説明

水蒸気プラズマ生成装置および滅菌・殺菌装置

【課題】
水蒸気プラズマを安定して生成することができる、新たな水蒸気プラズマ生成装置を提供する。
【解決手段】
流入した水蒸気を水蒸気プラズマとして流出させる被加熱体を、一体に連結された複数の被加熱部材により構成する。該複数の被加熱部材に、水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側へ向かうにつれて徐々に数が減らされた貫通孔と、それぞれが対向する面の少なくとも一方に水蒸気の通過域を構成する凹部を形成することで、安定した水蒸気プラズマを発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品、食料、飼料、医薬品等の被処理物に存在する微生物や害虫等を滅菌または殺菌する水蒸気プラズマを生成する水蒸気プラズマ生成装置、および、滅菌・殺菌水蒸気プラズマ生成装置を備えた滅菌・殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の滅菌・殺菌装置の一例としては、例えば、特許文献1に示すように、加熱蒸気を用いたものが知られている。具体的には、複数の球体等からなる被加熱体を充填した筒状体の一方から噴射水を導入し、筒状体の外周に巻回された励磁コイルを介して被加熱体を高周波誘導加熱することにより、筒状体の他方から加熱蒸気を噴出させる。この加熱蒸気を食品等に噴射して、滅菌・殺菌を行う装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/068033号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記、加熱蒸気を用いた滅菌・殺菌装置では、加熱蒸気の温度が不安定である等の理由で、十分な滅菌、殺菌効果を得ることができない場合があった。また、無理に滅菌・殺菌効果を得ようとして、時間をかけて高温の加熱蒸気を食品等の被処理物に噴射すると、食品等の栄養成分等が変性、分解してしまうという問題が生じた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、短時間で大量の被処理物を滅菌・殺菌することができる、殺菌・滅菌能力に優れた水蒸気プラズマを生成することができる滅菌・殺菌用水蒸気プラズマ生成装置、およびこの滅菌・殺菌用水蒸気プラズマ生成装置を備えた滅菌・殺菌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、安定したプラズマ生成装置を得るべく研究を重ね、特定の構成を有する被加熱部材を複数備える装置により、水蒸気プラズマを安定して生成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示す通りである。
流入した水蒸気を水蒸気プラズマとして流出させるとともに導電性を有する被加熱体と、前記被加熱体に巻回されるとともに、高周波が供給され前記被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備えた水蒸気プラズマ生成装置であって、
前記被加熱体は、水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側へ向かって一体に連設された複数の被加熱部材により構成され、
前記複数の被加熱部材には、配置位置が水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側に向かうにつれて徐々に数が減らされた貫通孔と、それぞれが対向する面の少なくとも一方に前記貫通孔とともに水蒸気の通過域を構成する凹部とが形成され、
前記コイルは、その線体の中心に中空管を有し、前記中空管は冷却液が流される流路である、水蒸気プラズマ発生装置。
【0008】
また本発明は、前記被加熱部材が、円盤上であることが好ましい態様である。
【0009】
また本発明は、前記被加熱部材の凹部が、溝であることが好ましい態様である。
【0010】
また本発明は、前記流出する水蒸気プラズマの温度が、250℃以上であることが好ましい態様である。
【0011】
また本発明は、前記高周波の出力が、30kW以上であることが好ましい態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、短時間かつ安定した高温で大量の被処理物を滅菌・殺菌することができる滅菌・殺菌能力に優れた水蒸気プラズマを生成することができる滅菌・殺菌用水蒸気プラズマ生成装置を提供することができ、この滅菌・殺菌用水蒸気プラズマ生成装置を備えた滅菌・殺菌装置を提供することができる。
