水膨潤性ポリマー
ポリエチレンオキサイド(例えば、PEG4000〜35,000)、二官能性化合物(例えば、ジアミンまたは1,10−デカンジオールのようなジオール)とジイソシアネートを反応させて水膨潤性線状ポリウレタンポリマーを作る。3成分の比は、一般に0.1〜1.5:1:1.1〜2.5である。ポリウレタンは水膨潤率が300〜1700%であり、ジクロロメタンのようなある種の有機溶媒に可溶である。本ポリマーは薬学的に活性な薬剤、特に高分子量の薬剤を担持することができ、ペッサリー等のような放出制御組成物を製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間に亘って薬学的活性剤を放出する放出制御組成物の製造に適した水膨潤性線状ポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある種の架橋ポリウレタンポリマーが欧州特許公報EP0016652(特許文献1)およびEP0016654(特許文献2)により公知である。これらの特許明細書には、1,500当量を超えるポリエチレンオキサイドを多官能性イソシアネートおよびこれと反応性があるアルカントリオールのような三官能性化合物と反応させることによって形成される架橋ポリウレタン類が記載されている。その結果得られる架橋ポリウレタンポリマー類は水膨潤性でハイドロゲルを形成するが、水に不溶性で水溶性の薬学的活性剤がこれに担持される。ある特定のポリウレタンポリマーは、ポリエチレングリコール8000、Desmodur(DMDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート)および1,2,6−ヘキサントリオールの反応産物であり、商業的にはプロスタグランジン類を腟へ搬送するのに使用されている。
【0003】
しかしながら、そのようなポリウレタンポリマー類は、実用上多くの欠点を有する。トリオール架橋剤の使用は、比較的再生可能な膨潤特性を持つポリマー類を供給する場合に有効であるが、膨潤率は典型例では200〜300%(すなわち、膨潤ポリマーの重量増加を乾燥ポリマー重量で除した値)である。薬学的活性剤は、乾燥ポリマーを薬学的活性剤の水溶液と接触させ、溶液をポリマーに吸収させハイドロゲルを形成させて担持される。次いで、膨潤ポリマーは再乾燥して望みの水含量とし使用に供される。通常の架橋ポリウレタンを用いた結果によると、膨潤の程度はハイドロゲル構造に吸収される薬学的活性剤の分子量を約3,000未満に制限する。他の欠点は、水溶性薬学的活性剤しか使用できないことである。結局、通常の架橋ポリウレタンポリマーは水および有機溶媒の両方に本質的に不溶性であるから、形成されたポリマーをフィルムや被覆物のような他の固体の形状に加工することは不可能である。
【0004】
【特許文献1】欧州特許公報EP0016652
【特許文献2】欧州特許公報EP0016654
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、架橋されておらず線状である、先行技術の架橋ポリウレタン類に見られる再生可能な望ましい膨潤特性を有する先述のタイプのポリウレタンポリマーを提供することにある。
【0006】
線状ポリウレタンポリマー類を生産する初期の仕事は、ポリマー類が不安定で、長時間に亘って反応し続けたので、不十分であることが判った。また、膨潤性は一定でなく、再生可能でもなく、時間と共に変化した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリオキシエチレングリコールをジオールまたは他の二官能性化合物および二官能性イソシアネートと反応させることによって好適な特性を持つ線状ポリウレタン類が得られるという発見に基づいている。
【0008】
詳しく言えば、本発明は下記(a)、(b)および(c):
(a)ポリエチレンオキサイド、
(b)二官能性化合物、
(c)二官能性イソシアネート、
を反応させることによって得られる水膨潤性線状ポリマーを提供する。
他の言い方では、本発明は、(a)、(b)および(c)由来の残基を結合させて形成される水膨潤性線状ポリウレタンを提供する。
【0009】
製造された線状ポリマーは、(a)、(b)および(c)の3成分の割合に依って水に高度に、例えば500%まで、800%までまたは1,000%以上までも膨潤して、高分子量の薬学的に活性な水溶性薬剤が、線状ポリマー由来の膨潤ハイドロゲル中に担持される。通常、本発明のポリマーは200%〜2000%、例えば250〜1700%の膨潤性がある。具体的な活性薬剤に依存するが、300〜1000、400〜800、1000〜1500、1100〜1300等の範囲の膨潤能が、本発明のポリウレタンを用いて達成される。本発明の線状ポリマーは、ジクロロメタンのようなある種の有機溶媒にも可溶であり、これにポリマーを溶解させてフィルム類または被覆物類に成形することができる。低水溶性であるが有機溶媒に可溶性である活性薬剤もポリマー中に担持される。
【0010】
本明細書中、“当量”は、数平均分子量をその化合物の官能度で除したものを意味するものとして使用される。
【0011】
ポリエチレンオキサイド類は、繰り返し単位(CH2CH2O)を含み、好都合には、反応性水素原子を含む化合物に対するエチレンオキサイドの段階的付加によって調製される。ポリエチレングリコール類は、エチレングリコールに対してエチレンオキサイドを付加して二官能性ポリエチレングリコール構造HO(CH2CH2O)nH(式中、nは、ポリエチレンオキサイドの分子量に依存して大きさの変わる整数である。)を製造して調製される。本発明で使用されるポリエチレンオキサイドは、一般に、線状ポリエチレングリコール、すなわち1,500〜20,000当量、特に3,000から10,000当量およびとりわけ4,000〜8,000当量のジオール類である。分子量は、通常4,000〜35,000である。
【0012】
二官能性化合物は、二官能性イソシアネートと反応性があり、典型的には二官能性アミンまたはジオールである。C5〜C20、好ましくはC8〜C15のジオール類が好ましい。例えば、デカンジオールが特に良好な結果を生ずることが見出された。ジオールは、飽和ジオールでも、不飽和ジオールでもよい。枝分かれしたジオール類を使用してもよいが、直鎖ジオール類が好ましい。一般に、2つのヒドロキシ基が両末端炭素原子上にある。例えば、好ましいジオール類としては、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールおよび1,16−ヘキサデカンジオール等が挙げられる。
【0013】
二官能性イソシアネートは、一般に、ジイソシアネート類、例えばジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のような通常のジイソシアネート類の一つである。
【0014】
成分比(a):(b):(c)(当量比)は、一般に0.1〜1.5:1:1.1〜2.5、特に0.2〜0.9:1:1.2〜1.9である。好ましくは0.5〜0.9:1:1.5〜1.9である。もちろん、当業者であれば合理的な実験を通じて望みの特性を与える成分の最適比を決定することができる。成分(c)の量は、一般に、(a)と(b)の合計量に等しく、正確な化学量論的組成を与える。
【0015】
上記当量範囲の上下限域で製造したポリマーは、必ずしも最適特性を与えない。例えば、多量の(a)ポリエチレンオキサイドは望ましくない水溶性ポリマーを生ずる。少量では、膨潤率が減少する。一般に、(a)ポリエチレンオキサイドの(b)二官能性化合物に対する比は、好ましくは0.1〜1.5:1、好ましくは0.2〜0.9:1である。
【0016】
ポリマーは、一般に、予め乾燥したポリエチレングリコールを約85℃の温度で二官能性化合物(例えばジオール)と溶融させることにより製造される。塩化第二鉄のような触媒が導入される。溶解した混合物を、真空乾燥し、過剰の水分を除去し、ジイソシアネートをこれに加える。反応混合物を、次いで、棒状体(billet)金型中に注ぎ、特定時間硬化させる。このように、ポリマーは最初は成形固体として形成される。しかしながら、本発明の線状ポリマー類はある種の有機溶媒に可溶性なので、ポリマーを溶解させ、得られた溶液を成形しフィルム類を形成することができる。溶液は、また粒子、タブレット等の被覆に使用して、その放出特性を調節してもよい。他の方法としては、溶液を、非溶媒中に注いで、ポリマー/活性微小粒子を沈殿させることができる。
【0017】
本発明は、また活性薬剤と線状ポリマーを含む放出制御組成物をも提供する。活性薬剤は、人間または動物に使用される薬学的活性剤である。またそれは持続放出特性が要求される他の任意の薬剤(例えば、アルジサイド(algicides)、肥料等)であってもよい。薬剤の固体の医薬製剤には、腟用の坐剤、ペッサリー、経口投与等の口腔挿入物等が含まれる。これらの剤形は一般に患者に投与されて、活性薬剤の搬送が起こり、次いで使いきったポリマーが取除かれるまで適当な場所に保持される。
【0018】
本発明の線状ポリマーは、通常の架橋ポリマーより膨潤度が高く、高分子量(最大、分子量3,000を超えて、例えば膨潤性に依存して最大10,000、最大50,000、最大100,000または最大200,000でも)の薬学的活性剤の摂取に適し、蛋白質およびペプチドの摂取および送達のために特に適している。一般に、活性薬剤の分子量は200〜20,000である。例えば、EP0016652に記載されているような広範囲の水溶性薬学的活性物質が組み込まれる。さらに、本発明の線状ポリマー類は、普通の溶媒にポリマーと共に溶解するものである限り、水溶性に乏しい薬学的活性剤を担持できる。得られた溶液は、次いで、任意の所望の固体製剤に成形することができる。
薬学的活性剤として特に重要性なものを以下に挙げる:
蛋白類、例えばアルファ、ベータおよびガンマインターフェロン、人成長ホルモン、ロイプロリド(leuprolide);ベンゾジアゼピン類例えばミダゾラム(midazolam);抗偏頭痛剤例えばトリプトファン類、エルゴタミン(ergotamine)およびその誘導体;抗感染剤例えばアゾール類、細菌性膣症、カンジダ(candida);および眼炎剤例えばラタノプロスト(latanoprost)。
【0019】
詳細な活性薬剤の例としては、H2受容体拮抗剤、アンチムスカリン、プロスタグランジン誘導体、プロトンポンプ阻害剤、アミノサリチレート、副腎皮質ステロイド、キレート剤、強心配糖体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、サイアザイド、利尿薬、炭酸脱水酵素阻害剤、降圧剤、抗がん剤、抗うつ薬、カルシウムチャネル遮断薬、鎮痛剤、麻薬拮抗薬、抗血小板薬、抗凝血薬、フィブリン分解剤、スタチン、アドレナリン受容体拮抗薬、ベータ遮断薬、抗ヒスタミン薬、呼吸刺激薬、粘液溶解薬、去痰薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、精神安定剤、統合失調症治療薬、三環系抗うつ薬、5HT1拮抗剤、麻酔剤、5HT、アゴニスト、制吐剤、抗痙攣薬、ドーパミン作動薬、抗生物質、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、抗糖尿病薬、インスリン、サイロトキシン、女性ホルモン、男性ホルモン、ホルモン、抗女性ホルモン、視床下部薬、下垂体ホルモン、下垂体後葉ホルモン拮抗薬、抗利尿ホルモン拮抗薬、ビスフォスフォネート、ドーパミン受容体刺激剤、アンドロゲン、非ステロイド系抗炎症剤、免疫抑制局部麻酔薬、鎮静剤、乾癬治療薬、銀塩、局所抗細菌薬、ワクチンが挙げられる。
