殺菌組成物、方法及びシステム
少なくともEDTAの一つの塩を含む殺菌組成物を開示する。これらの組成物は広いスペクトルの抗菌活性及び抗真菌活性、並びに抗凝血性を有している。この殺菌組成物はまた、微生物スライムまたはバイオフィルムに浸透し破壊するという働きを示した。これらはまた、ヒト及び医療用途について安全であり、そして感染症を予防するために、または現存のまたは既存の感染症の増殖を低減するため及び/またはそれらの感染症を除去するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、多様な医療用途並びに工業的及び環境的衛生用途を含む一般的な衛生用途における使用のための殺菌組成物、方法及びシステム、に関する。本発明の組成物は、抗微生物、抗真菌、抗ウイルス及び抗アメーバ特性を有しており、また抗凝血剤としても作用することができる。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(C10H12N2Na4O8)の特定の塩及び組成物が特定の濃度及びpHレベルで用いられる。典型的な用途は、表面上または溶液中の微生物及び/または真菌生物、またはバイオフィルム等の複雑な形態中の微生物及び/または真菌生物、の存在を阻害し、低減しまたは除去することを含む。典型的な方法は、感染症の発生率を低減するために対象物の表面に抗菌コーティングを備えること、及び、微生物群の増殖を阻害し、または微生物群を低減または除去するために、洗い流す、浸す及び/またはすすぐことによって対象物及び/または表面を殺菌溶液に接触させることを含む。
【0002】
発明の背景及び先行技術の説明
医療分野等の衛生条件が重要である多くの分野において感染症は重大な問題である。問題となる感染症は細菌、真菌、アメーバ、原生動物及び/またはウイルスによってもたらされる。かつて確立されていた、感染症を予防すること及び/または感染症を低減または除去すること、の両面において難問に直面している。感染する環境は、対象物の表面、流動体及び流動管、及び/またはヒトまたは動物を含む。
【0003】
アルコール溶液及びイソプロピルアルコールワイプが表面の消毒に一般に使用されており、そして抗細菌活性を持つことが示されている。最も有効な抗微生物阻害作用は70%イソプロパノール溶液において見られる。この濃度のアルコール溶液はかなり高価でありそして容易に揮発する。そしてこのことが、実質的にそれらの有効性を損ない、またその費用を増加させている。さらに、イソプロパノール溶液はヒトの皮膚を含む表面及び多くの医療用途に対して使用することができるが、この濃度のアルコール溶液は、局所的な適用以外では医療目的でヒトに投与することができない。
【0004】
ヘルスケア分野においては、多様な型及び原因の感染症が一般的であり、そしてしばしば入院を長期化させることになり、そのことが高い入院費用につながっている。さらに悪いことに、年間90,000以上の患者の死亡が院内感染−すなわち、病院または他の医療環境において獲得された感染症−に起因すると考えられている。院内感染に対する監視は医療活動の不可欠な要素になっている。疾病管理予防センター(CDC)によって20年以上前に行われた研究は、院内感染の発生を減少させることに対するこれらの監視活動の有効性を実証している。しかしながら、院内感染問題に向けられた注意にもかかわらず、感染症の比率が劇的に減少してはおらず、依然として院内感染は重要なリスク及び健康上の問題である。
【0005】
医療分野及び獣医分野での感染症の原因の問題となる一つは、カテーテル、特に留置(in−dwelling)カテーテルに見られる。カテーテルは救命救急患者の管理において不可欠なものとなっているが、カテーテルの内部はしばしば感染症の主要な原因である。カテーテルは流動体、血液生産物、薬剤及び栄養剤の搬送のために使用されており、また、血液透析、血液ろ過、腹膜透析、血液サンプルの返却及び患者の状態の観察等のためにも使用されている。経皮(transcutaneous)カテーテルはしばしば、カテーテルの皮膚貫通によって感染される。総ての院内血流感染の70%が中心動脈カテーテルを使用した患者において発生していることが見つけられた:Daouicher et al. New Engl.J.Med.340:1−8(1999)。
【0006】
特に、ある処置の間、比較的長期間(例えば30日以上)、カテーテルは患者に埋め込まれ続けられなければならない。静脈内(IV)療法カテーテル及び尿道カテーテルは、通常、かなりの期間にわたって埋め込まれている。挿入部分への外傷及び患者への痛みのため、そのようなカテーテルは、高い頻度で取り出したり埋め込んだりすることができない。カテーテルで運ばれた細菌が尿路感染症の主要な原因と考えられている。妊娠中に末梢穿刺中心静脈カテーテルを経験する患者は感染合併症について重大なリスクにさらされているということがわかった:Ogura et al.Am.J.Obstet.Gynecol.188(5):1223−5(2003)。さらに、カテーテルが原因の敗血症につながる中心静脈カテーテル感染症は、家庭での非経口的栄養法の間に最も頻度の高い合併症として挙げられている:Reimund et al.Clinical Nutrition,21(1):33−38(2002)。感染症の危険のために、カテーテル法は、その処置が絶対に必要になった場合に限られるであろう。このことは患者の生命を著しく危うくする。
【0007】
カテーテルを含む最も処方される医療手段手順の後、カテーテルは食塩水で洗い流される。そして、カテーテル内で血液が凝固することを防ぎ、患者の血液がカテーテルに逆流することを妨げ、そしてカテーテル内にガスが入ることを防ぐために、カテーテルは食塩水またはヘパリン等の液体で満たされる。カテーテルを洗い流すことに使用される液体は“ロック−フラッシュ(lock−flush)”と呼ばれ、そして、洗い流された後または使用しない間、カテーテルを満たすために使用される液体は“ロック(lock)”溶液と呼ばれる。
【0008】
伝統的に、生理食塩水または抗凝血活性をもたらすヘパリン溶液によってカテーテルはロック(locked)されている。ヘパリンと食塩水は、しばしば組み合わせて使用される。生理食塩水は、一般に、末梢静脈カテーテルを短期間ロックするために使用され、そして抗凝血性または抗菌活性を有していない。ヘパリン溶液は、一般に、血管カテーテルをロックするために使用される。ヘパリンは抗凝血活性を有しているが、抗菌剤としては作用せず、そして感染を予防または改善しない。また、ロック溶液中のヘパリンがヘパリン−誘起の血小板減少症(ヘパリン注入を受けた患者の集団で発生する重大な出血性の合併症である)に関与しているであろうということについての強い示唆がある。
【0009】
タウロリジン(Taurolidine)、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを含むカテーテルロック溶液が提案されている。最近の刊行物(Kidney International,2002年9月)は、皮下(subcutaneous)カテーテルポートのロック溶液として70%アルコール溶液を使用することを記載している。抗凝血性ではなく、その溶液が血流に混入することに伴う危険があるので、ロック溶液としてのアルコールの使用は疑問である。発明者らは、また、70%アルコール溶液がバイオフィルムを根絶する活性を有しているということを示す証拠を知らない。
【0010】
新たな傾向及び感染症センター(CID)の推奨は、既存のカテーテル感染症を特定のまたは広範囲の抗生物質で体系的に処置することである。感染症を予防するためのロック溶液中での抗生物質の使用は推奨できない。既存のカテーテル感染症を処置するための抗生物質の使用はある種のリスクを含んでいる。そのリスクは、(1)抗生物質耐性菌株の発達の危険、(2)固着性(sessile)または深層(deep−layer)のバイオフィルム、細菌を死滅させられないという抗生物質の能力(それらを死滅するには毒となる濃度での抗生物質の使用を必要とするであろう)、及び(3)長期に及ぶ抗生物質治療の高い費用、を含む。殺菌性材料または抗生物質材料で被覆されたカテーテルも利用可能である。しかし、これらの被覆カテーテルは比較的短期間での限られた防御を提供するだけであろう。
【0011】
一般に、浮遊性(free−floating)の微生物は抗生物質に対して弱いようである。しかしながら、細菌及び菌類は、表面上に凝集しそして粘液性の保護物質(しばしば、バイオフィルムを形成する細胞外高分子物質(EPS)と呼ばれる)を生じることによって抗生物質に影響されなくなるようである。微生物が増殖すると、50より多い遺伝的なアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションが起こり、そのことがより抗生物質に耐性の微生物バイオフィルムの形成につながっているようである。医師が接触する細菌性感染症の三分の二はバイオフィルムに起因すると考えられている:Netting,Science News,160:28(2001)。
【0012】
バイオフィルム形成は細菌のライフサイクルにおける遺伝子的に調節された過程であり、それは、生物の細胞の生理機能に多数の変化をもたらし、その変化は、しばしば、プランクトン性(浮遊性)条件下での成長に比べて増加した(100〜1000倍に至る)抗生物質耐性を含む。生物が成長し、過密及び栄養素減少の問題が、新しい場所及び資源を捜し求める生物の発散(shedding)を引き起こす。新しく散らばった(shed)生物は速やかに元の浮遊性の段階に戻り、そして再び抗生物質に弱くなる。しかしながら、浮遊性の生物は患者の血流に入ることができ、そして、このことが、発熱等の臨床的徴候及びより重大な感染症に関連した症状を生じる血流感染症を引き起こす。バイオフィルムの固着性のラフト(rafts)ははがれ落ちそして心臓弁等の組織表面に付着する。そして、このことがバイオフィルムの増殖と心内膜炎等の重大な問題を引き起こす。
【0013】
工業的環境において、バイオフィルムの形成はよく起こることであり、一般に生物付着と呼ばれている。例えば、ろ過装置等の機械構造上でのバイオフィルム成長は、飲料水分配システムの生物的汚染の主な要因である。工業的環境でのバイオフィルム形成は材質の劣化、生成物の汚染、機械の閉塞及び処理システムでの熱移動の障害となり得る。バイオフィルムの形成と結果として起こる汚染は、また、食品生産及び加工施設における一般的な問題である。
【0014】
さらに事が複雑なのは、既存の感受性試験はバイオフィルム状態ではなく浮遊性の生物の抗生物質感受性だけを測定していることである。その結果、カテーテル等を通して、カテーテルに存在しているであろうバイオフィルム段階の生物に所望の効果をほとんど示さない量で抗生物質が患者に投与されることになる。バイオフィルム生物は、より浮遊性の生物を発散し続けるか、または不活発な状態となりそして明白な再発性感染症として増殖し得る。
【0015】
抗生物質の使用によってバイオフィルムを撲滅するためには、生物の特定の遺伝子的なバイオフィルム段階を死滅させるために必要とされる抗生物質の濃度を決定しなければならない。バイオフィルム撲滅のための最小濃度を提供するには高度に特化した装置が必要とされる。さらに、現在の診断手順は時間のかかるものであり、しばしば数日間(例えば5日間)、結果を得ることができない。この時間は、感染症の迅速な治療を不可能にする。この遅延及び感染症に対する正当化できる不安が、広いスペクトルの抗生物質の過度の使用及び継続した不要なカテーテルの撤去交換手順をもたらしている。広いスペクトルの抗生物質の過度の使用は、効果的に治療できない抗生物質耐性細菌菌株の発達をもたらし得る。不要なカテーテルの除去交換は痛み及び費用を伴い、そして、カテーテル挿入部位の外傷及び組織の損傷をもたらすであろう。
【0016】
抗生物質耐性菌株の発達のリスク等の抗生物質使用の複雑さと結びついたバイオフィルムの抗生物質耐性は、抗生物質による処置を魅力的でない選択肢としている。結果的に、抗生物質の使用は症候性の感染症に限られており、予防的抗生物質は、汚染を予防するためには一般的には使用されていない。バイオフィルムは多くの抗生物質について選択的な表現型耐性バリアー(selective phenotype resistance barrier)として作用するので、カテーテルに関連する感染症を撲滅するために、カテーテルはしばしば除去されなければならない。カテーテルの除去交換は時間がかかり、患者に緊張を引き起こすものであり、そして医療手順を複雑にする。それゆえ、カテーテルを体から除去する必要なく、生物、特にカテーテルの内部に存在している生物を死滅させるための簡便で効果的な方法に対する要求がある。
【0017】
細菌性及び真菌性の感染症に加え、アメーバ性の感染症も重大であり、苦痛を伴い、そして生命にかかわる可能性がある。例えば、アカントアメーバ(Acanthamoeba)のいくつかの種はヒトに感染することが知られている。アカントアメーバは、土壌及び塵中、淡水源、並びに汽水及び海水中で、世界中で見られるものである。それらは、しばしば、暖房、通気及び空調設備、加湿器、透析装置、そしてコンタクトレンズ用品においても見られる。細菌性及び真菌性の感染症に加え、アカントアメーバ性感染症はまた、他の医療器具及び、歯ブラシ、入れ歯及び他の歯科装置等を含む歯科器具と関連して、一般的なものである。アカントアメーバ性感染症はまた、しばしば、ヒトの体に接触するコンタクトレンズ及び他の医療器具の不適切な保存、取扱い及び消毒に起因し、そして、アカントアメーバは傷口及び外傷から皮膚に、そして、鼻孔及び目等に侵入し得る。
【0018】
問題となる感染症をもたらす多数の異なった種類の病原菌(多様な細菌及び菌類を含む)が存在する。そして、感染症を撲滅するための現行の方法は、一般に、限られた数の異なった病原菌に対して効果のある溶液を使用している。Rootらは、カテーテルに関連した特定の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)病原体分離株に対するインビトロ(in vitro)での二ナトリウムEDTAの使用を述べている(Antimicrobial Agents and Chemotherapy,32:1627−1633(1988))。
【0019】
EDTAは伝統的に金属キレート剤として使用されており、また、他の活性化合物と共に多様な目的のために使用されている。EDTAは、しばしば、血液標本採集または試験のためのインビトロ抗凝血剤として、そして抗酸化剤共力剤として低濃度で使用される。また、EDTAは、例えば、キレート剤、安定剤または医薬製剤の防腐剤として溶液に添加される。EDTAは多様な形態で存在することができる。例えば、あるものは二ナトリウム、三ナトリウム及び四ナトリウム塩等の塩の形態であり、また、他は鉄、銅、マグネシウム等の金属キレートである。EDTAのある種の形態は、アジュバントとしての他の物質と共に、感染したカテーテルを試験するための組成物において使用されている。臨床場面で使用される場合、またはヒトまたは動物に使用される組成物において使用される場合、その溶液は、通常、生理学的または中性のpH範囲に調整される。
【0020】
EDTAの非ナトリウム塩形等の添加剤とアルコールとの組み合わせがPCT公報WO02/05188に述べられている。PCT公報WO00/72906A1は抗生物質等の抗菌剤とカテーテル洗浄のためのキレート剤としてEDTAの非ナトリウム塩形であってもよい第二の剤との凍結乾燥混合物について記載している。米国特許No.5688516には、医療器具を被覆するための、及びカテーテルの感染を防ぐための、抗凝血剤、EDTA等のキレート剤及びミノサイクリン等の抗菌剤を含む組成物が述べられている。そのある実施例では、EDTAの二ナトリウム塩形が生理学的pH7.4にされそしてその組成物において使用されている。PCT公報WO99/09997は抗真菌剤とEDTA等のキレート剤との組み合わせによる真菌感染症の治療について記載している。
【0021】
感染症が問題となる他の分野は、コンタクトレンズ、強膜バックル(scleral buckles)、縫合材料及び眼内レンズ等の眼に関連して使用される医療器具及び材料である。特に、コンタクトレンズ等の義眼を消毒する方法の発達について強調されてきている。細菌性バイオフィルムが眼の感染症に関与しており、そして眼に接触するまたは眼に埋め込まれる非生物的な表面に細菌が生き残ることを可能にしていると考えられる。バイオフィルムはまた、眼の生物的な表面にも形成される:Zegans et al.,DNA Cell Biol.,21:415−20(2002)。重症型の角膜炎は、レンズ消毒液を汚染する原生動物アメーバによっても引き起こされ得る。コンタクトレンズの消毒のためのpHが6−8に緩衝された四ナトリウムEDTA及びアルカリ塩の眼科用の製剤が米国特許No.5300296に記載されている。米国特許No.5998488はEDTAとシクロデキストリン及びホウ酸等の他の物質との眼科用の組成物を記載している。
【0022】
歯科の分野において、歯科器具、及び固定装置、ブリッジ及び入れ歯等の歯科装置及び歯列矯正装置、等の口の中に置かれる器具は無菌状態に維持される必要があり、特に保存中及び口中に置かれる前には無菌状態であることが必要である。そうでなければ、感染が血流中に伝わり、より深刻な問題となり得る。米国特許No.6077501は、入れ歯洗浄組成物において他の活性成分と共にEDTAの使用を述べている。
【0023】
給水もまた細菌性または他のタイプに感染しがちである。貯水装置並びに給水管及び取水管も、しばしば感染する。医療オフィス及び歯科オフィスの液体を運ぶチューブの内部表面は、細菌感染及び成長に適した環境に存在しており、そして、微生物の付着及び防御性の高いバイオフィルム層の形成が、液体貯蔵及び供給装置においてしばしば問題となる。
【0024】
多様な環境において感染症を予防及び撲滅するための、改良された方法及び組成物に対する要求がある。そのような殺菌溶液は広範な抗微生物特性を有していなければならない。特に、溶液は、バイオフィルムに浸透しバイオフィルム中の生物を撲滅できなければならない。そのような方法及び溶液は予防方法及び既存の感染症の治療方法として十分に安全でなければならない。
【0025】
発明の要旨
本発明は、生理学的pHより高いpH及び処方される濃度において、EDTAの一つまたはそれより多い塩を含む、本質的にEDTAの一つまたはそれより多い塩からなる、または、EDTAの一つまたはそれより多い塩からなる、殺菌組成物を提供する。発明者らは、あるEDTA組成物が強力な殺菌活性を有し、広いスペクトルの抗細菌剤として作用し、そして病原性酵母の多くの菌株に対して抗真菌剤として作用するということを発見した。本発明のEDTA組成物は、病原性バイオフィルム生物を死滅させること、既存のバイオフィルムを減少及び撲滅すること、及びバイオフィルム形成を予防することについて非常に有効である。本発明のEDTA組成物及び組み合わせは、また、抗原生動物活性及び抗アメーバ活性を示す。既存の報告を基にすると、本発明のEDTA組成物にはさらに、抗ウイルス活性が期待できる。
【0026】
本発明のEDTA製剤はヒトに対する投与について安全であり、そして、生体適合性があり、非腐食性である。本発明の組成物はまた、抗凝血特性を有し、そしてカテーテルに関連した多様な感染症の予防及び/または治療に有用であり得る。本発明の殺菌溶液は、多様なカテーテルのためのロック溶液またはロックフラッシュ溶液としての用途を含む多くの用途を有しており、また、一連の医療、歯科及び獣医科用の装置、器具、及び他の対象物、表面などを消毒するための殺菌剤及び殺菌溶液としての用途を有している。さらに、本発明の殺菌溶液は、工業的においての、及び食品生産及び取扱い環境おいての、消毒用途を有している。
【0027】
本発明の殺菌組成物は、感染症を予防するために予防的に使用することができ、また、現存のまたは既存の感染症を低減及び/または除去するために使用することができる。望ましくない微生物をもった対象物または表面の感染を予防または処置するための方法が提供され、そのような方法は、表面または対象物を本発明の組成物と接触させることを含む。本発明の組成物はまた、細菌群及び/または真菌性病原菌の成長および増殖を阻害するために(バイオフィルムの形成及び増殖を阻害することを含む);原生動物個体群の成長及び増殖を阻害するために;アメーバ個体群の成長及び増殖を阻害するために;そしてアメーバ感染症(特にアカントアメーバ感染症)を予防するために、使用することができる。
【0028】
本発明はまた、細菌個体群(プランクトン性の細菌個体群及びバイオフィルム形態の細菌個体群の双方を含む)を実質的に撲滅するための方法、及びアカントアメーバ個体群を実質的に撲滅するための方法を提供する。そのような方法は、感染した対象物または表面、または感染が疑われる対象物または表面を本発明の組成物と接触させることを含む。それらの方法に使用される殺菌組成物に依存するが、多様な個体群の形成及び増殖を阻害するために、及び/または多様な個体群を実質的に撲滅するために、多様な接触時間が要求される。いろいろの組成物に対する適切な接触時間は実施例において与えられ、そしてまた、通常の実験によって決定することができる。
【0029】
一つの実施態様において、本発明の殺菌組成物は以下の特性の少なくとも四つ、好ましくは五つを有する。その特性は、抗凝血特性、プランクトン性形態の多様な細菌に対する阻害活性及び/または抗細菌活性、多様な真菌性病原菌に対する阻害活性及び/または抗真菌活性、固着性またはバイオフィルム形態の多様な細菌に対する阻害活性及び/または抗細菌活性、原生動物感染症に対する阻害活性、アカントアメーバ感染症に対する阻害活性、少なくとも適度な量で患者と接触した場合の安全性及び生体適合性、少なくとも適度な量で患者の血流と接触した場合の安全性及び生体適合性、及び工業的対象物及び表面との安全性及び適合性、である。
【0030】
本発明の組成物においては、EDTAの溶解性の塩が使用される。二ナトリウム塩、三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩を含むEDTAのナトリウム塩が一般に入手可能であり、通常使用される。また、所望の抗菌特性、抗真菌特性、抗原生動物特性及び/または抗アメーバ特性を有しており、そして所望の溶媒に十分に溶解するのであれば、他のEDTA塩(アンモニウム塩、二アンモニウム塩、カリウム塩、二カリウム塩、銅二ナトリウム塩、マグネシウム二ナトリウム塩、鉄ナトリウム塩、及びそれらの組み合わせを含む)を使用することもできる。EDTA塩のいろいろな組み合わせを使用することができ、そしてそのような組み合わせは特定の用途では好ましい。重要なことは、ほとんどの実施例において、本発明の実施例及び方法が既存の抗生物質を使用していないことであり、そのため、抗生物質耐性生物の発達に寄与しないということである。
【0031】
本発明の殺菌組成物は、生理学的pHより高いpHの溶液中で、一つまたはそれより多いEDTAの塩を含む、一つまたはそれより多いEDTAの塩からなる、または本質的に一つまたはそれより多いEDTAの塩からなる。好ましくは、そのような組成物は少なくとも8.0のpHを有する。好ましくは、本発明の組成物は8.5乃至12.5、または9.5乃至11.5、または10.5乃至11.5の範囲のpHを有する。EDTAの塩は、通常、少なくとも0.01%w/vの量で存在する。好ましい実施態様において、本発明の組成物は、EDTAの少なくとも一つの塩を0.2%乃至10%w/v、より好ましくは0.2%乃至6.0%w/v、そして最も好ましくは0.2%ないし4.0%w/vの量で含む。
【0032】
特定の実施態様において、本発明の組成物は、溶媒及び0.01%乃至10%w/vの濃度の少なくとも一つのEDTAの塩を含み、または本質的に溶媒及び0.01%乃至10%w/vの濃度の少なくとも一つのEDTAの塩からなり、そしてそこにおいて、その溶液は少なくとも9.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対する抗菌活性を有する。好ましくは、少なくとも一つのEDTAの塩は三ナトリウムEDTAまたは四ナトリウムEDTAである。溶媒は通常、水、食塩水、アルコール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一つの実施態様において、溶媒は水とエタノールの組み合わせである。
【0033】
