説明

水底地形測量方法およびシステム

【課題】水深が深い場合であっても水底地形を精度よく測量できる水底地形測量方法およびシステムを提供する。
【解決手段】GPSアンテナ2とウインチ5を設置した作業船14に、ウインチ5で繰出しおよび巻き取られるケーブル6を介して、ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9および水深計10を設置した曳航体7を接続し、超音波水中位置測量装置11の送波器11aを曳航体7に、受波器11bを作業船14に取付け、作業船14の移動速度とウインチ5の駆動の少なくとも一方を制御して曳航される曳航体7の深さ位置を調整して水中移動させつつ、ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9、水深計10の検知データ、GPSアンテナ2から送信される作業船14の位置データ、受波器11bが受信した曳航体7の位置データを制御装置4に入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地形測量方法およびシステムに関し、さらに詳しくは、水深が深い場合であっても水底地形を精度よく測量できる水底地形測量方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底などの水底地形を測量する方法としては、GPSおよびナローマルチビーム測探ソナーを設置した作業船を用いる方法が知られている(特許文献1参照)。ナローマルチビーム測探ソナーは、水底に多数の超音波(ビーム)を扇状に照射し、水底から反射してきた超音波を検知するまでの時間に基づいて水底地形の測量を行なう。水底地形を線的に測量するシングルビーム測探ソナーに比して、ナローマルチビーム測探ソナーは、水底地形を面的に測量するため、一度に広範囲を高精度で測量できるメリットがある。
【0003】
しかしながら、作業船から水底に向かって扇状に照射された超音波は、水深が深くなるに連れて、水底に到達する際には、より広い範囲に広がるので計測密度が疎になる。そのため、例えば、水深が100mを超える場合には、十分高い精度で測量を行なうことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−123247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水深が深い場合であっても水底地形を精度よく測量できる水底地形測量方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の水底地形測量方法は、作業船にGPSアンテナおよびウインチを設置し、このウインチによって繰出しおよび巻き取られる曳航索に曳航体を接続し、この曳航体にナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計を設置し、超音波水中位置測量装置の受波器を前記作業船に取付けるとともにその送波器を前記曳航体に取付けて、前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される曳航体の深さ位置を調整して水中移動させつつ、前記ナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計による検知データ、前記GPSアンテナから送信される前記作業船の位置データ、前記受波器が検知する前記曳航体の位置データを制御装置に入力し、制御装置に入力したこれらデータに基づいて演算することにより水底地形の測量データを得ることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって予め測量して取得した水底地形の予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される曳航体の深さ位置を調整して、曳航体と水底との距離を所定範囲に維持して水中移動させることもできる。或いは、測量対象となる水底地形を、前記曳航体を前記作業船により曳航して移動させることによって予め測量して取得した水底地形の予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される曳航体の深さ位置を調整して、曳航体と水底との距離を所定範囲に維持して水中移動させるすることもできる。測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって測量して取得した基礎測量データと、前記制御装置に入力したデータに基づいて演算することにより得た水底地形の測量データとを比較して、前記測量データの位置データを補正することもできる。
【0008】
本発明の水底地形測量システムは、作業船に設置するGPSアンテナおよびウインチと、このウインチによって繰出しおよび巻き取られる曳航索に接続されて水中を移動する曳航体とを備え、この曳航体に設置するナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計と、前記作業船に取付ける受波器と前記曳航体に取付ける送波器とからなる超音波水中位置測量装置と、前記ナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計による検知データ、前記GPSアンテナから送信される作業船の位置データ、前記受波器が検知する曳航体の位置データが入力される制御装置とを有し、前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される前記曳航体の深さ位置を調整して、前記制御装置に入力されるデータに基づいて演算することにより水底地形の測量データを得ることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって予め測量して取得した予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される前記曳航体の深さ位置を調整して、前記曳航体と水底との距離を所定範囲に設定にすることもできる。