説明

水冷却モータ用フライホイールおよび水冷却モータ用フライホイールシステム

【課題】水冷却モータ用フライホイールのカートリッジと筐体の摺動磨耗を抑制する。
【解決手段】水冷却モータ用フライホイールは、シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられて複数のカートリッジ挿入穴が形成された円柱状の筐体21と、カートリッジ挿入穴のそれぞれに着脱可能に挿入されて回転軸方向に延びる複数のカートリッジ22、23と、を有する。カートリッジ挿入穴とカートリッジ22、23の横断面形状が非円形であって、カートリッジ挿入穴内でカートリッジ22、23がカートリッジ挿入穴に対して相対的に回転できない形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水冷却モータ用フライホイールおよび水冷却モータ用フライホイールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水冷却モータ用フライホイールは、駆動するポンプが電源喪失時に停止するまでの減速を緩和するため、すなわち、ポンプ供給流量の急激な低下を緩和するために回転軸と一体に回転する高慣性の円盤状の構造物である。一般的にはタングステン等の重金属を非磁性体で高強度の合金鋼製の筐体内に密封し重金属をエロージョン・コロージョンから保護する構成となっている。また、その回転によって周囲の流体に剪断力が働き流体摩擦熱が発生するために、冷却装置を具備している。
【0003】
このような水冷却モータ用フライホイール構造としては、上記の一般的な構造の軸方向の両面にスラストランナーを具備しスラスト軸受と一体構造としたもの(たとえば特許文献1参照)、構造強度の高い材料で円盤状のフライホイール筐体を構成し、筐体に口径の異なる2種類の円柱状の穴を回転軸方向に複数個開け、それらの穴に合致する重金属を封入したカートリッジを封入することで慣性を調整可能な構造としたものがある(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
冷却構造としては、フライホイールの側面もしくは軸方向の円形面に対向する構造材の壁面を伝熱面とする冷却水流路を設け、外部からの冷却材で冷却する構成としたものがある(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,886,430号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2007/0025865号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水冷却モータ用フライホイール構造においては、重金属は円柱状、または軸対称な形で筐体に設置されているため、長期の回転で重金属または重金属封入カートリッジと筐体構造材との間で摺動磨耗が発生する可能性があることが課題となる。
【0007】
また、フライホイールとその周囲の流体との剪断応力(摩擦力)で発生する流体摩擦熱は損失となり、モータ効率が低下することが課題である。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、水冷却モータ用フライホイールのカートリッジと筐体の摺動磨耗を抑制すること、または、フライホイールの周囲での流体摩擦を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明に係る水冷却モータ用フライホイールの一態様は、シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられて、前記シャフトの回転軸方向に延びる複数のカートリッジ挿入穴が形成された円柱状の筐体と、前記カートリッジ挿入穴のそれぞれに着脱可能に挿入された、前記回転軸方向に延びる複数のカートリッジと、を有する水冷却モータ用フライホイールであって、前記カートリッジ挿入穴および前記カートリッジの前記回転軸に垂直な横断面の形状が非円形であって、前記カートリッジ挿入穴内で前記カートリッジが当該カートリッジ挿入穴に対して相対的に摺動するのを抑制する形状であること、を特徴とする。
【0010】
また、この発明に係る水冷却モータ用フライホイールの他の一つの態様は、シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられて、前記回転軸方向に延びる複数のカートリッジ挿入穴が形成された円柱状の筐体と、前記カートリッジ挿入穴のそれぞれに着脱可能に挿入された、前記回転軸方向に延びる複数のカートリッジと、を有する水冷却モータ用フライホイールであって、前記カートリッジおよび前記カートリッジ挿入穴は前記回転軸を中心とする円環状であって、前記カートリッジが前記カートリッジ挿入穴内で当該カートリッジ挿入穴に対して相対的に前記回転軸の周りに回転するのを阻止する回り止め機構が形成されていること、を特徴とする。
【0011】
