説明

水中油型乳化皮膚外用組成物

【課題】経時安定性に優れており、肌への塗布時には、のびが軽く、なじみがよく、べたつきのない水中油型乳化皮膚外用組成物の提供。
【解決手段】IOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分からなる油滴粒子と、ポリオキシエチレンの平均付加モル数(E)が10≦E≦20である特定なポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体によりベシクルが形成され、前記油滴表面に該ベシクルが付着して粒子を形成し、該粒子と水相とを含有する水中油型乳化皮膚外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化皮膚外用組成物、特に経時安定性に優れており、肌への塗布時には、のびが軽く、なじみがよく、べたつきのない水中油型乳化皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中油型乳化化粧料において、べたつきを低減させ、さっぱり感を得るために、水中油型の非連続相となる油相に極性油を用いる場合が多くみられる。そして、極性油を用いて安定な乳化化粧料を得るために、乳化剤として、ポリオキシエチレン60モル付加硬化ヒマシ油(INCI名:PEG-60 Hydrogenated Caster Oil、HLB=14)、ポリオキシエチレン30モル付加ベヘニルエーテル(INCI名:Beheneth-20、HLB=18)、ポリオキシエチレン40モル付加グリセリルモノステアレート(INCI名:PEG-40 Glyceryl Stearate、HLB=16)等のHLB値が10以上の界面活性剤が用いられている。
しかしながら、せっかくさっぱりとした感触の極性油を用いても、上記のようなHLB値の高い界面活性剤を乳化剤として用いた場合には、経時安定性には優れるものの、のびや肌へのなじみが悪く、べたつくものであった。
一方、低級アルコールは清涼感や速乾性を与えると共に、収斂、洗浄、殺菌、乾燥促進作用を有していることから、種々の化粧料に好んで用いられている。しかし、乳液やクリーム等の乳化化粧料に対して、低級アルコールを多量に配合すると、さっぱりとしてべたつきのない使用感触を持たせることができる反面、系の硬度や粘度を低下させ、乳化安定性が悪くなる傾向にあった。
【0003】
また、近年、油/両親媒性物質/水系の中で、独立相として存在する両親媒性物質のベシクル粒子をファンデルワールス力によって油性基剤表面に付着することで乳化を行う三相乳化法によれば、従来の一般的なO/W型の二相乳化エマルションに比べて非常に高い安定性を示すことが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3855203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の乳化組成物において、経時安定性と、のびや肌へのなじみやべたつきのなさといった使用性は背反する関係にあり、経時安定性に優れながらものびや肌へのなじみ、べたつきのなさに優れた水中油型の乳化皮膚外用組成物は得られていなかった。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑み行われたものであり、その目的は乳化安定性に優れるとともに、使用感(のび、肌へのなじみ、べたつきのなさ)にも優れた水中油型皮膚外用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明者等が鋭意研究を行った結果、自発的にベシクルを形成する特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体と水相とを混合してベシクル粒子を得、前記混合物に被乳化油性成分として、特定のIOB値を有するエステル油を含む油性成分を乳化混合させることにより、経時安定性に優れながらものびや肌へのなじみ、べたつきのなさに優れた水中油型の乳化皮膚外用組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物は、(a)IOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分からなる油滴粒子と、(b)下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体により形成され、前記油滴表面に付着するベシクル粒子と、(c)水相と、を含有することを特徴とする。
【化1】

(上記式中、L+M+N+X+Y+Zはエチレンオキシドの平均付加モル数(E)を示し、10≦E≦20である。)
【0008】
前記水中油型乳化皮膚外用組成物において、ベシクル粒子が、水と低級アルコールを含む溶液にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を添加して形成されることが好適である。
前記水中油型乳化皮膚外用組成物において、IOB値が0.1〜0.6のエステル油が、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソデシル(IOB=0.19)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸イソステアリル(IOB=0.14)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(IOB=0.13)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.16)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、イソステアリン酸エチル(IOB=0.15)、パルミチン酸エチルヘキシル(IOB=0.13)、ネオデカン酸オクチルドデシル(IOB=0.11)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル−2(IOB=0.17)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.15)、ミリスチン酸イソセチル(IOB=0.10)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.33)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、アジピン酸ジイソプロピル(IOB=0.46)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール(IOB=0.52)、イソデシルベンゾエート(IOB=0.23)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.2)、イソノナン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、エチルヘキサン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、トリエチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.36)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)からなる群から選ばれる一種または二種以上であることが好適である。
前記水中油型乳化皮膚外用組成物において、IOB値が0.1〜0.6のエステル油の含有量が組成物全量に対して、0.5〜10質量%であることが好適である。
前記水中油型乳化皮膚外用組成物において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体のHLB値が11以下であることが好適である。
前記水中油型乳化皮膚外用組成物において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の配合量が組成物全量に対して、0.5〜10質量%であることが好適である。
【0009】
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物の製造方法は、水相と、自発的にベシクルを形成する下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体とを混合し、該水相内にベシクル粒子を得た後、前記混合物にIOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分を混和させて得ることを特徴とする。
