説明

油圧ポンプ及び油圧ポンプを用いる圧縮試験装置

【課題】作動油の圧力の微調節と吐出量の微調節を可能にすると共に、固定されたモータによりプランジャの押し込みを可能とする。
【解決手段】モータ23の出力軸に取り付けられる駆動スプロケット30と、回転自在かつモータ23と並行に軸支された継手22と、この継手22に一体的に取り付けられる従動スプロケット31と、両スプロケットに巻き付けられるエンドレスチェン33と、継手22に対して回転不能かつ軸方向に移動可能に連結された送りねじ21と、送りねじ21を進退自在に螺入させるねじ孔25を有する支持部24と、送りねじ21によってねじ送り方向前方に移動されるプランジャ5と、シリンダ4と、プランジャ5により加圧された作動油を吐出させる吐出ポート11と、プランジャ5に対して常時後退方向の弾発力を付勢して送りねじ21の先端面に直接又は回転座を介して常時当接させるリターンスプリング20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプ及び油圧ポンプを用いる圧縮試験装置に関するものであり、特に、作動油をプランジャにより吐出させる油圧ポンプ及びこの油圧ポンプを用いる圧縮試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ポンプ発生装置としてベーンポンプ、ギヤポンプが用いられている。この種の油圧ポンプは、隣接するベーン又は隣接する歯間に作動油を導入して作動油を圧縮しながら吐出口に移動させるので、連続的な吐出に適しているという特長がある。しかし、複数のベーンや複数の歯の回転によって作動油を圧送するので、作動油に脈動が発生じやすく、作動油の供給を受ける油圧作動装置側への影響が出やすいという問題がある。
【0003】
一方、シリンダ内にピストンを往復動自在に収容し、ピストンにより作動油を吐出させるアクチュエータ(油圧ポンプ)も知られている(特許文献1)。しかし、アクチュエータのピストンを作動するための作動油は前記したようなベーンポンプ等の油圧ポンプより供給されることが多いため、脈度の影響を排除することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭2004−257448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来は、シリンダとピストンを用いるアクチュエータを用いて作動油を供給することが試みられているが、ピストンを油圧により作動するため、脈動の影響を排除することが難しいという問題がある。また、ベーンポンプ等の油圧ポンプは、ピストンに作用する圧力がベーン、歯車の枚数と、ベーン、歯車の回転速度とによって決定されるので、ピストンの作動速度及びピストンの作動量の制御が難しく、作動油の吐出量及び作動油の圧力の制御が難しいという問題がある。
【0006】
このため、本出願人は、本出願にかかる発明と同時に、シリンダとビストンからなる油圧ポンプにおいて、ピストンを手動の送りねじによって押し出すことを思案したが、手動では送りねじの回転速度の調節が難しく、作動油の吐出量及び作動油の圧力の調節が難しいという問題があった。また、送りねじの長さを短縮し、装置をコンパクトにするには、送りねじを回転させて送り出すためのハンドルをピストンの移動に追従させて移動させる構成とする必要があり、構成が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は、シリンダとプランジャとを備える油圧ポンプにおいて、作動油の圧力及び吐出量の微調節を可能にすると共に、固定されたモータによってプランジャの押し込みを可能とする油圧ポンプ及びこの油圧ポンプを用いる圧縮試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、モータと、該モータの出力軸に取り付けられて回転される駆動スプロケットと、固定系に回転自在にかつ、前記モータと並行に軸支された継手と、該継手に一体的に取り付けられてこれに回転駆動力を伝達する従動スプロケットと、該従動スプロケットと前記駆動スプロケットとに巻き付けられ、回転駆動力を駆動スプロケットから従動スプロケットに伝達するエンドレスチェンと、前記継手に対して回転不能にかつ軸方向に移動可能に連結された送りねじと、前記送りねじのねじ送り方向前方に固設され、前記送りねじを進退自在に螺入させるねじ孔を有する支持部と、前記送りねじの送り方向前方に配置され、前記送りねじによってねじ送り方向前方に移動されるプランジャと、該プランジャの挿入により作動油を加圧するシリンダと、前記プランジャの挿入により加圧された作動油を前記シリンダより吐出させる吐出部と、前記プランジャに対して常時後退方向の弾発力を付勢して前記プランジャの後端面を前記送りねじの先端面に直接又は回転座を介して常時当接させるリターンスプリングと、を備えた油圧ポンプを提供する。
