説明

水性硬化性樹脂組成物および水性塗料組成物

【課題】塗膜の仕上がり外観および塗装作業性(タレ性)に優れた水性硬化性樹脂組成物、および、それを用いた水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水性硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂と、平均粒子径0.1〜2μmの(メタ)アクリル樹脂粒子と、メラミン樹脂と、水とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性硬化性樹脂組成物および水性塗料組成物に関する。より詳細には、塗膜の仕上がり外観等を向上させることができる水性硬化性樹脂組成物、および、それを用いた水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、二輪車等の乗物外板、部品、容器外面、コイルコーティング、家電等においては、塗装によって形成される塗膜の仕上がり外観の向上や、塗装作業性(タレ性)の向上が求められている。
【0003】
ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂をビヒクルとする水性塗料組成物が提案されている(特許文献1参照)。しかし、塗膜の仕上がり外観の向上と塗装作業性との両立が十分に達成されていない。
【0004】
カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂を含む水性中塗り塗料組成物が提案されている(特許文献2参照)。しかし、水性中塗り塗料組成物の粘度を下げたり、固形分濃度を上げたりすると、塗装作業性に劣るという問題がある。
【0005】
アクリルエマルションとウレタンエマルションの平均粒径と個数を規定することにより、塗膜の仕上がり外観と耐衝撃性が向上することが提案されている(特許文献3参照)。しかし、アクリルエマルションとウレタンエマルションとは塗膜中において互いに相溶できておらず(特許文献3の図2〜4参照)、不均一な塗膜となるため、塗膜の仕上がり外観の向上は十分に達成されていない。
【特許文献1】特開2002−241686号公報
【特許文献2】特開2002−294148号公報
【特許文献1】特開2004−337670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、塗膜の仕上がり外観および塗装作業性(タレ性)に優れた水性硬化性樹脂組成物、および、それを用いた水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水性硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂と、平均粒子径0.1〜2μmの(メタ)アクリル樹脂粒子と、メラミン樹脂と、水とを含む。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記(メタ)アクリル樹脂粒子が、上記水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して1〜30質量部の割合で含まれる。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記(メタ)アクリル樹脂粒子の平均粒子径が0.3〜1μmである。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記(メタ)アクリル樹脂粒子の溶解性パラメーターSPが9〜12である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記メラミン樹脂が、イミノ基型メラミン樹脂である。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明の水性硬化性樹脂組成物は、数平均分子量400〜1500のポリエーテルポリオールをさらに含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記ポリエーテルポリオールが、上記水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して3〜30質量部の割合で含まれる。
【0014】
好ましい実施形態においては、本発明の水性硬化性樹脂組成物は、ブロックポリイソシアネート化合物をさらに含む。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記ブロックポリイソシアネート化合物が、上記水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して3〜30質量部の割合で含まれる。
【0016】
好ましい実施形態においては、本発明の水性硬化性樹脂組成物は、ウレタン会合型粘性剤および/またはカルボン酸中和基を有するアルカリ増粘型粘性剤をさらに含む。
【0017】
本発明の別の局面によれば、水性塗料組成物が提供される。この水性塗料組成物は、本発明の水性硬化性樹脂組成物と顔料とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、塗膜の仕上がり外観および塗装作業性(タレ性)に優れた水性硬化性樹脂組成物、および、それを用いた水性塗料組成物を提供することができる。
【0019】
このような効果は、水性硬化性樹脂組成物を、(1)(メタ)アクリル変性したポリエステル樹脂と、(2)特定の平均粒子径を有する(メタ)アクリル樹脂粒子と、(3)メラミン樹脂と、(4)水とを共存させて構成することによって達成し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔水性硬化性樹脂組成物〕
本発明の水性硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂と、平均粒子径0.1〜2μmの(メタ)アクリル樹脂粒子と、メラミン樹脂と、水とを含む。
【0021】
本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0022】
A.(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂
本発明で用い得る(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂を採用し得る。ポリエステル樹脂を(メタ)アクリル変性することにより、ポリエステル樹脂と(メタ)アクリル樹脂粒子との相溶性が高まり、均一な塗膜を提供できるため、塗膜の仕上がり外観の向上を達成し得る。また、ポリエステル樹脂は、主鎖のエステル結合が加水分解しやすいために貯蔵安定性に劣るという問題があるが、(メタ)アクリル変性することにより、該加水分解を抑制し得る。
【0023】
上記(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂は、本発明の水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは20〜90質量部の割合で含まれる。より好ましくは25〜80質量部である。上記(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂の含有割合が上記範囲にあれば、本発明の効果を一層発現することができる。
【0024】
本発明で用い得る(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂とカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和(メタ)アクリルモノマーとをグラフト重合することや、水酸基含有ポリエステル樹脂に(メタ)アクリル変性脂肪酸を反応させることによって得られる。
【0025】
