説明

水分硬化性シリル化樹脂組成物の製造方法、それにより得られる組成物及び当該組成物を含有する水分硬化性製品

【課題】シランエンドキャッピング剤の添加が反応中の任意のタイミングででき、かつ、にも関わらず得られるシリル化樹脂組成物の特性にはほとんど影響しない、水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法の提供。
【解決手段】以下の工程を含んでなる水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法:触媒の存在下若しくは非存在下において、少なくとも1つのポリエーテルポリオール(i)と、少なくとも1つのポリイソシアネート(ii)と、少なくとも1つのイソシアナトシランを、任意の組合せ及び/又は順序で添加して反応させる工程。当該工程では、ポリイソシアネート(ii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.1〜約0.9であり、イソシアナトシラン(iii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.9〜約0.1であり、但し、ポリオール(i)及びポリイソシアネート(ii)が、ポリウレタンプレポリマー形成反応の完了前に反応して、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーが形成されたとき、イソシアナトシランを反応溶媒に添加してシリル化ポリウレタンを調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法、水分硬化性シリル化樹脂組成物及びそれを含有する水分硬化性製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウレタンポリマーは、イソシアネート反応性基の一部又は全部を様々な有機シランでエンドキャッピング修飾して、イソシアネート反応基を最小限含むか若しくは含まない、機能改変されたシランエンドキャッピングされたウレタンポリマーとして調製していた。
【0003】
1つ以上の加水分解性アルコキシシラン基を有する有機シランと、ポリウレタンプレポリマーとの反応によるイソシアナト末端ポリウレタンポリマーの調製は、従来技術において公知である。使用するポリウレタンプレポリマーは、末端に活性水素を有する必要がある。これらの末端水素としては、例えば水酸基、メルカプト基又は第1級若しくは第2級アミノ基に存在する水素が挙げられる。これらの活性水素原子は、有機シラン化合物に存在するイソシアネート基と反応する。ヒドロキシ基を含有する化合物がポリイソシアネートに対してモル過剰で用いられることにより、得られる試薬が水酸基端末を有するようになる。
【0004】
これらのポリマーの調製に用いられるエンドキャッピング工程は連続的な反応メカニズムで行われ、言い換えれば、エンドキャッピング用のシランを、NCO%が0又は限りなく0に近い段階で添加することにより、所望の粘性及び特性を有するシラン−末端ポリウレタンプレポリマー(SPUR)を充分な収率で得る作業が必要となる。例えば、シラン末端ポリウレタンの調製に用いる従来の方法は、最初にポリマージオールをイソシアネートと反応させ、NCO%が0又は限りなく0に近くなった時点で官能性シランを添加することを特徴とする。シランエンドキャッピング剤を早期に添加した場合(すなわちNCO%が0又は限りなく0に近くなる前に添加した場合)、得られるポリマーの特性は大きく異なるものとなる。実際、各バッチ処理ごとに一定の特性が維持される態様で、SPURプレポリマーをキャッピングすることは、熟練した当業者であっても非常に難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より、シランエンドキャッピング剤の添加が反応中の任意のタイミングででき、かつ、にも関わらず得られるシリル化樹脂組成物の特性にはほとんど影響しない、水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法に対するニーズが存在する。かかる工程により、バッチ処理ごとのSPURプレポリマーの特性の変化が少なくなる。換言すれば、シランエンドキャッピング剤を反応系に添加する順序に関係なく、得られるプレポリマー樹脂組成物が同様の粘度及び他の特性を有する。本願明細書に記載の方法及び特許請求された方法から調製される生成物は、従来技術における課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、以下の工程を含んでなる水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法の提供に関する。触媒の存在下若しくは非存在下において、少なくとも1つのポリエーテルポリオール(i)と、少なくとも1つのポリイソシアネート(ii)と、少なくとも1つのイソシアナトシランを、任意の組合せ及び/又は順序で添加して反応させる工程。当該工程では、ポリイソシアネート(ii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.1〜約0.9であり、イソシアナトシラン(iii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.9〜約0.1であり、但し、ポリオール(i)及びポリイソシアネート(ii)が、ポリウレタンプレポリマー形成反応の完了前に反応して、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーが形成されたとき、イソシアナトシランを反応溶媒に添加してシリル化ポリウレタンを調製する。
