説明

油圧作業機械の油圧制御装置

【課題】特別なバルブ装置を設置することなく、必要なときにタンク回路の圧力を上昇させてメイクアップ性能をアップし、キャビテーションを防止することができる油圧作業機械の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】コントローラ70は、圧力センサ62a及び回転数センサ68の検出信号に基づいて、操作装置52がバケットクラウド方向に操作されたときは、操作装置52の操作量が増加するにしたがって第1油圧ポンプ2の容量を増加するよう制御するとともに、エンジン1の回転数が第1所定回転数N1以下であるときは、操作装置52の操作量が増加するにしたがって第1油圧ポンプ2の容量が増加しかつ/又はエンジン回転数が低下するにしたがって第1油圧ポンプ2の容量を増加するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベルのような油圧作業機械の油圧制御装置に係わり、特に作業部材等の被駆動部材の重量或いは慣性力により油圧アクチュエータが動かされる場合のキャビテーションを防止するのに適した油圧作業機械の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのような油圧作業機械における動作として、油圧アクチュエータの駆動時に油圧アクチュエータが作業部材等の被駆動部材の重量或いは慣性力によって引っ張られ、油圧アクチュエータの圧油供給側が低圧状態となる動作がある。そのような動作例として、油圧ショベルのアタッチメントをバケットから破砕機等のアタッチメントに交換した場合におけるアタッチメントのクラウド動作や、旋回停止動作、旋回減速動作がある。
【0003】
油圧ショベルのアタッチメントをバケットから破砕機等のアタッチメントに交換した場合におけるアタッチメントのクラウド動作では、バケット装着時にバケットシリンダと呼ばれていた油圧シリンダ(以下バケット以外のアタッチメント装着時もバケットシリンダという)を伸び方向に駆動して破砕機等のアタッチメントを手前側(クラウド方向)に回動させる。この場合、特にフロント作業機を前方に伸ばした姿勢では、破砕機の重量もクラウド方向に作用するため、エンジン回転数が低く油圧ポンプの吐出流量が少ない場合は、アタッチメント(破砕機)の重量によりバケットシリンダが引っ張られて、油圧ポンプからの圧油の供給が追いつかなくなることがあり、バケットシリンダの圧油供給側であるボトム側における圧油が不足し、低圧状態となる。
【0004】
また、旋回停止動作や旋回減速動作では、操作レバーを中立に戻して旋回モータへの圧油の供給を停止或いは減少させる。この場合、旋回モータへの圧油の供給を停止或いは減少させても、上部旋回体は慣性により回転し続けようとするため、旋回モータがポンプ作用をして旋回モータの圧油供給側における圧油が不足し、低圧状態となる。
【0005】
このように油圧アクチュエータの圧油供給側が低圧状態となった場合は、油圧アクチュエータと方向制御弁を結ぶアクチュエータラインに、通常、メイクアップ用のチェックバルブが設けられているため、このメイクアップ用のチェックバルブを介してタンク油路からバケットシリンダのボトム側(圧油供給側)或いは旋回モータの圧油供給側に圧油がメイクアップ(補給)される。この圧油のメイクアップ流量はタンク油路の圧力が高いほど多くなる。しかし、従来の油圧制御装置では、タンク油路には油圧アクチュエータからの戻り油が供給されるだけであり、タンク油路の圧力が十分に上昇しない場合があり、バケットシリンダ或いは旋回モータの圧油供給側へのメイクアップ流量が不足し、キャビテーションが発生するおそれがある。
【0006】
このような作業部材の重量や慣性力により油圧アクチュエータが動かされる場合のキャビテーションを防止する技術として、特許文献1記載のものがある。これは旋回停止時のキャビテーション発生を防止することを意図したものであり、油圧ショベルにおける油圧回路のタンク油路に背圧チェック弁と並列にバイパス通路を設け、かつこのバイパス通路にバイパス弁を設け、旋回停止時以外はバイパス弁を開いて背圧チェック弁をバイパスしてタンクに圧油を戻すことで、背圧チェック弁での不要な圧力損失を回避し、旋回停止時にバイパス弁を閉じることでタンク回路の圧力を上昇させ、旋回モータの低圧側(圧油供給側)へのメイクアップ(補給)性能をアップし、キャビテーションを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−89505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の技術によれば、旋回停止時にバイパス弁を閉じてタンク回路の圧力を上昇させることによりメイクアップ性能をアップし、キャビテーションの防止が図れる。しかし、タンク回路は多量の圧油が流れる油路であるため、タンク回路の不要な圧力損失を無くすためにはバイパス弁の寸法は大きくならざるを得ず、設置スペース、コストの面で不都合が生じる。
【0009】
本発明の目的は、特別なバルブ装置を設置することなく、必要なときにタンク回路の圧力を上昇させてメイクアップ性能をアップし、キャビテーションを防止することができる油圧作業機械の油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の第1及び第2油圧ポンプを含む複数の油圧ポンプと、前記第1及び第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記第1及び第2油圧ポンプと前記複数の油圧アクチュエータとの間に配置され、前記第1及び第2油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れを制御する複数の方向制御弁と、前記複数の油圧アクチュエータに対応して設けられ、前記複数の方向制御弁を操作するための複数の操作装置と、タンクとを備えた油圧作業機械の油圧制御装置において、前記第1及び第2油圧ポンプから吐出された圧油のうち、前記複数の油圧アクチュエータへ流入しない余剰の圧油と前記複数の油圧アクチュエータからの戻り油を前記タンクに環流するタンク油路と、前記複数の方向制御弁と前記複数のアクチュエータを結ぶ複数のアクチュエータ油路のそれぞれと前記タンク油路との間に配置されたメイクアップ用のチェックバルブと、前記複数の操作装置の操作信号に基づいて、前記複数の操作装置のうちの操作されたものに対応する油圧アクチュエータに圧油を供給するよう、前記操作装置の操作量に応じて前記第1及び第2油圧ポンプの容量を制御するとともに、前記第1及び第2油圧ポンプの一方の油圧ポンプから吐出された圧油のみにより駆動される特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が、前記特定のアクチュエータの圧油供給側が低圧状態となり得る特定の方向に操作されたときは、前記一方の油圧ポンプの容量を増加するよう制御するだけでなく、前記第1及び第2油圧ポンプの他方の油圧ポンプの容量も増加するよう制御するポンプ制御手段とを備えるものとする。
【0011】
このように構成した本発明は、第1及び第2油圧ポンプの一方の油圧ポンプから吐出された圧油のみにより駆動される特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が、当該特定のアクチュエータの圧油供給側が低圧状態となり得る特定の方向に操作されたときは、ポンプ制御手段により、一方の油圧ポンプの容量を増加するよう制御されるだけでなく、他方の油圧ポンプの容量も増加するよう制御されるため、他方の油圧ポンプから吐出された圧油がタンク油路に供給され、タンク油路の流量が増加する。これによりメイクアップ用のチェックバルブによる特定の油圧アクチュエータの圧油供給側へのメイクアップ性能が向上し、キャビテーションが防止される。
【0012】
また、本発明では、空いている油圧ポンプ(他方の油圧ポンプ)を利用してタンク油路の流量を増加させるので、タンク油路に特別なバルブ装置を設置する必要がなく、タンク油路の設置スペースは増大せず、安価でコンパクトな設備構成とすることができる。
【0013】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記ポンプ制御手段は、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、前記複数の操作装置のうち前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作信号と前記回転数検出手段の検出信号に基づいて、前記エンジンの回転数が所定回転数以下であるときに前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が前記特定の方向に操作されたときに、前記他方の油圧ポンプの容量を増加するよう制御する。
【0014】
これによりエンジン回転数が低い場合に油圧アクチュエータの圧油供給側における圧油が不足し、低圧状態となり得る動作では、エンジンの回転数が所定回転数以下であるときだけ、操作装置が特定の方向に操作されたときに他方の油圧ポンプの吐出流量が増加し、タンク油路の流量が増加するため、他方の油圧ポンプの不要な吐出流量の増加を回避し、効果的なメイクアップが可能となる。
【0015】
(3)更に、上記(2)において、更に好ましくは、前記ポンプ制御手段は、前記エンジンの回転数が所定回転数以下であるときに前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が前記特定の方向に操作されたときに、前記操作装置の前記特定の方向の操作量が増加するにしたがって前記他方の油圧ポンプの容量が増加し、かつ前記エンジン回転数が低下するにしたがって前記他方の油圧ポンプの容量が増加するよう制御する。
【0016】
