説明

水中接近警報装置

【課題】作業基地からの距離の如何に関わらず、測定対象物の位置を正確に把握し、必要に応じて警報を発する。
【解決手段】全ての送受波局TR1〜TR5が送信局又は受信局として機能することが可能であり、演算器22によって送信局に割振られた送受波局(例えばTR5)からの送信波を、演算器22によって受信局に割振られた送受波局(例えばTR1〜TR4)において受信し、演算器に対し有線でその距離を伝達することにより、送信局の位置を割り出す。又、少なくとも1つの移動局(TR4又はTR5)から送信された送信波(SW1又はSW2)が、基準局(TR1〜TR3)で受信不可能な場合には、補完的に、各移動局間の送信波の送受信を行うことで、移動局(TR4、TR5)間の距離を直接的に把握する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の二点間距離を正確に検出して接近警報を発する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水中の二点間距離を検出する手法として、SBL(Short Base Line)方式が広く採用されている。このSBL方式は、図9に示されるように、船10に3個以上の受信器R1、R2、R3を取付け、距離の測定対象に設けた超音波発振器等の音源T1からの音を、各受信器R1、R2、R3で受けたときの時間差から、音源T1と船10との相対位置を算出するものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
このSBL方式の水中位置計測システムは、水中での潜水作業における安全性を確保するためにも採用されている。例えば、図10に示されるように、作業船12に受信器R1、R2、R3を、潜水士14及び作業機械16(図示の例ではホッパー)に音源T1、T2を装着し、潜水士14と作業船12との相対位置を音源T1及び受信器R1、R2、R3で把握し、作業機械16と作業船12との相対位置を音源T2及び受信器R1、R2、R3で把握する。そして、作業船12から、潜水士14が作業機械16の周辺の危険エリアAに近づくことのないよう指示を出し、又は、作業機械16を停止させることで、潜水士14の安全性が確保されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−174843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、受信器R1、R2、R3から音源T1、T2までの距離が遠くなると、超音波の減衰、気泡や水中雑音により、超音波の測定が不能若しくはS/Nの劣化が顕著となり、作業基地である作業船1から、音源T1、T2の位置を把握することが困難になるという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業基地からの距離の如何に関わらず、測定対象物の位置を正確に把握し、必要に応じて警報を発することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)水中の測定物体間の距離を検知して適宜接近警報を発する水中接近警報装置であって、複数の送受波局と、全ての送受波局に有線接続される演算器と、警報表示器とを含む水中接近警報装置。
本項に記載の水中接近警報装置は、全ての送受波局が送信局又は受信局として機能することが可能であり、又、演算器に各送受波局の送受信信号が集められる。そして、演算器にて任意の送受波局間の距離を把握し、必要に応じ、警報表示器により接近警報を表示するものである。なお、接近警報の手法としては、警報音、モニタへの警告表示、パトライトなどのランプの点燈等、適宜選択されるものである。又、警報レベルにも、安全、注意、危険といった段階を設けることとしても良い。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記演算器には、任意の1個の送受波局を送信局として割振り、残りの送受波局を受信局として割振る制御ロジックを備える制御部が含まれる水中接近警報装置(請求項1)。
