説明

油圧システムのポンプ制御装置

【課題】旋回起動時のリリーフによるエネルギーロスを減らしエネルギー効率を向上するとともに、旋回起動後の等速移行過程では必要な流量を旋回モータに供給してスムーズに等速旋回に到達させ、複合操作性と作業効率を向上することができる油圧システムのポンプ制御装置を提供する。
【解決手段】旋回起動時は、コントローラ38のポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45で第2油圧ポンプ3の吐出圧力に応じて第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクをTbとTcとに変更する制御を行い、旋回と他の動作との旋回複合操作では、減算部47で全体ポンプトルクTr0から第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクTp2を差し引く演算を行うことで、第2油圧ポンプ3の減トルク分を旋回モータ7以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプ2に振り分ける制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に備えられる油圧システムのポンプ制御装置に係わり、特に、上部旋回体を有する建設機械の油圧駆動システムにおいて、作業状態に応じ複数の油圧ポンプのトルク配分を制御するポンプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上部旋回体を有する建設機械の代表例として油圧ショベルがある。この油圧ショベルの油圧システムでは、油圧ポンプの押しのけ容積を制御するレギュレータにトルク制御機能を付加したポンプ制御装置を用いることが多い。レギュレータにトルク制御機能を付加したポンプ制御装置は、油圧ポンプの吐出圧力をレギュレータに導き、油圧ポンプの吐出圧力が上昇して油圧ポンプの吸収トルクが設定した最大吸収トルクに達すると、それ以上油圧ポンプの吐出圧力の上昇に対しては油圧ポンプの押しのけ容積を減らすよう制御し、油圧ポンプの吸収トルクが設定した最大吸収トルクを超えないよう制御するものであり、これにより原動機の過負荷によるエンジンストールが防止される。
【0003】
また、油圧ポンプが2つ以上ある場合は、一般に、全馬力制御と呼ばれるトルク制御を行うポンプ制御装置が用いられる。これは、例えば特許文献1に記載のように、2つの油圧ポンプ(以下第1及び第2油圧ポンプという)のそれぞれのレギュレータに第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの両方の吐出圧力を導き、第1油圧ポンプの吸収トルクと第2油圧ポンプの吸収トルクの和が設定した最大吸収トルクに達すると、それ以上油圧ポンプの吐出圧力の上昇に対して第1及び第2油圧ポンプのそれぞれの押しのけ容積を減らすよう制御するものであり、これにより第1及び第2油圧ポンプのそれぞれに係わるアクチュエータが単独で駆動される場合は、第1及び第2油圧ポンプに割り当てられた全馬力を利用することができ、原動機出力の有効利用が可能となる。
【0004】
また、油圧ポンプが2つ以上ある場合のポンプ制御装置として特許文献2に記載のものがある。これは、複数の操作レバーからの電気信号に基づいて複数のアクチュエータのうちの2つのアクチュエータを同時に作動させる作業であると判定した場合、その2つのアクチュエータの組み合わせに応じて、2つのアクチュエータのそれぞれに接続される複数の油圧ポンプに配分されるエンジン出力の配分割合を設定し、その配分割合になるように複数の油圧ポンプのそれぞれの傾転角を制御するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−73960号公報
【特許文献2】特許第3576064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧ショベル等の上部旋回体を備えた建設機械においては、上部旋回体を停止した状態から起動する旋回起動時(旋回起動直後の加速時も含む、以下同)は、上部旋回体はアクチュエータである旋回モータにとって大きな慣性負荷となるため、油圧ポンプの吐出圧力は急激に上昇してリリーフ弁により決定される最大圧力(リリーフ圧)に達し、リリーフ弁から圧油がリリーフすることによるエネルギーロスを発生する。このとき、油圧ポンプの吐出流量が多すぎると、エネルギーロスが増加しエネルギー効率が低下する。また、上部旋回体が加速して旋回速度が上がっていくとともにリリーフ弁からのリリーフ流量は無くなり、油圧ポンプから旋回モータへの流量の供給が追いつかなくなるため、油圧ポンプの吐出圧力は下がり始める。このとき、油圧ポンプの吐出流量が少なすぎると、必要な流量を旋回モータに供給してスムーズに等速旋回に到達させることができず、作業効率が低下する。
【0007】
特許文献1及び2記載のポンプ制御装置では、旋回単独操作での旋回起動時は、旋回モータに係わる1つの油圧ポンプで全馬力(全トルク)を消費するようトルク制御されるため、油圧ポンプの押しのけ容積の減少力は少なく、油圧ポンプの吐出流量は必要量より多くなり、比較的大量の圧油がリリーフ弁よりリリーフする。その結果、リリーフによるエネルギーロスが多く、エネルギー効率が低下するとともに、発熱や高熱による油圧機器の損傷を招きやすい。
【0008】
また、油圧ショベル等の建設機械においては、旋回モータ以外にも複数の油圧シリンダや油圧モータを備え、旋回モータとそれ以外のアクチュエータを同時に駆動する旋回複合操作による作業が行われる。
【0009】
特許文献1記載のポンプ制御装置では、全馬力制御により2つの油圧ポンプは連携して同じ押しのけ容積となるよう制御されるため、旋回複合操作での旋回起動時は、旋回モータに係わる油圧ポンプの吐出流量は多めとなり、リリーフによるエネルギーロスが多くなるなど、旋回単独操作での旋回起動時と同様の問題を生じる可能性がある。また、旋回複合操作によって行う作業の種類によっては、旋回モータ以外のアクチュエータに係わる油圧ポンプの吐出流量を多くしたい場合がある。例えば、土掘削後に旋回とブーム上げを複合し、トラック又はダンプのべッセル上に土を運ぶような旋回ブーム上げ作業では、旋回起動時はブームは速く上がり、その後上部旋回体を速かに回転するようにできれば、複合操作性と作業効率を向上させることができる。特許文献1記載のポンプ制御装置では、このような旋回ブーム上げ作業を行う際、全馬力制御に伴う流量減によって旋回起動時のブーム上がり量や旋回起動後の旋回速度が不足し、複合操作性と作業効率が低下する可能性がある。
【0010】
特許文献2記載のポンプ制御装置では、複数の油圧ポンプのエンジン出力の配分割合が一定であるため、旋回起動時に旋回モータ以外のアクチュエータに係わる油圧ポンプの吐出流量が多くなるよう配分割合を設定すると、旋回モータに係わる油圧ポンプの吐出流量が少なくなるため、旋回起動後の等速移行過程において必要な流量を旋回モータに供給することができず、スムーズに等速旋回に到達させることができない。
【0011】
本発明の第1の目的は、旋回起動時のリリーフによるエネルギーロスを減らしエネルギー効率を向上するとともに、旋回起動後の等速移行過程では必要な流量を旋回モータに供給してスムーズに等速旋回に到達させ、作業効率を向上することができる油圧システムのポンプ制御装置を提供することである。
【0012】
本発明の第2の目的は、旋回起動時のリリーフによるエネルギーロスを減らしエネルギー効率を向上するとともに、旋回複合操作での旋回起動時は旋回モータ以外のアクチュエータの速度を速くし、旋回起動後の等速移行過程では必要な流量を旋回モータに供給してスムーズに等速旋回に到達させ、複合操作性と作業効率を向上することができる油圧システムのポンプ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記第1の目的を達成するために、本発明は、原動機によって駆動される可変容量型の第1及び第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、油圧ショベルのブーム駆動するブームシリンダを含む複数のアクチュエータと、前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、油圧ショベルの上部旋回体を駆動する旋回モータを含む複数のアクチュエータと、前記ブームシリンダ及び旋回モータをそれぞれ操作する第1及び第2操作手段を含む複数の操作手段と、前記第1及び第2油圧ポンプから吐出される圧油の最大圧力を決定するリリーフ弁とを備える油圧システムのポンプ制御装置において、前記第2油圧ポンプの吐出圧力を検出する圧力検出手段と、前記第1油圧ポンプの最大吸収トルクを設定し、前記第1油圧ポンプの吸収トルクがその最大吸収トルクを超えないよう前記第1油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第1ポンプトルク制御手段と、前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクを設定し、前記第2油圧ポンプの吸収トルクがその最大吸収トルクを超えないよう前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第2ポンプトルク制御手段とを備え、前記第2ポンプトルク制御手段は、前記第2油圧ポンプで消費可能な最大トルク値とこの最大トルク値より小さいトルク値が予め設定されており、前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力が、前記リリーフ弁が決定する最大圧力に達しない所定の圧力より低いときは前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値を設定し、前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力が、前記リリーフ弁が決定する最大圧力まで上昇したときは、前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値より小さいトルク値を設定したものとする。