これにより操作装置の特定の方向の操作量に比例して油圧アクチュエータの圧油供給側における圧油の不足量が増加するとともに、エンジン回転数が低下するにしたがって油圧アクチュエータの圧油供給側における圧油の不足量が増加し、より低圧状態となる動作では、操作装置の特定の方向の操作量が増加するにしたがって他方の油圧ポンプの吐出流量が増加するとともに、エンジン回転数が低下するにしたがって他方の油圧ポンプの吐出流量が増加し、タンク油路の流量が増加するため、更に効果的なメイクアップが可能となる。
【0017】
(4)また、上記(1)において、好ましくは、前記ポンプ制御手段は、前記複数の操作装置のうち前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作信号に基づいて、前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が前記特定の方向として前記操作量の減少方向に操作されたときに、前記操作装置の操作量の減少開始後の所定時間、前記他方の油圧ポンプの容量を増加するよう制御する。
【0018】
これにより旋操作装置が操作量の減少方向に操作されたときに慣性により油圧アクチュエータがポンプ作用をして圧油供給側における圧油が不足し、低圧状態となる動作では、操作装置の操作量の減少開始後の所定時間だけ、他方の油圧ポンプの吐出流量が増加し、タンク油路の流量が増加するため、効果的なメイクアップが可能となる。
【0019】
(5)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記特定の油圧アクチュエータは油圧シリンダであり、前記操作装置の前記特定の操作方向は、前記油圧シリンダの伸び方向に対応しかつ被駆動部材の重量が前記油圧シリンダの伸び方向に作用する方向である。
【0020】
(6)また、上記(1)又は(4)において、前記特定の油圧アクチュエータは油圧モータであり、前記操作装置の前記特定の操作方向は、前記油圧モータの回転の停止又は減速方向に対応する方向である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特別なバルブ装置を設置することなく、必要なときにタンク回路の圧力を上昇させてメイクアップ性能をアップし、キャビテーションを防止することができる。また、アクチュエータの入り口が負圧になることを防ぐことができるため、シールの損傷や操作性の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の第1の実施の形態における油圧作業機械の油圧制御装置のシステムの一部を示すシステム構成図である。
【図1B】本発明の第1の実施の形態における油圧作業機械の油圧制御装置のシステムの他の一部を示すシステム構成図である。
【図2】図1A及び図1Bに示した油圧制御装置を搭載した油圧ショベルの外観を示す図である。
【図3】図2に示した油圧ショベルにおいて、フロント作業機の作業アタッチメントであるバケットを破砕機に交換した場合の油圧ショベルの外観を示す図である。
【図4】コントローラの処理機能を示す図である。
【図5】メモリのテーブルに設定されたバケットクラウド指令のバケット操作パイロット圧とエンジン回転数とメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転との関係を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における油圧制御装置のコントローラの処理機能を示す図である。
【図7】第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部の処理機能の詳細を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図1A及び図1B〜図7により説明する。
<第1の実施の形態>
図1A及び図1Bは本発明の第1の実施の形態における油圧作業機械の油圧制御装置のシステム構成図である。本実施の形態における油圧制御装置が備えられる油圧作業機械は例えば油圧ショベルである。
<油圧系>
図1A及び図1Bにおいて、油圧制御装置はエンジン1と、エンジン1により駆動される第1及び第2の可変容量型の油圧ポンプ2,3と、左右の走行モータ4,5、旋回モータ6、バケットシリンダ7、アームシリンダ8、ブームシリンダ9、アタッチメント用シリンダ10を含む複数の油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータのそれぞれの圧油の流れ(方向と流量)を制御する複数の方向制御弁(制御スプール)21〜29を含むコントロールバルブ装置20とを備えている。
【0024】
方向制御弁21は第1油圧ポンプ2から旋回モータ6への圧油の流れを制御し、方向制御弁22は第1油圧ポンプ2からアタッチメント用シリンダ10への圧油の流れを制御し、方向制御弁23は第1油圧ポンプ2からアームシリンダ8への圧油の流れを制御し、方向制御弁24は第1油圧ポンプ2からブームシリンダ9への圧油の流れを制御し、方向制御弁25は第1油圧ポンプ2から右走行モータ5への圧油の流れを制御し、方向制御弁26は第2油圧ポンプ3から左走行モータ4への圧油の流れを制御し、方向制御弁27は第2油圧ポンプ3からバケットシリンダ7への圧油の流れを制御し、方向制御弁28は第2油圧ポンプ3からアームシリンダ8への圧油の流れを制御し、方向制御弁29は第2油圧ポンプ3からブームシリンダ9への圧油の流れを制御する。
【0025】
また、方向制御弁21〜29はセンタバイパスタイプの流量制御弁であり、方向制御弁21〜25はセンタバイパスライン31上に配置され、方向制御弁26〜29はセンタバイパスライン32上に配置されている。センタバイパスライン31の上流側は第1油圧ポンプ2の吐出油路2aに接続され、下流側はタンク油路33、背圧チェック弁34、熱交換器35又はバイパスチェック弁36を介してタンク37に接続され、センタバイパスライン32の上流側は第2油圧ポンプ3の吐出油路3aに接続され、下流側はタンク油路33、背圧チェック弁34、熱交換器35又はバイパスチェック弁36を介してタンク37に接続されている。また、方向制御弁21〜25は第1油圧ポンプ2の吐出油路2aに油路(パラレル油路)38を介して互いにパラレルに接続され、方向制御弁26〜29は第2油圧ポンプ3の吐出油路3aに油路(パラレル油路)39を介して互いにパラレルに接続されている。第1及び第2油圧ポンプ2,3から吐出された圧油のうち、アクチュエータへ流入せずセンタバイパスライン31,32の下流側へと流下した余剰の圧油がある場合はその余剰の圧油と、各アクチュエータからの戻り油はタンク油路33において合流し、背圧チェック弁34、熱交換器35又はバイパスチェック弁36を通ってタンク37へと環流する。
【0026】
また、方向制御弁21と旋回モータ6は1対の油路(アクチュエータ油路)11a,11bを介して接続され、方向制御弁22とアタッチメント用シリンダ10は1対の油路(アクチュエータ油路)12a,12bを介して接続され、方向制御弁23とアームシリンダ8は1対の油路(アクチュエータ油路)13a,13bを介して接続され、方向制御弁24とブームシリンダ9は1対の油路(アクチュエータ油路)14a,14bを介して接続され、方向制御弁25と右走行モータ5は1対の油路(アクチュエータ油路)15a,15bを介して接続され、方向制御弁26と左走行モータ4は1対の油路(アクチュエータ油路)16a,16bを介して接続され、方向制御弁27とバケットシリンダ7は1対の油路(アクチュエータ油路)17a,17bを介して接続され、方向制御弁28とアームシリンダ8は1対の油路(アクチュエータ油路)18a,18bと上記1対の油路13a,13bを介して接続され、方向制御弁29とブームシリンダ9は1対の油路(アクチュエータ油路)19a,19bと上記1対の油路14a,14bを介して接続されている。1対の油路11a,11b〜14a,14b,17a,17bには、それぞれの油路の回路圧が異常に高圧になるのを防ぐためのオーバーロードリリーフバルブ41a,41b〜44a,44b及び47a,47bと、回路圧が負圧になるのを防止するためのメイクアップ(補給)用のチェックバルブ41c,41d〜44c,44d及び47c,47dが設けられている。これらオーバーロードリリーフバルブ41a,41b〜44a,44b及び47a,47b及びメイクアップ(補給)用のチェックバルブ41c,41d〜44c,44d及び47c,47dは、それぞれのアクチュエータ油路とタンク油路33との間に配置されている。図示はしないが、走行モータ4,5のアクチュエータ油路15a,15b,16a,16bに対しても、旋回モータ6のオーバーロードリリーフバルブ41a,41b及びメイクアップ用のチェックバルブ41c,41dと同様のオーバーロードリリーフ弁及びメイクアップ用のチェックバルブが設けられている。
【0027】
