説明

油中水型乳化組成物

【課題】デカメチルシクロペンタシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンを実質的に用いずに、安定性と使用感に優れた油中水型乳化組成物を提供すること。
【解決手段】下記の成分(1)〜(4)を含有する、油中水型乳化組成物を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
(1)グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル
(2)25℃で粘度が50cps以下の油分(以下、低粘度油分ともいう)が、界面活性剤を除く全油分の65質量%以上を占める油相であって、かつ、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンを実質的に含有しない油相
(3)25℃で固型であり、融点が60℃以上のワックス
(4)水相

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料等に用いることが可能な外用組成物、さらに具体的には、油中水型乳化組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
揮発性環状シリコーン油であるデカメチルシクロペンタシロキサン(D-5)とオクタメチルシクロテトラシロキサン(D-4)、はその優れた使用性や人体への安全性から、化粧料などのパーソナルケア商品に幅広く使用されている(例えば、特許文献1)。特に、さっぱりと軽く、べたつかない使用性が好まれるメーキャップ化粧料やサンスクリーン剤などでは特に好まれて使用されている。しかし、揮発性環状シリコーン油を用いた処方は、使用感が同質化する傾向にあった。そのため、さまざまな使用感触が求められる化粧料においては、揮発性環状シリコーン油を用いた処方とは異なる使用感触で、乳化安定性に優れた基剤を開発することが求められていた。
【0003】
一方で、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルは、古くから化粧品の分野をはじめ、様々な分野で使用されている界面活性剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−219609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のデカメチルシクロペンタシロキサン(D-5)とオクタメチルシクロテトラシロキサン(D-4)を実質的に用いずに、安定性と使用感に優れた油中水型乳化組成物を提供することを課題とする発明である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題に接して、下記の発明を提供することにより、これを解決し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の成分(1)〜(4)を含有する、油中水型乳化組成物(以下、本発明の組成物ともいう)を提供する発明である。
(1)グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル
(2)25℃で粘度が50cps以下の油分(以下、低粘度油分ともいう)が、界面活性剤を除く全油分の65質量%以上を占める油相であって、かつ、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンを実質的に含有しない油相
(3)25℃で固型であり、融点が60℃以上のワックス
(4)水相
本発明の組成物において、項目(2)の低粘度油分は、下記の成分(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好適である。
(a)揮発性アルキル変性シリコーン
(b)ドデカメチルシクロヘキサシロキサン
(c)ジメチコン
(d)揮発性炭化水素油
(e)不揮発性炭化水素油
(f)IOB値が0.3未満の一価のカルボン酸アルキルエステル
【0008】
また、項目(3)の25℃で固型であり、融点が60℃以上のワックスは、ポリエチレンワックスであることが好適であり、項目(4)の水相は、保湿剤を含有し、組成物の65質量%以上を占めることが好適である。
【0009】
本発明の組成物は、さらに、疎水性粉末を含有することが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、揮発性環状シリコーン油であるデカメチルシクロペンタシロキサン(D-5)とオクタメチルシクロテトラシロキサン(D-4)を用いないにもかかわらず、安定性と使用性に優れる油中水型乳化組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<必須配合成分>