【0014】
このように構成した本発明においては、旋回起動時(旋回起動直後の加速時も含む、以下同)に、第2油圧ポンプの吐出圧力が急激に上昇してリリーフ弁により決定される最大圧力に達すると、第2ポンプトルク制御手段は、第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして最大トルク値より小さいトルク値を設定し、第2油圧ポンプの最大吸収トルクを下げるよう制御し、第2油圧ポンプの押し除け容積が減少する。その結果、第2油圧ポンプの吐出流量が減少してリリーフ弁からのリリーフ流量が減少し、旋回起動時のエネルギーロスが抑えられ、エネルギー効率を向上することができる。
【0015】
その後、上部旋回体が加速して旋回速度が上がっていくとともにリリーフ弁からのリリーフ流量は無くなり、更に第2油圧ポンプから旋回モータへの流量の供給が追いつかなくなるため、第2油圧ポンプの吐出圧力は下がり始める。このとき、第2ポンプトルク制御手段は、第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして最大トルク値を設定し、第2油圧ポンプの吐出圧力が下がるのに合わせて第2油圧ポンプの最大吸収トルクを上げる制御(第2油圧ポンプの吐出圧力に応じて第2油圧ポンプの最大吸収トルクを変更する制御)を行い、第2油圧ポンプの押し除け容積は徐々に増加する。その結果、旋回速度の上昇に伴い第2油圧ポンプの吐出流量が増加して必要な流量を旋回モータに供給し、スムーズに等速旋回に至らせ、作業効率を向上することができる。
【0016】
(2)また、上記第2の目的を達成するため、本発明は、上記(1)において、前記第1ポンプトルク制御手段は、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとで消費可能な全体ポンプトルク値から前記第2ポンプトルク制御手段に設定した前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクを差し引いた値を前記第1油圧ポンプの最大吸収トルクとして設定したものとする。
【0017】
このように構成した本発明においては、旋回操作と旋回以外の動作を複合した旋回複合操作、例えば旋回とブーム上げの複合操作での旋回起動時は、上記のように第2ポンプトルク制御手段は、第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして最大トルク値より小さいトルク値を設定し、第2油圧ポンプの最大吸収トルクを下げるよう制御し、第2油圧ポンプの押し除け容積が減少する。また同時に、第1ポンプトルク制御手段は、第1油圧ポンプと第2油圧ポンプとで消費可能な全体ポンプトルク値から第2ポンプトルク制御手段に設定した第2油圧ポンプの最大吸収トルクを差し引いた値を第1油圧ポンプの最大吸収トルクとして設定するため、第2油圧ポンプの最大吸収トルクの減少分を第1油圧ポンプの最大吸収トルクに加算する結果となり、第1及び第2油圧ポンプの最大吸収トルクの配分を変更して第1油圧ポンプの最大吸収トルクを増大するよう制御し、第1油圧ポンプの押し除け容積が増加する。このように第2油圧ポンプの減トルク分を旋回モータ以外のアクチュエータ(例えばブームシリンダ)を駆動する第1油圧ポンプに配分する制御(旋回モータに係わる第2油圧ポンプの減トルク制御による減トルク分を旋回モータ以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプに振り分ける制御)を行うことで、旋回複合操作での旋回起動時に旋回モータ以外のアクチュエータの速度が速くなり、複合操作性と作業効率の向上を実現する。
【0018】
また、旋回複合操作においても、上部旋回体が加速して旋回速度が上がってゆきリリーフ弁からのリリーフ流量は無くなると、第2ポンプトルク制御手段は第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして最大トルク値を設定し、第2油圧ポンプの吐出圧力が下がるのに合わせて第2油圧ポンプの吸収トルクを上げるように制御し、第2油圧ポンプの押し除け容積は徐々に増加する。その結果、旋回速度の上昇に伴い第2油圧ポンプの吐出流量が増加して必要な流量を旋回モータに供給し、スムーズに等速旋回に至らせる。
【0019】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、 前記旋回モータを操作する第2操作手段の操作量を検出する操作量検出手段を更に備え、前記第2ポンプトルク制御手段は、前記操作量検出手段で検出した第2操作手段の操作量が所定の値を超えかつ前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力が、前記リリーフ弁が決定する最大圧力まで上昇したときに、前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値より小さいトルク値を設定し、前記操作量検出手段で検出した第2操作手段の操作量が所定の値以下であるときは、前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力如何に係わらず、前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値を設定する。
【0020】
これにより旋回操作時は、第2操作手段の操作量が所定の値を超えるため、第2ポンプトルク制御手段は第2油圧ポンプの吐出圧力に応じて最大トルク値より小さいトルク値又は最大トルク値を設定し第2油圧ポンプの最大吸収トルクを変更する制御を行い、旋回起動時のリリーフによるエネルギーロスを減らとともに、旋回複合操作での旋回起動時は旋回モータに係わる第2油圧ポンプの減トルク制御による減トルク分を旋回モータ以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプに振り分ける制御を行い、旋回モータ以外のアクチュエータの速度を速くし、旋回起動後の等速移行過程では必要な流量を旋回モータに供給してスムーズに等速旋回に到達させる。
【0021】
一方、第2油圧ポンプに係わるアクチュエータのうち、旋回モータ以外のアクチュエータを駆動する操作時は、第2操作手段の操作量は所定の値以下であるため、第2ポンプトルク制御手段は、圧力検出手段で検出した第2油圧ポンプの吐出圧力如何に係わらず、第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値を設定し、その結果、第2油圧ポンプの吐出圧力の変化に係わらず第2油圧ポンプの最大吸収トルクを一定に制御し、第2油圧ポンプの最大吸収トルクが変化することによるアクチュエータの速度変化を防止し、操作性及び作業性の低下が回避される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、旋回起動時は、第2油圧ポンプの吐出圧力に応じて第2油圧ポンプの最大吸収トルクを変更する制御を行うことにより、旋回起動時のリリーフによるエネルギーロスを減らしエネルギー効率を向上するとともに、旋回起動後の加速過程では必要な流量を旋回モータに供給してスムーズに等速旋回に到達させ、作業効率を向上することができる。
【0023】
また、本発明によれば、旋回と他の動作との旋回複合操作では、第2油圧ポンプの減トルク分を旋回モータ以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプに振り分ける制御を行うことにより、旋回モータ以外のアクチュエータの速度を速くし、複合操作性と作業効率を向上することができる。
