説明

水処理方法および水処理装置

【課題】被処理水に含有される有機物を微生物分解することができる水処理方法および水処理装置を提供する。
【解決手段】この水処理装置によれば、木炭13に繁殖する微生物は、被処理水に含有されるマイクロナノバブルによって活性化される。この活性化した微生物を木炭13に繁殖させて水処理するので、処理が安定化すると同時に、木炭13に繁殖した活性化した微生物によって、木炭13が吸着した有機物を分解できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水処理方法および水処理装置に関し、一例として、半導体工場や液晶工場における水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理の対象となる被処理水が含有する化合物の一例である有機フッ素系化合物は、化学的に安定な物質である。特に、この有機フッ素系化合物は、耐熱性および耐薬品性の観点から優れた性質を有することから、界面活性剤等の用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、この有機フッ素系化合物は、化学的に安定な物質であるが故に微生物分解がしにくい。例えば、この有機フッ素系化合物としてのパーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、生態系での分解が進まないことから生態系への影響が懸念されている。
【0004】
すなわち、上記パーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、化学的に安定なため、完全に熱分解させるためには、約1000℃以上の高温が必要と言われている。また、PFOSやPFOAは、従来の微生物や光触媒等による処理では分解が極めて困難であった。
【0005】
ところで、従来技術として、ナノバブルの利用方法および装置が、特許文献1(特開2004−121962号公報)に記載されている。
【0006】
この従来技術では、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用したものである。この従来技術では、より具体的には、それらが相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能によって各種物体を高機能、低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができることを開示している。
【0007】
また、今一つの従来技術としては、ナノ気泡の生成方法が、特許文献2(特開2003−334548号公報)に記載されている。
【0008】
この従来技術は、液体中において、(1) 液体の一部を分解ガス化する工程、(2) 液体中で超音波を印加する工程または、(3) 液体の一部を分解ガス化する工程および超音波を印加する工程から構成されていることを開示している。
【0009】
また、別の従来技術としては、オゾンマイクロバブルを利用する廃液の処理装置が、特許文献3(特開2004−321959号公報)に記載されている。
【0010】
この従来技術では、マイクロバブル発生装置にオゾン発生装置より生成されたオゾンガスと処理槽の下部から抜き出された廃液を加圧ポンプを介して供給している。また、この従来技術では、生成されたオゾンマイクロバブルをガス吹き出しパイプの開口部より処理槽内の廃液中に通気することを開示している。
【0011】
しかし、上述の従来技術では、有機フッ素系化合物を効果的に微生物分解することはできない。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2004−321959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明の課題は、被処理水に含有される有機物を微生物分解することができる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明の水処理方法は、炭が充填された炭充填部を有する水処理水槽に被処理水を導入する工程と、
上記被処理水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記炭に微生物を繁殖させる工程と、
上記炭に繁殖した微生物によって、上記被処理水を処理する工程とを備えることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、炭に繁殖する微生物は、被処理水に含有されるマイクロナノバブルによって活性化される。この活性化した微生物を炭に繁殖させて水処理するので、処理が安定化すると同時に、炭に繁殖した活性化した微生物によって、炭が吸着した有機物を分解することができる。この微生物による有機物の分解により、あたかも炭が自動再生している状態となる。したがって、この発明によれば、炭の入れ替え作業をする必要がなくなり、ランニングコストを低減できる。したがって、この発明によれば、有機フッ素系化合物を効率よく微生物分解することができる水処理方法となる。
