説明

水晶発振器及びその製造方法

【課題】
本発明の目的は、外部環境の影響を受け難い信頼性の高い小型の水晶発振器を提供することにある。
【解決手段】
絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部内の絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子が搭載されており、絶縁性基体の第1の空間部上面に形成された凹形状の第2の空間部内に集積回路素子、及び電子部品素子と電気的に接続される水晶振動素子が収容されており、第2の空間部の開口上縁部に蓋体4載置され気密封止される水晶発振器において、電極部を除いた第1の空間部を囲う壁体上縁部全周にわたり半田層が形成され、また、半田層厚みは接続電極部厚みを超えず、半田層が挟まれて第1の空間部が第2の空間部の底面周縁部において気密封止されていることを特徴として課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる水晶発振器、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から携帯用通信機器等の電子機器に水晶発振器が用いられている。
【0003】
かかる従来の水晶発振器としては、例えば図4に示す如く、内部に図中には示されていないが、第2の空間部に水晶振動素子が収容されている水晶振動子23を、第1の空間部25内に前記の水晶振動素子の振動に基づいて発振出力を制御する集積回路素子26やコンデンサ等の電子部品素子が収容されている絶縁性基体21上に取着させた構造のものが知られており、かかる水晶発振器は、マザーボード等の実装回路基板上に載置された上、絶縁性基体21の下面に設けられている外部端子が実装回路基板の配線に半田接合されることにより実装回路基板上に実装される。
【0004】
なお、水晶振動子23や絶縁性基体21は、通常、セラミック材料によって形成されており、その内部や表面には配線導体が形成され、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。
【0005】
また、前記集積回路素子26の内部には、水晶振動素子の温度特性に応じて作成された温度補償データに基づき水晶発振器の発振周波数を補正するための温度補償回路が設けられており、水晶発振器を組み立てた後、上述の温度補償データを集積回路素子26のメモリ内に格納すべく、絶縁性基体21の下面や外側面等には温度補償データ書込用の書込制御端子27が設けられている。この書込制御端子27に温度補償データ書込装置のプローブ針を当てて集積回路素子26内のメモリに温度補償データを入力することにより、温度補償データが集積回路素子26のメモリ内に格納される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−158441公報
【特許文献2】特開2004−064651公報
【特許文献3】特開2005−101848公報
【0007】
なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の水晶発振器の集積回路素子26が絶縁性基体21の第1の空間部に配置されてある構造の発振器の場合、発振器、及びその周辺部品を一緒にマザーボード等の実装回路基板上に載置した後、絶縁性保護のために用いるフィル樹脂等で発振器全体が覆われる際に、水晶振動子23と絶縁性基体21との接合面の僅少な隙間から、先述のフィル樹脂等の不要物が発振器内部に浸入して、水晶発振器の発振周波数に変動が生じてしまうおそれがあるといった欠点を有していた。
【0009】
本発明は上記欠点に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、外部環境の影響を受け難く、かつ発振周波数の安定した発振特性を得ることができる水晶発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水晶発振器は、絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部内の絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子が搭載されており、先述の絶縁性基体の第1の空間部上面に形成された凹形状の第2の空間部内に集積回路素子、及びその電子部品素子と電気的に接続される水晶振動素子が収容されており、先の第2の空間部の開口上縁部に蓋体が載置され気密封止される水晶発振器において、電極部を除いた第1の空間部を囲う壁体上縁部全周にわたり半田層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水晶発振器は、上記構成において、半田層の厚みが接続電極部厚みを超えず、この半田層が挟まれて第1の空間部が第2の空間部の底面周縁部において気密封止されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の水晶発振器の製造方法は、絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部内の絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子が搭載され、先述の絶縁性基体の第1の空間部上面に形成された凹形状の第2の空間部内に集積回路素子、及び電子部品素子と電気的に接続される水晶振動素子が収容され、先の第2の空間部の開口上縁部に蓋体が載置されて気密封止される水晶発振器の製造方法において、