本項に記載の水中接近警報装置は、演算器によって送信局に割振られた送受波局からの送信波を、演算器によって受信局に割振られた送受波局において受信し、演算器に対し有線でその距離を伝達することにより、送信局と各受信局との距離を把握し、送信局の位置を割り出すものである。そして、任意の送受波局間の距離が予め設定された距離よりも接近した場合に、警報表示器に接近警報を表示するものである。
【0009】
(3)上記(1)、(2)項において、前記制御部には、送信局として割振る送受波局と、受信局として割振る送受波局とを適宜交換して、各送受波局間の送受波を行う制御ロジックが含まれる水中接近警報装置(請求項2)。
本項に記載の水中接近警報装置は、送信局として割振る送受波局と、受信局として割振る送受波局とを適宜交換して、各送受波局間の送受波を行うことで、各送受波局の相対位置を多方面から把握するものである。
【0010】
(4)上記(1)から(3)項において、前記制御部には、所定の3個の送受波局を基準局として割振り、残りの送受波局を移動局として割振る制御ロジックが含まれる水中接近警報装置(請求項3)。
本項に記載の水中接近警報装置は、前記制御部から、基準局として割振り振られた所定の3個の送受波局を基準として、移動局に割振られた残りの送受波局の位置を把握するものである。
【0011】
(5)上記(4)項において、前記制御部には、少なくとも1つの前記移動局から送信された送信波が、前記基準局で受信不可能な場合に、各移動局間の送信波の送受信を行う制御ロジックが含まれる水中接近警報装置(請求項4)。
本項に記載の水中接近警報装置は、少なくとも1つの前記移動局から送信された送信波が、前記基準局で受信不可能な場合、例えば、基準局に対する移動局の距離が遠くなり、送信波の受信が不能若しくはS/Nの劣化が顕著となる様な場合や、いずれかの送受信局に不具合が生じたような場合には、補完的に、各移動局間の送信波の送受信を行うことで、移動局間の距離を直接的に把握するものである。
【0012】
(6)上記(4)項において、前記制御部には、少なくとも1つの前記移動局から送信された送信波が、前記基準局で受信不可能な場合に、各移動局間で受信された送信波を各移動局間の距離判定に用いる制御ロジックが含まれる水中接近警報装置(請求項5)。
本項に記載の水中接近警報装置は、少なくとも1つの前記移動局から送信された送信波が、前記基準局で受信不可能な場合には、各移動局間で受信された送信波を優先的に各移動局間の距離判定に用いることで、移動局間の距離を直接的に把握するものである。
【0013】
(7)上記(1)から(6)項において、前記送受波局に3個以上の受信器が設けられている水中接近警報装置(請求項6)。
本項に記載の水中接近警報装置は、各送受波局自体がSBL方式の受信器を備えるものであり、送信局の送信波を各受信局で受信し、各送受波局間の距離を、各々の送受波局単独の受信情報に基づき把握することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明はこのように構成したので、作業基地からの距離の如何に関わらず、測定対象物の位置を正確に把握し、必要に応じて警報を発することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る水中接近警報装置の全体的構成を示す模式図である。
【図2】図1に示された水中接近警報装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示された水中接近警報装置の送受波器の構成を示す模式図である。
【図4】図1に示された水中接近警報装置の計測作業の流れを示すフローチャートである。
【図5】図1に示された水中接近警報装置の演算器の制御部における制御ロジックを示すフローチャートである。
【図6】2つの移動局から送信された送信波が基準局で受信可能な場合の、演算器の制御部における計測手順を示すフローチャートである。
【図7】2つの移動局から送信された送信波の一方が基準局で受信不可能な場合の、演算器の制御部における計測手順を示すフローチャートである。
【図8】2つの移動局から送信された送信波の双方が基準局で受信不可能な場合の、演算器の制御部における計測手順を示すフローチャートである。
【図9】従来の、SBL方式を用いた水中の二点間距離を検出する手法を示す模式図である。