また、この発明に係る水冷却モータ用フライホイールのさらに他の一つの態様は、円筒形の外側面を有し、シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられた水冷却モータ用フライホイールであって、前記外側面に円周方向のリブレットが形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明に係る水冷却モータ用フライホイールシステムの一つの態様は、円筒形の外側面を有し、シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられたフライホイールと、前記フライホイールの外側面に対して半径方向の間隙を介して対向する円筒形の内側面を有して、前記フライホイールの外側面を囲んで前記フライホイールとは独立に固定されたフライホイールケーシングと、を有する水冷却モータ用フライホイールシステムであって、前記フライホイールの外側面に対向する前記フライホイールケーシングの内側面に円周方向のリブレットが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、水冷却モータ用フライホイールのカートリッジと筐体の摺動磨耗を抑制すること、または、フライホイールの周囲での流体摩擦を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの平断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るフライホイールを備えた水冷却モータの立断面図。
【図3】図1の水冷却モータ用フライホイールの平板形状のカートリッジの一つを取り出して示す斜視図。
【図4】図1の水冷却モータ用フライホイールの扇形平断面を有するカートリッジの一つを取り出して示す斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの立断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの平断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態の効果を説明するためのグラフ。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの立断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの平断面図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールのカートリッジの一つを取り出して示す斜視図。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの斜視図。
【図12】図11のXII部の部分拡大側断面図。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの斜視図。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの上面図。
【図15】図14のXV−XV線に沿う部分拡大立断面図。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールシステムの部分切欠き斜視図。
【図17】図16のXVII部の部分拡大側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る水冷却モータ用フライホイールの実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの平断面図である。図2は第1の実施形態に係るフライホイールを備えた水冷却モータの立断面図である。図3は、図1の水冷却モータ用フライホイールの平板形状のカートリッジの一つを取り出して示す斜視図である。図4は、図1の水冷却モータ用フライホイールの扇形平断面を有するカートリッジの一つを取り出して示す斜視図である。
【0017】
はじめに、図2を参照して、この実施形態に係るフライホイールを備えた水冷却モータについて説明する。
【0018】
上下方向に延びるシャフト2の上端にインペラ1が取り付けられていて、インペラ1は水の流路内に配置されている。シャフト2は3個のラジアル軸受4で半径方向に回転支持されている。シャフト2は上部と下部に分割されていてその間にフライホイール3がはさまれている。シャフト2にはロータ5が取り付けられ、ロータ5の半径方向外側にステータ6が配置されている。シャフト2の下端部にはスラストディスク7が取り付けられている。スラストディスク7は、上部スラスト軸受8と下部スラスト軸受9とによってはさまれ、これらによって軸方向に回転支持されている。
【0019】
上述のシャフト2、フライホイール3、ロータ5、ステータ6などは静止支持されたケーシング60内に収容されている。ケーシング60内を冷却水が流れるように、ケーシング60の下端部に冷却水入口11が設けられ、フライホイール3の上方のケーシング60に冷却水出口12が設けられている。冷却水出口12を通ってケーシング60の外に出た冷却水は熱交換器13を通って冷却水入口11から再びケーシング60内に流入するように、冷却水配管61が配置されている。
【0020】
フライホイール3はシャフト2と同軸の円筒形の筐体21を備えていて、筐体21は、たとえばハースカップリング24によってシャフト2に結合されている。筐体21の軸方向端部には、ハースカップリング24を取り付けるための複数のハースカップリング取り付けネジ穴25が、互いに周方向に間隔をあけて配列されている。筐体21は、たとえば高強度の合金鋼製である。