上記不飽和ポリエステル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂としては、任意の適切な不飽和ポリエステル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂を採用し得る。不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、不飽和多塩基酸を含む多塩基酸および/またはアリルエーテル単位を有する多価アルコールとの縮合反応によって得られるもの等が挙げられる。上記不飽和ポリエステル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量は、好ましくは500〜10000である。
【0026】
上記不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸が挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0027】
上記不飽和多塩基酸には、飽和多塩基酸を併用してもよい。上記飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステルが挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0028】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ジメチロールブタン酸、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレートが挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0029】
上記不飽和ポリエステル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂は、その製造原料として、多価アルコールのアリルエーテルなどの水酸基を有するアリル化合物を使用しても良い。該アリル化合物としては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1、2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1、3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等を挙げることができる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0030】
上記不飽和ポリエステル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂は、脂肪酸により変性されていてもよい。該脂肪酸としては、例えば、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸として乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸が挙げられる。具体的には、飽和脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸など、不飽和脂肪酸としては、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン脂肪酸を挙げることができる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0031】
上記重合性不飽和(メタ)アクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを必須成分とし、必要に応じてその他の重合性不飽和(メタ)アクリルモノマーを含む。その他の重合性不飽和(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素原子数1〜18のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、該ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルに対してε−カプロラクトンを1〜5モル開環付加反応させてなる、水酸基を有するカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−sec−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエンを挙げることができる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0032】
上記不飽和ポリエステル樹脂と上記重合性不飽和(メタ)アクリルモノマーとをグラフト重合させて(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、有機溶媒中でのフリーラジカル重合を利用することができる。具体的には、上記不飽和ポリエステル樹脂、上記重合性不飽和(メタ)アクリルモノマー、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤を添加し、90〜120℃で1〜5時間加熱する方法が挙げられる。上記不飽和ポリエステル樹脂と上記重合性不飽和(メタ)アクリルモノマーとの配合比(質量比)は、好ましくは40/60〜95/5である。
【0033】
上記重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤が挙げられる。有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルが挙げられる。上記連鎖移動剤としては、例えば、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類が挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0034】
(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂は、中和されていても良い。中和に用いられる中和剤としては、例えば、アミン類、アンモニアが挙げられる。上記アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリンが挙げられる。トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが好ましい。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
上記(メタ)アクリル変性脂肪酸としては、任意の適切な(メタ)アクリル変性脂肪酸を採用し得る。例えば、上記したような脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸の存在下で、上記したような重合性不飽和(メタ)アクリルモノマーを重合することによって得ることができる。
【0036】
B.(メタ)アクリル樹脂粒子
本発明で用い得る(メタ)アクリル樹脂粒子としては、平均粒子径が0.1〜2μmのものであれば、任意の適切な(メタ)アクリル樹脂粒子を採用し得る。本発明の水性硬化性樹脂組成物に平均粒子径が0.1〜2μmの(メタ)アクリル樹脂粒子を含ませることにより、高固形分化が可能となり、また、耐水性等の塗膜性能が向上し得る。
【0037】
上記(メタ)アクリル樹脂粒子の平均粒子径は0.1〜2μmであり、好ましくは0.3〜1μmであり、より好ましくは0.3〜0.8μmである。なお、樹脂粒子の平均粒子径は体積平均粒子径をいい、試料を脱イオン水にて希釈し、レーザー散乱式粒度分布測定装置(大塚電子製、商品名ELS−800)を用いて25℃で測定したときの値である。
【0038】
上記(メタ)アクリル樹脂粒子の平均粒子径が0.1μmより小さいと、組成物の固形分濃度を高める効果が低下するおそれがある。上記(メタ)アクリル樹脂粒子の平均粒子径が2μmより大きいと、経時で沈降するおそれがある。
