説明

治療上活性な化合物の結合体

本発明は、未修飾親化合物と実質的に同程度の治療活性を保持しながら、未修飾親化合物に比べて低減された毒性を有するポリマー及び薬物の修飾ポリマー結合体を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上活性な化合物と多糖との結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
限られた溶解性及び安定性を示すか、又は高い毒性を保有する生物活性作用物質は、これらの制限を克服し、且つそれらの毒性を低減するための手段として、多糖のような親水性ポリマーへの結合により化学的に修飾され得る。他の方法は、より毒性の低い形態で生物活性薬物を配合することを包含する。かかる例の1つは、ポリエン抗生物質であるアンホテリシンB(AmB)であり、これは、デオキシコール酸ナトリウム−AmB(Fungizone(登録商標))のより毒性の低いミセル形態で、リポソーム配合物(AmBisome(登録商標))として、コロイド分散液(Amphotec(登録商標))として、及び脂質複合体(Abelcet(登録商標))として現在利用可能である。ミセル形態は、全体的に低減された毒性を示す一方で、低い耐量のような治療上の制限と平行して腎臓、中枢神経系及び肝臓に対する或る特定の毒性が依然として存在する。
【0003】
水溶性ポリマー−薬物結合体の開発は、種々の臓器分布並びに肝臓及び腎臓におけるより少ない蓄積に起因して、標的とされる薬物送達及びより低い薬物毒性を達成するための手段として続けられている。本出願の本発明者等に対する米国特許第5,567,685号及び同第6,011,008号は、それぞれが或る特定の程度の遊離アルデヒド基及び所望の治療効果を付与することが可能な活性部位を含有する酸化感受性生物活性物質の水溶性多糖結合体を開示している。本発明者等は、結合体が治療上有効である一方で、或る程度の毒性が残留することを最近実感している。
【0004】
アルデヒド基を保有する小分子が毒性である傾向にあることが知られている。この毒性は通常、アルデヒド基がアミン基と反応して、したがってタンパク質及び核酸の構造に干渉するという傾向に起因すると考えられる。それにも関わらず、アルデヒド含有分子は、当該技術分野では生体適合性であることが既知である。
【0005】
アルデヒドから生じる毒性の低減は、アルデヒド部分を実質的により毒性の低い基へ変換することにより達成され得る。しかしながら、かかる化学修飾がまた、生物活性部分(例えば、AmB)に影響を及ぼし得る分子では、治療効果の低減も観察される。
【0006】
アルデヒド部分により付与される毒性の低減と治療効果の保持との間の平衡は、かかる化合物のさらなる開発にとって明らかに障害である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ポリマー及び治療上活性な化合物(本明細書中では薬物と称される)の修飾ポリマー結合体を提供することであり、当該結合体は、未修飾親化合物と実質的に同程度の治療活性を保持しながら、未修飾親化合物に比べて低減された毒性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の結合体は通常、本発明の発明者等に対する米国特許第5,567,685号及び同第6,011,008号に開示されるアルデヒド含有結合体のような適切な前駆体から調製される。さらに開示されるように、複数のアルデヒド基を有するこれらの前駆体結合体(本明細書中では、「親結合体」又は「未修飾結合体」と称される)は、当該アルデヒド基それぞれを、−CHOHと異なる基へ化学的に変換するように選択的条件下で化学的に修飾される。−CHOHと異なる基は、本明細書中で次に開示されるようにエーテル、エステル、アミン、イミン、アミド、アセタール又はヘミアセタールから非限定的な様式で選択され得る。
【0009】
したがって、米国特許第5,567,685号及び同第6,011,008号の還元されたアルデヒドを含まない結合体は、これによって本発明の範囲から除外される。
【0010】
本発明の結合体は、以下のように特徴づけられ得る:
1.治療上活性な薬物は、Cポリマー−O薬物又はCポリマー−N薬物結合を介してポリマー骨格に結合され、
2.結合体は、アルデヒド基を実質的に含まず、
3.結合体は、未修飾結合体と比較して低減された毒性を有し、
4.結合体は、未修飾結合体と関連した生物活性及び/又は治療活性を保持し、
5.結合体は、ポリマーに結合される薬物の構造を保持し、
6.結合体は、未修飾結合体の使用に類似した様式でそれらの使用を可能にする物理特性及び化学特性の大部分を保持する。
【0011】
「結合体」という用語は本明細書中で使用する場合、ポリマー、好ましくは多糖及びそれに化学的に結合される(即ち、結合される)薬物を含む化合物を指す。化学結合は好ましくは、共有結合、最も好ましくは薬物分子のN又はO原子及びポリマーのC原子による共有結合であり、当該N又はO原子は、当該薬物の構造の固有部分であるか、又は化学修飾後に薬物に付加される。
【0012】
本発明の状況では、「ポリマー」という用語は、少なくとも1つの繰り返しモノマー、及び少なくとも1000ダルトン、好ましくは少なくとも10000ダルトン、より好ましくは5000〜75000ダルトンの範囲の分子量を有する化合物を指す。用いられるポリマーは、直鎖又は分岐鎖であり得る。ポリマーが少なくとも2つの繰り返しモノマーから構築される場合、(例えば少なくとも2つのモノマーそれぞれの交互配列を有する)ポリマーは順序付けられてもよく、又はランダム不規則様式で構築されてもよい。したがって、「ポリマー」という用語はまた、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー及び高次ポリマーを包含する。
【0013】
次に示されるように、本発明の結合体は、複数の酸化モノマーを有する部分的に酸化されたポリマーを提供するようにポリマーを部分的に酸化することにより調製される。続いて、ポリマーの酸化モノマーは、本発明に従って修飾されて、3つの異なるモノマー:(i)その本来の構造を保持する非酸化モノマー、(ii)薬物を保有するアルデヒドを含まないモノマー及び(iii)薬物を含まず且つアルデヒドを含まないモノマーを有するポリマーを提供する。
【0014】
好ましい実施の形態では、上記ポリマーは、同じであり得る(例えば、デキストランの場合)又は異なり得る(例えば、アラビノガラクタンの場合)繰り返し単糖単位を有する多糖であり、当該多糖は、天然であってもよく、又は合成であってもよく、且つ分岐鎖又は直鎖であり得る。多糖はまた、合成的に修飾された天然多糖であってもよい。好ましくは、当該多糖は、水溶性多糖又は水分散性多糖から選択される。
【0015】
多糖の非限定的な例は、デンプン(多糖アミロース及びアミロペクチンの組合せで構成される)、グリコーゲン(繰り返しグルコースモノマーで構成される分岐鎖多糖)、セルロース(β−結合により一緒に結合された繰り返しグルコース単位で構成される)、デキストラン(繰り返しグルコース単位で構成される直鎖多糖)、プルラン(繰り返しマルトトリオースモノマーで構成される)、キトサン(分散型β−(1,4)結合D−グルコサミン及びN−アセチル−D−グルコサミン単位で構成される)、アラビノガラクタン(AG、1つのアラビノース単位に対して6つのガラクトース単位の比で一緒に結合されたガラクトース単位及びアラビノース単位で構成される分岐鎖天然多糖)、ガラクタン(繰り返しガラクトースモノマーで構成される)、ガラクトマンナン(ガラクトース側基を有するマンノースモノマーで構成される)及びグァーガム(鎖中の1つおきのモノマーにα−D−ガラクトース残基が結合されたβ−D−マンノースモノマーで構成される)である。
【0016】
「薬物」という用語は本明細書中で使用する場合、治療上活性な化合物(好ましくは、酸化感受性である)を指す。薬物が、好ましくは共有結合によりポリマーに結合される必要がある場合、当該薬物は好ましくは、ヒドロキシル化(又はチオール化)活性化合物及びアミノ化活性化合物の中から選択される。ヒドロキシル化化合物のO(又はS)原子、又はアミノ化化合物のN原子(それにより、ポリマーへの結合が達成される)は、薬物にとって固有であってもよく、又はかかる結合を容易とするためにそれに対して化学修飾されてもよい。
【0017】
したがって、好ましくは、薬物は、ポリエン抗生物質、約2000ダルトン未満の分子量を有する低分子量薬物、約2000〜6000ダルトンの分子量を有する高分子量薬物、アミン薬物誘導体、ペプチド又はポリペプチド及びそれらの類縁体から選択される。
【0018】
ヒドロキシル化薬物の非限定的な例は、デキサメタゾン、ダウノルビシン、シタラビン、サリチル酸、サンタロール及びプロパノロールである。ポリエン抗生物質の非限定的な例は、ナイスタチン及びアンホテリシンB(AmB)である。
【0019】
低分子量薬物の非限定的な例は、5−アミノサリチル酸、アミノグルコシド抗生物質、ポリエン抗生物質、フルシトシン、ピリメタミン、スルファジアジン、ダプソン、トリメトプリム、マイトマイシン、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ポリミキシンB、プロパノロール、シタラビン及びサンタロールである。