(1)グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル
本発明の組成物に配合する乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することにより、高内水相化が可能となる。
【0012】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ベヘン酸エイコサン二酸等が挙げられるが、モノイソステアリン酸グリセリルが好適である。これらのグリセリン脂肪酸エステルは、常法により合成することも可能であり、市販品も提供されている。例えば、モノイソステアリン酸グリセリルの市販品としては、サンソフト8004(太陽化学社製)が挙げられる。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンモノステアリン酸エステル、ポリグリセリンモノオレイン酸エステル、ジイソステアリン酸ジグリセリル等が挙げられ、ジイソステアリン酸ジグリセリルが好適である。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、常法により合成することも可能であり、市販品も提供されている。例えば、ジイソステアリン酸ジグリセリルの市販品としては、WOGEL-18DV(松本製薬工業社製)が挙げられる。
【0014】
グリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルは、それぞれにおいて、あるいは、双方を織り交ぜて、1種又は2種以上を、本発明の組成物に配合可能である。その配合量は、組成物に対して0.5〜5質量%が好適であり、特に好適には1〜3質量%である。
【0015】
(2)油相
本発明における油相は、後述する水相を構成する成分を除外した成分の総称であり、油分の他、粉末や界面活性剤等のうち、親油性の成分を全て含むものである。本発明の組成物における油相は、下記の特徴を伴っている。
【0016】
(特定の揮発性環状シリコーンの配合除外)
上述したように、本発明の組成物の油相には、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンは実質的に含有されない。ここで「実質的に含有されない」とは、これらの揮発性環状シリコーンの配合を全く行わないことを原則とするもので、仮に配合するとしても、これらを配合した影響が本発明の組成物に顕れない程度の配合量であることを意味するもので、具体的には、組成物の0.01質量%を上限とする程度の配合量である。
【0017】
(低粘度油分)
本発明の組成物における低粘度油分の配合量は、界面活性剤を除く全油分の65質量%以上であり、低粘度油分は、以下の成分(a)〜(f)のうち1種又は2種以上を含有することが好適である。
(a)揮発性アルキル変性シリコーン
揮発性アルキル変性シリコーンとしては、カプリリルメチコンが好適である。
(b)ドデカメチルシクロヘキサシロキサン
(c)ジメチコン
(d)揮発性炭化水素油
揮発性炭化水素油としては、イソドデカン、イソヘキサデカンが好適である。
(e)不揮発性炭化水素油
不揮発性炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワランが好適である。
(f)IOB値が0.3未満の一価のカルボン酸アルキルエステル
【0018】
当該カルボン酸アルキルエステルとしては、2−エチルヘキサン酸−2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、オクタン酸セチル等が好適なものとして挙げられる。
【0019】
なお、IOB値(Inorganic Organic Balance の略)は、いわばその油分(広義の油分を意味し、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類などの狭義の油分は勿論のこと、一般のアルコールや脂肪酸などもその範疇に含まれる。)の極性の度合いを示す指標で、無機性の有機性に対する比率を表す値〔その油分の分子中の炭素原子1個について「有機性値」を20とし,同水酸基1個について「無機性値」を100として,これを基準とした他の置換基(無機性基)の無機性値に基づいて算出される値:〔(1)藤田著「有機分析」(1930年)カニヤ書店,(2)同著「有機化合物の予測と有機概念図(化学の領域11−10)」(1957年)719〜725頁,(3)藤田および赤塚著「系統的有機定性分析(純粋物篇)」487頁(1970年)風間書店,(4)甲田著「有機概念図−基礎と応用」227頁(1984年)三共出版,(5)矢口著「有機概念図による乳化処方設計」98頁(1985年)日本エマルジョン株式会社,(6)R.H.Ewell,J.M.Harrison,L.Berg:Ind Eng Chem 36,871(1944) 〕であり、具体的には、IOB値=その油分の無機性値/その油分の有機性値で表される。