【0039】
上記(メタ)アクリル樹脂粒子の溶解性パラメーターSPは9〜12である。溶解性パラメーターSPが9より小さいと、製造が困難となるおそれがある。溶解性パラメーターSPが12より大きいと、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂との相溶性が低下するおそれがある。
【0040】
本明細書において「溶解性パラメーター」とは、Hildebrandによって提唱されたパラメーターをいい、凝集エネルギー密度の平方根で定義される。代表的な溶媒や樹脂の溶解性パラメーターは、例えばポリマーハンドブックに記載されている。本明細書においては、樹脂の溶解性パラメーターは、例えば以下の手順で決定される:樹脂0.5gを秤量してビーカーにとり、良溶媒(例えば、アセトン、ジオキサン、ブチルセルソルブ、THF)10mlをホールピペットで加えて樹脂を溶解し、樹脂溶液を調製する。この樹脂溶液を20℃に保持し、水またはヘキサンを滴下し、白濁した点を滴定値とする。この滴定値から、以下の式を用いて樹脂の溶解性パラメーターδresinを算出する。
【数1】

ここで、Vmlはヘキサンによる滴定終了時の混合溶媒の分子容であり、Vmhは水による滴定終了時の混合溶媒の分子容である。δmlおよびδmhは、それぞれヘキサンまたは水による滴定終了時の混合溶媒の溶解性パラメーターであり、以下の式で表される。
【数2】

ここで、δwaterおよびδhexaneは、それぞれ水およびヘキサンの溶解性パラメーターであり、δgは良溶媒の溶解性パラメーターである。φmlは混合溶媒中のヘキサンの体積分率であり、φmhは混合溶媒中の水の体積分率である。
【0041】
上記(メタ)アクリル樹脂粒子は、本発明の水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部の割合で含まれる。より好ましくは3〜20質量部である。上記(メタ)アクリル樹脂粒子の含有割合が上記範囲にあれば、本発明の効果を一層発現することができる。
【0042】
本発明で用い得る(メタ)アクリル樹脂粒子は、任意の適切な方法によって製造し得る。代表的には、乳化重合法や懸濁重合法、後乳化法によって水分散体として得る方法である。好ましくは、水中での乳化重合法によって水分散体として得る方法である。工程が簡単で、有機溶剤の残留を考慮しなくてよいからである。具体的には、例えば、40〜100℃の水中で、エチレン性不飽和モノマーを、その0.2〜10質量%の乳化剤の存在下で、0.1〜5質量%のラジカル重合開始剤および適量の連鎖移動剤を用いて、2〜10時間反応させる方法を挙げることができる。
【0043】
上記エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸およびそのアルキルエステル類、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ラウリルエステルを必須とし、必要に応じてその他のビニル化合物を含んでいても良い。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0044】
上記その他のビニル化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン等のスチレン類;マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸類;ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等の、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド類;を挙げることができる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0045】
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤と上記開始剤のような酸化剤を組み合わせたもの等の、レドックス開始剤系;4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸等のアゾ化合物;を挙げることができる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0046】
上記乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の、ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の、アニオン系乳化剤;アクアロンHS−10(第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸塩)、アクアロンRN−20(第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル)、エレミノールJS−2(三洋化成工業社製、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム)、ラテムルS−180A(花王社製、スルホコハク酸型反応性活性剤(オレイルアンモニウム塩))、アントックスMS−60(日本乳化剤社製、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル)等の、アニオン系またはノニオン系であってラジカル重合性基を有する、いわゆる反応性乳化剤;を挙げることができる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0047】
上記連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2−メチル−5−t−ブチルチオフェノールを挙げることができる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0048】
本発明で用い得る(メタ)アクリル樹脂粒子は、本発明の水性硬化性樹脂組成物を製造する際には、上記したような水分散体の形態で用いることが好ましい。
【0049】
C.メラミン樹脂
一般的に、メラミン樹脂としては、反応性基がN−(CHOR)である完全アルキル型、N−(CHOR)CHOHであるメチロール基型、N−(CHOR)Hであるイミノ基型、N−(CHOR)CHOHとN−(CHOR)Hが混在するメチロール/イミノ基型の4種類を例示することができる。本発明の水性硬化性樹脂組成物に含まれるメラミン樹脂としては、好ましくは、メチロール基型メラミン樹脂、イミノ基型メラミン樹脂、メチロール/イミノ基型メラミン樹脂であり、特に好ましくは、イミノ基型メラミン樹脂である。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。上記反応性基のRは、任意の適切なアルキル基であり得る。本発明で用いられるメラミン樹脂の数平均分子量は、好ましくは200〜2000であり、より好ましくは300〜1000である。
【0050】
本発明の水性硬化性樹脂組成物に含まれるメラミン樹脂としては、任意の適切なメラミン樹脂を採用し得る。例えば、市販品を採用し得る。具体例としては、例えば、マイコート723(日本サイテック社製)、サイメル212(日本サイテック社製)、サイメル238(日本サイテック社製)、サイメル327(日本サイテック社製)、ユーバン226(三井化学社製)が挙げられる。
【0051】
上記メラミン樹脂は、本発明の水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10〜40質量部、より好ましくは15〜30質量部の割合で含まれる。上記メラミン樹脂の含有割合が上記範囲にあれば、本発明の効果を一層発現することができる。
【0052】
D.ポリエーテルポリオール