【0009】
また、本発明は、固定テーブルと、該固定テーブルと相対向して配置された可動テーブルと、該可動テーブルを固定テーブル側に移動させることにより、前記可動テーブルと前記固定テーブルとの間に配置される圧縮試料を圧縮するシリンダ部と、前記シリンダ部の油圧を測定する圧力測定部と、を有し、前記可動テーブルは、前記シリンダ部に対して所定ストローク移動可能に嵌合され、前記シリンダには、請求項1記載の油圧ポンプの吐出部を接続して前記シリンダ室に収容されたピストンを介して前記可動テーブルを前記圧縮試料の圧縮方向に作動させて前記圧縮試料を圧縮する油圧導入ポートが設けられた油圧ポンプを用いる圧縮試験装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリンダとプランジャとを備える油圧ポンプにおいて、固定されたモータによってプランジャをシリンダに押し込むので、作動油の圧力の微調節と吐出量の微調節を可能となる。また、装置のコンパクトに構成することができる。さらに、このような油圧ポンプを用いる圧縮試験装置においては、作動油の圧力の微調節と吐出量の微調節を行うことができるので、精度が高く信頼性の高い圧縮試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る油圧ポンプを示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る継手を示す図1の要部詳細断面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、コンクリートの圧縮試験装置を示す構成図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る圧縮ポンプ及びコンクリートの圧縮試験装置の油圧部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して本発明の一実施の形態に係る油圧ポンプ及びこの油圧ポンプを用いて圧縮試料の圧縮試験を行う圧縮試験機の一実施の形態を説明する。
【0013】
まず、図1および図3を参照して本発明の一実施の形態に係る油圧ポンプについて説明する。図1は油圧ポンプを示す断面図、図2は継手を示す図1の要部詳細断面図、図3は図2のA−A線断面図である。また、図5は本発明の実施の形態に係る圧縮ポンプ及びコンクリートの圧縮試験装置の油圧部を示す拡大断面図である。
【0014】
図1に示すように、油圧ポンプ1は、複数の脚部2によって所定高さに支持されたベース板3に取り付けられる。前記油圧ポンプ1は、シリンダ4とプランジャ5とを有するシリンダブロック6を備える。シリンダ4は、ベース板3の一側部と他側部とに開口しており、一側部側の開口部7がテーパーねじを有するプラグ8によって閉鎖されている。
【0015】
シリンダブロック6の他方の開口部9にはエンドプレート10がボルトによって取り付けられる。また、シリンダブロック6には、作動油を吐出するための吐出部として吐出ポート11が設けられる。吐出ポート11は圧縮試験機等の油圧作動装置のシリンダに対しては相対峙するベース板3の中継ポート12を介して直接、又は油圧配管13を介して後述する圧縮試験機等の油圧作動装置のシリンダに接続される。吐出ポート11の中継ポート12との接続部は、シールのため半径方向に拡径され、シールリング15が装着される。
【0016】
エンドプレート10には、シリンダ4にプランジャ5を案内する案内部として案内孔16が設けられる。案内孔16はシリンダ4と同心に設けられ、プランジャ5を摺動自在に案内すると共に、傾くことのないように支持する。シールは、エンドプレート10とシリンダブロック6との接合面及び案内孔16とプランジャ5との接触面に設けられる。本実施の形態では、シリンダブロック6に対するエンドプレート10の接合面に案内孔16と同心にシールリング17が設けられ、プランジャ5に接触する案内孔16の内面に、案内孔16と同心にシールリング18が設けられる。シールリング17,18を設けるとシリンダ4からの作動油の漏れ出しが防止されるので信頼性が向上する。
【0017】
次に、シリンダからプランジャ5を初期位置に引き戻す装置と、プランジャ5をシリンダ内に押し込む装置について、順次、説明する。