【0007】
本発明の方法により、シランエンドキャッピング剤を反応混合物に添加するタイミングに関係なく、バッチ処理ごとの特性変化がほとんど生じない、シリル化水分硬化性樹脂組成物の調製が可能となる。このことは、最初にポリエーテルジオールをイソシアネートと反応させ、次に、NCO%がゼロになった後で官能性シランを添加してその末端をキャッピングすることを必要とする、従来のシラン末端ポリウレタンの調製方法に対する大きな進歩である。従来の方法では、シラン末端キャッピング剤を早期に添加した場合(すなわちNCO%が0になる理論的なキャッピングポイントの前に添加した場合)、得られるポリマーの特性は大きく異なるものとなる。実際、NCO%がゼロになり、官能性シランを混合物に添加してSPURプレポリマーをキャッピングしてもよいタイミングを見極めることは、熟練した当業者にとっても難しいことであり、それができなければ、得られる組成物のバッチ間の特性の変動をなくすことは困難である。本発明の方法を用いることにより、NCO%がゼロになるタイミングを考慮する必要がなくなり、ゆえに、これまで困難とされていた、得られるシリル化水分硬化性樹脂組成物の特性を、バッチ処理ごとに一定にするための処理工程の設定が不要となる。
【0008】
本発明の別の実施形態は、以下の工程を含んでなる水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物の提供に関する。触媒の存在下若しくは非存在下において、少なくとも1つのポリエーテルポリオール(i)と、少なくとも1つのポリイソシアネート(ii)と、少なくとも1つのイソシアナトシランを、任意の組合せ及び/又は順序で添加して反応させる工程。当該工程では、ポリイソシアネート(ii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.1〜約0.9であり、イソシアナトシラン(iii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.9〜約0.1であり、但し、ポリオール(i)及びポリイソシアネート(ii)が、ポリウレタンプレポリマー形成反応の完了前に反応して、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーが形成される場合、イソシアナトシランを反応溶媒に添加してシリル化ポリウレタンを調製する。
【0009】
本発明では、用語「ポリイソシアネート」とは、2つ以上のイソシアネート反応性基を有する有機化合物及びその混合物を意味する。本発明では、用語「ポリオール」とは、化合物上に2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物、及びその混合物を意味する。
【0010】
本願明細書に特に明記しない限り、「アルキル」基とは直鎖状、分岐状又は環状であってよく、「アリール」基は例えばアルカリル基(例えばトリル基)及びアラルキル基(例えばベンジル基)などが挙げられ、「アルキレン」基は、直鎖状、分岐又は環状であってもよく、あるいはペンダント若しくは内部のアリール基を有するアルキレン基(例えば1,4−ジエチレンフェニレン基)であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態は、以下の工程を含んでなる水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法の提供に関する。触媒の存在下若しくは非存在下において、少なくとも1つのポリエーテルポリオール(i)と、少なくとも1つのポリイソシアネート(ii)と、少なくとも1つのイソシアナトシランを、任意の組合せ及び/又は順序で添加して反応させる工程。当該工程では、ポリイソシアネート(ii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.1〜約0.9であり、イソシアナトシラン(iii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.9〜約0.1であり、但し、ポリオール(i)及びポリイソシアネート(ii)が、ポリウレタンプレポリマー形成反応の完了前に反応して、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーが形成される場合、イソシアナトシランを反応溶媒に添加してシリル化ポリウレタンを調製する。
【0012】
従来の、水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法とは異なり、本発明の方法では、NCO/OH%がゼロ(理論的なキャッピングポイント)となる前に、イソシアナトシランを添加する。換言すれば、少なくとも1つのポリオール(i)、少なくとも1つのポリイソシアネート(ii)、及び少なくとも1つのイソシアナトシラン(iii)を、いかなる組合せ及び/又は順序で添加しても、反応を良好に実施させることができる。本願明細書に記載の方法を用いて得られる水分硬化性樹脂組成物は、シランエンドキャッピング剤を反応系に添加するタイミングとは無関係に、実質的に一定の粘性及び他の特性を有する。
【0013】