【0021】
筐体21の内部には複数の平板形カートリッジ挿入穴と複数の扇形カートリッジ挿入穴が形成され、これらのカートリッジ挿入穴に合致する形状の平板形カートリッジ22および扇形カートリッジ23がそれぞれ挿入されている。平板形カートリッジ22および扇形カートリッジ23は、たとえばタングステンなどの重金属製であって、筐体21の材料よりも比重の大きな材料からなる。
【0022】
平板形カートリッジ22は、それぞれが軸方向および半径方向に広がり、筐体21の外周に沿って互いに間隔をあけて配列されている。扇形カートリッジ23は、それぞれの平断面が、回転軸を中心とする扇形であって、柱状であり、ハースカップリング取り付けネジ穴25よりも内側で周方向に互いに間隔をあけて配列されている。
【0023】
筐体21に形成された平板形カートリッジ22および扇形カートリッジ23のカートリッジ挿入穴はそれぞれが複数個あって、必ずしもすべてのカートリッジ挿入穴にカートリッジを挿入する必要はなく、フライホイール3にとって適当な慣性モーメントが得られるように平板形カートリッジ22および扇形カートリッジ23を上方から着脱することができる。
【0024】
平板形カートリッジ22および扇形カートリッジ23とそれらが挿入される筐体21の各カートリッジ挿入穴との間は、互いに相対運動ができないように嵌め込むことが望ましいが、若干の相対運動を許容するように間隙を設けてもよい。
【0025】
このように構成された本実施形態において、ロータ5とステータ6の機能によってシャフト2が回転する。このとき、冷却水は、ケーシング60内を上昇しながらその内部を冷却することにより加熱される。その後に冷却水は冷却水出口12を出て冷却水配管61を通って熱交換器13内で放熱して低温に戻る。その後、低温の冷却水は冷却水入口11から再びケーシング60内に循環する。
【0026】
この実施形態では、フライホイール3のカートリッジ22、23は回転軸方向断面が軸対称形状でないために、フライホイール3の回転によって発生する遠心力と回転の加減速で発生する接線方向の力によって、カートリッジ22、23が筐体21に対して相対的に動く力が作用する。しかし、カートリッジ22、23および筐体21のカートリッジ挿入穴の平断面形状が円形でないため、その相対運動が阻止され、摺動が生じない。
【0027】
したがって、本実施形態によれば、カートリッジ22および23と筐体21の各カートリッジ挿入穴壁面との間の摺動磨耗が発生せず、長寿命のフライホイールを実現できる。
【0028】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの立断面図である。図6は、第2の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの平断面図である。
【0029】
第2の実施形態の水冷却モータ用フライホイール3は、シャフト2と同軸の円筒形の筐体21を備えていて、筐体21は、ハースカップリング24によってシャフト2(図2参照)に結合されている。筐体21の内部には複数の平板形カートリッジ挿入穴が形成され、これらのカートリッジ挿入穴に合致する形状の重金属製の平板形カートリッジ22が挿入されている。平板形カートリッジ22は、それぞれが軸方向および半径方向に広がり、筐体21の外周に沿って互いに間隔をあけて配列されている。平板形カートリッジ22の構造や配置は第1の実施形態と同様である。
【0030】
この実施形態の筐体21には、回転軸を中心とする円柱形の中空部41が形成されており、筐体21は円環状であるとも言える。ハースカップリング24は中空部41の直径よりも大きな直径を有する。
【0031】
なお、この実施形態は、第1の実施形態の扇形カートリッジ23に相当するものを有していない。
【0032】
この実施形態によれば、回転軸の近くに中空部41が形成されているので、第1の実施形態のように回転軸の近くにまで重金属製カートリッジが配置され、また、筐体21の材料が詰まっている場合に比べて、同等の慣性モーメントを得るために軽量のフライホイールとすることができる。その理由をつぎに説明する。
【0033】
円環状のフライホイールの質量Mは次の式で表わされる。
【0034】
M=ρ×h×π×(r−r) (1)
ここで、ρはフライホイール平均密度、hはフライホール高さ、rは円環状フライホイール外径(外側半径)、rは円環状フライホイール内径(内側半径)、πは円周率である。
【0035】
また、慣性モーメントJは次の式で表わされる。
【0036】
J=1/2×ρ×h×π×(r−r)×(r+r
=1/2×M×(r+r) (2)
したがって、質量に対する慣性モーメントの比J/Mは次の式(3)で表わされる。
【0037】
J/M=1/2×(r+r) (3)
したがって、本実施形態において、質量に対する慣性モーメントの比J/Mは、r+rに比例する。
【0038】
図7は、式(1)ないし式(3)の関係を示すグラフであって、フライホイールの慣性モーメントJ、高さhおよび密度ρを一定とするときに、横軸をフライホイール内径rとしたときの、外径r、内径r、質量Mおよび質量に対する慣性モーメントの比J/Mを示している。
【0039】