本発明の殺菌組成物は多様な型の留置アクセス(in−dwelling access)カテーテル(流動体、血液生産物、薬剤及び栄養剤の搬送、流動体または血液の採取、透析、患者の状態の観察等のために使用される血管カテーテルを含む)のためのロック溶液及びロックフラッシュ溶液として使用することができる。本発明の殺菌溶液はまた、尿道カテーテル、鼻腔チューブ及び気管チューブ等のためのロック溶液及びロックフラッシュ溶液として使用することができる。後述の一般的な溶液パラメータはこれらの目的に適したものである。一つの実施態様において、生理学的pHより高いpHで、一つまたはそれより多いEDTAナトリウム塩を含む、一つまたはそれより多いEDTAナトリウム塩からなる、または本質的に一つまたはそれより多いEDTAナトリウム塩からなる、殺菌溶液が、留置血管内アクセス器具(in−dwelling intravascular access devices)の開通性を維持するために用いられる。また、カテーテル及び他の医療チューブ(鼻腔チューブ、気管チューブ等)を消毒するための方法が提供され、そしてその方法は、カテーテルまたは他の医療チューブを本発明の消毒組成物と接触させることを含む。
【0034】
別の実施態様において、入れ歯及び他の歯科用、歯列矯正用及び/または歯周用の器具等の医療器具、コンタクトレンズ及び他の眼用の器具、医療用及び獣医科用の装置及び器具、等のための消毒溶液として、及び、表面及び対象物を消毒するための消毒溶液として、生理学的pHより高いpHで、一つまたはそれより多いEDTAのナトリウム塩を含む、一つまたはそれより多いEDTAのナトリウム塩からなる、または本質的に一つまたはそれより多いEDTAのナトリウム塩からなる、本発明の殺菌組成物が提供される。また、そのような器具を消毒する方法が提供され、そしてその方法はそのような器具を本発明の殺菌組成物と接触させることを含む。通常、本発明の殺菌組成物は、歯ブラシを含む歯科用、歯列矯正用及び歯周用の器具のための浸漬用の溶液として使用することができる。また、本発明の殺菌組成物は、コンタクトレンズ及び他の眼用の器具、及び医療用及び獣医科用の装置等のための浸漬用の溶液として使用することができる。これらの用途のために、本発明の殺菌組成物は通例、溶液として製剤されるか、または適当な溶媒の添加によって溶液を形成するための乾燥形態として提供される。
【0035】
さらに他の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、殺菌剤、ワイプ及び抗細菌処置等としての局所使用のために設計された溶液、ゲル、クリーム及び他の製剤としての使用のために製剤される。本発明の殺菌組成物はまた、救急絆、包帯、創傷治癒剤及び器具等と関連して抗細菌剤として使用することができる。関連する実施態様において、本発明の組成物の一つ以上に浸漬されている、救急絆及び包帯等の傷治療における使用のためのカバーが提供される。
【0036】
本発明の殺菌組成物はまた、浮遊形態及び固着形態の双方における微生物個体群、及び多くの真菌、アメーバ及び原生動物の個体群を、阻害、減少または実質的に除去するために、水の貯蔵及び分配システム、水の精製装置、加湿装置及び除湿装置等の工業的環境、及び食品の生産、取扱い及び包装に関する環境において、使用することができる。本発明の殺菌組成物に、工業装置及び表面を接触、洗い流し及び浸漬することができる。また、長期間にわたる処置、特に頻繁に接近することが困難な場所における長期間にわたる処置を提供するために、徐放性の殺菌組成物製剤を提供することができる。
【0037】
発明の詳細な説明
多くの組成物において、安定剤または保存剤としての他の活性成分との組み合わせで、EDTAは低濃度で使用される。本発明の殺菌組成物は、通常、高い濃度のEDTAを含む。好ましくは本発明の殺菌組成物は、溶液の体積分の質量(w/v)として、少なくとも0.01%のEDTA塩を含み、そして15%(w/v)までのEDTA塩を含むことができる。多くの用途に対して、本発明の殺菌組成物は、好ましくは、少なくとも0.1%(w/v)のEDTA塩を含みそして10%(w/v)より少ないEDTA塩を含み、より好ましくは0.1%(w/v)乃至8.0%(w/v)のEDTA塩を含み、最も好ましくは0.1%(w/v)乃至6.0%(w/v)のEDTA塩を含む。後述の例となるな組成物は、水溶液中3.6乃至4.4%(w/v)のEDTA塩を含み、または、水とエタノールの混合物中0.01乃至0.2%(w/v)のEDTAを含む。
【0038】
多様な用途に対する望ましいEDTA塩の濃度は、使用されるEDTA塩またはその組み合わせ、処置される感染症の型に依存し、また、殺菌組成物に使用される溶媒にもある程度依存する。例えば、エタノールを含む水性溶媒が使用された場合、所望のレベルの活性を与えるのに必要とされるEDTA塩の濃度は、溶媒として水を使用した組成物において使用されるEDTA塩の濃度に比較して小さくすることができる。後述の典型的なデータに示すように、一つ以上のEDTA塩を含む殺菌組成物は、0.01%乃至30%またはそれより高い範囲の濃度で、阻害及び/または殺菌効果を示した。阻害、殺菌、抗真菌、バイオフィルム撲滅及び他の目的のための本発明の殺菌組成物における望ましいEDTA塩の“有効な”濃度は、後述の実施例において述べるように通常の実験によって決定することができる。
【0039】
英国薬局方(BP)は、二ナトリウムEDTAの5%溶液は4.0乃至5.5のpHを有すると明記している。BPはまた、三ナトリウムEDTAの溶液について7.0乃至8.0のpH範囲を明記している。水溶液中での他のEDTA塩のpH値は後の実施例10に記載している。生理学的pHにおいてEDTAのナトリウム塩は二ナトリウムEDTA及び三ナトリウムEDTAの混合物として存在しており、そしてEDTAの三ナトリウム塩が優勢である。米国においては、注射のために調製される薬剤の“二ナトリウム”EDTAは、一般に、水酸化ナトリウムでの滴定で6.5乃至7.5のpHである。このpHにおいて、EDTA溶液は、実質的には、より少ない割合の二ナトリウム塩と共に、主に三ナトリウムEDTAを含む。医療またはヘルスケア用途で使用されるEDTAのナトリウム塩を含む他の組成物は、通常、実質的に生理学的なpHに調節されている。
【0040】
ある実施態様において、本発明の殺菌組成物は、生理学的pHより高いpH、好ましくは8.0より大きいpH、8.5より大きいpH、9より大きいpH、9.5より大きいpHまたは10より大きいpHの溶液中で、EDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)を含む、本質的にEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる、またはEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる。別の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、8.5乃至12.5のpH、または9.5乃至11.5のpH、または10.5乃至11.5のpHの溶液中で、EDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)を含む、本質的にEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる、またはEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる。本明細書において、“EDTA塩”との語は二ナトリウム塩、三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、または他のEDTA塩等の単一の塩を意味することができ、また、それらの塩の組み合わせを意味することができる。EDTA塩の組成は、その組成物を製剤するために使用されるEDTA塩及びその組成物のpHの双方に依存する。所望のpH範囲(上述)でEDTAのナトリウム塩を含む本発明の殺菌組成物については、EDTAのナトリウム塩は主に二ナトリウム塩形及び三ナトリウム塩形の両方で存在している。
【0041】
一つの実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含む、または本質的にEDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなる。別の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含み、または本質的にEDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなり、そしてその組成物においてEDTAの少なくとも10%は四ナトリウム塩の形で存在している。また他の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含み、または本質的にEDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなり、そしてその組成物においてEDTAの少なくとも50%、または少なくとも60%は三ナトリウム塩の形で存在している。別の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの二ナトリウム塩、三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含み、または本質的にEDTAの二ナトリウム塩、三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなり、そしてその組成物において10%より少ないEDTAが二ナトリウム塩の形で存在している。
【0042】
殺菌組成物は、EDTAのナトリウム塩以外のまたはEDTAのナトリウム塩に加えて、異なった“有効な”pH範囲を有するEDTAの塩を含み、または本質的にそのような塩からなり、またはそのような塩からなる。阻害、殺菌、抗真菌、バイオフィルム撲滅及び他の目的のための本発明の殺菌組成物における望ましいEDTA塩に対する“有効な”pH範囲は、通常の実験で決定することができる。
【0043】
いくつかの実施態様において、本発明の殺菌組成物は上述のようにEDTA塩からなり、そして、殺菌溶液は溶媒(通例、水及び食塩水等の水性溶媒)に溶解したEDTA塩からなる。他の実施態様において、本発明の殺菌組成物は上述のように、本質的に、通例、水または食塩水中のEDTA塩からなる。本質的にEDTA塩またはEDTA塩の組み合わせからなる本発明の殺菌組成物は、実質的に、実質的な抗細菌活性及び/または抗真菌活性を有する他の活性物質を含まない。この観点において、実質的な抗細菌活性及び/または抗真菌活性は、pH10.5、濃度4.0%(w/v)の水溶液でのEDTAのナトリウム塩の抗細菌活性及び/または抗真菌活性の少なくとも50%の抗細菌活性及び/または抗真菌活性を意味する。
【0044】
いくつかの実施態様において、本発明の殺菌組成物は、特定のpH範囲で特定の濃度のEDTA塩を含み、そして、上述のEDTA塩に加えて、活性成分を含む他の物質を含むことができる。本発明の殺菌組成物に他の抗細菌成分または殺生物成分を含むことができるが、既存の抗生物質及び抗生物剤の使用は、通例、抗生物質耐性及び殺生物剤耐性生物の発達という良くない結果の帰結のため薦められない。いくつかの実施態様において、特定のpH範囲及び濃度のEDTA塩を含む本発明の殺菌組成物は、実質的に、実質的な抗細菌活性及び/または抗真菌活性を有する他の活性物質を含まない。
【0045】
EDTA塩の活性及び/または安定性に悪い影響を与えないという条件で、本発明の殺菌組成物に他の活性成分及び不活性成分を含めることができる。いくつかの用途のために、タンパク質分解剤を殺菌組成物に含めることができる。局所用途のために製剤された殺菌組成物は、例えば、多様なクリーム、エモルーメント(emoluments)及びアロエなどのスキンケア組成物を含むことができる。溶液の製剤で提供される本発明の殺菌組成物は、また、EDTA塩の活性及び/または安定性を妨害しないという条件で、他の活性成分及び不活性成分を含むことができる。
【0046】
本発明の組成物は溶液の形態または乾燥した形態で使用することができる。溶液において、EDTA塩は好ましくは溶媒に溶解しており、そして、その溶媒は水及び食塩水等の水溶液、またはEDTA塩が溶解する他の生体適合性のある溶液を含むことができる。アルコール溶液を含む別の溶媒を使用することもできる。一つの実施態様において、本発明のEDTA塩組成物は水とエタノールの混合物中で製剤される。そのような溶液は非常に有効であり、そして、そのような溶液は、EDTA塩の濃縮保存水溶液を調製し、そしてそれを所望の濃度のエタノールに加えることによって調製することができる。約0.01%乃至10%(w/v)のEDTA塩濃度が適しており、そして約0.1%乃至約10%(v/v)のエタノール濃度が効果的な殺菌組成物を提供する。いくつかの実施態様において、約1%(v/v)濃度のエタノールを含む水中の約2mg/ml(0.2%w/v)の濃度のEDTA塩が、広いスペクトルの細菌菌株に対して非常に有効である。EDTAのナトリウム塩が使用された場合、これらの殺菌組成物のpH範囲は上述の通りである。EDTA塩が溶解し、保存及び使用中においても溶液状態であるのであれば、生体適合性の非水溶媒を使用することもできる。
【0047】
本発明のEDTA溶液は、好ましくは無菌のそして非発熱性の(non−pyrogenic)状態で提供され、そして、それらは既存の方法で包装することができる。いくつかの実施態様において、本発明の殺菌性EDTA組成物は医療器具(例えば事前に充填されたシリンジまたは他の器具等)と関連して、またはその一部として提供されることができる。本発明の組成物は消毒された無菌の条件下で調製することができ、または、調製及び/または包装の後、適切な無菌化方法によって無菌化されることもできる。EDTA溶液の一回使用または複数回使用のバイアル、シリンジまたは容器(containers)が提供される。本発明のシステムは、本発明のEDTA溶液を含むそのようなバイアル、シリンジまたは容器を含む。
【0048】
本発明の組成物はまた、実質的に乾燥した形態、例えば、チューブまたは導管、またはカテーテル、導管、容器等の医療用または工業用器具、等の表面の実質的に乾燥した被膜等、で提供することができる。本発明のEDTA組成物の実質的に乾燥した形態は、溶媒の添加によって溶液の形態に戻すことができる粉末または凍結乾燥された形態で提供することができる。EDTA組成物の実質的に乾燥した形態は、また被膜として提供することができ、または、ゲルまたは他の型の担体に取り込まれることができ、またはカプセル化することができ、または包装することができ、そして被膜として表面にまたは容器内に提供することができる。本発明のEDTA組成物そのような実質的に乾燥した形態は溶液の存在下で製剤することができ、それによって、実質的に乾燥した組成物は上述の組成及び特性を有するEDTA溶液を形成する。ある実施態様において、異なったカプセル化または保存技術を使用することができ、それによって引き伸ばされた溶液への暴露においてEDTAの効果的な徐放が達成される。この実施態様において、実質的に乾燥したEDTAの溶液は、長期間及び/または複数回の溶液への暴露において殺菌活性を示すことができる。
【0049】
EDTAを含む組成物は、医療用途及びヒトへの投与に関連して確立された安全性の特徴を有している。ヒトの高カルシウム血症の治療のために、一日当たり、3000mgまでの二ナトリウムEDTAが三時間にわたって注入されており、そしてよく容認されている。EDTA塩はまた、医療用途及びヒトの健康用途に使用される多くの溶液において他の構成成分との組み合わせで存在しており、そして、インビトロ(in vitro)及びインビボ(in vivo)の双方で、ヒトに対して安全であることが確立されている。EDTA塩は適当な価格で容易に入手でき、そして溶液中で長期にわたって安定である。
【0050】
本発明の殺菌組成物の製剤と製造は、通常、容易である。一つの実施態様において、本発明の所望の殺菌組成物は、少なくとも一つのEDTA塩を精製水等の水性溶媒に所望の濃度で溶解し、そしてそのEDTA塩溶液を所望のpHに調節することによって製剤することができる。他の実施態様においては、本発明の所望の殺菌組成物は、EDTA塩またはその組み合わせが溶解して、高濃度で溶解しているEDTA塩溶液を与えるように、溶媒に少なくとも一つのEDTA塩を溶解することによって製剤することができる。追加の溶媒または構成成分を添加することもできる。また、溶解したEDTA塩組成物を溶液以外の形態(例えば、局所用製剤)として製剤することもできる。殺菌溶液はオートクレーブ、UV照射、ろ過、限外ろ過及び/または他の方法等の既存の手段によって無菌化することができる。EDTA溶液の好ましい浸透圧の範囲は240乃至500mOsM/Kgであり、より好ましくは300乃至420mOsm/Kgである。その溶液は、好ましくはUSP(米国薬局方)材料を使用して製剤することができる。
【0051】
三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、またはそれらの混合物を含む、三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、またはそれらの混合物からなる、または本質的に三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、またはそれらの混合物からなる、殺菌組成物が多くの用途について好ましく、そして、容易に入手できる二ナトリウムEDTA等の三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩以外のEDTAのナトリウム塩を使用して調製することができる。二ナトリウムEDTAの溶液は、本発明の組成物の所望のpH範囲より低いpHを有している。しかしながら、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは他の既知のpH調節材料を使用してpHを所望の範囲に調節することによって、二ナトリウム塩を使用して調製されたEDTA溶液は、好ましい本発明の二ナトリウム、三ナトリウム及び/または四ナトリウム塩のEDTA組成物に変換される。すなわち、組成物のpHが使用前に所望のpH範囲に調節されるのであれば、EDTA塩の異なった形態及び組み合わせを本発明のEDTA組成物の製造に使用することができる。一つの実施態様において、水溶液中で質量/体積基準で3%乃至5%量で二ナトリウムEDTAを溶解し、そして8.5乃至12.0の所望のpHを与えるに十分な量の水酸化ナトリウムを添加することによって、主に三ナトリウムEDTA及び四ナトリウムEDTAの混合物からなる殺菌組成物が提供される。
【0052】
上述した、少なくとも一つのEDTA塩を含む、本質的に少なくとも一つのEDTA塩からなる、または少なくとも一つのEDTA塩からなる、本発明の殺菌組成物は、他の多くの用途に対しても有用である。EDTA溶液は、医療用、歯科用及び獣医科用の表面及び対象物を浸漬、洗浄または接触するための殺菌溶液として使用することができる。本発明のEDTA溶液は、例えば、コンタクトレンズ及び他の眼用器具を保存及び/または消毒するために;入れ歯、ブリッジ、固定装置及び歯ブラシ等の歯科用器具を保存及び/または消毒するために;そして、医療用、歯科用及び獣医科用の器具及び装置を保存及び/または消毒するために、使用することができる。これらの用途において、器具及び表面は、細菌及び/または真菌の感染を実質的に除去するに十分な時間、本発明のEDTA溶液と接触し、またはEDTA溶液に浸漬することができる。本発明のEDTA組成物は、さらに、水及び他の流動体供給ラインを消毒するために使用することができる。流動体供給ラインの消毒は、本発明のEDTA組成物によってラインを断続的に洗い流すことによって行うことができる。同様に、本発明のEDTA組成物は、水の供給及び保存装置中のバイオフィルム、微生物(ある種のウイルス及び原生動物を含む)及び真菌の個体群を撲滅するために使用することができる。
【0053】
殺菌組成物としての特性及び効果を確証するために、本発明のEDTAを含む組成物を用いて数多くの試験及び手順を行った。いくつかの実験手順を以下に述べる。これらの手順及び実験結果は説明目的として提供されるものであって、本発明の態様を限定する意図ではない。
【0054】
実施例1
寒天希釈法を使用した、EDTAの異なった製剤に対する生物の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)データ
以下に述べる寒天希釈法を使用して、EDTAのいくつかの異なった製剤に対する多様なグラム陽性菌、グラム陰性菌及び酵母生物の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を確立した。また、EDTA塩の組み合わせについても、多様な生物に対するMIC及びMBCの試験を行った。
【0055】
細菌菌株が活性な病原菌であり、そしてカテーテルに関連したヒトの細菌感染症の典型的なものであるということを確かにするために、グラム陽性菌及びグラム陰性菌は、カテーテルに関連した感染症を持つヒトの患者から単離した。酵母生物は、重大な敗血症感染を持つ患者から採集した。その生物は、カタログに入れられており、そしてリーズ大学のPeter Kiteの研究室で保存されている。
【0056】
所望のEDTA塩濃度(w/v)になるように蒸留水に適切な試薬等級のEDTA塩を溶解することによって、EDTA塩及びEDTA塩の組み合わせの多様な溶液を調製した。各々のEDTA塩及びEDTA塩の組み合わせについて高濃度保存用EDTA塩溶液が調製され、そして多様な生物のMIC及びMBCの決定に使用された。二ナトリウムEDTAではなくEDTAの四ナトリウム塩及び三ナトリウム塩を用い、そして所望のpH範囲になるように溶液のpHを調節して、四ナトリウムEDTA及び三ナトリウムEDTAの溶液を調製した。EDTA塩の溶液は使用前に無菌化し、そして4℃で保存した。
【0057】
寒天希釈法の手順
寒天の作成
・2リットルの寒天培地をスチームバスに入れ、約1時間(溶けるまで)そのままにした。
・その寒天を50℃に冷却した。
・20個の無菌ガラスビン(125mL)に、それぞれ100mLの寒天培地を配分した。200mg/mLの保存溶液を使用して、これらに0.5、1.0、1.5、2.0、4、6、8、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90及び100mg/mLの四ナトリウムEDTA(または試験される他のEDTA塩またはEDTA塩の組み合わせ)を加えた。
・無菌のペトリ皿に20mLの寒天を注ぎ、放置した。さらに三つのプレートに注いだ。それらが含んでいるEDTAの濃度をプレートにラベルした。これを各濃度について行った。
・必要になるまで、これらのプレートを4℃の冷蔵庫で保存した。
プレートへの接種
・栄養培養液中で23のグラム陽性菌及び19のグラム陰性菌の培養物を、一晩成長させた。
・リン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて、各培養物を106cfu/mLに希釈した。
・自動プレート接種機を用いて、各プレートに21の菌を接種した。
・プレートを37℃で培養した。
・翌日、成長について+または−で記録した。
・MBCを決定するために、無菌ろ紙を使用して、成長したものを最初のプレートから新しいCled寒天プレートに移動した。
・そのレプリカプレートを37℃で一晩、培養した。
・翌日、成長について+または−で記録した。MIC及びMBCを、成長が無かった最も低い濃度として記載した。
【0058】
結果を図1A乃至5Cに示す。図1A乃至1Dは、本質的に、二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA;からなるEDTA塩の溶液に対する多くのグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0059】
図2は、本質的に、四ナトリウムEDTA;二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTA;からなるEDTA塩の溶液に対する酵母のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0060】