【0020】
「アミン薬物誘導体」という用語は、第一級アミンを保有するか、又は第一級アミンを保有するように化学修飾されたヒドロキシル含有薬物のオリゴペプチドエステルを指す。本明細書中で使用する場合「オリゴペプチド」という用語は通常、同一であるか、又は異なる20個以下のアミノ酸を含むペプチド鎖を指す。かかる誘導体の例としては、アラニル−タキソール、トリグリシル−タキソール、アラニル−グリシル−デキサメタゾン、グリシル−デキサメタゾン及びアラニル−デキサメタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチドは、好ましくはシステイン、メチオニン、チロシン、ヒスチジン及びトリプトファンのような1つ又は複数の易酸化性アミノ酸を有する約6000ダルトン未満の分子量を有するものである。かかるポリペプチドの例としては、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ブラジキニン、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出因子(TRF)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、インスリン及びカルシトニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
「ポリペプチド類縁体」という用語は、環状誘導体、N−アルキル誘導体、脂肪酸がアミノ酸末端に又はペプチド鎖に沿って結合された誘導体、及び逆アミノ酸誘導体を含む化学的に修飾された生物活性ポリペプチドを指す。
【0022】
本明細書中で使用する場合、「Cポリマー−N薬物」という表現は、ポリマーのC原子と薬物分子上のN原子との間の結合を指し、「Cポリマー−O薬物」という表現は、ポリマーのC原子と薬物のO原子との間の結合を指す。薬物分子のN原子は、例えばアミン基(第一級又は第二級、荷電又は中性)、アミド基又は複素環系の一部(荷電又は中性)であってもよく、薬物のO原子は、ヒドロキシル基(又はヒドロキシレート)或いはカルボン酸(又はカルボキシレート−O−C(=O)−)であってもよい。
【0023】
一実施の形態では、ポリマーのC原子と薬物のN原子との間で形成されるC−N結合は、単結合(本明細書中では「アミン結合」と称される)である。別の実施の形態では、C−N結合は、二重結合(本明細書中では「イミン結合」と称される)である。
【0024】
本発明の結合体は、それが、単糖又はモノマー10個当たりに多くても1つのアルデヒド基、即ち−C(=O)H(これは、ポリマーに毒性を付与することが可能である)、好ましくは単糖20個当たりに1つのアルデヒド基、及び最も好ましくは単糖100個当たりに1つのアルデヒド基を有する場合には、アルデヒド基を実質的に含まないと言われる。アルデヒド基の存在量に対する試験は、当業者に既知の各種分析方法から選択され得る。以下で開示する1つの例示的な試験は、塩酸ヒドロキシルアミンの定量滴定を利用する。
【0025】
本発明の別の好ましい実施の形態では、本発明の結合体は、下記モノマー:
(a)上記ポリマーの少なくとも1つのモノマー、例えば多糖の単糖
(b)アルデヒド基を実質的に含まない((a)の)上記モノマーの少なくとも1つの酸化形態、及び
(c)薬物に結合され、且つアルデヒド基を実質的に含まない少なくとも1つの((b)の)上記酸化形態
の組合せを含み、ここで当該組合せは、アルデヒド基を実質的に含まない水溶性多糖又は水分散性多糖を提供する。
【0026】
一実施の形態では、上記ポリマーは、多糖であり、本発明の結合体は、下記単糖:
(a)デキストランのような多糖の少なくとも1つの単糖(当該単糖はグルコースである)、
(b)アルデヒド基を実質的に含まないグルコースの少なくとも1つの酸化開環形態、及び
(c)薬物に結合され、且つアルデヒド基を実質的に含まないグルコースの少なくとも1つ上記酸化開環形態
の組合せを含み、ここで当該組合せは、アルデヒド基を実質的に含まない水溶性デキストラン又は水分散性デキストランを提供する。
【0027】
好ましくは、本発明の結合体は、単糖(a)〜(c)それぞれの少なくとも1つを含む。一実施の形態では、単糖(a)は、結合体の重量の約10〜98%を構成する。別の場合では、酸化形態(b)は、結合体の重量の約10〜60%を構成する。さらに別の実施の形態では、薬物結合体(c)は、結合体の重量の約1〜50%を構成する。
【0028】
上記群(a)の「モノマー」という用語は、本発明の状況内では、ポリマーのモノマー構成単位又は好ましくは多糖の単糖を指す。かかる単糖の非限定的な例は、グルコピラノース(デンプンにおける繰り返し単位)、グルコース(グリコーゲン、デキストラン及びセルロースにおける繰り返し単位)、マルトトリオース(プルランにおける繰り返し単位)、β−(1−4)結合D−グルコサミン及びN−アセチル−D−グルコサミン(キトサンにおける繰り返し単位)、アラビノース及びガラクトース(アラビノガラクタン、即ちAGにおける繰り返し単位)及びガラクトース(ガラクタンにおける繰り返し単位)である。
【0029】
単糖の酸化形態(上記群(b))は、多糖鎖の単糖単位の酸化により生じる開環ジアルデヒド形態である。実質的にアルデヒドを含まない酸化形態を形成するために、開環ジアルデヒドは、遊離アルデヒド基を、それらに対して反応性を有する作用物質と反応させて、エーテル、エステル、アミン、イミン、アミド、アセタール又はヘミアセタールから選択される基を提供することにより化学修飾される。
【0030】
薬物に結合された上記糖の少なくとも1つの酸化形態(上記群(c))は、一般式Iを有する。提示する構造は、異なる多糖又はポリマーに関して異なり得る開環単糖の一般的な表示であることに留意すべきである。したがって、一般構造はまた、異なる環サイズ、立体異性体、異なる置換及び分子量を包含する。
【0031】
一般式Iにおいて、
【0032】
【化1】

【0033】
R1は、存在しないか、又はH、OH及び−O−アルキル基から選択され、
R2は、N又はO原子により上記モノマーに結合されている薬物(上記で定義されるような)であり、N原子による当該結合がC1−N単結合又は二重結合によるものであってもよく、
上記結合がC1−N二重結合によるものである場合、R1は存在せず、N原子がさらにプロトン化されてもよく、又はプロトン化されなくてもよく、
C1−N単結合によるものである場合、R1はHであり、当該N原子は、1つ又は2つの水素原子によりプロトン化されてもよく、
R3は、存在しないか、又はH、OH、−O−アルキル基、−N−アルキル基、アミノ酸、脂質、糖脂質、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖及びオリゴ糖から選択され、
R4は、存在しないか、又は薬物(上記で定義されるような)、−O−アルキル基、−N−アルキル基、アミノ酸、脂質、糖脂質、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖及びオリゴ糖から選択され、
R3及びR4それぞれが、互いに独立して、−O−アルキル基又はN−アルキル基である場合、当該アルキル基は、それらが結合されるO又はN原子及びC2原子とともに、複素環系を形成してもよい。
【0034】
R2の薬物は、R4の薬物と同じであってもよく、或いは同じでなくてもよい。
【0035】
「アミノ酸」という用語は、当業者に既知であり得るように、アミノ基及びカルボキシル基の両方を含有する有機分子(アルファアミノ酸及びベータアミノ酸の両方を包含する)を指す。「ペプチド」という用語は、特定の配列でペプチド結合により一緒に結合されるアミノ酸の短鎖を指す。「ポリペプチド」という用語は、複数のアミノ酸で構成される直鎖ポリマーを指す。この用語はまた、タンパク質も包含する。
【0036】
「脂質」という用語は、当業者に既知であり得るように、水中には不溶性であるが、無極性有機溶媒中には溶解する傾向にある有機分子を指す。この種類はまた、リン脂質も包含する。「糖脂質」という用語は、極性ヘッド基へ糖残基又はオリゴ糖が結合された上記で定義するような脂質分子を指す。
【0037】
「糖」という用語は、一般式(CHO)を有するモノマーを有する短い炭水化物を指す。非限定的な例は、単糖であるグルコース、フルクトース及びマンノース、並びに二糖であるスクロースである。「オリゴ糖」という用語は、共有結合された糖の短い直鎖又は分岐鎖を指す。
【0038】
「糖タンパク質」という用語は、アミノ酸側鎖に1つ又は複数のオリゴ糖鎖が共有結合された任意のタンパク質を指す。
【0039】
一般式Iでは、R4は存在しなくてもよく、C1に結合される薬物のN1原子はまた、C−N単結合又は二重結合によりC2にも結合され、環構造を形成してもよい。
【0040】
一般式Iの一実施の形態では、上記多糖に結合されている薬物は、AmB、ドキソルビシン、マイトマイシンC、ポリミキシンB、パクリタキセル、ゲンタマイシン、デキサメタゾン、5−アミノサリチル酸及びソマトスタチンから選択される。好ましくは、上記薬物はAmBである。
【0041】