このグラフからわかるように、厚さhが一定の円環型で同じ慣性モーメントJを得るのに、内径rを大きくとるほど、質量Mを削減できる。
【0040】
この実施形態のフライホイール3は円環形状なので、ハースカップリング24を用いてシャフト2に接合するのが好ましい。
【0041】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果が得られることに加え、スペース制約の中で、軽量のフライホイールとすることができる。
【0042】
なお、この第2の実施形態の変形例として、シャフト2がフライホイール3の筐体21の中央を貫通する構造としてもよい。
【0043】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの立断面図である。図9は、第3の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの平断面図である。図10は、第3の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールのカートリッジの一つを取り出して示す斜視図である。
【0044】
第3の実施形態の水冷却モータ用フライホイール3は、ハースカップリング24によってシャフト2に結合され、シャフト2と同軸の円筒形の筐体21を備えている。筐体21の内部には、回転軸を軸心とする複数の円環状のカートリッジ挿入穴が形成され、これらのカートリッジ挿入穴に合致する形状の重金属製の円環状カートリッジ42が挿入されている。円環状カートリッジ42は、それぞれが軸方向および周方向に広がり、互いに半径方向の間隔をあけて配列されている。
【0045】
円環状カートリッジ42それぞれの下端部には、複数の回り止めピン27が下方に向けて突出して、互いに周方向に間隔をあけて設けられている。また、筐体21の内部に形成された円環状のカートリッジ挿入穴それぞれの底部には回り止めピン27と嵌合する複数の回り止めピン穴が形成されている。
【0046】
この実施形態では、筐体21の円環状カートリッジ挿入穴に形成された回り止めピン穴と、これらに嵌合する円環状カートリッジ42の複数の回り止めピン27とによって回り止め機構が構成され、筐体21の円環状カートリッジ挿入穴内で、円環状カートリッジ42が筐体21に対して相対的に動くことが阻止される。
【0047】
本実施形態によれば、円環状カートリッジ42と筐体21の各カートリッジ挿入穴壁面との磨耗が発生しないので、フライホイールの寿命を長く保つことができる。
【0048】
以上説明した第3の実施形態では、各円環状カートリッジ42につき複数の回り止めピンがあるものとしたが、回り止めピンが1個であってもよい。
【0049】
また、上に説明した第3の実施形態では、円環状カートリッジ42に回り止めピン27を取り付けて、筐体21の円環状カートリッジ挿入穴に回り止めピン穴を形成するものとした。この実施形態の変形例として、上記構成とは逆に、円環状カートリッジ42の下端に回り止め穴または回り止め切欠きを形成して、筐体21の円環状カートリッジ挿入穴に回り止めピンまたは回り止め突起を形成して、これらを係合することにより、円環状カートリッジ42と筐体21との相対的動きを阻止することもできる。
【0050】
また、上記説明の第3の実施形態では筐体21の中央部が中実であるが、変形例として、この筐体21の中央部を第2の実施形態(図5および図6)と同様に中空としてもよい。
【0051】
[第4の実施形態]
図11は、本発明の第4の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの斜視図である。図12は図11のXII部の部分拡大側断面図である。
【0052】
この実施形態の水冷却モータ用フライホイール3は、たとえば図2に示す水冷却モータ用フライホイールに使用されるものである。水冷却モータ用フライホイール3は、たとえばハースカップリング24によってシャフト2に結合され、シャフト2と同軸の円筒形の筐体21を備えている。筐体21には、第2の実施形態(図5および図6)と同様な中心部の中空部を有していても、中空部を有していなくてもよい。
【0053】
この実施形態では、筐体21の側面32に周方向に延びる複数のリブレット31が形成されている。リブレット31の溝の深さHは、筐体21の外径と回転速度で決まる周速、フライホイールケーシング内側壁面とのクリアランス、フライホイール周りの冷却水温度と圧力で決まる冷却水の粘性と密度をパラメータとして決定する。リブレット溝の深さHは、次の式で得られる値が最適値とされている。
【0054】
H=y×ν/Uτ
ここで、νは冷却水の動粘性係数、UτはUτ=(τ/ρ)1/2で定義される摩擦速度であり、τは壁面剪断応力、ρは冷却水の体密度である。yは無次元の係数であり、通常、15程度である。
【0055】
なお、この実施形態では、筐体21の上面33および底面34にはリブレットが形成されていない。
【0056】
このように構成された本実施形態において、フライホイール3は周方向に高速で回転し、周囲の流体との間に剪断力(摩擦力)が発生する。しかし、筐体21の側面32の周方向にリブレット31の微細な溝が切られているために、外部の流体は、リブレット31の溝内部のフライホイール3とともに回転する流体塊面を滑ることで摩擦力が低減する。
【0057】
