説明

気液分離装置、およびこの気液分離装置を用いた排気ガス浄化装置、あるいは空気清浄化装置、または空気殺菌浄化装置

【課題】 排気ガス中のPMや空気中などの気体中に含まれている有害微粒子である粉塵などを気体中から効果的に分離できるとともに、これまで捕集が困難であった気液分離装置に付着する一部の有害物質を含んだ液状体をも確実に分離し、且つ捕集して外部に流出させないようにした気液分離装置を大型化させることなく簡単な構成で提供する。
【解決手段】 一端に形成した流入口22の下流側に、流入させた浄化対象気液混合ガスに回転力を付与する径小円筒23を形成した外筒部材21を設け、この外筒部材の下流側に隣接して複数の円筒体27、28を配列し、この円筒体間を連通するように前記円筒体より径小の連通筒30を介在させ、前記複数の円筒体の下方に受液部32を設置するとともに、前記円筒体の最下流側にガスの流出口33を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中の黒煙あるいは空気中の粉塵微粒子などの有害物質を吸着した液状体を気体と分離する気液分離装置、およびこの気液分離装置を用いたディーゼルエンジンなどの排気ガス浄化装置、あるいは空気清浄化装置、または空気殺菌浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車などのエンジンから排出される排気ガス中には、一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物などの有害排出物が含まれており、大気汚染の問題から種々の規制がなされている。特に、近年ディーゼルエンジンにおける排気ガス中の黒煙が、DEP(Diesel Exhaust Particulate ディーゼル排気微粒子)として注目されている。
【0003】
この微粒子は、環境基準で定められている大気中のSPM(Suspended Particulate Matter 浮遊粒子状物質)が10μm以下であるのに対し、0.1μm程度であり、きわめて粒径が小さいため、単体での除去処理は物理的に困難であるとともに、微少な煤塵が浮遊物質として環境を汚染することから、この排気ガス中における黒煙量を低減する研究が進められている。
【0004】
ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置としては、排気管の一部に触媒フィルターを装着したものがある。このフィルター方式は、黒煙など前記DEPを含めた有害微粒子であるPM(Particulate Matter 粒子状物質)の排出量を低減できるとはいえ、低減量は70〜80%であり、大幅な低減を必要とする環境汚染の解決策としては満足できるものではなかった。
【0005】
しかもPMを捕集するためには、その粒子が非常に小さいためにフィルターのメッシュを細かくせざるを得ないものであり、結果として、排気の背圧(排気抵抗)が大きくなって排気効率が悪化し、エンジンへの負荷が増大することによってNOx量が増加したり、出力低下や燃費への悪影響を招くものであり、さらに、フィルターへのPMの目詰まりに起因する触媒の温度上昇で火災事故を誘発する危険性があった。
【0006】
また、フィルターを使用せず、且つPMの除去効果をより以上に改善するものとして本特許出願人が出願した特願2003−350097には、ディーゼルエンジンの排気経路中に排気ガスの流入口および流入した排気ガスの流出口を設けるとともに植物油など化石燃料以外の油脂を内部に導入して前記流入排気ガスと接触させるコンタクターを接続し、このコンタクター内で排気微粒子を吸着した前記植物油などの油脂を分離装置に流入させて排気ガスと分離させたことを特徴とし、植物油など化石燃料以外の油脂が保有する親和性を利用することで、排気ガス中から有害微粒子である黒煙などのPMを効果的に分離し除去する発明が示されている。
【0007】
上記特許出願の排気ガス浄化装置によれば、有害微粒子であるPMの大幅な除去効果が得られるものであり、サイクロン型の気液分離装置は、原理図を図9に示すように、排気ガスの流入部(72)に上面を径大部としたほぼ円錐台形状とした円筒体を立設させた分離器(71)を配置しており、矢印のように流入した排気ガスと植物油は分離器(71)の上端側面の流入口(71a)から円錐台形状の接線に沿って流入させるように形成していることから、円錐台形の筒内部に渦巻き流を発生させるものであり、この排気ガスの流速を利用した渦巻き流による遠心力によって、PMを吸着した植物油を下方の分離容器(74)底面に落下させ、排気ガスと分離させるものである。