【化2】

(上記式中、L+M+N+X+Y+Zはエチレンオキシドの平均付加モル数(E)を示し、10≦E≦20である。)
前記水中油型乳化皮膚外用組成物の製造方法において、水相が水と低級アルコールを含むことが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水相と、一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体とを混合することによってベシクル粒子を得、さらにIOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分からなる油滴粒子に付着させることにより、経時安定性に優れながらものび、肌へのなじみ、べたつきのなさに優れた水中油型乳化皮膚外用組成物が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】乳化のメカニズムを示した図で、(a)は従来の界面活性剤の単分子膜吸着メカニズムを説明する図、(b)はベシクル粒子の付着メカニズムを説明する図である。
【図2】(a)は従来の吸着分子型での熱衝突による現象を説明する図、(b)はベシクル相付着型での熱衝突による現象を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
まず、本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物の必須成分である、(a)IOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分からなる油滴粒子、(b)ベシクル粒子、(c)水相、についてそれぞれ説明する。
【0013】
(a)IOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分からなる油滴粒子
油滴粒子は、被乳化油性成分からなるものである。被乳化油性成分には、必須成分としてIOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む。
以下、IOB値を規定する有機概念図論について説明する。有機概念図とは、すべての有機化合物の根源をメタン(CH)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求める。そして、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)等に示されている。有機概念図におけるIOB値とは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち、「無機性値(IV)/有機性値(OV)」を言う。
【0014】
本発明に用いられるエステル油は、べたつかないという点から、IOB値が0.1〜0.6であることが必要である。IOB値が0.1未満のエステル油では、使用感の面でさっぱりせず、べたつく感触を生じる場合がある。一方、IOB値が0.6を超えるエステル油では、水に溶解しやすくなり、油分としての機能を発揮しなくなり、乳化安定性に劣る場合がある。
【0015】
本発明に用いられるIOB値が0.1〜0.6のエステル油は、特に限定されるものではないが、以下のものが例示される。
IOB値が0.1〜0.6のエステル油の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソデシル(IOB=0.19)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸イソステアリル(IOB=0.14)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(IOB=0.13)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.16)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、イソステアリン酸エチル(IOB=0.15)、パルミチン酸エチルヘキシル(IOB=0.13)、ネオデカン酸オクチルドデシル(IOB=0.11)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル−2(IOB=0.17)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.15)、ミリスチン酸イソセチル(IOB=0.10)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.33)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、アジピン酸ジイソプロピル(IOB=0.46)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール(IOB=0.52)、イソデシルベンゾエート(IOB=0.23)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.2)、イソノナン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、エチルヘキサン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、トリエチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.36)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)等が挙げられる。
【0016】
IOB値が0.1〜0.6のエステル油は、1種または2種以上を用いることができる。また、配合量は、さっぱり感、肌なじみの観点から組成物全量に対して0.5〜10.0質量%が好ましく、1.0〜8.0質量%配合することがより好ましい。0.5質量%未満では、べたつきのなさに劣る場合がある。10.0質量%を超えて配合すると、油っぽさを感じるようになり、また、安全性上も好ましくない。
【0017】
また、必須成分であるIOB値が0.1〜0.6のエステル油以外の被乳化油性成分としては、通常皮膚外用組成物に用いられるものであればどのような油性成分も配合できる。例えば、被乳化油性成分としては、油脂、ロウ類、炭化水素油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール、天然エステル油等から選ばれる任意の成分を配合することができ、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されない。
【0018】
油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落下生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0019】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンラノリンアルコールアセテート、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0020】
炭化水素油としては、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、イソパラフィン等が挙げられる。
【0021】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、シクロペンタジメチルシロキサン等の直鎖状または環状のポリシロキサン等が挙げられる。
【0022】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0023】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分岐鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0024】
天然系のエステル油としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0025】
(b)ベシクル粒子