本実施形態によれば、回転するフライホイール3と周囲の流体との摩擦力が低減することにより、発生する流体摩擦熱が抑制され、モータ損失が減少し、モータ効率の向上が図られる。
【0058】
[第5の実施形態]
図13は、本発明の第5の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの斜視図である。図14は本発明の第5の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールの上面図である。図15は、図14のXV−XV線に沿う部分拡大立断面図である。
【0059】
この実施形態は、第4の実施形態の変形であって、筐体21の側面32にリブレット31が形成されていることに加えて、筐体21の上面33および底面34、すなわち回転軸方向の端面に、リブレット51が形成されている。このリブレット51は、定格回転速度での筐体21の上面33および底面34の上での流体の軌跡に一致するように形成されている。上面33および底面34の上での流体の軌跡は、CFD(computational fluid dynamics)解析、または実験で求めることができる。また、その結果を用いて第4の実施形態と同様の方法でリブレット溝の深さHを定める。その他の構成は第4の実施形態と同様である。
【0060】
本実施形態によれば、筐体21の側面32のみならず上面33および底面34においても、第4の実施形態の側面と同様な摩擦力低減効果が得られる。
【0061】
本実施形態によれば、回転するフライホイールの上面および底面においても冷却水との摩擦力が低減することにより、発生する流体摩擦熱が抑制され、モータ損失が減少し、モータ効率の向上が図られる。
【0062】
[第6の実施形態]
図16は、本発明の第6の実施形態に係る水冷却モータ用フライホイールシステムの部分切欠き斜視図である。図17は図16のXVII部の部分拡大側断面図である。
【0063】
この実施形態は第4の実施形態(図11、図12)の変形であって、第4の実施形態と同様のフライホイール3が、静止支持された円筒形のフライホイールケーシング52内に配置されている。フライホイール3の筐体21の側面32に対向するフライホイールケーシング52の内面14には、周方向のリブレット53が形成されている。
【0064】
高速で回転するフライホイール3の筐体21の側面32とフライホイールケーシング52の内面14の間の環状の間隙部を流れる冷却水は、フライホイール3と同一方向に旋回し、フライホイールケーシング52の内面14とも摩擦力が働く。フライホイールケーシング52の内面14の周方向のリブレット53は、第4の実施形態で述べた方法で求めた溝の深さHを有する。
【0065】
その他の構成は第4の実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態によれば、フライホイールケーシング52の内面14においても、第4の実施形態のフライホイール3の筐体21の側面32と同様な摩擦力低減効果が得られる。
【0067】
本実施形態によれば、回転するフライホイール3の筐体21の側面32に加えフライホイールケーシング52の内面14においても冷却水との摩擦力が低減することで、発生する流体摩擦熱が抑制され、モータ損失が減少し、モータ効率の向上が図られる。
【0068】
以上説明した第6の実施形態では、フライホイール3の筐体21の上面33および底面34にはリブレットが形成されていないものとした。この実施形態の変形例として、フライホイール3の筐体21の側面32のリブレット31およびフライホイールケーシング52の内面14のリブレット53に加えて、第5の実施形態と同様のフライホイール3の筐体21の上面33および底面34のリブレット51を形成してもよい。
【0069】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、また各実施形態の特徴を組み合わせることができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0070】
例えば、第1の実施形態では断面形状が四角形、扇形のカートリッジを用いて説明したが、カートリッジの断面形状は円形でなければよく、例えば三角形や五角形以上の多角形、楕円形等であってもよい。
【0071】
また、第4ないし第6の実施形態(図11ないし図17)で、筐体21の内部構造としては、第1ないし第3の実施形態のいずれかと同様のものであってもよい。
【0072】
また、上記説明で、「上」、「下」、「立断面図」などのことばを使用しているが、これは説明の便宜のためであって、この発明は重力の方向には関係がない。
【符号の説明】
【0073】
1 … インペラ
2 … シャフト
3 … フライホイール
4 … ラジアル軸受
5 … ロータ
6 … ステータ
7 … スラストディスク
8 … 上部スラスト軸受
9 … 下部スラスト軸受
11 … 冷却水入口
12 … 冷却水出口
13 … 熱交換器
14 … 内面
21 … 筐体
22 … 平板形カートリッジ
23 … 扇形カートリッジ
24 … ハースカップリング
25 … ハースカップリング取り付けネジ穴
27 … 回り止めピン
31 … リブレット
32 … 側面
33 … 上面
34 … 底面
41 … 中空部
42 … 円環状カートリッジ