【0015】
また、一実施形態の水処理方法では、上記水処理水槽内で上記被処理水の水流を発生させる工程を備える。
【0016】
この実施形態によれば、水処理水槽内での被処理水に水流が発生することによって、微生物による有機物の分解を促進できる。
【0017】
また、一実施形態の水処理装置では、被処理水が導入されると共に炭が充填された炭充填部を有する水処理水槽と、
上記被処理水にマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生部とを備えた。
【0018】
この実施形態の水処理装置によれば、炭に繁殖する微生物は、被処理水に含有されるマイクロナノバブルによって活性化される。この活性化した微生物を炭に繁殖させて水処理するので、処理が安定化すると同時に、炭に繁殖した活性化した微生物によって、炭が吸着した有機物を分解することができる。この微生物による有機物の分解により、あたかも炭が自動再生している状態となる。したがって、この水処理装置によれば、炭の入れ替え作業をする必要がなくなり、ランニングコストを低減できる。したがって、この水処理装置によれば、有機フッ素系化合物を効率よく微生物分解することができる。
【0019】
また、一実施形態の水処理装置では、上記水処理水槽内で上記被処理水の水流を発生させる水流発生部を備えた。
【0020】
この実施形態によれば、水処理水槽内での被処理水に水流が発生することによって、微生物による有機物の分解を促進できる。したがって、有機フッ素系化合物を効率よく微生物分解できる。
【0021】
また、一実施形態の水処理装置では、上記炭は、木炭、活性炭、合成炭の3種類の炭のうちの少なくとも1種類の炭を含んでいる。
【0022】
この実施形態の水処理装置によれば、木炭、活性炭、合成炭は、いずれも、吸着作用があるので、有機物を吸着し、その後、活性化した微生物により、それら吸着した有機物を分解し、炭があたかも自動再生した様な状態を維持できる。
【0023】
また、一実施形態の水処理装置では、上記水流発生部は散気管を有し、上記水処理水槽は、上記水流発生部と上記炭充填部とを仕切ると共に上下に延在する仕切板を有し、上記マイクロナノバブル発生部は、上記水処理水槽内で上記仕切板上に配置された。
【0024】
この実施形態の水処理装置によれば、水流発生部で散気管から発生する気泡が起こす水流が、マイクロナノバブル発生部が発生するマイクロナノバブルによって起こる水流を強める。よって、より強い水流で水処理水槽内を撹拌でき、有機物処理の効率を高めることができる。また、仕切板上にマイクロナノバブル発生部が設置されているので、マイクロナノバブル発生部が水処理水槽の水面近くに設置されたこととなり、水処理水槽でのマイクロナノバブルの発生状況を確認し易くなる。
【0025】
また、一実施形態の水処理装置では、上記炭充填部は、粒状活性炭が充填された第1の充填部と、木炭が充填された第2の充填部とを有する。
【0026】
この実施形態の水処理装置によれば、粒状活性炭と木炭の両方で有機物を吸着し、活性化した微生物で、それら吸着した有機物を分解処理できる。また、炭充填部が活性炭と木炭の組み合わせた構造であるので、対象とする有機物量が多い場合は、木炭に対する活性炭の量を増加させればよい。
【0027】
なお、粒状活性炭が充填された第1の充填部を水処理水槽内の上流側に配置し、木炭が充填された第2の充填部を水処理水槽内の下流側に配置した場合には、下流側の木炭に微生物がより繁殖し易くなる。
【0028】
また、一実施形態の水処理装置では、上記炭充填部は、上記炭に隣接して配置された網状管を有する。
【0029】
この実施形態の水処理装置によれば、炭充填部が炭に隣接して配置された網状管を有するので、微生物が万一異常繁殖した場合でも、炭に異常繁殖した微生物が網状管内に導入されることで、炭が微生物で閉塞しないようにできる。
【0030】
また、一実施形態の水処理装置では、上記炭充填部は、炭酸カルシウム鉱物が充填された第1充填部と、木炭が充填された第2充填部とを有する。
【0031】
この実施形態の水処理装置によれば、水処理水槽内の被処理水のpHが低下した場合に、炭充填部が有する第1充填部の炭酸カルシウム鉱物が溶解することにより、薬品を使用することなく、被処理水のpHを調整できる。すなわち、炭酸カルシウム鉱物が溶解することで、中和が可能となる。また、炭酸カルシウム鉱物の表面に生物膜が形成されるので、この生物膜によりさらなる有機物の処理ができる。
【0032】
また、一実施形態の水処理装置は、上記炭充填部は、ポリ塩化ビニリデン充填材を含む上部と、粒状活性炭を含む中間部と、木炭を含む下部とを有する。
【0033】
