためのものである。図1および図2に示すように、マンドレル23は、その下端部が素材60の内径と略同一の外径を有する軸状部材であり、その軸心位置を素材60の軸心位置に合わせた状態で、素材60の上方に配置される。マンドレル23は、スリーブパンチ21の移動に伴って一体的に移動する。
【0039】
次に、製造装置1が用いられて行われる段付き軸状物の製造方法について説明する。
【0040】
まず、製造装置1は、図1に示すように、下型10の歯形ダイス12に素材60をセットする(図1に二点鎖線で示す素材60参照)。
【0041】
下型10の歯形ダイス12に素材60をセットした後で、図2に示すように、製造装置1は、上型20を下型10に近接させて、パンチ22の下端面を歯形ダイス12の上端面に当接させる。つまり、製造装置1は、下型10および上型20を閉塞状態にする。
【0042】
このとき、製造装置1は、素材60の上端部から下端部までを、下型10(歯形ダイス12)およびパンチ22によって隙間なく拘束している状態である。
【0043】
下型10および上型20を閉塞状態にした後で、図3に示すように、製造装置1は、素材60をスリーブパンチ21により下端側へ押圧する(図3に示すメイン力P11参照)。
【0044】
このとき、製造装置1は、パンチ22に対して作用する内圧で、パンチ22が上方向に移動しないように、パンチ22による下方向への押圧動作を行う(図3に示す閉塞力P21参照)。
これにより、製造装置1は、歯形ダイス12の歯形成形部12aに素材60を材料流動させて、歯部51を成形する。つまり、製造装置1は、鍛造加工によって歯部51を成形する。
【0045】
仮に、段部52を成形した後で歯部51を成形する場合、下型10および上型20による閉塞に段部52が干渉する。このため、図12に示すように、段部から歯形ダイスまでの間に大きな隙間が形成されてしまう。
この場合、下型および上型は、段部から歯形ダイスの上端部までの間において、素材を拘束できない(図12の歯部成形前に示す「型拘束なし」参照)。
【0046】
ここで、歯部51は、成形前後の素材60の変形度合いが大きいため、材料の流動抵抗が大きい。
このため、図12に示すような型拘束なしの状態で素材に歯部を成形した場合、歯部成形時に隙間にて座屈が発生してしまう(図12に示す座屈発生部位参照)。
【0047】
すなわち、鍛造加工によって歯部51を成形するとき、製造装置1は、素材60の上端部から下端部までを拘束する必要がある。
【0048】
そこで、段付き軸状物の製造方法では、図3に示すように、段部52よりも前に歯部51を成形することで、素材60の上端部から下端部まで隙間なく拘束し、歯部51を成形する。これにより、座屈が発生することなく歯部51を成形できる。
【0049】
このように、段付き軸状物の製造方法では、素材60の下端部から上端部までを、下型10および上型20によって拘束した状態で、素材60を下方向に向けて材料流動させて歯部51を成形する第一の工程を行う。
【0050】
歯部51を成形した後で、図4に示すように、製造装置1は、パンチ22を所定の間隔だけ上方向に移動させる。
このとき、製造装置1は、素材60およびパンチ22以外の製造装置1の構成部品(つまり、スリーブパンチ21、マンドレル23、ガイドダイス11、歯形ダイス12、およびノックアウト13)に対して、パンチ22を相対的に上方向に移動させる。
【0051】
つまり、製造装置1は、下型10による素材60の拘束状態を維持した状態で、上型20を下型10より離間させ、所定の間隔だけ素材60から上型20を引き上げる。
【0052】
このように、製造装置1は、素材60および下型10に対して、パンチ22を上方向に相対的に移動させ(パンチ22を下型10から離間する方向へ相対的に移動させ)、歯形ダイス12とパンチ22との間に所定の間隔のクリアランスCを形成する。このクリアランスCが形成された部分においては、上型20による素材60の拘束状態が解除される。
【0053】
クリアランスCを形成した後で、図5に示すように、製造装置1は、スリーブパンチ21により素材60を下端側へ押圧する(図5に示すメイン力P12参照)。
【0054】
このとき、製造装置1は、パンチ22に対して作用する内圧で、パンチ22が上方向に移動しないように、成形前と同じ位置を保持する(図5に示す保持力P22参照)。これにより、クリアランスCの大きさは保持されることとなる。
すなわち、製造装置1は、クリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させることにより、素材60の上下中途部に段部52を成形する。つまり、製造装置1は、鍛造加工によって段部52を成形する。
【0055】
このように、パンチ22は、クリアランスCを保持する機能を備える。
【0056】
段部52を成形した後で、製造装置1は、上型20を下型10より離間させて素材60を上型20より離型させ、ノックアウト13によって素材60を下型10より離型させる。
このようにして、製造装置1は、段付き軸状物50を製造する。
【0057】
ここで、段部52を成形するときには、成形前後の素材60の変形度合いが小さいため、段部52近傍の材料が流動するだけであるが、この材料流動に起因して、歯部51が引っ張られる。
【0058】
仮に歯部51と歯形成形部12aとの間に隙間がある場合、この引っ張りより隙間の分だけ歯部51が変形(例えば、歯部51の一部だけが拡径する等)してしまい、歯部51の精度を確保できない。
【0059】
このような場合としては、下型10および上型20によって歯部51を成形した後で素材60を下型10および上型20から離型させ、段部を成形する別の下型および上型を用いて段部52を成形する場合等がある。
【0060】
そこで、段付き軸状物の製造方法では、歯部51を成形した後で、パンチ22を上方向に移動させることで、素材60を下型10から離型させることなく、段部52を成形するためのクリアランスCを形成する。
【0061】
そして、この拘束状態を保持した状態で素材60に対して鍛造加工を行うことで、素材60を下型10から離型させることなく段部52を成形するのである。
【0062】
これによれば、歯形ダイス12と歯部51との間に隙間がない状態で段部52を成形できるため、引っ張りによる歯部51の変形を下型10(歯形ダイス12)によって規制できる。