或いは、測量対象となる水底地形を、前記曳航体を前記作業船により曳航して移動させることによって予め測量して取得した予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される前記曳航体の深さ位置を調整して、前記曳航体と水底との距離を所定範囲に設定にすることもできる。測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって測量して取得した基礎測量データと、前記制御装置に入力されるデータに基づいて演算することにより得る水底地形の測量データとを比較して、前記測量データの位置データを補正する設定にすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業船にGPSアンテナおよびウインチを設置し、このウインチによって繰出しおよび巻き取られる曳航索に曳航体を接続して、作業船の移動速度とウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、水深が深い場合でも照射したナローマルチビームが過度に広がらないように、曳航体の深さ位置を調整して水中移動させつつ、ナローマルチビーム測探ソナーにより水底地形の測量を行なうことで、水深に起因する測量精度の低下を回避することができる。
【0011】
そして、作業船の位置は、GPSアンテナから送信される位置データによって正確に把握することができ、作業船に対する曳航体の位置は超音波水中位置測量装置による検知データによって把握することができる。これにより、曳航体の位置を把握することができるので、ナローマルチビーム測探ソナーによる検知データと、曳航体の位置データとに基づいて、制御装置によって演算することにより精度のよい水底地形の測量データを得ることができる。
【0012】
さらに、曳航体に設けた3軸加速度計測器および水深計の検知データに基づいて、制御装置によってデータ補正を行なうことにより、測量精度を向上させることができる。
【0013】
このように制御装置に入力されるデータに基づいて演算することにより、水深が深い場合であっても、水底地形を精度よく測量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の水底地形測量システムの全体概要図である。
【図2】本発明の水底地形測量方法を実施している状態を例示する説明図である。
【図3】図2の曳航体の側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水底地形測量方法およびシステムについて図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1、図2に例示するように、本発明の水底地形測量システム1(以下、測量システム1という)は、作業船14に設置するGPSアンテナ2およびウインチ5と、ウインチ5によって繰出しおよび巻き取られるケーブル6に接続されて水中を移動する曳航体7とを備えている。作業船14は、曳航体7を曳航できる移動可能な浮体であればよい。
【0016】
作業船14には制御装置4が設置されている。制御装置4には、データ受信機3、モニタ13、ウインチ5の駆動源(駆動モータなど)、超音波水中位置測定装置11の受波器11bが接続されている。データ受信機3は、GPSアンテナ2から逐次送信される作業船14の位置データを受信し、データ受信機3により受信された位置データは、制御装置4に入力される。データ受信機3には、その他にGPS基地局(陸上基準点)から無線伝送される位置補正情報が入力され、GPSアンテナ2(作業船14)の位置(GPS座標)が把握できるRTK−GPSになっている。この実施形態では、2基のGPSアンテナ2が作業船14に設置されているが、これらを、1基のGPSアンテナ2および1台のジャイロコンパスに置き換えることもできる。
【0017】
作業船14に設置された3つの受波器11bは、曳航体7に設置された超音波水中位置測量装置11の送波器11aが照射する超音波を検知し、受波器11bにより検知された超音波に基づくデータは、制御装置4に入力される。超音波が送波器11aから照射されてから、3つのそれぞれの受波器11bが検知するまでの時間には差異があるので、3つの受波器11bにより検知された超音波に基づいて曳航体7の位置を把握することができる。即ち、3つの受波器11bにより検知された超音波に基づくデータは、曳航体7の位置データとなる。
【0018】
曳航体7のケーシング7a内部には、ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9、水深計10および送波器11aが設置されている。水深計10は、曳航体7の水深を把握できるものであればよく、水深計10として水圧計を用いることもできる。
【0019】
ケーシング7a内部では、ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9、水深計10が、ジャンクションボックス17に接続されている。ジャンクションボックス17から延びるケーブル6bは、コネクタ16を通じてケーシング7aの外部に延設されている。ケーシング7aの外部に延設されたケーブル6は、作業船14に設置されたウインチ5によって繰出しおよび巻取りが行なわれる。