【図10】水中での潜水作業に、SBL方式の従来の水中位置計測システムを用いた例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る水中接近警報装置20は、水中での潜水作業における安全性を確保するために用いられるものであり、図1に示されるように、複数の送受波局TRn(TR1〜TR5)と、全ての送受波局に有線接続される演算器22と、警報表示器24とを含むものである。本発明の実施の形態では、全ての送受波局TR1〜TR5は、図2に示されるように、通信部26、位置計測部28、送受信部30、送受波器32を備えている。ここで用いられる送受波器32は、図3に示されるように、3個の受信器R1、R2、R3を備えることで、それ自体がいわゆるSSBL(Super Short Base Line)を構成するものである。又、送受波器は2つの音源(例えば超音波送信器)T1、T2を備えており、発振周波数を適宜選択することも可能である。
【0017】
又、演算器22は、パーソナルコンピュータ等の電子計算機により構成されるものであり、制御部34、位置演算部36、トリガー発生部38、通信部40を備えている。
ここで、制御部34は、後述のように、複数の送受波局TRnの中から、任意の1個の送受波局を送信局として割振り、残りの送受波局を受信局として割振る制御ロジックを備えている。又、送信局として割振る送受波局と、受信局として割振る送受波局とを適宜交換して、各送受波局間の送受波を行う制御ロジックを備えている。
【0018】
又、表示部24は、パーソナルコンピュータ等の電子計算機により構成されるものであり、表示部42、収録部44、通信部46を備えている。そして、演算器22の通信部40と表示部24の通信部46、及び、演算器22の通信部40と各送受信局TRnの通信部26とが、相互に信号の授受を行うために有線接続されている。
【0019】
水中接近警報装置20の演算器22の制御部34において行われる計測作業時の制御手順は、図4に示される通りである。以下、図2も適宜参照されたい。
〔S10〕:オペレータによる計測開始指令を受けて、演算器22の制御部34では、任意の1個の送受波局(例えばTR5)を送信局として割振り、残りの送受波局(例えばTR1〜TR4)を受信局として割振る。
〔S20〕:演算器22のトリガー発生部38より、計測要求に係るトリガー信号が送信局(TR5)に送られる。
〔S30〕:S20と同時に、演算器22のトリガー発生部38より、計測要求に係るトリガー信号が受信局(TR1〜TR4)に送られる。
〔S40〕:送信局(TR5)の送受信部30が起動し、送受波器32の音源T1(又はT2)から送信波が出力される。
〔S50〕:S40と同時に、受信局(TR1〜TR4)の位置計測部28のカウンターがリセットされる。そして、送受信部30が起動し、送受波器32の各受信器R1、R2、R3により音源からの送信波の受信が確認されると、位置計測部28のカウンターが停止される。
〔S60〕:各受信局(TR1〜TR4)の位置計測部28のカウンター値が演算器22の位置演算部36に送られ、ここで、各受信局(TR1〜TR4)の受信時間が距離データに変換され、送信局(TR5)から各受信局(TR1〜TR4)までの距離が求められる。
そして、演算器22の制御部34では、全ての送受信局TRnが送信局として割振られるまで、上記S10〜S60を繰り返す。例えば、S10〜S60を1サイクル1秒で、かつ、0.25間隔で実行する。
〔S70〕:演算器22において、各送受信局TRnの三次元位置を演算し、位置表示処理がなされる。そして、安全、注意、危険というような、段階的な危険レベルの判定を行う(後述する)。これらの情報が警報表示器24に送られ、表示部42に表示される。又、収録部44に計測データが保存処理される。
【0020】
ここで、図5及び図2を参照しながら、水中接近警報装置20の演算器22の制御部34における、危険レベルの判定手順を説明する。
〔S110〕:プログラムが起動され、計測を開始する。
〔S120〕:サンプルを開始する。ここで行われる作業は、図4のS10〜S60が該当する。
〔S130〕:各送受信局TRnの三次元位置から、特定の送受信局間の距離が危険レベルまで近すぎていないかを判定する。
〔S140〕:S130において危険と判断された場合には、演算器22の制御部34から、危険画面表示指令を警報表示器24の表示部42に送信する。