この実施形態によれば、水処理水槽内で微生物が多量発生した時に、上部のポリ塩化ビニリデン充填材に微生物が付着することで、中間部の粒状活性炭および下部の木炭が微生物で閉塞することがなく、水処理を継続できる。例えば、被処理水が半導体工場の再利用水である場合、被処理水に溶剤が時として混入して、微生物が多量に発生することがある。
【0034】
また、一実施形態の水処理装置は、上記水処理水槽からの被処理水が導入される活性炭吸着塔を備える。
【0035】
この実施形態によれば、被処理水が含有する有機物を、水処理水槽内の炭と活性炭吸着塔の活性炭の両方に吸着させることができる上に、上記炭と活性炭に繁殖した微生物はマイクロナノバブルによって活性化されるので、微生物処理が一層促進される。よって、被処理水が、一般に微生物分解性が極端に悪い有機フッ素系化合物を含有している2次処理水とした場合でも、微生物による分解処理ができる。
【0036】
また、一実施形態の水処理装置は、上記水流発生部は水中撹拌機を有し、
上記水処理水槽は、上記炭充填部と水流発生部とを仕切ると共に上下に延在する仕切板を有し、
上記マイクロナノバブル発生部を上記仕切板上に配置し、上記水中撹拌機を上記仕切板の下部に形成した貫通部に配置した。
【0037】
この実施形態によれば、水処理水槽の仕切板上に配置したマイクロナノバブル発生部が発生するマイクロナノバブルによって、水処理水槽の上部において水流生成および撹拌がなされる。さらに、仕切板の下部に配置した水中撹拌機によって、水処理水槽の下部において水流生成および撹拌がなされる。すなわち、水処理水槽内の上下両方の箇所で水流生成と撹拌がなされるので、水処理水槽内での水流生成と撹拌とを円滑に行われ、水処理の効率を向上できる。
【0038】
また、一実施形態の水処理装置は、上記水処理水槽に導入する被処理水が有機フッ素系化合物を含有する。
【0039】
この実施形態によれば、微生物分解が極めて困難な有機フッ素系化合物を、炭充填部に充填された炭に吸着させ、その後、この炭に繁殖した活性化した微生物によって、吸着した有機フッ素系化合物を分解することができる。これにより、従来は微生物分解できなかった有機フッ素系化合物を分解処理できる。
【0040】
また、一実施形態の水処理装置は、上記有機フッ素系化合物が、パーフルオロオクタスルホン酸またはパーフルオロオクタン酸、または、パーフルオロオクタスルホン酸とパーフルオロオクタン酸との混合物である。
【0041】
この実施形態によれば、従来は微生物分解できなかった有機フッ素系化合物としてのパーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)またはパーフルオロオクタン酸(PFOA)、または、PFOSとPFOAとの混合物を分解処理できる。
【発明の効果】
【0042】
この発明の水処理方法によれば、炭に繁殖する微生物は、被処理水に含有されるマイクロナノバブルによって活性化され、この活性化した微生物を炭に繁殖させて水処理するので、処理が安定化すると同時に、炭に繁殖した活性化した微生物によって、炭が吸着した有機物を分解することができる。この微生物による有機物の分解により、あたかも炭が自動再生している状態となる。したがって、この発明によれば、炭の入れ替え作業をする必要がなくなり、ランニングコストを低減できる。したがって、この発明によれば、有機フッ素系化合物を効率よく微生物分解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0044】
(第1の実施の形態)
図1は、この発明の水処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【0045】
図1において、符号1は、水処理水槽であり、被処理水つまり処理するべき水が導入される。
【0046】
水処理水槽1は水流発生部26と炭充填部27とを備え、この水流発生部26と炭充填部27とはカギ型仕切板11で仕切られている。このカギ型仕切板11は、水槽1の底との間に所定の間隔を隔てており、仕切板11と水槽1の底との間において、水流発生部26と炭充填部27が連通している。
【0047】
水流発生部26は、下部に散気管4が設置されており、散気管4は水槽1外に設置されたブロワー3に接続されている。散気管4は、バブル9(気泡)を吐出することで、水流発生部26の被処理水に上昇流である水流8を発生させる。一方、カギ型仕切板11は上端で水平に屈曲した水平部11Aを有し、この水平部11A上にマイクロナノバブル発生部としてマイクロナノバブル発生機7が設置されている。このマイクロナノバブル発生機7には配管L1が接続され、この配管L1は水槽1外に設置された循環ポンプ2に接続されている。このポンプ2は水流発生部26内の被処理水を配管L2,L1を通してマイクロナノバブル発生機7に供給する。また、このマイクロナノバブル発生機7にはバルブ6を有する空気吸込管5が接続され、空気吸込管5からバルブ6を経由してマイクロナノバブル発生機7に空気が供給される。マイクロナノバブル発生機7に供給される空気量はバルブ6によって調節できる。このマイクロナノバブル発生機7が炭充填部27に向かってマイクロナノバブル10を発生している。このマイクロナノバブル10は、散気管4が吐出するバブル9による水流と比較すると弱い水流を発生している。
