説明

水素ガスセンサ及び酸素濃度センサ

【課題】酸素を含有する空気中で、低濃度の水素を検出可能な水素ガスセンサを提供する。
【解決手段】板状の圧電体11、圧電体11の表面の一部に配置されたパラジウム―プラチナ合金からなる薄膜状のガス感応部32、及びガス感応部32に接するガスの水素濃度に依存するガス感応部32の物性の変化を検出する検出部として機能する櫛歯状の電極22を備える水素ガスセンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサ技術に係り、水素ガスセンサ及び酸素濃度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車のエネルギー源として、燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、水素等の燃料と、酸素等の酸化剤と、を供給し続けることで、継続的に電力を取り出すことができる化学電池である(例えば、特許文献1参照。)。燃料電池のエネルギー源となる水素分子は、常温で安定であるが、反応性が高く、様々な物質と化学反応を起こしやすい。例えば、水素と酸素とを体積比2:1で混合し、火をつけると、激しく爆発することが知られている。そのため、水素を利用する場所においては、安全上、水素の漏れをいち早く検出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−317196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸素を含有する空気中で、低濃度の水素を検出可能なセンサの開発が望まれている。よって本発明は、酸素を含有する空気中で、低濃度の水素を検出可能な水素ガスセンサを提供することを目的の一つとする。また、本発明は、低濃度の水素を検出可能な水素ガスセンサを利用した酸素濃度センサを提供することも目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、パラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部と、ガス感応部に接するガスの水素濃度に依存するガス感応部の物性の変化を検出する検出部と、を備える水素ガスセンサが提供される。ガス感応部の材料をパラジウム―プラチナ合金とすることにより、酸素を含有する空気中で低濃度の水素を検出することが可能となる。
【0006】
本発明の他の態様によれば、パラジウム―プラチナ合金からなる第1のガス感応部と、第1のガス感応部に接するガスの水素濃度に依存する第1のガス感応部の第1の物性の変化を検出する第1の検出部と、パラジウム―ニッケル合金からなる第2のガス感応部と、第2のガス感応部に接するガスの水素濃度に依存する第2のガス感応部の第2の物性の変化を検出する第2の検出部と、第1の物性の変化と第2の物性の変化との差に基づいて、ガスの酸素濃度を算出する酸素濃度算出部と、を備える酸素濃度センサを検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素を含有する空気中で、低濃度の水素を検出可能な水素ガスセンサを提供可能である。また、本発明によれば、低濃度の水素を検出可能な水素ガスセンサを利用した酸素濃度センサも提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る水素ガスセンサの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る水素ガスセンサの模式的な断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)の振幅強度を示す第1のグラフである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る表面弾性波の振幅強度を示す第2のグラフである。
【図5】本発明の第1の実施の形態の参考例に係る表面弾性波の減衰率と、水素濃度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施の形態の参考例に係る薄膜の材料の結合エネルギーを示す表である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の参考例に係る薄膜における水素の挙動を示す模式図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態のガス感応部の材料の結合エネルギーを示す表である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る表面弾性波の減衰率と、水素濃度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る水素ガスセンサの上面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る水素ガスセンサの模式図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る水素ガスセンサの模式図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る水素ガスセンサの模式図である。