PMのほとんどが除去された排気ガスは、円錐台状の管内を下降し底面に衝接した後その中央部を上昇して上方に設けた排気ガスの排出口(73)から外部に排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このとき、分離器(71)への流入口(72)と排出口(73)とは近接していることから、流入したPMを吸着させた植物油の一部が、図中Aで示すように、排出口(73)の開口下端部に付着することになり、流入とともに液状体の付着量が増えていく。そしてこの排出口(73)の近傍はが外部へ流出する排気ガスの通過部であるため、サイクロンの強い流速によって円筒内壁に付着した植物油が吹き飛ばされ、あるいは外部に押し出されることになり、植物油に吸着したPMの一部Aが分離容器(74)内に除去されず外部に流出することを阻止できなかった。
【0009】
また、前記PMは、気液分離装置に流入させる植物油の量を多くする程その吸着量も多くなるが、気液分離効率の点から気体に混合する液体量は所定以上に多くできず、気液分離装置として有効とされているサイクロン方式での分離構成によっても気液分離効率は80〜96%であり、100%の気液分離は構造上困難であった。したがって、PMを多く吸着させるためには、装置を大型化せざるを得ない問題があり、使用対象も限られる欠点を有していた。
【0010】
本発明は上記点を考慮してなされたものであり、排気ガス中のPMや空気中などの気体中に含まれている有害微粒子である粉塵などを気体中から効果的に分離できるとともに、これまで捕集が困難であった気液分離装置に付着する一部の有害物質を含んだ液状体をも確実に分離し、且つ捕集して外部に流出させないようにした気液分離装置を大型化させることなく簡単な構成で提供すること、およびこの気液分離装置を用いた性能の高いディーゼルエンジンなどの排気ガス浄化装置、あるいは空気清浄化装置、または空気殺菌浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による気液分離装置は、一端に形成した流入口の下流側に、流入させた浄化対象気液混合ガスに回転力を付与する径小円筒を形成した外筒部材を設け、この外筒部材の下流側に隣接して複数の円筒体を配列し、この円筒体間を連通するように前記円筒体より径小の連通筒を介在させ、前記複数の円筒体の下方に受液部を設置するとともに、前記円筒体の最下流側にガスの流出口を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
そして、請求項5記載のディーゼルエンジンなどの排気ガス浄化装置の発明は、植物油などの油脂を内部に導入して流入排気ガスと接触させたコンタクターと、このコンタクターからの排気微粒子を吸着した前記油脂を請求項1記載の気液分離装置に流入させて排気と分離させたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の空気清浄化装置の発明は、空気流通路中に接続し水などの液状体を内部に導入して流入空気と接触させるコンタクターと、このコンタクターからの粉塵などを吸着した前記液状体を請求項1記載の気液分離装置に流入させて空気と分離させたことを特徴とし、また請求項7記載の空気殺菌浄化装置の発明は、空気流通路中に接続し、水などの吸着液体を内部に導入して流入空気と接触させるコンタクターと、このコンタクターからの細菌やウイルスなどを吸着した前記吸着液体を請求項1記載の気液分離装置に流入させて空気と分離させ、浄化空気を排出させるとともに吸着液体を殺菌槽内に導入して殺菌するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、排気ガス中のPMや空気などの気体中に含まれている有害微粒子である粉塵、あるいは雑菌などを気体中から分離できる気液分路装置を小さいスペースで、且つ簡単な構成で安価に得られるとともに、これまでのサイクロン型では捕集が困難であった排出管壁に付着する一部の液状体をも確実に分離除去する従来にない高度な気液分離性能を有する気液分離装置を得ることができ、有害物質を外部に流出させないようにして排出気体を清浄なものとすることができるものである。そして、請求項5記載の発明によれば、PM捕集効率が高く、構造的にもシンプル且つコンパクトなディーゼルエンジンなどの排気ガス浄化装置を低コストで製造することができる。
【0015】
請求項6記載の発明によれば、製造工場で発生する汚れた空気中の粉塵を、高い効率で除去し清浄化できるものであり、清浄な空気を外部に送り出すことができる。また請求項7記載の発明によれば、病院内などに浮遊している空気中の細菌やウイルスを水に吸着させ、さらに、空気と細菌を吸着した水液とを分離させ、清浄化した空気を外部に放出するとともに、水に吸着した細菌や有害微粒子を殺菌処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の気液分離装置の1実施形態を、ディーゼルエンジンにおける排気ガス浄化装置に採用した例により図面に沿って説明する。
