説明

油圧ショベルの油圧回路

【課題】ロードセンシング制御方式の油圧駆動装置において、アクチュエータや作業の種類に応じて油圧ポンプの応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができるようにする。
【解決手段】旋回用、左右走行用、ブーム用の操作レバー装置34a,34b,34d,34fのそれぞれのパイロットラインに、いずれかの操作レバーが操作されたときに操作パイロット圧の最高圧を選択して出力する複数のシャトル弁37a〜37gを含む高圧選択装置37を設け、LS制御部35BのLS制御弁35bとLS制御傾転アクチュエータ35cとの間の油路に、連通位置Iと絞り位置IIとを有する応答切換弁35fを設け、高圧選択装置37で選択して出力した操作パイロット圧を信号伝達油路38を介して応答切換弁35fの受圧部35gに導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルの油圧駆動装置に係わり、特にロードセンシング制御方式の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ショベルの油圧駆動装置には、油圧ポンプ(メインポンプ)の吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう油圧ポンプの容量を制御するものがあり、これはロードセンシング制御方式と呼ばれている。
【0003】
このようなロードセンシング制御方式の油圧駆動装置は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1記載の油圧駆動装置では、油圧ポンプの吐出圧と複数のアクチュエータの最高負荷圧との差圧(以下差圧PLSという)を絶対圧として出力する差圧減圧弁を設け、この差圧減圧弁の出力圧がロードセンシングポンプ制御装置に導かれる。ロードセンシングポンプ制御装置は、LS制御弁とLS制御傾転アクチュエータとを有し、前記差圧減圧弁の出力圧はLS制御弁の受圧部に導かれる。LS制御弁は差圧減圧弁の出力圧に応じて出力圧を変化させ、LS制御傾転アクチュエータはその出力圧に応じて油圧ポンプの傾転角(容量)を変化させる。LS制御弁の出力圧をLS制御傾転アクチュエータに導く油路には固定絞りが設けられ、この固定絞りは、アクチュエータを操作する操作装置の操作レバーを中立位置から急操作したときなど、油圧ポンプの傾転角が増える際に、LS制御弁アクチュエータより排出される油の流れを抑制し、油圧ポンプの傾転角の増大を緩やかにする役割を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−193705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクチュエータの操作性を良好にするため、アクチュエータの起動時に体感する衝撃をより低減することが顧客より求められている。特に、ブーム、走行、旋回など慣性の影響を大きく受ける動作は操作レバーの急操作において、アクチュエータの起動時に体感する衝撃が大きい。
【0006】
このような問題を解決する方法の1つとして、油圧ポンプ(メインポンプ)の傾転角の急激な増大を抑制すること、すなわち、油圧ポンプの応答性を鈍くすることが考えられている。
【0007】
特許文献1では、油圧ポンプの応答性を鈍らせるため、LS制御弁の出力圧をLS制御傾転アクチュエータに導く油路に固定絞りを設け、油圧ポンプの傾転角の変化を緩やかにして応答性を鈍くしている。しかし、このように固定絞りを設けた場合は、その固定絞りが全てのアクチュエータ操作に影響するため、アームやバケットの泥落とし作業などの早い応答性を要求される作業では、逆に操作性が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ロードセンシング制御方式の油圧駆動装置において、アクチュエータや作業の種類に応じて油圧ポンプの応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができる油圧ショベルの油圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと、前記油圧ポンプから前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、前記複数の流量制御弁の前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁と、前記油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう前記油圧ポンプの容量を制御するロードセンシングポンプ制御装置とを備え、前記ロードセンシングポンプ制御装置は、前記油圧ポンプの容量を変化させるロードセンシングアクチュエータと、前記ロードセンシングアクチュエータをパイロット油圧源とタンクとに選択的に連通させ、前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧が前記目標差圧に一致するよう前記ロードセンシングアクチュエータの駆動を制御するロードセンシング制御弁とを有する油圧ショベルの油圧駆動装置において、前記複数のアクチュエータのうちの特定のアクチュエータの動作を指示する特定の操作レバー装置の操作パイロット圧を検出する操作検出装置と、前記ロードセンシング制御弁と前記ロードセンシングアクチュエータとを連絡する油路に設けられ、前記操作検出装置の検出結果に基づいて連通位置と絞り位置との間で切り換わる応答切換弁とを備えるものとする。
【0010】
このように構成した本発明においては、応答切換弁が連通位置に切り換わったときは、油圧ポンプの応答性が早くなり、機敏なアクチュエータの動作を行うことができ、応答切換弁が絞り位置に切り換わったときは、油圧ポンプの応答性を鈍らせ、操作レバー装置の操作レバーを急操作した場合でも、アクチュエータへの圧油の流入を緩やかにし、アクチュエータ起動時の衝撃を緩和させることができる。これにより例えば特定のアクチュエータを旋回モータ、左右の走行モータ、ブームシリンダのような被駆動体の慣性の影響を大きく受けるアクチュエータとした場合は、これらのアクチュエータに対応する操作レバー装置の操作レバーを操作したときは、操作検出装置がその操作パイロット圧を検出し、応答切換弁を絞り位置に切り換えることで、アクチュエータの起動時に体感する衝撃を緩和することができる。また、アームやバケットの泥落とし作業などの早い応答性を要求される作業を行う場合など、特定のアクチュエータ以外の操作レバー装置の操作レバーを操作したときは、操作検出装置はその操作パイロット圧を検出せず、応答切換弁を連通位置に切り換えることで、アクチュエータを応答性良く駆動することができ、優れた操作性を確保することができる。
【0011】
このように本発明によれば、アクチュエータや作業の種類に応じて油圧ポンプの応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記操作検出装置は、前記特定の操作レバー装置が操作されたときに操作パイロット圧を選択して出力する複数のシャトル弁からなる高圧選択装置と、前記高圧選択装置が出力する操作パイロット圧を前記応答切換弁に導く信号伝達油路とを有し、前記応答切換弁は、前記信号伝達油路に接続され、前記操作パイロット圧が導かれる受圧部を有する油圧切換弁である。