【0020】
低粘度油分は、上記(a)〜(f)の他、所定の粘度性質を有する油分の全てを含むものである。例えば、後述する実施例に開示された、メチルフェニルシリコーン、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0021】
(3)ワックス
本発明の組成物に配合されるワックスは、25℃で固型であり、融点が60℃以上のワックスである。当該ワックスは、このような性質を有し、通常、化粧料等の外用組成物に用いられるものであればよく、特に限定されるものではないが、カルナバワックス、キャンデリラロウ等のエステルワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックス;ライスワックス、ミツロウ等の天然ワックスを例示できるが、これらの中でもポリエチレンワックスが、高融点の非極性ワックスであり、50℃付近における組成物の粘度上昇を防ぎ得るという点で好適である。
【0022】
ワックスの配合量は、組成物の0.5〜2%が好適である。
【0023】
(4)水相
水相は、本発明の組成物の60質量%以上を占めることが、内水相比率を高くして、油相によるべたついた使用感と油性感を抑制する上で好適である。また、水相には、水の他に、他の水溶性成分を配合することが可能であり、特に、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の保湿剤を配合することが好適である。
【0024】
<選択的配合成分>
(1)疎水性粉末
本発明の組成物には、着色、組成物自体の安定化等の観点から、疎水性粉末を配合することが可能である。当該疎水性粉末は、それ自体が疎水性の素材の粉末、例えば、ナイロン粉末、ポリメタクリル酸粉末、ポリウレタン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、メチルシロキサン網状体粉末、窒化ホウ素粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー粉末等を挙げることができる。さらに、疎水化処理粉末も当該疎水性粉末の範疇であり、核粒子を上記の疎水性の素材の疎水性粉末粒子、又は、マイカ、タルク、セリサイト、カオリン、酸化チタン粉末、酸化鉄粉末、酸化亜鉛粉末、雲母チタン粉末、硫酸バリウム粉末、シリカ粉末、アパタイト粉末、リン酸カルシウム粉末、ゼオライト粉末等の非疎水性粉末粒子として、化粧料用途に用いられる疎水化処理粉末を調製する常法を用いて調製することが可能であり、例えば、高級脂肪酸、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれの界面活性剤をも含む)、金属石鹸、油脂、ロウ、シリコーン、フッ素化合物、炭化水素、デキストリン脂肪酸エステル等の物質の1種又は2種以上による、粉末粒子表面の処理を常法に従い行うことで、所望の疎水化処理粉末を調製することができる。
【0025】
疎水性粉末および疎水化処理粉末の粒子の粒子径は、本発明の組成物の具体的な態様に応じて適したものを用いることが可能であり、0.001〜100μm程度、一般的に好適には、0.01〜50μm程度である。また、粒子形状も、本粉末化粧料の具体的な態様に応じて適したものを用いることが可能であり、球状、板状、不定形状、針状等の粒子形状のものを用いることが可能である。
【0026】
そして、当該疎水性粉末は、1種または2種以上を、本発明の組成物に含有させることが可能であり、その配合量は、特に限定されないが、組成物に対して概ね1〜30質量%が好適である。
【0027】
(2)その他の成分
上述した諸成分の他に、必要に応じて化粧料等の外用組成物において用いられている成分を、本発明の効果を極端に損なわない量的又は質的な範囲内で配合することができる。具体的には、上記に挙げた以外の、水可溶性成分、保湿剤、油分、界面活性剤、増粘剤、各種粉体、色素、pH調整剤、紫外線吸収剤(オクチルメトキシシンナメート、ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン等)、褪色防止剤、消泡剤、薬剤、香料等が挙げられる。
【0028】
<本発明の組成物>
本発明の組成物は、通常の油中水型乳化組成物の製造方法、例えば、油中乳化剤法、交互添加法等により製造することができる。
【0029】
また、本発明の組成物の剤形・形態は、油中水型乳化組成物の採り得る剤形であれば特に限定されず、クリーム、乳液、ジェル、エッセンス、パック・マスク、W/O乳化型ファンデーション、口紅類、頬紅類、眉目類、毛髪化粧料等において用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合量は、特に断らない限り質量%である。