【0018】
まず、シリンダ4からプランジャ5を引き戻す装置について説明する。引き戻し装置としては、押し込み装置から切り離されて独立に機能する装置が好ましい。本実施の形態では、リターンスプリング20が用いられる。前記リターンスプリング20は、エンドプレート10の背面及びプランジャ5の後端部との間に配置される。本実施の形態では、リターンスプリング20がプランジャ5の外周面に嵌挿される。プランジャ5の後端部には、スプリングリテーナ19が設けられ、エンドプレート10の背面にもスプリングリテーナ19bが設けられる。
【0019】
前記プランジャ5にリターンスプリング20を嵌挿して案内孔16に挿入し、スプリングリテーナ19、19bにリターンスプリング20が着座した状態でシリンダ4にプランジャ5を押し込むと、押し込み力によってリターンスプリング20が収縮し、収縮に伴って弾発力が蓄圧される。プランジャ5に対する押し込み力を解除すると、プランジャ5はリターンスプリング20の蓄圧した弾発力によって元の無負荷位置(以下、初期位置という)に復帰する。
【0020】
このように、引き戻し装置として、リターンスプリング20を用いると、複雑な機構が不要になり、メンテナンスも容易になる。また、プランジャ5を押し込む装置に対して、プランジャ5を引き戻す装置を組み込む必要がなく装置をシンプルに構成することができるのでコストダウンが可能になる。
【0021】
次にプランジャ5をシリンダ4内に押しこむ押しこみ装置について説明する。
前述したように、前記リターンスプリング20によってプランジャ5が自動的に引き戻されるので、押し込み装置としては、作動油を吐出させるときにプランジャ5をシリンダ4に押し込み、それ以外は、リターンスプリング20の初期位置に後退させる機能を有していればよい。
【0022】
このような機能を実現できる装置としては、油圧式のアクチュエータを用いることもできるが、油圧ポンプを含む他の装置を必要とするので好ましくない。また、送りねじを利用すると、油圧を精密に、かつ連続的に油圧を調節できるが、手動ではその機能を生かすことができない。そこで、押し込み装置が、送りねじ21と、送りねじ21を回転させるための継手22と、継手22を回転させるためのモータ23と、モータを制御するための制御装置とを含んで構成される。
【0023】
本実施の形態では、ベース板3の一側部と他側部との間に固設されている支持部24に形成されたねじ孔25に送りねじ21が螺入される。前記ねじ孔25は、シリンダ4、エンドプレート10の案内孔16と同心に設けられる。これにより、プランジャ5を案内孔16に沿わせてスムーズに押し込むことができ、送りねじ21の押し込み力をプランジャ5にスムーズに伝達することができる。また、プランジャ5、案内孔16の異常摩耗やかじり付きを抑制することができ、メンテナンス周期を延ばすことができる。
【0024】
さらに、送りねじ21の先端面とスプリングリテーナ19の背面との間に、摩擦力によるプランジャ5及びリターンスプリング20の連れ回りを防止するために送りねじ21の先端部に回転座26が取り付けられる。回転座26は、図2に示すように、カップ状に形成されており、送りねじ21の先端部に設けられた段付部に軸受27,28を介して支持される。このように回転座26を軸受27,28に支持すると、小さな摩擦力でも回転座26を回転させることができる。なお、図2に示すように、軸受27,28の一方は、スラスト軸受が、他方にはラジアル軸受が用いられる。
【0025】
送りねじ21にモータ23の回転駆動力を伝達するための継手22は、ベース板3の下方にモータ23の出力軸29と並行に設けられる。図2に拡大して示されるように、継手22は、ベース板3の前記支持部24と、これより離間してベース板3の下面に取り付けられた支持部34とに、軸受35,35を介して支持される。モータ23の出力軸29には駆動スプロケット30が取り付けられ、継手22の入力部には従動スプロケット31が取り付けられる。駆動スプロケット30と従動スプロケット31には、ベース板3に設けられている出力軸29下方の開口部32を通じてエンドレスチェン33が巻きつけられる。これにより、モータ23によって継手22の回転、停止、回転方向の切り替えを行うことができる。
【0026】
次に、図2、図3も参照して送りねじ21と継手22との連結構造について説明する。
継手22には軸芯部に送りねじを挿入するための挿入孔36が設けられ、継手22の胴部に挿入孔36を挟んで連結部38,38が設けられる。連結部38,38は、外側と挿入孔36との両方に開口する開口部からなり、それぞれ継手22の一端部から他端部に継手22の軸芯方向に沿って延びた長孔状に形成される。