【0013】
これにより高圧選択装置及び応答切換弁を含む油圧駆動装置全体を純油圧的に構成することができ、安価で信頼性の高いシステムを提供することができる。
【0014】
(3)上記(2)において、好ましくは、モード選択スイッチと、前記信号伝達油路に設けられ、前記モード選択スイッチが出力する信号に応じて開位置と閉位置との間で切り換わる選択弁とを更に有する。
【0015】
これによりモード選択スイッチを切り換えることで、高圧選択装置が出力する操作パイロット圧を応答切換弁の受圧部に伝達するか遮断するかを選択することができ、例えば特定のアクチュエータを泥落とし作業のような早い応答性を必要とする作業を行うアームシリンダ及びバケットシリンダとした場合は、泥落とし作業のように早い応答性を必要としないときは、選択弁を遮断位置に切り換えることで、操作レバー装置の操作レバーを急操作した場合でも、アクチュエータ起動時の衝撃を緩和し良好な操作性が得られる。
【0016】
(4)また、上記(1)において、好ましくは、前記複数のアクチュエータは、旋回体を駆動する旋回モータと、走行体を駆動する左右の走行モータと、フロント作業機のブームを駆動するブームシリンダを含み、前記特定のアクチュエータは、前記旋回モータ、左右の走行モータ及びブームシリンダのうちの少なくとも1つのアクチュエータであり、
前記応答切換弁は、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出しないときは前記連通位置あり、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出するときは前記絞り位置に切り換えられる。
【0017】
これにより上記(1)で述べたように、アクチュエータや作業の種類に応じて油圧ポンプの応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができる。
【0018】
(5)また、上記(1)において、好ましくは、前記複数のアクチュエータは、フロント作業機のアームを駆動するアームシリンダと、フロント作業機のバケットを駆動するバケットシリンダを含み、前記特定のアクチュエータは前記アームシリンダ及びバケットシリンダの少なくとも一方であり、前記応答切換弁は、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出しないときは前記絞り位置にあり、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出するときは前記連通位置に切り換えられる。
【0019】
これによってもアクチュエータや作業の種類に応じて油圧ポンプの応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アクチュエータや作業の種類に応じて油圧ポンプの応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明の第1の実施の形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を半分に分けて示す一側半分の油圧回路図である。
【図1B】本発明の第1の実施の形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を半分に分けて示す他側半分の油圧回路図である。
【図2】油圧ショベルの外観を示す図である。
【図3】応答切換弁のストロークと開口面積との関係を示す図である。
【図4A】本発明の第2の実施の形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を半分に分けて示す一側半分の油圧回路図である。
【図4B】本発明の第2の実施の形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を半分に分けて示す他側半分の油圧回路図である。
【図5A】応答切換弁のストロークと開口面積との関係の一例を示す図である。
【図5B】応答切換弁のストロークと開口面積との関係の他の例を示す図である。
【図6A】本発明の第3の実施の形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を半分に分けて示す一側半分の油圧回路図である。
【図6B】本発明の第3の実施の形態に係わる油圧駆動装置の油圧回路を半分に分けて示す他側半分の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
<油圧ショベル>
図2に油圧ショベルの外観を示す。
【0023】
図2において、作業機械としてよく知られている油圧ショベルは、上部旋回体300と、下部走行体301と、スイング式のフロント作業機302を備え、フロント作業機302は、ブーム306、アーム307、バケット308から構成されている。上部旋回体300は下部走行体301を旋回モータ5の回転によって旋回可能である。上部旋回体300の前部にはスィングポスト303が取り付けられ、このスィングポスト303にフロント作業機302が上下動可能に取り付けられている。スイングポスト303はスイングシリンダ9の伸縮により上部旋回体300に対して水平方向に回動可能であり、フロント作業機302のブーム306、アーム307、バケット308はブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12の伸縮により上下方向に回動可能である。下部走行体301は中央フレーム304を備え、この中央フレーム304にはブレードシリンダ7の伸縮により上下動作を行うブレード305が取り付けられている。下部走行体301は、走行モータ6,8の回転により左右の履帯310,311を駆動することによって走行を行う。
<第1の実施の形態>
図1A及び図2Bに本発明の第1の実施の形態に係わる油圧ショベルの油圧駆動装置を示す。
【0024】
〜基本構成〜
まず、本実施の形態に係わる油圧駆動装置の基本構成を説明する。
【0025】
本実施の形態における油圧駆動装置は、エンジン1と、エンジン1によって駆動されるメインのメインポンプ2と、メインポンプ2と連動してエンジン1により駆動されるパイロットポンプ3と、メインポンプ2から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ5,6,7,8,9,10,11,12と、コントロールバルブ4とを備えている。
【0026】
本実施形態に係わる履帯式走行装置を備えた作業機は、例えば油圧ミニショベルであり、アクチュエータ5は油圧ショベルの旋回モータであり、アクチュエータ6,8は左右の走行モータであり、アクチュエータ7はブレードシリンダであり、アクチュエータ9はスイングシリンダであり、アクチュエータ10,11,12はそれぞれブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダである。