〔S150〕:S130において危険と判断されない場合には、危険レベルに近づきつつあるか、即ち警告を発する必要があるか否かを判定する。
〔S160〕:S150において警告を発する必要があると判断されると、演算器22の制御部34から、警告画面表示指令を警報表示器24の表示部42に送信する。
〔S170〕:S150において警告を発する必要がないと判断されると、演算器22の制御部34から、通常画面表示指令を警報表示器24の表示部42に送信する。
〔S180〕:全ての送受信局TRnが送信局として割振られ、計測が終了するまで、S120〜S170の判定を繰り返す。
〔S190〕:S180において、計測終了が確認されると、計測プログラムを終了する。
なお、上記S140、S160、S170での接近警報の手法としては、上述のモニタへの表示のみならず、警報音の発報、パトライトなどのランプの点燈等を選択し、又は併用することも可能である。
【0021】
又、本実施の形態では、図1の作業船12に設置された3個の送受波局TR1、TR2、TR3を基準局として割振り、残りの送受波局TR4、TR5を移動局として割振る制御ロジックが含まれている。この場合、送受波局TR4、TR5の一方が潜水士14(図10参照)に、もう一方が作業機械16(図10参照)に装着される。
更に、制御部34には、少なくとも1つの移動局TR4(TR5)から送信された送信波が、基準局TR1、TR2、TR3で受信不可能な場合に、各移動局TR4、TR5間で送信波の送受信を行う制御ロジックが含まれている。具体的には、図6〜図8に示されるとおりである。
【0022】
まず、2つの移動局TR4、TR5から送信された送信波が、いずれも基準局TR1、TR2、TR3で受信可能な場合は、図6に示される手順となる。以下、図2も適宜参照されたい。
〔S210〕:演算器22の制御部34では、移動局1(TR4)を送信局として割振り、移動局1(TR4)の送受波器32の音源T1(又はT2)から送信波SW1を発射する。
〔S220〕:基準局(TR1、TR2、TR3)の各受信器(R1、R2、R3)で送信波SW1を受信する。
〔S230〕:基準局(TR1、TR2、TR3)で受信した3個の受信信号より、演算器22の位置計測部28で、各基準局から移動局1(TR4)までの三軸X・Y・Zの距離を算出する。
〔S240〕:演算器22の制御部34で、移動局2(TR5)を送信局として割振り、移動局2(TR5)の送受波器32の音源T1(又はT2)から送信波SW2が出力される。
〔S250〕:基準局(TR1、TR2、TR3)の各受信器(R1、R2、R3)で送信波SW2を受信する。
〔S260〕:基準局(TR1、TR2、TR3)で受信した3個の受信信号より、演算器22の位置計測部28で、各基準局から移動局2(TR5)までの三軸X・Y・Zの距離を算出する。
〔S270〕:S230及びS260で求められた移動局(TR4、TR5)の三軸X・Y・Zの距離から、演算器22において、移動局間の距離を求める。
〔S280〕:演算器22から警報表示器24に情報が送られ、表示部42に移動局(TR4、TR5)間の距離と、各移動局の位置(X・Y・Z)が表示される。
〔S290〕:移動局(TR4、TR5)間の距離が、所定値より小さい場合に、警報表示器24の表示部42より警報を発する。警報発報の手順は、図5のS120〜S180に沿って行われる。
【0023】
一方、2つの移動局のうち移動局2(TR5)から送信された送信波が、基準局TR1、TR2、TR3で受信不可能な場合は、図7に示される手順となる。
〔S210〕:演算器22の制御部34では、移動局1(TR4)を送信局として割振り、移動局1(TR4)の送受波器32の音源T1(又はT2)から送信波SW1を発射する。
〔S220〕:基準局(TR1、TR2、TR3)の各受信器(R1、R2、R3)で送信波SW1を受信する。
〔S230〕:基準局(TR1、TR2、TR3)で受信した3個の受信信号より、演算器22の位置計測部28で、各基準局から移動局1(TR4)までの三軸X・Y・Zの距離を算出する。
〔S240〕:演算器22の制御部34で、移動局2(TR5)を送信局として割振り、移動局2(TR5)の送受波器32の音源T1(又はT2)から送信波SW2が出力される。