【0027】
送りねじ21は、前記リターンスプリング20の初期位置では殆どが継手22内に収容される。送りねじ21の後端部には送りねじ21の後端部を半径方向に沿って貫通するピン挿入孔37が設けられる。継手22の回転によりピン挿入孔37に連結部38,38を臨ませると、一方の連結部38から送りねじ21のピン挿入孔37にピン41を通し、他方の連結部38に挿入することができる。ピン41を挿入すると、継手22に送りねじ21がピン41により連結される。
【0028】
この状態では、送りねじ21と継手22とは相互に回転不能になる。また、ピン41が連結部38,38に沿って移動することが可能になる。この場合、ピン41の移動を良好にするには、連結部38,38内に摺動性のよいガイド部材を配置し、このガイド部材を介して連結部38,38にピン41を支持するとよい。
【0029】
本実施例では、連結部38,38にそれぞれガイド部材39,39が設けられる。ガイド部材39,39は連結部38に沿ってスライド移動が可能な矩形状に形成されており、ピン41を挿入するためピン挿入孔40が設けられる。ピン41の長さは、ガイド部材39,39が送りねじ21の後端部を挟んだ状態で、ピン41がピン挿入孔37,40を貫通し、その外側に、Cリング等のスナップリング42を取り付ける取付け溝43を設けることができるように定められる。ガイド部材39,39の外側の位置にスナップリング42を取付けると、ガイド部材39,39及びピン41の離脱を防止でき、継手22に対する送りねじ21の接続を維持できる。
【0030】
次に、図1ないし図3を参照して本実形態に係る油圧ポンプの作動を説明する。
モータ23を駆動すると、モータ23の出力軸29が回転し、出力軸29と一体に駆動スプロケット30が回転し、エンドレスチェン33を介して従動スプロケット31が回転する。継手22は、従動スプロケット31と一体に回転し、送りねじ21はピン41、ガイド部材39を介して継手22と一体に回転する。このとき、送りねじ21の後端部に設けられているガイド部材39は、連結部38,38に沿ってねじの進み方向に移動する。
【0031】
モータ23の出力軸29をプランジャ5の挿入方向に回転させると、送りねじ21は、回転座26を介してプランジャ5を押圧する。シリンダ4にプランジャ5が深く挿入されると、リターンスプリング20が大きく縮み、リターンスプリング20は、弾発力を蓄圧する。このとき、回転座26とスプリングリテーナ19の背面との間に摩擦力が発生すると、回転座26が回転する。これにより、リターンスプリング20のねじれ、プランジャ5の連れ周りが防止され、プランジャ5、エンドプレート10の案内孔16における偏摩耗の発生を防止することができる。
【0032】
モータ23の回転速度は、油圧作動装置の仕様に基づいて決定されており、後述する制御部(コントローラ)が制御する。例えば、吐出ポート11の圧力を検出する圧力検出部の圧力と、圧力の変化率とから吐出速度を求めて、モータ23の回転速度を調節する。油圧作動装置に対する作動油の吐出を終了する場合は、停止ボタンによりモータ23を停止し、次に、モータ23の逆転するボタン(戻りボタン)によりモータ23を逆転させる。モータ23が逆転すると、継手22が逆転し、送りねじ21が逆転する。プランジャ5は、リターンスプリング20が蓄圧した弾発力によって初期位置へと復帰する。このとき、圧力検出部がプランジャ5の初期位置に対応する圧力を検出すると、制御部がモータ23に対する電力の供給を停止する。この結果、プランジャ5は初期位置にて停止される。
【0033】
本実施形態に係る油圧ポンプ1は、次のような変更が可能である。
(1)送りねじのピッチ変更
送りねじ21のピッチの変更により、油圧作動装置ごとに単位時間あたりの吐出量を調節することができる。例えば、モータ23の回転速度を一定として、送りねじ21のピッチを小さくすると、シリンダ4に対するプランジャ5の挿入速度を小さくすることができ、吐出ポート11から吐出させる単位時間当たりの作動油の吐出量を小さくすることができる。これにより、油圧作動装置に対する圧力の微調整が可能となる。また、連続的に作動油を供給することができるので、信頼性が高い。送りねじのピッチ変更を行う場合は、送りねじ21、支持部24を交換する。
【0034】
(2) 送りねじのリードの変更