図3A及び3Bは、本質的に、銅二ナトリウムEDTA;マグネシウム二ナトリウムEDTA;及び鉄ナトリウムEDTA;からなるEDTA塩の溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0061】
図4A乃至4Cは、本質的に、銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA;からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0062】
図5A乃至5Cは、本質的に、四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA;からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0063】
いくつかのEDTA塩及びEDTA塩の組み合わせが、適度な濃度において、広いスペクトルの細菌菌株を阻害及び/または除去することに有効であった。他のEDTA塩の生体適合性はまだ確立されていないが、これまでの医療での試験及び使用は、ヒト及び動物でのEDTAナトリウム塩の使用のための良好な生体適合性を確立している。EDTAの四ナトリウム塩及び三ナトリウム塩は、広いスペクトルの病原性細菌に対して最も有効であった。さらに、それらのヒト及び獣医科での使用のための生体適合性は確立されている、または容易に確立されると考えられ、そして、それらは費用効果がよく、そして安定である。四ナトリウムEDTA塩は、さらに抗凝血剤として活性であり、そして水性溶媒によく溶解する。これらの要因及び上記の実験を基にして、四ナトリウムEDTA塩及び三ナトリウムEDTA塩が、本発明の殺菌組成物の最も有望な候補として選択された。
【0064】
実施例2
修飾したカルガリー装置法(Calgary device method)を使用した、四ナトリウムEDTAに対する生物の最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)データ
細菌汚染において、バイオフィルム形成は重要な要因である。実効的な殺菌組成物は、好ましくはバイオフィルムの増殖を低減する能力、またはバイオフィルムの形成を予防または阻害する能力を有している。そのため、発明者らは、候補の四ナトリウムEDTA殺菌溶液がバイオフィルムの形成を予防または阻害するかどうかを決定するための試験を行った。四ナトリウムEDTAに対する多様な生物の最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)を修飾したカルガリー装置法を使用して測定した。カルガリー法についてはOlsen et al.のCanadian Journal of Veterinary Research,66:86−92(2002)及び米国特許6599714に記載されている。方法と結果を以下に述べる。
【0065】
所望のEDTA塩の濃度(w/v)になるように蒸留水に試薬等級の四ナトリウムEDTA塩を溶解して四ナトリウムEDTA塩の溶液を調製した。固着性のまたはバイオフィルム形態の多様な生物に対するMBECを測定するために、高濃度の保存四ナトリウムEDTA塩の溶液を調製した。四ナトリウムEDTA溶液は使用前に無菌化し、4℃で保存した。
【0066】
方法
バイオフィルムの形成
・必要とする生物のミュラーヒントンの一晩の培養液(Muller Hinton overnight broth)100mLを使用した。
・96ウエルのマイクロタイタートレイの総てのウエルに200μlをピペットで加えた。96のピンを持った蓋を設置した。200rpmの速度、37℃で24時間、オービタルシェイカー(orbital shaker)で培養した。
【0067】
感受性試験
・上記で形成したバイオフィルムを使用した。
・必要な濃度の試験用薬剤250μlを含んだ新しい96ウエルのマイクロタイタートレイに蓋(ピンを持った)を設置した。37℃で1乃至24時間培養した(シェイカーを使用しない)。
・1、3、6及び24時間の間隔で、ねじ回しを挿入してピンをウエルの中に折ることによって、各濃度において蓋から四つのピンを除いた。
・各濃度において、三つのピンをPBSの5ml洗浄液に入れ、そして一度反転させた。
・その三つのピンを3mLのPBSに入れ、そして15分間超音波をあてた。2μlを3xCLEDプレート上に移し、無菌のプラスチック製スプレッダーを使用して引き延ばした。37℃で一晩培養した。翌日、コロニーの数を記録した。
・SEMのために、残っているルーズピン(loose pin)を4%生理食塩水600μlに置いた。
【0068】
多様な生物に対するMBECの値が図6に示している(この方法によって決定された四ナトリウムEDTA(w/v)のmg/mlで表している)。この結果は、試験された総ての微生物個体群について、40mg/mlの四ナトリウムEDTA(4%w/v)がバイオフィルムを撲滅する有効な濃度であることを示している。
【0069】
多様な微生物に対するMBEC実験によって得られた例となるデータを以下に示す。総ての実験で四ナトリウムEDTAが使用され、そして三回実施された。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
実施例3
患者の陽性なカテーテルに対するインビトロカテーテルロック処理手順
候補の40mg/ml(4%w/v)四ナトリウムEDTA溶液を用いたカテーテルロック処理手順を発展させ、そして、様々な微生物感染について陽性であったサンプルの患者の血液透析カテーテルに対して使用した。微生物感染が確認されたカテーテルに対して四ナトリウムEDTAを用いたカテーテルロック処理を行い、そして様々な時間でコロニー数を数えた。第一の実験で、総てのカテーテルを4%w/v四ナトリウムEDTA溶液で処理した。一方、第二の実験では、カテーテルを様々な濃度の四ナトリウムEDTA溶液で処理した。四ナトリウムEDTA溶液は、実施例1及び2で述べたようにして調製、保存した。手順と結果を以下に示す。
【0077】
方法:
・1mLの無菌のリン酸緩衝食塩水で各管腔を洗い流すことによって、感染の疑いのために取り除かれた腎臓血液透析カテーテルを選別した。血液寒天プレート上に広げられた1μL及び10μLのアリコートを用いて定量培養を行い、そして培養した。
・選別の後まで4℃でカテーテルを保存し、そして外部管腔をアルコールワイプで消毒した。
・ロック処理試験の前に、バイオフィルムの生育を確実にし、そして感染生物による総ての管腔内表面の全体的なコロニー化を確実にするために、選別された陽性のカテーテルを5mLシリンジを用いて栄養培養液でロックし、そして37℃で一晩培養した。
・一晩培養後、各カテーテル管腔5mLの無菌食塩水で洗い流し、その末端から二つの1cmの片を切り取り、そして各片を1mLの1M無菌塩化カルシウム中に置いた(薬剤の中和のため)。片の一つは走査型電子顕微鏡(SEM)のため、そして他の片は無菌のユニバーサル(universal)容器内での培養のためである。
・培養手順のため、そのユニバーサル容器を室温で15分間、超音波処理用バスに設置し、その後20秒間、ボルテックス撹拌(vortexed)した。
・1μl及び10μlのアリコートを血液寒天プレート上に加え、無菌のプラスチック製L形ロッド(rods)で引き延ばし、そして37℃で一晩培養して定量培養を行った。そして、翌日、コロニーを数えた。
・適当な濃度の四ナトリウムEDTAロック溶液でカテーテルを洗い流し、ロックし、そして37℃で18時間培養した。
・3時間、6時間及び18時間培養後に、カテーテル末端から二つの1cmの片を切り取り1mLの1M無菌塩化カルシウム溶液で中和した。
・各時間間隔で、上記のようにして定量的に数を数えた。そして、一つの片はSEMのために保存した。
【0078】
17の感染した腎臓血液透析カテーテルを濃度40mg/ml(4%w/v)の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物で処理した。結果を図7に示す。また、10の感染した腎臓血液透析カテーテル、一つの動脈カテーテル及び一つの静脈カテーテルを濃度20乃至100mg/ml(2乃至10%w/v)の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物で処理した。結果を図8に示す。
【0079】
これらの結果は、24時間処理後にほとんどの生物の個体群を死滅または劇的に減少させるのに40mg/ml(4%w/v)の四ナトリウムEDTAが有効であることを示している。四ナトリウムEDTAのこの濃度は、ヒトまたは他の動物に関する使用に対して安全であり、そして有効であると考えられる。そのため、四ナトリウムEDTAのこの濃度は、本発明の殺菌組成物及び方法において望ましい濃度である。
【0080】
実施例4
四ナトリウムEDTAのアカントアメーバに対する効果、及び四ナトリウムEDTA処理クレブシエラ(Klebsiella)のアカントアメーバに対する効果
数種類のアカントアメーバがヒトに感染する。ヒトに接触するコンタクトレンズ及び他の医療器具の不適切な保存の結果として、しばしばアカントアメーバ感染症が起こる。アカントアメーバは細菌個体を餌にしており、多くの処置に対して耐性である。上記のようにして調製した四ナトリウムEDTAのアカントアメーバ個体群に対する効果を以下のようにして試験した。また、溶媒としてページ食塩水(Pages saline)及び生理食塩水を使用して四ナトリウムEDTA組成物を調製した。クレブシエラと処理した四ナトリウムEDTAのアカントアメーバに対する効果についても、以下の方法によって実験的に試験した。
【0081】
四ナトリウムEDTAのアカントアメーバに対する効果
方法:
・試験前に、Klebsiella edwardsiiを持った新しい血液寒天プレートを37℃で18時間培養した。
・四ナトリウムEDTA(100mg/mL)の保存溶液を用いてページ食塩水中で22mg/mL及び44mg/mLの濃度の溶液を調製した。
・各濃度の溶液9mLを無菌ガラス試験管に入れた。コントロールとして別の無菌ガラス試験管に無菌のページ食塩水9mLを入れた。
・無菌のページ食塩水6mLにKlebsiella edwardsiiを懸濁した。マクファーランド標準(McFarland standard)5に調節した。
・連続した各希釈液及びコントロールに懸濁液1mLを加えた。Klebsiella懸濁液での希釈のため、各濃度は20mg/mL及び40mg/mLである。コントロールは四ナトリウムEDTAを含んでいない。生理食塩水についても総ての濃度で行った。
・ボルテックスで撹拌した。各試験管はマクファーランド0.5でKlebsiellaの懸濁を含んでいる。
・アカントアメーバプレート全体の表面を削り取り、1.5mLのページ食塩水に懸濁し、ボルテックスで撹拌した。
・アカントアメーバ懸濁液200μlを各連続した希釈液及びコントロールに加えた。
・試験管を24時間、30℃の培養器に置いた。
・培養後、各ユニバーサル(universal)を3000rpmで10分間遠心分離した。
・上澄みを捨て、沈殿物を再懸濁した。
・各希釈液及びコントロール10μlを、二組、Klebsiella地の非栄養寒天プレートに加えた。移動を防ぐために各プレートの中心に溝を作り、そして各サイドに試験を行う希釈液10μlを加えた。
・各培養の個所に黒のマーカーペンで印をした。
・プレートを30℃で72時間培養した。
・各培養個所で、10倍の接眼レンズの光学顕微鏡を用いたプレートの直接可視化によってアカントアメーバの成長を観察した。
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
この結果は、ページ食塩水及び生理食塩水中の20乃至40mg/ml(2乃至4%w/v)の四ナトリウムEDTAが、48時間の処理後、アカントアメーバ個体群を減少させること、または実質的に除去することに有効であるということを示している。溶媒として水を使用して調製した四ナトリウムEDTA組成物も有効であった(データは示していない)。これらの結果は、本発明の殺菌組成物が、コンタクトレンズ、及び歯科用、矯正歯科用及び/または歯周用器具を含む多様な医療用装置及び器具のための浸漬用溶液としての用途に適しているということを示している。本発明の殺菌組成物はまた、純粋及び海水の保存及び分配システム、暖房、通気及び空調設備、加湿器及び透析装置等を含む他の場面でアカントアメーバの個体群を実質的に除去することにも有効である。
【0086】
アカントアメーバは細菌を餌にする。そのため、発明者らは、本発明の殺菌性EDTA組成物と処理した細菌個体群が、処理した細菌に対するアカントアメーバの摂食行動に影響があるかどうかを試験した。
【0087】
四ナトリウムEDTA処理Klebsiellaのアカントアメーバに対する効果
方法:
・試験前に、Klebsiella edwardsiiを持った新しい血液寒天プレートを37℃で18時間培養した。
・四ナトリウムEDTA(100mg/mL)の保存溶液を用いてページ食塩水中で22mg/mL及び44mg/mLの濃度の溶液を調製した。
・各濃度の溶液9mLを無菌ガラス試験管に入れた。コントロールとして別の無菌ガラス試験管に無菌のページ食塩水9mLを入れた。
・無菌のページ食塩水6mLにKlebsiella edwardsiiを懸濁した。マクファーランド標準5に調節した。
・連続した各希釈液及びコントロールに懸濁液1mLを加えた。Klebsiella懸濁液での希釈のため、各濃度は20mg/mL及び40mg/mLである。コントロールは四ナトリウムEDTAを含んでいない。生理食塩水についても総ての濃度で行った。
・ボルテックスで撹拌した。各試験管はマクファーランド0.5でKlebsiellaの懸濁を含んでいる。
・試験管を37℃で一晩培養した。
・翌日、300rpmで10分間、遠心分離した。上澄みを捨て、新しい10mlの生理食塩水またはページ食塩水を加え、再懸濁し、そして再び遠心分離した。上澄みを捨て、1mlの生理食塩水またはページ食塩水に懸濁した。
・アカントアメーバプレート全体の表面を削り取り、1.5mLのページ食塩水に懸濁し、ボルテックスで撹拌した。
・アカントアメーバ懸濁液200μlを食塩水9mlの入った試験管3本及びページ食塩水3mlの入った試験管3本に加えた。Klebsiellaとの培養で使用されたEDTA濃度のように、各試験管に印を付けた。
・Klebsiellaの再懸濁液1mlをアカントアメーバを含む適切な試験管に加えた。
・試験管を30℃で24時間、培養器中に置いた。
・試験管の別のセットを準備し、上述のようにして、37℃で一晩、EDTAとKlebsiellaを培養した。
・培養後、アカントアメーバを含む各試験管を3000rpmで10分間遠心分離した。
・上澄みを捨て、沈殿物を再懸濁した。
・各希釈液及びコントロール10μlを、二組、Klebsiella(EDTAと培養していない)地の非栄養寒天プレートに加えた。移動を防ぐために各プレートの中心に溝を作り、そして各サイドに試験を行う希釈液10μlを加えた。
・各培養の個所に黒のマーカーペンで印をした。
・プレートを30℃で培養した。
・各培養個所で、10倍の接眼レンズの光学顕微鏡を用いたプレートの直接可視化によってアカントアメーバの成長を観察した。
・アカントアメーバ懸濁液の残りを、新しい生理食塩水または新しいページ食塩水の入った試験管の新しいセットに加えた。
・事前にEDTAと一晩培養したKlebsiellaを洗浄し、再懸濁し、そしてアカントアメーバの入った適切な試験管に加えた。
・試験管を30℃で一晩培養した。
・培養後、各ユニバーサルを3000rpmで10分間遠心分離した。
・上澄みを捨て、そして沈殿物を再懸濁した。
・各希釈液及びコントロール10μlを、二組、Klebsiella(EDTAと培養していない)地の非栄養寒天プレートに加えた。移動を防ぐために各プレートの中心に溝を作り、そして各サイドに試験を行う希釈液10μlを加えた。
・各培養の個所に黒のマーカーペンで印をした。
・プレートを30℃で培養した。
・各培養個所で、10倍の接眼レンズの光学顕微鏡を用いたプレートの直接可視化によってアカントアメーバの成長を観察した。
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】
これらの結果は、アカントアメーバの成長を抑止することができ、そして、アカントアメーバが餌にする細菌個体を本発明の殺菌性EDTA組成物で処理することによってアカントアメーバ個体群を実質的に除去することができるということを示している。濃度20乃至40mg/mL(2乃至4%w/v)の四ナトリウムEDTAを含む殺菌性EDTA組成物が有効であった。これらの結果は、コンタクトレンズ、及び歯科用/矯正歯科用/歯周用器具を含む多様な医療用装置及び器具のための浸漬用溶液としての用途、及び純粋及び海水の保存及び分配システム、暖房、通気及び空調設備、加湿器及び透析装置等を含む他の用途に対する本発明の殺菌組成物の実用性を立証している。
【0091】
実施例5
四ナトリウムEDTA組成物が、微生物のシリコンチューブへの付着または密着を予防するかどうかの確認を行った。シリコンチューブへの微生物の付着及び密着を予防することができれば、バイオフィルムの形成を低減することができる。実験方法と得られた結果を以下に示す。
【0092】
方法:
・管腔内部をふさぐために1cm片のシリコンチューブを溶融したワックスで満たし、そして4℃で固めた。
・コントロールとして、無菌のリン酸緩衝食塩水(PBS)30mLに4片のシリコンチューブを入れた。4%四ナトリウムEDTA30mLに8片のシリコンチューブを入れた。
・30分後、PBS中の4片及び4%四ナトリウムEDTA中の4片を熱ブロック上のきれいな容器に移し、乾燥した。
・残りの4片を30mLの無菌PBSに移して洗浄し、そしてこれまでのように空気乾燥した。
・乾燥後、12片総てを105cfu/mLの生物の混合物(栄養培養液中、37℃でKlebsiella pneumoniae及びCNS細胞を一晩培養したもの)に移し、37℃で培養した。
・30分後、各型の2片を分離し、30mLの無菌PBSで2回洗浄した。これまでのように空気乾燥した。各型の汚染を予防するために、別々に洗浄し別々の乾燥容器を使用した。
・各片を遠心分離管の1mLのPBSに移し、超音波水浴で15分間超音波処理した。
・各試験管を、二組、自動プレート培養器上、プレートに加えた、対数希釈の50μl
・1/10希釈の各試験管を、二組、プレートに加えた
・プレートを37℃で一晩培養した。自動プレート読取器ProtoCOLでコロニー数を読み取った。6時間後についても行った。
【0093】
コントロールのカテーテル片及びEDTAで処理したカテーテル片の結果を以下に示す。
【0094】
【表12】
【0095】
ニート(neat)のEDTA溶液の結果がより再現性があることが判明したので、これらの結果をさらに分析した。各片は1mLの溶液に置かれたので、mL当たりの数は片当たりの数に等しい。
【0096】
【表13】
【0097】
【表14】
【0098】
Klebsiella+CNSで24時間で繰り返した。
【0099】
【表15】
【0100】
【表16】
【0101】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する結果。
【0102】
【表17】
【0103】
【表18】
【0104】
これらの結果は、空気乾燥のカテーテル片及び洗浄したカテーテル片の双方において、細菌個体群の少なくとも短時間の減少を実証している。
【0105】
実施例6
四ナトリウムEDTAをエタノールと組み合わせた場合のMBC値の変化
単独のEDTA溶液、単独のアルコール溶液及びEDTA/アルコール溶液の効果を試験するために、四ナトリウムEDTAの濃度(0、0.1、0.5、1、2、3、4及び8mg/ml、w/v)の溶液を水及びエタノールを用いて(最終のエタノール濃度が、水中、0、0.1、0.5、1、5、10、20及び40%になるように)調製した。蒸留水で四ナトリウムEDTAの高濃度の保存溶液を調製し、そして適当なエタノール濃度になるようにその高濃度の保存水溶液にエタノールを加えた。
【0106】
方法:
・栄養培養液中、37℃で一晩、生物を培養した。
・アルコールと四ナトリウムEDTAの保存溶液で96ウエルプレート(一つの培養につき一つ)のグリッドパターンを満たした。0、0.1、0.5、1、5、10、20及び40%のアルコール濃度(v/v)でイソプロピルアルコールを含む水溶液中で、0、0.1、0.5、1、2、3、4及び8mg/mlの四ナトリウムEDTA濃度(w/v)のEDTA溶液を使用した。
・各ウエルは各希釈液150μlと50μlの1x108cfu/mLの生物を含む。
・5分、6時間及び24時間後、96ピンの蓋をプレート上(そして各ウエル内に)に置き、そしてその蓋を各ウエルに300μLの新しい栄養培養液が入った96ウエルに移動することによって、各ウエルを培養した。37℃で一晩培養した。その培養の間、微生物を接種した各プレートを37℃で培養した。
・24時間後、各ウエルの濁度を記録した。
【0107】
いくつかの生物に対する結果を以下に示す。
【0108】
【表19】
【0109】
四ナトリウムEDTA水溶液がエタノール(単独)溶液より効果的に試験した微生物を死滅させた。四ナトリウムEDTAのアルコール溶液との組み合わせが最も低い濃度で試験した微生物を死滅させた。1%アルコール溶液中の2mg/ml(0.2w/v)四ナトリウムEDTAが優れた結果を与え、試験した総ての生物に抗細菌効果を示した。この殺菌溶液は、四ナトリウムEDTAとエタノールの低濃度において、四ナトリウムEDTA水溶液単独またはエタノール単独より効果的であった。さらに、それは費用効果が高く、安全で、そして製造及び使用が容易である。局所使用のための本発明の殺菌組成物は水性溶媒及びエタノールの混合溶媒中のEDTA塩を含む。
【0110】
実施例7
エタノール中の四ナトリウムEDTAの溶解度及びpHに及ぼす影響
エタノール中の四ナトリウムEDTAの溶解度が試験され、そしてアルコール溶媒中の多様な四ナトリウムEDTA溶液のpHが測定された。
【0111】
方法:
・1.5mLサイズのエッペンドルフチューブに10乃至100mgの四ナトリウムEDTAを、二組、量り分けた。74%エタノール1mLを各チューブに加えそして30秒管ボルテックスで撹拌した。
・量り分けた四ナトリウムEDTAの二組のセットに、0.5ml無菌蒸留水を加えボルテックスで撹拌し、そして74%エタノール0.5mlを加えた。
・四ナトリウムEDTAのチューブのそれぞれで、溶解度が観察された時点のpHの試験を行った。
【0112】
実験結果は、四ナトリウムEDTAが74%エタノール溶液に完全に不溶であることを示した。実験結果はさらに、四ナトリウムEDTAが10乃至100mg/ml、w/vの濃度で蒸留水に溶解された場合、エタノールの添加によっても四ナトリウムEDTAが溶液中にとどまっていることを示した。好適な技術は、まずEDTA塩を水溶液に溶解し、それからEDTA塩が溶解しにくいまたは不溶のエタノールまたは別の溶媒を添加することを含む。この方法で調製されたEDTA塩の溶液は、長期間安定であることが期待される。多様な溶液について測定されたpH値は以下の通りであった。
【0113】
74%エタノール単独 pH7.8
水 pH7.1
+10mg四ナトリウムEDTA pH9.0
+20mg四ナトリウムEDTA pH10.8
+40mg四ナトリウムEDTA pH11
+80mg四ナトリウムEDTA pH11.15
+100mg四ナトリウムEDTA pH11.25
【0114】
実施例8
四ナトリウムEDTA溶液に対する121℃でのオートクレーブ処理の影響
使用前に四ナトリウムEDTA溶液を無菌化するためにオートクレーブを使用できるかどうかを判断するために、四ナトリウムEDTA溶液に対するオートクレーブ処理の影響についての試験を行った。
【0115】
方法:
・無菌水中の0、20、80及び100mg/mLの四ナトリウムEDTA溶液、及び50℃の無菌溶融寒天培地中の0、20、80及び100mg/mLの四ナトリウムEDTA溶液を、二組、作成した。
・一組を室温に置き(加熱しない)、他方をオートクレーブした(加熱した)。
・翌日、総ての寒天容器を蒸し器に設置し、40分間で溶融した。
拡散区域の測定:
・穿孔器を使用して、新しい16の血液寒天プレートに二つの穴を開けた。