つまり、段付き軸状物の製造方法によれば、段部52を成形するときに歯部51が変形しないため、歯部51の精度を確保できる。
【0063】
このように、段付き軸状物の製造方法および製造装置1では、座屈の発生を防止できるとともに歯部51の精度を確保できるため、歯部51が形成される段付き軸状物50を鍛造加工によって製造できる。
つまり、段付き軸状物の製造方法および製造装置1によれば、段付き軸状物50を鍛造加工だけで製造できるため、段付き軸状物50の加工コストを低減できる。
【0064】
また、第一実施形態のように、上型として一つの上型20で歯部51および段部52を成形する構成とすることで、段付き軸状物50の製造をより短時間で行うことができる。
【0065】
このように、パンチ22を上方向に移動させる工程は、下型10による素材60の拘束状態を維持した状態で、下型10と上型20とを互いに離間させて、下型10と上型20との間にクリアランスCを形成し、上型20による素材60の段部52を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程として機能する。
また、段部52を成形する工程は、第二の工程において形成されたクリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させて段部52を成形する第三の工程として機能する。
そして、第一の工程から第三の工程においては、製造装置1の上型として、素材60の上側部を拘束するとともに、第二の工程において形成されたクリアランスCを保持する拘束手段としてのパンチ22を備える、上型20を用いる。
【0066】
なお、上型20の構成は、第一実施形態に限定されるものでなく、例えば、歯部51を成形した後でパンチ22を上方向に移動させ、歯形ダイス12とパンチ22との間にシムを挟む構成であっても構わない。
この場合、パンチ22は、内圧によって上方向に移動しない程度の力で下方向に押圧すればよい。従って、パンチ22は、内圧に対して所望の位置を保持する必要がなくなり、製造装置1の構成をより簡素にできる。
【0067】
また、第一実施形態では、パンチ22を上方向に移動させてクリアランスCを形成したが、これに限定されるものでない。すなわち、下型10および素材60を上型20に対して相対的に下方向に移動させて、クリアランスCを形成しても構わない。つまり、下型10と上型20とを互いに離間させてクリアランスCを形成することができればよい。
【0068】
次に、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法について説明する。
第二実施形態では、図7に示すように、製造装置101が用いられて、段付き軸状物の製造方法が行われる。
【0069】
製造装置101は、下型110、上型としての第一の上型130、および上型としての第二の上型140を具備する。
【0070】
第二実施形態の下型110は、第一実施形態の下型10と同一の構成である。つまり、第二実施形態の下型110は、第一実施形態のガイドダイス11、歯形ダイス12、およびノックアウト13と同様に構成されるガイドダイス111、歯形ダイス112、およびノックアウト113を備える。
【0071】
第一の上型130は、第一実施形態の上型20と同一形状のスリーブパンチ131、パンチ132、およびマンドレル133を備える。
パンチ132は、スリーブパンチ131およびマンドレル133に対して相対的に上下方向に移動可能に構成されるとともに、鍛造加工時に作用する内圧で、上方向に移動しない程度の力で下方向に押圧可能に構成される。
つまり、第一の上型130は、内圧に対して所望の位置を保持するための機能を備えないという点が、第一実施形態の上型20と異なる。
【0072】
第二の上型140は、パンチ142の上下方向の長さが、第一の上型130のパンチ132の上下方向の長さよりも短い点を除いて、第一の上型130と同一の構成である(図7に示す矢印H参照)。つまり、第二の上型140は、第一の上型130のスリーブパンチ131およびマンドレル133と同様に構成されるスリーブパンチ141およびマンドレル142を備える。
【0073】
すなわち、下型110と第一の上型130と第二の上型140とは、互いに近接離間可能に構成される。
【0074】
また、第一の上型130および第二の上型140は、下型110に対して水平方向に相対的に移動可能に構成される(図7における紙面左右方向、図7に示す矢印参照)。
【0075】
次に、第二実施形態の製造装置101が用いられて行われる第二実施形態の段付き軸状物の製造方法について説明する。
なお、第二実施形態では、第一実施形態の素材60と同一形状の素材から、第一実施形態の段付き軸状物50と同一形状の段付き軸状物を製造するものとする。このため、段付き軸状物50および素材60は、第二実施形態においても、同一の符号を付して説明する。
【0076】
まず、製造装置101は、下型110の歯形ダイス112に素材60をセットするとともに、第一の上型130を下型110の上方にスライドさせる(図7に示す素材60の中心線Lおよび二点鎖線で示す素材60参照)。
そして、第一実施形態と同様に、下型110と第一の上型130とを近接させて、下型110および第一の上型130を閉塞状態にし、素材60の外周面の上端部から下端部までを、下型110および第一の上型130のパンチ132によって拘束する。
この状態で、素材60を第一の上型130のスリーブパンチ131により下端側へ押圧することにより材料流動させて、素材60に歯部51を成形する(図2および図3参照)。
【0077】
素材60に歯部51を成形した後で、図8に示すように、製造装置101は、第一の上型130を素材60から離型させ、第二の上型140を下型110の上方にスライドさせる(図8に示す矢印および素材60の中心線L参照)。
【0078】
第二の上型140を下型110の上方にスライドさせた後で、図9に示すように、製造装置101は、第二の上型140を下型110に近接させ、下型110および第二の上型140を閉塞状態にする(図9に示す段部成形前参照)。
このとき、第二の上型140のパンチ142は、第一の上型130のパンチ132よりもその上下方向の長さが短いため、下型110との間に上下方向に所定の長さのクリアランスCが形成される。このクリアランスCが形成された部分においては、第二の上型140のパンチ142による素材60の拘束状態が解除される。