第2の空間部を囲う壁体上縁部の第2の接続電極部、及び第2の接続電極部を除いた先述の壁体上縁部と、第1の空間部を囲う壁体上縁部の第1の接続電極部、及びこの第1の接続電極部を除いた壁体上縁部全周にわたり形成された金属層を溶融・接続した後に、第2の空間部内に水晶振動素子を収容し、第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止する水晶発振器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水晶発振器によれば、電極部を除いた第1の空間部を囲う壁体上縁部全周にわたり半田層が形成されていることから、外部からのフィル樹脂といった不要物の浸入を遮断し、外部環境の影響を受け難い安定した水晶発振器を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0015】
図1は本発明の水晶発振器の図2に示すX−X線断面図であり、図2は絶縁性のセラミック集合基板から切断された1個の基板領域を示した第1の空間部15を有する絶縁性基体10の上面図である。図1に示す水晶発振器は、集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10の下面に電極端子19が設けられ、集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10の上面には集積回路素子7が搭載されている。また、集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10の第1の空間部15を囲う側面には壁体13、壁体13の外側面には複数個の書込制御端子11が形成されている。また、図1に示すように壁体13の上面には、水晶振動素子5が収容されている水晶振動子1を載置して固定した構造を有している。本発明の水晶発振器においては、水晶振動子1と絶縁性基体10との間の第1の空間部15を囲う壁体上縁部全周にわたり半田層12が形成されている。
【0016】
図1において水晶振動子1は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る基板2と、基板2と同様のセラミック材料から成る側壁3、42アロイやコバール,リン青銅等の金属から成る蓋体4とから成り、前記基板2の上面に側壁3を取着させ、その上面に蓋体4を載置して固定させることによって水晶振動子1が構成され、側壁3の内側に位置する基板2の上面に水晶振動素子5が実装されている。
【0017】
前記水晶振動子1は、その内部に、具体的には、基板2の上面と側
壁3の内面と蓋体4の下面とで囲まれる第2の空間部6内に水晶振動素子5を収容して蓋体4が載置されて気密封止されており、基板2の上面には水晶振動素子5の振動電極に接続される一対の搭載パッド等が、基板2の下面には後述する絶縁性基体10上の壁体13に接続される複数個の第2の接続電極部17がそれぞれ設けられ、これらのパッドや端子は基板2表面の配線パターンや基板内部に埋設されているビアホール等を介して、対応するもの同士、相互に電気的に接続されている。
【0018】
一方、水晶振動子1の内部に収容される水晶振動素子5は、所定の結晶軸でカットされた水晶素板の両主面に一対の振動電極が被着・形成されて成り、外部からの変動電圧が一対の振動電極を介して水晶素板に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こす。
【0019】
ここで水晶振動子1の蓋体4を水晶振動子1の第2の接続電極部17や絶縁性基体10の第1の接続電極部18を介して後述するグランド端子用の電極端子19に接続させておけば、その使用時に、金属から成る蓋体4が基準電位に接続されてシールド機能が付与されることと成るため、水晶振動素子5や集積回路素子7を外部からの不要な電気的作用から良好に保護することができる。従って、水晶振動子1の蓋体4は水晶振動子1の第2の接続電極部17や絶縁性基体10の第1の接続電極部18を介してグランド端子用の電極端子19に接続させておくことが好ましい。
【0020】
そして、上述した水晶振動子1が取着される集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10は概略矩形状を成しており、ガラス布基材エポキシ樹脂やポリカーボネイト,エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂等の樹脂材料やガラス−セラミック,アルミナセラミックス等のセラミック材料等によって平板状を成すように形成されている。
【0021】
前記集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10は、基板領域の下面の四隅部に4つの電極端子19(それぞれ電源電圧端子、グランド端子、発振出力端子、発振制御端子)が形成され、上面の四隅部を囲む周縁には壁体13が、また上面の中央域にはフリップチップ型の集積回路素子7が、更に四隅部間の壁体13の外側側面には書込制御端子11が設けられている。
【0022】
前記集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10の下面に設けられている4つの電極端子19は、水晶発振器をマザーボード等の実装回路基板に接続するための端子として機能するものであり、水晶発振器を実装回路基板上に搭載する際、実装回路基板の回路配線と半田等の導電性接合材を介して電気的に接続される。
【0023】
また、前記集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10の上面に設けられる壁体13で、集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10と水晶振動子1との間に、集積回路素子7を配置させるのに必要な所定の間隔を確保しつつ、集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10の第1の接続電極部18を水晶振動子1の第2の接続電極部17に接続する。
【0024】
更に、上述した集積回路素子7を収容する第1の空間部15を有する絶縁性基体10の中央域には、複数個の電極パッドが設けられており、これら電極パッドに集積回路素子7の接続パッドをAuバンプや半田、または異方性導電接着材等の導電性接合材8を介して電気的、及び機械的に接続させることによって集積回路素子7が第1の空間部15を有する絶縁性基体10上の所定位置に取着される。