・0.5マクファーランドのCNSの懸濁液を調製し、無菌綿棒でプレート上に引き延ばして培地を作成した。
・それぞれの四ナトリウムEDTA溶液150μlを、二組、打ち抜いた穴に入れ、37℃で一晩培養した。
・翌日、拡散した区域を測定し、記録した。
【0116】
区域の大きさ(mm)で測定された結果を以下に示す。コントロールの区域の大きさを濃度に対してプロットし、試験サンプルの実際のEDTA濃度を決定した。以下に示す。これらの結果は、無菌水中であろうと寒天中であろうと、四ナトリウムEDTA組成物をオートクレーブ処理することは、四ナトリウムEDTA組成物の抗菌活性に実質的に影響しないことを示している。
【0117】
【表20】
【0118】
実施例9
EDTAの異なった製剤に対する121℃でのオートクレーブ処理の影響
使用前に多様なEDTA溶液を無菌化するためにオートクレーブを使用できるかどうかを判断するために、EDTA溶液の異なった製剤に対するオートクレーブ処理の影響についての試験を行った。使用された方法と結果を以下に示す。
【0119】
方法:
寒天の作成
・50mLの寒天培地溶液を7つの100mL無菌ガラスボトルに加えた。
・第一のボトルにはEDTA粉末を加えない(0とラベルした)。
・第二のボトルに2000mgのEDTA粉末を加えた(40mg/mL オートクレーブとラベルした)。
・第三のボトルに4000mgのEDTA粉末を加えた(80mg/mL オートクレーブとラベルした)。
・第四のボトルに5000mgのEDTA粉末を加えた(100mg/mL オートクレーブとラベルした)。
・第五乃至七のボトルにはEDTAを加えない(しかし40、80及び100mg/mL 非オートクレーブとラベルした)。室温に置いた。
・これらの各EDTA製剤について試験した。オートクレーブとラベルした総てのボトルを、121℃で20分間、オートクレーブ処理した。
・翌日、総てのボトルをスチームバスに入れ、寒天を注げるように溶融した。
・溶融後、50℃に冷却し、そして非オートクレーブとラベルしたボトルに適切な量のEDTAを加え、総てのボトルについて試験の準備をした。
拡散区域の測定
・穿孔器を使用して、新しい7の血液寒天プレートに二つの穴を開けた。
・0.5マクファーランドのCNSの懸濁液を調製し、無菌綿棒でプレート上に引き延ばして培地を作成した。
・各ボトルの150μlを、2つの別々の打ち抜いた穴に入れ、37℃で一晩培養した。
・各EDTA製剤について実施した。
・翌日、拡散した区域を測定し、記録した。二組の穴を使用し、区域当たり二つの測定を行った。
【0120】
銅及び鉄EDTA溶液は区域を生じなかった。そのため、これらの溶液に対する熱の効果はこの方法では測定できない。二アンモニウムEDTA、二カリウムEDTA及びマグネシウムEDTA溶液について測定した区域の大きさを以下に示す。コントロール(加熱なし)の区域の大きさを濃度に対してプロットし、試験サンプル(加熱)の実際のEDTA濃度を決定した。以下に示す。
【0121】
【表21】
【0122】
【表22】
【0123】
これらの結果は、オートクレーブ処理がほとんどのEDTA塩組成物の効果を減じていないことを示している。そのため、無菌の殺菌組成物を提供するため、調製後、本発明の殺菌組成物のオートクレーブ処理を行うことができる。
【0124】
実施例10
EDTA塩、塩化カルシウム及びクエン酸ナトリウムのpH値
溶媒として蒸留水を用い、特定の濃度において、多様なEDTA塩、塩化カルシウム及びクエン酸ナトリウムのpH値を測定した。結果を以下に示す。
【0125】
EDTAの遊離酸 10% pH4.7
二アンモニウムEDTA 10% pH4.38
カルシウムナトリウムEDTA 10% pH6.68
二カリウムEDTA 10% pH4.5
銅EDTA 10% pH6.15
四ナトリウムEDTA 10% pH11.6
四ナトリウムEDTA 2% pH11
TS EDTA中和塩化カルシウム pH7.3
塩化カルシウム 1モル濃度 pH3.8
クエン酸ナトリウム 50%、25% pH8.5
【0126】
実施例11
EDTA溶液の抗凝血特性の確認
以下の方法によってEDTA溶液の抗凝血特性を確認した。
【0127】
方法:
・pHが11.0乃至11.6に調節された、濃度0.5乃至100mg/mLの四ナトリウムEDTA溶液または二ナトリウムEDTA溶液の100μlアリコートをプラスチック製キャップ付チューブに加えた。
・健康なボランティアから採取した新鮮な血液900μLをEDTA溶液の各アリコートに加え、一定間隔でチューブを反転させることによって穏やかに混合した。
【0128】
EDTA溶液を含まない、血液を含むコントロールのチューブは、10乃至23分という凝固時間であった。二ナトリウムEDTA溶液を含むチューブの凝固時間は、総て5日を超えていた。1mg/mLより大きい濃度の四ナトリウムEDTAのチューブの凝固時間は、5日を超えていた。0.5mg/mL濃度の四ナトリウムEDTAのチューブは28分で凝固した。それゆえ、四ナトリウムEDTAは1mg/ml(1%w/v)を超える濃度で抗凝血剤として有効である。
【0129】
実施例12
四ナトリウム塩懸濁液の浸透圧
標準的な実験室技術を用いて、水及び生理食塩水中の多様な濃度の四ナトリウムEDTA溶液の浸透圧と赤血球溶解の試験を行った。各濃度のEDTA溶液2mlに50μlの血液を2時間加えることによって赤血球溶解の試験を行った。血漿浸透圧は275乃至295m/osmolであった。
【0130】
【表23】
【0131】
実施例13
人工尿結晶(Artificial Urine Crystal:AUC)の溶解に対する三つのEDTA塩の効果
尿道カテーテルについての一つの問題は、カテーテル表面に尿結晶が堆積することである。尿結晶の堆積物は微生物のコロニー化及び/またはバイオフィルムの形成、並びにカテーテルの流量の減少、を促進し得る。そのため、尿道カテーテルに関連して、尿結晶の形成を低減する消毒組成物を使用することが好ましい。標準的な実験室技術を用いて、人工尿結晶の溶解に対する三つのEDTA塩溶液の効果について試験を行った。
【0132】
材料:
・25mlプラスチック製ユニバーサル容器内に人工尿及びウレアーゼを加えて45℃で7日間培養した。
・100mg/mlの二アンモニウムEDTA、二カリウムEDTA及び四ナトリウムEDTAの溶液。
【0133】
方法:
・4000rpm、2分間で人工尿結晶を遠心分離する。
・上澄みをデカントし、結晶を水で洗浄し、そして遠心分離した。
・結晶を水1mlに再懸濁し、そして200μlのアリコートを四つのユニバーサル容器に加えた。
・100mg/mlの各EDTAの溶液4ml及びコントロールとしての水4mlを各ユニバーサル容器に室温で加えた。
・1、2、及び3時間後にコントロールに対する結晶の溶解を目視観察した。
【0134】
結果を以下に示す。水溶液に比べて総てのEDTA塩溶液が尿結晶堆積物を減少させた。それゆえ、EDTA塩溶液は尿道カテーテルへの使用に適している。
【0135】
【表24】
【0136】
特許及び非特許文献を含む、本明細書で引用した総ての参考文献を、その全体を参考資料として本明細書に取り込む。
上述の明細書において本発明はある好ましい実施態様との関係で記述し、そして多くの詳細を例証目的で説明しているが、本発明はその他の実施態様を許容し、そしてここで記述したある種の詳細を本発明の基本原理から外れることなく大きく変えることができるということが、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】図1Aは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図1B】図1Bは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図1C】図1Cは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図1D】図1Dは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図2】図2は、寒天希釈法を使用した、EDTAの異なった製剤に対する多様な真菌生物のMIC及びMBCを示している。実験方法は実施例1に記載した。真菌生物はヒトの患者から採集した。
【図3A】図3Aは、本質的に銅二ナトリウムEDTA;マグネシウム二ナトリウムEDTA;及び鉄ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図3B】図3Bは、本質的に銅二ナトリウムEDTA;マグネシウム二ナトリウムEDTA;及び鉄ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図4A】図4Aは、本質的に銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図4B】図4Bは、本質的に銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図4C】図4Cは、本質的に銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図5A】図5Aは、本質的に四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図5B】図5Bは、本質的に四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図5C】図5Cは、本質的に四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図6】図6は、実施例2に記載した方法を使用して四ナトリウムEDTA(mg/ml)(w/v)中で発現された多様な生物に対する最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)を示している。
【図7】図7は、本質的に40mg/ml(w/v)濃度の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物を用いた、感染した腎臓血液透析カテーテルの処置の実験結果を示している。
【図8】図8は、本質的に20乃至100mg/ml(w/v)濃度の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物を用いた、感染した腎臓血液透析カテーテル、動脈カテーテル及び静脈カテーテルの処置の実験結果を示している。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、多様な医療用途並びに工業的及び環境的衛生用途を含む一般的な衛生用途における使用のための殺菌組成物、方法及びシステム、に関する。本発明の組成物は、抗微生物、抗真菌、抗ウイルス及び抗アメーバ特性を有しており、また抗凝血剤としても作用することができる。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(C10H12N2Na4O8)の特定の塩及び組成物が特定の濃度及びpHレベルで用いられる。典型的な用途は、表面上または溶液中の微生物及び/または真菌生物、またはバイオフィルム等の複雑な形態中の微生物及び/または真菌生物、の存在を阻害し、低減しまたは除去することを含む。典型的な方法は、感染症の発生率を低減するために対象物の表面に抗菌コーティングを備えること、及び、微生物群の増殖を阻害し、または微生物群を低減または除去するために、洗い流す、浸す及び/またはすすぐことによって対象物及び/または表面を殺菌溶液に接触させることを含む。
【0002】
発明の背景及び先行技術の説明
医療分野等の衛生条件が重要である多くの分野において感染症は重大な問題である。問題となる感染症は細菌、真菌、アメーバ、原生動物及び/またはウイルスによってもたらされる。かつて確立されていた、感染症を予防すること及び/または感染症を低減または除去すること、の両面において難問に直面している。感染する環境は、対象物の表面、流動体及び流動管、及び/またはヒトまたは動物を含む。
【0003】
アルコール溶液及びイソプロピルアルコールワイプが表面の消毒に一般に使用されており、そして抗細菌活性を持つことが示されている。最も有効な抗微生物阻害作用は70%イソプロパノール溶液において見られる。この濃度のアルコール溶液はかなり高価でありそして容易に揮発する。そしてこのことが、実質的にそれらの有効性を損ない、またその費用を増加させている。さらに、イソプロパノール溶液はヒトの皮膚を含む表面及び多くの医療用途に対して使用することができるが、この濃度のアルコール溶液は、局所的な適用以外では医療目的でヒトに投与することができない。
【0004】
ヘルスケア分野においては、多様な型及び原因の感染症が一般的であり、そしてしばしば入院を長期化させることになり、そのことが高い入院費用につながっている。さらに悪いことに、年間90,000以上の患者の死亡が院内感染−すなわち、病院または他の医療環境において獲得された感染症−に起因すると考えられている。院内感染に対する監視は医療活動の不可欠な要素になっている。疾病管理予防センター(CDC)によって20年以上前に行われた研究は、院内感染の発生を減少させることに対するこれらの監視活動の有効性を実証している。しかしながら、院内感染問題に向けられた注意にもかかわらず、感染症の比率が劇的に減少してはおらず、依然として院内感染は重要なリスク及び健康上の問題である。
【0005】
医療分野及び獣医分野での感染症の原因の問題となる一つは、カテーテル、特に留置(in−dwelling)カテーテルに見られる。カテーテルは救命救急患者の管理において不可欠なものとなっているが、カテーテルの内部はしばしば感染症の主要な原因である。カテーテルは流動体、血液生産物、薬剤及び栄養剤の搬送のために使用されており、また、血液透析、血液ろ過、腹膜透析、血液サンプルの返却及び患者の状態の観察等のためにも使用されている。経皮(transcutaneous)カテーテルはしばしば、カテーテルの皮膚貫通によって感染される。総ての院内血流感染の70%が中心動脈カテーテルを使用した患者において発生していることが見つけられた:Daouicher et al. New Engl.J.Med.340:1−8(1999)。
【0006】
特に、ある処置の間、比較的長期間(例えば30日以上)、カテーテルは患者に埋め込まれ続けられなければならない。静脈内(IV)療法カテーテル及び尿道カテーテルは、通常、かなりの期間にわたって埋め込まれている。挿入部分への外傷及び患者への痛みのため、そのようなカテーテルは、高い頻度で取り出したり埋め込んだりすることができない。カテーテルで運ばれた細菌が尿路感染症の主要な原因と考えられている。妊娠中に末梢穿刺中心静脈カテーテルを経験する患者は感染合併症について重大なリスクにさらされているということがわかった:Ogura et al.Am.J.Obstet.Gynecol.188(5):1223−5(2003)。さらに、カテーテルが原因の敗血症につながる中心静脈カテーテル感染症は、家庭での非経口的栄養法の間に最も頻度の高い合併症として挙げられている:Reimund et al.Clinical Nutrition,21(1):33−38(2002)。感染症の危険のために、カテーテル法は、その処置が絶対に必要になった場合に限られるであろう。このことは患者の生命を著しく危うくする。
【0007】
カテーテルを含む最も処方される医療手段手順の後、カテーテルは食塩水で洗い流される。そして、カテーテル内で血液が凝固することを防ぎ、患者の血液がカテーテルに逆流することを妨げ、そしてカテーテル内にガスが入ることを防ぐために、カテーテルは食塩水またはヘパリン等の液体で満たされる。カテーテルを洗い流すことに使用される液体は“ロック−フラッシュ(lock−flush)”と呼ばれ、そして、洗い流された後または使用しない間、カテーテルを満たすために使用される液体は“ロック(lock)”溶液と呼ばれる。
【0008】
伝統的に、生理食塩水または抗凝血活性をもたらすヘパリン溶液によってカテーテルはロック(locked)されている。ヘパリンと食塩水は、しばしば組み合わせて使用される。生理食塩水は、一般に、末梢静脈カテーテルを短期間ロックするために使用され、そして抗凝血性または抗菌活性を有していない。ヘパリン溶液は、一般に、血管カテーテルをロックするために使用される。ヘパリンは抗凝血活性を有しているが、抗菌剤としては作用せず、そして感染を予防または改善しない。また、ロック溶液中のヘパリンがヘパリン−誘起の血小板減少症(ヘパリン注入を受けた患者の集団で発生する重大な出血性の合併症である)に関与しているであろうということについての強い示唆がある。
【0009】
タウロリジン(Taurolidine)、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを含むカテーテルロック溶液が提案されている。最近の刊行物(Kidney International,2002年9月)は、皮下(subcutaneous)カテーテルポートのロック溶液として70%アルコール溶液を使用することを記載している。抗凝血性ではなく、その溶液が血流に混入することに伴う危険があるので、ロック溶液としてのアルコールの使用は疑問である。発明者らは、また、70%アルコール溶液がバイオフィルムを根絶する活性を有しているということを示す証拠を知らない。
【0010】
新たな傾向及び感染症センター(CID)の推奨は、既存のカテーテル感染症を特定のまたは広範囲の抗生物質で体系的に処置することである。感染症を予防するためのロック溶液中での抗生物質の使用は推奨できない。既存のカテーテル感染症を処置するための抗生物質の使用はある種のリスクを含んでいる。そのリスクは、(1)抗生物質耐性菌株の発達の危険、(2)固着性(sessile)または深層(deep−layer)のバイオフィルム、細菌を死滅させられないという抗生物質の能力(それらを死滅するには毒となる濃度での抗生物質の使用を必要とするであろう)、及び(3)長期に及ぶ抗生物質治療の高い費用、を含む。殺菌性材料または抗生物質材料で被覆されたカテーテルも利用可能である。しかし、これらの被覆カテーテルは比較的短期間での限られた防御を提供するだけであろう。
【0011】
一般に、浮遊性(free−floating)の微生物は抗生物質に対して弱いようである。しかしながら、細菌及び菌類は、表面上に凝集しそして粘液性の保護物質(しばしば、バイオフィルムを形成する細胞外高分子物質(EPS)と呼ばれる)を生じることによって抗生物質に影響されなくなるようである。微生物が増殖すると、50より多い遺伝的なアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションが起こり、そのことがより抗生物質に耐性の微生物バイオフィルムの形成につながっているようである。医師が接触する細菌性感染症の三分の二はバイオフィルムに起因すると考えられている:Netting,Science News,160:28(2001)。
【0012】
バイオフィルム形成は細菌のライフサイクルにおける遺伝子的に調節された過程であり、それは、生物の細胞の生理機能に多数の変化をもたらし、その変化は、しばしば、プランクトン性(浮遊性)条件下での成長に比べて増加した(100〜1000倍に至る)抗生物質耐性を含む。生物が成長し、過密及び栄養素減少の問題が、新しい場所及び資源を捜し求める生物の発散(shedding)を引き起こす。新しく散らばった(shed)生物は速やかに元の浮遊性の段階に戻り、そして再び抗生物質に弱くなる。しかしながら、浮遊性の生物は患者の血流に入ることができ、そして、このことが、発熱等の臨床的徴候及びより重大な感染症に関連した症状を生じる血流感染症を引き起こす。バイオフィルムの固着性のラフト(rafts)ははがれ落ちそして心臓弁等の組織表面に付着する。そして、このことがバイオフィルムの増殖と心内膜炎等の重大な問題を引き起こす。
【0013】
工業的環境において、バイオフィルムの形成はよく起こることであり、一般に生物付着と呼ばれている。例えば、ろ過装置等の機械構造上でのバイオフィルム成長は、飲料水分配システムの生物的汚染の主な要因である。工業的環境でのバイオフィルム形成は材質の劣化、生成物の汚染、機械の閉塞及び処理システムでの熱移動の障害となり得る。バイオフィルムの形成と結果として起こる汚染は、また、食品生産及び加工施設における一般的な問題である。
【0014】
さらに事が複雑なのは、既存の感受性試験はバイオフィルム状態ではなく浮遊性の生物の抗生物質感受性だけを測定していることである。その結果、カテーテル等を通して、カテーテルに存在しているであろうバイオフィルム段階の生物に所望の効果をほとんど示さない量で抗生物質が患者に投与されることになる。バイオフィルム生物は、より浮遊性の生物を発散し続けるか、または不活発な状態となりそして明白な再発性感染症として増殖し得る。
【0015】
抗生物質の使用によってバイオフィルムを撲滅するためには、生物の特定の遺伝子的なバイオフィルム段階を死滅させるために必要とされる抗生物質の濃度を決定しなければならない。バイオフィルム撲滅のための最小濃度を提供するには高度に特化した装置が必要とされる。さらに、現在の診断手順は時間のかかるものであり、しばしば数日間(例えば5日間)、結果を得ることができない。この時間は、感染症の迅速な治療を不可能にする。この遅延及び感染症に対する正当化できる不安が、広いスペクトルの抗生物質の過度の使用及び継続した不要なカテーテルの撤去交換手順をもたらしている。広いスペクトルの抗生物質の過度の使用は、効果的に治療できない抗生物質耐性細菌菌株の発達をもたらし得る。不要なカテーテルの除去交換は痛み及び費用を伴い、そして、カテーテル挿入部位の外傷及び組織の損傷をもたらすであろう。
【0016】
抗生物質耐性菌株の発達のリスク等の抗生物質使用の複雑さと結びついたバイオフィルムの抗生物質耐性は、抗生物質による処置を魅力的でない選択肢としている。結果的に、抗生物質の使用は症候性の感染症に限られており、予防的抗生物質は、汚染を予防するためには一般的には使用されていない。バイオフィルムは多くの抗生物質について選択的な表現型耐性バリアー(selective phenotype resistance barrier)として作用するので、カテーテルに関連する感染症を撲滅するために、カテーテルはしばしば除去されなければならない。カテーテルの除去交換は時間がかかり、患者に緊張を引き起こすものであり、そして医療手順を複雑にする。それゆえ、カテーテルを体から除去する必要なく、生物、特にカテーテルの内部に存在している生物を死滅させるための簡便で効果的な方法に対する要求がある。
【0017】
細菌性及び真菌性の感染症に加え、アメーバ性の感染症も重大であり、苦痛を伴い、そして生命にかかわる可能性がある。例えば、アカントアメーバ(Acanthamoeba)のいくつかの種はヒトに感染することが知られている。アカントアメーバは、土壌及び塵中、淡水源、並びに汽水及び海水中で、世界中で見られるものである。それらは、しばしば、暖房、通気及び空調設備、加湿器、透析装置、そしてコンタクトレンズ用品においても見られる。細菌性及び真菌性の感染症に加え、アカントアメーバ性感染症はまた、他の医療器具及び、歯ブラシ、入れ歯及び他の歯科装置等を含む歯科器具と関連して、一般的なものである。アカントアメーバ性感染症はまた、しばしば、ヒトの体に接触するコンタクトレンズ及び他の医療器具の不適切な保存、取扱い及び消毒に起因し、そして、アカントアメーバは傷口及び外傷から皮膚に、そして、鼻孔及び目等に侵入し得る。
【0018】
問題となる感染症をもたらす多数の異なった種類の病原菌(多様な細菌及び菌類を含む)が存在する。そして、感染症を撲滅するための現行の方法は、一般に、限られた数の異なった病原菌に対して効果のある溶液を使用している。Rootらは、カテーテルに関連した特定の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)病原体分離株に対するインビトロ(in vitro)での二ナトリウムEDTAの使用を述べている(Antimicrobial Agents and Chemotherapy,32:1627−1633(1988))。
【0019】