【0027】
コントロールバルブ4は、メインポンプ2の供給油路2aに接続され、メインポンプ2から各アクチュエータに供給される圧油の方向と流量をそれぞれ制御する複数のバルブセクション13,14,15,16,17,18,19,20と、複数のアクチュエータ5,6,7,8,9,10,11,12の負荷圧のうち最も高い負荷圧(以下、最高負荷圧という)PLmaxを選択して信号油路21に出力する複数のシャトル弁22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gと、メインポンプ2の供給油路2aに設けられ、メインポンプ2の最高吐出圧(最高ポンプ圧)を制限するメインリリーフ弁23と、メインポンプ2の吐出圧(ポンプ圧)Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧PLSを絶対圧として出力する差圧減圧弁24と、ポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧PLSがバネ25aにより設定されたある一定値を超えたときにメインポンプ2の吐出流量の一部をタンクTに戻し、差圧PLSをバネ25aにより設定された一定値以下に保つアンロード弁25とを有している。アンロード弁25及びメインリリーフ弁23の出側はコントロールバルブ2内でタンク油路29に接続され、タンクTに接続されている。
【0028】
バルブセクション13は流量制御弁26aと圧力補償弁27aとから構成され、バルブセクション14は流量制御弁26bと圧力補償弁27bとから構成され、バルブセクション15は流量制御弁26cと圧力補償弁27cとから構成され、バルブセクション16は流量制御弁26dと圧力補償弁27dとから構成され、バルブセクション17は流量制御弁26eと圧力補償弁27eとから構成され、バルブセクション18は流量制御弁26fと圧力補償弁27fとから構成され、バルブセクション19は流量制御弁26gと圧力補償弁27gとから構成され、バルブセクション20は流量制御弁26hと圧力補償弁27hとから構成されている。
【0029】
流量制御弁26a〜26hは、メインポンプ2からそれぞれのアクチュエータ5〜12に供給される圧油の方向と流量をそれぞれ制御し、圧力補償弁27a〜27hは流量制御弁26a〜26hの前後差圧をそれぞれ制御する。
【0030】
圧力補償弁27a〜27hは目標差圧設定用の開弁側受圧部28a,28b,28c,28d,28e,28f,28g,28hを有し、この受圧部28a〜28hには差圧減圧弁24の出力圧が導かれ、油圧ポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧PLSの絶対圧(以下絶対圧PLSという)により目標補償差圧が設定される。このように流量制御弁26a〜26hの前後差圧を同じ差圧PLSという値に制御することにより、圧力補償弁27a〜27hは流量制御弁26a〜26hの前後差圧が油圧ポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧PLSに等しくなるように制御する。これにより複数のアクチュエータを同時に駆動する複合操作時は、アクチュエータ5〜12の負荷圧の大小に係わらず、流量制御弁26a〜26hの開口面積比に応じてメインポンプ2の吐出流量を分配し、複合操作性を確保することができる。また、メインポンプ2の吐出流量が要求流量に満たないサチュレーション状態になった場合は、差圧PLSはその供給不足の程度に応じて低下し、これに応じて圧力補償弁27a〜27hが制御する流量制御弁26a〜26hの前後差圧が同じ割合で低下して流量制御弁26a〜26hの通過流量が同じ割合で減少するため、この場合も流量制御弁26a〜26hの開口面積比に応じてメインポンプ2吐出流量を分配し、複合操作性を確保することができる。
【0031】
また、油圧駆動装置は、パイロットポンプ3の供給油路3aに接続され、パイロットポンプ3の吐出流量に応じて絶対圧を出力するエンジン回転数検出弁30と、エンジン回転数検出弁30の下流側に接続され、パイロット油路31の圧力を一定に保つパイロットリリーフ弁32を有するパイロット油圧源33と、パイロット油路31に接続され、パイロット油圧源32の油圧を元圧として流量制御弁26a〜26hを操作するための制御パイロット圧a,b,c,d,d,f,g,h,i,j,k,l,m,n,o,p,を生成するためのリモコン弁を備えた操作レバー装置34a、34b,34c,34d,34e,34f,34g,34hとを備えている。
【0032】
エンジン回転数検出弁30は、パイロットポンプ3の供給油路3aをパイロット油路31に接続する油路に設けられた絞り要素(固定絞り)30fと、絞り要素30fに並列に接続された流量検出弁30aと、差圧減圧弁30bとを有している。流量検出弁30aの入力側はパイロットポンプ3の供給油路3aに接続され、流量検出弁30aの出力側はパイロット油路31に接続されている。流量検出弁30aは通過流量が増大するにしたがって開口面積を大きくする可変絞り部30cを有し、パイロットポンプ3の吐出油は絞り要素30f及び流量検出弁30aの可変絞り部30cの両方を通過してパイロット油路31側へと流れる。このとき、絞り要素30fと流量検出弁30aの可変絞り部30cには通過流量が増加するにしたがって大きくなる前後差圧が発生し、差圧減圧弁30bはその前後差圧を絶対圧Paとして出力する。パイロットポンプ3の吐出流量はエンジン1の回転数によって変化するため、絞り要素30f及び可変絞り部30cの前後差圧を検出することにより、パイロットポンプ3の吐出流量を検出することができ、エンジン1の回転数を検出することができる。また、可変絞り部30cは、通過流量が増大するにしたがって(前後差圧が高くなるにしたがって)開口面積を大きくすることにより、通過流量が増大するにしたがって前後差圧の上昇度合いが緩やかになるように構成されている。
【0033】
メインポンプ2は可変容量型の油圧ポンプであり、その傾転角(容量)を制御するためのポンプ制御装置35を備えている。ポンプ制御装置35はポンプトルク制御部35AとLS制御部35Bとで構成されている。
【0034】
ポンプトルク制御部35Aはトルク制御傾転アクチュエータ35aを有し、トルク制御傾転アクチュエータ35aはメインポンプ2の吐出圧が高くなるとメインポンプ2の傾転角(容量)が減るようにメインポンプ2の斜板(容量可変部材)2sを駆動し、メインポンプ2の入力トルクが予め設定した最大トルクを越えないように制限する。これによりメインポンプ2の消費馬力が制限され、過負荷によるエンジン1の停止(エンジンストール)が防止される。
【0035】
LS制御部35Bは、LS制御弁35b及びLS制御傾転アクチュエータ35cを有している。
【0036】