【0020】
本発明は、また、成分(a)、(b)および(c)を反応させる線状ポリマーの製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下のセクションAおよびBに本発明の実施態様を述べるが、これらは単なる実施例であり、本発明はこれらによってなんら制限されるものではない。
【0022】
[新規な線状ポリマーについて実施した試験]
本発明による線状ポリマーの全バッチについての試験を以下のようにして行った。
【0023】
I.外観
空気気泡を含まないポリマーを使用する。
【0024】
II.膨潤率
10個の薄片(slices)の各々について重量を正確にはかり(小数3桁まで)、乾燥し重量を記録する(各スライス片にIDナンバーを付ける)。薄片を水浴中で25℃±1℃の脱イオン水300mLに24時間膨潤させる。薄片を取り出し紙タオルで吸取乾燥する。
各薄片を再秤量し、下記式により膨潤率(swelling factor)を算出する:
【数1】
【0025】
III.水溶性抽出可能物の含有率(%WSE)
乾燥減量測定用容器(LOD容器)を十分に洗浄し、オーブン中105℃で一夜乾燥し、デシケーター中で2時間冷却し、次いで重さを量る。小数4桁まで重量を記録する。10個の薄片の重量を正確に量り、250mLのコニカルフラスコに入れる。脱イオン水150mLを加え、穏やかに30秒間渦巻かせる。水をデカントし、これを繰り返す。洗浄したペッサリーに脱イオン水50mLを加える。室温で24時間、平底シェーカー上で振盪する。ブランク(水のみ)2つとサンプル(水+抽出物)2つを測定の都度準備する。ブランク測定を個別に行い、この2つの値の平均を求める。これを、総重量の補正値を得るために使用する。薄片から水をデカントし、約10mLの水(プラスチックスポイトを使用)をミリポアフィルター(1.2μm)を通過させて予め重さを量ったLOD容器(ロッド容器)中に入れ、再度重量を量る。105℃のオーブンに入れ、サンプルを蒸発、乾燥させる(18時間/一夜)。オーブンから取り出し、デシケーター中で2時間冷却し、重量を量る。
計算(重量はすべてグラム)
【0026】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0027】
IV.結晶化度
薄片を少量切り取り、50μLアルミニウム製パン(pan)内に密封する。参照基準として同一寸法の空の密封されたパンを準備する。パン(複数)を、それぞれサンプル内および参照ホールダー内に置いて温度プログラムを実行する。データ装置を使用して閾値温度およびエンタルピーを計算する。結晶化度は、100%結晶性ポリエチレンオキサイドの溶解エンタルピーに対するサンプルの溶解エンタルピーの比率に等しく、エンタルピーはジュール(joules)/gで表現される。
【数6】
【0028】
V.72時間膨潤率
【0029】
VI.144時間膨潤率
これらの膨潤率試験は、標準的な膨潤率試験として遂行されたが、総インキュベート時間は24時間から72時間かまたは144時間に増加された。
【0030】
さらに選択的なテストとして次のものが挙げられる。
VII.長時間膨潤率
各ポリマーバッチの3個の薄片をテストしたところで、これらを水に浸し、24時間(10)にわたる時間間隔で重量を量った。次いで、これらの重量から、膨潤率を算出した。
【0031】
VIII.安定性テスト
サンプルの安定性テストを4週間にわたって40℃で行った。1、2および4週間の指定時間間隔で膨潤率(24時間)を算出し、ポリマー安定性の目安として使用した。
【0032】
IX.異種溶媒への溶解性
テストした各バッチのポリマーの3薄片を、各溶媒用の別個のガラス瓶(ヴァイアル)に置いた。各バッチで異なった薄片について、薄片全部または切断した薄片を用い、各ヴァイアルに約10MLの溶媒を加えて2度テストした。溶媒として、アセトン、ジクロロメタン、エタノールおよびメタノールを用いた。
【0033】
X.水溶性テスト
各バッチ毎にテストした10個の薄片をコニカルフラスコ中に置き、約300mLの脱イオン水を加えた。このフラスコを平底シェーカー上に7日間置いた。
【0034】
[セクションA]
A1.ポリマーの製造
PEG:DD:DMDIを種々の化学量論的な成分比率として新しいポリマーを製造した。成分の比率を変えることによりポリマー特性を変化させた。PEGはポリエチレングリコール、DDはデカン−1,10−ジオール、DMDIはジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネートを表す。
【0035】
【表1】
PEGおよびDDを丸底フラスコに量り込み、85℃の温度で一夜溶解させた。
【0036】
必要量より過剰な塩化第二鉄(FeCl3)をスパーテルを用いて量り取り、風袋を計った200mLビーカー中に入れた。これを、前工程で得た溶融PEG/DDを用いて100gとした。このPEG/DD/FeCl3混合物を激しく撹拌し、オーブン中で85℃にて必要な状態に保たれるように撹拌した。
【0037】
残留する溶融PEG/DDを、95℃で1時間半真空乾燥し、過剰の湿分を除いた。PEG/DDの湿分含水量を、カールフィッシャー容積滴定法を使用し、水分規格を0.05%以下にセットし分析した。次に、PEG/DD/FeCl3混合物80gを2Lのジョッキ(取っ手付きの瓶)に量り入れ、正確なFeCl3の重量を確保した。次いで、PEG/DD/FeCl3混合物中に既に存在する80gを考慮に入れて必要なPEG/DD量を2Lのジョッキに加えて、これをオーブンに戻し有毒ガス排出棚(fume cupboad)に装置をセットした。
【0038】
427rpmのミキサーセットを使用し、2Lジョッキの内容物を150秒間撹拌し、DMDIを最初の30秒間に加えた。
次いで、この最終的混合物を2Lジョッキから棒状体金型中に注ぎ、95℃のオーブン中に置き指定時間(10〜30時間)硬化させた。この後、オーブンのスイッチを止め、棒状体を周囲温度まで放冷した。
次いで、ポリマーを型から外し、得られたポリマーをスライスし平板とした。
【0039】
A2.ポリマー特性
(a)新ポリマーの特性
製造バッチの新ポリマーの特性を表2〜5にまとめた。
【0040】
【表2】
【0041】
PEG:DD:DMDI(比)=1:1:2の新ポリマーは、水溶性抽出可能物テストの間にその本来の姿を失うことが見出され、これを確認するためにこの成分比率でさらに水溶性テストを行った。これらのポリマーは部分的に水溶性であり、不適当であることが明らかとなった。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
(b)長時間膨潤率
【表6】
【0046】
(c)長時間膨潤率を図1および図2に示す。
図1は2つの新ポリマー(FX02141およびFX02144)の長時間膨潤率を原料ポリマー(FX02139)と比較して示し、図2は3つの新ポリマーの長時間膨潤率を示す。
【0047】
(d)線状ポリマーの安定性
【表7】
【0048】
(g)線状ポリマーの溶解性テスト
【表8】
【0049】
【表9】
【0050】
A3.放出制御組成物
溶出テスト
液体媒体を含む容器中に置かれた製剤は、処方で意図された方法で薬剤を放出する。溶出法として知られているこのプロセスは、体内における放出メカニズムのイン・ビトロマーカーとして使用することができる。サンプリングを数時間にわたる規則的間隔で行い、サンプルの薬剤量を分光光度計かHPLCによって分析する。データは、通常、時間に対する標識内容物の放出量として表わされる。
【0051】
(i)ピロカルピン
ポテンシー(潜在力)
10ユニットを、移動相500mL中に、膨潤させ、冷浸し、定量的に抽出する。次いで、HPLCによって参照標準と比較してピロカルピンを分析する。分光光度計によってUVを検出する。この方法でピロカルピンおよびその主要な分解産物、ピロカルピン酸、イソピロカルピンおよびイソピロカルピン酸を検出することができる。この方法はピロカルピンについてのヨーロッパ薬局方に収載の方法に基づいている。
【0052】
溶出
ユニットからのピロカルピンのイン・ビトロ放出を、USPパドル(paddle)法によって50rpm、37℃で行う。放出されるピロカルピンを、ポテンシー(潜在力)の分析と同様にしてHPLCにより分析する。
【0053】
担持
ブランクポリマー薄片を精製水中に置き、約4℃でおよそ16〜20時間撹拌する。次いで水をデカントする。水で膨潤したポリマー薄片を、エタノールと水との溶液中に置き、約4℃でおよそ6〜8時間撹拌する。次いで、その薄片を乾燥する。次いで、ピロカルピンを水に溶解し乾燥ポリマー薄片に加える。薄片および薬剤担持溶液を、約4℃でおよそ16〜20時間撹拌し、薬剤を取り込ませる。投薬時間経過後、残りの薬剤溶液をデカントし、膨潤ポリマー薄片を18〜28時間乾燥する。
【0054】
ポリマーバッチFX02144を精製し(FX02150)、次いで、ピロカルピンを担持した(FX02151)。
図3は、線状ポリマーFX02151の時間に対する放出ピロカルピン率を、原料ポリマーFX01234およびFX01194と比較して標準化して示したグラフである。
【0055】
(ii)PGE2(ジノプロストン)の担持
ポテンシー(潜在力)
10ユニットを500mLの移動相中に膨潤させ、冷浸し、定量的に抽出する。次いで、HPLCによって参照標準と比較してジノプロストンを分析する。分光光度計によってUVを検出する。この方法でジノプロストンおよびその主要な分解産物、PGA2、8−イソPGE2および15ケト−PGE2を検出することができる。この方法はジノプロストンについてのヨーロッパ薬局方に収載の方法に基づいている。
【0056】
溶出
ユニットからのジノプロストンのインビトロ放出を、USPパドル(paddle)法によって50rpm、37℃で行う。放出されるジノプロストンを、ポテンシー(潜在力)の分析と同様にしてHPLCにより分析する。
【0057】
精製および担持
ブランクポリマー薄片を精製水中に置き、約4℃で約6〜8時間撹拌する。次いで水をデカントする。膨潤薄片を再び精製水中に置き、約4℃でおよそ16〜20時間撹拌する。次いで水をデカントする。水で膨潤したポリマー薄片を、エタノールと水との溶液中に置き、約4℃でおよそ6〜8時間撹拌する。ジノプロストン溶液を、適切な量のジノプロストンをエタノールに溶解させて作成する。得られた溶液を水およびエタノールに加える。これにより得られた薬剤担持溶液を、次いで、膨潤ポリマー薄片に加えて、25%(w/w)エタノール:水混合物を得る。薄片および薬剤担持溶液を、約4℃で約16〜20時間撹拌し、薬剤を取り込ませる。投薬時間経過後、残存する薬剤溶液をデカントし、膨潤ポリマー薄片を18〜28時間乾燥する。