【0024】
また、本発明によれば、旋回モータを操作する第2操作手段が所定の値以上操作されたときのみ、第2油圧ポンプの最大吸収トルクを変更する制御と第2油圧ポンプの減トルク分を旋回モータ以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプに振り分ける制御を行うので、旋回モータ以外のアクチュエータを駆動する操作時は、第2油圧ポンプの最大吸収トルクが変化することによるアクチュエータの速度変化を防止し、操作性及び作業性の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態によるポンプ制御装置を備えた油圧システムの油圧回路図である。
【図2】図1に示した油圧システムの第1及び第2レギュレータ部分の拡大図である。
【図3】本実施の形態によるポンプ制御装置の全体構成を示す図である。
【図4】コントローラの処理内容を示す機能ブロック図である。
【図5】ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部の第2油圧ポンプの吐出圧力と第1吸収トルクとの関係を拡大して示す図である。
【図6】旋回操作圧対応ポンプトルク演算部の旋回操作圧力と第2吸収トルクとの関係を拡大して示す図である。
【図7】油圧ショベルの外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
<全体構成>
図1は、本発明の一実施の形態によるポンプ制御装置を備えた油圧システムの油圧回路図である。本実施の形態に係わる油圧システムは、原動機例えばディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)1と、このエンジン1によって駆動される可変容量型の複数の油圧ポンプ、例えば第1及び第2油圧ポンプ2,3と、第1及び第2油圧ポンプ2,3から吐出される圧油の最大圧力(油圧供給回路の最大圧力)を決定するリリーフ弁4と、第1及び第2油圧ポンプ2,3から吐出された圧油により駆動されるアームシリンダ5、ブームシリンダ6、旋回モータ7、バケットシリンダ8を含む複数のアクチュエータと、第1及び第2油圧ポンプ2,3からアームシリンダ5、ブームシリンダ6、旋回モータ7、バケットシリンダ8に供給される圧油の流量及び方向を制御するコントロールバルブ11〜14を含む複数のコントロールバルブと、エンジン1によって駆動されるパイロットポンプ15と、パイロットポンプ15からの吐出油に基づいてコントロールバルブ11〜14を操作するための制御パイロット圧を生成する操作レバー装置16〜19とを備えている。
【0027】
コントロールバルブ11〜14はセンタバイパスタイプであり、コントロールバルブ11,12はセンタバイパスライン21上に配置され、コントロールバルブ13,14はセンタバイパスライン22上に配置されている。センタバイパスライン21の上流側は第1油圧ポンプ2の吐出油路2aに接続され、下流側はタンクTに接続され、センタバイパスライン22の上流側は第2油圧ポンプ3の吐出油路3aに接続され、下流側はタンクTに接続されている。また、コントロールバルブ11,12はそれぞれアーム用及びブーム用であり、第1油圧ポンプ2の吐出油路2aにパラレルに接続され、アームシリンダ5及びブームシリンダ6とともに第1油圧回路を構成している。コントロールバルブ13,14はそれぞれ旋回用及びバケット用であり、第2油圧ポンプ3の吐出油路3aにパラレルに接続され、旋回モータ7及びバケットシリンダ8とともに第2油圧回路を構成している。
【0028】
アームシリンダ5は油圧ショベルのアームを押し引きするアクチュエータであり、ブームシリンダ6は同ブームを上下させるアクチュエータであり、旋回モータ7は同上部旋回体を旋回させるアクチュエータであり、バケットシリンダ8は同バケットを押し引きするアクチュエータである。
【0029】
第1油圧ポンプ2は第1レギュレータ201を備え、第2油圧ポンプ3は第2レギュレータ301を備えている。第1レギュレータ201は要求流量(操作レバー装置16,17の操作量)に応じて第1油圧ポンプ2の押しのけ容積可変部材である斜板2bの傾転角(押しのけ容積或いは容量)を調整して、ポンプ吐出流量を制御するとともに、第1油圧ポンプ2の吸収トルクが設定された最大吸収トルク(後述)を超えないよう第1油圧ポンプ2の傾転角を制御する。第2レギュレータ301も同様に、要求流量(操作レバー装置18,19の操作量)に応じて第2油圧ポンプ3の押しのけ容積可変部材である斜板3bの傾転角(押しのけ容積或いは容量)を調整して、ポンプ吐出流量を制御するとともに、第2油圧ポンプ3の吸収トルクが設定された最大吸収トルク(後述)を超えないよう第2油圧ポンプ3の傾転角を制御する。
【0030】
操作レバー装置16,17が生成した制御パイロット圧をコントロールバルブ11,12に導く制御パイロット回路にはシャトル弁23a,23b,23cが接続され、操作レバー装置16,17により生成された操作パイロット圧の最高圧力がシャトル弁23a,23b,23cにより選択され、第1油圧ポンプ2の要求流量を指示する制御信号圧力として第1レギュレータ201に与えられる。
【0031】
同様に、操作レバー装置18,19が生成した制御パイロット圧をコントロールバルブ13,14に導く操作パイロット回路にはシャトル弁24a,24b,24cが接続され、操作レバー装置18,19により生成された制御パイロット圧の最高圧力がシャトル弁24a,24b,24cにより選択され、第2油圧ポンプ3の要求流量を指示する制御信号圧力として第2レギュレータ301に与えられる。
<ポンプレギュレータ>
図2は、図1に示した油圧システムの第1及び第2レギュレータ201,301の拡大図である。
【0032】
第1レギュレータ201は、第1油圧ポンプ2の斜板2bを傾転動作させる傾転制御アクチュエータ211と、このアクチュエータ211の位置(後述する制御ピストンの位置)を制御するポンプ流量制御弁212及びポンプトルク制御弁213とを有している。これら制御弁212,213はサーボ弁として構成されている。
【0033】
傾転制御アクチュエータ211は、斜板2bに連係されかつ両端に設けられた受圧部の受圧面積が異なる制御ピストン211aと、この制御ピストン211aの小面積受圧部側に位置する受圧室211bと、大面積受圧部側に位置する受圧室211cとを備え、受圧室211b,211cの圧力バランスで制御ピストン211aを動作させ、第1油圧ポンプ2の斜板の傾転角を制御する。受圧室211bはパイロットポンプ15の吐出ライン15aに油路215を介して接続され、受圧室211cはパイロットポンプ15の吐出ライン15aに油路215及び油路216と、ポンプ流量制御弁212及びポンプトルク制御弁213とを介して接続されている。また、受圧室211cはポンプ流量制御弁212及びポンプトルク制御弁213と油路217,218を介してタンクTに接続されている。
【0034】
ポンプ流量制御弁212は、流量制御スプール212aと、流量制御スプール212aの一端側に位置する位置保持用の弱いバネ212bと、流量制御スプール212aの他端側に位置する受圧室212cとを備えている。受圧室212cには上記シャトル弁23a,23b,23cにより選択された操作レバー装置16,17の操作パイロット圧の最高圧力が油路219を介して第1油圧ポンプ2の制御信号圧力として導かれている。
【0035】
ポンプトルク制御弁213は、トルク制御スプール213aと、トルク制御スプール213aの一端側に位置するバネ213bと、トルク制御スプール213aの他端側に位置するPQ制御受圧室213c及び減トルク制御受圧室213dとを備えている。PQ制御受圧室213cは油路221を介して第1油圧ポンプ2の吐出ライン2aに接続され、第1油圧ポンプ2の吐出圧力が導かれ、減トルク制御受圧室213dは油路222を介して第1電磁比例弁31の出力ポートに接続され、第1電磁比例弁31から出力される制御圧力が導かれる。バネ213bと減トルク制御受圧室213dは対向して位置し、バネ213bが付与する図示右方の付勢力は減トルク制御受圧室213dが生成する図示左方の付勢力より大きく設定され、バネ213bの付勢力と減トルク制御受圧室213dの付勢力との差である図示右向きの付勢力によって第1油圧ポンプ2の最大吸収トルクを設定す。この最大吸収トルクは減トルク制御受圧室213dに導かれる第1電磁比例弁31からの制御圧力によって調整される。
【0036】