【図14】本発明の第6の実施の形態に係る酸素濃度センサの模式図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態に係る表面弾性波の減衰率と、水素濃度との関係を示すグラフである。
【図16】本発明の第7の実施の形態に係る酸素濃度センサの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る水素ガスセンサは、図1に示すように、球状の圧電体10、圧電体10の表面の一部に配置されたパラジウム(Pd)―プラチナ(Pt)合金からなる薄膜状のガス感応部30、及びガス感応部30に接するガスの水素(H2)濃度に依存するガス感応部30の弾性率等の物性の変化を検出する検出部として機能する櫛歯状の電極20を備える。圧電体10は、例えば石英等からなり、好ましくは水晶やランガサイトからなる。球状の圧電体10の直径は、例えば1乃至10mmである。Pd−Pt合金からなるガス感応部30は、水素を吸収すると、弾性率が変化する。ガス感応部30は、スパッタ装置等を用いて、圧電体10表面にPd−Pt合金を成膜することにより形成される。薄膜状のガス感応部30の厚さは、例えば10乃至200nmである。
【0011】
電極20に電気信号を与えると、圧電効果によって圧電体10が振動し、電極20の櫛歯状の部分の間隔を1/2周期とする振動が発生する。振動は、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)となり、球状の圧電体10の表面を大円に沿って多重周回する。そのため、表面弾性波は、図2に示すように、圧電体10表面に配置されたガス感応部30を複数回通過する。また、電極20は、表面弾性波を受信し、表面弾性波の振幅強度を反映する電圧を有する電気信号を発生させる。電極20は、クロム(Cr)及び金(Au)等からなり、物理蒸着(PVD)法等により形成される。
【0012】
図3に示すように、表面弾性波の振幅強度は、表面弾性波が図1及び図2に示す圧電体10の表面を周回する毎に減衰する。ここで、ガス感応部30に接するガスが水素を含まない場合、周回数xと、表面弾性波の振幅強度yとの関係は、減衰率をαとして、下記(1)式で与えられる。
y = exp(-αx) ・・・(1)
【0013】
また、ガス感応部30に接するガスが水素を含まない場合と比較して、ガス感応部30に接するガスが水素を含む場合、ガス感応部30に水素が吸着し、ガス感応部30の弾性率が変化する。そのため、図4に示すように、表面弾性波の振幅強度が、より少ない周回数で減衰する。ガス感応部30に接するガスが水素を含む場合、周回数xと、表面弾性波の振幅強度yとの関係は、減衰率をαHとして、下記(2)式で与えられる。
y = exp(-αH x) ・・・(2)
下記(3)式で与えられる、ガス感応部30に接するガスが水素を含まない場合の減衰率αと、ガス感応部30に接するガスが水素を含む場合の減衰率αHとの差Δαは、ガス感応部30に接するガスの水素濃度を反映する。したがって、減衰率の差Δαを測定することにより、ガス感応部30に接するガスの水素濃度を測定することが可能となる。
Δα = α-αH ・・・(3)
【0014】
図1及び図2に示すガス感応部30の材料にパラジウムのみを用いた場合、ガスの水素濃度が1%以上となると、ガス感応部30に相変態が生じ、急激に水素を吸蔵しはじめる。そのため、水素濃度の変化を捉えることが困難になる場合がある。そのため、従来、相変態を抑制するために、ガス感応部30の材料にパラジウム―ニッケル(Ni)合金が用いられている。水素を窒素ガスで希釈した場合には、パラジウム―ニッケル合金を用いたガス感応部30で、図5に示すように、水素濃度が0.01%に達するまで減衰率の差Δαを測定可能であった。しかし、水素を空気で希釈した場合には、水素濃度0.3%程度までしか減衰率の差Δαを測定することができなかった。なお、図5に示す例において、パラジウムとニッケルとの質量比は88:12であり、ガス感応部30の膜厚は40nmであった。
【0015】