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物は、前記油滴粒子を安定化させるため、油滴表面に付着するベシクル粒子を配合する。ベシクル粒子は、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体により形成される。下記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体は、水相中に撹拌しながら滴下することで自発的にベシクル粒子(閉鎖小胞体)を形成する両親媒性物質であり、形成されたベシクル粒子は水中油型乳化系において油滴粒子に吸着し、水相と油相の界面に独立してベシクル相を為す。
【0026】
【化3】

【0027】
上記一般式(1)中、L+M+N+X+Y+Zはエチレンオキシドの平均付加モル数(E)を示し、10≦E≦20である。
すなわち、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体は、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(E)が10〜20である誘導体が使用可能である。EOの平均付加モル数が10より小さいと、水相中で自発的にベシクル粒子を形成しないため、本発明の乳化組成物を得ることができない。また、20より大きいと、ベシクル粒子を形成しながら十分な乳化が実現できない上、ぬめりを感じる、肌へのなじみに劣る等、使用性の点で満足するものが得られない。
【0028】
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用剤に含まれるベシクル粒子は、水と低級アルコールを含む溶液に一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を添加することにより形成されることが好適である。
ベシクル粒子形成に用いられる溶液には、本発明の効果を損ねない範囲において、水および低級アルコール以外の各種成分を配合することが可能であるが、水および低級アルコールからなる溶液によりベシクル粒子を形成されることが特に好適である。
【0029】
ベシクル粒子形成に用いられる溶液に配合される低級アルコールは、炭素数1〜4の1価脂肪族アルコールを用いることができ、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の一種または二種以上が挙げられ、特に安全性の面を考慮すれば、エタノールが好ましい。
ベシクル粒子形成溶液中の低級アルコールの配合量は、特に限定されないが、溶液全量に対して5〜50質量%、特に15〜50質量%であることが好ましい。5質量%より少ないと、ベシクル粒子形成の際により強シェアが必要となってしまい、強シェアをかけないと良好なベシクル粒子が形成できない場合がある。また、50質量%を超えても、さらに良好なベシクル粒子が形成されるものではなく不経済である。
また、乳化の際にも、低級アルコールが存在することにより、乳化粒子径を小さくすることができる。
【0030】
また、本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物は、ベシクル形成および乳化後に、低級アルコールを配合することもできる。
従来の乳化組成物には、低級アルコールは経時安定性を非常に悪くするため、配合できない場合があった。しかし、本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物に、乳化後に低級アルコールを添加した場合、配合量にもよるが、従来とは異なり、経時安定性は若干悪くなるが、安定性の問題はかなり少ない。
以上のことから、本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物を製造するベシクル粒子形成、乳化前、乳化後のいずれの工程においても、低級アルコールを配合してもよい。
【0031】
また、本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物に配合されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体のHLB値は11以下であることが好適である。
上記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体は、1種または2種以上を用いることができる。その配合量は、組成物全量に対して0.5〜10質量%であることが好適であり、さらには2〜8質量%、特に3〜5質量%であることが好適である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の配合量が0.5質量%未満であると、乳化安定性に劣り、また、10質量%を超えて配合すると、べたつきを生じる場合がある。
【0032】
(c)水相
本発明に用いられる水相は、水あるいは水性溶媒を主な媒体としてなるものであれば、特に限定されるものではない。水相には、水あるいは水性溶媒の他、通常皮膚外用組成物に用いられる成分を安定性に影響がでない範囲内の配合量で配合していても構わない。
【0033】
例えば、水相に、安定性を損ねない範囲で、使用感触、仕上がりの美しさを向上させるために、粉体を配合することも可能である。配合する粉体としては、親水性の粉末が適している。例えば、シリカ、マイカ、タルク、セリサイト、カオリン、合成フッ素金雲母、第二リン酸カルシウムなどが挙げられる。そして、親水化処理を施した有機樹脂粉末や親水基を導入した有機樹脂粉末なども挙げられる。
【0034】
本発明においては、水相に、さらに増粘剤を配合することが好適である。特に、カルボキシビニルポリマー、サクシノグリカン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガムを配合することで、経時による乳化粒子の安定性がさらに改善される。増粘剤の配合量としては、組成物全量に対して0.1〜3質量%が好ましい。0.1質量%未満であると、乳化安定性の改善が十分でない場合があり、3質量%を超えると、よれが生じるなど使用感が悪くなることがある。
【0035】
本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物は、皮膚化粧料として用いる場合、美白化粧料、抗老化化粧料や日焼け止め化粧料に用いることが好適である。
【0036】
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物を美白化粧料に用いる場合、美白薬剤として好適なものとしては、以下が挙げられる。
例えば、L−アスコルビン酸およびその誘導体の塩、トラネキサム酸およびその誘導体の塩、アルコキシサリチル酸およびその誘導体の塩等が好ましいものとして挙げられる。
【0037】
L−アスコルビン酸は、一般にビタミンCと言われ、強い還元作用により細胞呼吸作用、酵素賦活作用、膠原形成作用を有し、かつメラニン還元作用を有する。L−アスコルビン酸誘導体としては、L−アスコルビン酸モノステアレート、L−アスコルビン酸モノパルミテート、L−アスコルビン酸モノオレートなどのL−アスコルビン酸モノアルキルエステル類;L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類;L−アスコルビン酸ジステアレート、L−アスコルビン酸ジパルミテート、L−アスコルビン酸ジオレートなどのL−アスコルビン酸ジアルキルエステル類;L−アスコルビン酸トリステアレート、L−アスコルビン酸トリパルミテート、L−アスコルビン酸トリオレートなどのL−アスコルビン酸トリアルキルエステル類;L−アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのL−アスコルビン酸トリエステル;L−アスコルビン酸2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類などが挙げられる。本発明では、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リンエステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシドの各塩の形で好適に用いられる。
【0038】
トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’−ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミド、トランス−4−(p−メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)等が挙げられる。本発明ではトラネキサム酸の塩あるいはトラネキサム酸誘導体の塩の形で好適に用いられる。
【0039】
