説明

油圧アクチュエータシステム

【課題】油圧アクチュエータによって内燃機関の弁装置を駆動する場合に、エネルギー消費を抑制すること。
【解決手段】油圧アクチュエータシステム10は、作動油Lによってシリンダ21内をピストン22が往復運動する油圧アクチュエータ20と、油圧アクチュエータ20への作動油Lの供給を制御する切替弁16と、切替弁16の戻りポート16Rから戻される油圧アクチュエータ20から戻される作動油Lを、切替弁16又は油圧アクチュエータ20に戻す戻し配管17と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータを有する油圧アクチュエータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が有する給排気弁の制御の自由度を向上させるため、油圧アクチュエータ及び油圧サーボ弁等を用いて給排気弁を制御する油圧式の弁駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−257319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧アクチュエータで内燃機関の給排気弁(弁装置)を駆動する場合は、油圧アクチュエータを駆動する駆動源が必要となる。また、油圧アクチュエータを駆動するための作動油の圧力及び流量は、弁装置の動作の各時刻で異なるが、作動油を供給する油圧ポンプを給排気弁の動作に合わせて駆動することは難しい。このため、油圧ポンプは、常時、一定の圧力及び流量で作動油を供給できるようにしている。その結果、カムにより弁装置を駆動する場合と比較すると、エネルギー消費が大きくなる傾向がある。本発明は、油圧アクチュエータによって内燃機関の弁装置を駆動する場合に、エネルギー消費を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、作動油によってシリンダ内をピストンが往復運動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御する切替弁と、前記切替弁の戻りポートから吐出される前記油圧アクチュエータからの作動油を、前記切替弁又は前記油圧アクチュエータに戻す戻し配管と、を含むことを特徴とする油圧アクチュエータシステムである。
【0006】
この油圧アクチュエータシステムは、油圧アクチュエータから戻される作動油を、切替弁又は油圧アクチュエータに戻して利用する。このように、これまで利用されていなかった油圧アクチュエータから戻される作動油を切替弁又は油圧アクチュエータの駆動に利用することにより、油圧アクチュエータによって内燃機関の弁装置を駆動する場合に、エネルギー消費を抑制することができる。
【0007】
本発明において、前記切替弁の戻りポートに接続されるリリーフ弁を有し、前記戻し配管は、前記戻りポートと前記リリーフ弁との間から、前記切替弁のパイロットポートに前記作動油を戻すことが好ましい。このように、油圧アクチュエータから戻される作動油を、切替弁の駆動に利用することにより、油圧アクチュエータによって内燃機関の弁装置を駆動する場合に、エネルギー消費を抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記油圧アクチュエータの前記ピストンには、前記ピストンの移動により伸縮するばね部材が取り付けられることが好ましい。このようにすることで、油圧アクチュエータのピストンの移動によりばねに蓄えられたエネルギーも回収することができる。
【0009】
本発明において、前記戻りポートと前記リリーフ弁との間に接続されるアキュムレータを有することが好ましい。油圧アクチュエータからは、作動油が間欠的に戻されるが、アキュムレータにより間欠的に供給されるエネルギーを平準化して利用することができる。
【0010】
本発明において、前記ピストンの移動により伸縮するばね部材と、前記戻し配管に設けられる昇圧装置と、を有し、前記戻し配管は、前記切替弁の戻りポートから、前記油圧アクチュエータに戻すことが好ましい。このように、油圧アクチュエータから戻される作動油を、油圧アクチュエータの駆動に利用することにより、油圧アクチュエータによって内燃機関の弁装置を駆動する場合に、エネルギー消費を抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記油圧アクチュエータは、内燃機関の吸気弁と排気弁との少なくとも一方に取り付けられて、前記吸気弁と前記排気弁との少なくとも一方を開閉することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、油圧アクチュエータによって内燃機関の弁装置を駆動する場合に、エネルギー消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態1に係る油圧アクチュエータシステムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る油圧アクチュエータシステムの構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施形態2に係る油圧アクチュエータシステムの構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施形態2に係る油圧アクチュエータシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