LS制御弁35bは対向する受圧部35d,35eを有し、受圧部35dには油路40を介してエンジン回転数検出弁30の差圧減圧弁30bで生成された絶対圧Paがロードセンシング制御の目標差圧(目標LS差圧)として導かれ、受圧部35eに差圧減圧弁24で生成された絶対圧PLS(メインポンプ2の吐出圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧PLS)が導かれる。LS制御弁35bは、絶対圧PLSが絶対圧Paよりも高くなると(PLS>Pa)、パイロット油圧源33の圧力をLS制御傾転アクチュエータ35cに導き、絶対圧PLSが絶対圧Paよりも低くなると(PLS<Pa)、LS制御傾転アクチュエータ35cをタンクTに連通させる。LS制御傾転アクチュエータ35cは、パイロット油圧源33の圧力が導かれると、メインポンプ2の傾転角が減るようにメインポンプ2の斜板2sを駆動し、タンクTに連通すると、メインポンプ2の傾転角が増えるようにメインポンプ2の斜板2sを駆動する。これによりメインポンプ2の吐出圧Pdが最高負荷圧PLmaxよりも絶対圧Pa(目標差圧)だけ高くなるようにメインポンプ2の傾転角(容量)が制御される。
【0037】
ここで、絶対圧PGRはエンジン回転数に応じて変化する値であるため、絶対圧PGRをロードセンシング制御の目標差圧として用い、圧力補償弁27a〜27hの目標補償差圧をメインポンプ2の吐出圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧の絶対圧PLSにより設定することにより、エンジン回転数に応じたアクチュエータスピードの制御が可能となる。
【0038】
アンロード弁25のバネ25aの設定圧は、エンジン1が定格最高回転数にあるときのエンジン回転数検出弁30の差圧減圧弁30bで生成された絶対圧PGR(ロードセンシング制御の目標差圧)よりも高くなるように設定されている。
【0039】
〜特徴的構成〜
次に、本実施の形態に係わる油圧駆動装置の特徴的構成を説明する。
【0040】
本実施の形態における油圧駆動装置は、その特徴的構成として、旋回用の操作レバー装置34a、左右走行用の操作レバー装置34b,34d,ブーム用の操作レバー装置34fのそれぞれのパイロットラインに設けられ、操作レバー装置34a,34b,34d,34fのいずれかの操作レバーが操作されたときに操作パイロット圧の最高圧を選択して出力する複数のシャトル弁37a〜37gを含む高圧選択装置37と、LS制御部35BのLS制御弁35bとLS制御傾転アクチュエータ35cとの間の油路に設けられ、連通位置Iと絞り位置IIとを有する応答切換弁35fと、高圧選択装置37で選択して出力した操作パイロット圧を応答切換弁35fに導く信号伝達油路38とを備えている。
【0041】
ここで、旋回モータ5、左右の走行モータ6,8及びブームシリンダ10は、特定のアクチュエータであり、旋回用の操作レバー装置34a、左右走行用の操作レバー装置34b,34d,ブーム用の操作レバー装置34fは、その特定のアクチュエータ5,6,8,10の動作を指示する特定の操作レバー装置である。
【0042】
高圧選択装置37と信号伝達油路38は、複数のアクチュエータ5〜12のうちのその特定のアクチュエータ5,6,8,10の動作を指示する特定の操作レバー装置34a、34b,34d,34fの操作パイロット圧を検出する操作検出装置を構成し、応答切換弁35fは、その操作検出装置の検出結果に基づいて連通位置Iと絞り位置IIとの間で切り換わる。
【0043】
また、応答切換弁35fは、信号伝達油路38に接続され、高圧選択装置37で選択して出力した操作パイロット圧が導かれる受圧部35gを有する油圧切換弁であり、操作検出装置(高圧選択装置37及び信号伝達油路38)が操作パイロット圧を検出しないときは連通位置Iにあり、操作検出装置が操作パイロット圧を検出するときは絞り位置IIに切り換えられる。
【0044】
図3は、応答切換弁35fのストロークと開口面積との関係を示す図である。横軸のストロークは応答切換弁35fの受圧部35gに導かれる操作パイロット圧に対応している。応答切換弁35fのストロークがゼロのとき(操作パイロット圧がタンク圧であるとき)、応答切換弁35fは連通位置Iにあり、開口面積は最大のAmaxである。応答切換弁35fのストローク(操作パイロット圧)が増加すると応答切換弁35fは直ちに絞り位置IIに切り換わり、開口面積は最小のAminとなる。
【0045】
〜基本構成の動作〜
まず、本実施の形態の油圧駆動装置の基本構成の動作を説明する。
【0046】
<全ての操作レバーが中立のとき>
全ての操作レバー装置34a〜34hの操作レバーが中立位置にある場合、全ての流量制御弁26a〜26hは中立位置にあり、アクチュエータ5〜12に圧油は供給されない。また、流量制御弁26a〜26hが中立位置にあるときは、シャトル弁22a〜22gにより検出される最高負荷圧PLmaxはタンク圧となる。
【0047】
メインポンプ2からの吐出油は供給油路2aに供給され、供給油路2aの圧力が上昇する。供給油路2aにはアンロード弁25が設けられており、アンロード弁25は、供給油路2aの圧力が最高負荷圧PLmax(今の場合はタンク圧)よりバネ25aの設定圧以上高くなると、開状態になって供給油路2aの圧油をタンクに戻し、供給油路2aの圧力の上昇を制限する。これによりメインポンプ2の吐出圧は最低圧力Pminに制御される。
【0048】
差圧減圧弁24は、メインポンプ2の吐出圧Pdと最高負荷圧PLmax(今の場合はタンク圧)の差圧PLSを絶対圧として出力している。メインポンプ2のLS制御部35BのLS制御弁35bには、エンジン回転数検出弁30の出力圧と差圧減圧弁24の出力圧が導かれており、メインポンプ2の吐出圧が上昇し、差圧減圧弁24の出力圧がエンジン回転数検出弁30の出力圧よりも大きくなると、LS制御弁35bは図示右側の位置に切り換わり、LS制御傾転アクチュエータ35cにパイロット油圧源33の圧力が導かれ、メインポンプ2の傾転角が小さくなるよう制御される。しかし、メインポンプ2には、その最小傾転角を規定するストッパ(図示せず)が設けられているため、メインポンプ2はそのストッパにより規定される最小傾転角qminに保持され、最少流量Qminを吐出する。
【0049】
<操作レバーを操作した場合>
任意のアクチュエータ、例えばブーム用の操作レバー装置34fの操作レバーを操作した場合は、ブーム用の流量制御弁26fが切り換わり、ブームシリンダ10に圧油が供給され、ブームシリンダ10が駆動される。
【0050】
流量制御弁26fを流れる流量は、流量制御弁26fのメータイン絞りの開口面積とメータイン絞りの前後差圧によって決まり、メータイン絞りの前後差圧は圧力補償弁27fによって差圧減圧弁24の出力圧と等しくなるように制御されるため、流量制御弁26fを流れる流量(したがってブームシリンダ10の駆動速度)は操作レバーの操作量に応じて制御される。
【0051】
一方、ブームシリンダ10の負荷圧がシャトル弁22a〜22gによって最高負荷圧として検出され、差圧減圧弁24及びアンロード弁25に伝えられる。
【0052】
アンロード弁25にブームシリンダ10の負荷圧が最高負荷圧として導かれると、それに応じてアンロード弁25のクラッキング圧力(アンロード弁25が開き始める圧力)は上昇し、供給油路2aの圧力が過渡的に最高負荷圧よりバネ25aの設定圧以上高くなると、アンロード弁25は開弁して供給油路2aの圧油をタンクに戻す。これにより供給油路2aの圧力が最高負荷圧PLmaxよりもバネ25aの設定圧以上に上昇することが制限される。
【0053】