【0017】
図1は、ディーゼルエンジンの燃料経路の概略とともに排気ガス浄化構成を示す装置図であり、燃料タンク(1)からの軽油などの燃料を分散器(2)から燃料フィルター(3)、燃料噴射ポンプ(4)を経由してエンジン(5)で燃焼させ、余剰燃料はリターンパイプ(6)で分散器(2)に戻すことで燃焼回路を構成するとともに、エンジン(5)からの排気ガスを大気中に放出する排気管(7)の後端には、コンタクター(9)および気液分離装置(10)を接続配置している。
【0018】
コンタクター(9)は、大豆油などの植物油が保有する親和特性による液面吸着作用を活用し、植物油と排気ガスとを混在させ攪拌することで排気ガス中の黒煙など有害微粒子であるPMを吸着捕集するものであり、排気ガスの流入口(11)および内部に流入した排気ガスの流出口(12)を設けている。
【0019】
そして、別途配置した植物油タンク(13)から、燃焼軽油燃料に対して約10%の割合で混合される大豆油などの植物油を槽内部に供給して前記流入口(11)から流入する排気ガスと接触させ、且つ複数層に亙らせることで排気ガスと植物油との接触面積を大きくした空間(14)を経て、前記流出口(12)から流出するように設けられており、具体的構成としては、図2の拡大図で示すように、複数の槽、本実施例の場合は3個の外径寸法の異なる箱状の有底槽(15)(16)(17)を同心で重合させたものである。
【0020】
このとき、エンジン(5)から排出される排気ガスの温度は高温であるのに対し、前記植物油である大豆油の引火点は280℃であることから、コンタクター(9)に流入する排気経路中には熱交換器(18)を配置し、熱交換器(18)によって排気ガス温度を発煙温度以下の180〜200℃程度に冷却した後コンタクター(9)に流入させ植物油の発煙を抑えるようにしている。
【0021】
コンタクター各槽(15)(16)(17)の底部には前記植物油の貯留部(15a)(16a)(17a)を設け、貯留部の上部はパンチングメタルなどにより多数の小透孔(15b)(16b)(17b)を穿設しており、矢印で示すように、流入する排気ガスが、内側槽(15)の上方から落下あるいは底面貯留部(15a)に貯留している植物油に衝接し、混合体となって飛散する。
【0022】
この排気ガスと植物油との接触により、排気ガス中のPMが植物油に吸着されるものであり、前記混合体が前記多数の小透孔(15b)から外方に流出して、前記槽(15)と同様に形成されたその外側の中間槽(16)の内壁(16c)に当接するようにしている。なお、前記小透孔(15b)は、槽面に穿設したものでなく、網状体を槽面に取着したものでもよい。
【0023】
中間槽の内壁(16c)に当接した排気ガスとの混合体である植物油は、槽内壁(16c)に沿って流下し、液状部分は該槽(16)下方の貯留部(16a)に貯留されるとともに、飛散する植物油によって小透孔(16b)からさらに外側の最外槽(17)側に流出するものであり、この構成によって排気ガスと植物油との接触面積を大きくしてPMの植物油への吸着量を多くすることができる。
【0024】
排気ガス中のPMを吸着した植物油は、最外槽の内壁面(17c)に沿って上昇して槽(17)の上端に設けた流出口(12)から流出するものであり、また、前記最外槽底部の貯留部(17a)から流下し、その下方に流入排気ガスと接触しないように設けた還流槽(17d)に貯留された植物油は、コンタクター(9)の下流側に設けたオイルクーラー(19)に流入して冷却され、ポンプ(20)によって再びコンタクター(9)の最上部に配置した内側槽(15)に流入するように循環サイクルを形成している。
【0025】
なお、オイルクーラー(19)により冷却され還流した植物油はコンタクター(9)の流出口(12)から隣設した気液分離装置(10)に流出するものであり、この植物油との混合により気液分離装置(10)内に導入される排気ガス温度もさらに低下させることができるが、排気ガスが熱交換器(18)で充分冷却されるよう構成している場合には、このオイルクーラー(19)は特に設置する必要はない。
【0026】
しかして、気液分離装置(10)は、その一部を破断した斜視図を図3に、側断面図を図4に示すように、円筒状に形成した外筒部材(21)の一端に小径の流入口(22)を形成し、その下流側に前記流入口(22)の端部から少し間隔を設けて径小円筒(23)を配置している。この径小円筒(23)の円周面には、正面からの断面図である図5からより理解されるように、外筒部材(21)の後端面(21a)に亙る長手方向に所定幅の2つの開口(23a)を対向させて穿設し、この開口(23a)の一端からは、この開口(23a)を覆うように、径小円筒(23)の接線方向の外方に円弧状のガイド片(24)を同一方向に延出し、その端縁は外筒部材(21)の内面側に当接させてガイド流路(25)を形成している。