【0020】
このケーブル6は、曳航索6aと通信線6bとで構成されている。曳航索6aとしてはスチールワイヤやこれに類したものを用いることができる。通信線6bとしては、光ファイバーや銅線等を例示することができる。
【0021】
ケーブル6を構成する通信線6bは、作業船14に設置された制御装置4に接続されている。これにより、ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9および水深計10による検知データは、通信線6bを通じて制御装置4に入力される構造になっている。
【0022】
この測量システム1では、作業船14の移動速度とウインチ5の駆動の少なくとも一方を制御することにより、作業船14によって曳航される曳航体7の深さ位置を調整するように設定されている。例えば、作業船14の移動速度を速くすることにより、曳航体7の深さ位置は浅くなり、作業船14の移動速度を遅くすることにより、曳航体7の深さ位置は深くなる。或いは、曳航体7を曳航している際に、ケーブル6を巻き取るようにウインチ5を駆動することにより、曳航体7の深さ位置は浅くなり、ケーブル6を繰出すようにウインチ5を駆動することにより、曳航体7の深さ位置は深くなる。
【0023】
作業船14の移動速度とウインチ5の駆動の両者を制御して曳航体7の深さ位置を調整することもできる。作業船14の移動速度を制御するには、例えば、作業船14の推進力を制御装置14によって制御する。
【0024】
測量する水底地形の水深に応じて、このように曳航体7の深さ位置を調整して水中移動させつつ、制御装置4に入力されるデータに基づいて演算を行なうことにより、水底地形の測量データを得る。
【0025】
ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9および水深計10のケーシング7a内部での配置は、ケーシング7aの前端側になっており、曳航体7の重心位置は、前後方向でやや前側になっている。曳航体7の重心の前後方向位置は、ケーシング7a内部の後端側に取付けるカウンターウエイト19を調整して変化させることができる。
【0026】
曳航体7は、垂直翼7bと水平翼7cとを有し、安定して水中移動できるようになっている。ケーシング7aの両側面には、取付けベース18、18が設けられている。それぞれの取付けベース18、18には、複数の挿入孔18aが曳航体7の前後方向に並んで設けられている。それぞれの取付けベース18、18を介して、C字状の可動アーム12が曳航体7に取付けられている。可動アーム12は、その両端部が取付けベース18、18の挿入孔18a、18aに回転可能に嵌合することにより、嵌合する挿入孔18a、18aを結ぶ直線を回転軸方向として回転できる構造になっている。可動アーム12の両端部を嵌合する挿入孔18a、18aの位置は、適宜、変えることができる。
【0027】
可動アーム12の円弧状頂部には、シャックル等の連結部材を介して筒状のワイヤメッシュ15の一端部が連結されている。筒状のワイヤメッシュ15の内部にはケーブル6が挿通し、この挿通するケーブル6は、筒状のワイヤメッシュ15の一端部側で外側に飛び出して、十分な弛みを確保してコネクタ16を通じてケーシング7aの内部に続いている。したがって、ケーブル6と可動アーム12とは直接接続していない状態になっている。
【0028】
ワイヤメッシュ15の他端部は、挿通するケーブル6の表面に固定されている。したがって、ケーブル6が引張られると、筒状のワイヤメッシュ15を介して可動アーム12に引張力が作用して曳航体7が曳航されることになる。ここで、筒状のワイヤメッシュ15は引張られると縮径し、挿通しているケーブル6の外周面を締め付ける。このように締め付けるワイヤメッシュ15と一体化したケーブル6が引張力を負担するので、ケーブル6に過度の引張力が作用しない構造になっている。また、ケーブル6と可動アーム12とが直接接続されず、ケーブル6が弛みを有してコネクタ16に接続されているので、コネクタ16にはほとんど引張力が作用することがなく、引張力によってケーブル6がコネクタ16から脱落することを防止できる。
【0029】
この測量システム1によって水底地形を測量する際には、測量対象となる水域で、作業船14によって曳航体7を曳航して水中移動させる。曳航体7を水中移動させる際には、作業船14の移動速度とウインチ5の駆動の少なくも一方を制御して曳航体7の深さ位置を調整する。
【0030】
このように曳航体7を水中移動させつつ、ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9および水深計10による検知データ、GPSアンテナ2から送信される作業船14の位置データ、受波器11bが検知する曳航体7の位置データを制御装置4に入力する。制御装置4に入力したこれらデータに基づいて演算することにより、水底地形の測量データを得て水底地形を把握する。把握した水底地形は、モニタ13に表示することにより確認できる。
【0031】
ナローマルチビーム測探ソナー8の測量精度は、水深が深くなるに連れて低下するが、照射したナローマルチビームが過度に広がらないように、曳航している曳航体7の深さ位置を調整して水中移動させつつ、ナローマルチビーム測探ソナー8により水底地形の測量を行なうことで、水深が深い場合でも水深に起因する測量精度の低下を回避することができる。
【0032】
作業船14の位置は、GPSアンテナ2から送信される位置データによってGPS座標として正確に把握することができ、作業船14に対する曳航体7の位置は超音波水中位置測量装置11による検知データによって把握することができる。これにより、曳航体7の位置が把握することができるので、ナローマルチビーム測探ソナー8による検知データと、曳航体7の位置データとに基づいて、制御装置4によって正確に水底地形の測量データ(水底地形データとその位置データ)を演算することができる。