〔S300〕:基準局(TR1、TR2、TR3)の各受信器(R1、R2、R3)で送信波SW2を受信できない。
〔S310〕:演算器22の位置計測部28では、各基準局から移動局2(TR5)までの三軸X・Y・Zの距離は算出できない。
〔S320〕:演算器22の制御部34において、再度、移動局1(TR4)又は移動局2(TR5)を送信局として割振り、移動局1(TR4)から送信波SW1、又は、移動局2(TR5)から送信波SW2を発射し、これを受信局に割振られた移動局で受信する。そして、演算器22の位置計測部28で、移動局1(TR4)と移動局2(TR5)との間の距離を直接的に求める。
〔S330〕:演算器22から警報表示器24に情報が送られ、表示部42に移動局(TR4、TR5)間の距離と、移動局1(TR4)の位置(X・Y・Z)が表示される。このとき、移動局2(TR5)の位置(X・Y・Z)は表示されない。
〔S340〕:移動局(TR4、TR5)間の距離が、所定値より小さい場合に、警報表示器24の表示部42より警報を発する。警報発報の手順は、図5のS120〜S180に沿って行われる。
【0024】
更に、2つの移動局の双方(TR4、TR5)から送信された送信波が、いずれも基準局TR1、TR2、TR3で受信不可能な場合は、図8に示される手順となる。
〔S210〕:演算器22の制御部34では、移動局1(TR4)を送信局として割振り、移動局1(TR4)の送受波器32の音源T1(又はT2)から送信波SW1を発射する。
〔S400〕:基準局(TR1、TR2、TR3)の各受信器(R1、R2、R3)で送信波SW1を受信できない。
〔S410〕:演算器22の位置計測部28では、各基準局から移動局1(TR4)までの三軸X・Y・Zの距離は算出できない。
〔S420〕:演算器22の制御部34では、移動局2(TR5)を送信局として割振り、移動局2(TR5)の送受波器32の音源T1(又はT2)から送信波SW2を発射する。
〔S430〕:基準局(TR1、TR2、TR3)の各受信器(R1、R2、R3)で送信波SW2を受信できない。
〔S440〕:演算器22の位置計測部28では、各基準局から移動局2(TR5)までの三軸X・Y・Zの距離は算出できない。
〔S450〕:演算器22の制御部34において、再度、移動局1(TR4)又は移動局2(TR5)を送信局として割振り、移動局1(TR4)から送信波SW1、又は、移動局2(TR5)から送信波SW2を発射し、これを受信局に割振られた移動局で受信する。そして、演算器22の位置計測部28で、移動局1(TR4)と移動局2(TR5)との間の距離を直接的に求める。
〔S460〕:演算器22から警報表示器24に情報が送られ、表示部42に移動局(TR4、TR5)間の距離のみ表示され、移動局1、2(TR4、TR5)の位置(X・Y・Z)は表示されない。
〔S470〕:移動局(TR4、TR5)間の距離が、所定値より小さい場合に、警報表示器24の表示部42より警報を発する。警報発報の手順は、図5のS120〜S180に沿って行われる。
【0025】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態により得られる作用効果は、以下の通りである。
まず、本項に記載の水中接近警報装置20は、全ての送受波局TR1〜TRnが送信局又は受信局として機能することが可能であり、演算器22に各送受波局TR1〜TRnの送受波信号が集められる。そして、演算器22によって送信局に割振られた送受波局(例えばTR5)からの送信波を、演算器22によって受信局に割振られた送受波局(例えばTR1〜TR4)において受信し、演算器に対し有線でその距離を伝達することにより、送信局の位置を割り出すものである。そして、演算器22にて任意の送受波局間の距離を把握し、任意の送受波局間の距離が予め設定された距離よりも接近した場合に、警報表示器24に接近警報を表示するものである。
【0026】
しかも、送信局として割振る送受波局と、受信局として割振る送受波局とを適宜交換して、各送受波局間の送受波を行うことで、各送受波局の相対位置を多方面から把握し、位置の計測精度を高めることができる。
【0027】