【0027】
前記径小円筒(23)の流入側の端面は、遮蔽板(26)で閉塞し、さらに前記ガイド流路(25)となるガイド片(24)と径小円筒(23)との間隙の流入側の開口部をも前記遮蔽板(26)で覆うようにしており、これによって、流入口(22)側から流入する排気ガスは、外筒部材(21)内で遮蔽板(26)に当接して外筒部材(21)内の円周方向にその流れを変え、さらにガイド片(24)に沿ってガイド流路(25)を流れ込み、径小円筒(23)内に回転流となって流入して下流に流れる構成としている。
【0028】
外筒部材(21)の下流側には、この外筒部材(21)よりやや径を小さくした径大の円筒体(27)(28)を複数隣接して配列しており、この円筒体(27)(28)間を区分する仕切壁(29)の中央部を貫通して双方の円筒体(27)(28)を連通するように、前記径小円筒(23)体と同径の連通筒(30)を介在させている。
【0029】
また、図6に示すように、連通筒(30)の前後に位置する前記円筒体(27)(28)の下面には、その長手方向に亙って前記径小円筒(23)の直径程度の幅寸法を有する透過孔(31)を設け、透過孔(31)に連通した円筒体(27)(28)の下方には受液槽(32)を配置しており、円筒体(28)の最下流側である他端には排気ガスの流出口(33)を設置している。
【0030】
なお、前記径小円筒(23)の円周面に形成する開口(23a)は、2カ所に限らず3カ所以上設けてもよく、径小円筒の構成も、具体的に円筒形状を形成せずとも、端部を外筒部材(21)の内面に当接させた複数の円弧状ガイド片(24)の組み合わせにより中央部に円筒形を形成するようにし、外筒部材(21)内に流入した排気ガスがガイド片(24)の内方部で渦流となるようにしたものでもよい。
【0031】
上記構成によって、流入口(22)から外筒(21)内に流入した浄化対象である気液混合の排気ガスは、その流れを矢印で示すように、遮蔽板(26)に当接することによって外筒(21)内の周縁に展開し、さらに外筒内面と当接しているガイド片(24)に導かれてガイド流路(25)に流入し、開口(23a)から径小円筒(23)内に流入することで回転力が付与されるものであり、渦流となって径小円筒(23)の端部から円筒体(27)内に流入することになる。
【0032】
渦流となった排気ガスは、円筒体(27)内への流入の際の膨張と遠心力によってサイクロン(旋風)を形成し、円筒体(27)内でPMを吸着させた植物油と排気ガスとを分離させ、液状体であるPMが吸着した植物油は、遠心力と重力によって透過孔(31)から下方の受液槽(32)に落下する。
【0033】
受液槽(32)内に落下したPMを吸着した植物油は、渦流となっている円筒体(27)内の圧力と液自体の重力とによってさらに下流の捕集タンク(35)に導かれていくため、槽内に溜まることはなく、また渦流によって吹き上げられることはない。そして、浄化しようとする排気ガスはより多くの液状体と混合させることが可能となり、高密度で高いPM捕集効率を得ることができる。
【0034】
捕集タンク(35)には、気液分離装置(10)から植物油が流入する開口とともに、上部に配置した前記植物油タンク(13)からの給油パイプ(36)が接続されており、捕集タンク(35)に設置した油面センサー(S1)によって捕集タンク(35)の油面が低下した場合には、ポンプ(37)を駆動してタンク(13)から新しい植物油を補充するようにしている。
【0035】
捕集タンク(35)中に貯留された前記植物油は、多板式のオイルフィルター(38)を介して分岐し、一方をポンプ(39)によって前記コンタクター(9)に還流させ、再び排気ガスと接触させてPMの吸着に寄与させるものであり、他方は燃料タンク(1)からエンジン(5)への燃料経路の途中に設けた分散器(2)に導入し、植物油中のPMの集合体である黒煙粒を分散して燃料タンク(1)からの軽油燃料と植物油との混合比を安定させ、続いて、軽油燃料とともにエンジン(5)部に供給して燃料として燃焼させるようにしている。
【0036】
このとき、エンジン温度は2000℃程度であり、炭素の燃焼温度である600〜700℃よりはるかに高温であることから、植物油中のPMは完全に燃焼し消尽するものである。燃焼によって減少した植物油はセンサー(S1)で制御することにより、タンク(13)から随時補給されるため、循環する植物油中におけるPM濃度が異常に高くなってフィルター(38)を目詰まりさせることを防ぎ、燃焼や排気経路に悪影響を及ぼすことはない。