アルコキシサリチル酸は、サリチル酸の3位、4位または5位のいずれかの水素原子がアルコキシ基にて置換されたものであり、置換基であるアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基のいずれかであり、さらに好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。具体的に化合物名を例示すれば、3−メトキシサリチル酸、3−エトキシサリチル酸、4−メトキシサリチル酸、4−エトキシサリチル酸、4−プロポキシサリチル酸、4−イソプロポキシサリチル酸、4−ブトキシサリチル酸、5−メトキシサリチル酸、5−エトキシサリチル酸、5−プロポキシサリチル酸等が挙げられる。本発明ではアルコキシサリチル酸およびその誘導体(エステルなど)の各塩の形で好適に用いられる。
【0040】
上記薬剤の塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩のほか、アンモニウム塩、アミノ酸塩等の塩が挙げられる。
【0041】
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物を抗老化化粧料に用いる場合、抗老化薬剤として、αあるいはβアミノ酸誘導体を好適に用いることができる。
α−アミノ酸誘導体としては、下記一般式(2)で表されるα−アミノ酸誘導体及びその塩からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。
【化4】

(一般式(2)中、Rは水素原子、CH基又はCHOH基を表し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルケニル基、炭素数2〜6のアシル基、カルバモイル基、アミジノ基、ピリジルカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、フェニル基又はベンジル基のいずれかを表し、但しR及びRが同時に水素原子であることはなく、あるいはR及びRはそれらが結合しているN原子と共に炭素数の総和4〜6の環構造を形成してもよく、その場合当該環構造は任意的にヘテロ原子として酸素原子を含んでもよく、
は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基、フェニル基、ベンジル基を表し、ここでR、R及びRのシクロヘキシル部もしくはフェニル部、又はR及びRが形成するN原子を含んだ環構造は、任意的に炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基又は水酸基を有していてもよく、また、R及びRが水素原子である場合、R及びRの一方がベンジルオキシカルボニル基で他方が水素原子であること及びR及びRの一方がアミジノ基で他方がメチル基であることはない。)
【0042】
本発明に用いられるα−アミノ酸誘導体の例としては、サルコシン、エチルグリシン、トリメチルグリシン、ブチルグリシンなどが挙げられるが、それらに限定されることなく、しわ改善効果を発揮する誘導体すべてが有用である。好ましくは、サルコシン及びエチルグリシンが挙げられる。
一般式(2)で表されるα−アミノ酸誘導体の塩としては、特に限定されないが、例えば、無機塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、アミノ酸塩等が挙げられる。
【0043】
β−アミノ酸誘導体としては、β−アミノ酸誘導体及びその塩からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。
そのようなβ−アミノ酸誘導体としては、β−アラニル−L−ヒスチジン(L−カルノシン)、3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸、β−アラニンアミド、N−モノメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−β−アラニン、N−シクロヘキシルメチル−β−アラニン、N−シクロヘキシル−N−メチル−β−アラニン、N−シクロヘキシルカルボニル−β−アラニン、N−(2’−ピリジル)−β−アラニン、N−ニコチノイル−β−アラニン、N−ベンジルオキシカルボニル−β−アラニン、N−ベンジル−β−アラニン、N−ベンゼンスルホニル−β−アラニン、N−ベンゾイル−β−アラニン、N−p−アニソイル−β−アラニン(N−4’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−m−アニソイル−β−アラニン(N−3’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−o−アニソイル−β−アラニン(N−2’−メトキシベンゾイル−β−アラニン)、N−3’,4’,5’−トリメトキシベンゾイル−β−アラニン及びN−フェニルアセチル−β−アラニン、あるいはこれらの塩等が挙げられる。中でも、β−アラニル−L−ヒスチジンあるいはその塩、3−(1’−ピペリジン)−プロピオン酸あるいはその塩が、薬剤安定性、およびしわ改善の効果の点から最も好ましい。塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、等)、アンモニウム塩、有機アミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、等)等が挙げられる。
【0044】
上記の薬剤成分は1種または2種以上を用いることができ、その配合量は任意である。製品設計において希望する塩型薬剤の配合量を水相成分の配合量と調整しながら適宜決定する。例えば、組成物全量に対して、0.1〜5質量%程度配合される。
【0045】
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物を日焼け止め化粧料として用いる場合の紫外線吸収剤としては、高い日焼け止め効果を有し、経時安定性の面で優れるものが好適である。
具体的には、オクトクリレン、オクチルメトキシシンナメート、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ジメチコンジエチルベンザルマネート、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2−[4−(エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等から選ばれる紫外線吸収剤を適宜組み合わせて用いることができる。
【0046】
本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物には、その効果を損なわない範囲において、通常、皮膚外用組成物に用いられる各種の成分、例えば、保湿剤、前記以外の紫外線吸収剤、有機系粉末、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、薬剤、植物抽出液、香料、色素等を配合できる。
【0047】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、アルキレンオキシド誘導体、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリンエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、アミノ酸、核酸、エラスチン等のタンパク質、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等が挙げられる。
【0048】
また、前記以外の紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸誘導体系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸誘導体系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸誘導体系紫外線吸収剤、ジベンゾイルメタン誘導体系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩等のベンゾフェノン誘導体系紫外線吸収剤、ジフェニルアクリレート誘導体系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール誘導体系紫外線吸収剤、エチルヘキシルトリアジン等のトリアジン誘導体系紫外線吸収剤、3−(4’−メチルベンジリデン)−3−ペンテン−2−オン等のベンジリデンカンファー誘導体系紫外線吸収剤、フェニルベンズイミダゾール誘導体系紫外線吸収剤、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,2’−ジヒドロキシ−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール誘導体系紫外線吸収剤、ポリシリコーン15等のベンザルマロネート誘導体紫外線吸収剤、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−イソブトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニゾイルメタン、メギゾリル等が挙げられる。