本発明の水性硬化性樹脂組成物は、数平均分子量400〜1500のポリエーテルポリオールをさらに含んでいても良い。上記ポリエーテルポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上有する限り、任意の適切なポリエーテルポリオールを採用し得る。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。このような構成とすることにより、得られる塗膜の耐水性や密着性が向上し得る。本発明で用いられるポリエーテルポリオールの1分子中の水酸基の数の上限は、好ましくは6であり、さらに好ましくは4である。塗膜の硬化性や耐水性に優れ得るからである。
【0053】
上記ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、400〜1,500であり、好ましくは500〜1,200である。数平均分子量が400未満である場合、塗膜の硬化性が低下するおそれがある。1,500を超える場合、粘度が高くなって上記(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂との相溶性が低下し、塗膜ににごりが生じるおそれがある。
【0054】
上記ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは30〜700、さらに好ましくは50〜500である。水酸基価が前記範囲外である場合、貯蔵安定性が低下したり、得られる塗膜の諸性能が低下したりするおそれがある。
【0055】
上記ポリエーテルポリオールは、任意の適切な方法で製造され得る。例えば、アルカリ触媒の存在下、常法により常圧又は加圧下、60〜160℃の温度で、活性水素原子含有化合物にアルキレンオキサイドを付加することにより得られ得る。
【0056】
上記活性水素原子含有化合物としては、例えば、水;1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール類;ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;蔗糖等の8価アルコール;ピロガロール、ヒドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールAやビスフェノールスルフォン等のビスフェノール類等の、多価フェノール類;アジピン酸、無水マレイン酸等の多価カルボン酸類;及びこれらの2種以上の混合物;が挙げられる。1分子中に有する全水酸基の個数が3個以上であるポリエーテルポリオールを形成するのに用いられる3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール等が好ましい。
【0057】
上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが挙げられ、これらは2種以上を併用することができる。2種以上を併用する場合の付加形式はブロック若しくはランダムのいずれでもよい。
【0058】
本発明で用いられるポリエーテルポリオールとしては、市販品を採用し得る。具体例としては、例えば、プライムポールPX−1000、サンニックスGE−600、サンニックスSP−750、PP−400(いずれも三洋化成工業社製)、PTMG−650(三菱化学社製)が挙げられる。
【0059】
上記ポリエーテルポリオールは、上記水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは3〜30質量部の割合で含まれる。より好ましくは5〜25質量部である。上記水性硬化性樹脂組成物中の上記ポリエーテルポリオールの含有割合が3質量部より小さい場合、フロー性が不十分で、下地隠蔽性が低下するおそれがある。30質量部より大きい場合、塗膜の硬度が不十分で、耐溶剤性が低下するおそれがある。
【0060】
E.ブロックポリイソシアネート化合物
本発明の水性硬化性樹脂組成物は、ブロックポリイソシアネート化合物をさらに含んでいても良い。
【0061】
上記ブロックポリイソシアネート化合物は、任意の適切なブロックポリイソシアネート化合物を採用し得る。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。好ましくは、ジイソシアネート化合物を適当なブロック剤でブロックしたものである。
【0062】
上記ブロックポリイソシアネート化合物は、好ましくは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族−脂肪族ジイソシアネート類;
トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、水素化されたTDI(HTDI)、水素化されたXDI(H6XDI)、水素化されたMDI(H12MDI)等の水素添加ジイソシアネート類;および、これらのアダクト体およびヌレート体;を挙げることができる。
【0063】
上記ブロック剤としては、任意の適切なブロック剤を採用し得る。例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール類;ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン類;チオフェノール等のメルカプタン類;チオ尿酸等の尿素類;イミダゾール類;カルバミン酸類;を挙げることができる。オキシム類、フェノール類、アルコール類、ラクタム類、ジケトン類が好ましい。
【0064】
上記ブロックポリイソシアネート化合物は、本発明の水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは3〜30質量部の割合で含まれる。より好ましくは5〜25質量部である。上記(メタ)アクリル樹脂粒子の含有割合が上記範囲にあれば、塗膜に強靭性を付与でき、例えば、チッピング性が向上する。
【0065】
F.粘性剤
本発明の水性硬化性樹脂組成物は、粘性剤をさらに含んでいても良い。
【0066】
上記粘性剤としては、例えば、セルロース系のものとして、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、市販されているものとしては、チローゼMH、チローゼH(いずれもヘキスト社製);アルカリ増粘型のものとして、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、市販されているものとしては、プライマルASE−60,プライマルTT−615、プライマルRM−5(いずれもローム&ハース社製)、ユーカーポリフォーブ(ユニオンカーバイド社製);ノニオン性のものとして、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、市販されているものとしては、アデカノールUH−420,アデカノールUH−462、アデカノールUH−472(いずれも旭電化工業社製)、プライマルRH−1020(ローム&ハース社製)、クラレポバール(クラレ社製);両親媒性分子内部にウレタン結合を含むウレタン会合型のものとして、市販されているものとしては、アデカノールSDX−1014(旭電化社製);ポリアマイド系のものとして、市販されているものとしては、ディスパロンAQ−610(楠本化成社製)、チクゾールW−300P(共栄社製);クレイなど無機系のものとして、モンモリロナイトを主成分とするベントナイト、ヘクトナイト、サポナイト、市販されているものとしては、ベントンAD(エレメンテス社製)、合成ヘクトナイトを主成分とするものとして市販されているものとしては、ラポナイト(巴工業社製)、ルーセンタイト(コープケミカル社製);を挙げることができる。
【0067】
上記粘性剤の中でも、分子内部にウレタン結合を有するウレタン会合型粘性剤、および、カルボン酸中和基を有するアルカリ増粘型粘性剤が、水性塗料組成物中において粘性付与効果が高く、本発明においてもより好ましく用いることができる。
【0068】
上記粘性剤は、何れか単独の使用でも良く、また複数種を組み合わせて使用しても良い。
【0069】