EDTAは伝統的に金属キレート剤として使用されており、また、他の活性化合物と共に多様な目的のために使用されている。EDTAは、しばしば、血液標本採集または試験のためのインビトロ抗凝血剤として、そして抗酸化剤共力剤として低濃度で使用される。また、EDTAは、例えば、キレート剤、安定剤または医薬製剤の防腐剤として溶液に添加される。EDTAは多様な形態で存在することができる。例えば、あるものは二ナトリウム、三ナトリウム及び四ナトリウム塩等の塩の形態であり、また、他は鉄、銅、マグネシウム等の金属キレートである。EDTAのある種の形態は、アジュバントとしての他の物質と共に、感染したカテーテルを試験するための組成物において使用されている。臨床場面で使用される場合、またはヒトまたは動物に使用される組成物において使用される場合、その溶液は、通常、生理学的または中性のpH範囲に調整される。
【0020】
EDTAの非ナトリウム塩形等の添加剤とアルコールとの組み合わせがPCT公報WO02/05188に述べられている。PCT公報WO00/72906A1は抗生物質等の抗菌剤とカテーテル洗浄のためのキレート剤としてEDTAの非ナトリウム塩形であってもよい第二の剤との凍結乾燥混合物について記載している。米国特許No.5688516には、医療器具を被覆するための、及びカテーテルの感染を防ぐための、抗凝血剤、EDTA等のキレート剤及びミノサイクリン等の抗菌剤を含む組成物が述べられている。そのある実施例では、EDTAの二ナトリウム塩形が生理学的pH7.4にされそしてその組成物において使用されている。PCT公報WO99/09997は抗真菌剤とEDTA等のキレート剤との組み合わせによる真菌感染症の治療について記載している。
【0021】
感染症が問題となる他の分野は、コンタクトレンズ、強膜バックル(scleral buckles)、縫合材料及び眼内レンズ等の眼に関連して使用される医療器具及び材料である。特に、コンタクトレンズ等の義眼を消毒する方法の発達について強調されてきている。細菌性バイオフィルムが眼の感染症に関与しており、そして眼に接触するまたは眼に埋め込まれる非生物的な表面に細菌が生き残ることを可能にしていると考えられる。バイオフィルムはまた、眼の生物的な表面にも形成される:Zegans et al.,DNA Cell Biol.,21:415−20(2002)。重症型の角膜炎は、レンズ消毒液を汚染する原生動物アメーバによっても引き起こされ得る。コンタクトレンズの消毒のためのpHが6−8に緩衝された四ナトリウムEDTA及びアルカリ塩の眼科用の製剤が米国特許No.5300296に記載されている。米国特許No.5998488はEDTAとシクロデキストリン及びホウ酸等の他の物質との眼科用の組成物を記載している。
【0022】
歯科の分野において、歯科器具、及び固定装置、ブリッジ及び入れ歯等の歯科装置及び歯列矯正装置、等の口の中に置かれる器具は無菌状態に維持される必要があり、特に保存中及び口中に置かれる前には無菌状態であることが必要である。そうでなければ、感染が血流中に伝わり、より深刻な問題となり得る。米国特許No.6077501は、入れ歯洗浄組成物において他の活性成分と共にEDTAの使用を述べている。
【0023】
給水もまた細菌性または他のタイプに感染しがちである。貯水装置並びに給水管及び取水管も、しばしば感染する。医療オフィス及び歯科オフィスの液体を運ぶチューブの内部表面は、細菌感染及び成長に適した環境に存在しており、そして、微生物の付着及び防御性の高いバイオフィルム層の形成が、液体貯蔵及び供給装置においてしばしば問題となる。
【0024】
多様な環境において感染症を予防及び撲滅するための、改良された方法及び組成物に対する要求がある。そのような殺菌溶液は広範な抗微生物特性を有していなければならない。特に、溶液は、バイオフィルムに浸透しバイオフィルム中の生物を撲滅できなければならない。そのような方法及び溶液は予防方法及び既存の感染症の治療方法として十分に安全でなければならない。
【0025】
発明の要旨
本発明は、生理学的pHより高いpH及び処方される濃度において、EDTAの一つまたはそれより多い塩を含む、本質的にEDTAの一つまたはそれより多い塩からなる、または、EDTAの一つまたはそれより多い塩からなる、殺菌組成物を提供する。発明者らは、あるEDTA組成物が強力な殺菌活性を有し、広いスペクトルの抗細菌剤として作用し、そして病原性酵母の多くの菌株に対して抗真菌剤として作用するということを発見した。本発明のEDTA組成物は、病原性バイオフィルム生物を死滅させること、既存のバイオフィルムを減少及び撲滅すること、及びバイオフィルム形成を予防することについて非常に有効である。本発明のEDTA組成物及び組み合わせは、また、抗原生動物活性及び抗アメーバ活性を示す。既存の報告を基にすると、本発明のEDTA組成物にはさらに、抗ウイルス活性が期待できる。
【0026】
本発明のEDTA製剤はヒトに対する投与について安全であり、そして、生体適合性があり、非腐食性である。本発明の組成物はまた、抗凝血特性を有し、そしてカテーテルに関連した多様な感染症の予防及び/または治療に有用であり得る。本発明の殺菌溶液は、多様なカテーテルのためのロック溶液またはロックフラッシュ溶液としての用途を含む多くの用途を有しており、また、一連の医療、歯科及び獣医科用の装置、器具、及び他の対象物、表面などを消毒するための殺菌剤及び殺菌溶液としての用途を有している。さらに、本発明の殺菌溶液は、工業的においての、及び食品生産及び取扱い環境おいての、消毒用途を有している。
【0027】
本発明の殺菌組成物は、感染症を予防するために予防的に使用することができ、また、現存のまたは既存の感染症を低減及び/または除去するために使用することができる。望ましくない微生物をもった対象物または表面の感染を予防または処置するための方法が提供され、そのような方法は、表面または対象物を本発明の組成物と接触させることを含む。本発明の組成物はまた、細菌群及び/または真菌性病原菌の成長および増殖を阻害するために(バイオフィルムの形成及び増殖を阻害することを含む);原生動物個体群の成長及び増殖を阻害するために;アメーバ個体群の成長及び増殖を阻害するために;そしてアメーバ感染症(特にアカントアメーバ感染症)を予防するために、使用することができる。
【0028】
本発明はまた、細菌個体群(プランクトン性の細菌個体群及びバイオフィルム形態の細菌個体群の双方を含む)を実質的に撲滅するための方法、及びアカントアメーバ個体群を実質的に撲滅するための方法を提供する。そのような方法は、感染した対象物または表面、または感染が疑われる対象物または表面を本発明の組成物と接触させることを含む。それらの方法に使用される殺菌組成物に依存するが、多様な個体群の形成及び増殖を阻害するために、及び/または多様な個体群を実質的に撲滅するために、多様な接触時間が要求される。いろいろの組成物に対する適切な接触時間は実施例において与えられ、そしてまた、通常の実験によって決定することができる。
【0029】
一つの実施態様において、本発明の殺菌組成物は以下の特性の少なくとも四つ、好ましくは五つを有する。その特性は、抗凝血特性、プランクトン性形態の多様な細菌に対する阻害活性及び/または抗細菌活性、多様な真菌性病原菌に対する阻害活性及び/または抗真菌活性、固着性またはバイオフィルム形態の多様な細菌に対する阻害活性及び/または抗細菌活性、原生動物感染症に対する阻害活性、アカントアメーバ感染症に対する阻害活性、少なくとも適度な量で患者と接触した場合の安全性及び生体適合性、少なくとも適度な量で患者の血流と接触した場合の安全性及び生体適合性、及び工業的対象物及び表面との安全性及び適合性、である。
【0030】
本発明の組成物においては、EDTAの溶解性の塩が使用される。二ナトリウム塩、三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩を含むEDTAのナトリウム塩が一般に入手可能であり、通常使用される。また、所望の抗菌特性、抗真菌特性、抗原生動物特性及び/または抗アメーバ特性を有しており、そして所望の溶媒に十分に溶解するのであれば、他のEDTA塩(アンモニウム塩、二アンモニウム塩、カリウム塩、二カリウム塩、銅二ナトリウム塩、マグネシウム二ナトリウム塩、鉄ナトリウム塩、及びそれらの組み合わせを含む)を使用することもできる。EDTA塩のいろいろな組み合わせを使用することができ、そしてそのような組み合わせは特定の用途では好ましい。重要なことは、ほとんどの実施例において、本発明の実施例及び方法が既存の抗生物質を使用していないことであり、そのため、抗生物質耐性生物の発達に寄与しないということである。
【0031】
本発明の殺菌組成物は、生理学的pHより高いpHの溶液中で、一つまたはそれより多いEDTAの塩を含む、一つまたはそれより多いEDTAの塩からなる、または本質的に一つまたはそれより多いEDTAの塩からなる。好ましくは、そのような組成物は少なくとも8.0のpHを有する。好ましくは、本発明の組成物は8.5乃至12.5、または9.5乃至11.5、または10.5乃至11.5の範囲のpHを有する。EDTAの塩は、通常、少なくとも0.01%w/vの量で存在する。好ましい実施態様において、本発明の組成物は、EDTAの少なくとも一つの塩を0.2%乃至10%w/v、より好ましくは0.2%乃至6.0%w/v、そして最も好ましくは0.2%ないし4.0%w/vの量で含む。
【0032】
特定の実施態様において、本発明の組成物は、溶媒及び0.01%乃至10%w/vの濃度の少なくとも一つのEDTAの塩を含み、または本質的に溶媒及び0.01%乃至10%w/vの濃度の少なくとも一つのEDTAの塩からなり、そしてそこにおいて、その溶液は少なくとも9.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対する抗菌活性を有する。好ましくは、少なくとも一つのEDTAの塩は三ナトリウムEDTAまたは四ナトリウムEDTAである。溶媒は通常、水、食塩水、アルコール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一つの実施態様において、溶媒は水とエタノールの組み合わせである。
【0033】
本発明の殺菌組成物は多様な型の留置アクセス(in−dwelling access)カテーテル(流動体、血液生産物、薬剤及び栄養剤の搬送、流動体または血液の採取、透析、患者の状態の観察等のために使用される血管カテーテルを含む)のためのロック溶液及びロックフラッシュ溶液として使用することができる。本発明の殺菌溶液はまた、尿道カテーテル、鼻腔チューブ及び気管チューブ等のためのロック溶液及びロックフラッシュ溶液として使用することができる。後述の一般的な溶液パラメータはこれらの目的に適したものである。一つの実施態様において、生理学的pHより高いpHで、一つまたはそれより多いEDTAナトリウム塩を含む、一つまたはそれより多いEDTAナトリウム塩からなる、または本質的に一つまたはそれより多いEDTAナトリウム塩からなる、殺菌溶液が、留置血管内アクセス器具(in−dwelling intravascular access devices)の開通性を維持するために用いられる。また、カテーテル及び他の医療チューブ(鼻腔チューブ、気管チューブ等)を消毒するための方法が提供され、そしてその方法は、カテーテルまたは他の医療チューブを本発明の消毒組成物と接触させることを含む。
【0034】
別の実施態様において、入れ歯及び他の歯科用、歯列矯正用及び/または歯周用の器具等の医療器具、コンタクトレンズ及び他の眼用の器具、医療用及び獣医科用の装置及び器具、等のための消毒溶液として、及び、表面及び対象物を消毒するための消毒溶液として、生理学的pHより高いpHで、一つまたはそれより多いEDTAのナトリウム塩を含む、一つまたはそれより多いEDTAのナトリウム塩からなる、または本質的に一つまたはそれより多いEDTAのナトリウム塩からなる、本発明の殺菌組成物が提供される。また、そのような器具を消毒する方法が提供され、そしてその方法はそのような器具を本発明の殺菌組成物と接触させることを含む。通常、本発明の殺菌組成物は、歯ブラシを含む歯科用、歯列矯正用及び歯周用の器具のための浸漬用の溶液として使用することができる。また、本発明の殺菌組成物は、コンタクトレンズ及び他の眼用の器具、及び医療用及び獣医科用の装置等のための浸漬用の溶液として使用することができる。これらの用途のために、本発明の殺菌組成物は通例、溶液として製剤されるか、または適当な溶媒の添加によって溶液を形成するための乾燥形態として提供される。
【0035】
さらに他の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、殺菌剤、ワイプ及び抗細菌処置等としての局所使用のために設計された溶液、ゲル、クリーム及び他の製剤としての使用のために製剤される。本発明の殺菌組成物はまた、救急絆、包帯、創傷治癒剤及び器具等と関連して抗細菌剤として使用することができる。関連する実施態様において、本発明の組成物の一つ以上に浸漬されている、救急絆及び包帯等の傷治療における使用のためのカバーが提供される。
【0036】
本発明の殺菌組成物はまた、浮遊形態及び固着形態の双方における微生物個体群、及び多くの真菌、アメーバ及び原生動物の個体群を、阻害、減少または実質的に除去するために、水の貯蔵及び分配システム、水の精製装置、加湿装置及び除湿装置等の工業的環境、及び食品の生産、取扱い及び包装に関する環境において、使用することができる。本発明の殺菌組成物に、工業装置及び表面を接触、洗い流し及び浸漬することができる。また、長期間にわたる処置、特に頻繁に接近することが困難な場所における長期間にわたる処置を提供するために、徐放性の殺菌組成物製剤を提供することができる。
【0037】
発明の詳細な説明
多くの組成物において、安定剤または保存剤としての他の活性成分との組み合わせで、EDTAは低濃度で使用される。本発明の殺菌組成物は、通常、高い濃度のEDTAを含む。好ましくは本発明の殺菌組成物は、溶液の体積分の質量(w/v)として、少なくとも0.01%のEDTA塩を含み、そして15%(w/v)までのEDTA塩を含むことができる。多くの用途に対して、本発明の殺菌組成物は、好ましくは、少なくとも0.1%(w/v)のEDTA塩を含みそして10%(w/v)より少ないEDTA塩を含み、より好ましくは0.1%(w/v)乃至8.0%(w/v)のEDTA塩を含み、最も好ましくは0.1%(w/v)乃至6.0%(w/v)のEDTA塩を含む。後述の例となるな組成物は、水溶液中3.6乃至4.4%(w/v)のEDTA塩を含み、または、水とエタノールの混合物中0.01乃至0.2%(w/v)のEDTAを含む。
【0038】
多様な用途に対する望ましいEDTA塩の濃度は、使用されるEDTA塩またはその組み合わせ、処置される感染症の型に依存し、また、殺菌組成物に使用される溶媒にもある程度依存する。例えば、エタノールを含む水性溶媒が使用された場合、所望のレベルの活性を与えるのに必要とされるEDTA塩の濃度は、溶媒として水を使用した組成物において使用されるEDTA塩の濃度に比較して小さくすることができる。後述の典型的なデータに示すように、一つ以上のEDTA塩を含む殺菌組成物は、0.01%乃至30%またはそれより高い範囲の濃度で、阻害及び/または殺菌効果を示した。阻害、殺菌、抗真菌、バイオフィルム撲滅及び他の目的のための本発明の殺菌組成物における望ましいEDTA塩の“有効な”濃度は、後述の実施例において述べるように通常の実験によって決定することができる。
【0039】
英国薬局方(BP)は、二ナトリウムEDTAの5%溶液は4.0乃至5.5のpHを有すると明記している。BPはまた、三ナトリウムEDTAの溶液について7.0乃至8.0のpH範囲を明記している。水溶液中での他のEDTA塩のpH値は後の実施例10に記載している。生理学的pHにおいてEDTAのナトリウム塩は二ナトリウムEDTA及び三ナトリウムEDTAの混合物として存在しており、そしてEDTAの三ナトリウム塩が優勢である。米国においては、注射のために調製される薬剤の“二ナトリウム”EDTAは、一般に、水酸化ナトリウムでの滴定で6.5乃至7.5のpHである。このpHにおいて、EDTA溶液は、実質的には、より少ない割合の二ナトリウム塩と共に、主に三ナトリウムEDTAを含む。医療またはヘルスケア用途で使用されるEDTAのナトリウム塩を含む他の組成物は、通常、実質的に生理学的なpHに調節されている。
【0040】
ある実施態様において、本発明の殺菌組成物は、生理学的pHより高いpH、好ましくは8.0より大きいpH、8.5より大きいpH、9より大きいpH、9.5より大きいpHまたは10より大きいpHの溶液中で、EDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)を含む、本質的にEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる、またはEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる。別の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、8.5乃至12.5のpH、または9.5乃至11.5のpH、または10.5乃至11.5のpHの溶液中で、EDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)を含む、本質的にEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる、またはEDTAのナトリウム塩(または複数のEDTAのナトリウム塩の組み合わせ)からなる。本明細書において、“EDTA塩”との語は二ナトリウム塩、三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、または他のEDTA塩等の単一の塩を意味することができ、また、それらの塩の組み合わせを意味することができる。EDTA塩の組成は、その組成物を製剤するために使用されるEDTA塩及びその組成物のpHの双方に依存する。所望のpH範囲(上述)でEDTAのナトリウム塩を含む本発明の殺菌組成物については、EDTAのナトリウム塩は主に二ナトリウム塩形及び三ナトリウム塩形の両方で存在している。
【0041】
一つの実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含む、または本質的にEDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなる。別の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含み、または本質的にEDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなり、そしてその組成物においてEDTAの少なくとも10%は四ナトリウム塩の形で存在している。また他の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含み、または本質的にEDTAの少なくとも三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなり、そしてその組成物においてEDTAの少なくとも50%、または少なくとも60%は三ナトリウム塩の形で存在している。別の実施態様において、本発明の殺菌組成物は、EDTAの二ナトリウム塩、三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせを含み、または本質的にEDTAの二ナトリウム塩、三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩の組み合わせからなり、そしてその組成物において10%より少ないEDTAが二ナトリウム塩の形で存在している。
【0042】
殺菌組成物は、EDTAのナトリウム塩以外のまたはEDTAのナトリウム塩に加えて、異なった“有効な”pH範囲を有するEDTAの塩を含み、または本質的にそのような塩からなり、またはそのような塩からなる。阻害、殺菌、抗真菌、バイオフィルム撲滅及び他の目的のための本発明の殺菌組成物における望ましいEDTA塩に対する“有効な”pH範囲は、通常の実験で決定することができる。
【0043】
いくつかの実施態様において、本発明の殺菌組成物は上述のようにEDTA塩からなり、そして、殺菌溶液は溶媒(通例、水及び食塩水等の水性溶媒)に溶解したEDTA塩からなる。他の実施態様において、本発明の殺菌組成物は上述のように、本質的に、通例、水または食塩水中のEDTA塩からなる。本質的にEDTA塩またはEDTA塩の組み合わせからなる本発明の殺菌組成物は、実質的に、実質的な抗細菌活性及び/または抗真菌活性を有する他の活性物質を含まない。この観点において、実質的な抗細菌活性及び/または抗真菌活性は、pH10.5、濃度4.0%(w/v)の水溶液でのEDTAのナトリウム塩の抗細菌活性及び/または抗真菌活性の少なくとも50%の抗細菌活性及び/または抗真菌活性を意味する。
【0044】
いくつかの実施態様において、本発明の殺菌組成物は、特定のpH範囲で特定の濃度のEDTA塩を含み、そして、上述のEDTA塩に加えて、活性成分を含む他の物質を含むことができる。本発明の殺菌組成物に他の抗細菌成分または殺生物成分を含むことができるが、既存の抗生物質及び抗生物剤の使用は、通例、抗生物質耐性及び殺生物剤耐性生物の発達という良くない結果の帰結のため薦められない。いくつかの実施態様において、特定のpH範囲及び濃度のEDTA塩を含む本発明の殺菌組成物は、実質的に、実質的な抗細菌活性及び/または抗真菌活性を有する他の活性物質を含まない。
【0045】
EDTA塩の活性及び/または安定性に悪い影響を与えないという条件で、本発明の殺菌組成物に他の活性成分及び不活性成分を含めることができる。いくつかの用途のために、タンパク質分解剤を殺菌組成物に含めることができる。局所用途のために製剤された殺菌組成物は、例えば、多様なクリーム、エモルーメント(emoluments)及びアロエなどのスキンケア組成物を含むことができる。溶液の製剤で提供される本発明の殺菌組成物は、また、EDTA塩の活性及び/または安定性を妨害しないという条件で、他の活性成分及び不活性成分を含むことができる。
【0046】
本発明の組成物は溶液の形態または乾燥した形態で使用することができる。溶液において、EDTA塩は好ましくは溶媒に溶解しており、そして、その溶媒は水及び食塩水等の水溶液、またはEDTA塩が溶解する他の生体適合性のある溶液を含むことができる。アルコール溶液を含む別の溶媒を使用することもできる。一つの実施態様において、本発明のEDTA塩組成物は水とエタノールの混合物中で製剤される。そのような溶液は非常に有効であり、そして、そのような溶液は、EDTA塩の濃縮保存水溶液を調製し、そしてそれを所望の濃度のエタノールに加えることによって調製することができる。約0.01%乃至10%(w/v)のEDTA塩濃度が適しており、そして約0.1%乃至約10%(v/v)のエタノール濃度が効果的な殺菌組成物を提供する。いくつかの実施態様において、約1%(v/v)濃度のエタノールを含む水中の約2mg/ml(0.2%w/v)の濃度のEDTA塩が、広いスペクトルの細菌菌株に対して非常に有効である。EDTAのナトリウム塩が使用された場合、これらの殺菌組成物のpH範囲は上述の通りである。EDTA塩が溶解し、保存及び使用中においても溶液状態であるのであれば、生体適合性の非水溶媒を使用することもできる。
【0047】
本発明のEDTA溶液は、好ましくは無菌のそして非発熱性の(non−pyrogenic)状態で提供され、そして、それらは既存の方法で包装することができる。いくつかの実施態様において、本発明の殺菌性EDTA組成物は医療器具(例えば事前に充填されたシリンジまたは他の器具等)と関連して、またはその一部として提供されることができる。本発明の組成物は消毒された無菌の条件下で調製することができ、または、調製及び/または包装の後、適切な無菌化方法によって無菌化されることもできる。EDTA溶液の一回使用または複数回使用のバイアル、シリンジまたは容器(containers)が提供される。本発明のシステムは、本発明のEDTA溶液を含むそのようなバイアル、シリンジまたは容器を含む。
【0048】