本発明により、水蒸気プラズマを安定して生成することができるようになったことから、水蒸気プラズマを食品などの被処理物に照射することで、食品中の栄養分を壊すことなく、簡単に殺菌・滅菌処理を行うことができる。その結果、高温高湿地域における食品等の保存の状態を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る滅菌・殺菌装置の全体構成を表す概略説明図である。
【図2】(A)は蒸気ボイラから水蒸気が流入する側の一番端に位置する被加熱円盤部材の一例の側面図であり、(B)は図2(A)に示した被加熱円盤部材の正面図である。
【図3】(A)は水蒸気プラズマを流出させる側の一番端に位置する被加熱円盤部材の一例の側面図であり、(B)は図3(A)に示した被加熱円盤部材の正面図である。
【図4】液体を処理する場合の、滅菌・殺菌処理装置(滅菌・殺菌処理室)の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水蒸気プラズマ発生装置は、被加熱体と、被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備える。上記被加熱体に流入した水蒸気は、被加熱体内で加熱され、電離した状態になり、水蒸気プラズマとして流出される。
【0015】
水蒸気を加熱するための上記被加熱体は、電磁誘導加熱するコイルにより巻回されている。上記被加熱体は、コイルに高周波が供給されることで電磁誘導加熱される。上記被加熱部材は、電磁誘導により加熱されるため、導電性を有する部材である必要がある。また、後述するが、本発明の水蒸気プラズマは250℃〜850℃であることが好ましい。このため上記被加熱部材は、850℃の温度であっても安定性を有する材料からなることが好ましい。具体的には鉄、ステンレス、銅等が挙げられる。流入した水蒸気は、上記被加熱体により加熱されるが、250℃以上に加熱されることが好ましい。250℃以上であることで、安定して水蒸気プラズマが発生するからである。このとき高周波の出力が30kW以上であることが好ましい。安定して水蒸気プラズマを生成することができるためである。
【0016】
上記被加熱部材は、水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側へ向かって一体に連設された複数の被加熱部材により構成されている。また、複数の被加熱部材には、配置位置が水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側に向かうにつれて徐々に数が減らされた貫通孔と、それぞれが対向する面の少なくとも一方に前記貫通孔とともに水蒸気の通過域を構成する凹部とが形成される。
【0017】
このような構成を有することで、被加熱体に流入した水蒸気は、電磁誘導加熱された被加熱体により高温になるとともに、流出側に向かって徐々に数が減っていく貫通孔及び水
蒸気の通過域を構成する凹部を通過する。この際、上記被加熱部材は流出側に向かって通過域が徐々に制限されるため、水蒸気は、被加熱円盤部材にぶつかりながら徐々に膨張するとともに貫通孔を通り抜ける力が徐々に増していき、その結果、電離した状態になり、水蒸気プラズマとして流出される。
【0018】
また、被加熱体を通過する流体の温度を安定させるため、かつ、コイル自体の発熱を防止するため、被加熱体に巻回されたコイルは、その線体の中心に中空管を有し、中空管には冷却液を流す必要がある。冷却液の種類は特段限定されないが、水を用いることがコスト面から好ましい。また、冷却液の温度は特段限定されないが、冷却水を用いる場合、常温に近い10〜40℃程度であればよい。
【0019】
本発明の実施の形態に係るプラズマ生成装置について、以下図面を参照して説明する。
【0020】
滅菌・殺菌装置1は、食品、食料、資料、医薬品等の被処理物の表面に存在する一般生菌、大腸菌群、芽胞菌等の微生物や害虫等を、水蒸気プラズマ生成装置10により生成した水蒸気プラズマによって滅菌・殺菌する装置である。
【0021】
滅菌・殺菌装置1は、図1に示すように、水蒸気プラズマ生成装置10と、滅菌・殺菌処理室20と、インバータ30と、蒸気ボイラ40と、冷却液タンク50とを備えている。
【0022】