そこで、パラジウムとニッケルとの質量比が7:3であるパラジウム―ニッケル合金からなる薄膜を、X線光電子分析装置(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)で分析した。その結果、図6に示すように、パラジウムの結合エネルギーは、深さ方向においてほぼ一定であった。これに対し、ニッケルの結合エネルギーは、最表面では857.1eVであったが、1nmの深度では852.8eVに変化した。1nmより深い深度において、ニッケルの結合エネルギーはほぼ一定であった。
【0016】
1nmの深度における結合エネルギーの値852.8eVは、ニッケル(Ni)の結合エネルギーに対応するが、最表面における結合エネルギーの値857.1eVは、酸化ニッケル(Ni23)の結合エネルギーに対応する。したがって、パラジウム―ニッケル合金からなる薄膜の最表面は、酸化していたことが示された。図7に示すように、パラジウム―ニッケル合金からなる薄膜31の最表面が酸化していると、ガス中の水素分子41が、薄膜31の表面で酸化ニッケルと反応し、水素原子42が薄膜31内部に過度に浸透し得ない。そのため、薄膜31の弾性率に変化が生じ得ない。
【0017】
これに対し、パラジウムとプラチナとの質量比が7:3であるパラジウム―プラチナ合金からなる薄膜を、X線光電子分析装置で分析したところ、図8に示すように、プラチナの結合エネルギーも、深さ方向においてほぼ一定であった。したがって、パラジウム―プラチナ合金からなる薄膜の最表面は、酸化しないことが示された。パラジウム―プラチナ合金からなる薄膜の最表面は酸化しないため、薄膜の最表面で解離した水素原子が薄膜の内部に浸透し得る。そのため、薄膜の弾性率を変化させ得る。
【0018】
図1及び図2に示すガス感応部30の材料にパラジウム―ニッケル合金を用いた場合、図9に示すように、空気中の水素濃度が約0.3%未満となると、減衰率の差Δαを測定することが困難であった。これに対し、図1及び図2に示すガス感応部30の材料にパラジウム―プラチナ合金を用いた場合、図9に示すように、空気中の水素濃度が約0.03%に低下するまで減衰率の差Δαを測定することが可能であった。なお、図9に示すガス感応部30の材料にパラジウム―プラチナ合金を用いた場合において、パラジウムとプラチナとの質量比は90:10であり、ガス感応部30の膜厚は40nmであった。
【0019】
よって、図1及び図2に示す第1の実施の形態に係る水素ガスセンサは、ガス感応部30の材料にパラジウム―プラチナ合金を用いたことにより、従来の水素センサと比較して、空気中でもより低濃度の水素を検出することが可能となる。なお、パラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部30の全質量に対するプラチナの好ましい含有量は15%乃至30%である。プラチナの含有量が15%未満となると、ガス感応部30の相変態が生じやすくなる傾向にある。プラチナの含有量が多くなると、ガス感応部30の水素の吸着能が低下する傾向にある。
【0020】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る水素ガスセンサは、図10に示すように、板状の圧電体11と、圧電体11の表面の一部に配置されたパラジウム―プラチナ合金からなる薄膜状のガス感応部32と、ガス感応部32を挟むように圧電体11上に配置された第1の電極21及び第2の電極22と、を備える。第1の電極21に電気信号が与えられると、圧電効果によって圧電体11が振動し、表面弾性波が板状の圧電体11上を伝搬し、圧電体11表面に配置されたガス感応部32を通過する。第2の電極22は、表面弾性波を受信し、表面弾性波の振幅強度を反映する電圧を有する電気信号を発生させる。
【0021】
第2の電極22が受信する表面弾性波の振幅強度は、ガス感応部32に接するガスの水素濃度に依存するガス感応部32の弾性率の変化に応じて変化する。第2の電極22は、ガス感応部32の物性の変化を検出する検出部として機能する。ガス感応部32に接するガスが水素を含まない場合の表面弾性波の振幅強度と、ガス感応部32に接するガスが水素を含む場合の表面弾性波の振幅強度との差に基づいて、ガス感応部32に接するガスの水素濃度を測定することが可能となる。また、ガス感応部32はパラジウム―プラチナ合金からなるため、酸化されにくい。そのため、第2の実施の形態に係る水素ガスセンサも、空気中で低濃度の水素を検出することが可能である。
【0022】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る水素ガスセンサは、図11に示すように、絶縁体101上に配置された、パラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部33、導線62、63を介してガス感応部33に一定の電圧を印加する電源61、及び導線63に流れる電流を検出する電流計23を備える。