【0037】
しかして、円筒体(27)内においてPMを吸着した植物油を除去した排気ガスは、渦流を保持したまま連通筒(30)に流入し、続いて隣接する円筒体(28)に流入するが、連通筒(30)を通過する際に、図4中Bで示す液状体が連通筒(30)の流入側の開口近傍に付着する。
【0038】
これは、円筒体(27)内で渦流を形成していた排気ガスが下流に移行するに際し、通過部となる連通筒(30)が径小であることから流通時に減圧され、排気ガス中にわずかに残存しているミスト状の植物油が徐々に付着していく結果であり、付着する液状体の量はきわめて少量であるが、例えば、前記コンタクター(9)および気液分装置(10)構成により、毎分30mの排気ガス量中から液状体である前記PMを吸着した植物油量の99%に当たる20Lを除去したとしても、20cc程度は生成されるものである。
【0039】
したがって、付着した液状体B中におけるPM量はわずかであるが、この連通筒(30)に液状体を付着させることによって、付着した液状体Bは、連通筒(30)内を緩やかに移動し、下流側の出口開口に至って隣接する円筒体(28)に流出した段階で、円筒体(28)部における遠心力により、前記透過孔(31)を経由して受液槽(32)に落下して回収されることから、最終的に流出口(33)から外部空間に流出するPMは100%に近い値で除去され、クリーンな排気ガスのみが大気中に排出されることになる。
【0040】
前記連通孔(29)に付着した液状体Bに吸着しているPMは、元来、気液分離装置による遠心分離から分離されずに外部に流出していたものであり、サイクロン型気液分離器を経由しても残存する数%の液状体を回収するためにフィルター装置など他の機器を具備する必要があり、製品コストが高くなるとともに設置スペースを要するものであったが、上記気液分離装置(10)によれば、残存液体を回収するための別部材を必要とせず、構造的にも簡単、且つコンパクトであるので低コストで製造できる効果がある。
【0041】
なお、排気ガスの吹き出し圧力が小さい、あるいは排気ガス量に比して液量が多いなどの理由で上記構成のみでは液状体を分離し切れない場合は、前記円筒体(28)に隣接して、さらに連通筒(30′)および円筒体(28′)を連結していくようにすればよい。
【0042】
上記実施形態においては、本発明の気液分離装置をディーゼルエンジンなどの排気ガス除去装置における排気ガス中からPMなどの有害物質を分離除去する気液分離装置として採用した例を説明したが、本発明の気液分離装置はこれに限らず、他の多くの気体清浄化装置に適用できるものである。
【0043】
例えば、上記実施例と同一部分に同一符号を附した図7は、気液分離装置(10)を空気清浄機(51)における集塵部として使用したものであり、送風機(52)とその下流に前記実施例と同様の構成からなるコンタクター(9)を配設している。気液分離装置(10)も同様に、外筒部材(21)とこれに隣接する円筒体(27)(28)を2個連設しており、外筒部材(21)内にはガイド流路(25)を有して送風機(52)によって流入した空気に回転力を付与する径小円筒(23)を設置するとともに、円筒体(27)(28)間には連通筒(30)を外筒断面の中央に配設している。そして、円筒体(27)(28)の下方には透過孔(31)を介して受液槽(32)を配置しており、最下流側である円筒体(28)の他端には清浄となった空気の流出口(33)を設置している。
【0044】
前記受液槽(32)は、下方の捕集タンク(35)に連結されており、受液槽(32)内に落下した粉塵を吸着させた液体、例えば、水は、渦流となっている円筒体(27)内の圧力と液自体の重力とによって捕集タンク(35)に流入するため、槽内に溜まることはなく、渦流によって吹き上げられることはない。捕集タンク(35)では、霧状の液体をデミスター(40)で補足した後、清浄化された空気を上方の排出口から外部に排出するとともに、液体はさらに下流の沈殿槽(55)に導かれる。
【0045】
沈殿槽(55)には、気液分離装置(10)および捕集タンク(35)からの粉塵を吸着した水の流入管(55a)を槽上部の中央に開口させ、流入管(55a)から水とともに流入した粉塵は水と分離して槽底部に沈殿し、さらに弁部材(57)を介してカートリッジフィルター(58)に沈殿捕集されるため、随時あるいは定期的にこれを取り外して廃棄するものである。
【0046】
槽内上部に貯留されている水のうち、槽内上部の比較的汚れの少ない水は、沈殿槽(55)の上部外壁に接続した循環パイプ(56)およびポンプ(59)によって前記コンタクター(9)に還流させ、再び汚れた空気と接触させて粉塵の吸着に寄与させ、また、沈殿槽(55)の水位が低下した場合には、この液面をフロートスイッチ(60)で検知し、別途設置した図示しない水タンクから新しい水を補充するようにしている。