上記のシリル化樹脂組成物の調製方法では、脂肪族、脂環式アラル脂肪族又は芳香族のポリイソシアネートなど、任意のポリイソシアネートを使用してもよい。使用するポリイソシアネートは、以下からなる群から選択してもよい:エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1、4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ポリマーのジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート及びそのフェニレンジイソシアネート。
【0014】
上記の方法で使用するイソシアナトシランは、以下の式で表される:
OCN−R−Si(R(OR3−n
式中、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R及びRは各々1〜10個の炭素原子を有する、同じ若しくは異なるアルキル基であり、nは0、1又は2である。
【0015】
本発明において有用な具体的なイソシアナトシランは、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン及び3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランからなる群から選択されるイソシアナトシランである。
【0016】
本発明の一実施形態は、上記のシリル化水分硬化性樹脂組成物の調製方法に関し、当該方法は、ポリプロピレンエーテルジオール(PPO)、ジイソシアネート及びイソシアナトシランが用いられ、当該方法で使用するPPOが約2,000〜約20,000の数平均分子量を有することを特徴とする。好ましくは、当該方法で使用するPPOは約4000以上、より好ましくは約8000以上の数平均分子量を有する。使用するジイソシアネートは脂肪族化合物若しくは芳香族化合物であってもよく、好ましくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)であってもよい。反応は、触媒の有無にかかわらず、約50℃〜約120℃の温度範囲で実施することができる。
【0017】
使用する触媒は、重金属(例えばスズ、ビスマス又はジルコニウム)であってもよい。別の好適な触媒としては、有機金属化合物触媒、アミン触媒などが挙げられるが、これらに限定されない。特に、シラン末端ポリウレタンプレポリマーとポリオールとの反応用触媒としては、有機ジブチルスズ、二重金属シアン化物(DMC触媒)、ジルコニウム錯体、アルミニウムキレート、チタンキレート、有機亜鉛、有機コバルト、有機鉄、有機ニッケル及び有機ビスマス及びそれらの混合物からなる群から選択される。当該アミン触媒は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及びアミノシラン、並びにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。シラン末端ポリウレタンプレポリマーとポリオールとの反応用触媒として、有機金属化合物触媒とアミン触媒の混合物を使用してもよい。
【0018】
不定比性の亜鉛ヘキサシアノコバルト酸塩 グリム錯体などの二重金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)が、低モノオール含量のポリエーテルポリオールの調製に有用であり、それにより、0.003mq/g以下から約0.010mq/gの不飽和レベルが実現される。換言すれば、ポリエーテルポリオールの調製へのこれらのDMC触媒の使用により、アルカリ触媒(例えばアルカリ金属水酸化物)によるポリエーテルポリオールの調製と比較して、末端二重結合(いわゆる「モノオール」)を有する単官能性ポリエーテルの含有量が減少する。更に、これらのポリオールの多分散性は非常に低い。DMC触媒によって調製されるポリエーテルポリオールは、高品質のポリウレタン(例えばエラストマー、フォーム及びコーティング)の調製に用いることができる。DMC触媒は通常、有機錯体リガンド(例えばエーテル)の存在下で、金属塩の水溶液を金属シアン化物塩の水溶液と反応させることによって得られる。典型的なDMC触媒の調製においては、塩化亜鉛(過剰量)及びヘキサシアノコバルト酸カリウムの水溶液を混合して分散液を調製する。次にジメトキシエタン(グリム)を当該分散液に添加する。濾過し、水溶性グリム溶液で分散物を洗浄した後、活性触媒を得る。
【0019】
本発明の更に別の実施形態は、上記の方法によって調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物の提供に関する。換言すれば、以下の工程により得られる水分硬化性シリル化樹脂組成物の提供に関する。触媒の存在下若しくは非存在下において、少なくとも1つのポリエーテルポリオール(i)と、少なくとも1つのポリイソシアネート(ii)と、少なくとも1つのイソシアナトシランを、任意の組合せ及び/又は順序で添加して反応させる工程。当該工程では、ポリイソシアネート(ii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.1〜約0.9であり、イソシアナトシラン(iii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.9〜約0.1であり、但し、ポリオール(i)及びポリイソシアネート(ii)が、ポリウレタンプレポリマー形成反応の完了前に反応して、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーが形成される場合、イソシアナトシランを反応溶媒に添加してシリル化ポリウレタンを調製する。