(実施形態1)
図1、図2は、実施形態1に係る油圧アクチュエータシステムの構成例を示す図である。本実施形態において、油圧アクチュエータシステム10は、内燃機関の弁装置2を駆動するために用いられる。なお、油圧アクチュエータシステム10の適用対象はこれに限定されるものではない。内燃機関は、シリンダ内で燃料を燃焼させることによりピストンを往復運動させ、クランクシャフトを介してピストンの往復運動を回転運動に変換し、動力として取り出すものである。内燃機関は、シリンダ内に燃料又は空気を導入するための吸気弁2I及びシリンダ内から排ガスを排出させる排気弁2Eを備える。以下、吸気弁2I及び排気弁2Eを、弁装置2という。
【0016】
弁装置2は、弁体3と、ばね4と、ストッパ5とを有する。弁体3は、傘部3Aと、傘部3Aに連結した軸部3Sとで構成される。ばね4は、金属の線材が複数回巻き回されたコイルばねであり、内側に軸部3Sが貫通する。ストッパ5は、傘部3Aとは反対側における軸部3Sの端部に取り付けられて、ばね4が軸部3Sから脱落することを防止する。ばね4の一端部はストッパ5に接し、他端部は、内燃機関のシリンダヘッド6に接する。ばね4は、ストッパ5とシリンダヘッド6との間で圧縮されている。このため、ばね4の圧縮力により、弁体3の傘部3Aは、シリンダヘッド6に押し付けられている。
【0017】
油圧アクチュエータシステム10は、油圧アクチュエータ20と、切替弁16と、戻し配管としての戻し配管17Rと、を含む。油圧アクチュエータ20は、シリンダ21と、シリンダ21内に配置されるピストン22とを含む。ピストン22には、ピストンロッド23が連結されている。ピストンロッド23は、シリンダ21の一方の端部からシリンダ21の外部へ取り出される。ピストン22は、シリンダ21内を第1油室21Aと第2油室21Bとに仕切る。第1油室21Aと第2油室21Bとには、それぞれ作動油Lが供給され、また排出される。第1油室21A及び第2油室21Bのうち、ピストンロッド23とは反対側が第1油室21Aであり、ピストンロッド23側が第2油室21Bである。
【0018】
切替弁16は、スプール16Sと、圧力ポート16Pと、戻りポート16Rと、シリンダポート16Cと、パイロットポート16Mとを有する。スプール16Sは、油圧アクチュエータ20の第1油室21Aに作動油Lを供給する供給部16Aと、第1油室21Aから作動油Lを排出する排出部16Bとを有する。スプール16Sは、パイロットポート16Mに供給される作動油Lによって動作する。スプール16Sは、供給部16Aと排出部16Bとを交互に切り替えることにより、油圧アクチュエータ20の第1油室21Aに作動油Lを供給し、また、第1油室21Aから作動油Lを排出する。圧力ポート16Pは、作動油供給源としての油圧ポンプ11の吐出口11Eと接続されている。シリンダポート16Cは、第1配管13によって油圧アクチュエータ20の第1油室21Aと接続されている。戻りポート16Rには、排油配管17が接続されている。
【0019】
排油配管17からは、戻し配管17Rが分岐している。戻し配管17Rは、パイロットポート16Mに接続されている。すなわち、戻し配管17Rは、戻戻し配管17Rとパイロットポート16Mとを接続している。このような構造により、戻し配管17Rは、切替弁16の戻りポート16Rから戻される油圧アクチュエータ20からの作動油Lを、切替弁16(より具体的には、パイロットポート16M)に戻す。また、排油配管17には、アキュムレータ17Aが接続される。
【0020】
排油配管17は、切替弁16から送られる、油圧アクチュエータ20から排出された作動油Lを、作動油溜め12に排出する。排油配管17の途中には、逆止弁18Rが設けられる。逆止弁18Rは、切替弁16の戻りポート16Rから作動油溜め12へ向かう作動油Lが所定の圧力を超えると開き、作動油Lを作動油溜め12へ排出する。逆止弁18Rは、作動油溜め12から切替弁16の切替弁16の戻りポート16Rへ向かう作動油Lは通過させない。
【0021】
油圧ポンプ11は、作動油溜め12から作動油Lを吸い上げ、加圧してから吐出する。油圧ポンプ11の吐出口11Eは、加圧した作動油Lを切替弁16に吐出する。また、油圧ポンプ11の吐出口11Eは、第2配管14によって、油圧アクチュエータ20の第2油室21Bに接続される。このような構造により、油圧ポンプ11は、油圧アクチュエータ20の第2油室21Bに作動油Lを供給する。