ポンプ流量制御弁212は、受圧室212cに導かれる制御信号圧力(要求流量)が増加すると、流量制御スプール212aを図示右方に変位させ、傾転制御アクチュエータ211の大面積側の受圧室211cをタンクTに連通させることで、受圧室211cの圧力を低下させる。傾転制御アクチュエータ211はこの受圧室211cの圧力の低下により制御ピストン211aを図示左方に移動し、第1油圧ポンプ2の斜板2bの傾転量(押しのけ容積)を増加させ、第1油圧ポンプ2の吐出流量を増加させる。逆に、制御信号圧力(要求流量)が低下すると、ポンプ流量制御弁212は流量制御スプール212aを図示左方に変位させ、傾転制御アクチュエータ211の大面積側の受圧室211cをパイロットポンプ15の吐出ライン15aに連通させることで、受圧室211cの圧力を上昇させる。傾転制御アクチュエータ211はこの受圧室211cの圧力の上昇により制御ピストン211aを図示右方に移動し、第1油圧ポンプ2の斜板2bの傾転量(押しのけ容積)を減少させ、第1油圧ポンプ2の吐出流量を減少させる。
【0037】
このようにポンプ流量制御弁212は、受圧室212cに導かれる制御信号圧力(要求流量)に応じて傾転制御アクチュエータ211の大面積側の受圧室211cの圧力を変え、第1油圧ポンプ2の斜板2bの傾転角を調整してポンプ吐出流量を制御する。
【0038】
ポンプトルク制御弁213は、PQ制御受圧室213cに導かれる第1油圧ポンプ2の吐出圧力が上昇し、PQ制御受圧室213cに発生する図示左向きの付勢力がバネ213bの付勢力と減トルク制御受圧室213dの付勢力との差である図示右向きの付勢力を上回ると、トルク制御スプール213aを図示左方に変位させ、傾転制御アクチュエータ211の大面積側の受圧室211cをパイロットポンプ15の吐出ライン15aに連通させることで、受圧室211cの圧力を上昇させる。傾転制御アクチュエータ211はこの受圧室211cの圧力の上昇により制御ピストン211aを図示右方に移動し、第1油圧ポンプ2の斜板2bの傾転量(押しのけ容積)を減少させ、第1油圧ポンプ2の吐出流量を減少させる。逆に、第1油圧ポンプ2の吐出圧力が低下し、PQ制御受圧室213cに発生する図示左向きの付勢力がバネ213bの付勢力と減トルク制御受圧室213dの付勢力との差である図示右向きの付勢力を下回ると、ポンプトルク制御弁213はトルク制御スプール213aを図示右方に変位させ、傾転制御アクチュエータ211の大面積側の受圧室211cをタンクTに連通させることで、受圧室211cの圧力を低下させる。傾転制御アクチュエータ211はこの受圧室211cの圧力の低下により制御ピストン211aを図示左方に移動し、第1油圧ポンプ2の斜板2bの傾転量(押しのけ容積)を増加させ、第1油圧ポンプ2の吐出流量を増加させる。
【0039】
このようにポンプトルク制御弁213が作動し、第1油圧ポンプ2の押しのけ容積が制御される結果、ポンプトルク制御弁213は、第1油圧ポンプ2の吐出圧力が上昇し、第1油圧ポンプ2の吸収トルクが増大するとき、第1油圧ポンプ2の吸収トルクがバネ213bの付勢力と減トルク制御受圧室213dの付勢力との差である図示右向きの付勢力によって設定される最大吸収トルクを超えないように制御する。また、その最大吸収トルクは減トルク制御受圧室213dに導かれる第1電磁比例弁31からの制御圧力によって調整される。
【0040】
第2レギュレータ301は、第2油圧ポンプ3の斜板3bを傾転動作させる傾転制御アクチュエータ311と、このアクチュエータ311の駆動を制御するポンプ流量制御弁312及びポンプトルク制御弁313とを有している。これら制御弁212,213はサーボ弁として構成されている。
【0041】
傾転制御アクチュエータ311、ポンプ流量制御弁312及びポンプトルク制御弁313は、第1レギュレータ201の傾転制御アクチュエータ211、ポンプ流量制御弁212及びポンプトルク制御弁213と同様に構成されており、図中、同等の部分には、200番台の参照数字を300番台に変えて示している。
【0042】
傾転制御アクチュエータ311の受圧室311bはパイロットポンプ15の吐出ライン15aに油路315と油路215,216を介して接続され、受圧室311cはパイロットポンプ15の吐出ライン15aにポンプ流量制御弁312及びポンプトルク制御弁313と、油路316及び油路215,216とを介して接続されている。また、受圧室311cはポンプ流量制御弁312及びポンプトルク制御弁313と油路317及び油路218を介してタンクTに接続されている。ポンプ流量制御弁312の受圧室312cには上記シャトル弁24a,24b,24cにより選択された操作レバー装置18,19の操作パイロット圧の最高圧力が油路319を介して第2油圧ポンプ3の制御信号圧力として導かれる。ポンプトルク制御弁313のPQ制御受圧室313cは油路321を介して第2油圧ポンプ3の吐出ライン3aに接続され、第2油圧ポンプ3の吐出圧力が導かれ、減トルク制御受圧室313dは第2電磁比例弁32の出力ポートに油路322を介して接続され、第2電磁比例弁32から出力される制御圧力が導かれる。
【0043】
ポンプ流量制御弁312は、第1レギュレータ201のポンプ流量制御弁212と同様、受圧室312cに導かれる制御信号圧力(要求流量)に応じて傾転制御アクチュエータ311の大面積側の受圧室311cの圧力を変え、第2油圧ポンプ3の斜板3bの傾転角を調整してポンプ吐出流量を制御する。
【0044】
ポンプトルク制御弁313は、第1レギュレータ201のポンプトルク制御弁213と同様、バネ313bの付勢力と減トルク制御受圧室313dの付勢力との差である図示右向きの付勢力によって第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを設定するとともに、第2油圧ポンプ3の吐出圧力が上昇し、第2油圧ポンプ3の吸収トルクが増大するとき、第2油圧ポンプ3の吸収トルクがバネ313bの付勢力と減トルク制御受圧室313dの付勢力との差である図示右向きの付勢力によって設定される最大吸収トルクを超えないように制御する。また、その最大吸収トルクは減トルク制御受圧室313dに導かれる第2電磁比例弁32からの制御圧力によって調整される。
<ポンプ制御装置>
図3は、以上のような油圧システムに設けられた本実施の形態によるポンプ制御装置の全体構成を示す図である。本実施の形態のポンプ制御装置は、第2油圧ポンプ3の吐出ライン3aに接続され、第2油圧ポンプ3の吐出圧力を検出する圧力センサ35と、シャトル弁24aの出力側に接続され、操作レバー装置18が生成する制御パイロット圧を旋回操作圧力として検出する圧力センサ36と、エンジンコントロールダイヤル等のエンジン回転数指令操作装置37と、コントローラ38と、コントローラ38から出力される制御電流により作動する上述した第1及び第2電磁比例弁31,32とを有している。コントローラ38は、圧力センサ35,36からの検出信号とエンジン回転数指令操作装置37からの指令信号を入力し、所定の演算処理を行い、第1及び第2電磁比例弁31,32に制御電流を出力することにより、ポンプトルク制御弁213,313を制御し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクを制御する。
<コントローラ>
図4は、コントローラ38の処理内容を示す機能ブロック図である。コントローラ38は、全体ポンプトルク演算部41、第2ポンプ割り当てトルク演算部42、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45、最小値選択部46、減算部47、第1トルク制御圧力演算部48、第2トルク制御圧力演算部49の各演算機能を有している。
【0045】
全体ポンプトルク演算部41は、エンジン回転数指令操作装置37によって指令されたエンジン1の目標回転数Nrに応じて第1及び第2油圧ポンプ2,3の2つのポンプで消費可能な合計のポンプトルク(以下全体ポンプトルクという)Tr0を算出する。この演算は、エンジン回転数指令操作装置37から目標回転数Nrの指令信号を入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ対応する全体ポンプトルクTr0を演算することにより行う。全体ポンプトルクTr0はエンジン1の出力トルクの範囲内の値として設定されており、メモリのテーブルには、エンジン1の出力トルクの変化に対応して、目標回転数Nrが定格の最大回転数付近にあるときは、全体ポンプトルクTr0は最大値Taであり、目標回転数Nrが低くなるにしたがって全体ポンプトルクTr0が減少するよう、目標回転数Nrと全体ポンプトルクTr0との関係が設定されている。
【0046】
第2ポンプ割り当てトルク演算部42は、エンジン回転数指令操作装置37によって指令されたエンジン1の目標回転数Nrに応じて第2油圧ポンプ3で消費可能な割り当て最大ポンプトルクTp2maxを算出する。この演算は、エンジン回転数指令操作装置37から目標回転数Nrの指令信号を入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ対応する割り当て最大ポンプトルクTp2maxを演算することにより行う。割り当て最大ポンプトルクTp2maxは、全体ポンプトルクTr0の範囲内において、第2油圧ポンプ3に係わるアクチュエータの単独操作及び複合操作に際しての最大消費ポンプトルクを考慮した値であり、例えば、Tp2max=Tr0/2である。メモリのテーブルには、全体ポンプトルクTr0の変化に対応して、目標回転数Nrが定格の最大回転数付近にあるときは、割り当て最大ポンプトルクTp2maxは例えば最大値Tbであり、目標回転数Nrが低くなるにしたがって割り当て最大ポンプトルクTp2maxが減少するよう、目標回転数Nrと割り当て最大ポンプトルクTp2maxとの関係が設定されている。最大値Tbは例えば全体ポンプトルクTr0の最大値Taの半分(Tb=Ta/2)である。