【0033】
さらに、3軸加速度計測器9の検知データを制御装置4に入力することにより、曳航体7の挙動を把握することができるので、この検知データに基づいて、曳航体7の動揺に起因する影響を補正することができる。また、水深計10の検知データを制御装置4に入力することにより、曳航体7の深さ位置を高精度で把握することができる。したがって、3軸加速度計測器9および水深計10の検知データに基づいて、水底地形の測量データのデータ補正を行なうことにより、測量精度を向上させることができる。
【0034】
このように本発明では、水中移動する曳航体7に設置したナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9および水深計10による検知データ、GPSアンテナ2から送信される作業船14の位置データ、受波器11bが検知する曳航体7の位置データに基づいて制御装置4によって演算することにより、水深が深い場合であっても、水底地形を精度よく測量することができる。例えば、水深が100m〜200m程度の水底地形を容易に高精度で測量することが可能になる。
【0035】
曳航体7を水中移動させる際には、曳航体7(ナローマルチビーム測探ソナー8)と水底との距離を、所定範囲に維持して測量を行なうとよい。これにより、水深に起因するナローマルチビーム測探ソナー8の測量精度のばらつきを一段と小さくすることができる。
【0036】
例えば、測量対象となる水底地形を、従来どおり、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって、予め測量して予備測量データを取得する。この予備測量データを制御装置4に入力しておく。曳航体7を用いて測量を行なう際には、この予備測量データに基づいて作業船14の移動速度とウインチ5の駆動の少なくとも一方を制御することにより、曳航される曳航体7の深さ位置を調整する。
【0037】
予備測量データによって水深が深いと把握している範囲では、曳航体7の水深を深くするように調整する。このようにして、曳航体7(ナローマルチビーム測探ソナー8)と水底との距離を、例えば、40m〜90mの所定範囲に維持して曳航体7を水中移動させる。
【0038】
上記予備測量データを取得するには、曳航体7を用いることもできる。この場合は、測量対象となる水底地形を、曳航体7を作業船14により曳航して移動させつつ、ナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9および水深計10による検知データ、GPSアンテナ2から送信される作業船14の位置データ、受波器11bが検知する曳航体7の位置データを制御装置4に入力する。制御装置4に入力したこれらデータに基づいて演算することにより、水底地形の予備測量データを得る。予備測量データを取得する際には、曳航される曳航体7の深さ位置を、特別に調整する必要がなく、例えば、水面近傍を移動させればよい。
【0039】
この測量して取得した予備測量データを制御装置4に入力しておき、曳航体7を用いて測量を行なう際には、この予備測量データに基づいて作業船14の移動速度とウインチ5の駆動の少なくとも一方を制御することにより、曳航される曳航体7の深さ位置を調整する。
【0040】
水中移動する曳航体7に設置したナローマルチビーム測探ソナー8、3軸加速度計測器9および水深計10による検知データ、GPSアンテナ2から送信される作業船14の位置データ、受波器11bが検知する曳航体7の位置データに基づいて、制御装置4によって演算して得た水底地形の測量データを、さらに以下のように補正することもできる。
【0041】
制御装置4によって演算して得たこの水底地形の測量データ(水底地形データとその位置データ)は、適度な深さ位置に調整して水中移動させた曳航体7に設置したナローマルチビール測探ソナー8によって測量しているので、その水底地形データは、作業船に設置したナローマルチビーム測探ソナーによる従来の方法に比して非常に高い精度で得られている。一方、水底地形の位置データは、GPSアンテナ2による作業船14の位置データと、超音波水中位置測量装置11による曳航体7の位置データとに基づいて演算されているので、GPSアンテナによる作業船の位置データ(GPS座標)をそのまま用いる従来の方法に比べて高い精度を得ることができない。
【0042】
そこで、測量対象となる水底地形を、従来どおり、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって測量して、基礎測量データを取得する。この基礎測量データと、制御装置4によって演算して得た上記水底地形の測量データ(以下、曳航体測量データという)とを比較演算する。
【0043】
曳航体測量データの地形データと、基礎測量データの地形データとを、それぞれの位置データのみをずらして重ね合わせるようにして比較演算することにより、両者が最も一致する位置を決定する。即ち、両者の3次元の地形データが最も適合するように重ね合わせを行なう。
【0044】
基礎測量データの位置データは、正確なGPS座標なので、両者が最も一致する位置での基礎測量データの位置データを採用する。このようにして、曳航体測量データの位置データだけを基礎測量データの位置データに置き換える補正をする。これにより、地形データおよびその位置データの両者が高精度の測量データを得ることができる。
【0045】