【0048】
なお、水流発生部26内の水槽1の側壁の下端と水槽1の底とがなす角に三角部材28Aが設置され、水流発生部26内の水槽1の側壁の上部にもう1つの三角部材28Bが設置されている。この2つの三角部材28A,28Bの斜面が、水流発生部26内の水流に対して案内面の役目を果たし、水流発生部26と炭充填部27との間の被処理水の循環を促進できる。
【0049】
この実施形態では、水処理水槽1において、散気管4が発生するバブル9とマイクロナノバブル発生機7が発生するマイクロナノバブルとで発生させる水流によって、水処理水槽1内での被処理水が効率的に撹拌されている。したがって、水処理水槽1において、被処理水と炭充填部27に充填された木炭13とが効率よく接触している状態になっている。
【0050】
一方、炭充填部27には、充填された複数の木炭13を支持すると共に、下部に空間を設けるための網12が設置されている。網12は、当然のこととして、木炭13の荷重を支えるための補強材(図示せず)が組み込まれている。
【0051】
この実施形態では、被処理水としては、一例として。用水、排水および再利用水がある。
【0052】
マイクロナノバブル発生機7はマイクロナノバブルによる水流を発生させて、被処理水と微生物が繁殖した木炭13との接触効率を高めている。ただし、水処理水槽1内で、被処理水の循環流を発生させるには、マイクロナノバブル流だけに起因する水流では、循環水量が不足している。このため、水処理水槽1内での大部分の循環水量は、散気管4から吐出するバブル9が上昇する際に発生する上昇水流8に依存している。この上昇水流8は、いわゆる、エアーリフトによる循環流となる。散気管4は、配管によってブロワー3と連結しており、ブロワー3から供給される空気による通常のバブル9を発生し水流8を起こしている。
【0053】
マイクロナノバブル発生機7へは、循環ポンプ2で必要量の循環水が供給されると共に、空気吸い込み管5とバルブ6により、マイクロナノバブル発生機7のための必要な空気量が調整されて、最適なマイクロナノバブルが発生する。
【0054】
上述の如く、マイクロナノバブル発生機7は、カギ型の仕切板11の上部をなす水平部11Aに設置されている。このカギ型の仕切板11は、水流の流れ方向を水流発生部26から炭充填部27への一定の方向に導く作用をすると同時に、マイクロナノバブル発生機7の設置場所にもなっている。マイクロナノバブル発生機7は、カギ型の仕切板11の上部をなす水平部11Aに設置されていることで、水槽1の水面に近くなり、マイクロナノバブルの発生状態を肉眼で確認することができるメリットがある。
【0055】
この実施形態では、被処理水としての有機物を含有する水を、水処理水槽1に導入して、マイクロナノバブルを発生させて、運転する。これにより、時間の経過とともに、炭充填部27の木炭13に活性化した微生物が繁殖する。木炭13は、元来、有機物を吸着する能力があるが、有機物を吸着した木炭13には活性化した微生物が繁殖しているので、木炭13に吸着された有機物を活性化した微生物によって分解処理することができる。特に、微生物分解が困難と言われていた有機フッ素系化合物は、最初に木炭13に吸着され、その後、活性化した微生物により分解されることとなる。このようにして、有機フッ素系化合物などの有機物が分解処理される。また、水処理水槽1の炭充填部27では、有機物の吸着と分解とが、短時間のうちに繰り返される。よって、木炭13は、常に再生された状態となる。
【0056】
尚、マイクロナノバブル発生機7は、市販されているものならば、メーカーを限定するものではなく、この実施形態では、具体的には、一例として、株式会社ナノプラネット研究所と株式会社オーラテックのものを採用した。他の商品としては、一例として、西華産業株式会社のマイクロバブル水製造装置や資源開発株式会社のマイクロバブル水製造装置があるが、目的にしたがって選定すればよい。
【0057】
水処理水槽1では被処理水が含有する有機物が上述の如く合理的に処理されて、ピット14に流入し、続いて、ピット14に設置してある移送ポンプ15によって、次工程処理装置16に導入される。次工程処理装置16には、目的に応じて、例えば、更なる高度処理の一例としての活性炭吸着塔(図示せず)や膜分離装置(図示せず)を設置することが考えられるが、目的に従い各種処理装置を選定すればよい。
【0058】
ここで、3種類のバブルについて説明する。
【0059】
(i) 通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0060】