【0047】
上記構成によって、製造工場で発生する粉塵などを含む汚れた空気は、コンタクター(9)および気液分離装置(10)によって粉塵が除去され浄化されるものであり、気液分離装置(10)の最下流に設けた流出口(33)から清浄な空気を外部に送り出すことができる。
【0048】
また、本発明の気液分離装置によれば、特に図示しないが、脱臭装置にも使用できるものであり、前記空気清浄機(51)の例と同様に、送風機(52)および気液分離装置(10)とともに、空気と消臭触媒液とを混合するコンタクターや前記沈殿槽(55)に代る液溜めを配置して脱臭装置を構成することにより、塗装工場や食品加工工場などにおける臭気を含んだ空気を送風機でコンタクターおよび気液分離装置に流下させることによって、空気中の臭い分子をコンタクター内で触媒液と混合して触媒液に吸着させ、さらに、気液分離装置内の渦流によって空気と臭い分子を吸着させた触媒液と分離させることができる。
【0049】
そして、臭い分子を除去した清浄な空気を分離装置の流出口から外部に送り出すとともに、触媒液は液溜めに導入し、コンタクターに還流させることで再度臭い分子の取り込み作用をおこなうものであり、触媒液が減少した場合は、前記と同様に触媒タンクから必要量の触媒液を補充して循環使用するものである。
【0050】
次に、本発明の気液分離装置を空気中の細菌やウイルスなどを殺菌して清浄化する空気殺菌浄化装置に適用した実施例について説明する。前記実施例と同一部分に同一符号を附した図8に示す空気殺菌浄化装置(61)は、前記空気清浄機(51)の例と同様に、送風機(62)および気液分離装置(10)とともに、細菌などを含む浄化しようとする空気と水などの吸着液体とを混合するコンタクター(9)や捕集タンク(35)および前記沈殿槽(55)に代る殺菌タンク(65)を配置して構成している。
【0051】
そして、病院などの院内に浮遊している細菌やウイルスを含んだ空気を送風機(52)でコンタクター(9)および気液分離装置(10)に流通させることによって、空気中の細菌などをコンタクター(9)内で水と混合して水に吸着させ、さらに、気液分離装置(10)内の渦流によって空気と細菌、ウイルスを吸着させた水液と分離させるものである。
【0052】
そして、細菌などを除去した清浄な空気を気液分離装置(10)の流出口(33)から外部に送り出すとともに、細菌やウイルスを付着させた水は前記実施例と同様に捕集タンク(35)に導入する。捕集タンク(35)では、ミスト状の液体をデミスター(40)で補足した後、清浄化された空気を上方の排出口から外部に排出するとともに、細菌などを吸着した水は捕集タンク(35)の底部に落下し、ポンプによってさらに下流の殺菌タンク(65)に導かれる。
【0053】
殺菌タンク(65)内には、光触媒である微小な粒子径の酸化チタン粉末(66)を混入させている。そして、この光触媒の粉末(66)を水中に配設した紫外線ランプ(67)からの紫外線照射によって励起させ活性化させることによる強い酸化作用で、光触媒と接触するタンク内の細菌やウイルスを死滅させ、水中の有機化合物を分解するものであり、この分解作用によって有機物質は二酸化炭素と水に分解することからタンク内の水は効果的に浄化される。
【0054】
このとき、酸化チタン(66)は微小な粉末であることから、紫外線を受ける表面積を最大にすることができ、効率の高い殺菌作用を得ることができるとともに、励起された酸化チタン粉末(66)は水中に停止することなく循環移動するため、その殺菌効果はさらに大きくなる。
【0055】
なお、光触媒材料は、上記のように酸化チタンに限らず他の光触媒材料でもよく、粉末でなくとも、タンク内面に塗布したり、表面に光触媒塗料を塗布したセラミックなどの多数の粒状体を水中に配置するようにしてもよく、紫外線の照射は、紫外線ランプやLEDを光源とする方法だけでなく、高電圧放電によって発生させた紫外線で光触媒を励起させる構成としてもよい。
【0056】
殺菌タンク(65)内に貯留されている水は、前記光触媒(66)にて除菌された後、紫外線ランプ(67)に近接した殺菌タンク(65)の外壁の下部に流出口を有する循環パイプ(56)およびポンプ(59)によって前記コンタクター(9)に還流させ、再び浄化すべき空気と接触させて細菌およびウイルスの吸着に寄与させる。
【0057】
また、殺菌タンク(65)の水位が変動した場合には、この液面をフロートスイッチ(60)で検知し、低下した場合は、別途設置した図示しない水タンクから新しい水を補充するとともに、所定以上に高くなった場合は安全のため装置を停止させるようにしている。
【0058】