ブームシリンダ10が動き始めると、一時的に供給油路2aの圧力が低下する。このとき、供給油路2aの圧力とブームシリンダ10の負荷圧の差が、差圧減圧弁24の出力圧として出力されるため、差圧減圧弁24の出力圧が低下する。
【0054】
メインポンプ2のLS制御部35BのLS制御弁35bには、エンジン回転数検出弁30の出力圧と差圧減圧弁24の出力圧とが導かれており、差圧減圧弁24の出力圧がエンジン回転数検出弁30の出力圧よりも低下すると、LS制御弁35bは図示左側の位置に切り換わり、LS制御傾転アクチュエータ35cをタンクTに連通させてLS制御傾転アクチュエータ35c圧油をタンクに戻し、メインポンプ2の傾転角が増加するよう制御され、メインポンプ2の吐出流量が増加する。このメインポンプ2の吐出流量の増加は、差圧減圧弁24の出力圧がエンジン回転数検出弁30の出力圧と等しくなるまで継続する。これらの一連の働きにより、メインポンプ2の吐出圧(供給油路2aの圧力)が最高負荷圧PLmaxよりもエンジン回転数検出弁30の出力圧(目標差圧)だけ高くなるよう制御され、ブーム用の流量制御弁26fが要求する流量をブームシリンダ10に供給する、いわゆるロードセンシング制御が行われる。
【0055】
ブーム以外の操作レバーを単独で操作した場合の動作も同様である。
【0056】
2つ以上のアクチュエータの操作レバー装置、例えばブーム用の操作レバー装置34fとアーム用の操作レバー装置34gの操作レバーを操作した場合は、流量制御弁26f,26gが切り換わり、ブームシリンダ10及びアームシリンダ11に圧油が供給され、ブームシリンダ10及びアームシリンダ11が駆動される。
【0057】
ブームシリンダ10及びアームシリンダ11の負荷圧のうち高い方の圧力がシャトル弁22a〜22gによって最高負荷圧PLmaxとして検出され、差圧減圧弁24及びアンロード弁25に伝えられる。
【0058】
アンロード弁25にシャトル弁22a〜22gによって検出された最高負荷圧PLmaxが導かれたときの動作は、ブームシリンダ10を単独で駆動した場合と同じであり、最高負荷圧PLmaxの上昇に応じてアンロード弁25のクラッキング圧力は上昇し、供給油路2aの圧力が最高負荷圧PLmaxよりもバネ25aの設定圧以上に上昇することが制限される。
【0059】
また、メインポンプ2のLS制御部35BのLS制御弁35bには、エンジン回転数検出弁30の出力圧と差圧減圧弁24の出力圧とが導かれており、ブームシリンダ10を単独で駆動するしたと同様に、メインポンプ2の吐出圧(供給油路2aの圧力)が最高負荷圧PLmaxよりもエンジン回転数検出弁30の出力圧(目標差圧)だけ高くなるよう制御され、流量制御弁26f,26gが要求する流量をブームシリンダ10及びアームシリンダ11に供給する、いわゆるロードセンシング制御が行われる。
【0060】
差圧減圧弁24の出力圧は圧力補償弁27a〜27hに目標補償差圧として導かれており、圧力補償弁27f,27gは、流量制御弁26f,26gの前後差圧を、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧PLmaxとの差圧に等しくなるように制御する。これによりブームシリンダ10とアームシリンダ11の負荷圧の大小に係わらず、流量制御弁26f,26gのメータイン絞り部の開口面積に応じた比率でブームシリンダ10とアームシリンダ11に圧油を供給することができる。
【0061】
このとき、メインポンプ2の吐出流量が流量制御弁26f,26gが要求する流量に満たないサチュレーション状態になった場合は、サチュレーションの程度に応じて差圧減圧弁24の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧PLmaxとの差圧)が低下し、これに伴って圧力補償弁27a〜27hの目標補償差圧も小さくなるので、メインポンプ2の吐出流量を流量制御弁26f,26gが要求する流量の比に再分配できる。
【0062】
ブームとアーム以外の複数の操作レバーを同時に操作した場合の動作も同様である。
【0063】
<エンジン回転数を下げた場合>
以上の動作はエンジン1が最高定格回転数にあるときのものである。エンジン1の回転数を低速に下げた場合は、エンジン回転数検出弁30の出力圧がそれに応じて低下するため、LS制御部35BのLS制御弁35bの目標差圧も同様に低下する。また、ロードセンシング制御の結果、圧力補償弁27a〜27hの目標補償差圧も同様に低下する。これによりエンジン回転数の低下に合わせてメインポンプ2の吐出流量と流量制御弁26a〜26hの要求流量が減少し、アクチュエータ5〜12の駆動速度が速くなりすぎることがなく、エンジン回転数を下げた場合の微操作性を向上することができる。
〜特徴的構成の動作〜
次に、本実施の形態の油圧駆動装置の特徴的構成の動作を説明する。
【0064】
全ての操作レバー装置34a〜34hの操作レバーが中立位置にあるとき、或いは特定のアクチュエータである旋回モータ5,左右の走行モータ6,8、ブームシリンダ10以外のアクチュエータのいずれかの駆動を意図して、特定の操作レバー装置である旋回用、左右の走行用、ブーム用の操作レバー装置34a,34b,34d,34f以外の操作レバー装置のいずれか、すなわち操作レバー装置34c,34e,34g,34hのいずれかの操作レバーを操作したときは、高圧選択装置37のシャトル弁37a〜37gには操作パイロット圧は検出されず、応答切換弁35fは連通位置Iにある。応答切換弁35fが連通位置Iにあるときは、応答切換弁35fの開口面積は最大のAmaxであり(図3)、上述した基本動作において、LS制御弁35bが図示左側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が増加するよう制御されるとき、LS制御傾転アクチュエータ35cからタンクTへの圧油の排出は速やかに行われ、メインポンプ2の傾転角が応答良く増加し、良好なメインポンプ2の応答性が保たれる。同様に、LS制御弁35bが図示右側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が減少するよう制御されるとき、パイロット油圧減33からLS制御傾転アクチュエータ35cへの圧油の供給は速やかに行われ、メインポンプ2の傾転角が応答良く減少し、良好なメインポンプ2の応答性が保たれる。
【0065】
これにより、例えば、アームやバケットの泥落とし作業などの早い応答性を要求される作業では、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12を応答性良く駆動することができ、優れた操作性を確保することができる。
【0066】