(ii) マイクロバブルは、直径が50ミクロン(μm)以下の微細気泡で、一部のマイクロバブルは水中で収縮していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。
【0061】
(iii) ナノバブルは、マイクロバブルよりさらに小さいバブル(直径が1ミクロン以下の100〜200nm)でいつまでも水の中に存在することが可能なバブルといわれている。
【0062】
そして、マイクロナノバブルとはマイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと言える。
【0063】
なお、上記実施形態では、炭として木炭13を採用したが、木炭に替えて活性炭や合成炭としてもよく、木炭、活性炭、合成炭のうちから2種以上の炭を選定して組み合わせてもよい。また、上記実施形態では、仕切板11をカギ型としたが、仕切板11の形状はカギ型に限らないのは勿論であり、ストレートな形状やT字型の形状であってもよい。また、マイクロナノバブル発生機7の配置箇所は仕切板11上に限らないのは勿論であり、水流発生部26または炭充填部27に配置してもよい。
【0064】
(第2の実施の形態)
次に、図2に、この発明の水処理装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、被処理水が用水である。また、この第2実施形態では、炭充填部27に替えて、上部充填部27A-1と下部充填部27A-2を有する炭充填部27Aを備えた点、および、次工程処理装置16に替えて用水処理装置17を備えた点が、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0065】
この第2実施形態では、水処理水槽1が有する炭充填部27Aは、第1実施形態での炭の全量が木炭13である炭充填部27とは異なり、粒状活性炭21が充填された第1の充填部としての上部充填部27A-1と、木炭13が充填された第2の充填部としての下部充填部27A-2とを有する。
【0066】
この第2実施形態では、被処理水を用水とした。すなわち、用水とは、たとえば、半導体工場や液晶工場で使用する用水であり、一例として、超純水を製造する前の原水としている。また、被処理水を超純水用の用水とする場合に対処するために、炭の全量を木炭13とするのではなく、上部充填部27A-1では粒状活性炭21を充填し、下部充填部27B-1では木炭13を充填している。
【0067】
上部充填部27A-1に充填された粒状活性炭21は、木炭に比べて、被処理水中の有機物を吸着する能力が高い。また、この第2実施形態では、第1実施形態での次工程処理装置16をより具体的な用水処理装置17としている。そして、水処理水槽1は用水処理装置17の前処理水槽となっている。
【0068】
この第2実施形態では、水処理水槽1に導入された被処理水としての用水が含有する有機物は、炭充填部27Aの粒状活性炭21や木炭13に吸着される。そして、マイクロナノバブルによって活性化した微生物が粒状活性炭21や木炭13にも繁殖しているので、粒状活性炭21や木炭13に吸着された有機物が活性化した微生物によって分解処理される。すなわち、炭充填部27Aでは、粒状活性炭21や木炭13において、有機物の吸着と分解とが短時間のうちに繰り返される。よって、炭充填部27Aの粒状活性炭21や木炭13は、常に再生された状態となる。そして、水処理水槽1で処理された被処理水は、移送ポンプ15によって、さらに用水処理装置17に導入されて処理される。
【0069】
なお、この第2実施形態では、炭充填部27において、粒状活性炭21を上部に配置し木炭13を下部に配置したが、逆に、木炭13を上部に配置し粒状活性炭21を下部に配置してもよい。
【0070】
(第3の実施の形態)
次に、図3に、この発明の水処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、図1の炭充填部27に替えて炭充填部27Bを備えた点と、図1の次工程処理装置16に替えて排水処理装置18を備えた点と、被処理水を排水とした点とが、先述の第1実施形態と異なる。よって、この第3実施形態では、先述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、先述の第1の実施形態と異なる部分を説明する。
【0071】
この第3実施形態では、水処理水槽1の炭充填部27Bは、木炭13と、木炭13に隣接するように配置された網状管22を有する。この木炭13と網状管22は、網12上において、横方向に交互に配設されている。
【0072】
この第3実施形態のように、被処理水が排水である場合、排水には一般に浮遊物質が含まれている場合が多いので、炭充填部27Bに充填された木炭13が浮遊物質によって閉塞することに対する対策を講じる必要がある。
【0073】