油圧制御装置は、また、エンジン1によって駆動されるパイロットポンプ(図示せず)からの吐出油に基づいて方向制御弁21〜29を操作するための制御パイロット圧力を生成する操作装置51,52を含む複数の操作装置を備えている。操作装置51は旋回用であり、操作装置52はバケット用である。操作装置51は操作レバーの操作方向と操作量に応じて旋回左指令の操作パイロット圧力PS1(操作信号)又は旋回右指令の操作パイロット圧力PS2(操作信号)を生成し、その操作パイロット圧力PS1又はPS2により方向制御弁21を旋回左方向(図示右方向)又は旋回右方向(図示左方向)に切り換え、操作レバーの操作方向と操作量に応じて第1油圧ポンプ2から吐出された圧油が旋回モータ6に供給される。これにより旋回モータ6は、旋回左指令の操作パイロット圧力PS1により左方向に回転駆動され、旋回右指令の操作パイロット圧力PS2により右方向に回転駆動される。操作装置52は操作レバーの操作方向と操作量に応じてバケットクラウド(バケット引き)指令の操作パイロット圧力PW1(操作信号)又はバケットダンプ(バケット押し)指令の操作パイロット圧力PW2(操作信号)を生成し、その操作パイロット圧力PW1又はPW2により方向制御弁27をバケットクラウド方向(図示右方向)又はバケットダンプ方向(図示左方向)に切り換え、操作レバーの操作方向と操作量に応じて第2油圧ポンプ3から吐出された圧油がバケットシリンダ7に供給される。これによりバケットシリンダ7は、バケットクラウド指令の操作パイロット圧力PW1により伸び方向に駆動され、バケットダンプ指令の操作パイロット圧力PW2により縮み方向に駆動される。図示しない他の操作装置の操作レバーを操作した場合も同様である。ただし、アーム用の操作装置及びブーム用の操作装置を操作した場合は、それぞれ、2つの方向制御弁23,28及び24,29が操作され、第1及び第2油圧ポンプ2,3から吐出された圧油が合流してアームシリンダ8及びブームシリンダ9に供給される。操作装置51,52を含む複数の操作装置はキャビン(運転室)内の運転席に備えられている。
【0028】
第1及び第2油圧ポンプ2,3は可変容量型の例えば斜板ポンプであり、それぞれ、斜板の傾転角を調整するためのレギュレータ58,59を有している。レギュレータ58,59は後述するコントローラ70からの制御信号により作動し、制御信号に応じて斜板の傾転角を変更することで油圧ポンプの押しのけ容積を変化させ、油圧ポンプの容量を調整する。第1油圧ポンプ2の吐出油路2a及び第2油圧ポンプ3の吐出油路3aはそれぞれチェック弁55,56を介してメインリリーフ弁57に接続されている。メインリリーフ弁57は油圧回路全体の最高圧力を規定する安全弁として機能する。
【0029】
エンジン1はディーゼルエンジンであり、エンジン1に供給される燃料を制御する電子ガバナ1a(電子制御式の燃料噴射制御装置)を備えている。エンジン1の目標回転数はエンジンコントロールダイヤル1bにより指示される。
<制御系>
また、本実施の形態における油圧制御装置は、旋回用の操作装置51の操作信号として、操作装置51が生成する操作パイロット圧力(以下旋回操作パイロット圧力という)PS1,PS2を検出する圧力センサ61a,61bと、バケット用の操作装置52の操作信号として、操作装置52が生成する操作パイロット圧力(以下バケット操作パイロット圧という)PW1及びPW2を検出する圧力センサ62a,62bと、それ以外の図示しない操作装置(アタッチメント用、アーム用、ブーム用、右走行用、左走行用の各操作装置)の操作信号として、それらの操作装置が生成する操作パイロット圧力(以下アタッチメント操作パイロット圧力、アーム操作パイロット圧力、ブーム操作パイロット圧力、右走行操作パイロット圧力、左走行操作パイロット圧力という)を検出する圧力センサ63a,63b〜67a,67bと、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ68と、コントローラ70とを備えている。コントローラ70は、圧力センサ61a,61b〜67a,67bの検出信号と回転数センサ68の検出信号とを入力し、所定の演算処理を行ってレギュレータ58,59に制御信号を出力し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量を制御する。
【0030】
また、コントローラ70はエンジンコントロールダイヤル1bの指令信号を入力し、電子ガバナ1aに制御信号を出力し、エンジン1の回転数がエンコンダイヤル1bが指示する目標回転数となるエンジン1に供給される燃料を制御する。
<油圧ショベル>
図2は、図1A及び図1Bに示した油圧制御装置を搭載した油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ4,5により駆動される。上部旋回体101は下部走行体100上に旋回可能に搭載され、旋回モータ6により旋回駆動される。フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101はエンジンルーム106、キャビン(運転室)107を備え、エンジンルーム106にエンジン1や第1及び第2油圧ポンプ2,3等の油圧機器が配置され、キャビン107内には上記操作装置51,52等が配置されている。
【0031】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ9の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ8の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ7の伸縮により上下、前後方向に回動する。
【0032】
図3は、図2に示した油圧ショベルにおいて、フロント作業機102の作業アタッチメントであるバケット113を破砕機115に交換した場合の油圧ショベルの外観を示す図である。破砕機115は図1Bに示したアタッチメント用シリンダ10を内蔵しており、このアタッチメント用シリンダ10を駆動することで破砕機115の爪を開閉し、破砕作業を行う。
【0033】
なお、フロント作業機102がバケット113を装着した図2に示す状態では、アタッチメント用シリンダ10は取り外され、コントロールバルブ装置20の対応するアクチュエータ油路12a,12bの開口部はプラグ等により閉塞される。また、本明細書では、油圧ショベルのアタッチメントをバケットから破砕機等のアタッチメントに交換した場合も、アタッチメントを回動させる油圧シリンダ7をバケットシリンダという。
<コントローラ70>
図4はコントローラ70のポンプ制御に係わる処理機能を示す図である。コントローラ70は、第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71a、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71b、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71c、第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71d、第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72a、第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bの各機能を有している。
【0034】
第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71aは、第1油圧ポンプ2に係わる操作装置の操作パイロット圧力(操作信号)を検出する圧力センサ61a,61b;63a,63b;64a,64b;65a,65b;66a,66bの検出信号のうち操作パイロット圧力が最も高い検出信号を選択し、ポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp1として出力する。第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71bは、第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71aにより選択され出力されたポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp1をメモリに記憶してあるテーブルに参照させ対応する第1油圧ポンプ目標傾転q1t1を演算する。メモリのテーブルには、ポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp1が高くなるにしたがって第1油圧ポンプ目標傾転q1t1が増大するようポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp1と第1油圧ポンプ目標傾転q1t1との関係が設定されている。
【0035】
第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cは、第2油圧ポンプ3に係わる操作装置の操作パイロット圧力(操作信号)を検出する圧力センサのうちの操作装置52のバケットクラウド指令のバケット操作パイロット圧力PW1を検出する圧力センサ62aの検出信号と、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ68の検出信号をメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、対応するメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2を演算する。
【0036】
図5は、メモリのテーブルに設定されたバケットクラウド指令のバケット操作パイロット圧力PW1とエンジン1の回転数とメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2との関係を示す図である。この図5に示すように、メモリのテーブルには、下記のようにバケットクラウド指令のバケット操作パイロット圧力PW1とエンジン1の回転数Nとメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2との関係が設定されている。
【0037】
(1)エンジン回転数Nが第1所定回転数(例えば最大N2000rpmで1400rpm)よりも高いときは、操作パイロット圧力PW1に係わらずメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2は最小傾転で一定である(直線A)。
【0038】