51 … リブレット
52 … フライホイールケーシング
53 … リブレット
60 … ケーシング
61 … 冷却水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられて、前記シャフトの回転軸方向に延びる複数のカートリッジ挿入穴が形成された円柱状の筐体と、
前記カートリッジ挿入穴のそれぞれに着脱可能に挿入された、前記回転軸方向に延びる複数のカートリッジと、
を有する水冷却モータ用フライホイールであって、
前記カートリッジ挿入穴および前記カートリッジの前記回転軸に垂直な横断面の形状が非円形であって、前記カートリッジ挿入穴内で前記カートリッジが当該カートリッジ挿入穴に対して相対的に摺動するのを抑制する形状であること、
を特徴とする水冷却モータ用フライホイール。
【請求項2】
前記複数のカートリッジの少なくとも一部の複数のカートリッジは前記回転軸方向および半径方向に広がる複数の平板形状であって、前記平板形状のカートリッジが挿入されるカートリッジ挿入穴は当該カートリッジに適合する形状であること、を特徴とする請求項1に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項3】
前記複数のカートリッジの少なくとも一部の複数のカートリッジは、前記回転軸を中心とする扇形横断面を有し、前記扇形横断面を有するカートリッジが挿入されるカートリッジ挿入穴は当該カートリッジに適合する形状であること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項4】
シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられて、前記回転軸方向に延びる複数のカートリッジ挿入穴が形成された円柱状の筐体と、
前記カートリッジ挿入穴のそれぞれに着脱可能に挿入された、前記回転軸方向に延びる複数のカートリッジと、
を有する水冷却モータ用フライホイールであって、
前記カートリッジおよび前記カートリッジ挿入穴は前記回転軸を中心とする円環状であって、前記カートリッジが前記カートリッジ挿入穴内で当該カートリッジ挿入穴に対して相対的に前記回転軸の周りに回転するのを阻止する回り止め機構が形成されていること、
を特徴とする水冷却モータ用フライホイール。
【請求項5】
前記回り止め機構は、前記複数のカートリッジそれぞれの前記回転軸方向の先端に固定された回り止めピンと、前記カートリッジ挿入穴の底に形成されて前記回り止めピンと嵌合する回り止めピン穴とを含むこと、を特徴とする請求項4に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項6】
前記筐体には、前記回転軸を中心とする円柱形の中空部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項7】
前記シャフトと前記筐体とがハースカップリングによって結合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項8】
前記カートリッジは前記筐体よりも比重の大きい重金属製であること、を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項9】
前記筐体の外側面に円周方向のリブレットが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項10】
円筒形の外側面を有し、シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられた水冷却モータ用フライホイールであって、
前記外側面に円周方向のリブレットが形成されていることを特徴とする水冷却モータ用フライホイール。
【請求項11】
回転軸方向の端部に、前記シャフトが定格回転数で回転している時の前記回転軸方向の端部の壁面上に、この壁面に沿う流体の軌跡に一致するようリブレットが形成されていることを特徴とする請求項10に記載の水冷却モータ用フライホイール。
【請求項12】
円筒形の外側面を有し、シャフトとともに回転するようにシャフトに取り付けられたフライホイールと、
前記フライホイールの外側面に対して半径方向の間隙を介して対向する円筒形の内側面を有して、前記フライホイールの外側面を囲んで前記フライホイールとは独立に固定されたフライホイールケーシングと、
を有する水冷却モータ用フライホイールシステムであって、
前記フライホイールの外側面に対向する前記フライホイールケーシングの内側面に円周方向のリブレットが形成されていることを特徴とする水冷却モータ用フライホイールシステム。
【請求項13】
前記フライホイールケーシングの内側面に対向する前記フライホイールの外側面に円周方向のリブレットが形成されていることを特徴とする請求項12に記載の水冷却モータ用フライホイールシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−147620(P2012−147620A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5531(P2011−5531)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】