別の実施の形態では、単糖は、グルコース、D−グルコサミン、アラビノース及びガラクトース又はそれらの誘導体から選択される。さらに別の実施の形態では、上記ポリマーは、同じ単糖の非酸化モノマー、酸化モノマー及び結合モノマーで構築されるホモ多糖である。別の実施の形態では、多糖は、少なくとも2つの異なる単糖の非酸化モノマー、酸化モノマー及び結合モノマーで構築される混合多糖、即ち共多糖である。
【0042】
好ましい実施の形態では、R3はOHであり、R4はO−アルキルであり、ここで当該アルキルは、低級アルキル、即ち1〜9個の炭素原子を有するアルキル(例えば、エチル)、又は高級アルキル、即ち少なくとも10個の炭素原子を有するアルキル(例えば、コレステロール)である。
【0043】
別の好ましい実施の形態では、R3はOHであり、R4は、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである。
【0044】
さらに別の好ましい実施の形態では、R3は存在せず、R4は、イミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである。
【0045】
さらに好ましい実施の形態では、R3はHであり、R4はO−アルキルである。
【0046】
別の好ましい実施の形態では、R3はOHであり、R4はO−アルキルである。
【0047】
さらに別の好ましい実施の形態では、R3及びR4はそれぞれ、互いに独立してO−アルキルである。
【0048】
さらなる別の好ましい実施の形態では、R3は、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルであり、R4はO−アルキルである。
【0049】
さらなる好ましい実施の形態では、R3はHであり、R4は、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである。
【0050】
さらなる別の好ましい実施の形態では、R3及びR4は、互いに独立してそれぞれ、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである。
【0051】
別の実施の形態では、R3は存在せず、R4は、イミン結合によりC2に結合されるアミノ酸であり、当該アミノ酸は、好ましくはリシンである。
【0052】
別の実施の形態では、R3はHであり、R4は、アミノ酸(好ましくはリシンである)である。
【0053】
さらに別の実施の形態では、R3は存在せず、R4は=NCHCHOH(式中、N原子は、中性であってもよく、又は荷電されてもよい)である。
【0054】
さらなる別の実施の形態では、R3はHであり、R4は−NZCHCHOH(式中、Zは、H又は上記で定義するような置換基であってもよく、N原子は、中性であってもよく、又は荷電されてもよい)である。
【0055】
別の実施の形態では、R3はOHであり、R4は−OCHCHである。
【0056】
さらに別の実施の形態では、上記ポリマーは、デキストラン、キトサン又はアラビノガラクタンであり、上記薬物はAmBであり、R4は、=NCHCHOH又は−NZCHCHOH(式中、ZはH又はアルキルである)、−OCHCHである。
【0057】
「アルキル」という用語は本明細書中で使用する場合、広範には1〜50個の炭素原子の炭素鎖を指す。炭素鎖は、置換されてもよく、又は無置換であってもよく、直鎖又は分岐鎖の環状或いは非環状であり得る。当該アルキルの置換は、1つ又は複数の基又は原子(例えば、ハロゲン化物(I、Br、Cl及びF)、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、P)、−OH、−NO、−NH−、アリール、−S(=O)−、−S(=O)O−、−C(=O)NH−等)によるものであり得る。この用語はまた、1〜50個の炭素原子を有する内鎖アルキレン基、及びC−C二重結合又は三重結合又は芳香族部分により部分的に或いは完全に結合されている炭素鎖を指す。「低級アルキル」という用語は、1〜9個の炭素原子を有するアルキルを指し、「高級アルキル」という用語は、10個以上の炭素原子を有するアルキルを指す。
【0058】
かかるアルキル基の非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、set−ブチル、tert−ブチル、イソヘキシル、アリル(プロペニル)、プロパルギル(プロピニル)、フルオレニル、フェニル及びナフチルである。
【0059】
「−N−アルキル基」という用語は、第二級、第三級又は第四級のアミン又はイミンであり得るN原子(これは、プロトン化されてもよく、アルキル化されてもよく、中性であってもよく、又は荷電されてもよい)によりポリマーに結合されているアルキル基を指す。「−O−アルキル基」という用語は、O原子によりポリマーに結合されているアルキル基を指す。
【0060】
R3又はR4の置換又は無置換の−N−アルキル又は−O−アルキル基、アミノ酸、脂質、糖脂質、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖及びオリゴ糖は、(i)未修飾結合体の生物/治療活性、特異性、化学特性及び/又は物理特性に対して実質的に影響がない部分、並びに(ii)疎水性、親水性、酸性度、溶解性、分散性、化学反応性、標的組織への特異性、改良された治療活性及び或る特定の受容体又は生物学的活性部位に対する親和性から選択される少なくとも1つのさらなる特性を修飾結合体に付与する部分から選択され得る。
【0061】
結合体に対して実質的に影響がない部分の非限定的な例は、エタノールアミン、ヒドロキシルアミン、プロピレングリコール、グリセロール及びエタノールに由来する。
【0062】
さらなる特性を結合体に付与し得る部分の非限定的な例は、(1)コレステロール及びその誘導体(これらは、結合体に疎水性特性を付与して、親水性薬物が疎水性バリアを通過するのを助長し得る)、(2)グルコサミン(これは、結合体の親水性を増大し得る)、(3)グリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸又はそれらの短いオリゴペプチドのようなアミノ酸(これらは、結合体の酸性度を増大するのに使用され得る)、(4)リシン、オルニチン又はそれらのオリゴペプチドのようなアミノ酸(これらは、結合体の酸性度を減少するのに使用され得る)、(5)リシン、スペルミン、スペルミジン及び他の無毒性ジアミンのような二官能性分子(これらは、結合体の架橋又は分岐に使用され得る)、並びに(6)脂肪酸アミン:ステアリルアミン、オレイルアミン及びパルミトイルアミンのような疎水性分子(これらは、結合体の親油性を増大するのに使用され得る)である。
【0063】
一実施の形態では、上記部分は、所要の疎水性を結合体に付与することが可能であり、その結果、本発明の得られた修飾結合体は、水中に不溶性となり、したがってナノ粒子、リポソーム、ミセル分散液及びコロイド分散液の調製に適切であり得る。別の実施の形態では、かかる修飾結合体は、親油性表面をコーティングするのに使用される。
【0064】
本発明の別の態様では、組成物の調製のための本発明の結合体のいずれか1つの使用が提供される。好ましくは、当該組成物は、薬学的用途のためのものである。
【0065】
一実施の形態では、抗生物質として有効な医薬組成物の調製のための本発明の結合体の使用が提供される。
【0066】
別の実施の形態では、抗寄生虫薬として有効な医薬組成物の調製のための本発明の結合体の使用が提供される。
【0067】
別の実施の形態では、抗癌剤として有効な医薬組成物の調製のための本発明の結合体の使用が提供される。
【0068】
本発明の別の態様では、本発明の少なくとも1つの結合体を含む組成物が提供される。好ましくは、当該組成物はまた、担体又は不活性成分を含む。より好ましくは、当該組成物は医薬組成物であり、当該担体は、薬学的に許容される担体である。
【0069】
薬学的に許容される担体は、当業者に周知であるように、例えばビヒクル、補助薬、賦形剤又は希釈剤から選択され得る。薬学的に許容される担体は、薬物及び結合体全体にとって化学的に不活性であるもの、並びに使用の条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0070】
担体の選択は、特定の結合体により、及び特定の用途により或る程度決定されるであろう。本発明の結合体又はそれらを含む任意の組成物は、経口、エアロゾル、非経口、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、直腸及び膣内投与用の配合物にされ得る。
【0071】
さらに、本発明の結合体は、ヒドロゲル(好ましくは生分解性)にされてもよく、したがって注射、ステント上のコーティング又はin situでの移植用に配合され得る。本発明の結合体はまた、ナノ粒子、ミセル分散液、リポソーム及び結合体の様々な薬物放出特性を利用する放出調節配合物にされてもよい。
【0072】
本発明の医薬組成物は、本明細書中で定義されるような結合体で用いられる任意の1つの薬物によって治療可能な任意の1つの疾患又は障害の治療に使用され得る。例えば、結合体は、治療を必要とする被験体(ヒト又は非ヒト)の治療における抗生物質、抗寄生虫剤又は抗癌剤として使用され得る。