(2)エンジン回転数Nが第1所定回転数N1(例えば最大N2000rpmで1400rpm)を含み、この第1所定回転数N1とそれよりも低い第2所定回転数(例えば最大N2000rpmで1200rpm)N2との間の回転数に低下すると、操作パイロット圧力PW1が高くなる(レバー操作量が増大する)にしたがってメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2が第1変化率で増大する(直線B)。
【0039】
(3)エンジン回転数Nが前記第2所定回転数N2(例えば最大N2000rpmで1200rpm)以下の回転数に低下すると、操作パイロット圧力PW1が高くなる(レバー操作量が増大する)にしたがってメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2が第1変化率よりも大きい第2変化率で増大する(直線C)。
【0040】
これにより第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cは、エンジン回転数Nが第1所定回転数N1以下になると、操作パイロット圧力PW1が高くなる(レバー操作量が増大する)にしたがって増大し、かつエンジン回転数が低下するにしたがって増大するメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2を演算する。
【0041】
第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71dは、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71bで演算された第1油圧ポンプ目標傾転q1t1と第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cで演算された第1油圧ポンプ目標傾転q1t2の大きい方を選択して最終的な第1油圧ポンプ目標傾転q1tとして出力する。この第1油圧ポンプ目標傾転q1tは図示しない増幅器により制御信号(電気信号)に変換され、第1油圧ポンプ2のレギュレータ58に出力される。レギュレータ58はその制御信号により作動し、第1油圧ポンプ2の傾転が第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71dで選択された第1油圧ポンプ目標傾転q1tに一致するよう制御する。
【0042】
第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72aは、第2油圧ポンプ3に係わる操作装置の操作パイロット圧力(操作信号)を検出する圧力センサ62a,62b;64a,64b;65a,65b;67a,67bのそれぞれ検出信号のうち操作パイロット圧力が最も高い検出信号を選択し、ポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp2として出力する。第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bは、第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72aにより選択され出力されたポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp2をメモリに記憶してあるテーブルに参照させ対応する第2油圧ポンプ目標傾転q2tを演算する。メモリのテーブルには、ポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp2が高くなるにしたがって第2油圧ポンプ目標傾転q2tが増大するようポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp2と第2油圧ポンプ目標傾転q2tとの関係が設定されている。
【0043】
第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bで演算された第2油圧ポンプ目標傾転q2tは最終的な目標傾転として図示しない増幅器により制御信号(電気信号)に変換され、第2油圧ポンプ3のレギュレータ59に出力される。レギュレータ59はその制御信号により作動し、第2油圧ポンプ3の傾転が第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bで演算された第2油圧ポンプ目標傾転q2tに一致するよう制御する。
【0044】
以上において、バケットシリンダ7は、第1及び第2油圧ポンプ2,3の一方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)から吐出された圧油のみによって駆動される特定の油圧アクチュエータを構成する。
【0045】
圧力センサ61a,61b〜67a,67b、コントローラ70の第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71a、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71b、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71c、第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71d、第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72a及び第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bと、レギュレータ58,59は、複数の操作装置51,52,…の操作信号に基づいて、複数の操作装置のうちの操作されたものに対応する油圧アクチュエータに圧油を供給するよう、操作装置の操作量に応じて第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量を制御するとともに、第1及び第2油圧ポンプ2,3の一方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)から吐出された圧油のみにより駆動される特定の油圧アクチュエータ(バケットシリンダ7)に対応する操作装置52が、特定のアクチュエータの圧油供給側が低圧状態となり得る特定の方向(バケットシリンダ7の伸び方向に対応する方向;バケットクラウド方向)に操作されたときは、前記一方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)の容量を増加するよう制御するだけでなく、第1及び第2油圧ポンプ2,3の他方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)の容量も増加するよう制御するポンプ制御手段を構成する。
【0046】
当該ポンプ制御手段は、エンジン1の回転数を検出する回転数検出手段(回転数センサ68)を更に備え、複数の操作装置51,52,…のうち特定の油圧アクチュエータ(バケットシリンダ7)に対応する操作装置52の操作信号と回転数検出手段の検出信号に基づいて、エンジン1の回転数が所定回転数(第1所定回転数N1)以下であるときに特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置52が前記特定の方向に操作されたときに、他方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)の容量を増加するよう制御する。
【0047】
また、当該ポンプ制御手段は、エンジン1の回転数が所定回転数(第1所定回転数N1)以下であるときに特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置52が前記特定の方向に操作されたときに、操作装置52の前記特定の方向の操作量が増加するにしたがって他方の油圧ポンプの容量が増加し、かつエンジン回転数が低下するにしたがって他方の油圧ポンプの容量が増加するよう制御する。
【0048】
圧力センサ62a,62bと図示しない左走行用、アーム用、ブーム用の操作装置が生成する操作パイロット圧力を検出する圧力センサ67a,67b;64a,64b;65a,65bは、上記一方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作量を検出する複数の第1検出手段を構成し、圧力センサ61a,61bと図示しないアタッチメント用、アーム用、ブーム用、右走行用の操作装置が生成する操作パイロット圧力を検出する圧力センサ63a,63b;64a,64b;65a,65b;66a,66bは、上記他方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作量を検出する複数の第2検出手段を構成する。
【0049】
第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72a及び第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bとレギュレータ59は、上記複数の第1検出手段の検出信号に基づいて、上記一方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)から吐出された圧油により駆動される油圧アクチュエータ(左走行モータ4、バケットシリンダ7、アームシリンダ8、ブームシリンダ9)に対応する操作装置52等が操作されたときに、その操作装置の操作量が増加するにしたがって一方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)の容量を増加するよう制御する第1ポンプ容量制御手段を構成する。
【0050】