【0023】
ガス感応部33に接するガスの水素濃度が高くなると、ガス感応部33の電気抵抗が高くなる。電流計23は、ガス感応部33の物性としての電気抵抗の変化を検出する検出部として機能する。ガス感応部33の電気抵抗の変化から、ガス感応部33に接するガスの水素濃度を算出することが可能となる。また、ガス感応部33はパラジウム―プラチナ合金からなるため、酸化されにくい。そのため、第3の実施の形態に係る水素ガスセンサも、空気中で低濃度の水素を検出することが可能である。なお、ガス感応部33に一定の電流値の電流を流して、ガス感応部33に加わる電圧の変化から、ガス感応部33に接するガスの水素濃度を算出してもよい。
【0024】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る水素ガスセンサは、図12に示すように、抵抗器R1、R2、R3とともにブリッジ状に配置された、パラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部34と、ガス感応部34及び抵抗器R1、R2、R3からなるブリッジ回路に導線65、66を介して一定の電圧を印加する電源64と、を備える。抵抗器R1、R2、R3のそれぞれの抵抗値は固定されており、既知である。抵抗器R1と抵抗器R2は直列に接続されている。また、ガス感応部34と抵抗器R3は直列に接続されている。抵抗器R1とガス感応部34との接続ノードに、導線65が接続されている。さらに、抵抗器R2と抵抗器R3との接続ノードに、導線66が接続されている。
【0025】
ガス感応部34は、チャンバ70に格納されている。チャンバ70には、水素濃度の測定対象となるガスが導入される。さらに、水素ガスセンサは、ガス感応部34と抵抗器R3との接続ノードと、抵抗器R1と抵抗器R2との接続ノードとの間に配置された電流計24を備える。チャンバ70に導入されるガスの水素濃度が高くなると、ガスによる熱通過率が大きくなる。この場合、ガス感応部34からの放熱量が大きくなるため、ガス感応部34の電気抵抗が低くなる。ここで、抵抗器R1、R2、R3のそれぞれの抵抗値が固定であり、既知であるため、電流計24で測定される電流値からガス感応部34の電気抵抗を測定することが可能である。そのため、ガス感応部34の電気抵抗の変化から、チャンバ70に導入されたガスの水素濃度を算出することが可能となる。また、ガス感応部34はパラジウム―プラチナ合金からなるため、酸化されにくく、第4の実施の形態に係る水素ガスセンサも、空気中で低濃度の水素を検出することが可能である。
【0026】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る水素ガスセンサは、図13に示すように、半導体基板170、半導体基板170表面近傍内部に設けられた素子分離絶縁部160、半導体基板170の素子分離絶縁部160に囲まれた領域に設けられたpウェル182、pウェル182上に配置されたゲート絶縁膜164、ゲート絶縁膜164上に配置されたパラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部としてのゲート電極132、pウェル182の表面近傍内部にゲート電極132を中心にして対に配置された第1のn+型拡散領域112及び第2のn+型拡散領域122を備えるn型チャネルトランジスタである。さらに第5の実施の形態に係る水素ガスセンサは、第1のn+型拡散領域112と第2のn+型拡散領域122との間に流れる電流を測定するための電流計124を備える。
【0027】
ゲート電極132に水素が吸着すると、pウェル182に形成される空間電荷層(空乏層)の静電容量が変化する。そのため、ゲート電極132に吸着される水素に依存して、第1のn+型拡散領域112と第2のn+型拡散領域122との間に流れる電流が変化する。よって、電流計124で測定される電流値に基づいて、ガス感応部としてのゲート電極132に接するガスの水素濃度を算出することが可能となる。また、ガス感応部としてのゲート電極132はパラジウム―プラチナ合金からなるため、酸化されにくく、第5の実施の形態に係る水素ガスセンサも、空気中で低濃度の水素を検出することが可能である。