本発明の組成物はまた、実質的に乾燥した形態、例えば、チューブまたは導管、またはカテーテル、導管、容器等の医療用または工業用器具、等の表面の実質的に乾燥した被膜等、で提供することができる。本発明のEDTA組成物の実質的に乾燥した形態は、溶媒の添加によって溶液の形態に戻すことができる粉末または凍結乾燥された形態で提供することができる。EDTA組成物の実質的に乾燥した形態は、また被膜として提供することができ、または、ゲルまたは他の型の担体に取り込まれることができ、またはカプセル化することができ、または包装することができ、そして被膜として表面にまたは容器内に提供することができる。本発明のEDTA組成物そのような実質的に乾燥した形態は溶液の存在下で製剤することができ、それによって、実質的に乾燥した組成物は上述の組成及び特性を有するEDTA溶液を形成する。ある実施態様において、異なったカプセル化または保存技術を使用することができ、それによって引き伸ばされた溶液への暴露においてEDTAの効果的な徐放が達成される。この実施態様において、実質的に乾燥したEDTAの溶液は、長期間及び/または複数回の溶液への暴露において殺菌活性を示すことができる。
【0049】
EDTAを含む組成物は、医療用途及びヒトへの投与に関連して確立された安全性の特徴を有している。ヒトの高カルシウム血症の治療のために、一日当たり、3000mgまでの二ナトリウムEDTAが三時間にわたって注入されており、そしてよく容認されている。EDTA塩はまた、医療用途及びヒトの健康用途に使用される多くの溶液において他の構成成分との組み合わせで存在しており、そして、インビトロ(in vitro)及びインビボ(in vivo)の双方で、ヒトに対して安全であることが確立されている。EDTA塩は適当な価格で容易に入手でき、そして溶液中で長期にわたって安定である。
【0050】
本発明の殺菌組成物の製剤と製造は、通常、容易である。一つの実施態様において、本発明の所望の殺菌組成物は、少なくとも一つのEDTA塩を精製水等の水性溶媒に所望の濃度で溶解し、そしてそのEDTA塩溶液を所望のpHに調節することによって製剤することができる。他の実施態様においては、本発明の所望の殺菌組成物は、EDTA塩またはその組み合わせが溶解して、高濃度で溶解しているEDTA塩溶液を与えるように、溶媒に少なくとも一つのEDTA塩を溶解することによって製剤することができる。追加の溶媒または構成成分を添加することもできる。また、溶解したEDTA塩組成物を溶液以外の形態(例えば、局所用製剤)として製剤することもできる。殺菌溶液はオートクレーブ、UV照射、ろ過、限外ろ過及び/または他の方法等の既存の手段によって無菌化することができる。EDTA溶液の好ましい浸透圧の範囲は240乃至500mOsM/Kgであり、より好ましくは300乃至420mOsm/Kgである。その溶液は、好ましくはUSP(米国薬局方)材料を使用して製剤することができる。
【0051】
三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、またはそれらの混合物を含む、三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、またはそれらの混合物からなる、または本質的に三ナトリウム塩または四ナトリウム塩、またはそれらの混合物からなる、殺菌組成物が多くの用途について好ましく、そして、容易に入手できる二ナトリウムEDTA等の三ナトリウム塩及び四ナトリウム塩以外のEDTAのナトリウム塩を使用して調製することができる。二ナトリウムEDTAの溶液は、本発明の組成物の所望のpH範囲より低いpHを有している。しかしながら、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは他の既知のpH調節材料を使用してpHを所望の範囲に調節することによって、二ナトリウム塩を使用して調製されたEDTA溶液は、好ましい本発明の二ナトリウム、三ナトリウム及び/または四ナトリウム塩のEDTA組成物に変換される。すなわち、組成物のpHが使用前に所望のpH範囲に調節されるのであれば、EDTA塩の異なった形態及び組み合わせを本発明のEDTA組成物の製造に使用することができる。一つの実施態様において、水溶液中で質量/体積基準で3%乃至5%量で二ナトリウムEDTAを溶解し、そして8.5乃至12.0の所望のpHを与えるに十分な量の水酸化ナトリウムを添加することによって、主に三ナトリウムEDTA及び四ナトリウムEDTAの混合物からなる殺菌組成物が提供される。
【0052】
上述した、少なくとも一つのEDTA塩を含む、本質的に少なくとも一つのEDTA塩からなる、または少なくとも一つのEDTA塩からなる、本発明の殺菌組成物は、他の多くの用途に対しても有用である。EDTA溶液は、医療用、歯科用及び獣医科用の表面及び対象物を浸漬、洗浄または接触するための殺菌溶液として使用することができる。本発明のEDTA溶液は、例えば、コンタクトレンズ及び他の眼用器具を保存及び/または消毒するために;入れ歯、ブリッジ、固定装置及び歯ブラシ等の歯科用器具を保存及び/または消毒するために;そして、医療用、歯科用及び獣医科用の器具及び装置を保存及び/または消毒するために、使用することができる。これらの用途において、器具及び表面は、細菌及び/または真菌の感染を実質的に除去するに十分な時間、本発明のEDTA溶液と接触し、またはEDTA溶液に浸漬することができる。本発明のEDTA組成物は、さらに、水及び他の流動体供給ラインを消毒するために使用することができる。流動体供給ラインの消毒は、本発明のEDTA組成物によってラインを断続的に洗い流すことによって行うことができる。同様に、本発明のEDTA組成物は、水の供給及び保存装置中のバイオフィルム、微生物(ある種のウイルス及び原生動物を含む)及び真菌の個体群を撲滅するために使用することができる。
【0053】
殺菌組成物としての特性及び効果を確証するために、本発明のEDTAを含む組成物を用いて数多くの試験及び手順を行った。いくつかの実験手順を以下に述べる。これらの手順及び実験結果は説明目的として提供されるものであって、本発明の態様を限定する意図ではない。
【0054】
実施例1
寒天希釈法を使用した、EDTAの異なった製剤に対する生物の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)データ
以下に述べる寒天希釈法を使用して、EDTAのいくつかの異なった製剤に対する多様なグラム陽性菌、グラム陰性菌及び酵母生物の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を確立した。また、EDTA塩の組み合わせについても、多様な生物に対するMIC及びMBCの試験を行った。
【0055】
細菌菌株が活性な病原菌であり、そしてカテーテルに関連したヒトの細菌感染症の典型的なものであるということを確かにするために、グラム陽性菌及びグラム陰性菌は、カテーテルに関連した感染症を持つヒトの患者から単離した。酵母生物は、重大な敗血症感染を持つ患者から採集した。その生物は、カタログに入れられており、そしてリーズ大学のPeter Kiteの研究室で保存されている。
【0056】
所望のEDTA塩濃度(w/v)になるように蒸留水に適切な試薬等級のEDTA塩を溶解することによって、EDTA塩及びEDTA塩の組み合わせの多様な溶液を調製した。各々のEDTA塩及びEDTA塩の組み合わせについて高濃度保存用EDTA塩溶液が調製され、そして多様な生物のMIC及びMBCの決定に使用された。二ナトリウムEDTAではなくEDTAの四ナトリウム塩及び三ナトリウム塩を用い、そして所望のpH範囲になるように溶液のpHを調節して、四ナトリウムEDTA及び三ナトリウムEDTAの溶液を調製した。EDTA塩の溶液は使用前に無菌化し、そして4℃で保存した。
【0057】
寒天希釈法の手順
寒天の作成
・2リットルの寒天培地をスチームバスに入れ、約1時間(溶けるまで)そのままにした。
・その寒天を50℃に冷却した。
・20個の無菌ガラスビン(125mL)に、それぞれ100mLの寒天培地を配分した。200mg/mLの保存溶液を使用して、これらに0.5、1.0、1.5、2.0、4、6、8、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90及び100mg/mLの四ナトリウムEDTA(または試験される他のEDTA塩またはEDTA塩の組み合わせ)を加えた。
・無菌のペトリ皿に20mLの寒天を注ぎ、放置した。さらに三つのプレートに注いだ。それらが含んでいるEDTAの濃度をプレートにラベルした。これを各濃度について行った。
・必要になるまで、これらのプレートを4℃の冷蔵庫で保存した。
プレートへの接種
・栄養培養液中で23のグラム陽性菌及び19のグラム陰性菌の培養物を、一晩成長させた。
・リン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて、各培養物を106cfu/mLに希釈した。
・自動プレート接種機を用いて、各プレートに21の菌を接種した。
・プレートを37℃で培養した。
・翌日、成長について+または−で記録した。
・MBCを決定するために、無菌ろ紙を使用して、成長したものを最初のプレートから新しいCled寒天プレートに移動した。
・そのレプリカプレートを37℃で一晩、培養した。
・翌日、成長について+または−で記録した。MIC及びMBCを、成長が無かった最も低い濃度として記載した。
【0058】
結果を図1A乃至5Cに示す。図1A乃至1Dは、本質的に、二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA;からなるEDTA塩の溶液に対する多くのグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0059】
図2は、本質的に、四ナトリウムEDTA;二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTA;からなるEDTA塩の溶液に対する酵母のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0060】
図3A及び3Bは、本質的に、銅二ナトリウムEDTA;マグネシウム二ナトリウムEDTA;及び鉄ナトリウムEDTA;からなるEDTA塩の溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0061】
図4A乃至4Cは、本質的に、銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA;からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0062】
図5A乃至5Cは、本質的に、四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA;からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータ(EDTA溶液(w/v)のmg/mlとして示されている)を示している。
【0063】
いくつかのEDTA塩及びEDTA塩の組み合わせが、適度な濃度において、広いスペクトルの細菌菌株を阻害及び/または除去することに有効であった。他のEDTA塩の生体適合性はまだ確立されていないが、これまでの医療での試験及び使用は、ヒト及び動物でのEDTAナトリウム塩の使用のための良好な生体適合性を確立している。EDTAの四ナトリウム塩及び三ナトリウム塩は、広いスペクトルの病原性細菌に対して最も有効であった。さらに、それらのヒト及び獣医科での使用のための生体適合性は確立されている、または容易に確立されると考えられ、そして、それらは費用効果がよく、そして安定である。四ナトリウムEDTA塩は、さらに抗凝血剤として活性であり、そして水性溶媒によく溶解する。これらの要因及び上記の実験を基にして、四ナトリウムEDTA塩及び三ナトリウムEDTA塩が、本発明の殺菌組成物の最も有望な候補として選択された。
【0064】
実施例2
修飾したカルガリー装置法(Calgary device method)を使用した、四ナトリウムEDTAに対する生物の最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)データ
細菌汚染において、バイオフィルム形成は重要な要因である。実効的な殺菌組成物は、好ましくはバイオフィルムの増殖を低減する能力、またはバイオフィルムの形成を予防または阻害する能力を有している。そのため、発明者らは、候補の四ナトリウムEDTA殺菌溶液がバイオフィルムの形成を予防または阻害するかどうかを決定するための試験を行った。四ナトリウムEDTAに対する多様な生物の最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)を修飾したカルガリー装置法を使用して測定した。カルガリー法についてはOlsen et al.のCanadian Journal of Veterinary Research,66:86−92(2002)及び米国特許6599714に記載されている。方法と結果を以下に述べる。
【0065】
所望のEDTA塩の濃度(w/v)になるように蒸留水に試薬等級の四ナトリウムEDTA塩を溶解して四ナトリウムEDTA塩の溶液を調製した。固着性のまたはバイオフィルム形態の多様な生物に対するMBECを測定するために、高濃度の保存四ナトリウムEDTA塩の溶液を調製した。四ナトリウムEDTA溶液は使用前に無菌化し、4℃で保存した。
【0066】
方法
バイオフィルムの形成
・必要とする生物のミュラーヒントンの一晩の培養液(Muller Hinton overnight broth)100mLを使用した。
・96ウエルのマイクロタイタートレイの総てのウエルに200μlをピペットで加えた。96のピンを持った蓋を設置した。200rpmの速度、37℃で24時間、オービタルシェイカー(orbital shaker)で培養した。
【0067】
感受性試験
・上記で形成したバイオフィルムを使用した。
・必要な濃度の試験用薬剤250μlを含んだ新しい96ウエルのマイクロタイタートレイに蓋(ピンを持った)を設置した。37℃で1乃至24時間培養した(シェイカーを使用しない)。
・1、3、6及び24時間の間隔で、ねじ回しを挿入してピンをウエルの中に折ることによって、各濃度において蓋から四つのピンを除いた。
・各濃度において、三つのピンをPBSの5ml洗浄液に入れ、そして一度反転させた。
・その三つのピンを3mLのPBSに入れ、そして15分間超音波をあてた。2μlを3xCLEDプレート上に移し、無菌のプラスチック製スプレッダーを使用して引き延ばした。37℃で一晩培養した。翌日、コロニーの数を記録した。
・SEMのために、残っているルーズピン(loose pin)を4%生理食塩水600μlに置いた。
【0068】
多様な生物に対するMBECの値が図6に示している(この方法によって決定された四ナトリウムEDTA(w/v)のmg/mlで表している)。この結果は、試験された総ての微生物個体群について、40mg/mlの四ナトリウムEDTA(4%w/v)がバイオフィルムを撲滅する有効な濃度であることを示している。
【0069】
多様な微生物に対するMBEC実験によって得られた例となるデータを以下に示す。総ての実験で四ナトリウムEDTAが使用され、そして三回実施された。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
実施例3
患者の陽性なカテーテルに対するインビトロカテーテルロック処理手順
候補の40mg/ml(4%w/v)四ナトリウムEDTA溶液を用いたカテーテルロック処理手順を発展させ、そして、様々な微生物感染について陽性であったサンプルの患者の血液透析カテーテルに対して使用した。微生物感染が確認されたカテーテルに対して四ナトリウムEDTAを用いたカテーテルロック処理を行い、そして様々な時間でコロニー数を数えた。第一の実験で、総てのカテーテルを4%w/v四ナトリウムEDTA溶液で処理した。一方、第二の実験では、カテーテルを様々な濃度の四ナトリウムEDTA溶液で処理した。四ナトリウムEDTA溶液は、実施例1及び2で述べたようにして調製、保存した。手順と結果を以下に示す。
【0077】
方法:
・1mLの無菌のリン酸緩衝食塩水で各管腔を洗い流すことによって、感染の疑いのために取り除かれた腎臓血液透析カテーテルを選別した。血液寒天プレート上に広げられた1μL及び10μLのアリコートを用いて定量培養を行い、そして培養した。
・選別の後まで4℃でカテーテルを保存し、そして外部管腔をアルコールワイプで消毒した。
・ロック処理試験の前に、バイオフィルムの生育を確実にし、そして感染生物による総ての管腔内表面の全体的なコロニー化を確実にするために、選別された陽性のカテーテルを5mLシリンジを用いて栄養培養液でロックし、そして37℃で一晩培養した。
・一晩培養後、各カテーテル管腔5mLの無菌食塩水で洗い流し、その末端から二つの1cmの片を切り取り、そして各片を1mLの1M無菌塩化カルシウム中に置いた(薬剤の中和のため)。片の一つは走査型電子顕微鏡(SEM)のため、そして他の片は無菌のユニバーサル(universal)容器内での培養のためである。
・培養手順のため、そのユニバーサル容器を室温で15分間、超音波処理用バスに設置し、その後20秒間、ボルテックス撹拌(vortexed)した。
・1μl及び10μlのアリコートを血液寒天プレート上に加え、無菌のプラスチック製L形ロッド(rods)で引き延ばし、そして37℃で一晩培養して定量培養を行った。そして、翌日、コロニーを数えた。
・適当な濃度の四ナトリウムEDTAロック溶液でカテーテルを洗い流し、ロックし、そして37℃で18時間培養した。
・3時間、6時間及び18時間培養後に、カテーテル末端から二つの1cmの片を切り取り1mLの1M無菌塩化カルシウム溶液で中和した。
・各時間間隔で、上記のようにして定量的に数を数えた。そして、一つの片はSEMのために保存した。
【0078】
17の感染した腎臓血液透析カテーテルを濃度40mg/ml(4%w/v)の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物で処理した。結果を図7に示す。また、10の感染した腎臓血液透析カテーテル、一つの動脈カテーテル及び一つの静脈カテーテルを濃度20乃至100mg/ml(2乃至10%w/v)の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物で処理した。結果を図8に示す。
【0079】
これらの結果は、24時間処理後にほとんどの生物の個体群を死滅または劇的に減少させるのに40mg/ml(4%w/v)の四ナトリウムEDTAが有効であることを示している。四ナトリウムEDTAのこの濃度は、ヒトまたは他の動物に関する使用に対して安全であり、そして有効であると考えられる。そのため、四ナトリウムEDTAのこの濃度は、本発明の殺菌組成物及び方法において望ましい濃度である。
【0080】
実施例4
四ナトリウムEDTAのアカントアメーバに対する効果、及び四ナトリウムEDTA処理クレブシエラ(Klebsiella)のアカントアメーバに対する効果
数種類のアカントアメーバがヒトに感染する。ヒトに接触するコンタクトレンズ及び他の医療器具の不適切な保存の結果として、しばしばアカントアメーバ感染症が起こる。アカントアメーバは細菌個体を餌にしており、多くの処置に対して耐性である。上記のようにして調製した四ナトリウムEDTAのアカントアメーバ個体群に対する効果を以下のようにして試験した。また、溶媒としてページ食塩水(Pages saline)及び生理食塩水を使用して四ナトリウムEDTA組成物を調製した。クレブシエラと処理した四ナトリウムEDTAのアカントアメーバに対する効果についても、以下の方法によって実験的に試験した。
【0081】
四ナトリウムEDTAのアカントアメーバに対する効果
方法:
・試験前に、Klebsiella edwardsiiを持った新しい血液寒天プレートを37℃で18時間培養した。
・四ナトリウムEDTA(100mg/mL)の保存溶液を用いてページ食塩水中で22mg/mL及び44mg/mLの濃度の溶液を調製した。
・各濃度の溶液9mLを無菌ガラス試験管に入れた。コントロールとして別の無菌ガラス試験管に無菌のページ食塩水9mLを入れた。
・無菌のページ食塩水6mLにKlebsiella edwardsiiを懸濁した。マクファーランド標準(McFarland standard)5に調節した。
・連続した各希釈液及びコントロールに懸濁液1mLを加えた。Klebsiella懸濁液での希釈のため、各濃度は20mg/mL及び40mg/mLである。コントロールは四ナトリウムEDTAを含んでいない。生理食塩水についても総ての濃度で行った。
・ボルテックスで撹拌した。各試験管はマクファーランド0.5でKlebsiellaの懸濁を含んでいる。
・アカントアメーバプレート全体の表面を削り取り、1.5mLのページ食塩水に懸濁し、ボルテックスで撹拌した。
・アカントアメーバ懸濁液200μlを各連続した希釈液及びコントロールに加えた。
・試験管を24時間、30℃の培養器に置いた。
・培養後、各ユニバーサル(universal)を3000rpmで10分間遠心分離した。
・上澄みを捨て、沈殿物を再懸濁した。
・各希釈液及びコントロール10μlを、二組、Klebsiella地の非栄養寒天プレートに加えた。移動を防ぐために各プレートの中心に溝を作り、そして各サイドに試験を行う希釈液10μlを加えた。
・各培養の個所に黒のマーカーペンで印をした。
・プレートを30℃で72時間培養した。
・各培養個所で、10倍の接眼レンズの光学顕微鏡を用いたプレートの直接可視化によってアカントアメーバの成長を観察した。
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
この結果は、ページ食塩水及び生理食塩水中の20乃至40mg/ml(2乃至4%w/v)の四ナトリウムEDTAが、48時間の処理後、アカントアメーバ個体群を減少させること、または実質的に除去することに有効であるということを示している。溶媒として水を使用して調製した四ナトリウムEDTA組成物も有効であった(データは示していない)。これらの結果は、本発明の殺菌組成物が、コンタクトレンズ、及び歯科用、矯正歯科用及び/または歯周用器具を含む多様な医療用装置及び器具のための浸漬用溶液としての用途に適しているということを示している。本発明の殺菌組成物はまた、純粋及び海水の保存及び分配システム、暖房、通気及び空調設備、加湿器及び透析装置等を含む他の場面でアカントアメーバの個体群を実質的に除去することにも有効である。
【0086】
アカントアメーバは細菌を餌にする。そのため、発明者らは、本発明の殺菌性EDTA組成物と処理した細菌個体群が、処理した細菌に対するアカントアメーバの摂食行動に影響があるかどうかを試験した。
【0087】
四ナトリウムEDTA処理Klebsiellaのアカントアメーバに対する効果
方法:
・試験前に、Klebsiella edwardsiiを持った新しい血液寒天プレートを37℃で18時間培養した。
・四ナトリウムEDTA(100mg/mL)の保存溶液を用いてページ食塩水中で22mg/mL及び44mg/mLの濃度の溶液を調製した。
・各濃度の溶液9mLを無菌ガラス試験管に入れた。コントロールとして別の無菌ガラス試験管に無菌のページ食塩水9mLを入れた。
・無菌のページ食塩水6mLにKlebsiella edwardsiiを懸濁した。マクファーランド標準5に調節した。
・連続した各希釈液及びコントロールに懸濁液1mLを加えた。Klebsiella懸濁液での希釈のため、各濃度は20mg/mL及び40mg/mLである。コントロールは四ナトリウムEDTAを含んでいない。生理食塩水についても総ての濃度で行った。
・ボルテックスで撹拌した。各試験管はマクファーランド0.5でKlebsiellaの懸濁を含んでいる。
・試験管を37℃で一晩培養した。
・翌日、300rpmで10分間、遠心分離した。上澄みを捨て、新しい10mlの生理食塩水またはページ食塩水を加え、再懸濁し、そして再び遠心分離した。上澄みを捨て、1mlの生理食塩水またはページ食塩水に懸濁した。
・アカントアメーバプレート全体の表面を削り取り、1.5mLのページ食塩水に懸濁し、ボルテックスで撹拌した。
・アカントアメーバ懸濁液200μlを食塩水9mlの入った試験管3本及びページ食塩水3mlの入った試験管3本に加えた。Klebsiellaとの培養で使用されたEDTA濃度のように、各試験管に印を付けた。
・Klebsiellaの再懸濁液1mlをアカントアメーバを含む適切な試験管に加えた。
・試験管を30℃で24時間、培養器中に置いた。