【0020】
好ましくは、本発明の水分硬化性シリル化樹脂組成物は、ポリプロピレンエーテルジオール(PPO)を、ジイソシアネート及びイソシアナトシランと反応させる工程により調製される。当該工程では、NCO/OHモル比は約0.1〜約0.9、好ましくは約0.4〜0.75であり、使用するPPOは約2,000〜約20,000の平均分子量を有する。好ましくは、当該工程で使用するPPOは約4000以上、好ましくは約8000以上の数平均分子量を有する。使用するジイソシアネートは、脂肪族化合物若しくは芳香族化合物、好ましくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)であってもよい。これらの樹脂組成物は、触媒の有無にかかわらず、約50℃〜約120℃の温度範囲で反応を実施することにより調製することができる。使用する触媒は、重金属(例えばスズ、ビスマス又はジルコニウム)であってもよい。
【0021】
本発明の別の態様は、上記の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物に関する。使用するイソシアナトシランは、以下の式で表される:
OCN−R−Si(R(OR3−n
式中、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R及びRは各々1〜10個の炭素原子を有する同じ若しくは異なるアルキル基であり、nは0、1又は2である。
【0022】
1個のイソシアナト基を有するポリエーテルジオール(好ましくはポリプロピレンエーテルジオール)、ジイソシアネート及びイソシアナトシランを反応させることによって調製される水分硬化性樹脂組成物もまた、本発明に包含される。
【0023】
本発明の更に別の実施形態は、少なくとも1つの本発明の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに、可塑剤、樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、香り、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、カーボンブラック、チタン酸化物、粘土、炭酸カルシウム、表層処置されたシリカ及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの更なる成分を含有する水分硬化性製品に関する。上記のリストは包括的なものではなく、飽くまで例示である。
【0024】
ポリマー又はその溶液に酸化防止剤を添加してもよく、それにより酸化による化学変化が防止できる。ポリマー又はその溶液に防腐剤を添加してもよく、それにより微生物による水溶液の汚染が防止できる。かかる添加物の使用量は広い範囲内で変化させることができ、すなわちポリウレタン溶液に対して0.01〜100重量%であってもよいが、より好適には0.01〜30重量%である。
【0025】
当該水分硬化性製品は、接着剤、シーラント、コーティング及びシーラント添加材(例えば充填材、強化材など)として使用できる。シーラント組成物を調製する場合、本発明のシリル化樹脂組成物を、可塑性組成物に通常用いられる、従来公知の充填材及び添加物と混合する。かかる材料の添加により、物理的性質(例えば粘性、流速、sagなど)を変化させることができる。組成物中の水分硬化性基の加水分解を防止するため、充填材は混合前に完全に乾燥させる必要がある。
【0026】
水分硬化性シリル化樹脂組成物の水分(例えば大気の水分)曝露によりシラン基が加水分解し、おそらくはシロキサン結合(−Si−O−Si−)による中間が形成され、当該材料の硬化及び基材(例えばガラス、木、金属など)への結合に至るものと考えられる。
【0027】
本発明の様々な実施形態を例示するため、以下に実施例を記載する。
【実施例】
【0028】
<実施例1>
本実施例では、IPDIとAcclaim 8200(バイエル社製のポリオキシプロピレンジオール)の反応及びイソシアナトシランによるキャッピングを記載する。SPURプレポリマーは「別添プロセス」(シランエンドキャッピング剤を、イソシアネート濃度が0.1%未満となる時点で添加する)、及び「共添プロセス」(シランエンドキャッピング剤を反応の開始時点でIPDIと共に添加する)に従って合成した。
【0029】
実施例1のSPURプレポリマーは、以下の組成である:
【0030】
【表1】

詳細なプロセスは、以下の通りである:
【0031】
別添プロセス:
150gのAcclaim 8200をケトルに添加した(水分濃度はカールフィッシャー滴定における200ppm未満に維持する)。窒素ガスの供給下、水分濃度が200ppm以下に減少するまで、撹拌しながらケトルを80℃(又は120℃)に加熱した。Crompton社製の触媒Fomrez SUL−4を、GCシリンジを使用して10〜30ppm(ポリオール量に対する量)でケトルに添加した。触媒をケトル中で充分混合した後、2.1gのIPDIを添加した。イソシアネート(NCO)の濃度を滴定によってモニターした。イソシアネート(NCO)濃度が理論的なシランキャッピングポイント(例えば0%のNCO)に到達したとき、シランキャッピング剤A−Link 35を添加し、フリーのNCOが検出されなくなるまで反応を65℃で継続させた。