【0073】
この点において、「治療」という用語又はそれらの任意の言語変形体は、疾患に関連する望ましくない症状を改善するのに、症状が見られる前にかかる症状の徴候を防止するのに、疾患の進行を遅らせるのに、症状の悪化を遅らせるのに、寛解期間の始まりを促進するのに、疾患の進行性慢性期で引き起こされる不可逆的損傷を遅らせるのに、上記進行性期の始まりを遅延させるのに、疾患の重篤性を減じるか又は疾患を治癒するのに、生存率又はより迅速な回復を改善するのに、若しくは疾患が発生するのを防止するのに又は上記の2つ以上の組合せに)有効である治療量の本発明の組成物を投与することを指す。
【0074】
本発明の組成物は、任意の適切な配合物で、単独又は他の既知の治療(即ち、化学療法)と組み合わせて投与され得る。
【0075】
本発明の別の態様では、本発明による結合体の調製方法が提供され、この方法は、以下の:
(a)ポリマー(即ち、多糖)及び薬物の未修飾水溶性結合体を供給すること(当該多糖は、少なくとも1つのアルデヒド基を有し、当該薬物は、イミン(−Cポリマー=N薬物−)、アミン(−Cポリマー−N薬物R−)、アミド(−Cポリマー−N薬物C(=O)−)、エーテル(−Cポリマー−O薬物−)及びカルボキシル(−Cポリマー−O薬物−C(=O)−)結合から選択される結合により当該多糖に結合される)、並びに
(b)上記未修飾結合体を、本明細書中で上記で開示するような上記アルデヒド基に対する反応性を有し、且つ薬物又は上記結合に対して実質的に反応性を有さないか、又は低い反応性を有する作用物質と反応せること(当該作用物質は好ましくは、500ダルトン未満、より好ましくは200ダルトン未満の分子量を有する)
を含み、それによりアルデヒド基を実質的に含まない結合体を得る。
【0076】
任意に、この方法は、薬物と多糖との間のイミン結合を還元する工程をさらに含む。
【0077】
一実施の形態では、工程(a)及び工程(b)は、順に実施される。別の実施の形態では、この方法は、有機合成の当業者に既知であり得るようなワンポット反応として用いられる。
【0078】
好ましい実施の形態では、アルデヒド基を実質的に含まない得られた結合体は、上記工程(a)の未修飾結合体に対して低減された毒性を有する。
【0079】
別の実施の形態では、方法工程(a)の未修飾結合体は、米国特許第5,567,685号及び同第6,011,008号に開示される結合体の中から選択される。
【0080】
本発明の結合体は、キラル中心を含有し得ることが理解されよう。かかるキラル中心は、(R)又は(S)立体配置のいずれかであり得るか、又はそれらの混合物であり得る。したがって、本明細書中で提供される結合体は、鏡像異性的に純粋であり得るか、又は立体異性混合物又はジアステレオマー混合物であり得る。アミノ酸残基の場合、かかる残基は、L型又はD型のいずれかであり得る。結合体のキラル中心は、或る特定の条件下でエピマー化を受け得ることが理解されよう。
【0081】
本発明のさらなる別の態様では、本発明の調製方法により得られる結合体が提供される。
【0082】
さらに別の態様では、本発明の調製方法により得ることが可能な結合体が提供される。
【0083】
さらなる別の態様では、複数のアルデヒド基を有する未修飾結合体を、当該複数のアルデヒド基それぞれをアミン、イミン、アミド、アセタール、ヘミアセタール、エーテル及びエステルから選択される基へ、当業者に既知であり得るように化学的に変換することが可能な試薬と反応させることにより調製される結合体が提供される。アルデヒド基の変換に関しては、例えば、総合有機変換:機能的な集団調製に対する指針(Comprehensive Organic Transformations: A guide to Functional Group Preparations), R.C. Larock, Wiley-VCH; 2 Ed. 1999を参照されたい。
【0084】
本発明のさらに別の態様では、米国特許第5,567,685号及び同第6,011,008号に開示されるもののような未修飾結合体に関連した毒性の低減方法が提供され、当該方法は、当該未修飾結合体の複数のアルデヒド基を、アセタール、ヘミアセタール、アミン及びイミンから選択される複数の基へ変換することを含む。
【0085】
本発明の一実施の形態では、未修飾結合体は、未修飾結合体の上記アルデヒド基が、ポリアミンのアミン基と反応するような方法で当該ポリアミンと反応されて、したがって当該結合体及び当該ポリアミンを架橋して、ヒドロゲルを提供する。好ましくは、当該ヒドロゲルは、アルデヒド基を実質的に含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
本発明を理解するために、及び本発明が実際にどのように実施され得るかを認識するために、単なる非限定的な例として、添付の図面を参照して、好ましい実施形態をこれより記載する。
【0087】
本明細書中に提供する実施例は、本発明の非限定的な実施形態として提示されることが当業者に理解されよう。式Iの一般構造を有する単糖に対する本明細書中で示されるスキーム及び開環構造は、多糖又は単糖の一般的な表示として意図され、モノマーの特許請求される構造として、又は好ましい実施形態を列挙するものとしてみなされるべきではない。式Iを有するこの一般構造又はスキームで示される任意のかかる構造は、他のポリマー又は多糖の特徴を示し得るように、置換されてもよく、又は異なる環サイズであってもよい。したがって、当業者は、必須の修飾を用いて、或る多糖を別の多糖へ置き換える知識を有する。
【実施例】
【0088】
実施例1
デキストランポリアルデヒドの合成
40000を上回るMWを有するデキストランは、種々の量の過ヨウ素酸塩により酸化されて、種々のアルデヒド含有量を有する一連の酸化デキストランを形成する(スキーム1)。1.5%〜50%(1.5%、5%、8%、15%、25%及び50%)の酸化度を有するデキストランポリアルデヒドは、デキストラン1gへの制御量の過ヨウ素酸カリウム(それぞれ、0.0836g、0.2875g、0.46g、0.8625g、1.4375g及び2.875g)の添加により水溶液中で調製され、遮光容器中で室温にて6時間攪拌した。得られたポリアルデヒドは、Dowex−1陰イオン交換クロマトグラフィ(アセテート型、pH7)によりヨウ素酸イオン及び未反応過ヨウ素酸イオンから精製された。Dowexアセテートは、市販用の陰イオン交換体を1M酢酸水で前処理することにより得られた。精製した酸化デキストラン溶液は、4℃で48時間、再蒸留水(DDW)(5Lを4回交換)に対して3500分子量カットオフ透析チューブ(Membrane Filtration Products Inc., San Antonio, TX)に通して透析した後、乾固するまで24時間凍結乾燥させた。
【0089】
酸化度の測定は、下記の通りに実施した:酸化デキストラン(0.1g、0.625mmol)を、0.25M塩酸ヒドロキシルアミン溶液(pH4.0)25mL中に溶解させた。溶液を室温で3時間攪拌した後、0.1M NaOH標準溶液で滴定した。滴定終点は、滴定容積(V)に対する容積当たりのpHの変化(dpH/dV)を記載するグラフから算出した。分子量は、GPCにより測定した。10mg/mLの濃度のサンプルを、流量1mL/分でShodex(KB−803)カラムに通してDDW中の0.05M硝酸ナトリウムで溶出させた。溶出したサンプルの分子質量は、5000〜110000Daの範囲のプルラン標準物質(PSS, Mainz, Germany)を用いて推定した。
【0090】
結果:酸化に使用される過ヨウ素酸カリウムの量と酸化デキストランのアルデヒド含有量との間に線形相関が見られた。種々のモル比の過ヨウ素酸塩(1:1、1:2、1:3、1:5、1:10及び1:33 過ヨウ素酸塩:糖単位)との反応後のデキストランの酸化度、並びに酸化デキストランの分子量を表1に要約する。
【0091】
【表1】

【0092】
酸化デキストランは全て、約32000の類似した平均MW及び約1.6の多分散度を有した。高度に酸化されたデキストランに対する多分散度値(P=2.39)のわずかな増加があったが、これは、酸化に使用する大過剰の過ヨウ素酸塩に関連する。
【0093】
実施例2
修飾デキストランの合成
還元デキストラン- 酸化デキストラン(1g、50%酸化)を、DDW 100mL中に溶解した。NaBH(1g)を添加して、反応混合物を24時間攪拌した。溶液は、透析により精製して、凍結乾燥させた(上記実施例1に記載されるように)。
【0094】
デキストランアセタール- 酸化デキストラン(1g、50%酸化)を、エタノール100mL中に溶解して、24時間攪拌した。デキストランアセタールをDDW中に沈殿させて、凍結乾燥させた(上記実施例1に記載されるように)。
【0095】
デキストラン-エタノールアミン イミン/アミン- デキストラン(2g、50%酸化)を、ホウ酸緩衝液(pH11)200mL中に溶解して、エタノールアミン 0.41mL(1.1モル当量)を添加した。反応混合物を24時間攪拌して、その後サンプル100mLを取り出して、透析により精製して、乾固するまで凍結乾燥させて(上記実施例1に記載されるように)、イミン形態を得た。アミン形態を得るために、NaBH 1gを、反応溶液の残りの100mLに添加した。反応混合物を24時間攪拌して、透析により精製して、凍結乾燥させた(スキーム1)。