【0049】
有機系粉末としては、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー粉末、アクリル樹脂粉末等が挙げられる。
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
防腐剤、抗菌剤としては、α−トコフェロール、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素等が挙げられる。
【0050】
本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物は、水性媒体中にベシクルを形成し、その後ベシクル存在下で乳化を行うことにより、ベシクル(相)が油相(油滴)に付着した「三相乳化」の構造をもつ組成物であって、油滴粒子上にベシクル粒子を付着させ、水相−ベシクル相−油相の三相構造を形成することにより安定化を図るものである。
【0051】
ここで、図1を用いて、従来型の界面活性剤による乳化法と、今回採用した三相乳化法の違いを説明する。
従来の界面活性剤による乳化法においては、図1(a)に示されるように、界面活性剤は同一分子内に性質の異なる親水基と親油基を持つため、油の粒子に対しては、界面活性剤の親油基が油に相溶し、また、親水基は油粒子の外側に配向した状態で並んでいるので水になじみやすくなり、水媒体中に均一に混ざり合い、O/W型エマルションを生成する。
しかしながら、従来型のこのような乳化法によると、界面活性剤が油表面に吸着し、単分子膜状の乳化膜を形成しているために、界面活性剤の種類により界面の物性が変化する不都合がある。また、図2(a)に示されるように、油滴の熱衝突による合一によって油滴のサイズは次第に大きくなり、遂には油と界面活性剤水溶液とに分離する。これを防ぐためには、マイクロエマルションを形成させる必要があり、多量の界面活性剤を用いなければならない場合がある。
【0052】
そこで、本発明においては、油の粒子に対して乳化剤相のベシクル粒子を付着させ(図1(b))、これにより水相−ベシクル相−油相の三相構造を形成し、相溶性による界面エネルギーの低下をさせることなく、熱衝突による合一を起こりにくくして乳化物の長期安定化を図っている(図2(b))。したがって、上記機構に基づき、少量の乳化分散剤によってエマルションを形成することが可能な乳化法(三相乳化法)を採用した。
【0053】
すなわち、本発明にかかる組成物は、撹拌下で、エチレンオキサイド平均付加モル数が10〜20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を、水相へ滴下して該誘導体のベシクル粒子を形成し、ここに同撹拌下でIOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分を加えて乳化して得ることができる。水相中に特定IOB値のエステル油を含む被乳化油性成分が乳化分散し、さらに油滴粒子表面にベシクル粒子が局在しているため、乳化安定性に優れていると共に、使用感(のび、肌へのなじみ、べたつきのなさ)にも優れている。なお、撹拌に用いられる撹拌装置は特に限定されるものではなく、例えばホモミキサー、ディスパー等を使用することができる。
また、水相中に増粘剤等を配合する場合は、水中でベシクル粒子を形成し、増粘剤を除く水相パーツを添加した後、被乳化油性成分を加え乳化し、その後、増粘剤を添加することが好ましい。ベシクル粒子形成の際や乳化前に増粘剤を添加してしまうと、ベシクル粒子や乳化物の安定性に劣る場合がある。
【0054】
本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物は、外皮に適用される化粧料、医薬品、及び医薬品部外品に広く適用することが可能である。また、製品形態も任意であり、皮膚化粧料として適用する場合、乳液、クリーム、乳化型ファンデーション、乳化型日焼け止め等として用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の好適な実施例について、さらに詳述する。本発明は、これにより限定されるものではない。なお、以下の例において、配合量(%)は、特に記載のない限り質量%である。はじめに各試験例で用いた評価方法について説明する。
【0056】
<安定性評価方法>
評価(1):ベシクル粒子径
試料のベシクルの平均粒子径を、粒度分布計FPAR−1000(大塚電子社製BX51)を用いて、動的光散乱法にて測定した。
【0057】
評価(2):乳化粒子径
試料の乳化粒子径の測定は、光学顕微鏡(OLYMPUS社製BX51)で直接目視により観察し、求めた。
【0058】
評価(3):乳化粒子安定性
試料を50mlのサンプル管(直径3cm)に入れ、室温において、45rpmの速度で4時間回転させる試験を行い、乳化組成物の乳化粒子安定性を視覚による油浮き有無の確認から判断した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
○:目視で油浮きは観察されなかった。
△:目視でやや油浮きが観察された。
×:目視で相当量の油浮きが観察された。
【0059】
評価(4):経時乳化安定性
試料を50℃、1か月間放置後の外観を目視にて観察し、下記評価基準により判定した。
(評価基準)
○:目視で油浮きは観察されなかった。
△:目視でやや油浮きが観察された。
×:目視で相当量の油浮きが観察された。
【0060】
<使用性評価方法>
女性専門パネル10名による実使用試験を行い、各項目において、下記の評価基準により評価してもらった。
【0061】
評価(1):のび
(評価基準)
◎:10名全員が、のびが軽く、なめらかであると判定した。
○:7〜9名が、のびが軽く、なめらかであると判定した。
△:3〜6名が、のびが軽く、なめらかであると判定した。
×:0〜2名が、のびが軽く、なめらかであると判定した。
【0062】
評価(2):肌なじみ
(評価基準)
◎:10名全員が、肌へのなじみがよいと判定した。
○:7〜9名が、肌へのなじみがよいと判定した。
△:3〜6名が、肌へのなじみがよいと判定した。
×:0〜2名が、肌へのなじみがよいと判定した。
【0063】
評価(3):べたつきのなさ
(評価基準)
◎:10名全員が、べたつきがないと判定した。
○:7〜9名が、べたつきがないと判定した。
△:3〜6名が、べたつきがないと判定した。
×:0〜2名が、べたつきがないと判定した。
【0064】
<低級アルコールの配合の有無による安定性の評価>
まず、本発明者らは、下記表1に示す配合組成よりなる試料を製造した。各試料は、下記製造方法に基づき、製造した。得られた水中油型乳化皮膚外用組成物について、上記安定性評価方法(1)〜(3)に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0065】
水中油型乳化皮膚外用組成物製造方法I
精製水およびエタノールに両親媒性物質であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を添加・混合し、混合液をホモミキサーにて1分間処理して、ベシクル粒子含有組成物を作成した。得られた組成物にカルボキシビニルポリマー以外の残りの水相成分を添加した。次に、あらかじめ均一混合された被乳化油性成分をホモミキサーをかけながら、徐々に添加し、最後にカルボキシビニルポリマーを添加することで、水中油型乳化皮膚外用組成物を得た。
【0066】
水中油型乳化皮膚外用組成物製造方法II
精製水に両親媒性物質であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を添加・混合し、混合液をホモミキサーにて強シェア(7000〜12000r/min、5分間)をかけ、ベシクル粒子含有組成物を作成した。得られた組成物にカルボキシビニルポリマー以外の残りの水相成分を添加した。次に、あらかじめ均一混合された被乳化油性成分をホモミキサーをかけながら、徐々に添加し、最後にカルボキシビニルポリマーを添加することで、水中油型乳化皮膚外用組成物を得た。