【0025】
前記集積回路素子7は、その回路形成面(下面)に、周囲の温度状態を検知するサーミスタといった感温素子、水晶振動素子5の温度特性を補償する温度補償データを格納するメモリ、メモリ内の温度補償データに基づいて水晶振動素子5の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、先の温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
【0026】
ここで、本発明の特徴部分は図1〜図3に示すように、絶縁性基体10の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部15内の絶縁性基体10の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子7、及び電子部品素子(不図示)が搭載されており、絶縁性基体10の第1の空間部15上面に形成された凹形状の第2の空間部内に集積回路素子7、及び電子部品素子(不図示)と電気的に接続される水晶振動素子5が収容されており、第2の空間部6の開口上縁部に蓋体4が載置され気密封止される水晶発振器において、電極部20を除いた第1の空間部15を囲う壁体13上縁部全周にわたり半田層12が形成されていることから、外部からのフィル樹脂といった不要物の第1の空間部15内への浸入を遮断して、その結果、外部環境の影響を受け難い安定した水晶発振器を得ることが可能となる。
【0027】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0028】
例えば、上述の実施形態においては、図1〜図3に示すように第1の空間部15を囲う壁体13上縁部の第1の接続電極部18と半田層12の間には第1の接続電極部18と半田層12を絶縁するための空間として電極部20が形成されているが、この空間の電極部20に絶縁性の物質を挿入しても全く構わず、この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態にかかる水晶発振器の側面方向からみた概略の断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる水晶発振器の第1の空間部を有する絶縁性基体の概略の上面図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる水晶発振器の水晶振動子1を基板2側からみた概略図である。
【図4】従来の水晶発振器の概略の上面斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ・・・水晶振動子
2 ・・・基板
3 ・・・側壁
4 ・・・蓋体
5 ・・・水晶振動素子
6 ・・・第2の空間部
7 ・・・集積回路素子
8 ・・・導電性接合材
10・・・絶縁性基体
11・・・書込制御端子
12・・・半田層(金属層)
13・・・壁体
15・・・第1の空間部
17・・・第2の接続電極部
18・・・第1の接続電極部
19・・・電極端子
20・・・電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部内の該絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子が搭載されており、該絶縁性基体の該第1の空間部上面に形成された凹形状の第2の空間部内に該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続される水晶振動素子が収容されており、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体が載置され気密封止される水晶発振器において、
該第1の空間部を囲う壁体上縁部の全周にわたり半田層が形成されていることを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
該半田層厚みは該接続電極部厚みを超えず、該半田層が挟まれて該第1の空間部が該第2の空間部の底面周縁部において気密封止されていることを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。
【請求項3】
絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部内の該絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子が搭載され、該絶縁性基体の該第1の空間部上面に形成された凹形状の第2の空間部内に該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続される水晶振動素子が収容され、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体が載置されて気密封止される水晶発振器の製造方法において、
該第2の空間部を囲う壁体上縁部の第2の接続電極部、及び該第2の接続電極部を除いた該壁体上縁部と、該第1の空間部を囲う壁体上縁部の第1の接続電極部、及び該第1の接続電極部を除いた該壁体上縁部の全周にわたり形成された金属層を溶融・接続した後に、該第2の空間部内に水晶振動素子を収容し、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止する水晶発振器の製造方法。
【請求項4】
金属層に半田を用いる請求項3に記載の水晶発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−35345(P2008−35345A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207965(P2006−207965)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】