【0031】
<試験方法>
本発明の効果について検証するために行った試験の手法について開示する。なお、これらの試験は、全ての試験系において行ったものではなく、設定した試験系の性質に応じて適宜選択して行った。
【0032】
(1)安定性試験
5ml容のバイアルに試験品を2ml入れて栓をして、0℃、室温(25℃程度)、37℃、及び、50℃のいずれかにおいて、2週間放置し、当該期間経過後の試験品の外観を目視にて観察し、安定性の評価を行った。評価基準は、下記の通り、粘度変化と、液状成分が基剤の表面に浮いてくる「離しょう」及び分離の程度を指標として評価を行った。試験品の粘度の測定は、単一型回転粘度型ビスコメーター(TOKIMEC INC製)を用いた。試料を30℃に保ち、ローターNo.6を使用し、10rpmで測定を行なった。
【0033】
(評価基準)
◎:試験開始時と終了時における粘度変化が20%未満であり、離しょうは認められない。
○:試験開始時と終了時における粘度変化が20〜50%未満であり、離しょうは認められない。
△:試験開始時と終了時における粘度変化が50%以上であり、軽度の分離・離しょうが認められる。
×:試験開始時と終了時における粘度変化が50%以上であり、著しい分離・離しょうが認められる。
【0034】
(2)使用性試験
女性パネル15名について、洗顔後、顔面部に試験品を塗布した際の、「伸びの軽さ」と「べたつきの無さ」についての実使用試験を行った。評価基準は、下記の通りである。
【0035】
○:伸びが軽く、べたつきが無いと答えたパネルが12名以上である。
△:伸びが軽く、べたつきが無いと答えたパネルが8〜11名である。
×:伸びが軽く、べたつきが無いと答えたパネルが7名以下である。
(3)硬度試験
試験品の調製直後(試験開始時)の硬度と、0℃、室温(25℃程度)、37℃、及び、50℃のいずれかにおいて、2週間放置した後の硬度を、30℃で、カードメーターを用いて、200g荷重で8mmφのステンレス製の針を進入させて計測した。
【0036】
<試験結果等>
(1)配合する油分の検討
本発明について発揮されるべき効果のうち、安定性がどのような油分を選択することによって発揮されるかについての基礎的な検討を行った。用いた処方と安定性試験の結果を表1に示す。表1には、各油分のIOB値も示している。
【0037】
なお、この検討を行うための試験処方には、油分の安定性に対する影響を明確に把握するために、本発明の組成物の必須成分であるワックスの配合は行っていない。各試験例は、油分と界面活性剤を均一に混合後、ホモジナイザーを用いて水相成分を徐々に添加しながら油中水型の乳化を行った。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果より、IOBが0.3未満の一価のカルボン酸アルキルエステル油を主要な油分として用いると、比較的安定な油中水型の乳化組成物が得られることが明らかになった。それに対して、IOBが0.3以上の極性の高い油分を主要な油分として用いると、乳化安定性が著しく低下することが明らかになった。
【0040】
(2)ワックス配合の効果の検討
次に、ワックスを配合した試験品について、使用性に対する影響を安定性に併せて検討した。ワックスは、25℃で固型で融点が60℃以上の天然ワックスであるライスワックスを用いた。各試験例は、油分、ワックス、疎水化処理粉末及び界面活性剤を85℃まで加熱し、ホモジナイザーを用いて均一に混合後、ホモジナイザーを用いて、85℃に予め加温した水相成分を徐々に添加しながら油中水型の乳化を行い。氷浴中で攪拌しながら室温まで冷却を行った。
【0041】
【表2】

【0042】
表2の結果より、ライスワックスを配合した系においては、他の要件が揃っている限り、安定性と使用性、共に良好であることが明らかになった。ただし、粘度が50cpsを超えるジメチコンを配合した系(試験例16)と、流動パラフィンを5質量%配合した系(試験例20)と、カプリリルメチコンを抜去した系(試験例21)については、使用性に問題が認められた。
【0043】
(3)配合に適したワックスの検討
次に、配合するワックスの種類による試験品に与える性質(硬度と安定性)について検討を行った(表3)。試験品の製造方法は、表2の例に準じた。
【0044】
【表3】

【0045】
表3の結果より、極性の高いエステルワックスである、キャンデリラロウやカルナバロウを用いた例(試験例26,27)では、50℃で分離が生じ、安定性に明らかな問題が認められた。また、パラフィンワックスを用いると、50℃保存品の経時硬度が著しく上昇した(試験例25)。この原因は、パラフィンワックスが50℃で一部溶解し、30℃に戻す際にワックスの結晶成長が促進されて、硬度が上がったものと考えられる。分岐型のパラフィンワックスであるマイクロクリスタリンワックスを用いた例(試験例23)は、ワックスの固化力が劣るために、安定性に著しい問題が認められた。これらに対して、非極性のポリエチレンワックスを全部又は一部のワックスとして用いた試験例(試験例24,28)は、硬度の上昇も抑制され、良好な結果を得ることができることが明らかになった。