また、このとき下型110による素材60の拘束状態は維持されている。
【0079】
下型110および第二の上型140を閉塞状態にした後で、製造装置101は、第二の上型140のスリーブパンチ141により素材60を下端側へ押圧する(図9に示すメイン力P12参照)。
【0080】
このとき、製造装置101は、第二の上型140のパンチ142に対して作用する内圧で、第二の上型140のパンチ142が上方向に移動しないように、第二の上型140のパンチ142による下方向への押圧動作を行う(図9に示す閉塞力P122参照)。これにより、クリアランスCの大きさは保持されることとなる。
すなわち、製造装置101は、クリアランスCを保持した状態で、素材60をクリアランスCに向けて材料流動させることにより、素材60の上下中途部に段部52を成形する。
【0081】
このように、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法は、歯部51を成形する第一の工程では、素材60の上側部を拘束する拘束手段として、パンチ132を備える第一の上型130を用いる。
また、クリアランスCを形成する第二の工程および段部52を成形する第三の工程では、素材60の上側部から段部52を成形する部分よりも上側までを拘束するパンチ142を備える第二の上型140を用いる。
【0082】
これによれば、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法および製造装置101は、歯部51を成形した素材60を下型110から離型させることなく段部52を成形できる。従って、座屈の発生を防止できるとともに歯部51の精度を確保できるため、歯部51が形成される段付き軸状物50を鍛造加工によって製造できる。
また、第二実施形態の段付き軸状物の製造方法および製造装置101によれば、内圧に対してクリアランスCを保持する機能が必要なくなる。このため、第二実施形態の製造装置101の構成をより簡素にできる。
【0083】
なお、段付き軸状物の製造方法および製造装置にて製造可能な製品形状は、第一実施形態に限定されるものでなく、例えば、中実状の段付き軸状物や内周面に歯部が形成される段付き軸状物であっても構わない。
【0084】
内周面に歯部251が形成される段付き軸状物250を製造する場合、製造装置201は、図10に示すように、外周面に歯形成形部214aが形成されるマンドレル214を下型210が備える。また、歯形ダイス212は、その内周面に歯形成形部が形成されず、単に素材260の外周面を拘束する。
【0085】
このような製造装置201は、第一実施形態と同様に、素材260の内周面に歯部251を成形する(図10およびに示すメイン力P211および閉塞力P221参照)。
そして、製造装置201は、図11に示すように、上型220を上方向に移動させてクリアランスCを形成し、段部252を成形する(図11に示すメイン力P212および保持力P222参照)。
【符号の説明】
【0086】
1 製造装置
10 下型
20 上型
50 段付き軸状物
51 歯部
52 段部
60 素材
C クリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造方法であって、
前記素材の一端部から他端部までを、下型および上型によって拘束した状態で、前記素材を一端側に向けて材料流動させて前記歯部を成形する第一の工程と、
前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程と、
前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持した状態で、前記素材を前記クリアランスに向けて材料流動させて前記段部を成形する第三の工程と、
を行う、
段付き軸状物の製造方法。
【請求項2】
前記上型として、
前記素材の他端側部を拘束するとともに、前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持する拘束手段を備える、上型を用いる、
請求項1に記載の段付き軸状物の製造方法。
【請求項3】
前記上型として、
前記素材の他端側部を拘束する拘束手段を備える第一の上型と、
前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段を備える第二の上型と、
を用い、
前記第一の上型は、前記第一の工程で用いられ、
前記第二の上型は、前記第二の工程および前記第三の工程で用いられる、
請求項1に記載の段付き軸状物の製造方法。
【請求項4】
一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、
前記素材の一端側部を拘束する下型と、
前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える上型と、
を具備し、
前記下型と前記上型とは、互いに近接離間可能に構成され、
前記下型と前記上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記上型の拘束手段によって拘束した状態で、
前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、
前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型の拘束手段による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、
前記下型と前記上型との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、
段付き軸状物の製造装置。
【請求項5】
前記上型の拘束手段は、前記クリアランスを保持する機能を備える、
請求項4に記載の段付き軸状物の製造装置。
【請求項6】
一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、
前記素材の一端側部を拘束する下型と、
前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第一の上型と、