【0058】
プロスタグランジンE2を、同様のプロセスによって、架橋ポリマー(FX02139、担持FX02159)バッチおよび線状ポリマー(FX02144、担持FX02157)バッチに担持させた。このとき、薄片の厚さは共に0.6mmであった。測定された潜在力は、それぞれ9.4mg(FX02159、コントロール)および9.7mg(FX02157)だった。
図4は、架橋ポリマーおよび線状新ポリマーのPGE2放出特性を示す。
【0059】
A4.フィルムの製造
フィルムを製造する最初の実験では、それぞれ1、2、3、4、5、および8個の薄片のポリマーを含む6つのガラス瓶をセットした。ポリマーバッチとしてFX02141を使用した。各ガラス瓶に、約10mLのジクロロメタンを加えた。全てのガラス瓶をポリマーが溶解するまで超音波処理した。得られた溶液を時計皿(直径20cm)上に注ぎ、覆いを取って有毒ガス排出棚で乾燥させた。
【0060】
更なるフィルム開発作業では、ポリマーおよび溶媒を適切なガラス容器中に量り込み、次いでそれを密封し、超音波処理してポリマーを溶解させた。あるフィルムは前のように時計皿上に注がれ、一方、他のものはペトリ皿(直径8cm)に注入した。フィルムの乾燥を制御するため、注入溶液を1Lのガラスビーカーで覆った。
【0061】
また、ドクター・ブレードを使用して、溶液を有毒ガス排出棚中のガラスプレート上に注ぎ、プレートの長さ方向に広げてフィルムを製造した。
【0062】
【表10】
【0063】
5個の薄片のポリマーを用いて溶媒中で作成したフィルムをプラスチックペトリ皿の脱イオン水中に膨潤させた。膨潤した形態のフィルムは強度の強いことが見出された。フィルムを時計皿上に置き乾燥させた。乾燥すると、フィルムはその形および強度を取り戻した。
【0064】
【表11】
【0065】
ヴァイアル瓶1および2で作ったフィルムの一部をカットし、脱イオン水が入ったヴァイアル瓶中に置き、そのフィルムが担持した染料を放出できるかどうか測定した。
【0066】
【表12】
【0067】
ヴァイアル瓶CおよびEのポリマーは直ちに溶解し始めたが、ヴァイアル瓶Aはそれより遅かった。これらのヴァイアル瓶からの溶液は、有毒ガス排出棚で別のガラスペトリ皿中に注ぎ、各々1リットルのビーカーで覆った。それらを乾燥するまで放置した。ヴァイアル瓶cの溶液がヴァイアル瓶aおよびeのそれより速く乾燥した。
【0068】
【表13】
【0069】
4つのすべてのガラス容器(duran製)の溶液を、有毒ガス排出棚で別個のガラスペトリ皿に注入した。
容器1および3は1リットルのガラスビーカーで覆い、容器2および4は覆いをせずに放置した。
容器1および3のフィルムは粗い触感を有するが、容器2および4のフィルムは滑らかである。容器2のフィルムは1側面がより粗い斑点部(patch)を有している。
容器1〜4で製造したすべてのフィルムは強度が対等で、どれも脆くはなかった。
【0070】
2枚のフィルムをドクター・ブレードを使用して製造した。使用した両ポリマーをDCM(約5% w/w)に溶解させて溶液とし、両溶液を同一条件下で同一のガラス皿上に注入した。
ポリマーFX02144を用いて製造したフィルムは脆く、貯蔵時に分解したが、FX02158(デモンストレーションのためブロモフェノールブルーを担持させたもの)を用いて製造したフィルムは無傷のままだった。
【0071】
ポリマーフィルムからの薬剤の放出に利用するため、長時間膨潤率を求めた。これを、参照としてフィルムの製造で使用したのと同一バッチのポリマー薄片の長時間膨潤率を用いてグラフに示した。結果を図5に示す。
使用したフィルム部分の平均重量は0.0272gであり、ポリマー薄片(FX02141)の平均重量は0.1381gであった。
【0072】
A5.検討
a.外観
外観テストにより、新線状ポリマーの棒片(billets)は既知の架橋ポリマー棒片と比較して色が僅かに暗いことが観察された。これは両者のFeCl3含量を比較することによって説明された。既知の架橋ポリマーはPEG中にFeCl3を0.01%(w/w)含み、線状ポリマーはFeCl3をPEG中に0.0266%(w/w)有していることが算出された。
【0073】
b.硬化時間
先の線状ポリマーは硬化時間20時間で製造したが、バッチFX02140およびFX02141は硬化時間10時間で製造した。
同一成分比率で、硬化時間[FX02140(硬化時間10時間)およびX02143(硬化時間20時間)]の異なる2つのバッチを比較すると、硬化時間10時間では膨潤率テストでRSDが低く、水溶性抽出可能物率が低くなり、より有望な結果が得られた。その結果、次のバッチFX02144、FX02148およびFX02158について硬化時間10時間を採用した。
【0074】
しかし、バッチFX02141、FX02149およびFX02161を使用し、それぞれ10、20および30時間の硬化時間で、硬化時間の影響を更に調べた。この3つのバッチの結果を比較すると、結晶化度に相関関係がないこと、WSE%は硬化時間が増加するにつれて減少し、FX02144の膨潤率は02161およびFX02149の膨潤(同一である)より約20%少ないことが認められた。膨潤率のRSDが減少すると硬化時間は増加する。
【0075】
c.成分比率
PEG:DD:DMDI(比)=0.25:1:1.25で製造したポリマーは、架橋されたポリマーと同一特性を有し、全て既知の架橋ポリマーの仕様の範囲内の結果を示した。
本発明による線状ポリマーはこれら仕様に合い、結果に再現性がある。さらに線状ポリマーはある種の溶媒には可溶性であるが、既知の架橋ポリマーは不溶性である。
【0076】
およそ300%の膨潤率を有する既知の架橋ポリマーは、ペプチドおよび蛋白質のような高分子量の薬剤を担持することができない。
これに対して、本発明の線状ポリマーFX02158(PEG:DD:DMDI=0.7:1:1.7)は、730%の膨潤率を有し、水に不溶性であった。
【0077】
d.膨潤特性
PEG:DDの比率が増加するにつれて、24時間膨潤率もまた増加する。既知の架橋ポリマーについて受け入れられる膨潤率テストは24時間である。これを本発明によるポリマーでは72および144時間まで延長してポリマー薄片の膨潤が最高に達するのに必要な時間を確認した。
【0078】
PEG:DDの比が高いと、低いPEG:DD比率を有するポリマーに比較して、24時間と144時間の間の差がより大きくなって、膨潤率が増加することが認められた。24時間から144時間で、FX02141(PEG:DD=0.25:1)の膨潤率の増加は3%であったが、FX02158(PEG:DD=0.7:1)では13%増加した。
【0079】
PEG:DDの比率の高いポリマーは、24時間までにはその膨潤率は最高に達しなかった。これは長時間膨潤率曲線によって確認される(図2)。PEG:DD(比)=0.25:1のポリマー薄片は、およそ5時間でそれらの膨潤が最高に達し、このとき曲線は横ばいになるが、より高いPEG:DD(比)=0.7:1のポリマー薄片は、膨潤率が144時間でなお増加しており、この点で勾配が正の曲線であることが認められた。
【0080】
e.安定性
40℃における安定性テストをFX02150(精製したFX02144)を用いて4週間にわたり行った。その結果は、膨潤率が時間と共に高くなり、40℃における架橋ポリマーの結果に匹敵することを示した。
【0081】
f.薬剤放出
ポリマーバッチFX02144(PEG:DD:DMDI 0.25:1:1.25)にピロカルピンおよびプロスタグランジンE2(PGE2)を担持させた。このポリマーは架橋ポリマーと同じ特性を有し、従って、この2つの異なったポリマーからの両薬剤の放出特性は同等である。
【0082】
ピロカルピンの放出特徴は、線状および架橋ポリマー間で同等であることが示された。これは、線状バッチの長時間膨潤率を、膨潤速度が両者で同じである架橋ポリマー(図1)と比較することによって確認された。
しかし、PGE2の放出は異なることが認められた。線状ポリマーは、薬剤を架橋ポリマーよりも遅く放出した。
【0083】
g.溶解性テスト
異なる成分比の4種類のポリマーを製造したが、これらのポリマーはどれもエタノールあるいはアセトンに溶けなかった。
FX02144はメタノールに不溶性で、テストした他のバッチはこの溶媒に溶解した。
テストしたバッチはすべてジクロロメタンに溶解した。
【0084】
h.フィルムの調製
初期の実験で、ポリマーと溶媒の有望な組合せは、DCM10mL中の4〜5個の薄片(約0.7gのポリマーに相当)であることが見出された。これをDCM30mL中の13個の薄片までスケールアップして、フィルムの製造はこの組合せを使用して同様のフィルムについて再生可能であることが示された。
【0085】
製造したフィルムを脱イオン水中で膨潤させた。膨潤した形態は強度と伸縮性があることが認められた。次いで、この膨潤フィルムを水から取り出し乾燥させた。乾燥するとフィルムはその形および強度を取り戻した。
他のフィルムについて、担持した染料を放出できるか否かを測定するテストを実施した。染料を担持したフィルムの一部を水中に沈めたたところ、水の色が時間と共に変わったことから、フィルムは担持した物質を放出する能力があることが分かった。
【0086】
ポリマーを種々の溶媒に溶解して製造したフィルムは、そのフィルムの総乾燥時間、最終フィルムの均一性、生地、および強さに影響を及ぼすことが見出された。さらに、フィルム乾燥に使用する技術が、均一性および生地の観点で、最終的な外観に影響を及ぼした。
【0087】
作成したポリマーフィルムの長時間膨潤率を求め、フィルムの作成に使用したポリマー薄片の長時間膨潤率と比較した。予想通り、フィルム部分は、ポリマー薄片より非常に速く最高の膨潤率に達したが、この理由はフィルム部分の厚さおよび平均重量がポリマー薄片より遥かに小さいからである。これは、ポリマーフィルムからの薬剤の放出速度の目安として使用できる。
【0088】
セクションB
B1:ポリマーの製造
種々のタイプのポリエチレングリコール類、ジオール類およびジイソシアネート類、およびこれらの化合物を種々の化学量論的比率で用いて、これらの化合物が新ポリマーの特性上に及ぼす影響を調べた。PEG4000、PEG8000、PEG12000およびPEG35000は、それぞれ分子量4000、8000、12000および35000のポリエチレングリコールであり;HDは1,6−ヘキサンジオール、DDは1,10−デカンジオール、DDDは1,12−ドデカンジオールであり、HDDは1,16−ヘキサデカンジオールである。DMDIはジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、HMDIは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0089】
バッチNo.BP03007、BP03014およびBP03015を除いて、ポリマーはセクションAと同じ重合方法で製造した。唯一の相違は、溶融PEGおよびジオールの混合物を30分間回転蒸発器(rotavapor)中で混合し、その後より均一な混合物を製造する触媒混合物を作るために100gを取り出したことである。