又、本発明の実施の形態では、作業船12に設置された3個の送受波局TR1、TR2、TR3を基準局として割振り、3個の送受波局TR1〜TR3を基準として、移動局に割振られた残りの送受波局TR4、TR5の位置を把握することで、作業基地である作業船12上で、潜水士14と作業機械16(図10参照)との距離を正確に把握し、かつ、適切に接近警報を発することができる。この際、潜水士14への接近警報は、有線を介して確実に行われるものである。又、作業機械16に有線を介して発報された接近警報により、作業機械16を停止させ、必要に応じ自動停止させる制御ロジックを制御部34に組み込むことも可能である。
【0028】
そして、少なくとも1つの移動局(TR4又はTR5)から送信された送信波(SW1又はSW2)が、基準局(TR1〜TR3)で受信不可能な場合には、補完的に、各移動局間の送信波の送受信を行うことで(図7のS320、図8のS450)、移動局間の距離を直接的に把握することが可能である。
【0029】
なお、図7、図8の例において、送信局に割振られた移動局からの送信波SWnが、基準局で受信不可能な場合に、再度、移動局から送信波SWnを発射する(S320、S450)代わりに、各移動局間で既に送受信されている送信波SW1又はSW2を、演算器22の位置計測部28で優先的(復活的)に採用し、各移動局(TR4、TR5)間の距離判定に用いることとしても良い。
【0030】
又、本発明の実施の形態では、各送受波局TR1〜TR5自体がSBL方式の受信器R1〜R3を備えることから、送信局の送信波を各受信局で受信し、各送受波局間の距離を、各々の送受波局TR1〜TR5単独の受信情報に基づき把握することも可能となる。
【符号の説明】
【0031】
12:作業船、20:水中接近警報装置、22:演算器、24:警報表示器、26:通信部、28:位置計測部、30:送受信部、32:送受波器、34:制御部、36:位置演算部、38:トリガー、40:通信部、42:表示部、44:収録部、46:通信部、 R1、R2、R3:受信器、 T1、T2:音源、 TR1〜TRn:送受波器、 SW1、SW2:送信波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の測定物体間の距離を検知して適宜接近警報を発する水中接近警報装置であって、
複数の送受波局と、全ての送受波局に有線接続される演算器と、警報表示器とを含み、
前記演算器には、任意の1個の送受波局を送信局として割振り、残りの送受波局を受信局として割振る制御ロジックを備える制御部が含まれることを特徴とする水中接近警報装置。
【請求項2】
前記制御部には、送信局として割振る送受波局と、受信局として割振る送受波局とを適宜交換して、各送受波局間の送受波を行う制御ロジックが含まれることを特徴とする請求項1記載の水中接近警報装置。
【請求項3】
前記制御部には、所定の3個の送受波局を基準局として割振り、残りの送受波局を移動局として割振る制御ロジックが含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の水中接近警報装置。
【請求項4】
前記制御部には、少なくとも1つの前記移動局から送信された送信波が、前記基準局で受信不可能な場合に、各移動局間の送信波の送受信を行う制御ロジックが含まれることを特徴とする請求項3記載の水中接近警報装置。
【請求項5】
前記制御部には、少なくとも1つの前記移動局から送信された送信波が、前記基準局で受信不可能な場合に、各移動局間で受信された送信波を各移動局間の距離判定に用いる制御ロジックが含まれることを特徴とする請求項3記載の水中接近警報装置。
【請求項6】
前記送受波局に3個以上の受信器が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の水中接近警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−59795(P2011−59795A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206184(P2009−206184)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(303057044)株式会社ソニック (17)
【出願人】(591151222)社団法人日本埋立浚渫協会 (2)
【Fターム(参考)】