【0067】
【表1】

【0068】
表1によると、ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油で形成されるベシクルの平均粒子径は、エタノールを各量配合した試験例1−1〜1−5において、大きく異なることはなかった。また、これらの試験例のベシクル粒子含有組成物から製造された乳化物において、乳化組成物の粒子径はエタノールの配合量を多くするにしたがい小さくなることが明らかとなった。
エタノール配合量が4.0質量%以下の場合(試験例1−1〜1−2)には、ベシクルの形成が不十分であったため、乳化が十分に行われずに油浮きが観察されたと思われる。
しかし、水中で強シェアをかけベシクルを形成させたの試験例1−6において、ベシクル製造の際エタノールを多く配合させた試験例1−5と同様、小さなベシクル粒子が製造でき、このベシクル粒子含有組成物を含む乳化物は、安定性が良いものであった。
【0069】
したがって、本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物において、ベシクル形成に低級アルコールを配合する場合、5.0質量%以上配合することが好ましいことがわかった。低級アルコールを配合することで、小さなベシクル粒子形成および、それを用いた乳化物の乳化粒子径が小さく、安定性の良好な水中油型乳化皮膚外用組成物を製造できることが明らかとなった。
また、試験例1−6のように、ベシクル形成の際には、低級アルコールを配合しなくても、適切なシェアをかけることで、同様の水中油型乳化皮膚外用組成物を製造できる。
【0070】
<エチレンオキサイド平均付加モル数によるベシクル粒子形成の検討>
次に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体が水中でベシクル粒子を形成する際の好適なエチレンオキサイド平均付加モル数を調べるために、表2の単純な処方に基づきベシクル粒子含有組成物を製造した。得られた組成物について、上記安定性評価方法(1)に基づき評価し、さらに外観を観察した。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2によると、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体のエチレンオキサイド平均付加モル数が5のものを用いた試験例2−1において、両親媒性物質であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体は水相中で全く分散せず、上層に浮いた状態が観察された。
一方、エチレンオキサイド平均付加モル数が30、40、60のものを用いた試験例2−4〜2−6において、外観は半透明ではあるものの、その平均粒子径が非常に微細となり、粒子の平均粒子径は、10nm以下となった。
また、エチレンオキサイド平均付加モル数が10のものを用いた試験例2−2において、外観は白濁し、さらにその粒子径は200nmとなり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体がベシクル粒子を形成しているものと考えられる。
エチレンオキサイド平均付加モル数が20のものを用いた試験例2−3も同様に、その外観および粒子径からポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体がベシクル粒子を形成していると考えられる。
【0073】
<エチレンオキサイド平均付加モル数による乳化粒子の安定性および使用性の検討>
さらに、本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物におけるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の好適なエチレンオキサイド平均付加モル数を調べるために、表3の処方に基づき、上記の製造方法Iで試料を製造した。得られた水中油型乳化皮膚外用組成物について、上記安定性評価方法(2)、使用性評価方法(1)〜(3)に基づき評価した。また、製造から1か月経過後の乳化物の状態を上記安定性評価方法(4)にて評価した。結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3によると、エチレンオキサイドの平均付加モル数が30、40、60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合した試験例3−3〜3−5において、試料の乳化粒子径は大きく、油浮きが観察された。また、使用性の面においても、のび、肌なじみ、べたつきのなさといった項目において、評価が悪い傾向にあることが確認できた。
また、エチレンオキサイド平均付加モル数20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を配合した試験例3−2においては、わずかに油浮きが目立つが、乳化粒子径が1〜5μmと小さく、使用性の優れた乳化組成物が得られた。
エチレンオキサイド平均付加モル数が10のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を配合した試験例3−1では、試料の乳化粒子径が1〜5μmと小さく、油浮きもなく、さらにのび、肌へのなじみ、べたつきのなさに非常に優れたものであった。
さらに、エチレンオキサイド平均付加モル数が10および20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を混合した試験例3−6では、試料の乳化粒子径は1〜5μmと小さく、油浮きも観察されず、またのびの軽さに非常に優れ、肌へのなじみがよく、べたつきもないものであった。
以上の結果から、本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物に配合されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体のエチレンオキサイド平均付加モル数は10〜20である場合に、乳化安定性および使用性に優れた組成物が製造できることが明らかとなった。
【0076】
<ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の配合量の検討>
本発明の水中油型乳化皮膚外用組成物におけるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の好適な配合量を調べるために、表4の処方に基づき、上記の製造方法で試料を製造した。得られた水中油型乳化皮膚外用組成物について、表3と同様に、安定性および使用性を評価した。結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
表4によると、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を配合していない、もしくは配合量の非常に少ない試験例4−1および試験例4−2では、十分な乳化ができなかった。
一方、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を適宜配合した試験例4−3〜試験例4−6において、試料は乳化安定性に優れ、使用性にも優れていた。
特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を3〜5質量%配合した試験例4−4、試験例4−5において、乳化安定性に優れるだけではなく、のびや肌へのなじみ、べたつきのなさといった使用性に非常に優れた乳化組成物が得られた。
また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を15質量%配合した試験例4−7において、試料は乳化安定性には優れていたが、べたつきのなさにやや劣ってしまった。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を適宜配合し、水中でのベシクル形成の際に強シェアをかけた試験例4−8の試料は、上記のように、低級アルコールを含む組成物中でベシクル形成を行った際と同様、乳化粒子径が小さく、乳化安定性に優れるだけではなく、のびや肌へのなじみ、べたつきのなさといった使用性に非常に優れた乳化組成物が得られた。
以上の結果から、本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物に配合されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の配合量は、0.5〜10質量%が好ましいことが明らかとなった。