【0090】
PEG35000(バッチNo.BP03007およびBP03014)を重合させるため、重合反応器を撹拌タンク反応器(700mL)に変え、PEGの溶融粘度を減らすため重合温度を140℃に上げた。PEGは、真空下回転蒸発器中で50℃の温度で一夜乾燥した。PEG、ジオールおよび塩化第二鉄を撹拌下のタンクガラス反応器に供給した。混合物は140℃の油浴を使用して窒素下で2時間溶融させた。混合を30分間続け、その後ジイソシアネートを反応器に供給し、次いで5分間混合した。ポリマーを予備加熱した型(130℃)に注ぎ、オーブン中で95℃に10時間保った。この後、オーブンを停止、ポリマー棒を室温に放冷した。次いで、ポリマー棒を型から外し、スライスした。また、二段階重合方法を使用して、ポリマー構造を一層制御したもの(バッチNo.BP03015)を製造した。PEGは回転蒸発器中50℃にて一夜真空乾燥した。最初にジイソシアネートを撹拌タンク反応器に供給した。次いで、PEG約40gを塩化第二鉄と共にその頭部で反応容器に供給した。反応容器を95℃に加熱し、PEGを毎回約20g部使用して3時間かけて反応容器に供給した。反応容器温度が95℃に達したとき、撹拌(30rpm)を開始した。次いで、ジオールを反応容器に供給し、撹拌を60rpmに上げ、5分間撹拌した。ポリマーを予備加熱した型(95℃)に注ぎ、オーブン中で95℃に10時間保った。この後、オーブンを停止し、ポリマー棒を室温まで放冷した。次いで、ポリマー棒を型から外し、スライスした。
【0091】
B2 ポリマー特性
ポリエチレングリコール類、ジオール類およびジイソシアネート類の種類および比率のポリマー特性に及ぼす影響は表14〜18に見ることができる。
【0092】
【表14】
【0093】
【表15】
【0094】
【表16】
【0095】
【表17】
【0096】
【表18】
【0097】
B3:放出制御組成物
線状ポリマー特性及び薬剤担持の実施例
線状ポリマーバッチ(03030、03032および03033)と、架橋ポリマーバッチ03003(ポリマー(比)PEG8000:ヘキサントリオール:DMDI=1.0:1.2:2.8)とを比較のためにスライスし、10mm×30mm×l.Ommの大きさのポリマー薄片とした。ポリマー薄片を、25℃で精製水および/または精製水/エタノールで3回洗浄することにより精製した。次に、すべての薄片を真空乾燥した。
【0098】
5つの薬剤、即ちクリンダマイシン燐酸塩、オキシトシン、テルブタリン硫酸塩、ミソプロストルおよびプロゲステロンを種々のポリマーに担持させた。これらの薬剤は、高水溶性、低水溶性、ペプチド類、ステロイド類および低分子量分子類のような特徴をカバーするように選択した。
【0099】
各薬剤の適当な溶液にポリマー薄片を適切な時間浸漬し次いで溶液から取り出し乾燥することによって、薬剤をポリマーに担持させた。
表19は担持パラメーターおよび条件の詳細である。
【0100】
【表19】
【0101】
薬剤担持ポリマーは、USP法XXIII,器具2、37℃、パドル速度50RPMに従って、イン・ビトロ薬剤放出分析に供された。薬剤放出は、紫外分光か高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって適切に分析された。種々の溶出パラメーターまたは設定を表20にまとめて示す。
【0102】
【表20】
【0103】
図6〜図10に、種々のポリマーからの各薬剤の平均溶出特性を示す。
薬剤の種類による線状ポリマーバッチA03030の平均溶出特性に及ぼす影響を図11に示す。
各溶出特性の薬剤放出速度(κ値)は、経過時間の平方根に対してプロットした薬剤放出%のグラフの傾きから求めた。
薬剤放出%と時間の平方根との間の一次関係は、全てR2>0.95%の相関がある。
種々のペッサリー類からの薬剤の溶出特性で得られた薬剤放出速度κを表21に示す。
【0104】
【表21】
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】原料ポリマー(FX02139)と比較した2つの新ポリマー(FX02141およびFX02144)の長時間膨潤率(Swelling/%)を示す。
【図2】3つの新ポリマーの長時間膨潤率(Swelling/%)を示す。
【図3】線状ポリマーFX02151のピロカルピン放出率(Release/%)を原料ポリマーFX01234およびFX01194のそれと標準化して比較したグラフである。
【図4】架橋ポリマー(Cross linked Polymer)および新線状ポリマー(Linear Polymer)のPGE2放出特性(Release/%)を示す。
【図5】FX02141(Polymer)と比較したポリマーフィルム(Polymer Film)(表11、ヴァイアル瓶4)の長時間膨潤率(Swelling/%)を示す。
【図6】種々のペッサリーからのクリンダマイシン燐酸塩の平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図7】種々のペッサリーからのオキシトシンの平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図8】種々のペッサリーからのテルブタリン硫酸塩の平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図9】種々のペッサリーからのミソプロストルの平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図10】種々のペッサリーからのプロゲステロンの平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図11】線状ポリマーA03030ペッサリーからの種々の薬剤の平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間に亘って薬学的活性剤を放出する放出制御組成物の製造に適した水膨潤性線状ポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある種の架橋ポリウレタンポリマーが欧州特許公報EP0016652(特許文献1)およびEP0016654(特許文献2)により公知である。これらの特許明細書には、1,500当量を超えるポリエチレンオキサイドを多官能性イソシアネートおよびこれと反応性があるアルカントリオールのような三官能性化合物と反応させることによって形成される架橋ポリウレタン類が記載されている。その結果得られる架橋ポリウレタンポリマー類は水膨潤性でハイドロゲルを形成するが、水に不溶性で水溶性の薬学的活性剤がこれに担持される。ある特定のポリウレタンポリマーは、ポリエチレングリコール8000、Desmodur(DMDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート)および1,2,6−ヘキサントリオールの反応産物であり、商業的にはプロスタグランジン類を腟へ搬送するのに使用されている。
【0003】
しかしながら、そのようなポリウレタンポリマー類は、実用上多くの欠点を有する。トリオール架橋剤の使用は、比較的再生可能な膨潤特性を持つポリマー類を供給する場合に有効であるが、膨潤率は典型例では200〜300%(すなわち、膨潤ポリマーの重量増加を乾燥ポリマー重量で除した値)である。薬学的活性剤は、乾燥ポリマーを薬学的活性剤の水溶液と接触させ、溶液をポリマーに吸収させハイドロゲルを形成させて担持される。次いで、膨潤ポリマーは再乾燥して望みの水含量とし使用に供される。通常の架橋ポリウレタンを用いた結果によると、膨潤の程度はハイドロゲル構造に吸収される薬学的活性剤の分子量を約3,000未満に制限する。他の欠点は、水溶性薬学的活性剤しか使用できないことである。結局、通常の架橋ポリウレタンポリマーは水および有機溶媒の両方に本質的に不溶性であるから、形成されたポリマーをフィルムや被覆物のような他の固体の形状に加工することは不可能である。
【0004】
【特許文献1】欧州特許公報EP0016652
【特許文献2】欧州特許公報EP0016654
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、架橋されておらず線状である、先行技術の架橋ポリウレタン類に見られる再生可能な望ましい膨潤特性を有する先述のタイプのポリウレタンポリマーを提供することにある。
【0006】
線状ポリウレタンポリマー類を生産する初期の仕事は、ポリマー類が不安定で、長時間に亘って反応し続けたので、不十分であることが判った。また、膨潤性は一定でなく、再生可能でもなく、時間と共に変化した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリオキシエチレングリコールをジオールまたは他の二官能性化合物および二官能性イソシアネートと反応させることによって好適な特性を持つ線状ポリウレタン類が得られるという発見に基づいている。
【0008】
詳しく言えば、本発明は下記(a)、(b)および(c):
(a)ポリエチレンオキサイド、
(b)二官能性化合物、
(c)二官能性イソシアネート、
を反応させることによって得られる水膨潤性線状ポリマーを提供する。
他の言い方では、本発明は、(a)、(b)および(c)由来の残基を結合させて形成される水膨潤性線状ポリウレタンを提供する。
【0009】
製造された線状ポリマーは、(a)、(b)および(c)の3成分の割合に依って水に高度に、例えば500%まで、800%までまたは1,000%以上までも膨潤して、高分子量の薬学的に活性な水溶性薬剤が、線状ポリマー由来の膨潤ハイドロゲル中に担持される。通常、本発明のポリマーは200%〜2000%、例えば250〜1700%の膨潤性がある。具体的な活性薬剤に依存するが、300〜1000、400〜800、1000〜1500、1100〜1300等の範囲の膨潤能が、本発明のポリウレタンを用いて達成される。本発明の線状ポリマーは、ジクロロメタンのようなある種の有機溶媒にも可溶であり、これにポリマーを溶解させてフィルム類または被覆物類に成形することができる。低水溶性であるが有機溶媒に可溶性である活性薬剤もポリマー中に担持される。
【0010】
本明細書中、“当量”は、数平均分子量をその化合物の官能度で除したものを意味するものとして使用される。
【0011】
ポリエチレンオキサイド類は、繰り返し単位(CH2CH2O)を含み、好都合には、反応性水素原子を含む化合物に対するエチレンオキサイドの段階的付加によって調製される。ポリエチレングリコール類は、エチレングリコールに対してエチレンオキサイドを付加して二官能性ポリエチレングリコール構造HO(CH2CH2O)nH(式中、nは、ポリエチレンオキサイドの分子量に依存して大きさの変わる整数である。)を製造して調製される。本発明で使用されるポリエチレンオキサイドは、一般に、線状ポリエチレングリコール、すなわち1,500〜20,000当量、特に3,000から10,000当量およびとりわけ4,000〜8,000当量のジオール類である。分子量は、通常4,000〜35,000である。