水蒸気プラズマ生成装置10は、食品等の被処理物に照射する水蒸気プラズマを生成する装置である。水蒸気プラズマ生成装置10は、被加熱体11と、被加熱体11を電磁誘導加熱するためのコイル12と、被加熱体11を覆って保温する断熱材13と、被加熱体11に蒸気ボイラ40で生成した水蒸気を流入するための水蒸気流入部71と、被加熱体11から生成した水蒸気プラズマを流出するための水蒸気プラズマ流出部72と、水蒸気プラズマを滅菌・殺菌処理室20へと噴出させるための噴射ノズル73とを備えている。なお、水蒸気プラズマ生成装置10は、図示しないプラスチック製の絶縁カバーで保護されている。
【0023】
被加熱体11は、インバータ30からの高周波電流が供給されたコイル12により電磁誘導加熱される。被加熱体11は、導電性を有する複数の被加熱円盤部材11aにより構成されることが好ましい。被加熱体は必ずしも円盤部材である必要は無いが、被加熱体をコイルにより電磁誘導加熱する効率性を考えると、円盤状であることが好ましい。被加熱円盤部材11aには、導電性材料が用いられ、例えば鉄、ステンレス鋼、ニッケル、チタン等の金属やカーボンセラミック等の導電性セラミック材料等が用いられる。
【0024】
複数の被加熱円盤部材11aは、図1に示すように、蒸気ボイラ40から水蒸気が流入される側から水蒸気プラズマを流出させる側にむかって、一体に連設される。また、被加熱円盤部材11aには、図2及び図3に示すように、複数の貫通孔111aが形成され、被加熱円盤部材11aの表面、裏面にはそれぞれ複数の溝112aが形成されている。図2は蒸気ボイラ40から水蒸気が流入される側の一番端に位置する被加熱円盤部材11aを示し、図3は水蒸気プラズマを流出させる側の一番端に位置する被加熱円盤部材11aを示す。
【0025】
被加熱円盤部材11aに形成される貫通孔111aは、蒸気ボイラ40から水蒸気が流入される側から水蒸気プラズマを流出させる側に向かうにつれて、その数が徐々に減るように形成されている。一例をあげると、蒸気ボイラ40から水蒸気が流入される側の一番端に配置された被加熱円盤部材11aに形成された貫通孔111aの数は例えば100個、水蒸気プラズマを流出させる側の一番端に配置された被加熱円盤部材11aに形成され
た貫通孔111aの数は例えば10個である。なお、一体に連設される被加熱部材の数に特段の制限はなく、高周波の出力、周波数や被処理物の種類、量などに応じて決定される。
【0026】
被加熱円盤部材11aの溝112aは不規則に形成されているので、複数の被加熱円盤部材11a間には空間113a(図1)が形成される。被加熱体11に流入した水蒸気は、空間113aおよび貫通孔111a内のみに通過可能な範囲が制限され、また、水蒸気プラズマとして流出する側に向かうにつれて貫通孔111aの数が減っていくため通過可能な範囲は徐々に制限される。
【0027】
被加熱体11に流入した水蒸気は、電磁誘導加熱された被加熱体11により250℃以上の温度になるとともに、流出側に向かって徐々に数が減っていく貫通孔111a、および、空間113a内のみを通過し、流出側に向かって通過域が徐々に制限される。このため水蒸気は、被加熱円盤部材11aにぶつかりながら徐々に膨張するとともに貫通孔111aを通り抜ける力が徐々に増していき、その結果、電離した状態になり、水蒸気プラズマとして流出される。なお、通過域が流出側に向かって徐々に制限されるにもかかわらず、流入した水蒸気が逆流することはない。また、被加熱体11に流入した水蒸気は電磁誘導加熱されるが、加熱された水蒸気が250℃よりも低い場合には、水蒸気プラズマが安定して生成されない傾向にある。
【0028】
流出された水蒸気プラズマ中には、正と負の荷電粒子が高速で飛びまわっており、荷電粒子の間に大きなクーロン力が働くために、過熱蒸気のような電気的中性気体よりも粒子のもつ運動エネルギーがはるかに大きくなる。この高エネルギーの粒子によって結合を切られた水蒸気中の水素原子、酸素原子、OHラジカルなどの活性の高い中性の原子や分子がプラズマ中に存在していること等のため、水蒸気プラズマは高い殺菌、滅菌力を有する。
【0029】
被加熱体11を製造するには、まず複数の角板に貫通孔111aおよび溝112aをそれぞれ形成する。その後、それぞれの角板を溶接により接合する。そして、接合された複数の角板をそのまま被加熱体として用いることもでき、更に旋盤により円盤状に形成することで、被加熱体とすることもできる。
【0030】
コイル12は、その線体の中心に中空管を有し、流入ホース51から中空管に冷却液を流すことにより、コイル12自体の発熱を防止するとともに、被加熱体11を通過する流体の温度を安定させることができる。コイル12に冷却液を流さないと、被加熱体11を通過する流体の温度が不安定になり、水蒸気プラズマを生成することができない。
【0031】