【0022】
第2配管14には、アキュムレータ14Aが接続されている。さらに、油圧ポンプ11の吐出口11Eは、分岐配管15が接続されている。分岐配管15には、吐出口11Eから作動油溜め12へ向かう作動油Lの流れを許容する逆止弁15Rが設けられている。逆止弁15Rは、何らかの原因で、油圧ポンプ11の吐出口11Eにおける作動油Lの圧力が異常上昇したとき等に、作動油Lを作動油溜め12へ逃がす、安全弁の機能を有している。次に、油圧アクチュエータ20及び弁装置2の動作を説明する。
【0023】
図1は、弁装置2が開いている、すなわち、弁体3が開いている状態を示している。弁装置2を開く場合、スプール16Sの供給部16Aは、圧力ポート16Pとシリンダポート16Cとの間に配置される。供給部16Aにより、圧力ポート16Pとシリンダポート16Cとが接続されるので、油圧ポンプ11から吐出された作動油Lは、シリンダポート16C及び第1配管13を通り、油圧アクチュエータ20の第1油室21Aに作動油Lが供給される。
【0024】
油圧アクチュエータ20の第1油室21A側におけるピストン22の受圧面積をA1、第2油室21B側におけるピストン22の受圧面積をA2、ピストンロッド23の断面積をD3とすると、A2=A1−D3になる。すなわち、A1>A2になる。油圧ポンプ11から吐出される作動油Lの圧力をPsとすると、第1油室21Aに作動油Lを供給した場合、第1油室21A側のピストン22が第1油室21Aの作動油Lから受ける力はPs×A1となり、第2油室21B側のピストン22が第2油室21Bの作動油Lから受ける力は、Ps×A2となる。A1>A2なので、第1油室21Aに作動油Lが供給されると、ピストン22は、第1油室21Aから第2油室21Bへ向かって移動する。
【0025】
すると、第1油室21A内の作動油Lの体積が大きくなるので、第2油室21Bから作動油Lが排出される。第2油室21Bから排出された作動油Lは、第2配管14を通ってアキュムレータ14Aに流入し、この内部の気体を圧縮する。アキュムレータ14Aは、内部に流入した作動油Lによって内部の気体が圧縮されるので、圧力を蓄える。
【0026】
油圧アクチュエータ20の第1油室21Aに作動油Lが供給されると、ピストン22は第1油室21Aから第2油室21Bに向かって移動して、ピストンロッド23をシリンダ21から押し出す。すると、ピストンロッド23は、弁装置2の弁体3、より具体的には軸部3Sの傘部3Aとは反対側の端部を押して、弁体3を内燃機関のシリンダ内に押し出す。この動作により、油圧アクチュエータ20は、弁装置2を開く。このとき、図1に示すように、ばね4は圧縮される。
【0027】
図2は、弁装置2が閉じている、すなわち、弁体3が閉じている状態を示している。弁装置2を閉じる場合、図2に示すように、スプール16Sの排出部16Bは、シリンダポート16Cと戻りポート16Rとの間に配置される。排出部16Bにより、シリンダポート16Cと戻りポート16Rとが接続されるので、油圧アクチュエータ20の第1油室21Aは、第1配管13とシリンダポート16Cと戻りポート16Rとを介して排油配管17と接続される。このため、排油配管17に設けられた逆止弁18Rには、第1油室21A内の作動油Lの圧力P1が作用する。
【0028】
油圧アクチュエータ20の第2油室21Bには、第2配管14を介して油圧ポンプ11から圧力Psの作動油Lが供給される。このとき、第2油室21B側のピストン22は、第2油室21Bの作動油LからPs×A2の力を受ける。したがって、第1油室21A内における作動油Lの圧力P1は、Ps×A2/A1である。逆止弁18Rの開弁圧力PrがP1よりも大きい場合、第1油室21Aから作動油Lは排出されない。このため、Pr<P1に設定される。後述するように、油圧アクチュエータシステム10は、第1油室21Aから排出された作動油Lを切替弁16のパイロットポート16Mに導き、スプール16Sを動作させる。このため、逆止弁18Rの開弁圧力Prは、スプール16Sの動作に必要な圧力(パイロット圧力)Pmよりも大きく設定される。
【0029】
油圧アクチュエータシステム10は、排油配管17にアキュムレータ17Aが接続されている。アキュムレータ14A内の最高使用圧力は、P1よりも小さく設定される。このようにすることで、シリンダポート16Cと戻りポート16Rとが接続されると、油圧アクチュエータ20の第1油室21A内の作動油Lは、第1配管13、シリンダポート16C、戻りポート16R及び排油配管17を通ってアキュムレータ17Aに流入する。この作動油Lによってアキュムレータ17A内の気体が圧縮されるので、アキュムレータ17Aは圧力を蓄える。
【0030】