【0032】
共添プロセス:
150gのAcclaim 8200をケトルに添加した(水分濃度はカールフィッシャー滴定における200ppm未満に維持する)。撹拌し、窒素ガスを供給しながら、ケトルを80℃(又は120℃)に加熱した。Crompton社製の触媒Fomrez SUL−4を、GCシリンジを使用して10〜30ppm(ポリオール量に対する量)でケトルに添加した。触媒をケトル中で充分混合した後、2.1gのIPDI及び3.84gのシランキャッピング剤A−Link 35を添加した。イソシアネート(NCO)の濃度を滴定によってモニターした。フリーのNCOが検出されなくなるまで反応を65℃で継続させた。「共添プロセス」及び「別添プロセス」を採用してシランエンドキャッピング剤を添加した際の実験結果を下表に記載する。
【0033】
【表2】

共添**:シランエンドキャッピング剤をIPDIと共に添加した。
別添*:シランエンドキャッピング剤をキャッピングポイントで添加した。
【0034】
<実施例2>
本実施例は、Acclaim12200とIPDIの反応、更にキャッピングポイントに到達した後の、イソシアナトシランによるキャッピングを記載する。400gの酸化ポリプロピレン(MW12000、バイエル社製、Acclaim12200)をIL樹脂ケトルに添加した。60℃で窒素をケトルに供給し、水分濃度が200ppm以下に減少するまで撹拌し、3.70gのイソホロンジイソシアネート(バイエル社製、Desmondur ID230)(0.90重量%)を7.5ppmのジブチルスズジラウレート(Crompton社製の触媒Fomrez SUL−4)と共にケトルに添加した。75℃で反応を実施した。8g(1.97重量%)のイソシアナトプロピル トリメトキシシランを、計算上のキャッピングポイント(NCO%=0)で、又はそのキャッピングポイントに至る前(例えば0.03又は0.06%のNCO)にケトルに添加した。滴定によりNCO%が0に達するまで、反応を75℃で継続させた。そのプロセス中の異なる時点でシランエンドキャッピング剤を添加した際の実験結果を下表に示す。
【0035】
【表3】

この組成の場合の従来的な、若しくは理論的なキャッピングポイントは、NCO%=0でなければならないが、この反応系では、NCO%=0〜0.06の範囲の、異なる時点でキャッピングを行った。これらの反応から得られたプレポリマーは全て、シランによるエンドキャッピングがなされるタイミングに関係なく、各々が実質的に異ならない特性を有していた。
【0036】
<実施例3>
本実施例は、Acclaim12200とIPDIの反応、更にイソシアナトシランによるキャッピングを記載する。シランエンドキャッピング剤は、IPDIと別個に、並びに共に添加した。更に得られるプレポリマーの特性を比較した。
【0037】
別添加(3600−144):
500gの97.32重量%のAcclaim12200ポリオールを1L反応器に添加した。Acclaim 12200を撹拌し、水分濃度が200ppm以下に減少するまで窒素供給し、85℃で加熱した。85℃で、4.61g(0.90重量%)を添加し、5分間混合した。Proglyde DMMの10重量%溶液0.27g、SUL−4触媒0.05重量%を添加した。反応器から定期的にサンプリングし、粘性及びイソシアネート濃度を分析した。イソシアネート濃度が0.08%に低下したとき、1.73重量%のA−Link 35を8.89gを添加し、混合し、更に85℃で反応させた。反応器から定期的にサンプリングし、粘性及びイソシアネート濃度を分析した。反応を完全に行わせ、生成物を冷却し、反応器から取り出した。
【0038】
共添加(3618−4):
500gの97.21重量%のAcclaim12200ポリオールを1L反応器に添加した。Acclaim 12200を撹拌し、窒素供給し、85℃で一晩加熱した。85℃で、0.90重量%のイソホロンジイソシアネート4.61g、及び1.84重量%のA−Link 35 9.45gを添加し、5分間混合した。Proglyde DMMの10重量%溶液0.27g、SUL−4触媒0.05重量%を添加した。反応器から定期的にサンプリングし、粘性及びイソシアネート濃度を分析した。反応を完全に行わせ、生成物を冷却し、反応器から取り出した。結果を下表に示す。
【0039】
【表4】

共添**:シランエンドキャッピング剤をIPDIと共に添加した。
別添*:シランエンドキャッピング剤をキャッピングポイントで添加した。
【0040】
本発明のプロセスを、具体的な実施態様に関して記載したが、当業者であれば、本発明の範囲内においてそれらを様々に変化させ、その構成要素を均等物で適宜置換することができるであろう。更に、多くの修飾を行ない、その基本的な範囲から逸脱することなく、具体的な条件又は材料を、本発明の教示に適応させることも可能である。したがって、本発明は、本発明のプロセスの実施にとり最良の形態として開示される具体例に限定されるものではなく、本願明細書に添付の特許請求の範囲に包含される全ての実施態様が含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法であって、触媒の存在下若しくは非存在下において、少なくとも1つのポリエーテルポリオール(i)と、少なくとも1つのポリイソシアネート(ii)と、少なくとも1つのイソシアナトシランを、任意の組合せ及び/又は順序で添加して反応させる工程であって、ポリイソシアネート(ii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.1〜約0.9であり、イソシアナトシラン(iii)とポリオール(i)のNCO/OH比率が約0.9〜約0.1であり、但し、ポリオール(i)及びポリイソシアネート(ii)が、ポリウレタンプレポリマー形成反応の完了前に反応して、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーが形成されたとき、イソシアナトシランを反応溶媒に添加してシリル化ポリウレタンを調製することを特徴とする工程を含んでなる方法。