【0079】
<エステル油の検討>
表5の処方に基づき、上記の製造方法Iで試料を製造した。得られた水中油型乳化皮膚外用組成物について、上記安定性評価方法(2)、(4)、使用性評価方法に基づき評価した。結果を表5に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
表5によると、IOB値が0.1〜0.6のエステル油を含有している試験例5−1〜5−7において、乳化粒子径は小さく、乳化安定性も良好であり、その使用性はのびおよび肌なじみがよく、べたつきもないものであった。
これに対し、IOB値が0.1未満もしくは0.6より大きいエステル油を用いた試験例5−8〜5−10は、乳化粒子径が大きく、経時での乳化安定性に劣り、その使用性も肌へのなじみやべたつきのなさに劣るものであった。
また、エステル油を配合していない試験例5−11は、経時乳化安定性は良好であったが、のびにやや劣り、肌なじみ、べたつきのなさに劣るものであった。
【0082】
以上の結果により、油性成分と、特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体により形成されるベシクル粒子と、水相を含み、該油性成分にIOB値が0.1〜0.6のエステル油を含有することにより、乳化安定性が良好で、かつ使用性(のび、肌なじみ、べたつきのなさ)も良好な水中油型乳化皮膚外用組成物が製造できることが明らかとなった。
【0083】
<乳化方法の検討>
本発明の製造方法と従来の製造方法を比較検討した。下記表6に示す配合組成で、下記の3つの異なる製造方法(A〜C)で水中油型乳化組成物を製造し、表5と同様に、安定性と使用性を評価した。結果を表6に示す。
【0084】
製造方法A
精製水およびエタノールにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を添加・混合し、混合液をホモミキサーにて1分間処理して、ベシクル粒子を含む水相パーツを作成した。得られた水相パーツに、カルボキシビニルポリマーを除く残りの水相成分を添加した。次に、あらかじめ均一混合された被乳化油性成分を、ホモミキサーをかけながら徐々に添加した。カルボキシビニルポリマーを添加することで、水中油型乳化皮膚外用組成物を得た。
【0085】
製造方法B
精製水にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を添加・混合し、混合液をホモミキサーにて強シェアをかけ、ベシクル粒子を含む水相パーツを作成した。得られた水相パーツに、エタノールおよびカルボキシビニルポリマーを除く残りの水相成分を添加した。次に、あらかじめ均一混合された被乳化油性成分を、ホモミキサーをかけながら徐々に添加した。エタノールおよびカルボキシビニルポリマーを添加することで、水中油型乳化皮膚外用組成物を得た。
【0086】
製造方法C
被乳化油性成分にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を混合し、あらかじめ均一混合された水相パーツにホモミキサーをかけながら徐々に添加することで、水中油型乳化皮膚外用組成物を得た。
【0087】
【表6】

【0088】
表6によると、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を配合し、製造方法Aにて製造した試験例6−1は、同誘導体を配合し、従来の乳化方法である製造方法Cにて製造した試験例6−3の組成物と比較し、乳化安定性、使用性共に優れた乳化組成物を得ることができた。
また、製造方法Bで製造した試験例6−2の試料も、試験例6−1の試料と同様、乳化安定性に優れており、使用性も良いものであった。
上述のように、エチレンオキサイドの平均付加モル数が60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を配合した試験例6−4に比べ、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を配合した試験例6−1の方が、非常に乳化安定性に優れ、使用性(のび、肌へのなじみ、べたつきのなさ)にも非常に優れていた。
【0089】
以上の結果より、本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物の製造においては、水相と、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体とを混合し、前記混合物にIOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分を混和させることで乳化安定性および使用性に非常に優れた水中油型乳化皮膚外用組成物を得られることがわかった。
【0090】
以下、本発明にかかる水中油型乳化皮膚外用組成物の好適な例を示すが、本発明は、これら処方例に何ら限定されるものではない。
【0091】
処方例1.日焼け止め乳液
(1)ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油 3.0
(2)イソノナン酸エチルヘキシル(IOB=0.2) 3.0
(3)デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
(4)オクトクリレン 4.0
(5)t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2.0
(6)コハク酸ジ2−エチルヘキシル(IOB=0.32) 2.0
(7)イソヘキサデカン 1.0
(8)サクシノグリカン 0.05
(9)キサンタンガム 0.1
(10)ヒドロキシエチルセルロース 0.01
(11)カルボキシビニルポリマー 0.1
(12)トラネキサム酸 1.0
(13)ジプロピレングリコール 4.0
(14)エデト酸塩 0.01
(15)フェノキシエタノール 0.5
(16)緑茶エキス 0.1
(17)クララエキス 0.1
(18)メリッサエキス 0.1
(19)香料 0.1
(20)エタノール 9.0
(21)精製水 残余
<製造方法>
(1)、(20)、(21)を混合し、ホモミキサーで混合した後、さらに(12)〜(18)を混合し、(2)〜(7)、(19)をホモミキサーをかけながら添加した。その後、(8)〜(11)を添加した。
【0092】
処方例2.抗老化美容液
A.水相部
(1)ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油 3.0
(2)1,3−ブチレングリコール 5.0
(3)グリセリン 7.0
(4)キシリトール 3.0
(5)ポリエチレングリコール1000 2.0
(6)ピペリジンプロピオン酸 1.0
(7)緑茶抽出液 0.1
(8)酵母エキス 0.1
(9)ヒアルロン酸 0.1
(10)カルボキシビニルポリマー 0.1
(11)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.08
(商品名:Pemulen TR-2、Lubrizol社製)
(12)メチルパラベン 0.1
(13)エデト酸塩 0.05
(14)フェノキシエタノール 0.3
(15)エタノール 5.0
(16)精製水 残余
B.油相部
(17)ジメチコン20mPa・s 1.0
(18)α−オレフィンオリゴマー 1.0
(19)イソデシルベンゾエート(IOB=0.23) 4.0
(20)デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
(21)ビタミンEアセテート 0.1
(22)ビタミンAパルミテート 0.1
(23)香料 適量
C.中和剤
(24)水酸化カリウム 適量
<製造方法>
室温にて、(15)、(16)に(1)を混合してホモミキサーにて均一に撹拌して、ベシクル粒子を調製する。次いで、(10)、(11)を除く残りの水相成分を添加し、十分に撹拌してA相(水相部)を得た。予め調製したB相(油相部)と混合し、ホモミキサーで乳化粒子を均一にし、(10)、(11)を加えた。その後、中和剤(24)を添加した。
【0093】
処方例3.美白美容液
A.水相部
(1)ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油 3.0
(2)ジプロピレングリコール 2.0
(3)1,3−ブチレングリコール 3.0
(4)グリセリン 7.0
(5)エリスリトール 3.0