上記の空気殺菌浄化装置によれば、病院などの院内に浮遊している細菌やウイルスを含んだ空気と水を混合して細菌などを水に吸着させ、さらに、気液分離装置によって空気と細菌を吸着した水液とを分離させて清浄化した空気を外部に放出するとともに、水に吸着された細菌や有害微粒子を殺菌タンク内で殺菌処理することができるものである。
【0059】
そして、本発明は上記したごとく、従来にない高度な気液分離性能を有する気液分離装置(10)をシンプルな構成で且つコンパクトに形成できるとともに、従来の濾過式フィルターを使用する必要がないことから、コストも低くメンテナンスも簡易にすることができるものであり、さらに、液体による付着捕集であることから塵埃の粒子の大きさや種類に関係なく捕集できる効果を奏するものである。
【0060】
また、この気液分離装置を用いることによって、コンパクトで安価、且つ高性能なディーゼルエンジンなどの排気ガス浄化装置、あるいは空気清浄化装置、または空気殺菌浄化装置を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、排気ガス中のPMや空気中の粉塵などを気体と分離する気液分離装置、およびこの気液分離装置を用いたディーゼルエンジンなどの排気ガス浄化装置、あるいは空気清浄化装置、または空気殺菌浄化装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の1実施形態を示す排気ガス浄化装置の配管経路図である。
【図2】図1のコンタクターでの排気ガスと植物油との流れ状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の気液分離装置の1実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3の側面からの断面図である。
【図5】図4のC−C線に沿う正面からの断面図である。
【図6】図4のD−D線に沿う正面からの断面図である。
【図7】図3の気液分離装置を空気清浄機に適用した例を示すシステム図である。
【図8】図3の気液分離装置を殺菌浄化装置に適用した例を示すシステム図である。
【図9】従来のサイクロン型の気液分離装置を示す原理図である。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料タンク 2 分散器 3 燃料フィルター
4 燃料噴射ポンプ 5 エンジン 6 リターンパイプ
7 排気管 9 コンタクター 10 気液分離装置
11 流入口 12 流出口 13 植物油タンク
14 接触空間 15 内側槽 16 中間槽
17 最外槽 15a、16a、17a 貯留部
15b、16b、17b 小透孔 16c、17c 内壁面 17d 還流槽
18 熱交換器 19 オイルクーラー 20、37、39、59 ポンプ
21 外筒部材 21a 後端面 22 流入口
23 径小円筒 23a 開口 24 ガイド片
25 ガイド流路 26 遮蔽板 27、28 円筒体
29 仕切壁 30 連通筒 31 透過孔
32 受液槽 33 流出口 35 捕集タンク
36 給液パイプ 38 オイルフィルター 40 デミスター
51 空気清浄機 52、62 送風機 53 水タンク
55 沈殿槽 55a 流入口 56 循環パイプ
57 弁部材 58 カートリッジフィルター
60 フロートスイッチ 65 殺菌タンク 66 光触媒
67 紫外線ランプ S 油面センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に形成した流入口の下流側に、流入させた浄化対象気液混合ガスに回転力を付与する径小円筒を形成した外筒部材を設け、この外筒部材の下流側に隣接して複数の円筒体を配列し、この円筒体間を連通するように前記円筒体より径小の連通筒を介在させ、前記複数の円筒体の下方に受液部を設置するとともに、前記円筒体の最下流側にガスの流出口を設けたことを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
流入口側の開口を遮蔽した径小円筒を形成する円周面に複数の開口を設け、この開口端から外方に円弧状に延出して外筒部材の内面側に当接させたガイド片によって、前記外筒部から径小円筒内に流入させた浄化対象気液混合ガスに回転力を与え、この渦流を円筒体に流入させた際の遠心力により気液を分離したことを特徴とする請求項1記載の気液分離装置。
【請求項3】
複数配列した円筒体間を仕切壁で区分し、この仕切壁の中央部を径小の連通筒で貫通したことを特徴とする請求項1記載の気液分離装置。
【請求項4】
連通筒の前後に位置する円筒体の下面に透過孔を設け、この透過孔を受液部に連通することによって、円筒体部分で発生する渦流で分離された液体を受液部に落下させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の気液分離装置。