一方、特定のアクチュエータである旋回モータ5,左右の走行モータ6,8、ブームシリンダ10のいずれかの駆動を意図して、特定の操作レバー装置である旋回用、左右の走行用、ブーム用の操作レバー装置34a,34b,34d,34fのいずれかの操作レバーを操作したときは、高圧選択装置37のシャトル弁37a〜37gはその操作パイロット圧を選択して出力し、応答切換弁35fは絞り位置IIに切り換えられる。応答切換弁35fが絞り位置IIにあるときは、応答切換弁35fの開口面積は最小のAminであり(図3)、上述した基本動作において、LS制御弁35bが図示左側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が増加するよう制御されるとき、LS制御傾転アクチュエータ35cからタンクTへ排出される圧油の流れは、応答切換弁35fが絞り位置II(最小の開口面積Amin)にあることによる絞り作用によって抑制され、メインポンプ2の傾転角の増加を緩やかにする。同様に、LS制御弁35bが図示右側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が減少するよう制御されるとき、パイロット油圧減33からLS制御傾転アクチュエータ35cへの圧油の供給は抑制され、メインポンプ2の傾転角の減少を緩やかにする。
【0067】
これによりブームシリンダ10、走行モータ6,8、旋回モータ5など被駆動体の慣性の影響を大きく受けるアクチュエータの操作レバー装置の操作レバーを急操作した場合でも、アクチュエータへの圧油の流入が緩やかとなり、アクチュエータ起動時の衝撃を緩和し良好な操作性が得られる。
〜効果〜
以上のように本実施の形態によれば、ロードセンシング制御方式の油圧駆動装置において、アクチュエータや作業の種類に応じてメインポンプ2の応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができる。
【0068】
また、高圧選択装置37を複数のシャトル弁37a〜37gで構成し、応答切換弁を油圧切換弁で構成したので、油圧駆動装置全体を純油圧的に構成することができ、安価で信頼性の高いシステムを提供することができる。
<第2の実施の形態>
図4A及び図4Bに本発明の第2の実施の形態に係わる油圧ショベルの油圧駆動装置を示す。図中、図1A及び図1Bに示した部材と同等のものには同じ符号を付し、説明を省略する。本実施の形態は、特定のアクチュエータを第1の実施の形態のものから異ならせ、それに伴って応答切換弁の切り換え位置を異ならせたものである。
【0069】
すなわち、本実施の形態における油圧駆動装置は、その特徴的構成として、アーム用の操作レバー装置34g及びバケット用の操作レバー装置34hのそれぞれのパイロットラインに設けられ、操作レバー装置34g,34hのいずれかの操作レバーが操作されたときに操作パイロット圧の最高圧を選択して出力する複数のシャトル弁37h、37i、37jを含む高圧選択装置37Aと、LS制御部35BのLS制御弁35bとLS制御傾転アクチュエータ35cとの間の油路に設けられ、絞り位置Iと連通位置IIとを有する応答切換弁35Afと、高圧選択装置37Aで選択して出力した操作パイロット圧を応答切換弁35Afに導く信号伝達油路38とを備えている。
【0070】
ここで、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12は、複数のアクチュエータ5〜12のうちの特定のアクチュエータであり、アーム用の操作レバー装置34g及びバケット用の操作レバー装置34hは、その特定のアクチュエータ11,12の動作を指示する特定の操作レバー装置である。
【0071】
高圧選択装置37Aと信号伝達油路38は、複数のアクチュエータ5〜12のうちのその特定のアクチュエータ11,12の動作を指示する特定の操作レバー装置34g、34hの操作パイロット圧を検出する操作検出装置を構成し、応答切換弁35Afは、その操作検出装置の検出結果に基づいて絞り位置Iと連通位置IIとの間で切り換わる。
【0072】
また、応答切換弁35Afは、信号伝達油路38に接続され、高圧選択装置37Aで選択して出力した操作パイロット圧が導かれる受圧部35gを有する油圧切換弁であり、操作検出装置(高圧選択装置37A及び信号伝達油路38)が操作パイロット圧を検出しないときは絞り位置Iにあり、操作検出装置が操作パイロット圧を検出するときは連通位置IIに切り換えられる。
【0073】
図5Aは、応答切換弁35Afのストロークと開口面積との関係を示す、図3と同様な図である。この例は、応答切換弁35fの開口面積を絞り位置Iと連通位置IIとの間で切り換える場合のものである。横軸のストロークは応答切換弁35Afの受圧部35gに導かれる操作パイロット圧に対応している。応答切換弁35Afのストロークがゼロのとき(操作パイロット圧がタンク圧であるとき)、応答切換弁35Afは絞り位置Iにあり、開口面積は最小のAminである。応答切換弁35Afのストローク(操作パイロット圧)が増加すると応答切換弁35Afは直ちに連通位置IIに切り換わり、開口面積は最大のAmaxとなる。
【0074】
次に、本実施の形態の油圧駆動装置の動作を説明する。
【0075】
全ての操作レバー装置34a〜34hの操作レバーが中立位置にあるとき、或いは特定のアクチュエータであるアームシリンダ11及びバケットシリンダ12以外のアクチュエータのいずれかの駆動を意図して、特定の操作レバー装置であるアーム用及びバケット用の操作レバー装置34g,34h以外の操作レバー装置のいずれか、すなわち操作レバー装置34a〜34fのいずれかの操作レバーを操作したときは、高圧選択装置37Aのシャトル弁37h〜37jには操作パイロット圧は検出されず、応答切換弁35Afは絞り位置Iにある。応答切換弁35Afが絞り位置Iにあるときは、応答切換弁35Afの開口面積は最小のAminであり(図5A)、第1の実施の形態において説明した基本動作において、LS制御弁35bが図示左側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が増加するよう制御されるとき、LS制御傾転アクチュエータ35cからタンクTへ排出される圧油の流れは、応答切換弁35Afが絞り位置I(最小の開口面積Amin)にあることによる絞り作用によって抑制され、メインポンプ2の傾転角の増加を緩やかにする。同様に、LS制御弁35bが図示右側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が減少するよう制御されるとき、パイロット油圧減33からLS制御傾転アクチュエータ35cへの圧油の供給は抑制され、メインポンプ2の傾転角の減少を緩やかにする。
【0076】
これによりブームシリンダ10、走行モータ6,8、旋回モータ5など被駆動体の慣性の影響を大きく受けるアクチュエータの操作レバー装置の操作レバーを急操作した場合でも、アクチュエータへの圧油の流入が緩やかとなり、アクチュエータ起動時の衝撃を緩和し良好な操作性が得られる。
【0077】
一方、特定のアクチュエータであるアームシリンダ11及びバケットシリンダ12のいずれかの駆動を意図して、特定の操作レバー装置であるアーム用及びバケット用の操作レバー装置34g,34hのいずれかの操作レバーを操作したときは、高圧選択装置37Aのシャトル弁37h〜37jはその操作パイロット圧を選択して出力し、応答切換弁35Afは連通位置IIに切り換えられる。応答切換弁35Afが連通位置IIにあるときは、応答切換弁35Afの開口面積は最大のAmaxであり(図5A)、第1の実施の形態において説明した基本動作において、LS制御弁35bが図示左側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が増加するよう制御されるとき、LS制御傾転アクチュエータ35cからタンクTへの圧油の排出は速やかに行われ、メインポンプ2の傾転角が応答良く増加し、良好なメインポンプ2の応答性が保たれる。同様に、LS制御弁35bが図示右側の位置に切り換わりメインポンプ2の傾転角が減少するよう制御されるとき、パイロット油圧減33からLS制御傾転アクチュエータ35cへの圧油の供給は速やかに行われ、メインポンプ2の傾転角が応答良く減少し、良好なメインポンプ2の応答性が保たれる。