(6)ポリエチレングリコール1000 2.0
(7)アスコルビン酸グリコシド 2.0
(8)アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム 0.1
(9)マグワ根皮エキス 0.2
(10)ベルゲニアリグラダ根エキス 0.2
(11)ユキノシタエキス 0.2
(12)ヒアルロン酸 0.1
(13)キサンタンガム 0.15
(14)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.08
(商品名:Pemulen TR-2、Lubrizol社製)
(15)メチルパラベン 0.1
(16)エデト酸塩 0.05
(17)フェノキシエタノール 0.3
(18)エタノール 9.0
(19)精製水 残余
B.油相部
(20)イソドデカン 1.0
(21)流動パラフィン 1.0
(22)ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.2) 5.0
(23)デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0
(24)香料 適量
C.中和剤
(25)水酸化カリウム 適量
<製造方法>
室温にて、(18)、(19)に(1)を混合してホモミキサーにて均一に撹拌して、ベシクル粒子を調製する。次いで、(13)、(14)を除く残りの水相成分を添加し、十分に撹拌してA相(水相部)を得た。予め調製したB相(油相部)と混合し、ホモミキサーで乳化粒子を均一にし、(13)、(14)を加えた。その後、中和剤(25)を添加した。
【0094】
処方例4.乳液
A.水相部
(1)精製水 残余
(2)カルボキシビニルポリマー 0.12
(3)メチルパラベン 0.15
(4)ポリオキシエチレン(10モル付加)硬化ヒマシ油 3.0
(5)1,3−ブチレングリコール 5.0
(6)グリセリン 1.0
(7)クチナシエキス 0.1
(8)ワレモコウエキス 0.1
B.油相部
(9)イソノナン酸イソノニル 5.0
(10)2−エチルヘキサン酸イソセチル 2.0
(11)イソノナン酸エチルヘキシル 2.0
(12)ジメチコン6mPa・s 2.0
(13)香料 適量
C.中和剤
(14)水酸化カリウム 適量
<製造方法>
室温にて、(1)に(4)を混合してホモミキサーにて強シェアをかけ、均一に撹拌して、ベシクル粒子を調製する。次いで、(2)を除く残りの水相成分を添加し、十分に撹拌してA相(水相部)を得た。予め調製したB相(油相部)と混合し、ホモミキサーで乳化粒子を均一にし、(2)を加え、その後、中和剤(14)を添加した。
【0095】
以上の各処方例の水中油型乳化皮膚外用組成物は、いずれも使用性(のび、肌へのなじみ、べたつきのなさ)に優れ、かつ乳化安定性に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)IOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分からなる油滴粒子と、
(b)下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体により形成され、前記油滴表面に付着するベシクル粒子と、
(c)水相と、
を含有することを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物。
【化1】

(上記式中、L+M+N+X+Y+Zはエチレンオキシドの平均付加モル数(E)を示し、10≦E≦20である。)
【請求項2】
請求項1記載の水中油型乳化皮膚外用組成物において、ベシクル粒子が、水と低級アルコールを含む溶液にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体を添加して形成されることを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水中油型乳化皮膚外用組成物において、IOB値が0.1〜0.6のエステル油が、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソデシル(IOB=0.19)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸イソステアリル(IOB=0.14)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(IOB=0.13)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.16)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、イソステアリン酸エチル(IOB=0.15)、パルミチン酸エチルヘキシル(IOB=0.13)、ネオデカン酸オクチルドデシル(IOB=0.11)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル−2(IOB=0.17)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.15)、ミリスチン酸イソセチル(IOB=0.10)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.33)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、アジピン酸ジイソプロピル(IOB=0.46)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール(IOB=0.52)、イソデシルベンゾエート(IOB=0.23)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.2)、イソノナン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、エチルヘキサン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、トリエチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.36)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)からなる群から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用組成物において、IOB値が0.1〜0.6のエステル油の配合量が組成物全量に対して、0.5〜10質量%であることを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用組成物において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体のHLB値が11以下であることを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型乳化皮膚外用組成物において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体の配合量が組成物全量に対して、0.5〜10質量%であることを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物。
【請求項7】
水相と、自発的にベシクルを形成する下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体とを混合し、該水相内にベシクル粒子を得た後、前記混合物にIOB値が0.1〜0.6のエステル油を含む被乳化油性成分を混和させて得ることを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物の製造方法。
【化2】

(上記式中、L+M+N+X+Y+Zはエチレンオキシドの平均付加モル数(E)を示し、10≦E≦20である。)
【請求項8】
請求項7記載の水中油型乳化皮膚外用組成物の製造方法において、水相が水と低級アルコールを含むことを特徴とする水中油型乳化皮膚外用組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−195510(P2011−195510A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64230(P2010−64230)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】