【請求項2】
ポリオール(i)、ポリイソシアネート(ii)及びイソシアナトシラン(iii)を実質的に同時に反応させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリオール(i)をポリイソシアネート(ii)の一部と反応させ、その後、ポリイソシアネート(ii)の残りの一部及びイソシアナトシラン(iii)の全てと反応させる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリオール(i)をイソシアナトシラン(iii)の一部又は全体と反応させ、その後、イソシアナトシラン(iii)の残りの一部及びポリイソシアネート(ii)の全てと反応させる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記NCO/OH比率が約0.4〜約0.75である、請求項1記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項6】
前記ポリオール(i)がポリエーテルジオールであり、前記ポリイソシアネート(ii)がジイソシアネートであり、前記イソシアナトシラン(iii)が1つのイソシアネート基を有する、請求項1記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項7】
前記ポリエーテルジオールがポリプロピレンエーテルジオールである、請求項6記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項8】
前記ポリオールが約2,000〜約20,000の数平均分子量を有するポリプロピレンエーテルジオールである、請求項6記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項9】
前記ポリプロピレンエーテルジオールが、少なくとも約4,000の数平均分子量を有する、請求項8に記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項10】
前記ポリプロピレンエーテルジオールが、少なくとも約8,000の数平均分子量を有する、請求項9に記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項11】
前記ジイソシアネートが、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1、4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、重合ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項12】
前記イソシアナトシラン(iii)が以下の一般式:
OCN−R−Si(R(OR3−n
(式中、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R及びRは各々1〜10個の炭素原子を有する、同じ若しくは異なるアルキル基であり、nは0、1又は2である)
で表される、請求項6記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項13】
前記イソシアナトシランが、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物の調製方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項15】
請求項2記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項16】
請求項3記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項17】
請求項4記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項18】
請求項5記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項19】
請求項6記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項20】
請求項7記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項21】
請求項8記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項22】
請求項9記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項23】
請求項10記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項24】