【0012】
二官能性化合物は、二官能性イソシアネートと反応性があり、典型的には二官能性アミンまたはジオールである。C5〜C20、好ましくはC8〜C15のジオール類が好ましい。例えば、デカンジオールが特に良好な結果を生ずることが見出された。ジオールは、飽和ジオールでも、不飽和ジオールでもよい。枝分かれしたジオール類を使用してもよいが、直鎖ジオール類が好ましい。一般に、2つのヒドロキシ基が両末端炭素原子上にある。例えば、好ましいジオール類としては、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールおよび1,16−ヘキサデカンジオール等が挙げられる。
【0013】
二官能性イソシアネートは、一般に、ジイソシアネート類、例えばジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のような通常のジイソシアネート類の一つである。
【0014】
成分比(a):(b):(c)(当量比)は、一般に0.1〜1.5:1:1.1〜2.5、特に0.2〜0.9:1:1.2〜1.9である。好ましくは0.5〜0.9:1:1.5〜1.9である。もちろん、当業者であれば合理的な実験を通じて望みの特性を与える成分の最適比を決定することができる。成分(c)の量は、一般に、(a)と(b)の合計量に等しく、正確な化学量論的組成を与える。
【0015】
上記当量範囲の上下限域で製造したポリマーは、必ずしも最適特性を与えない。例えば、多量の(a)ポリエチレンオキサイドは望ましくない水溶性ポリマーを生ずる。少量では、膨潤率が減少する。一般に、(a)ポリエチレンオキサイドの(b)二官能性化合物に対する比は、好ましくは0.1〜1.5:1、好ましくは0.2〜0.9:1である。
【0016】
ポリマーは、一般に、予め乾燥したポリエチレングリコールを約85℃の温度で二官能性化合物(例えばジオール)と溶融させることにより製造される。塩化第二鉄のような触媒が導入される。溶解した混合物を、真空乾燥し、過剰の水分を除去し、ジイソシアネートをこれに加える。反応混合物を、次いで、棒状体(billet)金型中に注ぎ、特定時間硬化させる。このように、ポリマーは最初は成形固体として形成される。しかしながら、本発明の線状ポリマー類はある種の有機溶媒に可溶性なので、ポリマーを溶解させ、得られた溶液を成形しフィルム類を形成することができる。溶液は、また粒子、タブレット等の被覆に使用して、その放出特性を調節してもよい。他の方法としては、溶液を、非溶媒中に注いで、ポリマー/活性微小粒子を沈殿させることができる。
【0017】
本発明は、また活性薬剤と線状ポリマーを含む放出制御組成物をも提供する。活性薬剤は、人間または動物に使用される薬学的活性剤である。またそれは持続放出特性が要求される他の任意の薬剤(例えば、アルジサイド(algicides)、肥料等)であってもよい。薬剤の固体の医薬製剤には、腟用の坐剤、ペッサリー、経口投与等の口腔挿入物等が含まれる。これらの剤形は一般に患者に投与されて、活性薬剤の搬送が起こり、次いで使いきったポリマーが取除かれるまで適当な場所に保持される。
【0018】
本発明の線状ポリマーは、通常の架橋ポリマーより膨潤度が高く、高分子量(最大、分子量3,000を超えて、例えば膨潤性に依存して最大10,000、最大50,000、最大100,000または最大200,000でも)の薬学的活性剤の摂取に適し、蛋白質およびペプチドの摂取および送達のために特に適している。一般に、活性薬剤の分子量は200〜20,000である。例えば、EP0016652に記載されているような広範囲の水溶性薬学的活性物質が組み込まれる。さらに、本発明の線状ポリマー類は、普通の溶媒にポリマーと共に溶解するものである限り、水溶性に乏しい薬学的活性剤を担持できる。得られた溶液は、次いで、任意の所望の固体製剤に成形することができる。
薬学的活性剤として特に重要性なものを以下に挙げる:
蛋白類、例えばアルファ、ベータおよびガンマインターフェロン、人成長ホルモン、ロイプロリド(leuprolide);ベンゾジアゼピン類例えばミダゾラム(midazolam);抗偏頭痛剤例えばトリプトファン類、エルゴタミン(ergotamine)およびその誘導体;抗感染剤例えばアゾール類、細菌性膣症、カンジダ(candida);および眼炎剤例えばラタノプロスト(latanoprost)。
【0019】
詳細な活性薬剤の例としては、H2受容体拮抗剤、アンチムスカリン、プロスタグランジン誘導体、プロトンポンプ阻害剤、アミノサリチレート、副腎皮質ステロイド、キレート剤、強心配糖体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、サイアザイド、利尿薬、炭酸脱水酵素阻害剤、降圧剤、抗がん剤、抗うつ薬、カルシウムチャネル遮断薬、鎮痛剤、麻薬拮抗薬、抗血小板薬、抗凝血薬、フィブリン分解剤、スタチン、アドレナリン受容体拮抗薬、ベータ遮断薬、抗ヒスタミン薬、呼吸刺激薬、粘液溶解薬、去痰薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、精神安定剤、統合失調症治療薬、三環系抗うつ薬、5HT1拮抗剤、麻酔剤、5HT、アゴニスト、制吐剤、抗痙攣薬、ドーパミン作動薬、抗生物質、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、抗糖尿病薬、インスリン、サイロトキシン、女性ホルモン、男性ホルモン、ホルモン、抗女性ホルモン、視床下部薬、下垂体ホルモン、下垂体後葉ホルモン拮抗薬、抗利尿ホルモン拮抗薬、ビスフォスフォネート、ドーパミン受容体刺激剤、アンドロゲン、非ステロイド系抗炎症剤、免疫抑制局部麻酔薬、鎮静剤、乾癬治療薬、銀塩、局所抗細菌薬、ワクチンが挙げられる。
【0020】
本発明は、また、成分(a)、(b)および(c)を反応させる線状ポリマーの製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下のセクションAおよびBに本発明の実施態様を述べるが、これらは単なる実施例であり、本発明はこれらによってなんら制限されるものではない。
【0022】
[新規な線状ポリマーについて実施した試験]
本発明による線状ポリマーの全バッチについての試験を以下のようにして行った。
【0023】
I.外観
空気気泡を含まないポリマーを使用する。
【0024】
II.膨潤率
10個の薄片(slices)の各々について重量を正確にはかり(小数3桁まで)、乾燥し重量を記録する(各スライス片にIDナンバーを付ける)。薄片を水浴中で25℃±1℃の脱イオン水300mLに24時間膨潤させる。薄片を取り出し紙タオルで吸取乾燥する。
各薄片を再秤量し、下記式により膨潤率(swelling factor)を算出する:
【数1】
【0025】
III.水溶性抽出可能物の含有率(%WSE)
乾燥減量測定用容器(LOD容器)を十分に洗浄し、オーブン中105℃で一夜乾燥し、デシケーター中で2時間冷却し、次いで重さを量る。小数4桁まで重量を記録する。10個の薄片の重量を正確に量り、250mLのコニカルフラスコに入れる。脱イオン水150mLを加え、穏やかに30秒間渦巻かせる。水をデカントし、これを繰り返す。洗浄したペッサリーに脱イオン水50mLを加える。室温で24時間、平底シェーカー上で振盪する。ブランク(水のみ)2つとサンプル(水+抽出物)2つを測定の都度準備する。ブランク測定を個別に行い、この2つの値の平均を求める。これを、総重量の補正値を得るために使用する。薄片から水をデカントし、約10mLの水(プラスチックスポイトを使用)をミリポアフィルター(1.2μm)を通過させて予め重さを量ったLOD容器(ロッド容器)中に入れ、再度重量を量る。105℃のオーブンに入れ、サンプルを蒸発、乾燥させる(18時間/一夜)。オーブンから取り出し、デシケーター中で2時間冷却し、重量を量る。
計算(重量はすべてグラム)
【0026】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0027】
IV.結晶化度
薄片を少量切り取り、50μLアルミニウム製パン(pan)内に密封する。参照基準として同一寸法の空の密封されたパンを準備する。パン(複数)を、それぞれサンプル内および参照ホールダー内に置いて温度プログラムを実行する。データ装置を使用して閾値温度およびエンタルピーを計算する。結晶化度は、100%結晶性ポリエチレンオキサイドの溶解エンタルピーに対するサンプルの溶解エンタルピーの比率に等しく、エンタルピーはジュール(joules)/gで表現される。
【数6】
【0028】
V.72時間膨潤率
【0029】
VI.144時間膨潤率
これらの膨潤率試験は、標準的な膨潤率試験として遂行されたが、総インキュベート時間は24時間から72時間かまたは144時間に増加された。
【0030】
さらに選択的なテストとして次のものが挙げられる。
VII.長時間膨潤率
各ポリマーバッチの3個の薄片をテストしたところで、これらを水に浸し、24時間(10)にわたる時間間隔で重量を量った。次いで、これらの重量から、膨潤率を算出した。
【0031】
VIII.安定性テスト
サンプルの安定性テストを4週間にわたって40℃で行った。1、2および4週間の指定時間間隔で膨潤率(24時間)を算出し、ポリマー安定性の目安として使用した。
【0032】
IX.異種溶媒への溶解性
テストした各バッチのポリマーの3薄片を、各溶媒用の別個のガラス瓶(ヴァイアル)に置いた。各バッチで異なった薄片について、薄片全部または切断した薄片を用い、各ヴァイアルに約10MLの溶媒を加えて2度テストした。溶媒として、アセトン、ジクロロメタン、エタノールおよびメタノールを用いた。
【0033】
X.水溶性テスト
各バッチ毎にテストした10個の薄片をコニカルフラスコ中に置き、約300mLの脱イオン水を加えた。このフラスコを平底シェーカー上に7日間置いた。
【0034】
[セクションA]
A1.ポリマーの製造
PEG:DD:DMDIを種々の化学量論的な成分比率として新しいポリマーを製造した。成分の比率を変えることによりポリマー特性を変化させた。PEGはポリエチレングリコール、DDはデカン−1,10−ジオール、DMDIはジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネートを表す。
【0035】
【表1】
PEGおよびDDを丸底フラスコに量り込み、85℃の温度で一夜溶解させた。
【0036】
必要量より過剰な塩化第二鉄(FeCl3)をスパーテルを用いて量り取り、風袋を計った200mLビーカー中に入れた。これを、前工程で得た溶融PEG/DDを用いて100gとした。このPEG/DD/FeCl3混合物を激しく撹拌し、オーブン中で85℃にて必要な状態に保たれるように撹拌した。
【0037】