インバータ30は、コイル12を介して被加熱体11に高周波誘導加熱を施す装置である。インバータ30は、高周波インバータが用いられ、高周波の出力は30〜500kW程度であることが好ましく、周波数は10〜20kHzであることが好ましい。なお、インバータ30は、導電線31によりコイル12に電気的に接続されている。
高周波の出力が30kW以上であることにより、水蒸気プラズマ生成装置10により水蒸気プラズマを安定して生成することができる。なお、インバータ30内にも冷却水タンク50からの冷却液の流入ホース51が通っており、内部に配置された半導体素子等を除熱する。
【0032】
蒸気ボイラ40は、導管60により水蒸気流入部71を介して水蒸気プラズマ生成装置10に接続されている。なお、導管60には、蒸気ボイラ40により発生させた水蒸気の開閉弁61と逆止弁62が設けられている。
【0033】
冷却液タンク50は、冷却液をコイル12の線体の一端に流入させるとともにインバータ30内部を除熱するための流入ホース51と、冷却液をコイル12の線体の他端から流出させるための流出ホース52とを有する。
【0034】
滅菌・殺菌処理室20は、円筒状の本体21と、本体の上方に配置された被処理物投入口22と、被処理物投入調整部23と、本体21の側壁に形成された水蒸気プラズマ照射開口部24と、本体21を支持する設置台25とを備えている。水蒸気プラズマ照射開口部24には、水蒸気プラズマ導入管74が接続されている。本体21は円筒状に形成されることにより、上方の被処理物投入口22から大気が流れ込んでくることがなくなり、本体21内は真空状態となり、照射される水蒸気プラズマの温度が安定し、被処理物の滅菌・殺菌効果が向上する。なお、真空状態とは、大気圧よりも圧力が低い状態を意味する。
【0035】
本体21内での水蒸気プラズマの温度は、250℃以上850℃以下で安定した温度となる。被処理物の種類に応じて水蒸気プラズマの温度を適宜設定することができる。
【0036】
水蒸気プラズマ生成装置10の噴射ノズル73から噴射された水蒸気プラズマを、水蒸気プラズマ導入管74を介して、水蒸気プラズマ照射開口部24から噴射させた状態で、被処理物を被処理物投入口22から投入すると、被処理物に水蒸気プラズマが照射される。これによりプラズマ照射処理がされる。
【0037】
滅菌・殺菌処理室20は、被処理物の種類に応じて適宜設計変更することが可能である。図1では処理室の上方から被処理物を投入し、重力により落下する途中で瞬時に水蒸気プラズマが照射される構造になっているが、処理室を水平方向に長く設計し、ベルトコンベアなどを用いることで比較的長い時間プラズマを照射することができる設計とすることも可能である。
【0038】
また、液体についての殺菌・滅菌を行う場合には、図4で示す滅菌・殺菌処理室とすることが好ましい。本体21は円筒の部材を用い、約10度から40度、好ましくは15度から30度の傾斜により液体を被処理物投入口22から出口方向に向かって流す。このとき、本体21のうち、被処理物投入口に近い部分において、水蒸気プラズマ導入管74を本体21に接続し、水蒸気プラズマを液体に噴射することで、液体を滅菌・殺菌することができる。上記円筒は、その断面が完全な円でなくてもよく、例えば楕円であったり、半円であったりしてもよい。また、本体内に注入する液体は、プラズマによる滅菌・殺菌の効果をより高くするため、本体21中の液体充填率を50%以下とすることが好ましく、30%以下とすることがより好ましく、20%以下とすることが更に好ましい。本体21の出口には、液体の受け皿を設置することで、滅菌・殺菌済みの液体を回収する。受け皿は、投入する液体の量に応じ、適当な大きさのタンクなどを用いることができる。
図4で示す滅菌・殺菌処理室で処理が可能な液体は特段限定されず、水、ジュースなどの飲料、スープなどの加工食品、および植物油、動物油などの油性物質などが例示できる。
【0039】
このように本実施の形態の水蒸気プラズマ生成装置では、被加熱体11の構造を、流入した水蒸気の通過域が流出側に向かって徐々に制限されるようにし、また、コイル12の線体に冷却液を流して被加熱体11を通過する水蒸気の温度を安定させることにより高出力のインバータ30による高周波の供給を可能にした。その結果、安定した水蒸気プラズマを生成することができるようになった。
【0040】
本実施形態の滅菌・殺菌装置では、水蒸気プラズマ生成装置10により生成した水蒸気プラズマを、大気の流入を防止した円筒状の滅菌・殺菌処理室20の本体21内に噴射させて、被処理物投入口22から投入され、落下する食品等の被処理物に照射させるように
したので、安定した高温の水蒸気プラズマにより、短時間(瞬時)で大量の被処理物を滅菌・殺菌することができる。