【0028】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係る酸素濃度センサは、図14に示すように、パラジウム―プラチナ合金からなる第1のガス感応部130と、第1のガス感応部130に接するガスの水素濃度に依存する第1のガス感応部130の第1の物性の変化を検出する第1の検出部としての第1の電極120と、を含む第1の検出素子201を備える。さらに酸素濃度センサは、パラジウム―ニッケル合金からなる第2のガス感応部230と、第2のガス感応部230に接するガスの水素濃度に依存する第2のガス感応部230の第2の物性の変化を検出する第2の検出部としての第2の電極220と、を含む第2の検出素子202を備える。またさらに酸素濃度センサは、第1の検出素子201及び第2の検出素子202に電気的に接続され、第1の物性の変化と第2の物性の変化との差に基づいて、ガスの酸素濃度を算出する酸素濃度算出部301を備える。
【0029】
第1の検出素子201の第1のガス感応部130及び第1の電極120は、第1の圧電体110上に配置されている。第1の検出素子201に含まれる第1のガス感応部130、第1の電極120、及び第1の圧電体110は、図1に示す第1の実施の形態に係るガス感応部30、電極20、及び圧電体10とそれぞれ同様であるので、説明は省略する。
【0030】
図14に示す第2の検出素子202の第2のガス感応部230及び第2の電極220は、第2の圧電体210上に配置されている。第2の検出素子202に含まれる第2の電極220及び第2の圧電体210の構造及び材料は、図1に示す第1の実施の形態に係る電極20及び圧電体10の構造及び材料とそれぞれ同様である。
【0031】
図14に示すパラジウム―プラチナ合金からなる第1のガス感応部130は酸化しない。そのため、第1のガス感応部130の物性は、ガスの酸素濃度に影響されない。これに対し、パラジウム−ニッケルからなる第2のガス感応部230は酸化する。そのため、第2のガス感応部230の物性は、ガスの酸素濃度に影響される。したがって、第1の検出素子201と第2の検出素子202とが同一のガスにさらされている場合、図15に示すように、第1の検出素子201を用いて測定される減衰率の差Δα1と、第2の検出素子202を用いて測定される減衰率の差Δα2との差分は、ガスの酸素濃度を反映する。
【0032】
図14に示す酸素濃度算出部301は、中央演算処理装置(CPU)300に含まれている。CPU300には、記憶装置401が電気的に接続されている。記憶装置401には、予め既知の酸素濃度のガスを用いて、第1の検出素子201で測定された減衰率の差Δα1及び第2の検出素子202で測定された減衰率の差Δα2の差分と、ガスの酸素濃度との関係が保存されている。
【0033】
酸素濃度算出部301は、酸素濃度が未知のガスに対して第1の検出素子201で測定された減衰率の差Δα1及び第2の検出素子202で測定された減衰率の差Δα2の差分と、記憶装置401に保存されている関係とに基づいて、第1の検出素子201と第2の検出素子202の雰囲気ガスのガスの酸素濃度を算出する。以上説明した第6の実施の形態に係る酸素濃度センサによれば、ガスに含まれる酸素の濃度を正確に測定することが可能となる。
【0034】
なお、第6の実施の形態において、第1の圧電体110及び第2の圧電体210のそれぞれが球状である例を説明した。しかし、第6の実施の形態に係る酸素濃度センサはこれに限定されない。圧電体は板状であってもよく、また第1のガス感応部130及び第2のガス感応部230の物性として、電気抵抗等を測定してもよいことはもちろんである。
【0035】
なお、酸素濃度算出部301は、酸素濃度を算出すると同時に、第1の検出素子201で測定された減衰率の差Δα1に基づいて、水素濃度を算出してもよい。例えば、水素は、天然ガスを主成分とする都市ガスを水蒸気改質することによって製造されている。また、近年、水蒸気改質の効率を上げるために、天然ガスを部分酸化させて、水素と一酸化炭素とを製造する技術が提案されている。ここで、適正に部分酸化が行われているか観察するために、反応後の未燃焼酸素の濃度と発生した水素の濃度とを正確に測定することが望まれる。これに対し、第6の実施の形態に係る酸素濃度センサによれば、酸素濃度と、水素濃度とを、正確に測定することが可能となる。
【0036】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態に係る酸素濃度センサは、図16に示すように、酸素濃度に基づいて空気比を算出する空気比算出部302を備える以外は、第6の実施の形態に係る酸素濃度センサと同様である。第7の実施の形態に係る酸素濃度センサは、例えば水素燃焼後のガスを測定対象とする。ここで、下記(4)式に示すように、空気比λは、燃料としての水素含有ガスを完全燃焼させる際に必要とされる最低限の理論空気量Aと、実際に供給された空気量Bとの比で与えられる。
λ = B / A ・・・(4)