【0047】
ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43は、圧力センサ35によって検出された第2油圧ポンプ3の吐出圧力に応じて第2油圧ポンプ3で消費可能な第1吸収トルクTp21を算出する。この演算は、圧力センサ35から第2油圧ポンプ3の吐出圧力の検出信号を入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その検出信号が示す第2油圧ポンプ3の吐出圧力に対応する第1吸収トルクTp21を演算することにより行う。
【0048】
図5は、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43の第2油圧ポンプ3の吐出圧力と第1吸収トルクTp21との関係を拡大して示す図である。図5において、第1吸収トルクTp21は割り当て最大ポンプトルクTp2maxの最大値Tb以下の値として設定されており、メモリのテーブルには、第2油圧ポンプ3の吐出圧力がリリーフ弁4によって決定される最大圧力Pmax近傍の第1圧力値Pp2aより低いときは、第1吸収トルクTp21は割り当て最大ポンプトルクTp2maxの最大値Tbに等しい、第2油圧ポンプ3で消費可能な最大トルク値であり(Tp21=Tb)、第2油圧ポンプ3の吐出圧力が第1圧力値Pp2aを超えて更に上昇すると第1吸収トルクTp21は減少し、第2油圧ポンプ3の吐出圧力が更に上昇して、リリーフ弁4によって決定される最大圧力Pmax近傍の第2圧力値Pp2b(>Pp2a)を超えると、第1吸収トルクTp21は前記最大トルク値Tbより小さいトルク値Tcに減少するよう(Tp21=Tc)、第2油圧ポンプ3の吐出圧力と第1吸収トルクTp21との関係が設定されている。トルク値Tcは、旋回起動に必要な最小のトルク値として予め求めて設定したものである。
【0049】
図示の例では、第1吸収トルクTp21の急激な変化を避けるために、第1圧力値Pp2a及び第2圧力値Pp2bを閾値として第1吸収トルクTp21をTbとTcとで変化させたが、例えば第2圧力値Pp2bを閾値として第1吸収トルクTp21をTbとTcとで変化させてもよい。また、第2圧力値Pp2bはリリーフ弁4によって決定される最大圧力Pmax近傍の値としたが、最大圧力Pmaxそのものであってもよい。
【0050】
旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44は、圧力センサ36によって検出された旋回操作圧力に応じて第2油圧ポンプ3で消費可能な第2吸収トルクTp22を算出する。この演算は、圧力センサ36から旋回操作圧力の検出信号を入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その検出信号が示す旋回操作圧力に対応する第2吸収トルクTp22を演算することにより行う。
【0051】
図6は、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44の旋回操作圧力と第2吸収トルクTp22との関係を拡大して示す図である。図6において、第2吸収トルクTp22も割り当て最大ポンプトルクTp2maxの最大値Tb以下の値として設定されており、メモリのテーブルには、旋回操作圧力(旋回用の制御パイロット圧)が最大圧力Pcmax近傍の圧力値Pcaより低いときは、第2吸収トルクTp22は割り当て最大ポンプトルクTp2maxの最大値Tbに等しく(Tp22=Tb)、旋回操作圧力が圧力値Pcaを超えて更に上昇すると第2吸収トルクTp22は減少し、旋回操作圧力が更に上昇して最大圧力Pcmax近傍の圧力値Pcb(>Pca)を超えると、第2吸収トルクTp22は、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43において第2油圧ポンプ3の吐出圧力がPp2bを超えたときに設定されるトルク値と同じトルク値Tcに減少するよう(Tp22=Tb)、旋回操作圧力と第2吸収トルクTp22との関係が設定されている。圧力値Pcaは、オペレータが旋回起動を意図して旋回用の操作レバー装置18の操作レバーをフル操作したと判断できる値であり、例えば最大旋回操作圧力の80%以上の値である。
【0052】
最大値選択部45は、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43で算出した第1吸収トルクTp21と旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44で算出した第2吸収トルクTp22の大きい方を選択し、第3吸収トルクTp23として出力する。
【0053】
最小値選択部46は、第2ポンプ割り当てトルク演算部42で算出した第2油圧ポンプ3の割り当て最大ポンプトルクTp2maxと最大値選択部45で選択した第3吸収トルクTp23の小さい方を選択し、第2油圧ポンプ3の制御用の最大吸収トルクTp2として出力する。
【0054】
減算部47は、全体ポンプトルク演算部41で算出した全体ポンプトルクTr0から最小値選択部46で選択した最大吸収トルクTp2を差し引いて、第1油圧ポンプ2の制御用の最大吸収トルクTp1を算出する。
【0055】
第1トルク制御圧力演算部48は、減算部47で算出した第1油圧ポンプ2の制御用の最大吸収トルクTp1を第1レギュレータ201に設定するのに必要な第1電磁比例弁31の出力圧力(制御圧力)を算出するものであり、最大吸収トルクTp1をメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その最大吸収トルクTp1に対応する制御圧力Pc1を演算する。メモリのテーブルには、第1電磁比例弁31からの制御圧力Pc1がバネ213bに対向位置する減トルク制御受圧室213dに入力されること(ネガティブ制御)を考慮し、最大吸収トルクTp1が増大するにしたがって制御圧力Pc1が減少するように最大吸収トルクTp1と制御圧力Pc1との関係が設定されている。この制御圧力Pc1は、第1電磁比例弁31はソレノイドに印加される制御電流が最小であるときはパイロットポンプ16の吐出圧力に基づいて最大の制御圧力を生成する構成であることを考慮して特性を設定した図示しない電流変換・増幅部を介して第1電磁比例弁31の制御電流に変換・増幅され、第1電磁比例弁31に出力される。
【0056】
第2トルク制御圧力演算部49は、最小値選択部46で選択した第2油圧ポンプ3の制御用の最大吸収トルクTp2を第1レギュレータ201に設定するのに必要な第2電磁比例弁32の出力圧力(制御圧力)を算出するものであり、最大吸収トルクTp2をメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その最大吸収トルクTp2に対応する制御圧力Pc2を演算する。メモリのテーブルには、第2電磁比例弁32からの制御圧力Pc2がバネ313bに対向位置する減トルク制御受圧室313dに入力されること(ネガティブ制御)を考慮し、最大吸収トルクTp2が増大するにしたがって制御圧力Pc2が減少するように最大吸収トルクTp2と制御圧力Pc2との関係が設定されている。この制御圧力Pc2は、第2電磁比例弁32はソレノイドに印加される制御電流が最小であるときパイロットポンプ16の吐出圧力に基づいて最大の制御圧力を生成する構成であることを考慮して特性を設定した図示しない電流変換・増幅部を介して第2電磁比例弁32の制御電流に変換・増幅され、第2電磁比例弁32に出力される。
【0057】