【0096】
実施例3
デキストラン−アンホテリシンB(AmB)イミン/アミン結合体の合成
第1の工程では、酸化デキストラン(50%酸化)を調製し、続いてAmBへの酸化デキストランの結合である第2の工程を行った(スキーム2を参照)。典型的な実験では、糖単位の50%の酸化度を有する酸化デキストラン1gを、ホウ酸緩衝液(pH=11)100mL中に溶解させた。AmB粉末(0.25g)を添加して、混合物を、室温で遮光溶器中で48時間攪拌した。反応混合物のpHは、反応中に11に維持した。イミン結合体の透明な黄橙色溶液が得られ、透析により精製して、24時間凍結乾燥させた(実施例1に記載されるように)。アミン結合体は、イミン結合体反応混合物へのNaBHの添加及び一晩の反応の継続により得られた。還元プロセス中、黄橙色から淡黄色への色の変化が観察された。アミン結合体を透析により精製して、凍結乾燥させた(実施例1に記載されるように)。
【0097】
デキストラン−AmB−エタノールアミン(イミン)結合体は、イミン結合体混合物へエタノールアミン(アルデヒド含有量の1.1モル当量)を添加すること、及び反応を一晩継続させることにより、スキーム2に示されるように調製した。反応のpHは、11に維持した。デキストラン−AmB−エタノールアミン結合体を透析により精製して、乾固するまで凍結乾燥させた(実施例1に記載されるように)。
【0098】
実施例4
結合体におけるAmB含有量の測定
本発明の結合体におけるAmB含有量は、標準物質として既知量の薬物とのデキストラン−AmB結合体を用いて、410nmでのUV吸光度により測定した。結合体の純度は、C18逆相カラム(LichroCart 250−4、Lichrospher 100、5μm)上でのHPLCにより測定した。流量1.8mL/分でのアセトニトリル70%/水27%/酢酸3%の混合物を溶離液として使用した。UV検出は410nmであった。両方の試験に関して、結合体サンプルは、DDW中0.3mg/mLの濃度で調製した。
【0099】
実施例5
アラビノガラクタン(AG)−リシン結合体の合成
平均分子量20000Daを有するAG(1g、0.006mol)を再蒸留水(DDW)20ml中に溶解して、続いて過ヨウ素酸カリウム(1.4g、0.006mol)を添加して、酸化剤が完全に溶解するように反応混合物を室温で4時間攪拌した。このようにして得られる酸化AGを、アセテート型のDowex−1を充填したカラム中で過剰過ヨウ素塩及び反応副生成物と分離させた。次に、精製した酸化AG溶液は、4℃で48時間、再蒸留水(DDW)(5L×4)に対して透析チューブ(12000Da分子量カットオフ)に通して透析し、乾固するまで凍結乾燥させた。或いは、純粋な結合体が得られるまで、結合体は、5000分子量カットオフフィルタを使用した限外濾過により精製した。
【0100】
酸化度は、結合体を塩酸ヒドロキシルアミンと反応させること、及びフェノールフタレインの終点まで、形成した遊離HClをNaOH溶液で滴定することにより測定した。多糖1g当たり0.005molのアルデヒドの酸化度を有するAGを、0.1M炭酸緩衝液(pH8.5)(10ml)中に溶解して、続いて塩酸リシン(1%w/w、10mg)を添加して、反応混合物を37℃で24時間振とうした。イミン結合体ゲルを2つに分けて、一方の部分を過剰のエタノールアミンと反応させて、余分なアルデヒド基をブロックした。5時間後、ゲルを分離して、慎重に洗浄して、未反応のエタノールアミン及び他の小分子を除去した。元のゲル部分の他方の半分及びエタノールアミン誘導体部分の半分は、室温で12時間の反応混合物への水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 1.1モル/mol(AG中の糖単位))の添加によりアミン形態に還元し、次いで真空下で乾燥した。
【0101】
実施例6
デキストランポリアルデヒドのin vitroでの毒性
種々の酸化度(1.5%〜50%酸化)を有するデキストランの段階希釈物をRPMI 1640増殖培地中に調製した。試験における最終アルデヒド濃度は、0.01〜34μmol/mLであった。酸化デキストラン毒性を、アルデヒド基0.15〜4.12μmol/mLの濃度で添加されたグルタリックポリアルデヒド毒性と比較した。
【0102】
デキストラン誘導体の細胞毒性は、薬物効果の検査に関して国際的に認められている細胞系であるマウスRAW 264.7細胞で評価した。
【0103】
増殖阻害は、H−チミジン取り込み法により推定した。細胞は、平底フラスコ中で37℃で培養した。各実験の前に、細胞は、洗浄して、トリプシン処理により取り出すか、又は平底から擦り落として、適切な容積を遠心分離して、再懸濁させて、所望の細胞濃度へ増殖培地中で希釈した。増殖培地は、RPMI 1640及び10%ウシ胎児結成(FCS)から構成された。自動ディスペンサーを用いて、細胞懸濁液200μLを、マイクロタイタープレートの各ウェルへ添加した。一晩インキュベートした後、適切な薬物濃度を三重で(triplicate)、試験ウェルへ添加した。薬物を含まない培地を対照として使用した。培地20μL中のH−チミジン(0.5μCi)を翌日添加して、プレートを収集して、さらに24時間後に液体シンチレーションカウンター(LKB, Finland)により読取った。試験した薬物による細胞の増殖阻害パーセントは、[100−(薬物を用いた場合の計数/対照計数)×100]として算出した。取り込みの50%を阻害する濃度として定義される薬物のIC50は、取り込みの阻害曲線からグラフ的に決定された。
【0104】
結果:細胞毒性実験は、細胞を同量の酸化デキストランとともにインキュベートすることにより実施した。酸化デキストラン中のアルデヒド含有量と細胞増殖阻害との間に相関が見出された(図1)。アルデヒド基の存在は、3μmol/mLのIC50で細胞毒性を引き起こした。7μmol/mLよりも高いアルデヒド濃度への細胞の暴露は、完全な阻害を引き起こした。
【0105】
実施例7
修飾デキストランポリアルデヒドの細胞毒性評価
この実験の目的は、すでに記載されている細胞増殖阻害が単にアルデヒド基により引き起こされることを確認することであった。したがって、アルデヒド基を、ヒドロキシル(エタノールアミンの末端基)又は脂肪族基(エタノールとの反応後の末端基)のような無毒性基に化学的に変換した。修飾は全て、最高の酸化度(50%)を有するデキストランポリアルデヒドに対して行われた(スキーム1)。
【0106】
酸化デキストラン及び修飾デキストランの段階希釈物をRPMI 1640ブロス培地中に調製した。試験における最終デキストラン濃度は、44〜5555μg/mLの範囲であった。
【0107】
アルデヒド基が細胞毒性に主に関与することを確立するために、天然デキストラン及びアルデヒドが(ヒドロキシルへの還元により)完全に排除されたデキストランを評価した。50%酸化を有するデキストランを陽性毒性対照として使用した。薬物効果及びIC50は、すでに記載されるように定義した(実施例6)。
【0108】
結果:修飾デキストランの毒性は、実施例6で開示する細胞系において評価した。酸化デキストランは、最低試験濃度(130μg/mL)でほぼ完全な増殖阻害を引き起こした。ヘミアセタールを形成するためのエタノールによる修飾は、ポリマーの毒性を実質的に低減させ、完全な増殖阻害は、1800μg/mLよりも高いデキストランヘミアセタールの濃度で観察された。エタノールアミンによる修飾(イミン形態)は、毒性を16倍低減させて、デキストラン−エタノールアミン(アミン)を形成するためのさらなる還元工程は、未修飾デキストランの毒性に対して毒性をさらに低減させた。表2から示され得るように、デキストラン及びエタノールアミンの結合体(上記実施例2の手順に従って調製される)は、IC50=130〜2000μg/mLの毒性の相当な低減を示した。さらに、アミン結合へのイミン結合の還元は、毒性をIC50=4500μg/mL(35倍)へとさらに改善させた。
【0109】
例えば酸化デキストランのアルデヒド基の還元によるアルデヒドの完全な排除(本明細書中では、表2において還元デキストランとして称される)は、試験した用量範囲において毒性を完全に防止した。類似の効果が、天然デキストランで観察された。結果のより容易な比較のため、IC50値は、図2に示すようにグラフ的に推定され、表2に要約した。
【0110】
【表2】

【0111】
実施例8
デキストラン−AmB結合体のin vitro毒性
結合体に関する細胞毒性試験を、すでに記載されるように(実施例7)、同じ細胞系で実施した。結合体は、酸化デキストランが細胞毒性を示した濃度範囲で調製した。
【0112】
結果:合成後、結合体の純度を、実施例4で記載されるようにHPLCにより評価した。HPLCは、完全に結合された薬物結合体の存在を示した。遊離薬物は検出されなかった。したがって、毒性は、結合体自体に由来し、遊離の未結合薬物分子に由来しないと仮定された。
【0113】