第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71a、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71b、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71c及び第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71dとレギュレータ58は、上記複数の第2検出手段の検出信号に基づいて、上記他方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータ(右走行モータ5、旋回モータ6、アームシリンダ8、ブームシリンダ9、アタッチメント用シリンダ10)に対応する操作装置51等が操作されたときは、その操作装置の操作量が増加するにしたがって他方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)の容量を増加するよう制御するとともに、上記複数の第1検出手段のうち特定の油圧アクチュエータ(バケットシリンダ7)に対応する操作装置52の操作量を検出する第1検出手段(圧力センサ62a)の検出信号に基づいて、特定の油圧アクチュエータ(バケットシリンダ7)に対応する操作装置52が特定の方向に操作されたときも、他方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)の容量を増加するよう制御する第2ポンプ容量制御手段を構成する。
【0051】
上記ポンプ制御手段は、上記複数の第1及び第2検出手段と上記第1及び第2ポンプ容量制御手段とを備えている。
<動作>
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
【0052】
いずれの操作装置も操作されないときは、図6に示すコントローラ70の第1及び第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71d,72dにおいて出力される第1及び第2油圧ポンプ目標傾転q1t,q2tは最小値であり、第1及び第2油圧ポンプ2,3は最小容量に保持され、スタンバイ流量(最小流量)を吐出している。 第1及び第2油圧ポンプ2,3から吐出されたスタンバイ流量はセンタバイパスライン31,32を経てタンク油路33へと供給され、更に背圧チェック弁34、熱交換器35又はバイパスチェック弁36を介してタンク37へと環流する。
【0053】
第1油圧ポンプ2から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータである旋回モータ6、右走行モータ5、アームシリンダ8、ブームシリンダ9、アタッチメント用シリンダ10に対応する操作装置、すなわち、旋回用の操作装置51及び図示しない右走行用、アーム用、ブーム用、アタッチメント用の操作装置のいずれかが操作されたとき、それらの操作パイロット圧力は複数の第2検出手段である圧力センサ61a,61b;63a,63b;64a,64b;65a,65b;66a,66bにより検出される。コントローラ70は、それらの検出信号に基づいて、第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71aにおいてポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp1を生成し、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71bにおいてそのポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp1に対応する第1油圧ポンプ目標傾転q1t1を演算し、第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71dにおいてその第1油圧ポンプ目標傾転q1t1を最終的な第1油圧ポンプ目標傾転q1tとして選択し、対応する制御信号を第1油圧ポンプ2のレギュレータ58に出力する。これにより第1油圧ポンプ2の傾転は操作された操作装置の操作量に応じて増加するように制御され、第1油圧ポンプ2の吐出流量が増大するよう制御される。
【0054】
第2油圧ポンプ3から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータであるバケットシリンダ7、左走行モータ4、アームシリンダ8、ブームシリンダ9に対応する操作装置、すなわち、バケット用の操作装置52及び図示しない左走行用、アーム用、ブーム用の操作装置のいずれかが操作されたとき、それらの操作パイロット圧力は複数の第1検出手段である圧力センサ62a,62b;64a,64b;65a,65b;67a,67bにより検出される。コントローラ70は、それらの検出信号に基づいて、第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72aにおいてポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp2を生成し、第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bにおいてそのポジコン制御用の操作パイロット圧力Pp2に対応する第2油圧ポンプ目標傾転q2tを演算し、これを最終的な第2油圧ポンプ目標傾転として、対応する制御信号を第2油圧ポンプ3のレギュレータ59に出力する。これにより第2油圧ポンプ3の傾転は操作された操作装置の操作量に応じて増加するように制御され、第2油圧ポンプ3の吐出流量が増大するよう制御される。
【0055】
ここで、アーム用及びブーム用の操作装置の操作パイロット圧力を検出する圧力センサ64a,64b;65a,65bの検出信号は、コントローラ70の第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71aと第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72aの両方に入力されるため、アーム用の操作装置が操作されたときは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の両方から吐出された圧油が方向制御弁23,28を介してアームシリンダ8に合流して供給され、アームシリンダ8はその合流した圧油により駆動される。同様に、ブーム用の操作装置が操作されたときは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の両方から吐出された圧油が方向制御弁24,29を介してブームシリンダ9に合流して供給され、ブームシリンダ9はその合流した圧油により駆動される。
【0056】
以上のように油圧アクチュエータ(アームシリンダ8及び/又はブームシリンダ9)が駆動されるとき、第1及び第2油圧ポンプ2,3から吐出された圧油のうち、アクチュエータへ流入せずセンタバイパスライン31,32の下流側へと流下した余剰の圧油がある場合はその余剰の圧油と、各アクチュエータからの戻り油はタンク油路33へと供給され、背圧チェック弁34、熱交換器35又はバイパスチェック弁36を通ってタンク37へと環流する。
【0057】
アーム用及びブーム用の操作装置以外の操作装置が操作されたときは、第1油圧ポンプ2及び第2油圧ポンプ3の対応する一方から吐出された圧油がそれぞれ対応する1つ方向制御弁を介して対応する油圧アクチュエータに供給され、油圧アクチュエータはその圧油により駆動される。
【0058】
特定の油圧アクチュエータであるバケットシリンダ7に対応する操作装置52の操作レバーをバケットシリンダ7の伸び方向(バケットクラウド方向)に操作した場合も、同様であり、第2油圧ポンプ3から吐出された圧油がバケットシリンダ7のボトム側に方向制御弁27を介して供給され、バケットシリンダ7はその圧油により伸び方向に駆動され、バケット等のアタッチメントをクラウド動作させる。
【0059】
以上のように油圧アクチュエータが駆動されるとき、第1油圧ポンプ2又は第2油圧ポンプ3から吐出された圧油のうち、アクチュエータへ流入せずセンタバイパスライン31又はセンタバイパスライン32の下流側へと流下した余剰の圧油がある場合はその余剰の圧油と、各アクチュエータからの戻り油はタンク油路33へと供給され、このタンク油路33において、第1及び第2油圧ポンプ2,3のうちの最小容量に保持されている油圧ポンプのスタンバイ流量と合流して、背圧チェック弁34、熱交換器35又はバイパスチェック弁36を通ってタンク37へと環流する。
【0060】
また、特定の油圧アクチュエータであるバケットシリンダ7に対応する操作装置52の操作レバーをバケットシリンダ7の伸び方向(バケットクラウド方向)に操作した場合にエンジン1の回転数が第1所定回転数(例えば1400rpm)以下であるときは、コントローラ70は更に以下の演算処理を行う。
【0061】
すなわち、コントローラ70は、バケット用の操作装置52のバケットクラウド指令のバケット操作パイロット圧力PW1を検出する圧力センサ62aの検出信号とエンジン1の回転数を検出する回転数センサ68の検出信号に基づいて、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cにおいてメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2を演算し、第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71dにおいてその第1油圧ポンプ目標傾転q1t2を最終的な第1油圧ポンプ目標傾転q1tとして選択し、対応する制御信号を第1油圧ポンプ2のレギュレータ58に出力する。ここで、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cでは、操作パイロット圧力PW1が高くなる(レバー操作量が増大する)にしたがって増大し、エンジン回転数が低下するにしたがって増大するメイクアップ制御の第1油圧ポンプ目標傾転q1t2が演算される。これにより操作装置52の操作量が増加するにしたがって第1油圧ポンプ2の傾転が増加し、第1油圧ポンプ2の吐出流量が増大するとともに、エンジン回転数が低下するにしたがって第1油圧ポンプ2の傾転が増加し、第1油圧ポンプ2の吐出流量が増大するよう制御される。