残留する溶融PEG/DDを、95℃で1時間半真空乾燥し、過剰の湿分を除いた。PEG/DDの湿分含水量を、カールフィッシャー容積滴定法を使用し、水分規格を0.05%以下にセットし分析した。次に、PEG/DD/FeCl3混合物80gを2Lのジョッキ(取っ手付きの瓶)に量り入れ、正確なFeCl3の重量を確保した。次いで、PEG/DD/FeCl3混合物中に既に存在する80gを考慮に入れて必要なPEG/DD量を2Lのジョッキに加えて、これをオーブンに戻し有毒ガス排出棚(fume cupboad)に装置をセットした。
【0038】
427rpmのミキサーセットを使用し、2Lジョッキの内容物を150秒間撹拌し、DMDIを最初の30秒間に加えた。
次いで、この最終的混合物を2Lジョッキから棒状体金型中に注ぎ、95℃のオーブン中に置き指定時間(10〜30時間)硬化させた。この後、オーブンのスイッチを止め、棒状体を周囲温度まで放冷した。
次いで、ポリマーを型から外し、得られたポリマーをスライスし平板とした。
【0039】
A2.ポリマー特性
(a)新ポリマーの特性
製造バッチの新ポリマーの特性を表2〜5にまとめた。
【0040】
【表2】
【0041】
PEG:DD:DMDI(比)=1:1:2の新ポリマーは、水溶性抽出可能物テストの間にその本来の姿を失うことが見出され、これを確認するためにこの成分比率でさらに水溶性テストを行った。これらのポリマーは部分的に水溶性であり、不適当であることが明らかとなった。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
(b)長時間膨潤率
【表6】
【0046】
(c)長時間膨潤率を図1および図2に示す。
図1は2つの新ポリマー(FX02141およびFX02144)の長時間膨潤率を原料ポリマー(FX02139)と比較して示し、図2は3つの新ポリマーの長時間膨潤率を示す。
【0047】
(d)線状ポリマーの安定性
【表7】
【0048】
(g)線状ポリマーの溶解性テスト
【表8】
【0049】
【表9】
【0050】
A3.放出制御組成物
溶出テスト
液体媒体を含む容器中に置かれた製剤は、処方で意図された方法で薬剤を放出する。溶出法として知られているこのプロセスは、体内における放出メカニズムのイン・ビトロマーカーとして使用することができる。サンプリングを数時間にわたる規則的間隔で行い、サンプルの薬剤量を分光光度計かHPLCによって分析する。データは、通常、時間に対する標識内容物の放出量として表わされる。
【0051】
(i)ピロカルピン
ポテンシー(潜在力)
10ユニットを、移動相500mL中に、膨潤させ、冷浸し、定量的に抽出する。次いで、HPLCによって参照標準と比較してピロカルピンを分析する。分光光度計によってUVを検出する。この方法でピロカルピンおよびその主要な分解産物、ピロカルピン酸、イソピロカルピンおよびイソピロカルピン酸を検出することができる。この方法はピロカルピンについてのヨーロッパ薬局方に収載の方法に基づいている。
【0052】
溶出
ユニットからのピロカルピンのイン・ビトロ放出を、USPパドル(paddle)法によって50rpm、37℃で行う。放出されるピロカルピンを、ポテンシー(潜在力)の分析と同様にしてHPLCにより分析する。
【0053】
担持
ブランクポリマー薄片を精製水中に置き、約4℃でおよそ16〜20時間撹拌する。次いで水をデカントする。水で膨潤したポリマー薄片を、エタノールと水との溶液中に置き、約4℃でおよそ6〜8時間撹拌する。次いで、その薄片を乾燥する。次いで、ピロカルピンを水に溶解し乾燥ポリマー薄片に加える。薄片および薬剤担持溶液を、約4℃でおよそ16〜20時間撹拌し、薬剤を取り込ませる。投薬時間経過後、残りの薬剤溶液をデカントし、膨潤ポリマー薄片を18〜28時間乾燥する。
【0054】
ポリマーバッチFX02144を精製し(FX02150)、次いで、ピロカルピンを担持した(FX02151)。
図3は、線状ポリマーFX02151の時間に対する放出ピロカルピン率を、原料ポリマーFX01234およびFX01194と比較して標準化して示したグラフである。
【0055】
(ii)PGE2(ジノプロストン)の担持
ポテンシー(潜在力)
10ユニットを500mLの移動相中に膨潤させ、冷浸し、定量的に抽出する。次いで、HPLCによって参照標準と比較してジノプロストンを分析する。分光光度計によってUVを検出する。この方法でジノプロストンおよびその主要な分解産物、PGA2、8−イソPGE2および15ケト−PGE2を検出することができる。この方法はジノプロストンについてのヨーロッパ薬局方に収載の方法に基づいている。
【0056】
溶出
ユニットからのジノプロストンのインビトロ放出を、USPパドル(paddle)法によって50rpm、37℃で行う。放出されるジノプロストンを、ポテンシー(潜在力)の分析と同様にしてHPLCにより分析する。
【0057】
精製および担持
ブランクポリマー薄片を精製水中に置き、約4℃で約6〜8時間撹拌する。次いで水をデカントする。膨潤薄片を再び精製水中に置き、約4℃でおよそ16〜20時間撹拌する。次いで水をデカントする。水で膨潤したポリマー薄片を、エタノールと水との溶液中に置き、約4℃でおよそ6〜8時間撹拌する。ジノプロストン溶液を、適切な量のジノプロストンをエタノールに溶解させて作成する。得られた溶液を水およびエタノールに加える。これにより得られた薬剤担持溶液を、次いで、膨潤ポリマー薄片に加えて、25%(w/w)エタノール:水混合物を得る。薄片および薬剤担持溶液を、約4℃で約16〜20時間撹拌し、薬剤を取り込ませる。投薬時間経過後、残存する薬剤溶液をデカントし、膨潤ポリマー薄片を18〜28時間乾燥する。
【0058】
プロスタグランジンE2を、同様のプロセスによって、架橋ポリマー(FX02139、担持FX02159)バッチおよび線状ポリマー(FX02144、担持FX02157)バッチに担持させた。このとき、薄片の厚さは共に0.6mmであった。測定された潜在力は、それぞれ9.4mg(FX02159、コントロール)および9.7mg(FX02157)だった。
図4は、架橋ポリマーおよび線状新ポリマーのPGE2放出特性を示す。
【0059】
A4.フィルムの製造
フィルムを製造する最初の実験では、それぞれ1、2、3、4、5、および8個の薄片のポリマーを含む6つのガラス瓶をセットした。ポリマーバッチとしてFX02141を使用した。各ガラス瓶に、約10mLのジクロロメタンを加えた。全てのガラス瓶をポリマーが溶解するまで超音波処理した。得られた溶液を時計皿(直径20cm)上に注ぎ、覆いを取って有毒ガス排出棚で乾燥させた。
【0060】
更なるフィルム開発作業では、ポリマーおよび溶媒を適切なガラス容器中に量り込み、次いでそれを密封し、超音波処理してポリマーを溶解させた。あるフィルムは前のように時計皿上に注がれ、一方、他のものはペトリ皿(直径8cm)に注入した。フィルムの乾燥を制御するため、注入溶液を1Lのガラスビーカーで覆った。
【0061】
また、ドクター・ブレードを使用して、溶液を有毒ガス排出棚中のガラスプレート上に注ぎ、プレートの長さ方向に広げてフィルムを製造した。
【0062】
【表10】
【0063】
5個の薄片のポリマーを用いて溶媒中で作成したフィルムをプラスチックペトリ皿の脱イオン水中に膨潤させた。膨潤した形態のフィルムは強度の強いことが見出された。フィルムを時計皿上に置き乾燥させた。乾燥すると、フィルムはその形および強度を取り戻した。
【0064】
【表11】
【0065】
ヴァイアル瓶1および2で作ったフィルムの一部をカットし、脱イオン水が入ったヴァイアル瓶中に置き、そのフィルムが担持した染料を放出できるかどうか測定した。
【0066】
【表12】
【0067】
ヴァイアル瓶CおよびEのポリマーは直ちに溶解し始めたが、ヴァイアル瓶Aはそれより遅かった。これらのヴァイアル瓶からの溶液は、有毒ガス排出棚で別のガラスペトリ皿中に注ぎ、各々1リットルのビーカーで覆った。それらを乾燥するまで放置した。ヴァイアル瓶cの溶液がヴァイアル瓶aおよびeのそれより速く乾燥した。
【0068】
【表13】
【0069】
4つのすべてのガラス容器(duran製)の溶液を、有毒ガス排出棚で別個のガラスペトリ皿に注入した。
容器1および3は1リットルのガラスビーカーで覆い、容器2および4は覆いをせずに放置した。
容器1および3のフィルムは粗い触感を有するが、容器2および4のフィルムは滑らかである。容器2のフィルムは1側面がより粗い斑点部(patch)を有している。
容器1〜4で製造したすべてのフィルムは強度が対等で、どれも脆くはなかった。
【0070】
2枚のフィルムをドクター・ブレードを使用して製造した。使用した両ポリマーをDCM(約5% w/w)に溶解させて溶液とし、両溶液を同一条件下で同一のガラス皿上に注入した。
ポリマーFX02144を用いて製造したフィルムは脆く、貯蔵時に分解したが、FX02158(デモンストレーションのためブロモフェノールブルーを担持させたもの)を用いて製造したフィルムは無傷のままだった。
【0071】
ポリマーフィルムからの薬剤の放出に利用するため、長時間膨潤率を求めた。これを、参照としてフィルムの製造で使用したのと同一バッチのポリマー薄片の長時間膨潤率を用いてグラフに示した。結果を図5に示す。
使用したフィルム部分の平均重量は0.0272gであり、ポリマー薄片(FX02141)の平均重量は0.1381gであった。
【0072】
A5.検討
a.外観
外観テストにより、新線状ポリマーの棒片(billets)は既知の架橋ポリマー棒片と比較して色が僅かに暗いことが観察された。これは両者のFeCl3含量を比較することによって説明された。既知の架橋ポリマーはPEG中にFeCl3を0.01%(w/w)含み、線状ポリマーはFeCl3をPEG中に0.0266%(w/w)有していることが算出された。
【0073】
b.硬化時間
先の線状ポリマーは硬化時間20時間で製造したが、バッチFX02140およびFX02141は硬化時間10時間で製造した。
同一成分比率で、硬化時間[FX02140(硬化時間10時間)およびX02143(硬化時間20時間)]の異なる2つのバッチを比較すると、硬化時間10時間では膨潤率テストでRSDが低く、水溶性抽出可能物率が低くなり、より有望な結果が得られた。その結果、次のバッチFX02144、FX02148およびFX02158について硬化時間10時間を採用した。
【0074】
しかし、バッチFX02141、FX02149およびFX02161を使用し、それぞれ10、20および30時間の硬化時間で、硬化時間の影響を更に調べた。この3つのバッチの結果を比較すると、結晶化度に相関関係がないこと、WSE%は硬化時間が増加するにつれて減少し、FX02144の膨潤率は02161およびFX02149の膨潤(同一である)より約20%少ないことが認められた。膨潤率のRSDが減少すると硬化時間は増加する。
【0075】
c.成分比率
PEG:DD:DMDI(比)=0.25:1:1.25で製造したポリマーは、架橋されたポリマーと同一特性を有し、全て既知の架橋ポリマーの仕様の範囲内の結果を示した。
本発明による線状ポリマーはこれら仕様に合い、結果に再現性がある。さらに線状ポリマーはある種の溶媒には可溶性であるが、既知の架橋ポリマーは不溶性である。
【0076】
およそ300%の膨潤率を有する既知の架橋ポリマーは、ペプチドおよび蛋白質のような高分子量の薬剤を担持することができない。