・試験管の別のセットを準備し、上述のようにして、37℃で一晩、EDTAとKlebsiellaを培養した。
・培養後、アカントアメーバを含む各試験管を3000rpmで10分間遠心分離した。
・上澄みを捨て、沈殿物を再懸濁した。
・各希釈液及びコントロール10μlを、二組、Klebsiella(EDTAと培養していない)地の非栄養寒天プレートに加えた。移動を防ぐために各プレートの中心に溝を作り、そして各サイドに試験を行う希釈液10μlを加えた。
・各培養の個所に黒のマーカーペンで印をした。
・プレートを30℃で培養した。
・各培養個所で、10倍の接眼レンズの光学顕微鏡を用いたプレートの直接可視化によってアカントアメーバの成長を観察した。
・アカントアメーバ懸濁液の残りを、新しい生理食塩水または新しいページ食塩水の入った試験管の新しいセットに加えた。
・事前にEDTAと一晩培養したKlebsiellaを洗浄し、再懸濁し、そしてアカントアメーバの入った適切な試験管に加えた。
・試験管を30℃で一晩培養した。
・培養後、各ユニバーサルを3000rpmで10分間遠心分離した。
・上澄みを捨て、そして沈殿物を再懸濁した。
・各希釈液及びコントロール10μlを、二組、Klebsiella(EDTAと培養していない)地の非栄養寒天プレートに加えた。移動を防ぐために各プレートの中心に溝を作り、そして各サイドに試験を行う希釈液10μlを加えた。
・各培養の個所に黒のマーカーペンで印をした。
・プレートを30℃で培養した。
・各培養個所で、10倍の接眼レンズの光学顕微鏡を用いたプレートの直接可視化によってアカントアメーバの成長を観察した。
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】
これらの結果は、アカントアメーバの成長を抑止することができ、そして、アカントアメーバが餌にする細菌個体を本発明の殺菌性EDTA組成物で処理することによってアカントアメーバ個体群を実質的に除去することができるということを示している。濃度20乃至40mg/mL(2乃至4%w/v)の四ナトリウムEDTAを含む殺菌性EDTA組成物が有効であった。これらの結果は、コンタクトレンズ、及び歯科用/矯正歯科用/歯周用器具を含む多様な医療用装置及び器具のための浸漬用溶液としての用途、及び純粋及び海水の保存及び分配システム、暖房、通気及び空調設備、加湿器及び透析装置等を含む他の用途に対する本発明の殺菌組成物の実用性を立証している。
【0091】
実施例5
四ナトリウムEDTA組成物が、微生物のシリコンチューブへの付着または密着を予防するかどうかの確認を行った。シリコンチューブへの微生物の付着及び密着を予防することができれば、バイオフィルムの形成を低減することができる。実験方法と得られた結果を以下に示す。
【0092】
方法:
・管腔内部をふさぐために1cm片のシリコンチューブを溶融したワックスで満たし、そして4℃で固めた。
・コントロールとして、無菌のリン酸緩衝食塩水(PBS)30mLに4片のシリコンチューブを入れた。4%四ナトリウムEDTA30mLに8片のシリコンチューブを入れた。
・30分後、PBS中の4片及び4%四ナトリウムEDTA中の4片を熱ブロック上のきれいな容器に移し、乾燥した。
・残りの4片を30mLの無菌PBSに移して洗浄し、そしてこれまでのように空気乾燥した。
・乾燥後、12片総てを105cfu/mLの生物の混合物(栄養培養液中、37℃でKlebsiella pneumoniae及びCNS細胞を一晩培養したもの)に移し、37℃で培養した。
・30分後、各型の2片を分離し、30mLの無菌PBSで2回洗浄した。これまでのように空気乾燥した。各型の汚染を予防するために、別々に洗浄し別々の乾燥容器を使用した。
・各片を遠心分離管の1mLのPBSに移し、超音波水浴で15分間超音波処理した。
・各試験管を、二組、自動プレート培養器上、プレートに加えた、対数希釈の50μl
・1/10希釈の各試験管を、二組、プレートに加えた
・プレートを37℃で一晩培養した。自動プレート読取器ProtoCOLでコロニー数を読み取った。6時間後についても行った。
【0093】
コントロールのカテーテル片及びEDTAで処理したカテーテル片の結果を以下に示す。
【0094】
【表12】
【0095】
ニート(neat)のEDTA溶液の結果がより再現性があることが判明したので、これらの結果をさらに分析した。各片は1mLの溶液に置かれたので、mL当たりの数は片当たりの数に等しい。
【0096】
【表13】
【0097】
【表14】
【0098】
Klebsiella+CNSで24時間で繰り返した。
【0099】
【表15】
【0100】
【表16】
【0101】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する結果。
【0102】
【表17】
【0103】
【表18】
【0104】
これらの結果は、空気乾燥のカテーテル片及び洗浄したカテーテル片の双方において、細菌個体群の少なくとも短時間の減少を実証している。
【0105】
実施例6
四ナトリウムEDTAをエタノールと組み合わせた場合のMBC値の変化
単独のEDTA溶液、単独のアルコール溶液及びEDTA/アルコール溶液の効果を試験するために、四ナトリウムEDTAの濃度(0、0.1、0.5、1、2、3、4及び8mg/ml、w/v)の溶液を水及びエタノールを用いて(最終のエタノール濃度が、水中、0、0.1、0.5、1、5、10、20及び40%になるように)調製した。蒸留水で四ナトリウムEDTAの高濃度の保存溶液を調製し、そして適当なエタノール濃度になるようにその高濃度の保存水溶液にエタノールを加えた。
【0106】
方法:
・栄養培養液中、37℃で一晩、生物を培養した。
・アルコールと四ナトリウムEDTAの保存溶液で96ウエルプレート(一つの培養につき一つ)のグリッドパターンを満たした。0、0.1、0.5、1、5、10、20及び40%のアルコール濃度(v/v)でイソプロピルアルコールを含む水溶液中で、0、0.1、0.5、1、2、3、4及び8mg/mlの四ナトリウムEDTA濃度(w/v)のEDTA溶液を使用した。
・各ウエルは各希釈液150μlと50μlの1x108cfu/mLの生物を含む。
・5分、6時間及び24時間後、96ピンの蓋をプレート上(そして各ウエル内に)に置き、そしてその蓋を各ウエルに300μLの新しい栄養培養液が入った96ウエルに移動することによって、各ウエルを培養した。37℃で一晩培養した。その培養の間、微生物を接種した各プレートを37℃で培養した。
・24時間後、各ウエルの濁度を記録した。
【0107】
いくつかの生物に対する結果を以下に示す。
【0108】
【表19】
【0109】
四ナトリウムEDTA水溶液がエタノール(単独)溶液より効果的に試験した微生物を死滅させた。四ナトリウムEDTAのアルコール溶液との組み合わせが最も低い濃度で試験した微生物を死滅させた。1%アルコール溶液中の2mg/ml(0.2w/v)四ナトリウムEDTAが優れた結果を与え、試験した総ての生物に抗細菌効果を示した。この殺菌溶液は、四ナトリウムEDTAとエタノールの低濃度において、四ナトリウムEDTA水溶液単独またはエタノール単独より効果的であった。さらに、それは費用効果が高く、安全で、そして製造及び使用が容易である。局所使用のための本発明の殺菌組成物は水性溶媒及びエタノールの混合溶媒中のEDTA塩を含む。
【0110】
実施例7
エタノール中の四ナトリウムEDTAの溶解度及びpHに及ぼす影響
エタノール中の四ナトリウムEDTAの溶解度が試験され、そしてアルコール溶媒中の多様な四ナトリウムEDTA溶液のpHが測定された。
【0111】
方法:
・1.5mLサイズのエッペンドルフチューブに10乃至100mgの四ナトリウムEDTAを、二組、量り分けた。74%エタノール1mLを各チューブに加えそして30秒管ボルテックスで撹拌した。
・量り分けた四ナトリウムEDTAの二組のセットに、0.5ml無菌蒸留水を加えボルテックスで撹拌し、そして74%エタノール0.5mlを加えた。
・四ナトリウムEDTAのチューブのそれぞれで、溶解度が観察された時点のpHの試験を行った。
【0112】
実験結果は、四ナトリウムEDTAが74%エタノール溶液に完全に不溶であることを示した。実験結果はさらに、四ナトリウムEDTAが10乃至100mg/ml、w/vの濃度で蒸留水に溶解された場合、エタノールの添加によっても四ナトリウムEDTAが溶液中にとどまっていることを示した。好適な技術は、まずEDTA塩を水溶液に溶解し、それからEDTA塩が溶解しにくいまたは不溶のエタノールまたは別の溶媒を添加することを含む。この方法で調製されたEDTA塩の溶液は、長期間安定であることが期待される。多様な溶液について測定されたpH値は以下の通りであった。
【0113】
74%エタノール単独 pH7.8
水 pH7.1
+10mg四ナトリウムEDTA pH9.0
+20mg四ナトリウムEDTA pH10.8
+40mg四ナトリウムEDTA pH11
+80mg四ナトリウムEDTA pH11.15
+100mg四ナトリウムEDTA pH11.25
【0114】
実施例8
四ナトリウムEDTA溶液に対する121℃でのオートクレーブ処理の影響
使用前に四ナトリウムEDTA溶液を無菌化するためにオートクレーブを使用できるかどうかを判断するために、四ナトリウムEDTA溶液に対するオートクレーブ処理の影響についての試験を行った。
【0115】
方法:
・無菌水中の0、20、80及び100mg/mLの四ナトリウムEDTA溶液、及び50℃の無菌溶融寒天培地中の0、20、80及び100mg/mLの四ナトリウムEDTA溶液を、二組、作成した。
・一組を室温に置き(加熱しない)、他方をオートクレーブした(加熱した)。
・翌日、総ての寒天容器を蒸し器に設置し、40分間で溶融した。
拡散区域の測定:
・穿孔器を使用して、新しい16の血液寒天プレートに二つの穴を開けた。
・0.5マクファーランドのCNSの懸濁液を調製し、無菌綿棒でプレート上に引き延ばして培地を作成した。
・それぞれの四ナトリウムEDTA溶液150μlを、二組、打ち抜いた穴に入れ、37℃で一晩培養した。
・翌日、拡散した区域を測定し、記録した。
【0116】
区域の大きさ(mm)で測定された結果を以下に示す。コントロールの区域の大きさを濃度に対してプロットし、試験サンプルの実際のEDTA濃度を決定した。以下に示す。これらの結果は、無菌水中であろうと寒天中であろうと、四ナトリウムEDTA組成物をオートクレーブ処理することは、四ナトリウムEDTA組成物の抗菌活性に実質的に影響しないことを示している。
【0117】
【表20】
【0118】
実施例9
EDTAの異なった製剤に対する121℃でのオートクレーブ処理の影響
使用前に多様なEDTA溶液を無菌化するためにオートクレーブを使用できるかどうかを判断するために、EDTA溶液の異なった製剤に対するオートクレーブ処理の影響についての試験を行った。使用された方法と結果を以下に示す。
【0119】
方法:
寒天の作成
・50mLの寒天培地溶液を7つの100mL無菌ガラスボトルに加えた。
・第一のボトルにはEDTA粉末を加えない(0とラベルした)。
・第二のボトルに2000mgのEDTA粉末を加えた(40mg/mL オートクレーブとラベルした)。
・第三のボトルに4000mgのEDTA粉末を加えた(80mg/mL オートクレーブとラベルした)。
・第四のボトルに5000mgのEDTA粉末を加えた(100mg/mL オートクレーブとラベルした)。
・第五乃至七のボトルにはEDTAを加えない(しかし40、80及び100mg/mL 非オートクレーブとラベルした)。室温に置いた。
・これらの各EDTA製剤について試験した。オートクレーブとラベルした総てのボトルを、121℃で20分間、オートクレーブ処理した。
・翌日、総てのボトルをスチームバスに入れ、寒天を注げるように溶融した。
・溶融後、50℃に冷却し、そして非オートクレーブとラベルしたボトルに適切な量のEDTAを加え、総てのボトルについて試験の準備をした。
拡散区域の測定
・穿孔器を使用して、新しい7の血液寒天プレートに二つの穴を開けた。
・0.5マクファーランドのCNSの懸濁液を調製し、無菌綿棒でプレート上に引き延ばして培地を作成した。
・各ボトルの150μlを、2つの別々の打ち抜いた穴に入れ、37℃で一晩培養した。
・各EDTA製剤について実施した。
・翌日、拡散した区域を測定し、記録した。二組の穴を使用し、区域当たり二つの測定を行った。
【0120】
銅及び鉄EDTA溶液は区域を生じなかった。そのため、これらの溶液に対する熱の効果はこの方法では測定できない。二アンモニウムEDTA、二カリウムEDTA及びマグネシウムEDTA溶液について測定した区域の大きさを以下に示す。コントロール(加熱なし)の区域の大きさを濃度に対してプロットし、試験サンプル(加熱)の実際のEDTA濃度を決定した。以下に示す。
【0121】
【表21】
【0122】
【表22】
【0123】
これらの結果は、オートクレーブ処理がほとんどのEDTA塩組成物の効果を減じていないことを示している。そのため、無菌の殺菌組成物を提供するため、調製後、本発明の殺菌組成物のオートクレーブ処理を行うことができる。
【0124】
実施例10
EDTA塩、塩化カルシウム及びクエン酸ナトリウムのpH値
溶媒として蒸留水を用い、特定の濃度において、多様なEDTA塩、塩化カルシウム及びクエン酸ナトリウムのpH値を測定した。結果を以下に示す。
【0125】
EDTAの遊離酸 10% pH4.7
二アンモニウムEDTA 10% pH4.38
カルシウムナトリウムEDTA 10% pH6.68
二カリウムEDTA 10% pH4.5
銅EDTA 10% pH6.15
四ナトリウムEDTA 10% pH11.6
四ナトリウムEDTA 2% pH11
TS EDTA中和塩化カルシウム pH7.3
塩化カルシウム 1モル濃度 pH3.8
クエン酸ナトリウム 50%、25% pH8.5
【0126】
実施例11
EDTA溶液の抗凝血特性の確認
以下の方法によってEDTA溶液の抗凝血特性を確認した。
【0127】
方法:
・pHが11.0乃至11.6に調節された、濃度0.5乃至100mg/mLの四ナトリウムEDTA溶液または二ナトリウムEDTA溶液の100μlアリコートをプラスチック製キャップ付チューブに加えた。
・健康なボランティアから採取した新鮮な血液900μLをEDTA溶液の各アリコートに加え、一定間隔でチューブを反転させることによって穏やかに混合した。
【0128】
EDTA溶液を含まない、血液を含むコントロールのチューブは、10乃至23分という凝固時間であった。二ナトリウムEDTA溶液を含むチューブの凝固時間は、総て5日を超えていた。1mg/mLより大きい濃度の四ナトリウムEDTAのチューブの凝固時間は、5日を超えていた。0.5mg/mL濃度の四ナトリウムEDTAのチューブは28分で凝固した。それゆえ、四ナトリウムEDTAは1mg/ml(1%w/v)を超える濃度で抗凝血剤として有効である。
【0129】
実施例12
四ナトリウム塩懸濁液の浸透圧
標準的な実験室技術を用いて、水及び生理食塩水中の多様な濃度の四ナトリウムEDTA溶液の浸透圧と赤血球溶解の試験を行った。各濃度のEDTA溶液2mlに50μlの血液を2時間加えることによって赤血球溶解の試験を行った。血漿浸透圧は275乃至295m/osmolであった。
【0130】
【表23】
【0131】
実施例13
人工尿結晶(Artificial Urine Crystal:AUC)の溶解に対する三つのEDTA塩の効果
尿道カテーテルについての一つの問題は、カテーテル表面に尿結晶が堆積することである。尿結晶の堆積物は微生物のコロニー化及び/またはバイオフィルムの形成、並びにカテーテルの流量の減少、を促進し得る。そのため、尿道カテーテルに関連して、尿結晶の形成を低減する消毒組成物を使用することが好ましい。標準的な実験室技術を用いて、人工尿結晶の溶解に対する三つのEDTA塩溶液の効果について試験を行った。
【0132】
材料:
・25mlプラスチック製ユニバーサル容器内に人工尿及びウレアーゼを加えて45℃で7日間培養した。
・100mg/mlの二アンモニウムEDTA、二カリウムEDTA及び四ナトリウムEDTAの溶液。
【0133】
方法:
・4000rpm、2分間で人工尿結晶を遠心分離する。
・上澄みをデカントし、結晶を水で洗浄し、そして遠心分離した。
・結晶を水1mlに再懸濁し、そして200μlのアリコートを四つのユニバーサル容器に加えた。
・100mg/mlの各EDTAの溶液4ml及びコントロールとしての水4mlを各ユニバーサル容器に室温で加えた。
・1、2、及び3時間後にコントロールに対する結晶の溶解を目視観察した。
【0134】
結果を以下に示す。水溶液に比べて総てのEDTA塩溶液が尿結晶堆積物を減少させた。それゆえ、EDTA塩溶液は尿道カテーテルへの使用に適している。
【0135】
【表24】
【0136】
特許及び非特許文献を含む、本明細書で引用した総ての参考文献を、その全体を参考資料として本明細書に取り込む。
上述の明細書において本発明はある好ましい実施態様との関係で記述し、そして多くの詳細を例証目的で説明しているが、本発明はその他の実施態様を許容し、そしてここで記述したある種の詳細を本発明の基本原理から外れることなく大きく変えることができるということが、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】図1Aは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図1B】図1Bは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図1C】図1Cは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図1D】図1Dは、寒天希釈法を使用した、本質的に二カリウムEDTA;二アンモニウムEDTA;二ナトリウムEDTA;三ナトリウムEDTA;及び四ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図2】図2は、寒天希釈法を使用した、EDTAの異なった製剤に対する多様な真菌生物のMIC及びMBCを示している。実験方法は実施例1に記載した。真菌生物はヒトの患者から採集した。
【図3A】図3Aは、本質的に銅二ナトリウムEDTA;マグネシウム二ナトリウムEDTA;及び鉄ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図3B】図3Bは、本質的に銅二ナトリウムEDTA;マグネシウム二ナトリウムEDTA;及び鉄ナトリウムEDTA、からなるEDTA塩溶液に対するグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図4A】図4Aは、本質的に銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図4B】図4Bは、本質的に銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図4C】図4Cは、本質的に銅二ナトリウムEDTAと四ナトリウムEDTA;銅二ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び銅二ナトリウEDTAと二アンモニウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図5A】図5Aは、本質的に四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図5B】図5Bは、本質的に四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図5C】図5Cは、本質的に四ナトリウムEDTAと二アンモニウムEDTA;四ナトリウムEDTAと二カリウムEDTA;及び二アンモニウムEDTAと二カリウムEDTA、からなるEDTA塩の組み合わせの溶液に対する多様なグラム陽性菌及びグラム陰性菌のMIC及びMBCデータを示している。細菌はヒトの患者のカテーテルに関連した感染症から単離した。実験方法は実施例1に記載した。
【図6】図6は、実施例2に記載した方法を使用して四ナトリウムEDTA(mg/ml)(w/v)中で発現された多様な生物に対する最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)を示している。
【図7】図7は、本質的に40mg/ml(w/v)濃度の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物を用いた、感染した腎臓血液透析カテーテルの処置の実験結果を示している。
【図8】図8は、本質的に20乃至100mg/ml(w/v)濃度の四ナトリウムEDTAからなる殺菌組成物を用いた、感染した腎臓血液透析カテーテル、動脈カテーテル及び静脈カテーテルの処置の実験結果を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶媒を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項2】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項2に記載の溶液。
【請求項4】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項3に記載の溶液。
【請求項5】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項5に記載の溶液。
【請求項7】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項8に記載の溶液。
【請求項10】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項11】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項14】
前記溶液が:
(a)抗凝血活性;
(b)真菌性病原菌に対する抗真菌活性;
(c)原生動物感染症に対する阻害活性;
(d)アメーバ感染症に対する阻害活性;
(e)少なくとも適度な量で患者と接触した場合の安全性及び生体適合性;
(d)少なくとも適度な量で患者の血流と接触した場合の安全性及び生体適合性;及び
(e)工業的対象物及び表面との安全性及び適合性、
からなる群から選択される少なくとも一つの特性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項14】
前記溶液が、無菌及び発熱物質を含まない、請求項1に記載の溶液。
【請求項15】
溶媒との再構成によって請求項1の溶液を形成する、請求項1の殺菌溶液の乾燥形態。
【請求項16】
表面及び対象物への局所使用に適した請求項1の溶液の製剤。
【請求項17】
長期間にわたって殺菌活性を示す、請求項1の溶液の徐放性製剤。
【請求項18】
溶媒及び0.01%乃至15%w/vの濃度の少なくとも一つのナトリウムEDTA塩を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも9.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項19】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項15に記載の溶液。
【請求項20】
本質的に、少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶剤とからなる殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項21】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項22】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項23】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項24】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項20に記載の溶液。
【請求項25】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項24に記載の溶液。