前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第二の上型と、
を具備し、
前記下型と前記第一の上型および前記第二の上型とは、互いに近接離間可能に構成され、
前記下型と前記第一の上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記第一の上型の拘束手段によって拘束した状態で、
前記素材を前記第一の上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、
前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記第二の上型とを近接させて、前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間にクリアランスを形成し、前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、
前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記第二の上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、
段付き軸状物の製造装置。
【請求項1】
一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造方法であって、
前記素材の一端部から他端部までを、下型および上型によって拘束した状態で、前記素材を一端側に向けて材料流動させて前記歯部を成形する第一の工程と、
前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除する第二の工程と、
前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持した状態で、前記素材を前記クリアランスに向けて材料流動させて前記段部を成形する第三の工程と、
を行う、
段付き軸状物の製造方法。
【請求項2】
前記上型として、
前記素材の他端側部を拘束するとともに、前記第二の工程において形成されたクリアランスを保持する拘束手段を備える、上型を用いる、
請求項1に記載の段付き軸状物の製造方法。
【請求項3】
前記上型として、
前記素材の他端側部を拘束する拘束手段を備える第一の上型と、
前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段を備える第二の上型と、
を用い、
前記第一の上型は、前記第一の工程で用いられ、
前記第二の上型は、前記第二の工程および前記第三の工程で用いられる、
請求項1に記載の段付き軸状物の製造方法。
【請求項4】
一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、
前記素材の一端側部を拘束する下型と、
前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える上型と、
を具備し、
前記下型と前記上型とは、互いに近接離間可能に構成され、
前記下型と前記上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記上型の拘束手段によって拘束した状態で、
前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、
前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記上型とを互いに離間させて、前記下型と前記上型との間にクリアランスを形成し、前記上型の拘束手段による前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、
前記下型と前記上型との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、
段付き軸状物の製造装置。
【請求項5】
前記上型の拘束手段は、前記クリアランスを保持する機能を備える、
請求項4に記載の段付き軸状物の製造装置。
【請求項6】
一端部に歯部が形成されるとともに、前記歯部よりも他端側に段部が形成される段付き軸状物を、軸状の素材に対して鍛造加工を行うことで製造する段付き軸状物の製造装置であって、
前記素材の一端側部を拘束する下型と、
前記素材の他端側部を拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第一の上型と、
前記素材の他端側部から前記段部を成形する部分よりも他端側までを拘束する拘束手段、および前記素材を一端側へ押圧可能な押圧手段を備える第二の上型と、
を具備し、
前記下型と前記第一の上型および前記第二の上型とは、互いに近接離間可能に構成され、
前記下型と前記第一の上型とを近接させて、前記素材の一端部から他端部までを、前記下型および前記第一の上型の拘束手段によって拘束した状態で、
前記素材を前記第一の上型の押圧手段により一端側へ押圧することにより材料流動させて前記歯部を成形し、
前記下型による前記素材の拘束状態を維持した状態で、前記下型と前記第二の上型とを近接させて、前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間にクリアランスを形成し、前記素材の前記段部を成形する部分の拘束状態を解除し、
前記下型と前記第二の上型の拘束手段との間の前記クリアランスを保持した状態で、前記素材を前記第二の上型の押圧手段により一端側へ押圧して前記クリアランスに向けて材料流動させることにより前記段部を成形する、
段付き軸状物の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−35024(P2013−35024A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173084(P2011−173084)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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