この第3実施形態では、この閉塞への対策として、炭充填部27Bにおいて、水流と同じ方向である縦方向(上下方向)に延在する網状管22を木炭13に隣接して設置した。この炭充填部27Bでは、上記排水に含まれる浮遊物質を網状管22内を通して流動させることができるので、木炭13が浮遊物質で閉塞するのを防止できる。また、木炭13において、微生物が万一異常繁殖した場合でも、木炭13に異常繁殖した微生物が網状管22内に導入されることで、木炭13が微生物で閉塞しないようにできる。
【0074】
この網状管22は、排水処理分野での接触材として使用されており、材質としては塩化ビニル製やポリエチレン製などいくつかの商品が販売されている。なお、網状管22の表面にも、マイクロナノバブルによって活性化した微生物が繁殖して生物膜を構成して、排水中の有機物の処理をすることとなる。そして、水処理水槽1で処理された被処理水は、移送ポンプ15によって、さらに排水処理装置18に導入されて所定の水処理がなされる。
【0075】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の水処理装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、先述の第1実施形態の炭充填部27に替えて炭充填部27Cを備えた点と、次工程処理装置16に替えて排水処理装置18を備えた点と、被処理水を排水とした点とが、先述の第1実施形態と異なる。よって、この第4実施形態では、先述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、先述の第1の実施形態と異なる部分を説明する。
【0076】
この第4実施形態では、水処理水槽1の炭充填部27Cは、炭酸カルシウム鉱物23が充填された第1充填部としての上部27C−1と、木炭13が充填された第2充填部としての下部27C−2とを有する。この下部27C−2と上部27C−1は、網12上に順に積層されている。
【0077】
この第4実施形態で、炭充填部27Cにおいて、木炭13に繁殖すると共にマイクロナノバブルによって活性化した微生物が排水中の窒素を含む有機物を酸化した場合、硝酸性窒素が増加して、被処理水のpHが低下するので、その中和剤として、炭充填部27Cに炭酸カルシウム鉱物23を設置している。
【0078】
マイクロナノバブルによって活性化した微生物は炭酸カルシウム鉱物23の表面にも繁殖することで、炭酸カルシウム鉱物23の表面に生物膜が形成され、この生物膜によって有機物の処理を行うこととなる。そして、水処理水槽1で処理された被処理水は、移送ポンプ15によって、さらに排水処理装置18に導入され、さらなる処理が行われる。
【0079】
なお、炭酸カルシウム鉱物23としては、具体的には、大理石、寒水石、牡蠣殻、サンゴ等があり目的に応じて選定すればよい。また、炭充填部27Cの炭酸カルシウム鉱物23は、木炭13と網12との間に配置してもよい。つまり、炭充填部27Cにおいて、木炭13を下部に配置し、炭酸カルシウム鉱物23を上部に配置してもよい。また、炭酸カルシウム鉱物23と木炭13の充填比率は、被処理水のpHによって決定すればよい。
【0080】
(第5の実施の形態)
次に、図5にこの発明の第5の実施形態を示す。この第5実施形態は、図1の炭充填部27に替えて炭充填部27Dを備えた点と、図1の次工程処理装置16に替えて再利用水処理装置19を備えた点と、被処理水を再利用水とした点とが、先述の第1実施形態と異なる。よって、この第5実施形態では、先述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、先述の第1の実施形態と異なる部分を説明する。
【0081】
この第5実施形態では、水処理水槽1の炭充填部27Dは、ポリ塩化ビニリデン充填材24が充填された上部27D−1と、粒状活性炭21が充填された中間部27D−2と、木炭13が充填された下部27D−3とを有する。
【0082】
一例として、半導体工場において、再利用水にイソプロピルアルコールが混入して流入した場合には、先述の第1実施形態のように、炭としての木炭13のみが充填された炭充填部27では、微生物が異常繁殖することがある。この第5実施形態は、上記微生物の異常繁殖に対処するものである。
【0083】
すなわち、この第5実施形態では、炭充填部27Dが、上部27D−1のポリ塩化ビニリデン充填材24、中間部27D−2の粒状活性炭21、下部27D−3の木炭13を備えている。このため、再利用水にイソプロピルアルコールが混入して流入してきて微生物が異常繁殖したとしても、その微生物がポリ塩化ビニリデン充填材24に付着する。よって、上記微生物の異常繁殖が、中間部27D−2の粒状活性炭21、および下部27D−3の木炭13に影響することはない。また、ポリ塩化ビニリデン充填材24に付着し繁殖した微生物による微生物処理が、中間部27D−2の粒状活性炭21、下部27D−3の木炭13に対する前処理となるので、粒状活性炭21および木炭13が微生物で閉塞される現象を防止できる。
【0084】