【請求項26】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項20に記載の溶液。
【請求項27】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項26に記載の溶液。
【請求項28】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項27に記載の溶液。
【請求項29】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項20に記載の溶液。
【請求項30】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項29に記載の溶液。
【請求項31】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項29に記載の溶液。
【請求項32】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項33】
表面または対象物を請求項1乃至32のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、表面または対象物上若しくは対象物内部の少なくとも一つの望ましくない微生物の個体群の成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項34】
前記望ましくない微生物が、細菌個体群、真菌性病原菌、原生動物個体群及びアメーバ個体群からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記望ましくない微生物がアカントアメーバである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記表面または対象物が、カテーテル;医療用チューブ及び導管;血管内器具;埋め込まれた医療用器具;医療用または獣医科用装置;コンタクトレンズ;眼用埋め込み物;歯科用、矯正歯科用または歯周用の器具;水の保存、分配及び処理施設;工業用装置;及び食品生産及び加工装置、からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
バイオフィルムを請求項1乃至32のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、バイオフィルムの成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項38】
請求項1乃至32のいずれか一項に記載の溶液に浸漬されている、傷治療における使用のためのカバー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶媒を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項2】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項2に記載の溶液。
【請求項4】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項3に記載の溶液。
【請求項5】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項5に記載の溶液。
【請求項7】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項8に記載の溶液。
【請求項10】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項11】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項14】
前記溶液が:
(a)抗凝血活性;
(b)真菌性病原菌に対する抗真菌活性;
(c)原生動物感染症に対する阻害活性;
(d)アメーバ感染症に対する阻害活性;
(e)少なくとも適度な量で患者と接触した場合の安全性及び生体適合性;
(d)少なくとも適度な量で患者の血流と接触した場合の安全性及び生体適合性;及び
(e)工業的対象物及び表面との安全性及び適合性、
からなる群から選択される少なくとも一つの特性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項15】
前記溶液が、無菌及び発熱物質を含まない、請求項1に記載の溶液。
【請求項16】
溶媒との再構成によって請求項1の溶液を形成する、請求項1の殺菌溶液の乾燥形態。
【請求項17】
表面及び対象物への局所使用に適した請求項1の溶液の製剤。
【請求項18】
長期間にわたって殺菌活性を示す、請求項1の溶液の徐放性製剤。
【請求項19】
溶媒及び0.01%乃至15%w/vの濃度の少なくとも一つのナトリウムEDTA塩を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも9.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項20】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項16に記載の溶液。
【請求項21】
本質的に、少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶剤とからなる殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項22】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項23】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項24】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項25】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項21に記載の溶液。
【請求項26】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項25に記載の溶液。
【請求項27】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項21に記載の溶液。
【請求項28】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項27に記載の溶液。
【請求項29】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項28に記載の溶液。
【請求項30】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項21に記載の溶液。
【請求項31】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項30に記載の溶液。
【請求項32】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項30に記載の溶液。
【請求項33】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項34】
表面または対象物を請求項1乃至33のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、表面または対象物上若しくは対象物内部の少なくとも一つの望ましくない微生物の個体群の成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項35】
前記望ましくない微生物が、細菌個体群、真菌性病原菌、原生動物個体群及びアメーバ個体群からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記望ましくない微生物がアカントアメーバである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記表面または対象物が、カテーテル;医療用チューブ及び導管;血管内器具;埋め込まれた医療用器具;医療用または獣医科用装置;コンタクトレンズ;眼用埋め込み物;歯科用、矯正歯科用または歯周用の器具;水の保存、分配及び処理施設;工業用装置;及び食品生産及び加工装置、からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
バイオフィルムを請求項1乃至33のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、バイオフィルムの成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項39】
請求項1乃至33のいずれか一項に記載の溶液に浸漬されている、傷治療における使用のためのカバー。
【請求項1】
少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶媒を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項2】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項2に記載の溶液。
【請求項4】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項3に記載の溶液。
【請求項5】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項5に記載の溶液。
【請求項7】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項8に記載の溶液。
【請求項10】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項11】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項14】
前記溶液が:
(a)抗凝血活性;
(b)真菌性病原菌に対する抗真菌活性;
(c)原生動物感染症に対する阻害活性;
(d)アメーバ感染症に対する阻害活性;
(e)少なくとも適度な量で患者と接触した場合の安全性及び生体適合性;
(d)少なくとも適度な量で患者の血流と接触した場合の安全性及び生体適合性;及び
(e)工業的対象物及び表面との安全性及び適合性、
からなる群から選択される少なくとも一つの特性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項14】
前記溶液が、無菌及び発熱物質を含まない、請求項1に記載の溶液。
【請求項15】
溶媒との再構成によって請求項1の溶液を形成する、請求項1の殺菌溶液の乾燥形態。
【請求項16】
表面及び対象物への局所使用に適した請求項1の溶液の製剤。
【請求項17】
長期間にわたって殺菌活性を示す、請求項1の溶液の徐放性製剤。
【請求項18】
溶媒及び0.01%乃至15%w/vの濃度の少なくとも一つのナトリウムEDTA塩を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも9.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項19】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項15に記載の溶液。
【請求項20】
本質的に、少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶剤とからなる殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項21】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項22】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項23】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項24】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項20に記載の溶液。
【請求項25】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項24に記載の溶液。
【請求項26】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項20に記載の溶液。
【請求項27】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項26に記載の溶液。
【請求項28】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項27に記載の溶液。
【請求項29】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項20に記載の溶液。
【請求項30】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項29に記載の溶液。
【請求項31】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項29に記載の溶液。
【請求項32】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項20に記載の溶液。
【請求項33】
表面または対象物を請求項1乃至32のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、表面または対象物上若しくは対象物内部の少なくとも一つの望ましくない微生物の個体群の成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項34】
前記望ましくない微生物が、細菌個体群、真菌性病原菌、原生動物個体群及びアメーバ個体群からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記望ましくない微生物がアカントアメーバである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記表面または対象物が、カテーテル;医療用チューブ及び導管;血管内器具;埋め込まれた医療用器具;医療用または獣医科用装置;コンタクトレンズ;眼用埋め込み物;歯科用、矯正歯科用または歯周用の器具;水の保存、分配及び処理施設;工業用装置;及び食品生産及び加工装置、からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
バイオフィルムを請求項1乃至32のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、バイオフィルムの成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項38】
請求項1乃至32のいずれか一項に記載の溶液に浸漬されている、傷治療における使用のためのカバー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶媒を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項2】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項2に記載の溶液。
【請求項4】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項3に記載の溶液。
【請求項5】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項5に記載の溶液。
【請求項7】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.2%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項8に記載の溶液。
【請求項10】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項11】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項14】
前記溶液が:
(a)抗凝血活性;
(b)真菌性病原菌に対する抗真菌活性;
(c)原生動物感染症に対する阻害活性;
(d)アメーバ感染症に対する阻害活性;
(e)少なくとも適度な量で患者と接触した場合の安全性及び生体適合性;
(d)少なくとも適度な量で患者の血流と接触した場合の安全性及び生体適合性;及び
(e)工業的対象物及び表面との安全性及び適合性、
からなる群から選択される少なくとも一つの特性を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項15】
前記溶液が、無菌及び発熱物質を含まない、請求項1に記載の溶液。
【請求項16】
溶媒との再構成によって請求項1の溶液を形成する、請求項1の殺菌溶液の乾燥形態。
【請求項17】
表面及び対象物への局所使用に適した請求項1の溶液の製剤。
【請求項18】
長期間にわたって殺菌活性を示す、請求項1の溶液の徐放性製剤。
【請求項19】
溶媒及び0.01%乃至15%w/vの濃度の少なくとも一つのナトリウムEDTA塩を含む殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも9.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項20】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項16に記載の溶液。
【請求項21】
本質的に、少なくとも0.01%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の少なくとも一つの塩及び少なくとも一つの溶剤とからなる殺菌溶液であって、前記溶液が少なくとも8.0のpHを有し、そして広いスペクトルの細菌に対して抗細菌活性を有する、前記溶液。
【請求項22】
前記溶液が8.5乃至12.5のpHを有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項23】
前記溶液が9.5乃至11.5のpHを有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項24】
前記溶液が10.5乃至11.5のpHを有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項25】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、二ナトリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、アンモニウムEDTA、二アンモニウムEDTA、カリウムEDTA、二カリウムEDTA、銅二ナトリウムEDTA、マグネシウム二ナトリウムEDTA、鉄ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項21に記載の溶液。
【請求項26】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、三ナトリウムEDTA、四ナトリウムEDTA、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項25に記載の溶液。
【請求項27】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%w/v乃至10.0%w/vの濃度で存在している、請求項21に記載の溶液。
【請求項28】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至6.0%w/vの濃度で存在している、請求項27に記載の溶液。
【請求項29】
前記EDTAの少なくとも一つの塩が、0.02%乃至4.0%w/vの濃度で存在している、請求項28に記載の溶液。
【請求項30】
前記溶媒が、水;食塩水、アルコール、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項21に記載の溶液。
【請求項31】
前記溶媒が、水とエタノールの組み合わせである、請求項30に記載の溶液。
【請求項32】
前記溶液が、0.1%乃至10%v/vのエタノールを含む、請求項30に記載の溶液。
【請求項33】
前記溶液が、プランクトン性形態または固着形態の細菌に対して抗細菌活性を有する、請求項21に記載の溶液。
【請求項34】
表面または対象物を請求項1乃至33のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、表面または対象物上若しくは対象物内部の少なくとも一つの望ましくない微生物の個体群の成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項35】
前記望ましくない微生物が、細菌個体群、真菌性病原菌、原生動物個体群及びアメーバ個体群からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記望ましくない微生物がアカントアメーバである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記表面または対象物が、カテーテル;医療用チューブ及び導管;血管内器具;埋め込まれた医療用器具;医療用または獣医科用装置;コンタクトレンズ;眼用埋め込み物;歯科用、矯正歯科用または歯周用の器具;水の保存、分配及び処理施設;工業用装置;及び食品生産及び加工装置、からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
バイオフィルムを請求項1乃至33のいずれか一項に記載の溶液と接触させることを含む、バイオフィルムの成長及び増殖を阻害するための方法。
【請求項39】
請求項1乃至33のいずれか一項に記載の溶液に浸漬されている、傷治療における使用のためのカバー。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2006−526664(P2006−526664A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515256(P2006−515256)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/018009
【国際公開番号】WO2004/108093
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501100342)タイコ・ヘルスケアー・グループ・エルピー (20)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Healthcare Group LP
【住所又は居所原語表記】15 Hampshire Street,Mansfield,Massachusetts 02048,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/018009
【国際公開番号】WO2004/108093
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501100342)タイコ・ヘルスケアー・グループ・エルピー (20)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Healthcare Group LP
【住所又は居所原語表記】15 Hampshire Street,Mansfield,Massachusetts 02048,United States of America
【Fターム(参考)】
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