【0041】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、本実施の形態では、被加熱体11を被加熱円盤部材11aにより構成する例について示したが、流入側から流出側へと向かって、流体の通過域を徐々に狭くする構造であればよく、例えば被加熱部材は角材状、球体状、不定形塊状体等であってもよい。また、非加熱円盤部材11aの数は、高周波の出力、周波数や非処理物の種類、量等に応じて決定される。
【0042】
また、本実施の形態では、被加熱円盤部材11aに形成する貫通孔111aの数を100個から10個へと流出側に向かって徐々に減らす例について説明したが、貫通孔111aの数や大きさや減らし方は、被加熱円盤部材11a自体の数、大きさ等や高周波の出力、周波数や被処理物の種類、量等に応じて、決定される。
【0043】
また、本実施の形態では、被加熱円盤部材11aに溝112aを形成して、空間113aを構成させる例について説明したが、空間113aを構成することができる凹部であればよく、例えば、へこみを形成するように被加熱円盤部材を形成することもできる。
【0044】
また、本実施の形態では、被加熱円盤部材11aの両面に溝112aを形成する例について説明したが、被加熱円盤部材11aのそれぞれが対向する面の一方だけに形成するようにしてもよい。また、被加熱円盤部材11aが配置される位置によっては、溝112aを形成しないものもある。
【0045】
また、本実施の形態では、被加熱体11に流入させる水蒸気を発生させるために蒸気ボイラ40を用いた例について説明したが、水蒸気を発生させる装置であればよく、例えばタンクに水を貯めて流出する水を電気的に加熱させて水蒸気を発生させてもよい。
【0046】
上記水蒸気プラズマ生成装置により生成した水蒸気プラズマを食品等に照射することで、食品等の滅菌・殺菌を行うことができる。上記処理室20の構成は上述したように、被処理物の種類により適宜設計変更することが可能である。例えば、上記処理室20のような落下式を用いると、被処理物が水蒸気プラズマに照射されている時間が短いため、小麦などの粒が小さい食品の滅菌・殺菌処理に特に適している。
【0047】
一方、大豆から検出される芽胞菌群などの耐性が高い菌が付着している食品の滅菌・殺菌処理や、コーヒー豆、ナッツ、種子を焙煎する処理に用いる場合には、例えば、ベルトコンベアタイプのような構成を有する処理室を用いることが好ましい。
【0048】
本発明の水蒸気プラズマを、被処理物に照射し滅菌・殺菌を行う場合、滅菌・殺菌処理が非常に短時間で行われるので、例えば、被処理物が小麦等の食品の場合には、タンパク質、ビタミン、ミネラル等の栄養成分を変性、毀損することなく滅菌・殺菌することができる。本発明において被処理物は特段限定されるものではないが、特に、食品の場合には、大豆、小麦、小豆、コーヒー、麺類など、様々な食品に適用することができる。また、家畜用、農作物用の飼料、例えば廃棄食品などについても、同様に本発明を適用することができる。
【0049】
水蒸気プラズマの照射により、被処理物の表面に存在する一般生菌、大腸菌群、大腸菌、芽胞菌等の微生物を滅菌・殺菌することができ、特に菌が繁殖しやすい高温高湿状況下での食品の保存に非常に有用である。また、本発明の水蒸気プラズマを用いた滅菌・殺菌方法では、30秒以内の被処理物に対する照射で滅菌・殺菌効果が生じる。被処理物の種
類によっては、さらに短い時間の照射でも効果を発揮し、照射時間は被処理物の種類に応じて、適宜設定することができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみに限定されないことは言うまでもない。
【0051】
図1に示す水蒸気プラズマ発生装置の滅菌・殺菌処理室そのまま落下式とし、高周波の出力を30kW、周波数を20kHzとして小麦を滅菌・殺菌処理室に投入し、水蒸気プラズマを照射した。水蒸気プラズマの照射の前後での細菌の存在を確認した。比較例として、従来用いられている加熱蒸気による滅菌・殺菌処理を行った。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示すように、水蒸気プラズマによる場合には、一般生菌数、大腸菌群が加熱蒸気を用いた場合と比較して、著しく減少することが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の水蒸気プラズマ生成装置により生成した水蒸気プラズマは、滅菌・殺菌作用を有している。本発明の殺菌・滅菌方法により、簡易な方法で、食品の成分を壊すことなく滅菌・殺菌処理が可能となる。また、微生物の存在により長期保存が難しい食品や、酸化の進行が原因で消費の期限が短く設定してある製品については、保存可能な期限、消費の期限が著しく伸びることとなり、産業上の有用性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0055】