【0062】
このようにエンジン1の回転数が第1所定回転数(例えば1400rpm)以下であるときに、特定の油圧アクチュエータであるバケットシリンダ7に対応する操作装置52をバケットシリンダ7の伸び方向(バケットクラウド方向)に操作したときは、第2油圧ポンプ3からその操作量に応じた流量の圧油が吐出され、この圧油がバケットシリンダ7に供給され、バケットシリンダ7を伸び方向に駆動するとともに、操作装置52の操作量とエンジン回転数応じた流量の圧油が第1油圧ポンプ2から吐出される。そして、この第1油圧ポンプ2から吐出された圧油はセンタバイパスライン31を経てタンク油路33へと供給され、このタンク油路33において、第2油圧ポンプ3から吐出された圧油のうちバケットシリンダ7へ流入せずセンタバイパスライン32の下流側へと流下した余剰の圧油がある場合はその余剰の圧油と、バケットシリンダ7からの戻り油と合流して、更に背圧チェック弁34、熱交換器35又はバイパスチェック弁36を介してタンク37へと環流する。これによりタンク油路33の流量が増加するため、バケットシリンダ7の伸び方向操作時におけるバケットシリンダ7のボトム側へのメイクアップ性能が向上し、キャビテーションが防止される。
<効果>
本実施の形態の効果を具体的に説明する。
【0063】
図3に示すように、油圧ショベルのアタッチメントをバケット113から破砕機115に交換した場合における破砕機115のクラウド動作は、操作装置52の操作レバーをバケットシリンダ7の伸び方向(バケットクラウド方向)に操作し、バケットシリンダ7を伸び方向に駆動して破砕機115を手前側(クラウド方向)に回動させることにより行う。このとき、破砕機115は通常のバケットに比べて重量が重くまた長尺な構造を有するために、動作に伴って慣性力が増加し、特にフロント作業機102を前方に伸ばした姿勢でクラウド動作を行った場合は、破砕機115が上方から下方に向けて落下する方向の移動となり、アーム112と破砕機115を回動結合するピン117を中心とした回転モーメントがバケットシリンダ7が伸び方向に作用する。その結果、エンジン回転数が低く第2油圧ポンプ3の吐出流量が少ない場合は、操作装置52の操作レバーの操作によるバケットシリンダ7の伸び方向の動作速度に対してバケットシリンダ7のボトム側に供給される圧油が不足気味となって、バケットシリンダ7の圧油供給側であるボトム側における圧油が不足し、低圧状態となる。
【0064】
このようにバケットシリンダ7のボトム側が低圧状態となった場合は、バケットシリンダ7と方向制御弁27を結びアクチュエータライン17a,17bにメイクアップ用のチェックバルブ47c,47dが設けられているため、バケットシリンダボトム側のメイクアップ用のチェックバルブ47cを介してタンク油路33からバケットシリンダ7のボトム側に圧油がメイクアップ(補給)される。この圧油のメイクアップ流量はタンク油路33の圧力が高いほど多くなる。しかし、従来の油圧制御装置では、タンク油路33にはバケットシリンダ7のロッド側からの戻り油と、最小容量に保持されている第1油圧ポンプ2のスタンバイ流量が供給されるだけであり、このバケットシリンダ7のロッド側からの戻り油の流量は、バケットシリンダ7のロッド側とボトム側との面積差のためバケットシリンダ7のボトム側に供給される圧油の流量に比べて遙かに少ない。このためタンク油路33の圧力は十分に上昇せず、バケットシリンダ7のボトム側へのメイクアップ流量が不足し、バケットシリンダ7のボトム側が負圧になってキャビテーションが発生するおそれがある。
【0065】
本実施の形態では、上述したように、エンジン回転数が第1所定回転数(例えば1400rpm)以下と低く、第2油圧ポンプ3の吐出流量が少ない揚合は、第2油圧ポンプ3の吐出流量を増大させるだけでなく、第1油圧ポンプ2の吐出流量も増大させるので、それに応じてタンク油路33の圧油の流量が増加してタンク油路33の圧力が上昇し、メイクアップ用のチェックバルブ47cを通ってバケットシリンダ7のボトム側へメイクアップ(補給)される圧油の流量が増加する。これによりバケットシリンダ7のボトム側における圧油の不足が解消し、バケットシリンダ7のボトム側が負圧になることを防止し、キャビテーションを防止することができる。
【0066】
また、破砕機115のクラウド動作では、操作装置52の操作レバーをバケットシリンダ7の伸び方向(バケットクラウド方向)に操作したときの操作量が増え、バケットシリンダ7の伸び方向の動作速度が速くなる。ここで、前述したように、破砕機115は通常のバケットに比べて重量が重くまた長尺な構造を有しており、バケットシリンダ7の伸び方向の動作速度が速くなると、その動作に伴って慣性力が増加し、特にフロント作業機102を前方に伸ばした姿勢でクラウド動作を行った場合は、破砕機115が上方から下方に向けて落下する方向の移動となるため、その自重の影響も受けて操作装置52の操作レバーの操作によるバケットシリンダ7の伸び方向の動作速度に対して、バケットシリンダ7のボトム側に供給される圧油の不足量が増大し、より低圧状態となる。また、エンジン回転数が低下した場合も、エンジン回転数が低下するにしたがってバケットシリンダ7のボトム側における圧油の不足量が増加し、より低圧状態となり得る。
【0067】
本実施の形態では、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cの図5に示す特性により、操作装置52の操作量が増加するにしたがって第1油圧ポンプ2の傾転が増加し、第1油圧ポンプ2の吐出流量が増大するとともに、エンジン回転数が低下するにしたがって第1油圧ポンプ2の傾転が増加するよう制御される。これにより操作装置52の操作量が増加するにしたがって、またエンジン回転数の低下量が増加するにしたがって第1油圧ポンプ2の吐出流量が増加し、タンク油路33の流量が増加するため、より効果的なメイクアップが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態では、バケットシリンダ7のボトム側の入り口が負圧になることを防ぐことができるため、シールの損傷や操作性の悪化を防止することができる。
【0069】
更に、本実施の形態では、破砕機115のクラウド動作では、空いている油圧ポンプである第1油圧ポンプ2を利用してタンク油路33の流量を増加させるので、タンク油路33には、従来通りの背圧チェック弁34、熱交換器35及びバイパスチェック弁36以外、特別なバルブ装置を設置する必要がない。したがって、タンク油路33の設置スペースは増大せず、安価でコンパクトな設備構成を維持することができる。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図6及び図7により説明する。
<構成>
図6は本実施の形態における油圧制御装置のコントローラ70の処理機能を示す図である。本実施の形態において、コントローラ70は、第1の実施の形態にあった第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71a、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71b、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71c、第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71d、第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72a、第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bの各機能に加え、第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72c及び第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部72dの機能を有している。
【0070】
図7は第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72cの処理機能の詳細を示す図である。第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72cは、旋回操作パイロット圧力変化率演算部72c−1、第1油圧ポンプ目標傾転演算部72c−2及び経過時間設定部72c−3を有している。
【0071】
旋回操作パイロット圧力変化率演算部72c−1は、操作装置51による旋回操作パイロット圧力PS1,PS2を検出する圧力センサ61a,61bの検出信号を入力し、その検出信号を微分して旋回操作パイロット圧力PS1,PS2変化率ΔPSを計算する。この変化率は操作装置51の操作レバーの操作速度に対応する。第2油圧ポンプ目標傾転演算部72c−2は、旋回操作パイロット圧力変化率演算部72c−1で演算した旋回操作パイロット圧力PS1,PS2変化率ΔPSの正負を判定し、変化率ΔPSが負の値である場合に、操作装置51の操作レバーは中立方向に戻されたと判断し、変化率ΔPSの絶対値が増加するにしたがって増加するメイクアップ制御の第2油圧ポンプ目標傾転角q2t2を演算する。経過時間設定部72c−3は予め定められた所定時間Taの間、メイクアップ制御の第2油圧ポンプ目標傾転角q2t2を出力する。所定時間Taは例えば2〜3秒である。
【0072】