【0078】
これにより、例えば、アームやバケットの泥落とし作業などの早い応答性を要求される作業では、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12を応答性良く駆動することができ、優れた操作性を確保することができる。
【0079】
このように本実施の形態においても、ロードセンシング制御方式の油圧駆動装置において、アクチュエータや作業の種類に応じてメインポンプ2の応答性を可変とし、優れた操作性を実現することができる。
〜応答切換弁35Afのストロークと開口面積との関係の他の例〜
図5Bは、応答切換弁35Afのストロークと開口面積との関係の他の例を示す図である。この例は、応答切換弁35Afの絞り位置Iと連通位置IIの間において開口面積を可変とした場合のものである。応答切換弁35Afのストロークがゼロのとき(操作パイロット圧がタンク圧であるとき)、応答切換弁35Afは絞り位置Iにあり、開口面積は最小のAminである。応答切換弁35Afのストローク(操作パイロット圧)が増加すると応答切換弁35Afの開口面積は、ストローク(操作パイロット圧)の増加に応じて最小のAminから可変的に増加し、ストローク(操作パイロット圧)が最大近くまで増加すると応答切換弁35Afは連通位置IIに切り換わり、開口面積は最大のAmaxとなる。
【0080】
このように構成した実施の形態においては、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12のいずれかの駆動を意図してアーム用及びバケット用の操作レバー装置34g,34hのいずれかの操作レバーを操作したときは、操作レバーの操作量(操作パイロット圧/ストローク)の増加に応じて応答切換弁35Afの開口面積が可変的に増加するため、操作量に応じて絞り作用が増加し、操作量に応じたメインポンプ2の応答性を得ることができる。このため,例えばアームやバケットの泥落とし作業において、操作レバーをハーフ操作した場合は、操作レバーをフル操作した場合に比べてメインポンプ2の応答性を遅くすることができ、操作量に合わせてメインポンプ2の応答性を加減し、良好な操作性が得られる。
<第3の実施の形態>
図6A及び図6Bに本発明の第3の実施の形態に係わる油圧ショベルの油圧駆動装置を示す。図中、図1A及び図1B、図4A及び図4Bに示した部材と同等のものには同じ符号を付し,説明を省略する。本実施の形態は、オペレータが操作するモード選択スイッチを設け、機敏な応答性が必要な作業を行うときだけ応答性を早めるようにしたものである。
【0081】
すなわち、本実施の形態における油圧駆動装置は、図4A及び図4Bに示した構成に加えて、モード選択スイッチ41と、信号伝達油路38に設けられ、モード選択スイッチ41が出力する信号(電気信号)に応じて開位置と閉位置との間で切り換わる選択弁42とを更に備えている。モード選択スイッチ41は通常はOFF位置にあり、このときモード選択スイッチ41が出力する電気信号はOFFとなる。オペレータにより操作されるとモード選択スイッチ41はON位置に切り換わり、モード選択スイッチ41はONの電気信号を出力する。選択弁42は電磁切換弁であり、モード選択スイッチ41が出力する電気信号がOFFのときは図示の開位置にあり、モード選択スイッチ41が出力する電気信号がONになると、図示の位置から閉位置に切り換わる。選択弁42は、図示の開位置にあるときは、高圧選択装置37のシャトル弁37h〜37jが検出した操作パイロット圧を応答切換弁35Afの受圧部35gに伝達し、閉位置に切り換わると、操作パイロット圧の伝達を遮断する。
【0082】
このように構成した本実施の形態においては、モード選択スイッチ41が通常のOFF位置にあるときは、第2の実施の形態と同様に動作する。すなわち、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12以外のアクチュエータのいずれかの駆動を意図して、操作レバー装置34a〜34fのいずれかの操作レバーを操作したときは、応答切換弁35Afは絞り位置Iにあり、メインポンプ2の傾転角の増加或いは減少を緩やかにし、ブームシリンダ10、走行モータ6,8、旋回モータ5の操作レバー装置の操作レバーを急操作した場合に、アクチュエータ起動時の衝撃を緩和し、良好な操作性が得られる。また、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12のいずれかの駆動を意図して、アーム用及びバケット用の操作レバー装置34g,34hのいずれかの操作レバーを操作したときは、応答切換弁35Afは連通位置IIに切り換えられ、メインポンプ2の傾転角が応答良く増加或いは減少し、良好なメインポンプ2の応答性が保たれ、例えば、アームやバケットの泥落とし作業などの早い応答性を要求される作業では、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12を応答性良く駆動することができ、優れた操作性を確保することができる。
【0083】
一方、モード選択スイッチ41をOFF位置からON位置に切り換えたときは、選択弁42が閉位置に切り換わるため、高圧選択装置37のシャトル弁37h〜37jに操作パイロット圧が検出されたとしても、その操作パイロット圧の応答切換弁35Afの受圧部35gへの伝達は遮断され、応答切換弁35Afは絞り位置Iに保持される。このためアームシリンダ11及びバケットシリンダ12のいずれかを駆動する作業を行う場合であっても、泥落とし作業のように早い応答性を必要としないときは、操作レバー装置の操作レバーを急操作した場合でも、メインポンプ2の傾転角の増加或いは減少は緩やかであるため、アクチュエータへの圧油の流入が緩やかとなり、アクチュエータ起動時の衝撃を緩和し良好な操作性が得られる。
<その他>
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、高圧選択装置37,37Aをシャトル弁で構成し、操作パイロット圧をそのまま油圧信号として出力したが、操作パイロット圧を圧力センサで検出し、応答切換弁35f,35Afを電磁切換弁として構成し、圧力センサの検出信号をコントローラに入力し、コントローラからの信号で応答切換弁を切り換えてもよい。また、操作レバー装置の操作を直接電気的に検出し、その検出信号をコントローラに入力し、コントローラからの信号で応答切換弁を切り換えてもよい。このように応答切換弁の切り換え制御にコントローラを介在させた場合は、油圧ショベルのその他の動作状態を加味して応答切換弁を切り換えることができるようになり、更に良好な操作性を得ることができる。