送りねじ21のピッチ、モータ23の回転速度を一定とし、送りねじ21の直径を変えると、送りねじ21の1回転あたりの進み量及び推力を変えることができる。例えば、モータ23の回転速度を一定として、リードを小さくすると(送りねじの直径を小さくする)、シリンダ4に対するプランジャ5の挿入速度を小さくすることができ、吐出ポート11から吐出させる作動油の単位時間当たりの吐出量を小さくすることができる。これにより、油圧作動装置側での圧力の微調整が容易になる。送りねじ21のリードを変更する場合は、回転座26、その軸受27,28、送りねじ21、支持部24を交換する。
【0035】
(3) プランジャの直径の変更
送りねじ21のピッチ、リード、モータ23の回転速度、シリンダ4に対するプランジャ5の挿入度を一定とし、プランジャ5の直径を変更すると、作動油の吐出量を変更することができる。例えば、プランジャ5の直径を小さくすると、同じ挿入深さおけるプランジャ5の体積が減少するので、その分、作動油の吐出量を減少させることができる。これにより、油圧作動装置側での圧力の微調整が容易になる。プランジャ5の直径を変更する場合は、シリンダ4の直径を予め大きくしておいて、エンドプレート10、リターンスプリング20、スプリングリテーナ19、プランジャ5を交換する。
【0036】
(4)(1)〜(3)の組み合わせ
(1)〜(3)を組み合わせると、種々の変更が可能になる。この場合は、対応する部品を交換する。
【0037】
本実施形態に係る油圧ポンプによれば次の効果がある。
(1)シリンダに対するプランジャの進退に対応してモータ、継手を移動させる必要がないので、装置の構造を簡素化し、コンパクト化することができる。
(2)各部の変更により、作動油の吐出量、吐出速度を変更することができる。
(3)モータを利用するので、信頼性の高い油圧制御を行うことができる。
(4)分解、組み立てを簡単に行うことができるので、メンテナンスが容易である。
(5)油圧装置及び制御装置をベース板上に搭載し、油圧装置のポートをベース板の中継 ポートを通じてシリンダの吐出ポートに接続できるので、油圧配管を簡素なものすることができる。
(6)脈動のない状態で作動油を油圧作動装置に供給することができるので、圧力の変動を抑制することができる。これにより、信頼性が大幅に向上する。
【0038】
次に、図4及び図5を参照して前記油圧ポンプ1を用いたコンクリートの圧縮試験装置の実施形態について説明する。コンクリートの圧縮試験装置は、円柱状に切り出されたコンクリート試料に所定の圧縮荷重を加え、コンクリートの耐性を測定する試験機である。
【0039】
図4は本実施の形態に係るコンクリートの圧縮試験装置の構成図である。コンクリートの圧縮試験装置45は、前述した油圧ポンプ1上、具体的には、ベース板3上に搭載される。圧縮試験装置45は、ベース板3に固定されたシリンダ部46と、シリンダ部46に対して軸方向に移動自在に嵌合された可動テーブル48と、可動テーブル48に相対向させて設けられた固定テーブル49と、可動テーブル48に対して所定間隔を隔てて固定テーブル49を配置する一対のポスト50,50とを備える。
【0040】
また、圧縮試験装置45には、前記シリンダ部46の油圧を検出する圧力検出部(図示せず)と、油圧ポンプ1の作動を制御する制御盤51とが設けられる。ポスト50,50は、相対向して配置されたシリンダ部46と固定テーブル49の一側面と他側面とに設けられた複数のねじ孔(図示せず)にキャップスクリュー等のボルトを螺入することによって連結される。ポスト50は本実施形態では、所定厚みの側板から構成され、必要に応じてリブにより補強されるが、他の部材、例えば、所定厚みのパイプ材を用いて構成してもよい。ポスト50を、シリンダ部46、固定テーブル49に結合し、全体として門型に構成すると、相互の強度を高めることができる。
【0041】
図5に示されるように、シリンダ部46は、下部の台座52と、上部のシリンダ部材53とに分割されており、互いに嵌め合わせによって一体化される。本実施の形態では、台座52の上面に着座するシリンダ押さえ67によりシリンダ部材53を台座52に固定する。すなわち、台座52の上面に、シリンダ部材53を嵌合する円柱状の突出部55が一体的に設けられる。突出部55の外周面にはシリンダ部材53の内周面との間をシールするため全周に及ぶ溝56が設けられ、シールリング57が取り付けられる。
【0042】
シリンダ部材53の外周部には、これを台座52に固定するための鍔部54が円周方向に沿って設けられる。鍔部54は、シリンダ部材53の底部に設けられ、台座52に着座される。シリンダ押さえ67には、シリンダ部材53の外周面に嵌合する嵌合部63と、シリンダ部材53の鍔部54に着座する着座部64と、台座52の突出部55の周縁部に着座する円筒部65とが設けられる。シリンダ押さえ67の円筒部65は、シリンダ部材53の鍔部54の外周面に対して所定のクリアランスを有して嵌合する。