請求項11記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項25】
請求項12記載の方法により調製される水分硬化性シリル化樹脂組成物。
【請求項26】
請求項14記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに可塑剤、他の樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、付着促進剤、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、チキソトロピー剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの追加的成分を含有する水分硬化性製品。
【請求項27】
請求項15記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに可塑剤、他の樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、付着促進剤、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、チキソトロピー剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの追加的成分を含有する水分硬化性製品。
【請求項28】
請求項16記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに可塑剤、他の樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、付着促進剤、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、チキソトロピー剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの追加的成分を含有する水分硬化性製品。
【請求項29】
請求項17記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに可塑剤、他の樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、付着促進剤、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、チキソトロピー剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの追加的成分を含有する水分硬化性製品。
【請求項30】
請求項18記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに可塑剤、他の樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、付着促進剤、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、チキソトロピー剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの追加的成分を含有する水分硬化性製品。
【請求項31】
請求項19記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに可塑剤、他の樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、付着促進剤、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、チキソトロピー剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの追加的成分を含有する水分硬化性製品。
【請求項32】
請求項20記載の水分硬化性シリル化樹脂組成物、並びに可塑剤、他の樹脂、消泡剤、UV安定化剤、粘性コントローラ、付着促進剤、染料、充填材、防腐剤、酸化防止剤、チキソトロピー剤及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの追加的成分を含有する水分硬化性製品。
【請求項33】
シーラント、コーティング又は接着剤である、請求項26記載の水分硬化性製品。
【請求項34】
シーラント、コーティング又は接着剤である、請求項27記載の水分硬化性製品。
【請求項35】
シーラント、コーティング又は接着剤である、請求項28記載の水分硬化性製品。
【請求項36】
シーラント、コーティング又は接着剤である、請求項29記載の水分硬化性製品。
【請求項37】
シーラント、コーティング又は接着剤である、請求項30記載の水分硬化性製品。
【請求項38】
シーラント、コーティング又は接着剤である、請求項31記載の水分硬化性製品。
【請求項39】
シーラント、コーティング又は接着剤である、請求項32記載の水分硬化性製品。

【公表番号】特表2009−513780(P2009−513780A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537796(P2008−537796)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/040884
【国際公開番号】WO2007/050426
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】