これにより第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72cは、旋回モータ6(特定の油圧アクチュエータ)に対応する操作装置51の操作量の減少開始後の所定時間Ta、その操作装置51の操作量の減少率(変化率ΔPS;レバー操作速度)が大きくなるにしたがって増大するメイクアップ制御の第2油圧ポンプ目標傾転角q2t2を演算する。
【0073】
図6に戻り、第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部72dは、第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72bで演算された第2油圧ポンプ目標傾転q2t1と第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72cで演算された第2油圧ポンプ目標傾転q2t2の大きい方を選択して最終的な第2油圧ポンプ目標傾転q2tとする。第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部72dで選択された最終的な第2油圧ポンプ目標傾転q2tは図示しない増幅器により制御信号(電気信号)に変換され、第2油圧ポンプ3のレギュレータ59に出力される。レギュレータ59はその制御信号により作動し、第2油圧ポンプ3の傾転が第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部72d選択された第2油圧ポンプ目標傾転q2tに一致するよう制御する。
<請求項の構成との対応>
本実施の形態では、バケットシリンダ7は、第1及び第2油圧ポンプ2,3の一方の油圧ポンプである第2油圧ポンプ3から吐出された圧油のみによって駆動される特定の油圧アクチュエータであり、バケットシリンダ7に対応する操作装置52が特定の方向(バケットシリンダ7の伸び方向に対応する方向)に操作されたときの動作は第1の実施の形態において説明した通りである。
【0074】
また、本実施の形態では、旋回モータ6は、第1及び第2油圧ポンプ2,3の一方の油圧ポンプである第1油圧ポンプ2から吐出された圧油のみによって駆動される特定の油圧アクチュエータであり、圧力センサ61a,61b〜67a,67b、コントローラ70の第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71a、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71b、第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71d、第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部72a、第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部72b、第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72c及び第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部72dと、レギュレータ58,59は、複数の操作装置51,52,…の操作信号に基づいて、複数の操作装置のうちの操作されたものに対応する油圧アクチュエータに圧油を供給するよう、操作装置の操作量に応じて第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量を制御するとともに、第1及び第2油圧ポンプ2,3の一方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)から吐出された圧油のみにより駆動される特定の油圧アクチュエータ(旋回モータ6)に対応する操作装置51が、特定のアクチュエータの圧油供給側が低圧状態となり得る特定の方向(旋回モータ6の回転の停止或いは減速方向)に操作されたときは、前記一方の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ2)の容量を増加するよう制御するだけでなく、第1及び第2油圧ポンプ2,3の他方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)の容量も増加するよう制御するポンプ制御手段を構成する。
【0075】
当該ポンプ制御手段は、上記複数の操作装置のうち特定の油圧アクチュエータ(旋回モータ6)に対応する操作装置51の操作信号に基づいて、特定の油圧アクチュエータ(旋回モータ6)に対応する操作装置51が特定の方向として操作量の減少方向に操作されたときに、操作装置51の操作量の減少開始後の所定時間Ta、上記他方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)の容量を増加するよう制御する。そして、このとき、上記ポンプ制御手段は、その操作装置51の操作量の減少率が大きくなるにしたがって他方の油圧ポンプ(第2油圧ポンプ3)の容量を増加するよう制御する。
<動作及び効果>
バケットシリンダ7が特定の油圧アクチュエータである場合の動作は、第1の実施の形態で説明したのと同じである。
【0076】
旋回モータ6が特定の油圧アクチュエータである場合の動作は次のようである。
【0077】
旋回モータ6に対応する操作装置51を操作すると、前述したように、第1油圧ポンプ2の吐出流量は操作装置51の操作量に応じて増加するように制御され、第1油圧ポンプ2から吐出された圧油が方向制御弁21を介して旋回モータ6に供給され、旋回モータ6は上部旋回体101を旋回駆動する。
【0078】
このような旋回中に旋回停止動作或いは旋回減速動作を意図して操作装置51の操作レバーを中立方向(旋回停止又は減速方向)に戻し操作をした場合は、コントローラ70の第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部71a、第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部71b、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71c及び第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部71dとレギュレータ58により、第1油圧ポンプ2の傾転は操作装置51の操作量に応じて減少するように制御され、第1油圧ポンプ2の吐出流量は減少するよう制御される。これにより第1油圧ポンプ2から旋回モータ6への圧油の供給量が減り、上部旋回体101の旋回動作を減速或いは停止させる。
【0079】
また、コントローラ70は、旋回用の操作装置51の操作パイロット圧力PS1又はPS2を検出する圧力センサ61a又は61bの検出信号に基づいて、第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72cにおいてメイクアップ制御の第2油圧ポンプ目標傾転q2t2を演算し、第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部72dにおいてその第2油圧ポンプ目標傾転q2t2を最終的な第2油圧ポンプ目標傾転q2tとして選択し、対応する制御信号を第2油圧ポンプ3のレギュレータ59に出力する。ここで、第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72cでは、旋回モータ6に対応する操作装置51の操作量の減少開始後の所定時間Ta、その操作装置51の操作量の減少率(変化率ΔPS;レバー操作速度)が大きくなるにしたがって増大するメイクアップ制御の第2油圧ポンプ目標傾転角q2t2が演算される。これにより操作装置51の操作量の減少開始後、すなわち操作装置51の操作レバーの戻し操作開始後の所定時間Ta、第2油圧ポンプ3の吐出流量が増大するよう制御される。また、そのとき、操作装置51の操作量の減少率(変化率ΔPS;レバー操作速度)が大きくなるにしたがって第2油圧ポンプ3の傾転が増加し、第2油圧ポンプ3の吐出流量が増大するよう制御される。これにより上部旋回体101が慣性により回転し続けようとして旋回モータ6の圧油供給側が低圧状態となっても、タンク油路33の流量が増加するため、旋回停止動作或いは旋回減速動作における旋回モータ6の圧油供給側へのメイクアップ性能が向上し、キャビテーションを防止することができる。
【0080】
また、旋回停止動作或いは旋回減速動作では、操作装置51の操作量の減少率(変化率ΔPS;レバー操作速度)が大きくなるにしたがって旋回モータ6の圧油供給側における圧油の不足量が増加し、より低圧状態となろうとするが、本実施の形態では、操作装置51の操作量の減少率が大きくなるにしたがって第2油圧ポンプ3の吐出流量が増加し、タンク油路33の流量が増加するため、更に効果的なメイクアップが可能となる。
<その他の実施の形態>
なお、以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。以下にその変形例を説明する。
【0081】
1.上記第1の実施の形態では、コントローラ70の第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cは、エンジン回転数Nが第1所定回転数N1以下になったときに第1油圧ポンプ目標傾転q1t2を演算したが、エンジン回転数に係わらず、常時、第1油圧ポンプ目標傾転q1t2を演算してもよい。また、第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部71cは、第1油圧ポンプ目標傾転q1t2として、操作パイロット圧力PW1が高くなる(レバー操作量が増大する)にしたがって増大し、かつエンジン回転数が低下するにしたがって増大する値を演算したが、エンジン回転数に依存せず、操作パイロット圧力PW1が高くなる(レバー操作量が増大する)にしたがって増大する値を演算してもよいし、エンジン回転数及び操作パイロット圧力PW1(レバー操作量)のいずれにも依存せず、予め定めた一定の値を演算してもよい。このような場合でも、特別なバルブ装置を設置することなく、必要なときにタンク回路33の圧力を上昇させてメイクアップ性能をアップし、キャビテーションを防止することができる。