ここで、空気比が1より小さいと、空気量が不足するため不完全燃焼となる。しかし、空気比が大きいと、排ガス損失により熱効率が悪くなる傾向にある。そのため、空気比を1近傍に保つことにより、効率の高い燃焼を実現することが可能となる。
【0037】
空気比λと、水素燃焼後のガスの酸素濃度C(体積%)との関係は、下記(5)式で与えられる。
λ = 21 / (21 - C) ・・・(5)
空気比算出部302は、酸素濃度算出部301より酸素濃度を受信し、(5)式を用いて空気比を算出する。そのため、第7の実施の形態に係る酸素濃度センサによれば、燃焼後のガスの酸素濃度に基づいて、空気比を正確に測定することが可能となる。したがって、測定された空気比に基づいて空気の供給量を調節することにより、正確に燃焼条件を制御することが可能となる。
【0038】
なお、第7の実施の形態に係る酸素濃度センサの測定対象となるガスの燃焼時における空気比は、必ずしも1近傍が好ましいとは限らない場合もある。例えば、最適燃焼に近くなると燃焼温度が高くなって空気中に含まれる窒素が酸素と反応し、大気汚染等の原因となるサーマルNOxが生成する場合がある。そのため、サーマルNOxの生成を抑制するために、意図的に空気比の小さい燃料過多な状態でガスを燃焼させ後、未燃焼ガスを希釈して空気比の大きい状態で燃焼させる手法がとられる場合がある。このように、空気比を2段階に設定する燃焼工程の空気比の監視にも、第7の実施の形態に係る酸素濃度センサは使用可能である。
【0039】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図11に示す第3の実施の形態に係る水素ガスセンサにおいては、パラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部33の電気抵抗値の変化に基づいて、ガス感応部33に接するガスの水素濃度を算出する例を説明した。これに対し、パラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部の物性としての質量及び体積等の変化に基づいて、ガス感応部に接するガスの水素濃度を算出してもよいことはもちろんである。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0040】
10,11 圧電体
20,21,22 電極
23,24,124 電流計
30,32,33,34 ガス感応部
31 薄膜
41 水素分子
42 水素原子
51 パラジウム
61,64 電源
62,65,66 導線
70 チャンバ
101 絶縁体
112 第1のn+型拡散領域
122 第2のn+型拡散領域
132 ゲート電極
160 素子分離絶縁部
164 ゲート絶縁膜
170 半導体基板
182 pウェル
R1,R2,R3 抵抗器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム―プラチナ合金からなるガス感応部と、
前記ガス感応部に接するガスの水素濃度に依存する前記ガス感応部の物性の変化を検出する検出部と、
を備える水素ガスセンサ。
【請求項2】
前記ガス感応部が膜状である、請求項1に記載の水素ガスセンサ。
【請求項3】
前記ガス感応部を表面に保持する球状の圧電体を更に備える、請求項1又は2に記載の水素ガスセンサ。
【請求項4】
前記検出部が、前記圧電体の表面に配置された、表面波を発する櫛型電極である、請求項3に記載の水素ガスセンサ。
【請求項5】
前記ガス感応部を表面に保持する板状の圧電体を更に備える、請求項1又は2に記載の水素ガスセンサ。
【請求項6】
前記物性が電気抵抗である、請求項1に記載の水素ガスセンサ。
【請求項7】
パラジウム―プラチナ合金からなる第1のガス感応部と、
前記第1のガス感応部に接するガスの水素濃度に依存する前記第1のガス感応部の第1の物性の変化を検出する第1の検出部と、
パラジウム―ニッケル合金からなる第2のガス感応部と、
前記第2のガス感応部に接する前記ガスの水素濃度に依存する前記第2のガス感応部の第2の物性の変化を検出する第2の検出部と、
前記第1の物性の変化と前記第2の物性の変化との差に基づいて、前記ガスの酸素濃度を算出する酸素濃度算出部と、
を備える酸素濃度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−47874(P2011−47874A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198200(P2009−198200)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】