【0046】
(4)配合するワックスの量の検討
次に、表3の結果より、本発明において好適なワックスの一つとして明らかになった、ポリエチレンワックスの好適な配合量について検討した(表4)。試験品の製造方法は、表2の例に準じた。
【0047】
【表4】

【0048】
表4の結果により、ポリエチレンワックスの配合量が組成物の2質量%を超えると使用感の評価が悪化し、50℃保存品の硬度が初期の硬度から40%程度上昇した。逆に、ワックス量が0.5質量%未満では、50℃で分離・離しょうが認められた。よって、本発明の組成物におけるワックスの好適な配合量は、組成物の0.5〜2質量であることが明らかになった。
【0049】
(5)典型的な配合の開示
次に、表5に、本発明の組成物の典型的な配合と、各試験の結果を示した。試験品の製造方法は、表2の例に準じた。
【0050】
【表5】

【0051】
表5に示した2例の結果は、いずれも良好なものであり、モノイソステアリン酸グリセリルに代えて、ジイソステアリン酸ジグリセリルを用いても良好な結果が得られることが明らかになった。
【0052】
(6)処方例
以下に、本発明の組成物のその他の処方例を記載する。
[処方例1] サンスクリーン
配合成分 配合量(質量%)
モノイソステアリン酸グリセリル 2.5
両末端シリコーン変性ポリグリセリン 1.0
トリメチルシロキシケイ酸 0.5
流動パラフィン 0.5
オクチルメトキシシンナメート 5.0
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.5
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.1
カプリリルメチコン 5.0
2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル 5.0
ポリエチレンワックス 0.75
脂肪酸アルミニウム処理微粒子酸化チタン 8.0
球状PMMA 3.0
球状シリコーン樹脂粉末 2.0
塩化ナトリウム 1.0
メチルパラベン 0.2
ダイナマイトグリセリン 2.5
1,3−ブチレングリコール 4.0
ジプロピレングリコール 1.0
イオン交換水 残量
【0053】
<製造方法>
油分、ワックス、疎水化処理粉末及び界面活性剤を85℃まで加熱し、ホモジナイザーを用いて均一に混合後、ホモジナイザーを用いて、85℃に予め加温した水相成分を徐々に添加しながら油中水型の乳化を行い。氷浴中で攪拌しながら室温まで冷却を行った。
【0054】
[処方例2] サンスクリーン
配合成分 配合量(質量%)
モノイソステアリン酸グリセリル 2.5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.0
トリメチルシロキシケイ酸 0.5
流動パラフィン 0.5
オクチルメトキシシンナメート 5.0
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.5
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.1
カプリリルメチコン 5.0
2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル 5.0
ポリエチレンワックス 0.75
脂肪酸アルミニウム処理微粒子酸化チタン 3.0
シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 5.0
球状PMMA 3.0
球状シリコーン樹脂粉末 2.0
塩化ナトリウム 1.0
メチルパラベン 0.2
ダイナマイトグリセリン 2.5
エチルアルコール 2.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
ジプロピレングリコール 1.0
イオン交換水 残量
【0055】
<製造方法>
油分、ワックス、疎水化処理粉末及び界面活性剤を85℃まで加熱し、ホモジナイザーを用いて均一に混合後、ホモジナイザーを用いて、85℃に予め加温した水相成分を徐々に添加しながら油中水型の乳化を行い。氷浴中で攪拌しながら室温まで冷却を行った。
【0056】
[処方例3] ファンデーション
配合成分 配合量(質量%)
モノイソステアリン酸グリセリル 2.5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.5
トリメチルシロキシケイ酸 0.5
流動パラフィン 0.5
オクチルメトキシシンナメート 2.0
カプリリルメチコン 5.0
ジメチコン 1.0