【請求項5】
植物油などの油脂を内部に導入して流入排気ガスと接触させたコンタクターと、このコンタクターからの排気微粒子を吸着した前記油脂を請求項1記載の気液分離装置に流入させて排気と分離させたことを特徴とするディーゼルエンジンなどの排気ガス浄化装置。
【請求項6】
空気流通路中に接続し水などの液状体を内部に導入して流入空気と接触させるコンタクターと、このコンタクターからの粉塵などを吸着した前記液状体を請求項1記載の気液分離装置に流入させて空気と分離させたことを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項7】
空気流通路中に接続し水などの吸着液体を内部に導入して流入空気と接触させるコンタクターと、このコンタクターからの細菌やウイルスなどを吸着した前記吸着液体を請求項1記載の気液分離装置に流入させて空気と分離させ、浄化空気を排出させるとともに吸着液体を殺菌槽内に導入して殺菌するようにしたことを特徴とする空気殺菌浄化装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に形成した流入口の下流側に、流入させた浄化対象気液混合ガスに回転力を付与する円筒を設け、この円筒の下流側に隣接して設けた円筒体の流出側に前記円筒体より径小の小円筒を設けたことを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
一端に形成した流入口の下流側に、流入させた浄化対象気液混合ガスに回転力を付与する径小円筒を形成した外筒部材を設け、この外筒部材の下流側に隣接して複数の円筒体を配列し、この円筒体間を連通するように前記円筒体より径小の小円筒を介在させ、前記複数の円筒体の下方に受液部を設置するとともに、前記円筒体の最下流側にガスの流出口を設けたことを特徴とする気液分離装置。
【請求項3】
流入口側の開口を遮蔽した径小円筒を形成する円周面に複数の開口を設け、この開口端から外方に円弧状に延出して外筒部材の内面側に当接させたガイド片によって、前記外筒部から径小円筒内に流入させた浄化対象気液混合ガスに回転力を与え、この渦流を円筒体に流入させた際の遠心力により気液を分離したことを特徴とする請求項記載の気液分離装置。
【請求項4】
複数配列した円筒体間を仕切壁で区分し、この仕切壁の中央部を径小の小円筒で連通するように貫通させたことを特徴とする請求項記載の気液分離装置。
【請求項5】
小円筒の前後に位置する円筒体の下面に透過孔を設け、この透過孔を受液部に連通することによって、円筒体部分で発生する渦流で分離された液体を受液部に落下させるようにしたことを特徴とする請求項記載の気液分離装置。
【請求項6】
吸着液体を内部に導入して流入排気ガスと接触させたコンタクターと、このコンタクターからの排気微粒子を吸着した前記吸着液体を気液分離装置に流入させて排気と分離させたことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項7】
空気流通路中に接続し水などの吸着液体を内部に導入して流入空気と接触させるコンタクターと、このコンタクターからの粉塵などを吸着した前記吸着液体を請求項1記載の気液分離装置に流入させて空気と分離させたことを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項8】
空気流通路中に接続し水などの吸着液体を内部に導入して流入空気と接触させるコンタクターと、このコンタクターからの細菌やウイルスなどを吸着した前記吸着液体を気液分離装置に流入させて空気と分離させ、浄化空気を排出させるようにしたことを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項9】
空気流通路中に接続し水などの吸着液体を内部に導入して流入空気と接触させるコンタクターと、このコンタクターからの細菌やウイルスなどを吸着した前記吸着液体を気液分離装置に流入させて空気と分離させ、浄化空気を排出させるとともに、吸着液体を殺菌装置内に導入して殺菌するようにしたことを特徴とする空気殺菌浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−102618(P2006−102618A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292005(P2004−292005)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(597001648)株式会社ビッグバン (4)
【Fターム(参考)】