上記粘性剤の添加量は、水性硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して、好ましくは0.01〜10重量部であり、より好ましくは0.05〜5重量部である。0.01重量部未満であると、充分な粘性制御効果が得られないおそれがある。10重量部を超えると、フロー性が極度に損なわれる結果、塗膜の外観が低下するおそれがある。
【0070】
G.その他の成分
本発明の水性硬化性樹脂組成物は、任意の適切なその他の成分を含み得る。例えば、有機溶剤、界面活性剤、硬化触媒、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤を含み得る。
【0071】
H.本発明の水性硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明の水性硬化性樹脂組成物の製造方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、上記樹脂等の配合物をサンドグラインドミルやペイントコンディショナー、ディスパー等を用いて分散、ニーダーやロール等を用いて混練する方法が挙げられる。
【0072】
〔水性塗料組成物〕
本発明の水性塗料組成物は、本発明の水性硬化性樹脂組成物と顔料とを含む。
【0073】
上記顔料としては、任意の適切な顔料を採用し得る。
【0074】
例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の着色顔料、および、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料が挙げられる。
【0075】
上記顔料は、扁平顔料を含んでいても良い。上記顔料が扁平顔料を含むことによって、本発明の水性塗料組成物が特に中塗り塗料に好適なものとなり得るからである。
【0076】
上記顔料が扁平顔料を含む場合、該扁平顔料は、好ましくは、該顔料100質量部に対して1〜12質量部の割合で含まれる。
【0077】
本発明の水性塗料組成物において、[全顔料質量/(全顔料質量+全樹脂固形分質量)]×100で表される全顔料濃度は、好ましくは20〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜55質量%である。全顔料濃度が20質量%未満である場合、塗料の色設計が困難であり塗膜の耐候性が低下するおそれがある。60質量%を超える場合、塗料安定性が低下するおそれがある。
【0078】
本発明の水性塗料組成物の製造方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、上記樹脂および顔料等の配合物をサンドグラインドミルやペイントコンディショナー、ディスパー等を用いて分散、ニーダーやロール等を用いて混練する方法が挙げられる。
【0079】
本発明の水性塗料組成物の用途としては、任意の適切な塗膜形成用途に適用し得る。例えば、上塗り塗料、中塗り塗料が挙げられる。
【0080】
本発明の水性塗料組成物は、通常、被塗装物に対し、任意の適切な方法で塗布して塗膜を形成するのに用いられる。
【0081】
当該塗布方法としては、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電回転霧化式塗装等が挙げられる。得られる塗膜の膜厚は、用途等に応じて任意の適切な膜厚に設定し得る。一般的には乾燥膜厚で10〜40μmであることが好ましい。
【0082】
さらに、得られた塗膜を加熱硬化させてもよい。加熱硬化させることで、塗膜の物性および諸性能が向上し得る。加熱温度としては、本発明の水性塗料組成物の種類に応じて適宜設定し得る。一般的には80〜180℃に設定されていることが好ましい。加熱時間は加熱温度に応じて任意に設定し得る。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0084】
〔製造例1〕アクリル変性ポリエステル樹脂溶液(A)の製造
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器に無水フタル酸9.14部、イソフタル酸10.25部、アジピン酸35.08部、無水マレイン酸1部、トリメチロールプロパン0.09部、ネオペンチルグリコール41.77部、ジメチロールブタン酸2.66部、触媒としてジブチル錫オキサイド0.1部を仕込み、150℃から230℃まで3時間かけて昇温し、230℃を7時間ほど保持することで固形分酸価8.0、固形分水酸基価60、数平均分子量3000の不飽和ポリエステル樹脂を得た。
その後、不飽和ポリエステル樹脂87.69部を反応容器に仕込み150℃に加熱したところに、メタクリル酸2.07部、メタクリル酸ラウリル3.84部、スチレン3.84部からなるモノマー溶液と、カヤブチルB(化薬アクゾ社製)2.00部、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部からなる開始剤溶液を2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
更に、カヤブチルB(化薬アクゾ社製)2.00部、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。
脱イオン水94.54部及びジメチルアミノエタノール2.90部を加えてアクリル変性ポリエステル樹脂溶液(A)を得た。得られたアクリル変性ポリエステル樹脂溶液(A)は不揮発分が50.0%であり、固形分酸価30、水酸基価54、数平均分子量3500、中和率90%であった。
【0085】
〔製造例2〕水酸基含有ポリエステル樹脂(B−1)の製造
攪拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた3リットルの四つ口フラスコに、イソフタル酸161部、アジピン酸330部、大豆油脂肪酸53部、ネオペンチルグリコール101部、1,6−ヘキサンジオール44部、トリメチロールプロパン311部とジブチル錫オキサイド0.5質量部とを仕込み、220℃まで昇温し、脱水縮合反応を行った。このとき、樹脂固形分の酸価が16KOHmg/gになるまで反応を続行せしめ、アクリル変性ポリエステル樹脂(B)の原料である水酸基価190、重量平均分子量9200の固形の水酸基含有ポリエステル樹脂(B−1)を得た。
【0086】
〔製造例3〕アクリル変性脂肪酸(B−2)の製造例
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた3リットルの四つ口フラスコに、ヒマシ油脂肪酸356部とキシレン650部を仕込み、撹拌しながら130℃まで昇温し、そこにスチレン172部、i−ブチルメタクリレート257部、メタクリル酸215部とt−ブチルパーオキシベンゾエート30部の混合物を3時間かけて添加した。一晩130℃で撹拌し、80℃に降温後、メチルエチルケトン350部を添加し、質量平均分子量6400、不揮発分は50質量%のアクリル変性脂肪酸(B−2)の溶液を得た。
【0087】
〔製造例4〕アクリル変性ポリエステル樹脂(B)の製造例
攪拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた3リットルの四つ口フラスコに、ポリエステル樹脂(B−1)760部とビニル変性脂肪酸(B−2)240部を仕込み、180℃まで徐々に昇温し、キシレンとメチルエチルケトンを留去させ、脱水縮合反応を行った。ここで、樹脂固形分の酸価が35になるまで反応を続行させた。反応終了後150℃まで冷却した時点で、プロピレングリコールn−プロピルエーテル50部を添加し、次いで1時間撹拌し、90℃でジメチルエタノールアミン42部を添加し同温度で1時間撹拌した。その後、不揮発分が40質量%になるようにイオン交換水を添加し、水酸基価138、質量平均分子量55000のアクリル変性ポリエステル樹脂(B)の水分散液を得た。
【0088】
〔製造例5〕アクリル樹脂粒子(C)の製造例