スプール16Sの排出部16Bがシリンダポート16Cと戻りポート16Rとの間に配置されると、油圧アクチュエータ20の第2油室21Bへ油圧ポンプ11から作動油Lが流入し、第1油室21Aからは作動油Lが排出される。第1油室21Aから排出された作動油Lは、一部をアキュムレータ17Aが吸収し、一部は切替弁16のパイロットポート16Mに供給されて、残りは逆止弁18Rを通って作動油溜め12へ排出される。このような作動油Lの流れによって、ピストン22は、第2油室21Bから第1油室21Aへ向かって移動する。
【0031】
その結果、ピストン22は、ピストンロッド23をシリンダ21内に引き込む。すると、ピストンロッド23は、弁装置2の弁体3から離れるので、弁体3はピストンロッド23が押す力から解放される。弁装置2の弁体3は、ばね4により、内燃機関のシリンダヘッド6に押し付けられる。この動作により、油圧アクチュエータ20は、弁装置2を閉じる。切替弁16の圧力ポート16Pとシリンダポート16Cと戻りポート16Rとの間で、スプール16Sの供給部16Aと排出部16Bとが交互に切り替えられると、第1油室21Aへの給排油及び第2油室21Bへの排給油が繰り返される。その結果、ピストン22は、シリンダ21内を往復運動する。ピストン22の往復運動により、弁装置2の開閉が繰り返される。
【0032】
油圧アクチュエータ20の第1油室21Aから排出された作動油Lの圧力は、排油配管17及び戻し配管17Rを介して切替弁16のパイロットポート16Mに与えられる。アキュムレータ17Aに蓄えられた圧力も、戻し配管17Rから切替弁16のパイロットポート16Mに与えられる。その結果、油圧アクチュエータシステム10は、油圧アクチュエータ20から排出された作動油Lの圧力を利用して切替弁16のスプール16Sを動作させることができる。これまでは、油圧アクチュエータ20から排出された作動油Lをそのまま作動油溜め12へ排出していたが、油圧アクチュエータシステム10は、上述したように、油圧アクチュエータ20から排出された作動油Lのエネルギーを回収し、有効利用することができる。その結果、油圧アクチュエータシステム10は、油圧アクチュエータ20を駆動するためのエネルギーを有効に利用することができる。また、油圧アクチュエータ20からは、作動油Lが間欠的に戻されるが、アキュムレータ17Aは、間欠的に供給されるエネルギーを蓄えてから放出する。このため、油圧アクチュエータシステム10は、間欠的に供給される油圧アクチュエータ20からのエネルギーを平準化して利用することができる。
【0033】
弁装置2が開く場合、ばね4は圧縮される。弁装置2が閉じる場合、ばね4は伸長する。ばね4が伸長すると、ばね4が圧縮されたときに蓄えられたエネルギーを放出する。このエネルギーは、油圧アクチュエータ20を介して回収することができる。具体的には、弁装置2が閉じるときにばね4が伸長するときのエネルギーは、油圧アクチュエータ20の第1油室21Aから作動油Lを排出させるためのエネルギーの一部として用いられる。このため、ばね4のエネルギーは、上述したように、切替弁16のパイロットポート16Mに供給されて、スプール16Sを動作させることにより回収される。なお、油圧アクチュエータシステム10は、弁装置2にばね4を設けず、油圧アクチュエータ20で直接弁装置2を駆動する場合でも、油圧アクチュエータ20から排出された作動油Lの持つエネルギーを回収することができる。
【0034】
(実施形態2)
図3、図4は、実施形態2に係る油圧アクチュエータシステムの構成例を示す図である。この油圧アクチュエータシステム10aは、弁装置2が有するばね4のエネルギーを、ブースター19を介して回収するものである。実施形態1の油圧アクチュエータシステム10と共通する要素については説明を省略する。
【0035】
切替弁16の戻りポート16Rにはブースター19が接続されている。ブースター19の吐出口19Eは、油圧ポンプ11の吐出口11Eに接続されている。ブースター19は、シリンダ19Sと、入力ピストン19Pと、出力ピストン19PLと、戻しばね19Rとを含む。出力ピストン19PLは、入力ピストン19Pに取り付けられており、両者は、シリンダ19S内を往復運動する。入力ピストン19Pは、ブースター19の入口19I側に配置される。出力ピストン19PLは、ブースター19の吐出口19E側に配置される。戻しばね19Rは、入力ピストン19P及び出力ピストン19PLに、入口19I側へ向かう力を付与する。
【0036】
入力ピストン19Pの断面積Aiは、出力ピストン19PLの断面積Aeよりも大きい。このため、ブースター19は、入口19Iから流入した作動油Lの圧力が、Ai/Ae倍に増大された作動油Lを、吐出口19Eから吐出する。ブースター19は、油圧ポンプ11から吐出される作動油Lの圧力よりも高い圧力の作動油Lを吐出できるように、入力ピストン19Pの断面積Aiと出力ピストン19PLの断面積Aeとが設定される。このようにすることで、ブースター19から吐出された作動油Lは、油圧ポンプ11の吐出口11E側に戻され、油圧ポンプ11から吐出された作動油Lとともに、切替弁16の圧力ポート16Pに供給される。