【0043】
シリンダ押さえ67の嵌合部63をシリンダ部材53の外周面に嵌合し、シリンダ押さえ67の着座部64をシリンダ部材53の鍔部54に着座させ、シリンダ押さえ67の円筒部65を台座52の突出部55の周縁部に着座状態で、台座52にシリンダ押さえ67をキャップスクリューなどのボルトにより締結すると、シリンダ部46を台座52に一体化することができる。このように、分割構造とすると、製作が容易になる。また、分解が可能なのでメンテナンスも容易になる。
【0044】
可動テーブル48に対する構成としては、突出部55の上面に作動油溜58が設けられており、可動テーブル48を作動するためのピストン81が作動油溜58上に収容される。本実施の形態ではピストン81に対して作動油の圧力を均等に伝達するために、作動油溜58は、突出部55の軸心を頂点とし、突出部55の外周縁との交点を底とする逆円錐状に形成されている。また、ピストン81の外周面には、円滑な摺動とシールのため、全周に及ぶ溝82が設けられ、シールリング83が嵌め込まれている。
【0045】
突出部55及び台座52には作動油導入ポート60が設けられる。作動油導入ポート60は、作動油溜59の頂点部と台座52の底面とに開口しており、中継ポート12を介して油圧ポンプ1の吐出ポート11に接続される。作動油導入ポート60の台座52底面の開口部は、シールのため半径方向外側に拡径された拡径部61となっており、Oリングなどのシールリング62が取り付けられる。拡径部61にシールリング62を装着すると、ベース板3上面の作動油導入ポート60周縁部での作動油の漏れ出しを防止することができる。
【0046】
これにより、油圧ポンプ1の吐出ポーと11から吐出される作動油を、中継ポート12を通って作動油溜58に供給してピストン81を作動油溜りの圧力により可動テーブル48を固定テーブル側に移動させることができる。
【0047】
固定テーブル49には、可動テーブル48との対向面に凹状の球面と突状の球面とを有する一組の揺動テーブル75、76が取付けられる。突状の球面を有する揺動テーブル75は、固定テーブル49に一体的に取り付けられており、他方の揺動テーブル76は、可動テーブル48にコンクリート試料(圧縮試料)80を載置した後に、コンクリート試料の上面に載置され、可動テーブル48の固定テーブル側への移動によって一方の揺動テーブル75の凸状の球面に係合される。一組の揺動テーブル75,76は、コンクリート試料の傾きに対応して揺動するが、コンクリート試料80は、一組の揺動テーブル75,76の揺動に伴って可動テーブル48上で重心の安定位置に移動されるので、信頼精度の高い圧縮試験を行うことが可能になる。
【0048】
図4に示すように、圧縮試験装置45の制御盤77は、ベース板3の他側部上に取り付けられており、ベース板3上でモータ23を収容する。また、制御盤77の底部側には、制御盤77内において、モータ23を電気配線から仕切る仕切板が設けられる。
【0049】
制御盤77には、モータ23を制御する電源回路に電源を投入して作動可能とする電源ボタン78と、モータ23を正転方向に回転させて油圧ポンプ1のシリンダ4にプランジャ5を挿入することにより、圧縮試験装置45の作動油溜58に作動油を吐出させてシリンダ47のピストン81を上昇させ、その結果として可動テーブル48を上昇させる圧縮ボタン84と、モータ23を停止させ、プランジャ5を停止させる停止ボタン85と、モータ23を逆転させてプランジャ5を戻す戻しボタン86とが設けられる。
【0050】
また、モータ23の回転駆動の調節により、コンクリート試料に対する圧縮速度、すなわち、加圧速度を設定するための加圧速度ダイヤル87と、コンクリート試料に対する圧縮荷重が設定圧力に到達した時にそれぞれ点灯される複数の圧力監視ランプと88,89と、異常圧力を検出したときに点灯される異常監視ランプ90とが設けられている。
【0051】
制御部は、デジタル入力部91とデジタル表示部92とを有し、デジタル表示部92に設けられているボタンにより、コンクリート試料に対する圧力の設定値と異常圧力の設定値とを設定するように構成されている。一方、制御部は、予め設定した圧力と、圧力検出部が検出した作動油溜58又は作動油導入ポート60の圧力とを比較し、比較結果が、圧力監視ランプ88,89の設定値に到達したときは、対応する圧力監視ランプを点灯させ、比較結果が異常圧力であるときは、異常監視ランプ90を点灯させるようになっている。