撹拌機や温度計、滴下ロート、還流冷却器、窒素導入菅などを備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用の反応容器に、脱イオン水95部を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。メチルメタクリレート26部、n−ブチルアクリレート4部、n−ブチルメタクリレート50部とスチレン20部のモノマー混合液、脱イオン水50部とアデカリアゾープER−20(アデカ(株)社製、ノニオン型反応性乳化剤、75%水溶液)1.5部とノイゲンEA−137(第一工業製薬(株)社製、ノニオン型非反応性乳化剤、有効成分100%)1.5部とを混合した混合物をホモジナイザーによって乳化した。ホモジナイザーによって乳化したモノマープレ乳化液を反応容器中に3時間にわたって撹拌しながら滴下した。また、モノマープレ乳化液の滴下と並行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)0.3部を水10部に溶解した水溶液を、滴下速度を一定に保ちながら、モノマープレ乳化液の滴下終了時まで反応容器中に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間反応を継続し、その後冷却した。
得られたアクリル樹脂粒子(C)は、Tg48℃、SP9.6、固形分40質量%、平均粒子径450nmであった。
【0089】
〔製造例6〕アクリル樹脂粒子(D)の製造例
メチルメタクリレート5部、n−ブチルアクリレート10部、グリシジルメタクリレート50部とエチルヘキシルメタクリレート35部のモノマー混合液、アデカリアゾープ
ER−20(アデカ(株)社製、ノニオン型反応性乳化剤、75%水溶液)0.75部とノイゲン EA−137(第一工業製薬(株)社製、ノニオン型非反応性乳化剤、有効成分100%)0.75部との混合物を用いた以外は製造例5と同様にしてアクリル樹脂粒子(D)を得た。
得られたアクリル樹脂粒子(D)は、Tg12℃、SP10.0、固形分40質量%、平均粒子径580nmであった。
【0090】
〔製造例7〕着色顔料ペースト1の製造
製造例1で得られたアクリル変性ポリエステル樹脂(A)50部に対して、ルチル型酸化チタン34.5部、硫酸バリウム34.4部、タルク6部、カーボンブラック0.1部、イオン交換水17.9部を混合撹拌し、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で1時間混合分散し、粒度5μm以下、不揮発分70%の着色顔料ペースト1を得た。
【0091】
〔製造例8〕着色顔料ペースト2の製造
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)50部に代えて製造例4で得られたアクリル変性ポリエステル樹脂(B)62.5部を用い、イオン交換水17.9部に代えてイオン交換水5.4部を用いた以外は、製造例7と同様にして、不揮発分70%の着色ペースト2を得た。
【0092】
〔製造例9〕アクリル未変性ポリエステル樹脂(E)の製造
反応器にイソフタル酸25.6部、無水フタル酸22.8部、アジピン酸5.6部、トリメチロールプロパン19.3部、ネオペンチルグリコール26.7部、ε-カプロラクトン17.5部、ジブチルスズオキサイド0.1部を加え、混合撹拌しながら170℃まで昇温した。その後3時間かけ220℃まで昇温しつつ、酸価8となるまで縮合反応により生成する水を除去した。
次いで、無水トリメリット酸7.9部を加え、150℃で1時間反応させ、酸価が40のポリエステル樹脂を得た。さらに、100℃まで冷却後ブチルセロソルブ11.2部を加え均一になるまで撹拌し、60℃まで冷却後、イオン交換水98.8部、2−アミノ−2−メチルプロパノール5.9部を加え、不揮発分50%、固形分酸価40、水酸基価110、質量平均分子量8000のアクリル未変性ポリエステル樹脂(E)を得た。
【0093】
〔製造例10〕着色顔料ペースト3の製造
製造例9で得られたアクリル未変性ポリエステル樹脂(E)50部に対して、ルチル型酸化チタン34.5部、硫酸バリウム34.4部、タルク6部、カーボンブラック0.1部、イオン交換水17.9部を混合撹拌し、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で1時間混合分散し、粒度5μm以下、不揮発分70%の着色顔料ペースト3を得た。
【0094】
〔実施例1〕水性硬化性樹脂組成物1
以下に示す原料をディスパーにより均一混合して、水性硬化性樹脂組成物1を得た。得られた水性硬化性樹脂組成物1は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
(原料及び配合量)
製造例1で得られたアクリル変性ポリエステル樹脂溶液(A) ;50部、
製造例5で得られたアクリル樹脂粒子(C) ;25部、
数平均分子量420、固形分100質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(マイコート723、日本サイテック社製) ;30部、
数平均分子量1000、1分子当たりの水酸基数2、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(プライムポールPX−1000、三洋化成工業社製) ;10部、
界面活性剤(サーフィノール104、エアープロダクツジャパン社製) ;3.8部、
有機溶剤(ブチルセロソルブ) ;15部
【0095】
〔実施例2〕水性硬化性樹脂組成物2
配合するアクリル樹脂粒子(C)を50部、メラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様に行い、水性硬化性樹脂組成物2を得た。
イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂は、それぞれ16.7部ずつ配合した。
得られた水性硬化性樹脂組成物2は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0096】
〔実施例3〕水性硬化性樹脂組成物3
配合するメラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代え、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様に行い、水性硬化性樹脂組成物3を得た。
イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂の配合量はそれぞれ16.7部とし、ポリエーテルポリオールの配合量は実施例1と同様に10.0部とした。
得られた水性硬化性樹脂組成物3は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0097】
〔実施例4〕水性硬化性樹脂組成物4
実施例1の配合に、さらに、ブロックイソシアネート(スミジュールBLー3175、住化バイエル社製、有効成分75%)9.3部と、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)22部とを追加し、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様に行い、水性硬化性塗料組成物4を得た。
得られた水性硬化性樹脂組成物4は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0098】
〔実施例5〕水性硬化性樹脂組成物5
配合するアクリル樹脂粒子を、製造例6で得られたアクリル樹脂粒子(D)に代え、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代え、実施例1の配合に、さらに、ブロックイソシアネート(スミジュールBLー3175、住化バイエル社製、有効成分75%)9.3部を追加したこと以外は、実施例1と同様に行い、水性硬化性樹脂組成物5を得た。
アクリル樹脂粒子(D)の配合量は13部とし、ポリエーテルポリオールの配合量は実施例1と同様に10.0部とした。