【0082】
2.上記第2の実施の形態では、コントローラ70の第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部72cは、メイクアップ制御の第2油圧ポンプ目標傾転角q2t2として、操作装置51の操作量の減少率(変化率ΔPS;レバー操作速度)が大きくなるにしたがって増大する値を演算したが、操作量の減少率に係わらず、予め定めた一定の値を演算してもよい。この場合でも、特別なバルブ装置を設置することなく、必要なときにタンク回路33の圧力を上昇させてメイクアップ性能をアップし、キャビテーションを防止することができる。また、操作量の減少開始後の所定時間Taは、一定値でなく、操作量の減少率に依存する可変値(減少率が大きくなるにしたがって大きくなる値)であってもよく、これにより一層効果的なメイクアップが可能となる。
【0083】
3.上記第1及び第2の実施の形態では、油圧システムがメインポンプとして第1及び第2の2つの油圧ポンプ2,3を有するものとしたが、第1及び第2油圧ポンプ2,3以外に第3の油圧ポンプがあってもよい。このように油圧ポンプの数を変更した場合でも、一方の油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータが一方の油圧ポンプから吐出された圧油のみにより駆動される特定の油圧アクチュエータを含む場合は、当該特定の油圧アクチュエータに関して本発明を適用することで、上記実施の形態と同様な効果が得られる。
【0084】
4.上記第1及び第2の実施の形態では、第1及び第2油圧ポンプ2,3の一方の油圧ポンプから吐出された圧油のみによって駆動される特定の油圧アクチュエータがバケットシリンダ7又は旋回モータ6である場合について説明したが、油圧システムの組み方によってはアームシリンダ8やアタッチメント用のアクチュエータとしての油圧モータが第1及び第2油圧ポンプ2,3の一方の油圧ポンプから吐出された圧油のみによって駆動される特定の油圧アクチュエータになり得る場合もあり、操作装置が特定の方向に操作されたときに特定のアクチュエータの圧油供給側が低圧状態となり得る場合は、当該特定の油圧アクチュエータに関して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン
2 第1油圧ポンプ
3 第2油圧ポンプ
4,5 走行モータ
6 旋回モータ
7 バケットシリンダ
8 アームシリンダ
9 ブームシリンダ
10 アタッチメント用シリンダ
11a,11b〜19a,19b アクチュエータ油路
20 コントロールバルブ装置
21〜29 方向制御弁
31,32 センタバイパスライン
33 タンク油路
34 背圧チェック弁
35 熱交換器
36 バイパスチェック弁
37 タンク
38 パラレル油路
39 パラレル油路
41a,41b〜44a,44b,47a,47b オーバーロードリリーフバルブ
41c,41d〜44c,44d,47c,47d メイクアップ用のチェックバルブ
51,52 操作装置
58,59 レギュレータ
61a,61b〜67a,67b 圧力センサ
68 回転数センサ
70 コントローラ
71a 第1油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部
71b 第1油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部
71c 第1油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部
71d 第1油圧ポンプ用最大目標傾転選択部
72a 第2油圧ポンプ用最大操作パイロット圧力選択部
72b 第2油圧ポンプ用ポジコン制御目標傾転演算部
72c 第2油圧ポンプ用メイクアップ制御目標傾転演算部
72d 第2油圧ポンプ用最大目標傾転選択部
72c−1 旋回操作パイロット圧力変化率演算部
72c−2 第1油圧ポンプ目標傾転演算部
72c−3 経過時間設定部
101 上部走行体
102 フロント作業機
103a,103b クローラ式走行装置
111 ブーム
112 アーム
113 バケット
115 破砕機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の第1及び第2油圧ポンプを含む複数の油圧ポンプと、前記第1及び第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記第1及び第2油圧ポンプと前記複数の油圧アクチュエータとの間に配置され、前記第1及び第2油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れを制御する複数の方向制御弁と、前記複数の油圧アクチュエータに対応して設けられ、前記複数の方向制御弁を操作するための複数の操作装置と、タンクとを備えた油圧作業機械の油圧制御装置において、
前記第1及び第2油圧ポンプから吐出された圧油のうち、前記複数の油圧アクチュエータへ流入しない余剰の圧油と前記複数の油圧アクチュエータからの戻り油を前記タンクに環流するタンク油路と、
前記複数の方向制御弁と前記複数のアクチュエータを結ぶ複数のアクチュエータ油路のそれぞれと前記タンク油路との間に配置されたメイクアップ用のチェックバルブと、
前記複数の操作装置の操作信号に基づいて、前記複数の操作装置のうちの操作されたものに対応する油圧アクチュエータに圧油を供給するよう、前記操作装置の操作量に応じて前記第1及び第2油圧ポンプの容量を制御するとともに、前記第1及び第2油圧ポンプの一方の油圧ポンプから吐出された圧油のみにより駆動される特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が、前記特定のアクチュエータの圧油供給側が低圧状態となり得る特定の方向に操作されたときは、前記一方の油圧ポンプの容量を増加するよう制御するだけでなく、前記第1及び第2油圧ポンプの他方の油圧ポンプの容量も増加するよう制御するポンプ制御手段とを備えることを特徴とする油圧作業機械の油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧作業機械の油圧制御装置において、
前記ポンプ制御手段は、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、前記複数の操作装置のうち前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作信号と前記回転数検出手段の検出信号に基づいて、前記エンジンの回転数が所定回転数以下であるときに前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が前記特定の方向に操作されたときに、前記他方の油圧ポンプの容量を増加するよう制御することを特徴とする油圧作業機械の油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の油圧作業機械の油圧制御装置において、
前記ポンプ制御手段は、前記エンジンの回転数が所定回転数以下であるときに前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が前記特定の方向に操作されたときに、前記操作装置の前記特定の方向の操作量が増加するにしたがって前記他方の油圧ポンプの容量が増加し、かつ前記エンジン回転数が低下するにしたがって前記他方の油圧ポンプの容量が増加するよう制御することを特徴とする油圧作業機械の油圧制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の油圧作業機械の油圧制御装置において、
前記ポンプ制御手段は、前記複数の操作装置のうち前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置の操作信号に基づいて、前記特定の油圧アクチュエータに対応する操作装置が前記特定の方向として前記操作量の減少方向に操作されたときに、前記操作装置の操作量の減少開始後の所定時間、前記他方の油圧ポンプの容量を増加するよう制御することを特徴とする油圧作業機械の油圧制御装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の油圧作業機械の油圧制御装置において、
前記特定の油圧アクチュエータは油圧シリンダであり、
前記操作装置の前記特定の操作方向は、前記油圧シリンダの伸び方向に対応しかつ被駆動部材の重量が前記油圧シリンダの伸び方向に作用する方向であることを特徴とする油圧作業機械の油圧制御装置。
【請求項6】
請求項1又は4記載の油圧作業機械の油圧制御装置において、
前記特定の油圧アクチュエータは油圧モータであり、
前記操作装置の前記特定の操作方向は、前記油圧モータの回転の停止又は減速方向に対応する方向であることを特徴とする油圧作業機械の油圧制御装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75045(P2011−75045A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228048(P2009−228048)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】