【0084】
また、上記実施の形態において、図1等に示すロードセンシング制御方式に係わる油圧回路部分の構成は一例であり、それ以外の種々の油圧回路を採用することができる。例えば、図1においては、差圧減圧弁24の出力圧(ポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmaxとの差圧の絶対圧PLS)を圧力補償弁27a〜27hの受圧部28a〜28hに導いて目標補償差圧を設定したが、圧力補償弁27a〜27hに対向する受圧部を設け、これらの受圧部にポンプ圧Pdと最高負荷圧PLmax個別に導いて目標補償差圧を設定してもよい。また、LS制御部35Bにおいて、差圧減圧弁30bが出力するエンジンの回転数に依存する圧力を絶対圧PaをLS制御弁35bの受圧部35dに導いて目標LS差圧を設定したが、受圧部35dの代わりにバネを配置し、そのバネで目標LS差圧を設定してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン
2 メインポンプ
2a 供給油路
3 パイロツトポンプ
3a 供給油路
4 コントロールバルブ
5〜12 アクチュエータ
5 旋回モータ
6,8 走行モータ
7 ブレードシリンダ
9 スイングシリンダ
10 ブームシリンダ
11 アームシリンダ
12 バケットシリンダ
13〜20 バルブセクション
21 信号油路
22a〜22g シャトル弁
23 メインリリーフ弁
24 差圧減圧弁
25 アンロード弁
25a バネ
26a〜26h 流量制御弁(メインスプール)
27a〜27h 圧力補償弁
30 エンジン回転数検出弁装置
30a 流量検出弁
30b 差圧減圧弁
30c 可変絞り部
31 パイロット油路
32 パイロットリリーフ弁
33 パイロット油圧源
34a〜34h 操作レバー装置
35 ポンプ制御装置
35a ポンプトルク制御部
35B LS制御部
35a 馬力制御傾転アクチュエータ
35b LS制御弁
35c LS制御傾転アクチュエータ
35d,35e 受圧部
35f 応答切換弁
35Af 応答切換弁
37 高圧選択装置
37A 高圧選択装置
37a〜37g シャトル弁
37h〜37j シャトル弁
38 信号伝達油路
41 モード選択スイッチ
42 選択弁
300 上部旋回体
301 下部走行体
302 フロント作業機
303 スイングポスト
304 中央フレーム
305 ブレード
306 ブーム
307 アーム
308 バケット
310,311 履帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、
この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと、
前記油圧ポンプから前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、
前記複数の流量制御弁の前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁と、
前記油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるよう前記油圧ポンプの容量を制御するロードセンシングポンプ制御装置とを備え、
前記ロードセンシングポンプ制御装置は、
前記油圧ポンプの容量を変化させるロードセンシングアクチュエータと、
前記ロードセンシングアクチュエータをパイロット油圧源とタンクとに選択的に連通させ、前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧が前記目標差圧に一致するよう前記ロードセンシングアクチュエータの駆動を制御するロードセンシング制御弁とを有する油圧ショベルの油圧駆動装置において、
前記複数のアクチュエータのうちの特定のアクチュエータの動作を指示する特定の操作レバー装置の操作パイロット圧を検出する操作検出装置と、
前記ロードセンシング制御弁と前記ロードセンシングアクチュエータとを連絡する油路に設けられ、前記操作検出装置の検出結果に基づいて連通位置と絞り位置との間で切り換わる応答切換弁とを備えることを特徴とする油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧ショベルの油圧駆動装置において、
前記操作検出装置は、
前記特定の操作レバー装置が操作されたときに操作パイロット圧を選択して出力する複数のシャトル弁からなる高圧選択装置と、
前記高圧選択装置が出力する操作パイロット圧を前記応答切換弁に導く信号伝達油路とを有し、
前記応答切換弁は、前記信号伝達油路に接続され、前記操作パイロット圧が導かれる受圧部を有する油圧切換弁であることを特徴とする油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の油圧ショベルの油圧駆動装置において、
モード選択スイッチと、
前記信号伝達油路に設けられ、前記モード選択スイッチが出力する信号に応じて開位置と閉位置との間で切り換わる選択弁とを更に有することを特徴とする油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載の油圧ショベルの油圧駆動装置において、
前記複数のアクチュエータは、旋回体を駆動する旋回モータと、走行体を駆動する左右の走行モータと、フロント作業機のブームを駆動するブームシリンダを含み、
前記特定のアクチュエータは、前記旋回モータ、左右の走行モータ及びブームシリンダのうちの少なくとも1つのアクチュエータであり、
前記応答切換弁は、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出しないときは前記連通位置あり、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出するときは前記絞り位置に切り換えられることを特徴とする油圧ショベルの油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項1記載の油圧ショベルの油圧駆動装置において、
前記複数のアクチュエータは、フロント作業機のアームを駆動するアームシリンダと、フロント作業機のバケットを駆動するバケットシリンダを含み、
前記特定のアクチュエータは前記アームシリンダ及びバケットシリンダの少なくとも一方であり、
前記応答切換弁は、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出しないときは前記絞り位置にあり、前記操作検出装置が前記操作パイロット圧を検出するときは前記連通位置に切り換えられることを特徴とする油圧ショベルの油圧駆動装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−162917(P2012−162917A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24313(P2011−24313)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】