得られた水性硬化性樹脂組成物5は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0099】
〔実施例6〕水性硬化性樹脂組成物6
配合するアクリル変性ポリエステル樹脂溶液を、製造例4で得られたアクリル変性ポリエステル樹脂(B)に代え、配合するメラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代え、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様に行い、水性硬化性樹脂組成物6を得た。
アクリル変性ポリエステル樹脂(B)の配合量は62.5部とし、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂の配合量はそれぞれ16.7部とし、ポリエーテルポリオールの配合量は実施例1と同様に10.0部とした。
得られた水性硬化性樹脂組成物6は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0100】
〔実施例7〕水性硬化性樹脂組成物7
配合するアクリル変性ポリエステル樹脂溶液を、製造例4で得られたアクリル変性ポリエステル樹脂(B)に代え、アクリル樹脂粒子の配合量を13部に変更し、配合するメラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代え、さらに、ブロックイソシアネート(スミジュールBLー3175、住化バイエル社製、有効成分75%)9.3部を追加したこと以外は、実施例1と同様に行い、水性硬化性樹脂組成物7を得た。
アクリル変性ポリエステル樹脂(B)の配合量は62.5部とし、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂の配合量はそれぞれ16.7部とした。
得られた水性硬化性樹脂組成物7は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0101】
〔比較例1〕水性硬化性樹脂組成物C1
実施例1の配合から、アクリル樹脂粒子を除いた配合としたこと以外は、実施例1と同様に行い、水性硬化性樹脂組成物C1を得た。
得られた水性硬化性樹脂組成物C1は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0102】
〔実施例8〕水性塗料組成物8
以下に示す原料をディスパーにより均一混合して、水性塗料組成物8を得た。得られた水性塗料組成物8は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
(原料及び配合量)
製造例7で得られた着色顔料ペースト1 ;142.9部、
製造例5で得られたアクリル樹脂粒子(C) ;25部
数平均分子量420、固形分100質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(マイコート723、日本サイテック社製) ;30部、
数平均分子量1000、1分子当たりの水酸基数2、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(プライムポールPX−1000、三洋化成工業社製) ;10部、
界面活性剤(サーフィノール104、エアープロダクツジャパン社製) ;3.8部、
有機溶剤(ブチルセロソルブ) ;15部
【0103】
〔実施例9〕水性塗料組成物9
配合するアクリル樹脂粒子(C)を50部、配合するメラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代えたこと以外は、実施例8と同様に行い、水性塗料組成物9を得た。
イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂はそれぞれ16.7部ずつ配合した。
得られた水性塗料組成物9は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0104】
〔実施例10〕水性塗料組成物10
配合するメラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代え、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代えたこと以外は、実施例8と同様に行い、水性塗料組成物10を得た。
イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂の配合量はそれぞれ16.7部とし、ポリエーテルポリオールの配合量は実施例8と同様に10.0部とした。
得られた水性塗料組成物10は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0105】
〔実施例11〕水性塗料組成物11
実施例8の配合に、さらに、ブロックイソシアネート(スミジュールBLー3175、住化バイエル社製、有効成分75%)9.3部と、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)22部とを追加し、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代えたこと以外は、実施例8と同様の手順により水性塗料組成物11を得た。
ポリエーテルポリオールの配合量は実施例8と同様に10.0部とした。
得られた水性塗料組成物11は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0106】
〔実施例12〕水性塗料組成物12
配合するアクリル樹脂粒子を製造例6で得られたアクリル樹脂粒子(D)に代え、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代え、実施例8の配合に、さらに、ブロックイソシアネート(スミジュールBLー3175、住化バイエル社製、有効成分75%)9.3部を追加したこと以外は、実施例8と同様に行い、水性塗料組成物12を得た。
アクリル樹脂粒子(D)の配合量は13部とし、ポリエーテルポリオールの配合量は実施例8と同様に10.0部とした。
得られた水性塗料組成物12は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0107】
〔実施例13〕水性塗料組成物13
配合する着色顔料ペーストを、製造例8で得られた着色顔料ペースト2に代え、配合するメラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代え、配合するポリエーテルポリオールを、数平均分子量600、1分子当たりの水酸基数3、固形分100質量%のポリエーテルポリオール(サンニックスGE−600、三洋化成工業社製)に代えたこと以外は、実施例8と同様に行い、水性塗料組成物13を得た。
着色顔料ペースト2の配合量は実施例8と同様に142.9部とし、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂の配合量はそれぞれ16.7部とし、ポリエーテルポリオールの配合量は実施例8と同様に10.0部とした。
得られた水性塗料組成物13は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0108】
〔実施例14〕水性塗料組成物14
配合する着色顔料ペーストを、製造例8で得られた着色顔料ペースト2に代え、アクリル樹脂粒子(C)の配合量を13部に変更し、配合するメラミン樹脂を、数平均分子量500、固形分90質量%のイミノ基型メチル化メラミン樹脂(サイメル327、日本サイテック社製)、及び、数平均分子量550、固形分90質量%のイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂(サイメル212、日本サイテック社製)に代え、さらに、ブロックイソシアネート(スミジュールBLー3175、住化バイエル社製、有効成分75%)9.3部を追加したこと以外は、実施例8と同様に行い、水性塗料組成物14を得た。