以上において、圧力センサ35は、第2油圧ポンプ3の吐出圧力を検出する圧力検出手段を構成し、エンジン回転数指令操作装置37、コントローラ38の全体ポンプトルク演算部41、減算部47、第1トルク制御圧力演算部48、第1電磁比例弁31、第1レギュレータ201のポンプトルク制御弁213は、第1油圧ポンプ2の最大吸収トルクTp1を設定し、第1油圧ポンプ2の吸収トルクがその最大吸収トルクTp1を超えないよう第1油圧ポンプ2の押しのけ容積を制御する第1ポンプトルク制御手段を構成し、コントローラ38のポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45、最小値選択部46、第2トルク制御圧力演算部49、第2電磁比例弁32、第2レギュレータ301のポンプトルク制御弁313は、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクTp2を設定し、第2油圧ポンプ3の吸収トルクがその最大吸収トルクTp2を超えないよう第2油圧ポンプ3の押しのけ容積を制御する第2ポンプトルク制御手段を構成する。そして、その第2ポンプトルク制御手段(コントローラ38、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、第2トルク制御圧力演算部49、第2電磁比例弁32、第2レギュレータ301のポンプトルク制御弁313)は、第2油圧ポンプ3で消費可能な最大トルク値Tbとこの最大トルク値Tbより小さいトルク値Tcが予め設定されており、圧力検出手段(圧力センサ35)で検出した第2油圧ポンプ3の吐出圧力が、リリーフ弁4が決定する最大圧力Pmaxに達しない所定の圧力Pp2aより低いときは第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクTp2として最大トルク値Tbを設定し、圧力検出手段で検出した第2油圧ポンプ3の吐出圧力が、リリーフ弁4が決定する最大圧力Ppmaまで上昇したときは、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクTp2として最大トルク値Tbより小さいトルク値Tcを設定する。
【0058】
また、第1ポンプトルク制御手段(コントローラ38の減算部47)は、第1油圧ポンプ2と第2油圧ポンプ3とで消費可能な全体ポンプトルク値Tr0から第2ポンプトルク制御手段に設定した第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクTp2を差し引いた値を第1油圧ポンプ2の最大吸収トルクTp1として設定する。
【0059】
更に、シャトル弁24a及び圧力センサ36は、旋回モータ7を操作する第2操作手段(操作レバー装置18)の操作量を検出する操作量検出手段を構成し、第2ポンプトルク制御手段(コントローラ38の旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45)は、操作量検出手段で検出した第2操作手段の操作量が所定の値Pca〜Pcbを超えかつ圧力検出手段で検出した第2油圧ポンプ3の吐出圧力が、リリーフ弁4が決定する最大圧力Pmaxまで上昇したときに、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクPp2として最大トルク値Tbより小さいトルク値Tcを設定し、操作量検出手段で検出した第2操作手段の操作量が所定の値所定の値Pca〜Pcb以下であるときは、圧力検出手段で検出した第2油圧ポンプ3の吐出圧力如何に係わらず、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクTp2として最大トルク値Tbを設定する。
<油圧ショベル>
図7は、図1に示した油圧システムを搭載した油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は下部走行体100上に旋回可能に搭載され、旋回モータ7により旋回駆動される。フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106、キャビン(運転室)107が備えられ、エンジンルーム106にエンジン1や第1及び第2油圧ポンプ2,3、パイロットポンプ15等の油圧機器が配置され、キャビン107内には上記操作レバー装置16〜19やエンジン回転数指令操作装置37が配置されている。
【0060】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ6の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ5の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ8の伸縮により上下、前後方向に回動する。図1では左右の走行モータ104a,104b等のアクチュエータやそれらの操作系を省略して示している。
<動作>
<旋回単独操作>
まず、旋回単独操作時の動作について説明する。
【0061】
旋回用の操作レバー装置18の操作レバーを図1の左方にフル操作すると、旋回操作圧が第2油圧ポンプ3の第2レギュレータ301の傾転制御スプール312aに作用し、第2油圧ポンプ3の押し除け容積が増大すると同時に、旋回用のコントロールバルブ13が図示左方に動くことにより、第2油圧ポンプ3からタンクTへの回路が絶たれ、コントロールバルブ13のメータイン絞りを通じて旋回モータ7に圧油が送られる。このとき上部旋回体101は停止しており、旋回モータ7にとって大きな慣性負荷となるため、第2油圧ポンプ3の吐出圧力は急激に上昇してリリーフ弁4により決定される油圧供給回路の最大圧力(リリーフ圧)に達する。コントローラ38は旋回操作圧と第2油圧ポンプ3の吐出圧力の各値から図4における各演算を実行する。ここでは、第2油圧ポンプ3の吐出圧力及び旋回操作圧力それぞれが最大となるため、図4のポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45では、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクをTcに下げる演算結果になり、第2電磁比例弁32から出力される制御圧力は第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを下げるよう制御され、第2油圧ポンプ3の押し除け容積が減少する。この結果、第2油圧ポンプ3の吐出流量が減少してリリーフ弁4からのリリーフ流量が減少し、旋回起動時のエネルギーロスが抑えられる。
【0062】
その後、上部旋回体101が加速して旋回速度が上がっていくとともにリリーフ弁4からのリリーフ流量は無くなり、更に第2油圧ポンプ3から旋回モータ7への流量の供給が追いつかなくなるため、第2油圧ポンプ3の吐出圧力は下がり始める。コントローラ38は旋回操作圧と第2油圧ポンプ3の吐出圧力の各値から図4における演算を実行する。ここでは、旋回操作圧力が最大でかつ第2油圧ポンプ3の吐出圧力がリリーフ弁4により決定される油圧供給回路の最大圧力(リリーフ圧)を下回っているため、第2油圧ポンプ3の吐出圧力及び旋回操作圧力それぞれが最大となるため、図4のポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45では、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクをTcからTbに上げる演算結果になり、第2電磁比例弁32から出力される制御圧力は第2油圧ポンプ3の吐出圧力が下がるのに合わせて第2油圧ポンプ3の吸収トルクを上げる制御(第2油圧ポンプ3の吐出圧力に応じて第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを変更する制御)を行い、第2油圧ポンプ3の押し除け容積は徐々に増加する。この結果、旋回速度の上昇に伴い第2油圧ポンプ3の吐出流量が増加して必要な流量を旋回モータ7に供給し、スムーズに等速旋回に至らせる。
<旋回とブーム上げの複合操作>
次に、旋回とブーム上げの複合操作時の動作について説明する。
【0063】
旋回用の操作レバー装置18の操作レバーとブーム用の操作レバー装置17の操作レバーを図1の左方にフル操作すると、旋回操作圧が第2油圧ポンプ3の第2レギュレータ301の傾転制御スプール312aに作用し、また、ブーム操作圧が第1油圧ポンプ2の第1レギュレータ201の傾転制御スプール212aに作用し、第1及び第2油圧ポンプ2,3双方の押し除け容積が増大すると同時に、旋回用のコントロールバルブ13及びブーム用のコントロールバルブ12はそれぞれ図示左方に動くことにより、第1及び第2油圧ポンプ2,3双方からタンクTへの回路が絶たれ、コントロールバルブ12,13のそれぞれのメータイン絞りを通じてブームシリンダ6と旋回モータ7に圧油が送られる。このとき上部旋回体101は停止しており、旋回モータ7にとって大きな慣性負荷となるため、第2油圧ポンプ3の吐出圧力は急激に上昇してリリーフ弁4により決定される油圧供給回路の最大圧力(リリーフ圧)に達する。コントローラ38は旋回操作圧と第2油圧ポンプ3の吐出圧力の各値から図4における各演算を実行する。ここでは、第2油圧ポンプ3の吐出圧力及び旋回操作圧力それぞれが最大となるため、第2油圧ポンプ3の吐出圧力及び旋回操作圧力それぞれが最大となるため、図4のポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45では、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクをTcに下げる演算結果になり、第2電磁比例弁32から出力される制御圧力は第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを下げるよう制御され、第2油圧ポンプ3の押し除け容積が減少する。