これに対して、本発明の線状ポリマーFX02158(PEG:DD:DMDI=0.7:1:1.7)は、730%の膨潤率を有し、水に不溶性であった。
【0077】
d.膨潤特性
PEG:DDの比率が増加するにつれて、24時間膨潤率もまた増加する。既知の架橋ポリマーについて受け入れられる膨潤率テストは24時間である。これを本発明によるポリマーでは72および144時間まで延長してポリマー薄片の膨潤が最高に達するのに必要な時間を確認した。
【0078】
PEG:DDの比が高いと、低いPEG:DD比率を有するポリマーに比較して、24時間と144時間の間の差がより大きくなって、膨潤率が増加することが認められた。24時間から144時間で、FX02141(PEG:DD=0.25:1)の膨潤率の増加は3%であったが、FX02158(PEG:DD=0.7:1)では13%増加した。
【0079】
PEG:DDの比率の高いポリマーは、24時間までにはその膨潤率は最高に達しなかった。これは長時間膨潤率曲線によって確認される(図2)。PEG:DD(比)=0.25:1のポリマー薄片は、およそ5時間でそれらの膨潤が最高に達し、このとき曲線は横ばいになるが、より高いPEG:DD(比)=0.7:1のポリマー薄片は、膨潤率が144時間でなお増加しており、この点で勾配が正の曲線であることが認められた。
【0080】
e.安定性
40℃における安定性テストをFX02150(精製したFX02144)を用いて4週間にわたり行った。その結果は、膨潤率が時間と共に高くなり、40℃における架橋ポリマーの結果に匹敵することを示した。
【0081】
f.薬剤放出
ポリマーバッチFX02144(PEG:DD:DMDI 0.25:1:1.25)にピロカルピンおよびプロスタグランジンE2(PGE2)を担持させた。このポリマーは架橋ポリマーと同じ特性を有し、従って、この2つの異なったポリマーからの両薬剤の放出特性は同等である。
【0082】
ピロカルピンの放出特徴は、線状および架橋ポリマー間で同等であることが示された。これは、線状バッチの長時間膨潤率を、膨潤速度が両者で同じである架橋ポリマー(図1)と比較することによって確認された。
しかし、PGE2の放出は異なることが認められた。線状ポリマーは、薬剤を架橋ポリマーよりも遅く放出した。
【0083】
g.溶解性テスト
異なる成分比の4種類のポリマーを製造したが、これらのポリマーはどれもエタノールあるいはアセトンに溶けなかった。
FX02144はメタノールに不溶性で、テストした他のバッチはこの溶媒に溶解した。
テストしたバッチはすべてジクロロメタンに溶解した。
【0084】
h.フィルムの調製
初期の実験で、ポリマーと溶媒の有望な組合せは、DCM10mL中の4〜5個の薄片(約0.7gのポリマーに相当)であることが見出された。これをDCM30mL中の13個の薄片までスケールアップして、フィルムの製造はこの組合せを使用して同様のフィルムについて再生可能であることが示された。
【0085】
製造したフィルムを脱イオン水中で膨潤させた。膨潤した形態は強度と伸縮性があることが認められた。次いで、この膨潤フィルムを水から取り出し乾燥させた。乾燥するとフィルムはその形および強度を取り戻した。
他のフィルムについて、担持した染料を放出できるか否かを測定するテストを実施した。染料を担持したフィルムの一部を水中に沈めたたところ、水の色が時間と共に変わったことから、フィルムは担持した物質を放出する能力があることが分かった。
【0086】
ポリマーを種々の溶媒に溶解して製造したフィルムは、そのフィルムの総乾燥時間、最終フィルムの均一性、生地、および強さに影響を及ぼすことが見出された。さらに、フィルム乾燥に使用する技術が、均一性および生地の観点で、最終的な外観に影響を及ぼした。
【0087】
作成したポリマーフィルムの長時間膨潤率を求め、フィルムの作成に使用したポリマー薄片の長時間膨潤率と比較した。予想通り、フィルム部分は、ポリマー薄片より非常に速く最高の膨潤率に達したが、この理由はフィルム部分の厚さおよび平均重量がポリマー薄片より遥かに小さいからである。これは、ポリマーフィルムからの薬剤の放出速度の目安として使用できる。
【0088】
セクションB
B1:ポリマーの製造
種々のタイプのポリエチレングリコール類、ジオール類およびジイソシアネート類、およびこれらの化合物を種々の化学量論的比率で用いて、これらの化合物が新ポリマーの特性上に及ぼす影響を調べた。PEG4000、PEG8000、PEG12000およびPEG35000は、それぞれ分子量4000、8000、12000および35000のポリエチレングリコールであり;HDは1,6−ヘキサンジオール、DDは1,10−デカンジオール、DDDは1,12−ドデカンジオールであり、HDDは1,16−ヘキサデカンジオールである。DMDIはジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、HMDIは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0089】
バッチNo.BP03007、BP03014およびBP03015を除いて、ポリマーはセクションAと同じ重合方法で製造した。唯一の相違は、溶融PEGおよびジオールの混合物を30分間回転蒸発器(rotavapor)中で混合し、その後より均一な混合物を製造する触媒混合物を作るために100gを取り出したことである。
【0090】
PEG35000(バッチNo.BP03007およびBP03014)を重合させるため、重合反応器を撹拌タンク反応器(700mL)に変え、PEGの溶融粘度を減らすため重合温度を140℃に上げた。PEGは、真空下回転蒸発器中で50℃の温度で一夜乾燥した。PEG、ジオールおよび塩化第二鉄を撹拌下のタンクガラス反応器に供給した。混合物は140℃の油浴を使用して窒素下で2時間溶融させた。混合を30分間続け、その後ジイソシアネートを反応器に供給し、次いで5分間混合した。ポリマーを予備加熱した型(130℃)に注ぎ、オーブン中で95℃に10時間保った。この後、オーブンを停止、ポリマー棒を室温に放冷した。次いで、ポリマー棒を型から外し、スライスした。また、二段階重合方法を使用して、ポリマー構造を一層制御したもの(バッチNo.BP03015)を製造した。PEGは回転蒸発器中50℃にて一夜真空乾燥した。最初にジイソシアネートを撹拌タンク反応器に供給した。次いで、PEG約40gを塩化第二鉄と共にその頭部で反応容器に供給した。反応容器を95℃に加熱し、PEGを毎回約20g部使用して3時間かけて反応容器に供給した。反応容器温度が95℃に達したとき、撹拌(30rpm)を開始した。次いで、ジオールを反応容器に供給し、撹拌を60rpmに上げ、5分間撹拌した。ポリマーを予備加熱した型(95℃)に注ぎ、オーブン中で95℃に10時間保った。この後、オーブンを停止し、ポリマー棒を室温まで放冷した。次いで、ポリマー棒を型から外し、スライスした。
【0091】
B2 ポリマー特性
ポリエチレングリコール類、ジオール類およびジイソシアネート類の種類および比率のポリマー特性に及ぼす影響は表14〜18に見ることができる。
【0092】
【表14】
【0093】
【表15】
【0094】
【表16】
【0095】
【表17】
【0096】
【表18】
【0097】
B3:放出制御組成物
線状ポリマー特性及び薬剤担持の実施例
線状ポリマーバッチ(03030、03032および03033)と、架橋ポリマーバッチ03003(ポリマー(比)PEG8000:ヘキサントリオール:DMDI=1.0:1.2:2.8)とを比較のためにスライスし、10mm×30mm×l.Ommの大きさのポリマー薄片とした。ポリマー薄片を、25℃で精製水および/または精製水/エタノールで3回洗浄することにより精製した。次に、すべての薄片を真空乾燥した。
【0098】
5つの薬剤、即ちクリンダマイシン燐酸塩、オキシトシン、テルブタリン硫酸塩、ミソプロストルおよびプロゲステロンを種々のポリマーに担持させた。これらの薬剤は、高水溶性、低水溶性、ペプチド類、ステロイド類および低分子量分子類のような特徴をカバーするように選択した。
【0099】
各薬剤の適当な溶液にポリマー薄片を適切な時間浸漬し次いで溶液から取り出し乾燥することによって、薬剤をポリマーに担持させた。
表19は担持パラメーターおよび条件の詳細である。
【0100】
【表19】
【0101】
薬剤担持ポリマーは、USP法XXIII,器具2、37℃、パドル速度50RPMに従って、イン・ビトロ薬剤放出分析に供された。薬剤放出は、紫外分光か高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって適切に分析された。種々の溶出パラメーターまたは設定を表20にまとめて示す。
【0102】
【表20】
【0103】
図6〜図10に、種々のポリマーからの各薬剤の平均溶出特性を示す。
薬剤の種類による線状ポリマーバッチA03030の平均溶出特性に及ぼす影響を図11に示す。
各溶出特性の薬剤放出速度(κ値)は、経過時間の平方根に対してプロットした薬剤放出%のグラフの傾きから求めた。
薬剤放出%と時間の平方根との間の一次関係は、全てR2>0.95%の相関がある。
種々のペッサリー類からの薬剤の溶出特性で得られた薬剤放出速度κを表21に示す。
【0104】
【表21】
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】原料ポリマー(FX02139)と比較した2つの新ポリマー(FX02141およびFX02144)の長時間膨潤率(Swelling/%)を示す。
【図2】3つの新ポリマーの長時間膨潤率(Swelling/%)を示す。
【図3】線状ポリマーFX02151のピロカルピン放出率(Release/%)を原料ポリマーFX01234およびFX01194のそれと標準化して比較したグラフである。
【図4】架橋ポリマー(Cross linked Polymer)および新線状ポリマー(Linear Polymer)のPGE2放出特性(Release/%)を示す。
【図5】FX02141(Polymer)と比較したポリマーフィルム(Polymer Film)(表11、ヴァイアル瓶4)の長時間膨潤率(Swelling/%)を示す。
【図6】種々のペッサリーからのクリンダマイシン燐酸塩の平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図7】種々のペッサリーからのオキシトシンの平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図8】種々のペッサリーからのテルブタリン硫酸塩の平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図9】種々のペッサリーからのミソプロストルの平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図10】種々のペッサリーからのプロゲステロンの平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【図11】線状ポリマーA03030ペッサリーからの種々の薬剤の平均溶出特性(n=6)を示す(縦軸は薬剤放出率(%Drug released)、横軸は時間(分および時間)を表す)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエチレンオキサイド、(b)二官能性化合物、および(c)二官能性イソシアネートを反応させることによって得られる水膨潤性線状ポリマー。