1 滅菌・殺菌装置
10 水蒸気生成装置
11 被加熱体
11a 被加熱円盤部材
12 コイル
13 断熱材
20 滅菌・殺菌処理室
21 処理室本体
22 被処理物投入口
23 被処理物投入量調整部
24 水蒸気プラズマ照射開口部
25 設置台
30 インバータ
31 導電線
40 蒸気ボイラ
50 冷却水タンク
51 流入ホース
52 流出ホース
60 導管
61 開閉弁
62 逆止弁
71 水蒸気流入部
72 水蒸気プラズマ排出部
73 噴射ノズル
74 水蒸気プラズマ導入管
111a 貫通孔
112a 溝
113a 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入した水蒸気を水蒸気プラズマとして流出させるとともに導電性を有する被加熱体と、前記被加熱体に巻回されるとともに、高周波が供給され前記被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備えた水蒸気プラズマ生成装置であって、
前記被加熱体は、水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側へ向かって一体に連設された複数の被加熱部材により構成され、
前記複数の被加熱部材には、配置位置が水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側に向かうにつれて徐々に数が減らされた貫通孔と、それぞれが対向する面の少なくとも一方に前記貫通孔とともに水蒸気の通過域を構成する凹部とが形成され、
前記コイルはその線体の中心に中空管を有し、前記中空管は冷却液が流される流路である、水蒸気プラズマ生成装置。
【請求項2】
前記被加熱部材は、円盤状であることを特徴とする請求項1に記載の水蒸気プラズマ生成装置。
【請求項3】
前記被加熱部材の凹部は、溝であることを特徴とする請求項1または2に記載の水蒸気プラズマ生成装置。
【請求項4】
前記流出する水蒸気プラズマの温度が250℃以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水蒸気プラズマ生成装置。
【請求項5】
前記高周波の出力が30kW以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水蒸気プラズマ生成装置。
【請求項6】
流入した水蒸気を水蒸気プラズマとして流出させるとともに導電性を有する被加熱体と、前記被加熱体に巻回されるとともに、高周波が供給され前記被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備えた水蒸気プラズマ生成装置と、前記水蒸気プラズマ生成装置により生成された水蒸気プラズマを被処理物に照射させるための滅菌・殺菌処理室とを備えた滅菌・殺菌装置であって、
前記被加熱体は、水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側へ向かって一体に連設された複数の被加熱部材により構成され、
前記複数の被加熱部材には、配置位置が水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側に向かうにつれて徐々に数が減らされた貫通孔と、それぞれが対向する面の少なくとも一方に前記貫通孔とともに水蒸気の通過域を構成する凹部とが形成され、
前記コイルはその線体の中心に中空管を有し、前記中空管は冷却液が流される流路であり、
前記滅菌・殺菌処理室は、生成された水蒸気プラズマを被処理物に照射するための開口部が側壁に形成された円筒状の本体と、前記本体の上方に配置された被処理物投入口とを備えることを特徴とする滅菌・殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−214093(P2010−214093A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20250(P2010−20250)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(502286432)
【出願人】(505197300)
【Fターム(参考)】