また同時に、コントローラ38は減算部47で全体ポンプトルクTr0から第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクTp2を差し引く演算を行うため、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクの減少分を第1油圧ポンプ2の最大吸収トルクに加算する結果となり、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクの配分が変更される。これにより第1電磁比例弁31から出力される制御圧力は第1油圧ポンプ2の最大吸収トルクを上げるよう制御され、第1油圧ポンプ2の押し除け容積が増加する。このように第2油圧ポンプ3の減トルク分を旋回モータ7以外のアクチュエータであるブームシリンダ6を駆動する第1油圧ポンプ2に配分する制御(旋回モータ7に係わる第2油圧ポンプ3の減トルク制御による減トルク分を旋回モータ7以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプ2に振り分ける制御)を行うことで、第2油圧ポンプ3の吐出流量が減少してリリーフ弁4からのリリーフ流量が減少し、旋回起動時のエネルギーロスを抑えるとともに、ブームシリンダ速度が速くなり、複合操作性と作業効率の向上が実現される。
【0064】
その後、上部旋回体101が加速し旋回速度が上がっていくとともにリリーフ弁4からのリリーフ流量は無くなり、更に第2油圧ポンプ3から旋回モータ7への流量の供給が追いつかなくなるため、第2油圧ポンプ3の吐出圧力は下がり始める。コントローラ38は旋回操作圧と第2油圧ポンプ3の吐出圧力の各値から図4における演算を実行する。ここでは旋回操作圧力が最大でかつ第2油圧ポンプ3の吐出圧力がリリーフ弁4により決定される油圧供給回路の最大圧力(リリーフ圧)を下回っているため、第2油圧ポンプ3の吐出圧力及び旋回操作圧力それぞれが最大となるため、図4のポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45では、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクをTcからTbに上げる演算結果になり、第2電磁比例弁32から出力される制御圧力は第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを上げる制御(第2油圧ポンプ3の吐出圧力に応じて第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを変更する制御)を行い、第2油圧ポンプ3の押し除け容積は増加方向に制御される。この結果、旋回速度の上昇に伴い必要な流量を旋回モータ7に供給し、スムーズに等速旋回に至らせる。
<旋回とブーム下げ、旋回とアームの複合操作>
以上に旋回とブーム上げの複合操作時における動作を述べたが、旋回とブーム下げの複合操作、旋回とアームの複合操作を行ったときも同様の動作になる。
<バケットの単独操作、或いはブーム又はアームとバケットの複合操作>
第2油圧ポンプ3に係わるアクチュエータのうち、旋回モータ7以外のアクチュエータであるバケットシリンダ8を駆動する操作時の動作について説明する。
【0065】
バケット用の操作レバー装置19の操作レバーを図1の例えば左方にフル操作すると、バケット操作圧が第2油圧ポンプ3の第2レギュレータ301の傾転制御スプール312aに作用し、第2油圧ポンプ3の押し除け容積が増大すると同時に、バケット用のコントロールバルブ14が図示右方に動くことにより、第2油圧ポンプ3からタンクTへの回路が絶たれ、コントロールバルブ14のメータイン絞りを通じてバケットシリンダ8に圧油が送られる。このときコントローラ38は旋回操作圧と第2油圧ポンプ3の吐出圧力の各値から図4における各演算を実行する。ここでは、旋回用の操作レバー装置18の操作レバーは操作されず、旋回操作圧力が最小(タンク圧)となるため、図4のポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45では、圧力検出手段で検出した第2油圧ポンプの吐出圧力如何に係わらず、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクをTbに上げる演算結果になり、第2電磁比例弁32から出力される制御圧力は第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを上げるよう制御される。その結果、第2油圧ポンプ3の吐出圧力の変化に係わらず第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを一定に制御し、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクが変化することによるバケットシリンダ8の速度変化を防止し、操作性及び作業性の低下が回避される。
<目標回転数Nrの変更>
エンジン回転数指令操作装置37によって指令されたエンジン1の目標回転数Nrが定格の最大回転数付近にあるときは、コントローラ38の全体ポンプトルク演算部41で演算される全体ポンプトルクTr0は最大値Taであり、第2ポンプ割り当てトルク演算部42で演算される第2油圧ポンプ3の割り当て最大ポンプトルクTp2maxは最大値Tb(Tb=Ta/2)である。したがって、コントローラ38の最小値選択部46では、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45により演算された吸収トルクが最大値Tbであるときを含め、その値がそのまま選択される演算結果となり、上述した動作において、第2油圧ポンプ3の割り当て最大ポンプトルクTp2maxとして事前に設定した最大値Tbをフルに活用することができる。
【0066】
オペレータが、例えば、微操作作業を意図してエンジン回転数指令操作装置37を操作してエンジン1の目標回転数Nrを下げた場合は、コントローラ38の全体ポンプトルク演算部41では全体ポンプトルクTr0として最大値Taより小さい値が演算され、第2ポンプ割り当てトルク演算部42でも第2油圧ポンプ3の割り当て最大ポンプトルクTp2maxとして最大値Tb(Tb=Ta/2)より小さい値が演算される。その結果、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44、最大値選択部45で演算された吸収トルクが最大値Tbであったとしても、最小値選択部46では第2ポンプ割り当てトルク演算部42で演算された最大値Tbより小さい値が選択され、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを下げるように制御する。同様に、減算部47においても、全体ポンプトルク演算部41で演算した最大値Taより小さい値から最小値選択部46で選択した最大吸収トルクTp2を差し引いて、第1油圧ポンプ2の制御用の最大吸収トルクTp1を算出するため、第1油圧ポンプ2の制御用の最大吸収トルクTp1も全体ポンプトルク演算部41で演算した値に応じた小さい値となり、第1油圧ポンプ2の最大吸収トルクを下げるように制御する。これにより第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出流量が制限され、微操作作業を円滑に行うことができる。
<効果>
以上のように本実施の形態によれば、旋回起動時は、第2油圧ポンプ3の吐出圧力に応じて第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクをTbとTcとに変更する制御を行うことにより、旋回起動時のリリーフによるエネルギーロスを減らしエネルギー効率を向上するとともに、旋回起動後の加速過程では必要な流量を旋回モータ7に供給してスムーズに等速旋回に到達させ、作業効率を向上することができる。
【0067】
また、旋回と他の動作との旋回複合操作では、第2油圧ポンプ3の減トルク分を旋回モータ7以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプ2に振り分ける制御を行うので、旋回モータ7以外のアクチュエータの速度を速くし、複合操作性と作業効率を向上することができる。
【0068】
また、旋回用の操作レバー装置18の操作レバーが操作されたときのみ、第2油圧ポンプ3の吐出圧力に応じて第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを変更する制御と第2油圧ポンプ3の減トルク分を旋回モータ7以外のアクチュエータに係わる第1油圧ポンプ2に振り分ける制御を行うので、旋回モータ7以外のアクチュエータを駆動する操作時は、第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクが変化することによるアクチュエータの速度変化を防止し、操作性及び作業性の低下を回避することができる。