【0052】
このように、圧縮試験装置45は、ボタン又はダイヤルの操作により、圧力を設定し、ランプにより圧縮の終了と、異常の状態を視認できるので、試験機としての操作性、信頼性を大幅に向上することができる。また、油圧ポンプ1を用い、圧力の設定精度が高く、圧力変動の極めて小さい状態でコンクリート試料の圧縮試験(破壊試験を含む)を行うことができるので、信頼性の高いデータを得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 油圧ポンプ
2 脚部
3 ベース板
4 シリンダ
5 プランジャ
6 シリンダブロック
7 開口部
8 プラグ
9 開口部
10 エンドプレート
11 吐出ポート
12 中継ポート
13 油圧配管
15 シールリング
16 案内孔
17 シールリング
18 シールリング
19 スプリングリテーナ
19b スプリングリテーナ
20 リターンスプリング
22 継手
23 モータ
24 支持部
25 孔
26 回転座
27 軸受
29 出力軸
30 駆動スプロケット
31 従動スプロケット
32 開口部
33 エンドレスチェン
34 支持部
35 軸受
36 挿入孔
37 ピン挿入孔
38 連結部
39 ガイド部材
40 ピン挿入孔
41 ピン
42 スナップリング
43 溝
45 圧縮試験装置
46 シリンダ部
47 シリンダ
48 可動テーブル
49 固定テーブル
50 ポスト
51 制御盤
52 台座
53 シリンダ部材
54 鍔部
55 突出部
56 溝
57 シールリング
58 作動油溜
59 作動油溜
60 作動油導入ポート
61 拡径部
62 シールリング
63 嵌合部
64 着座部
65 円筒部
70 中継ポート
71 鍔部
75 揺動テーブル
76 揺動テーブル
77 制御盤
78 電源ボタン
80 コンクリート試料(圧縮試料)
81 ピストン
82 溝
83 シールリング
84 圧縮ボタン
85 停止ボタン
86 ボタン
87 加圧速度ダイヤル
88 圧力監視ランプ
90 異常監視ランプ
91 デジタル入力部
92 デジタル表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、該モータの出力軸に取り付けられて回転される駆動スプロケットと、固定系に回転自在にかつ、前記モータと並行に軸支された継手と、該継手に一体的に取り付けられてこれに回転駆動力を伝達する従動スプロケットと、該従動スプロケットと前記駆動スプロケットとに巻き付けられ、回転駆動力を駆動スプロケットから従動スプロケットに伝達するエンドレスチェンと、前記継手に対して回転不能にかつ軸方向に移動可能に連結された送りねじと、前記送りねじのねじ送り方向前方に固設され、前記送りねじを進退自在に螺入させるねじ孔を有する支持部と、前記送りねじの送り方向前方に配置され、前記送りねじによってねじ送り方向前方に移動されるプランジャと、該プランジャの挿入により作動油を加圧するシリンダと、前記プランジャの挿入により加圧された作動油を前記シリンダより吐出させる吐出部と、前記プランジャに対して常時後退方向の弾発力を付勢して前記プランジャの後端面を前記送りねじの先端面に直接又は回転座を介して常時当接させるリターンスプリングと、を備えたことを特徴とする油圧ポンプ。
【請求項2】
固定テーブルと、該固定テーブルと相対向して配置された可動テーブルと、該可動テーブルを固定テーブル側に移動させることにより、前記可動テーブルと前記固定テーブルとの間に配置される圧縮試料を圧縮するシリンダ部と、前記シリンダ部の油圧を測定する圧力測定部と、を有し、前記可動テーブルは、前記シリンダ部に対して所定ストローク移動可能に嵌合され、前記シリンダには、請求項1記載の油圧ポンプの吐出部を接続して前記シリンダ室に収容されたピストンを介して前記可動テーブルを前記圧縮試料の圧縮方向に作動させて前記圧縮試料を圧縮する油圧導入ポートが設けられた請求項1記載の油圧ポンプを用いる圧縮試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−58477(P2011−58477A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211947(P2009−211947)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(509257950)テクノアート 有限会社 (3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】