毒性は、デキストラン−AmBイミン結合体(本明細書中で上述する米国特許第5,567,685号ですでに記載されている)と比較して評価した。AmB濃度は、結合体毒性に対する薬物の影響を排除するために、全ての結合体において同様であった。エタノールアミンを有するか、又はエタノールアミンを有さないAmB−デキストランイミン結合体を、AmB−デキストランアミン結合体(全てが同等AmB量を含有する)と比較して、結合体毒性に対する残存アルデヒド基の寄与を評価した(図3)。薬物効果及びIC50は、すでに記載されるように定義した。
【0114】
IC50値を表3に要約する。遊離AmBは、寄生虫及び細胞の両方に対して極めて毒性であった。認識され得るように、アミン結合体及びイミン結合体は、遊離AmBよりも実質的に毒性が低かったが、一定の程度の毒性を保持し、これは、残存アルデヒド基に由来すると考えられる。AmBのアミン結合体は、寄生虫及び細胞の両方に対して最も毒性が低かった。理論により拘束されるのを望まないが、実証される細胞毒性及び抗寄生虫活性における差は、イミン結合の加水分解後のイミン結合体からのAmBの考え得る放出から生じるようである。同一条件下でのアミン結合体からの薬物の放出は、起きる可能性がより低いと思われる。
【0115】
エタノールアミンによりイミン又はアミン結合体のいずれかを修飾すること、それにより実質的にアルデヒドを含まない結合体を得ることにより、結合体の活性を保持しながら結合体の毒性がさらに低減された。
【0116】
【表3】

【0117】
実施例9
リーシュマニア・ドノバン(Leishmania donovani)に対するin vitro活性
in vitro抗寄生虫活性は、リーシュマニア・ドノバンISプロマスティゴートに対して評価した。スーダンにおける患者から単離したこの株は、エルサレム・ヘブライ大学の感染症に関するクビンセンターの国際資料センター(the International Reference Center of the Kuvin Center for Infectious Diseases)から授与された(received)。
【0118】
試験される作用物質の段階希釈物は、RPMI 1640増殖培地中で調製した。試験における最終AmB濃度は、0.2〜6μg/mLの範囲であった。薬物を含まない培地を含有するウェルは対照として機能を果たした。増殖阻害は、H−チミジン取り込み法により推定した。簡潔に述べると、96ウェルプレートに、培地200μL中で60000個のプロマスティゴート/ウェルを播種して、試験溶液を3時間後に添加した。24時間のインキュベーション後に、0.5μCi/ウェルのH−チミジン(10%FCS培地中)を添加して、さらに24時間後に培養物を収集した。実験中、細胞は空気中で25℃にてインキュベートした。結合体の薬物効果及びIC50は、上述するように(実施例7)推定された。
【0119】
結果:両方のイミン結合体(即ち、エタノールアミンを伴わないか、又はエタノールアミンと結合される)は、1.2μg/mLと比較して約0.3μg/mLのIC50で、アミン結合体と比べて、寄生虫リーシュマニア・ドノバンに対してより高い活性を示した(表3)。理論により拘束されるのを望まないが、この結果は、上記で論述されるイミン結合体の考え得る加水分解的分解をさらに支持するようである。
【0120】
実施例10
ドキソルビシン−デキストランエタノールアミンイミン結合体
ドキソルビシン(DOX、即ちアドリアマイシン)を各種反応条件下で酸化デキストランに結合させた。通常の実験では、精製DAD溶液(25mg/ml、MW=19000)20.0mlを、等容積の0.2Mホウ酸緩衝溶液(pH9.1)と混合して、DOX 200.0mgをポリマー溶液(10mg/ml)に添加した。混合物のpHをpH8.9±0.1で37℃にて16時間維持した。16時間後、エタノールアミンを添加して接近させて、類似した条件下で5時間反応させて、残存アルデヒド結合をブロックした。粗製結合体は、12000のMWカットオフを有する分子多孔質膜チューブを使用して、4℃で30時間DDWに対して透析して、続いて2000rpmで10分間の遠心分離及び凍結乾燥を行った。凍結乾燥させた淡黄色生成物(605mg、収率85%)は、480nmでのUV吸収により評価した場合にDOX約20%を含有した。
【0121】
凍結乾燥させた淡黄色生成物を、光及び空気から防御されるガラス容器中に保管した。結合体からのDOXの放出は、10000カットオフの孔サイズを有する透析チューブを使用して測定した。薬物の約10%が30時間後に放出された。in vitroでの細胞培養を行って、結合体の活性を測定した。DOXのこのイミン誘導体は、遊離薬物と同規模に有効であった。
【0122】
実施例11
マイトマイシンC−アラビノガラクタングルコサミンイミン結合体
アラビノガラクタン(AG、分子量28000)1グラムを、過ヨウ素酸カリウム0.3gを含有する溶液50ml中に溶解した。溶液を室温で3時間混合した。次に、溶液をDowexカラムに通して、透析して、凍結乾燥させて、酸化剤を含まない白色粉末を生じた。純粋なジアルデヒドAG(200mg)を、ホウ酸緩衝液(pH8.9)10ml中に溶解して、水5ml中のマイトマイシンC20mgと混合した。溶液を24時間混合した。次に、グルコサミンを添加して接近させて、反応をさらに5時間継続した後、生成物を水に対する限外濾過により精製して、凍結乾燥させて、シッフ塩基を生じた。
【0123】
結合された薬物の量は、280nmでのUV吸収により測定される場合に8重量%であった。凍結乾燥させた生成物の分子量は、26000ダルトンであった。溶液へのマイトマイシン放出及び毒性は、実施例7で上述するように測定した。溶液中に見出される薬物の量は、緩衝溶液(pH7.4)中で37℃にて48時間後に総用量の約10%であった。結合体は、遊離薬物の活性と比較した場合に類似した抗癌活性を示した。グルコサミンで修飾された結合体は、同じ未修飾結合体と比較した場合、細胞に対して遥かに低い毒性であった。
【0124】
実施例12
ポリミキシンB−アラビノガラクタン結合体
純粋な酸化AGは上述するように調製した。純粋なジアルデヒドAG(200mg)を、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.9)10ml中に溶解して、水5ml中のポリミキシンB 20mgと混合した。溶液を24時間混合させた。溶液を水で透析して、凍結乾燥させて、シッフ塩基を生じた。
【0125】
AG及びポリミキシンBの修飾結合体は、シッフ塩基をグルコサミン及びエタノールアミンのような試薬と反応させることにより調製した。
【0126】
実施例13
パクリタキセル−アラビノガラクタンヘミアセタール結合体
パクリタキセルは、パクリタキセル:ポリマーサンプル中のアルデヒド基の1:4のモル比で純粋な酸化AGと反応させた。反応は、DMSO:水 1:9の溶液の混合物中でpH8.5で室温にて8時間実施した。ほぼ透明な溶液を過剰のプロピレングリコールで処理して、5時間反応させた後、遠心分離を行って、不溶性粒子を除去して、凍結乾燥させて、オフホワイト色粉末を生じた。ヘミアセタール粉末は、生理食塩水中に可溶性であり、H−NMRにより測定される場合に約8重量%の薬物を含有した。
【0127】
実施例14
ゲンタマイシン−アラビノガラクタン結合体
アミノグルコシド抗生物質であるゲンタマイシン(5つのアミノ基を有する水溶性分子)は、アンホテリシンBに関して記載される手順と類似した手順を使用してシッフ塩基を介してAGに結合させた。この結合に関する誘因は、その広範囲な抗細菌活性にも関わらずその使用を制限する薬物の相当な臓器毒性を低減させることであった。
【0128】
これらの結合体の抗菌活性は、下記の通りに測定した。遊離形態又はイミンAG結合体での同等量の薬物の生理食塩水溶液を、円形濾紙(直径6mm)上に吸収させて、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)(10/ml)及び大腸菌(E. Coli)を播種して37℃で24時間インキュベートさせた寒天プレート上に配置させた。サンプルはともに、阻害ゾーンを示した。遊離薬物は、大きな阻害ゾーン(20mmを上回る)を示したのに対して、結合体は、限定されたゾーン(5mm)を示した。この差の理由は、寒天培地中で限られた拡散を有する結合体のサイズにより説明することができる。
【0129】
細胞に対する結合体のin vitro毒性は、遊離薬物の毒性と比較した場合に有意に減少された。
【0130】
マウスにおけるin vivo毒性は、注射の7日後に犠牲にしたマウスの腎臓を検査することにより測定された。結合体で処理したマウスの腎臓は、遊離薬物を注射した対照群の場合のような薬物により付与される毒性の徴候を示さなかった。
【0131】
実施例15
デキサメタゾン−アラビノガラクタンヘミアセタール結合体
難溶性抗炎症薬であるデキサメタゾン(10mg)は、ホウ酸緩衝液溶液(pH8.9)中で室温で24時間、純粋な32%酸化アラビノガラクタン(100mg)と反応させた。混合物に、プロピレングリコールを添加して、反応を5時間継続して、その時点で溶液を凍結乾燥させて、H−NMRにより測定される場合のヘミアセタール結合体を生じた。
【0132】
実施例16
5−アミノサリチル酸−アラビノガラクタングリシン結合体