そして、この第5実施形態では、水処理水槽1で処理された被処理水は、移送ポンプ15によって、再利用水処理装置19に導入されてさらなる水処理がなされる。
【0085】
(第6の実施の形態)
次に、図6にこの発明の水処理装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、水処理水槽1に導入される被処理水が有機フッ素系化合物含有排水の2次処理水である点と、次工程処理装置16に換えて活性炭吸着塔20を備えた点とが先述の第1実施形態と異なっている。よって、この第6実施形態では先述の第1実施形態と異なる点を説明する。
【0086】
この第6実施形態における被処理水である有機フッ素系化合物含有排水の2次処理水としては、例えば、半導体工場における現像排水の2次処理水がある。有機フッ素系化合物は、微生物分解が極端に困難である。よって、従来、有機フッ素系化合物含有排水の処理方法としては、1000℃以上の条件で焼却する方法しか確実な方法は存在していなかった。
【0087】
これに対して、この第6実施形態のごとく、マイクロナノバブル発生機7と木炭13を有する水処理水槽1と活性炭吸着塔20との2つの水処理ユニットを備えることで確実な対処が可能となる。すなわち、排水中の有機フッ素系化合物は、先ず、木炭13に吸着して、マイクロナノバブルによって活性化した微生物による微生物分解(1次処理)がなされる。その後、さらに、被処理水は水処理水槽1から移送ポンプ15によって、活性炭吸着塔20に導入されて、有機フッ素系化合物が活性炭で吸着され、その後、活性炭塔20の活性炭に繁殖し活性化した微生物によって、有機フッ素系化合物が確実に分解処理されることとなる。この第6実施形態では、燃料の消費が全くないので、従来の焼却方法と比較して、環境に優しい画期的な排水処理装置となる。
【0088】
(第7の実施の形態)
次に、図7に、この発明の水処理装置の第7実施形態を示す。この第7実施形態は、水処理水槽1が先述の第1実施形態の仕切板11に替えて仕切板11Fを有する点と、水流発生部26に替えて水流発生部26Fを有する点とが先述の第1実施形態と異なる。よって、この第7実施形態は、先述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0089】
この第7実施形態では、水流発生部26Fは、散気管4とブロワー3に替えて水中撹拌機25を有する。この水中撹拌機25は、仕切板11Fの下部に形成した貫通部11F−1に配置した。この貫通部11F−1は、水流発生部26Fと炭充填部27に連通している。
【0090】
この第7実施形態では、先述の第1実施形態のような散気管4が吐出する空気の上昇流による撹拌とは異なり、カギ型仕切板11Fの下部の貫通部11F−1に配置した水中撹拌機25による撹拌によって、水流発生部26Fと炭充填部27とを循環する水流が発生される。
【0091】
なお、撹拌効率としては、散気管が吐出する空気による撹拌と水中撹拌機による撹拌のどちらも略同程度の撹拌作用を示すが、消費するエネルギーとしては、散気管による撹拌方式を採用する第1実施形態の方がより少ないエネルギーで対応できる。したがって、水処理水槽1内での水処理に際して酸素を嫌う場合など目的に対応して、水中撹拌機25を選定することが望ましい。
【0092】
(実験例)
図1の第1実施形態の水処理装置に対応する実験装置を製作した。ただし、次工程処理装置16は活性炭吸着塔20とした。この実験装置では、水処理水槽1の容量を約4mとし、ピット14の容量を約0.2mとし、活性炭吸着塔20の容量を0.6mとした。そして、この実験装置において、水処理水槽1、ピット14、活性炭吸着塔20に工業用水を導入して試運転を1ケ月の間行った。この試運転後、水処理水槽1への入口でのTOC(トータル・オーガニック・カーボン)濃度と活性炭吸着塔20の出口でのTOC(トータル・オーガニック・カーボン)の濃度を測定し、TOCの除去率を測定したところ、85%であった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明の水処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の水処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の水処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の水処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5】この発明の水処理装置の第5実施形態を模式的に示す図である。
【図6】この発明の水処理装置の第6実施形態を模式的に示す図である。
【図7】この発明の水処理装置の第7実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1 水処理水槽
2 循環ポンプ
3 ブロワー
4 散気管
5 空気吸込管