着色顔料ペースト2の配合量は実施例8と同様に142.9部とし、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、及びイミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂の配合量はそれぞれ16.7部とした。
得られた水性塗料組成物14は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0109】
〔実施例15〕水性塗料組成物15
粘性剤としてプライマルASE−60(ローム&ハース社製)を0.5部追加したことを以外は実施例8と同様に行い、水性塗料組成物15を得た。
得られた水性塗料組成物15は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0110】
〔比較例2〕水性塗料組成物C2
実施例8の配合から、アクリル樹脂粒子を除いた配合としたことの他は、実施例8と同様の手順により水性塗料組成物C2を得た。
得られた水性塗料組成物C2は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0111】
〔比較例3〕水性塗料組成物C3
配合する着色顔料ペーストを、製造例10で得られた着色顔料ペースト3に代えたこと以外は、実施例8と同様に行い、水性塗料組成物C3を得た。
得られた水性塗料組成物C3は、イオン交換水を用いて40秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈した。
【0112】
〔評価試験〕
(樹脂組成物の不揮発分測定)
実施例1〜7、比較例1で得られた水性硬化性樹脂組成物の固形分濃度(不揮発分濃度)を表1に記す。
(試験板の作製)
被塗装物であるリン酸亜鉛処理した300×400×0.8mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(パワートップU−50、日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化させた塗板を、以下に示すタレ膜厚測定に用いる電着塗装板とした。
また、上記の手順により電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化させた塗板に、実施例8の水性塗料組成物8を、乾燥膜厚30μmとなるようにカートリッジベル(ABBインダストリー社製水系塗料塗装用回転霧化式静電塗装機)1ステージ塗装し、80℃で3分間プレヒートした。その後、150℃で30分間加熱硬化させた後冷却した。
なお、実施例9〜14、比較例2及び3で得られた水性塗料組成物9〜14、C2、C3についても上記と同様の手順で試験板を作製した。
(比較試験板の作製)
溶剤型中塗り塗料(日本ペイント社製、オルガP−30グレー)を前記と同様の手順でダル鋼板に塗装し、加熱硬化させて比較試験板を得た。
(仕上がり外観)
150℃で30分間加熱硬化させた試験板を冷却させた後、仕上がり外観を目視で評価し、比較試験板の観察結果と比較した。その結果を表2に示す。
評価基準は以下の通りである。なお、Bは実用上問題のないレベルである。
A:溶剤型中塗り塗料を用いた場合に比べ優れる。
B:溶剤型中塗り塗料を用いた場合と同等
C:溶剤型中塗り塗料を用いた場合に比べ劣る
(下地隠蔽性)
各試験板の下地隠蔽性をウェーブスキャン(ビックケミー社製表面粗度測定器)にて測定し、320〜800μmの下地隠蔽性に有効な短波長領域の測定値(W3値)を得た。測定値が30以下であるものを合格とした。測定結果を表2に示した。
(タレ膜厚測定)
直径5mmの穴の開いた上記電着塗装板に、水性塗料組成物8〜14、C2、C3をカートリッジベルで膜厚を変えて勾配塗装した。塗装後、直ぐに垂直に立てて、その状態のまま5分間セッティング、更に80℃で3分間プレヒートした。その後、150℃で30分間垂直のまま加熱硬化した後、5mm穴の下に垂れた塗膜の長さが5mmの膜厚をタレ膜厚とした。35μm以上を合格として、その結果を表2に示した。
【0113】
【表1】

【表2】

【0114】
表1から明らかなように、本発明の水性硬化性樹脂組成物は、固形分濃度を高めることが可能である。また、表2から明らかなように、本発明の水性硬化性樹脂組成物を用いた本発明の水性塗料組成物は、固形分濃度を高めることが可能であり、仕上がり外観に優れるとともに、下地隠蔽性および塗装作業性の両方が顕著に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の水性硬化性樹脂組成物および水性塗料組成物は、自動車、二輪車等の乗物外板、部品、容器外面、コイルコーティング、家電、鋼製家具等の塗装に好適に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂と、
平均粒子径0.1〜2μmの(メタ)アクリル樹脂粒子と、
メラミン樹脂と、
水とを含む、水性硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル樹脂粒子が、前記水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して1〜30質量部の割合で含まれる、請求項1に記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル樹脂粒子の平均粒子径が0.3〜1μmである、請求項1または2に記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル樹脂粒子の溶解性パラメーターSPが9〜12である、請求項1から3までのいずれかに記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記メラミン樹脂が、イミノ基型メラミン樹脂である、請求項1から4までのいずれかに記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
数平均分子量400〜1500のポリエーテルポリオールをさらに含む、請求項1から5までのいずれかに記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリオールが、前記水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して3〜30質量部の割合で含まれる、請求項6に記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
ブロックポリイソシアネート化合物をさらに含む、請求項1から7までのいずれかに記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ブロックポリイソシアネート化合物が、前記水性硬化性樹脂組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して3〜30質量部の割合で含まれる、請求項8に記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
ウレタン会合型粘性剤および/またはカルボン酸中和基を有するアルカリ増粘型粘性剤をさらに含む、請求項1から9までのいずれかに記載の水性硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかに記載の水性硬化性樹脂組成物と顔料とを含む、水性塗料組成物。

【公開番号】特開2008−144063(P2008−144063A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334004(P2006−334004)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】