5−アミノサリチル酸は、5−アミノサリチル酸 100mgを、ホウ酸緩衝液(pH8.9)中で室温にて24時間、32%酸化AG(MW=19000)300mgと反応させることにより、酸化AGに結合させた。グリシンを溶液に添加して、反応を10時間継続した後、限外濾過により精製を行った。イミン誘導体は、良好な収率で得られた。
【0133】
透析チューブ法を使用したリン酸緩衝液(pH7.4)中の結合薬物のin vitroでの放出は、37℃で8時間後に約10%放出を示した。結合体は、遊離薬物と比較した場合に、細胞に対して遥かに毒性が低かった。
【0134】
実施例17
ソマトスタチン−アラビノガラクタンエタノールアミン結合体
水溶性ペプチド薬物であるソマトスタチンは、下記のようにアミン結合を介して酸化AGに結合させた。純粋な32%酸化AGの溶液(ホウ酸緩衝溶液(pH8.9)10ml中100mg)にソマトスタチン20mgを添加して、混合物を4℃で一晩攪拌した。透明な溶液を過剰なエタノールアミンと10時間反応させた後、10000MWカットオフを使用した限外濾過により精製して、水で洗浄して、塩及び未結合薬物を除去した。その後、溶液を凍結乾燥させて、約70%結合に相当する白色固体115mgを生じた。結合体収率は、生成物の窒素分析により確認された。
【0135】
結合薬物の約10%が、緩衝液中でpH7.4で37℃にて、12時間後に放出された。放出された薬物は、元の薬物と類似したUVスペクトルを示し、HPLC分析により同じ保持時間を有した(C18、アセトニトリル:水 1:1、1ml/分、Rt=5.2分)。
【0136】
【化2】

【0137】
【化3】

【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、デキストランポリアルデヒドの細胞毒性を実証する。細胞毒性試験は、種々の酸化度を有するデキストラン(40kDa)の適用によりマウスRAW 264.7細胞においてH−チミジン取り込み法を使用して実施した。試験はそれぞれ、三重繰り返しで2度実施した。平均値及び標準偏差が示される。アルデヒド濃度は、[2(用量重量(g)×(酸化度%)/(糖単位重量(160g/mol)mL]として算出した。
【図2】図2は、本発明の修飾デキストランポリアルデヒドの細胞毒性を実証する。細胞毒性試験は、デキストラン(40kDa)の適用によりマウスRAW 264.7細胞においてH−チミジン取り込み法を使用して実施した。試験はそれぞれ、三重繰り返しで2度実施した。
【図3】図3は、デキストラン−AmB(イミン)及びデキストラン−AmB−エタノールアミン結合体のin vitroでの細胞毒性を実証する。細胞毒性試験は、マウスRAW 264.7細胞においてH−チミジン取り込み法を用いて実施した。結合体は、同量の薬物とともに適用させた。試験はそれぞれ、三重繰り返しで2度実施した。
【図4】図4は、37℃での溶液中のデキストラン−AmB結合体からのAmB放出を示す図である。AmB放出は、HPLCで評価した。各データ点は、2つの異なるバッチの平均値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び薬物の結合体であって、以下の:
(a)前記ポリマーの少なくとも1つのモノマー、
(b)前記モノマーの少なくとも1つの酸化形態(該酸化形態は、アルデヒド基を実質的に含まない)、及び
(c)前記酸化形態と薬物との少なくとも1つの結合体(ここで、該結合体は、一般式I:
【化1】

(式中、
R1は、存在しないか、又はH、OH及び−O−アルキル基から選択され、
R2は、N又はO原子により前記モノマーに結合されている(前記で定義されるような)薬物であり、N原子による該結合がC1−N単結合又は二重結合によるものであってもよく、
前記結合がC1−N二重結合によるものである場合、R1は存在せず、N原子がさらにプロトン化されてもよく、又はプロトン化されなくてもよく、
C1−N単結合によるものである場合、R1はHであり、該N原子は、1つ又は2つの水素原子によりプロトン化されてもよく、
R3は、存在しないか又はH、OH、−O−アルキル基、−N−アルキル基、アミノ酸、脂質、糖脂質、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖及びオリゴ糖から選択され、
R4は、存在しないか又は薬物、−O−アルキル基、−N−アルキル基、アミノ酸、脂質、糖脂質、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖及びオリゴ糖から選択され、
R3及びR4それぞれが、互いに独立して、O−アルキル基又はN−アルキル基である場合、該アルキル基は、それらが結合されるO又はN原子及びC2原子とともに、複素環系を形成してもよい)
を有する)
の組合せを含み、該組合せは、アルデヒド基を実質的に含まない水溶性ポリマー又は水分散性ポリマーを提供する、結合体。
【請求項2】
モノマー(a)〜(c)それぞれの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
(a)の前記モノマーは、前記結合体の重量の約10〜98%を構成する、請求項1に記載の結合体。
【請求項4】
前記酸化形態(b)は、前記結合体の重量の約10〜60%を構成する、請求項1に記載の結合体。
【請求項5】
前記薬物結合体(c)は、前記結合体の重量の約1〜50%を構成する、請求項1に記載の結合体。
【請求項6】
前記ポリマーは多糖であり、前記モノマーは単糖である、請求項1に記載の結合体。
【請求項7】
前記多糖は、デンプン、グリコーゲン、デキストラン、セルロース、プルラン、キトサン、アラビノガラクタン、ガラクタン、ガラクトマンナン及びグァーガムから選択される、請求項6に記載の結合体。
【請求項8】
前記酸化形態(b)は、前記モノマーの酸化、続く実質的にアルデヒドを含まないモノマーへのそれらの修飾により調製される開環形態である、請求項1に記載の結合体。
【請求項9】
前記薬物は、治療上活性な化合物である、請求項1に記載の結合体。
【請求項10】
前記活性な化合物は酸化感受性である、請求項9に記載の結合体。
【請求項11】
前記薬物は、ヒドロキシル化薬物及びアミノ化薬物から選択される、請求項10に記載の結合体。
【請求項12】
前記薬物は、ポリエン抗生物質、低分子量薬物、高分子量薬物、アミン薬物誘導体、ペプチド、ポリペプチド又はそれらの類縁体から選択される、請求項11に記載の結合体。
【請求項13】
前記低分子量薬物は、約2000ダルトン未満の分子量を有する、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
前記高分子量薬物は、約2000〜約6000ダルトンの分子量を有する、請求項12に記載の結合体。
【請求項15】
前記ヒドロキシル化薬物は、デキサメタゾン、ダウノルビシン、シタラビン、サリチル酸、サンタロール及びプロパノロールから選択される、請求項11に記載の結合体。
【請求項16】
前記ポリエン抗生物質は、ナイスタチン及びアンホテリシンB(AmB)から選択される、請求項12に記載の結合体。
【請求項17】
前記低分子量薬物は、5−アミノサリチル酸、アミノグルコシド抗生物質、ポリエン抗生物質、フルシトシン、ピリメタミン、スルファジアジン、ダプソン、トリメトプリム、マイトマイシン、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ポリミキシンB、プロパノロール、シタラビン及びサンタロールから選択される、請求項13に記載の結合体。
【請求項18】
前記アミン薬物誘導体は、アラニル−タキソール、トリグリシル−タキソール、アラニル−グリシル−デキサメタゾン、グリシル−デキサメタゾン及びアラニル−デキサメタゾンから選択される、請求項12に記載の結合体。
【請求項19】
前記ポリペプチドは、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ブラジキニン、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出因子(TRF)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、インスリン及びカルシトニンから選択される、請求項12に記載の結合体。
【請求項20】
前記R4は、存在しないか又はHであり、C1に結合される前記薬物のN原子はまた、C−N単結合又は二重結合によりC2にも結合されて、環構造を形成する、請求項1に記載の結合体。
【請求項21】
前記ポリマーに結合される前記薬物は、AmB、ドキソルビシン、マイトマイシンC、ポリミキシンB、パクリタキソール(paclitaxol)、ゲンタマイシン、デキサメタゾン、5−アミノサリチル酸及びソマトスタチンから選択される、請求項1に記載の結合体。
【請求項22】
前記薬物はAmBであり、前記結合は、イミン又はアミン結合である、請求項21に記載の結合体。
【請求項23】
前記R3はOHであり、R4はO−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項24】
前記R3はOHであり、R4は、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項25】