6 バルブ
7 マイクロナノバブル発生機
8 水流
9 通常のバブル
10 マイクロナノバブル
11、11F 仕切板
12 網
13 木炭
14 ピット
15 移送ポンプ
16 次工程処理装置
17 用水処理装置
18 排水処理装置
19 再利用水処理装置
20 活性炭吸着塔
21 粒状活性炭
22 網状管
23 炭酸カルシウム鉱物
24 ポリ塩化ビニリデン充填材
25 水中撹拌機
26、26F 水流発生部
27、27A、27B、27C、27D 炭充填部
28A、28B 三角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭が充填された炭充填部を有する水処理水槽に被処理水を導入する工程と、
上記被処理水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記炭に微生物を繁殖させる工程と、
上記炭に繁殖した微生物によって、上記被処理水を処理する工程とを備えることを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理方法において、
上記水処理水槽内で上記被処理水の水流を発生させる工程を備えることを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
被処理水が導入されると共に炭が充填された炭充填部を有する水処理水槽と、
上記被処理水にマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生部とを備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記水処理水槽内で上記被処理水の水流を発生させる水流発生部を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記炭は、木炭、活性炭、合成炭の3種類の炭のうちの少なくとも1種類の炭を含んでいることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の水処理装置において、
上記水流発生部は散気管を有し、
上記水処理水槽は、上記水流発生部と上記炭充填部とを仕切ると共に上下に延在する仕切板を有し、
上記マイクロナノバブル発生部は、上記水処理水槽内で上記仕切板上に配置されたことを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記炭充填部は、
粒状活性炭が充填された第1の充填部と、木炭が充填された第2の充填部とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記炭充填部は、上記炭に隣接して配置された網状管を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記炭充填部は、
炭酸カルシウム鉱物が充填された第1充填部と、
木炭が充填された第2充填部とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記炭充填部は、
ポリ塩化ビニリデン充填材を含む上部と、
粒状活性炭を含む中間部と、
木炭を含む下部とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項11】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記水処理水槽からの被処理水が導入される活性炭吸着塔を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項12】
請求項4に記載の水処理装置において、
上記水流発生部は水中撹拌機を有し、
上記水処理水槽は、上記炭充填部と水流発生部とを仕切ると共に上下に延在する仕切板を有し、
上記マイクロナノバブル発生部を上記仕切板上に配置し、上記水中撹拌機を上記仕切板の下部に形成した貫通部に配置したことを特徴とする水処理装置。
【請求項13】
請求項3に記載の水処理装置において、
上記水処理水槽に導入する被処理水が有機フッ素系化合物を含有することを特徴とする水処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の水処理装置において、
上記有機フッ素系化合物が、
パーフルオロオクタスルホン酸またはパーフルオロオクタン酸、または、パーフルオロオクタスルホン酸とパーフルオロオクタン酸との混合物であることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−136409(P2007−136409A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336826(P2005−336826)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】