基礎測量データは、曳航体測量データを得る前に取得することも、曳航体測量データを得た後に取得することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 水底地形測量システム
2 GPSアンテナ
3 データ受信機
4 制御装置
5 ウインチ
6 ケーブル
6a 曳航索
6b 通信線
7 曳航体
7a ケーシング
7b 垂直翼
7c 水平翼
8 ナローマルチビーム測探ソナー
9 3軸加速度計測器
10 水深計
11 超音波水中位置測量装置
11a 送波器
11b 受波器
12 可動アーム
13 モニタ
14 作業船
15 筒状ワイヤメッシュ
16 コネクタ
17 ジャンクションボックス
18 取付けベース
18a 挿入孔
19 カウンターウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業船にGPSアンテナおよびウインチを設置し、このウインチによって繰出しおよび巻き取られる曳航索に曳航体を接続し、この曳航体にナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計を設置し、超音波水中位置測量装置の受波器を前記作業船に取付けるとともにその送波器を前記曳航体に取付けて、前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される曳航体の深さ位置を調整して水中移動させつつ、前記ナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計による検知データ、前記GPSアンテナから送信される前記作業船の位置データ、前記受波器が検知する前記曳航体の位置データを制御装置に入力し、制御装置に入力したこれらデータに基づいて演算することにより水底地形の測量データを得る水底地形の測量方法。
【請求項2】
測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって予め測量して取得した水底地形の予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される曳航体の深さ位置を調整して、曳航体と水底との距離を所定範囲に維持して水中移動させる請求項1に記載の水底地形測量方法。
【請求項3】
測量対象となる水底地形を、前記曳航体を前記作業船により曳航して移動させることによって予め測量して取得した水底地形の予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される曳航体の深さ位置を調整して、曳航体と水底との距離を所定範囲に維持して水中移動させる請求項1に記載の水底地形測量方法。
【請求項4】
測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって測量して取得した基礎測量データと、前記制御装置に入力したデータに基づいて演算することにより得た水底地形の測量データとを比較して、前記測量データの位置データを補正する請求項1〜3のいずれかに記載の水底地形測量方法。
【請求項5】
作業船に設置するGPSアンテナおよびウインチと、このウインチによって繰出しおよび巻き取られる曳航索に接続されて水中を移動する曳航体とを備え、この曳航体に設置するナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計と、前記作業船に取付ける受波器と前記曳航体に取付ける送波器とからなる超音波水中位置測量装置と、前記ナローマルチビーム測探ソナー、3軸加速度計測器および水深計による検知データ、前記GPSアンテナから送信される作業船の位置データ、前記受波器が検知する曳航体の位置データが入力される制御装置とを有し、前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される前記曳航体の深さ位置を調整して、前記制御装置に入力されるデータに基づいて演算することにより水底地形の測量データを得る水底地形測量システム。
【請求項6】
測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって予め測量して取得した予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される前記曳航体の深さ位置を調整して、前記曳航体と水底との距離を所定範囲に設定にする請求項5に記載の水底地形測量システム。
【請求項7】
測量対象となる水底地形を、前記曳航体を前記作業船により曳航して移動させることによって予め測量して取得した予備測量データを前記制御装置に入力しておき、この予備測量データに基づいて前記作業船の移動速度と前記ウインチの駆動の少なくとも一方を制御することにより、前記作業船により曳航される前記曳航体の深さ位置を調整して、前記曳航体と水底との距離を所定範囲に設定にする請求項5に記載の水底地形測量システム。
【請求項8】
測量対象となる水底地形を、GPSアンテナおよびナローマルチビーム測探ソナーを備えた作業船によって測量して取得した基礎測量データと、前記制御装置に入力されるデータに基づいて演算することにより得る水底地形の測量データとを比較して、前記測量データの位置データを補正する設定にする請求項5〜7のいずれかに記載の水底地形測量システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−190726(P2010−190726A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35213(P2009−35213)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】