前記R3は存在せず、R4は、イミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項26】
前記R3はHであり、R4はO−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項27】
前記R3はOHであり、R4はO−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項28】
前記R3及びR4はそれぞれ、互いに独立してO−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項29】
前記R3は、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルであり、R4はO−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項30】
前記R3はHであり、R4は、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項31】
前記R3及びR4はそれぞれ、互いに独立して、アミン結合によりC2に結合されるN−アルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項32】
前記R3は存在せず、R4は、イミン結合によりC2に結合されるアミノ酸である、請求項1に記載の結合体。
【請求項33】
前記R3はHであり、R4は、アミン結合によりC2に結合されるアミノ酸である、請求項1に記載の結合体。
【請求項34】
前記アミノ酸はリシンである、請求項32又は33に記載の結合体。
【請求項35】
前記R3は存在せず、R4は=NCHCHOHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項36】
前記R3はHであり、R4は−NZCHCHOH(式中、ZはH又はアルキル基である)である、請求項1に記載の結合体。
【請求項37】
前記R3はOHであり、R4は−OCHCHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項38】
前記R3及びR4はそれぞれ、互いに独立して、下記特性:疎水性、親水性、酸性度、溶解性、分散性、化学反応性、標的組織への特異性、改良された治療活性及び特定の受容体又は生物学的活性部位に対する親和性のうちの少なくとも1つを前記結合体に付与する基である、請求項1に記載の結合体。
【請求項39】
前記基は、(1)コレステロール及びその誘導体、(2)グルコサミン、(3)アミノ酸、(4)二官能性分子及び(5)疎水基から選択される、請求項38に記載の結合体。
【請求項40】
前記ポリマーはデキストランであり、前記薬物はAmBであり、R4は=NCHCHOHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項41】
前記ポリマーはデキストランであり、前記薬物はAmBであり、R4は−NZCHCHOHであり、ZはH又はアルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項42】
前記ポリマーはデキストランであり、前記薬物はAmBであり、R4は−OCHCHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項43】
前記ポリマーはキトサンであり、前記薬物はAmBであり、R4は=NCHCHOHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項44】
前記ポリマーはキトサンであり、前記薬物はAmBであり、R4は−NZCHCHOHであり、ZはH又はアルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項45】
前記ポリマーはキトサンであり、前記薬物はAmBであり、R4は−OCHCHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項46】
前記ポリマーはアラビノガラクタンであり、前記薬物はAmBであり、R4は=NCHCHOHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項47】
前記ポリマーはアラビノガラクタンであり、前記薬物はAmBであり、R4は−NZCHCHOHであり、ZはH又はアルキルである、請求項1に記載の結合体。
【請求項48】
前記ポリマーはアラビノガラクタンであり、前記薬物はAmBであり、R4は−OCHCHである、請求項1に記載の結合体。
【請求項49】
請求項1に記載の結合体の調製方法であって、以下の:
(a)ポリマー及び薬物の未修飾水溶性結合体を供給すること(該ポリマーは、少なくとも1つのアルデヒド基を有し、該薬物は、イミン、アミン、アミド、エーテル及びカルボキシル結合から選択される結合により該ポリマーに結合される)、並びに
(b)前記未修飾結合体を、前記アルデヒド基に対する反応性を有し、且つ前記薬物又は前記結合に対して実質的に反応性を有さないか、又は低い反応性を有する作用物質と反応させること
を含み、それによりアルデヒド基を実質的に含まない結合体を得る、方法。
【請求項50】
前記作用物質は、500ダルトン未満の分子量を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記薬物と前記ポリマーとの間のイミン結合を還元する工程をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリマーは多糖である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記アルデヒド基を実質的に含まない結合体は、工程(a)の未修飾結合体に対して低減された毒性を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
請求項49〜53のいずれか1項に記載の方法により得られる結合体。
【請求項55】
請求項49〜53のいずれか1項に記載の方法により得ることができる結合体。
【請求項56】
複数のアルデヒド基を有する未修飾結合体を、前記複数のアルデヒド基それぞれをアミン、イミン、アミド、アセタール、ヘミアセタール、エーテル及びエステルから選択される基へ化学的に変換することが可能な試薬と反応させることにより調製される結合体。
【請求項57】
組成物の調製のための請求項1〜48のいずれか1項に記載の結合体の使用。
【請求項58】
前記組成物は医薬組成物である、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記組成物は抗菌性である、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
前記組成物は抗寄生虫性である、請求項58に記載の使用。
【請求項61】
前記組成物は抗癌性である、請求項58に記載の使用。
【請求項62】
請求項1〜48のいずれか1項に記載の結合体を含む組成物。
【請求項63】
医薬組成物である、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
担体をさらに含む、請求項62又は63に記載の組成物。
【請求項65】
抗菌性組成物である、請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
抗寄生虫性組成物である、請求項63に記載の組成物。
【請求項67】
抗癌性組成物である、請求項63に記載の組成物。
【請求項68】
請求項1に記載のポリマー及び薬物の結合体を含む医薬組成物であって、該薬物によって治療可能な疾患又は障害の治療のための医薬組成物。
【請求項69】
放出調節(ralase)配合物である、請求項62〜69のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
請求項1〜48のいずれか1項に記載の結合体及びポリアミンのヒドロゲル。
【請求項71】
ナノ粒子、ミセル分散液及びリポソームから選択される形態の請求項1〜48のいずれか1項に記載の結合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−508938(P2009−508938A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531888(P2008−531888)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001118
【国際公開番号】WO2007/034495
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508087446)ハダシット メディカル リサーチ サーヴィスィズ アンド ディベロップメント リミテッド (1)
【出願人】(508087457)イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー (1)
【Fターム(参考)】