【請求項2】
ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が4000〜35,000である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が8000〜12,000である請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
二官能性化合物がジアミンまたはジオールである先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項5】
ジオールがC5〜C20ジオールである請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
ジオールが1,10−デカンジオールである請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
ジオールが1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオールまたは1,16−ヘキサデカンジオールである請求項5に記載のポリマー。
【請求項8】
成分比(a):(b):(c)が0.1〜1.5:1:1.1〜2.5(当量比)である先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項9】
当量比が0.2〜0.9:1:1.2〜1.9である請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
当量比が0.5〜0.9:1:1.5〜1.9である請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
水膨潤性が500%以下である先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項12】
水膨潤性が700%以下である先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項13】
ジクロロメタンに可溶な先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項14】
成分(a)、(b)および(c)を反応させることを含む請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかのポリマーと活性薬剤を含む放出制御組成物。
【請求項16】
活性薬剤の分子量が200〜20,000である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
活性薬剤がプロスタグランジンである請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
活性薬剤がテルブタリン硫酸塩、クリンダマイシン硫酸塩、オキシトシン、ミソプロストルまたはプロゲステロンである請求項15または16に記載の組成物。
【請求項19】
活性薬剤がH2受容体拮抗剤、アンチムスカリン、プロスタグランジン誘導体、プロトンポンプ阻害剤、アミノサリチレート、副腎皮質ステロイド、キレート剤、強心配糖体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、サイアザイド、利尿薬、炭酸脱水酵素阻害剤、降圧剤、抗がん剤、抗うつ薬、カルシウムチャネル遮断薬、鎮痛剤、麻薬拮抗薬、抗血小板薬、抗凝血薬、フィブリン分解剤、スタチン、アドレナリン受容体拮抗薬、ベータ遮断薬、抗ヒスタミン薬、呼吸刺激薬、粘液溶解薬、去痰薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、精神安定剤、統合失調症治療薬、三環系抗うつ薬、5HT1拮抗剤、麻酔剤、5HT、アゴニスト、制吐剤、抗痙攣薬、ドーパミン作動薬、抗生物質、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、抗糖尿病薬、インスリン、サイロトキシン、女性ホルモン、男性ホルモン、抗女性ホルモン、視床下部薬、下垂体ホルモン、下垂体後葉ホルモン拮抗薬、抗利尿ホルモンホルモン拮抗薬、ビスフォスフォネート、ドーパミン受容体刺激剤、アンドロゲン、非ステロイド系抗炎症剤、免疫抑制局部麻酔薬、鎮静剤、乾癬治療薬、銀塩、局所抗細菌薬、またはワクチンである組成物。
【請求項20】
座薬、ペッサリー、口腔挿入物またはフィルム状である請求項15〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項1】
(a)ポリエチレンオキサイド、(b)二官能性化合物、および(c)二官能性イソシアネートを反応させることによって得られる水膨潤性線状ポリマー。
【請求項2】
ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が4000〜35,000である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
ポリエチレンオキサイドの数平均分子量が8000〜12,000である請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
二官能性化合物がジアミンまたはジオールである先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項5】
ジオールがC5〜C20ジオールである請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
ジオールが1,10−デカンジオールである請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
ジオールが1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオールまたは1,16−ヘキサデカンジオールである請求項5に記載のポリマー。
【請求項8】
成分比(a):(b):(c)が0.1〜1.5:1:1.1〜2.5(当量比)である先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項9】
当量比が0.2〜0.9:1:1.2〜1.9である請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
当量比が0.5〜0.9:1:1.5〜1.9である請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
水膨潤性が500%以下である先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項12】
水膨潤性が700%以下である先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項13】
ジクロロメタンに可溶な先行するいずれかの請求項に記載のポリマー。
【請求項14】
成分(a)、(b)および(c)を反応させることを含む請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかのポリマーと活性薬剤を含む放出制御組成物。
【請求項16】
活性薬剤の分子量が200〜20,000である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
活性薬剤がプロスタグランジンである請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
活性薬剤がテルブタリン硫酸塩、クリンダマイシン硫酸塩、オキシトシン、ミソプロストルまたはプロゲステロンである請求項15または16に記載の組成物。
【請求項19】
活性薬剤がH2受容体拮抗剤、アンチムスカリン、プロスタグランジン誘導体、プロトンポンプ阻害剤、アミノサリチレート、副腎皮質ステロイド、キレート剤、強心配糖体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、サイアザイド、利尿薬、炭酸脱水酵素阻害剤、降圧剤、抗がん剤、抗うつ薬、カルシウムチャネル遮断薬、鎮痛剤、麻薬拮抗薬、抗血小板薬、抗凝血薬、フィブリン分解剤、スタチン、アドレナリン受容体拮抗薬、ベータ遮断薬、抗ヒスタミン薬、呼吸刺激薬、粘液溶解薬、去痰薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、精神安定剤、統合失調症治療薬、三環系抗うつ薬、5HT1拮抗剤、麻酔剤、5HT、アゴニスト、制吐剤、抗痙攣薬、ドーパミン作動薬、抗生物質、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、抗糖尿病薬、インスリン、サイロトキシン、女性ホルモン、男性ホルモン、抗女性ホルモン、視床下部薬、下垂体ホルモン、下垂体後葉ホルモン拮抗薬、抗利尿ホルモンホルモン拮抗薬、ビスフォスフォネート、ドーパミン受容体刺激剤、アンドロゲン、非ステロイド系抗炎症剤、免疫抑制局部麻酔薬、鎮静剤、乾癬治療薬、銀塩、局所抗細菌薬、またはワクチンである組成物。
【請求項20】
座薬、ペッサリー、口腔挿入物またはフィルム状である請求項15〜18のいずれかに記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−500456(P2006−500456A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539253(P2004−539253)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004208
【国際公開番号】WO2004/029125
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505106195)コントロールド・セラピューティクス(スコットランド)・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004208
【国際公開番号】WO2004/029125
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505106195)コントロールド・セラピューティクス(スコットランド)・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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