【0069】
更に、エンジン1の目標回転数Nrを下げた場合は、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクを下げるように制御するので、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出流量が制限され、微操作作業を円滑に行うことができる。
【0070】
なお、以上の実施の形態では、油圧システムがメインポンプとして第1及び第2の2つの油圧ポンプ2,3を有するものについて説明したが、第1及び第2油圧ポンプ2,3以外に第3の油圧ポンプがあってもよい。また、第1及び第2油圧ポンプはそれぞれ1つづつの油圧ポンプであるとしたが、少なくとも一方の油圧ポンプは全馬力制御される2つの油圧ポンプであってもよい。このように油圧ポンプの数を変更した場合でも、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0071】
また、上記実施の形態では、コントローラ38に最大値選択部45を設け、ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部43の出力と旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44の出力の最大値を選択したが、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44と最大値選択部45の設置目的は、旋回用の操作レバー装置18の操作レバーが操作されたときのみ、第2油圧ポンプ3の吐出圧力に応じて第2油圧ポンプ3の最大吸収トルクを変更する制御を行うようにすることであるので、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44の代わりに旋回操作圧が所定の値以上になるとON信号を出力する演算部を設け、最大値選択部45の代わりにそのON信号で切り換わるスイッチ部を設け、旋回操作圧対応ポンプトルク演算部44と最小値選択部46をそのスイッチ部を介して接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
2 第1油圧ポンプ
3 第2油圧ポンプ
4 リリーフ弁
5 アームシリンダ
6 ブームシリンダ
7 旋回モータ
8 バケットシリンダ
11〜14 コントロールバルブ
15 パイロットポンプ
16〜19 操作レバー装置
21,22 センタバイパスライン
23a,23b,23c シャトル弁
24a,24b,24c シャトル弁
31 第1電磁比例弁
32 第2電磁比例弁
35 圧力センサ
36 圧力センサ
37 エンジン回転数指令操作装置
38 コントローラ
41 全体ポンプトルク演算部
42 第2ポンプ割り当てトルク演算部
43 ポンプ吐出圧力対応ポンプトルク演算部
44 旋回操作圧対応ポンプトルク演算部
45 最大値選択部
46 最小値選択部
47 減算部
48 第1トルク制御圧力演算部
49 第2トルク制御圧力演算部
100 下部走行体
101 上部旋回体
102 フロント作業機
103a,103b クローラ式走行装置
104a,104b 左右走行モータ
106 エンジンルーム
107 キャビン
111 ブーム
112 アーム
113 バケット
201 第1レギュレータ
211 傾転制御アクチュエータ
211a 制御ピストン
211b,211c 受圧室
212 ポンプ流量制御弁
212a 流量制御スプール
212b バネ
212c 受圧室
213 ポンプトルク制御弁
213a トルク制御スプール
213b バネ
213c PC制御受圧室
213d 減トルク制御受圧室
215〜219,221,222 油路
301 第2レギュレータ
311 傾転制御アクチュエータ
311a 制御ピストン
311b,211c 受圧室
312 ポンプ流量制御弁
312a 流量制御スプール
312b バネ
312c 受圧室
313 ポンプトルク制御弁
313a トルク制御スプール
313b バネ
313c PC制御受圧室
313d 減トルク制御受圧室
315〜317,319,321,322 油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機によって駆動される可変容量型の第1及び第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、油圧ショベルのブーム駆動するブームシリンダを含む複数のアクチュエータと、前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、油圧ショベルの上部旋回体を駆動する旋回モータを含む複数のアクチュエータと、前記ブームシリンダ及び旋回モータをそれぞれ操作する第1及び第2操作手段を含む複数の操作手段と、前記第1及び第2油圧ポンプから吐出される圧油の最大圧力を決定するリリーフ弁とを備える油圧システムのポンプ制御装置において、
前記第2油圧ポンプの吐出圧力を検出する圧力検出手段と、
前記第1油圧ポンプの最大吸収トルクを設定し、前記第1油圧ポンプの吸収トルクがその最大吸収トルクを超えないよう前記第1油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第1ポンプトルク制御手段と、
前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクを設定し、前記第2油圧ポンプの吸収トルクがその最大吸収トルクを超えないよう前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第2ポンプトルク制御手段とを備え、
前記第2ポンプトルク制御手段は、前記第2油圧ポンプで消費可能な最大トルク値とこの最大トルク値より小さいトルク値が予め設定されており、前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力が、前記リリーフ弁が決定する最大圧力に達しない所定の圧力より低いときは前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値を設定し、前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力が、前記リリーフ弁が決定する最大圧力まで上昇したときは、前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値より小さいトルク値を設定することを特徴とする油圧システムのポンプ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧システムのポンプ制御装置において、
前記第1ポンプトルク制御手段は、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとで消費可能な全体ポンプトルク値から前記第2ポンプトルク制御手段に設定した前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクを差し引いた値を前記第1油圧ポンプの最大吸収トルクとして設定することを特徴とする油圧システムのポンプ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の油圧システムのポンプ制御装置において、
前記旋回モータを操作する第2操作手段の操作量を検出する操作量検出手段を更に備え、
前記第2ポンプトルク制御手段は、前記操作量検出手段で検出した第2操作手段の操作量が所定の値を超えかつ前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力が、前記リリーフ弁が決定する最大圧力まで上昇したときに、前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値より小さいトルク値を設定し、前記操作量検出手段で検出した第2操作手段の操作量が所定の値以下であるときは、前記圧力検出手段で検出した前記第2油圧ポンプの吐出圧力如何に係わらず、前記第2油圧ポンプの最大吸収トルクとして前記最大トルク値を設定することを特徴とする油圧システムのポンプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157790(P2011−157790A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22516(P2010−22516)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】