【0037】
図3は、弁装置2が開いている状態を示している。この状態において、弁装置2のばね4は圧縮されている。図4は、弁装置2が閉じている状態を示している。この状態において、弁装置2のばね4は伸長している。ばね4が伸長するときに発生するエネルギーは、油圧アクチュエータ20の第1油室21Aから作動油Lを排出させるためのエネルギーの一部として用いられる。弁装置2が閉じられるとき、すなわち、縮められたばね4が伸長するときに、切替弁16を供給部16Aから排出部16Bに切り替えると、図4に示すように、シリンダポート16Cと、戻りポート16Rとが接続される。
【0038】
すると、シリンダポート16Cと戻りポート16Rとを介して、第1配管13とブースター19の入口19Iとが接続される。この状態になると、第1油室21Aの作動油Lは、第1配管13、シリンダポート16C及び戻りポート16Rを介してブースター19の内部へ流入する。ブースター19の内部へ流入した作動油Lは、入力ピストン19Pを出力ピストン19PLとともに、吐出口19Eに向かって移動させる。この動作によって、ブースター19は、入口19Iから流入した作動油Lの圧力を増幅して吐出口19Eから吐出し、油圧ポンプ11の吐出口11E側に戻し、結果として、油圧アクチュエータ20に戻す。ブースター19から作動油Lが油圧ポンプ11の吐出口11E側に戻されるので、その分、油圧ポンプ11が吐出する作動油Lの量が低減される。このように、油圧アクチュエータシステム10aは、弁装置2のばね4のエネルギーを回収して、油圧ポンプ11の仕事量を低減させることができる。なお、アキュムレータ14Aに蓄えられたエネルギーも、ばね4のエネルギーと同様に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
2 弁装置
2I 吸気弁
2E 排気弁
3 弁体
3A 傘部
3S 軸部
5 ストッパ
6 シリンダヘッド
10、10a 油圧アクチュエータシステム
11 油圧ポンプ
11E 吐出口
13 第1配管
14 第2配管
14A、17A アキュムレータ
15 分岐配管
15R、18R 逆止弁
16 切替弁
16A 供給部
16B 排出部
16C シリンダポート
16M パイロットポート
16P 圧力ポート
16R 戻りポート
16S スプール
17 排油配管
17R 戻し配管
19 ブースター
19E 吐出口
19I 入口
19P 入力ピストン
19PL 出力ピストン
19R 戻しばね
19S シリンダ
20 油圧アクチュエータ
21 シリンダ
21A 第1油室
21B 第2油室
22 ピストン
23 ピストンロッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油によってシリンダ内をピストンが往復運動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御する切替弁と、
前記切替弁の戻りポートから吐出される前記油圧アクチュエータからの作動油を、前記切替弁又は前記油圧アクチュエータに戻す戻し配管と、
を含むことを特徴とする油圧アクチュエータシステム。
【請求項2】
前記切替弁の戻りポートに接続されるリリーフ弁を有し、
前記戻し配管は、前記戻りポートと前記リリーフ弁との間から、前記切替弁のパイロットポートに前記作動油を戻す請求項1に記載の油圧アクチュエータシステム。
【請求項3】
前記油圧アクチュエータの前記ピストンには、前記ピストンの移動により伸縮するばね部材が取り付けられる請求項2に記載の油圧アクチュエータシステム。
【請求項4】
前記戻りポートと前記リリーフ弁との間に接続されるアキュムレータを有する請求項2又は3に記載の油圧アクチュエータシステム。
【請求項5】
前記ピストンの移動により伸縮するばね部材と、
前記戻し配管に設けられる昇圧装置と、を有し、
前記戻し配管は、前記切替弁の戻りポートから、前記油圧アクチュエータに戻す請求項1に記載の油圧アクチュエータシステム。
【請求項6】
前記油圧アクチュエータは、内燃機関の吸気弁と排気弁との少なくとも一方に取り付けられて、前記吸気弁と前記排気弁との少なくとも一方を開閉する請求項1から5のいずれか1項に記載の油圧アクチュエータシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−172675(P2012−172675A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39072(P2011−39072)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】