2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル 5.0
ポリエチレンワックス 0.75
アルキル変性シリコーン樹脂被覆黄酸化鉄 2.0
アルキル変性シリコーン樹脂被覆ベンガラ 0.5
アルキル変性シリコーン樹脂被覆黒酸化鉄 0.1
アルキル変性シリコーン樹脂被覆無水ケイ酸 1.0
アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化チタン 10.0
シリコーン処理赤干渉パールマイカ 0.5
球状シリコーン樹脂粉末 2.0
塩化ナトリウム 1.0
メチルパラベン 0.2
ダイナマイトグリセリン 2.5
エチルアルコール 1.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
イオン交換水 残量
【0057】
<製造方法>
油分、ワックス、疎水化処理粉末及び界面活性剤を85℃まで加熱し、ホモジナイザーを用いて均一に混合後、ホモジナイザーを用いて、85℃に予め加温した水相成分を徐々に添加しながら油中水型の乳化を行い。氷浴中で攪拌しながら室温まで冷却を行った。
【0058】
[処方例3] ファンデーション
配合成分 配合量(質量%)
モノイソステアリン酸グリセリル 2.5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.5
トリメチルシロキシケイ酸 0.5
流動パラフィン 0.5
オクチルメトキシシンナメート 2.0
カプリリルメチコン 5.0
ジメチコン 1.0
2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル 5.0
ポリエチレンワックス 0.75
アルキル変性シリコーン樹脂被覆黄酸化鉄 2.0
アルキル変性シリコーン樹脂被覆ベンガラ 0.5
アルキル変性シリコーン樹脂被覆黒酸化鉄 0.1
アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化チタン 10.0
アルキル変性シリコーン樹脂被覆セリサイト 1.0
シリコーン処理赤干渉パールマイカ 0.5
球状シリコーン樹脂粉末 2.0
塩化ナトリウム 1.0
メチルパラベン 0.2
ダイナマイトグリセリン 2.5
エチルアルコール 1.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
イオン交換水 残量
【0059】
<製造方法>
油分、ワックス、疎水化処理粉末及び界面活性剤を85℃まで加熱し、ホモジナイザーを用いて均一に混合後、ホモジナイザーを用いて、85℃に予め加温した水相成分を徐々に添加しながら油中水型の乳化を行い。氷浴中で攪拌しながら室温まで冷却を行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(1)〜(4)を含有する、油中水型乳化組成物。
(1)グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル
(2)25℃で粘度が50cps以下の油分が、界面活性剤を除く全油分の65質量%以上を占める油相であって、かつ、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンを実質的に含有しない油相
(3)25℃で固型であり、融点が60℃以上のワックス
(4)水相
【請求項2】
25℃で粘度が50cps以下の油分は、下記の成分(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する、請求項1に記載の油中水型乳化組成物。
(a)揮発性アルキル変性シリコーン
(b)ドデカメチルシクロヘキサシロキサン
(c)ジメチコン
(d)揮発性炭化水素油
(e)不揮発性炭化水素油
(f)IOB値が0.3未満の一価のカルボン酸アルキルエステル
【請求項3】
25℃で固型であり、融点が60℃以上のワックスは、ポリエチレンワックスである、請求項1又は2に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項4】
水相は、保湿剤を含有し、組成物の60質量%以上を占める、請求項1〜3のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
【請求項5】
さらに、疎水性粉末を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。

【公開番号】特開2011−1295(P2011−1295A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145214(P2009−145214)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】