治療薬の送達のため伝導性ポリマーを利用する医療デバイス
一態様によれば、本発明は、少なくとも1つのレザバーと、このレザバー内に配置された治療薬含有領域(140)と、伝導性ポリマーを含む電極(130)とを含む医療デバイスに関する。本発明のデバイスは、伝導性ポリマーの酸化状態が変化するとレザバーからの治療薬の放出速度が変化するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、参照によってその全体が本明細書に援用される、2008年6月20日に提出された米国仮特許出願第61/074,456号の利益を主張する。
(発明の分野)
本発明は、ヒト対象内に治療薬を送達するための医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
患者の体の上又は中への治療薬の送達は、現代医療業務で一般的である。治療薬のin vivo送達は、体内の標的部位に一時的又は永久的に設置し得る医療デバイスを用いて実行されることが多い。必要に応じて、これらの医療デバイスをそれらの標的部位に短時間又は長期間維持して、標的部位で治療薬を送達することができる。
【発明の概要】
【0003】
(発明の概要)
一態様では、本発明は、少なくとも1つのレザバー(reservoir)と、このレザバー内に配置された治療薬含有領域と、伝導性ポリマーを含んでなる電極とを含む医療デバイスに関する。本発明のデバイスは、伝導性ポリマーの酸化状態が変化すると、レザバーからの治療薬の放出速度が変化する(例えば、放出が始まる、増加する、減少する、終わる等)ように構成されている。
本発明の利点は、治療薬の送達を電気的に補助し、ひいては制御できる医療デバイスを提供し得ることである。
以下の詳細な説明及びいずれの請求項をも精査すれば、当業者には本発明のこれらの態様及び他の態様、実施形態並びに利点が容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1A】伝導性ポリマー電極が収縮状態になるようにバイアスがかけられている、本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図1B】図1AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図2A】伝導性ポリマー電極が拡張状態になるようにバイアスがかけられている、本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図2B】図2AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図3】本発明の代替実施形態による図1AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図4】本発明の別の代替実施形態による図1AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態のバルーンカテーテルのバルーン部分の概略図である。
【図6A】本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図6B】図6AのB−B線に沿った断面図である。
【図6C】図6AのC−C線に沿った断面図である。
【図7A】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図7B】この概略上面図のA−A線に沿った断面図が図7Aである。
【図8】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図9】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図11A】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図11B】この概略上面図のA−Aに沿った断面図が図11Aである。
【図12】本発明の別の実施形態のデバイスの一部の概略断面図である。
【図13A】本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図13B】図13AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図13C】伝導性ポリマー電極の形成前の図13Bの概略断面図に相当する。
【図14A】デバイスに治療薬を装填し、伝導性ポリマー電極の作動後の、図13Aのデバイスに相当する概略上面図である。
【図14B】図14AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図15】本発明の別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図である。
【図16A】本発明のさらに別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図であり、治療薬を装填した後かつ伝導性ポリマー電極の膨張前のデバイスを示す。
【図16B】治療薬をデバイス内に保持するように伝導性ポリマー電極の膨張後の図16Aのデバイスを示す。
【図16C】in vivoで伝導性ポリマー電極を収縮させて、デバイスから治療薬を放出できるようにした後の図16Bのデバイスを示す。
【図17A】本発明のさらに別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図であり、本発明の実施形態の医療デバイスを形成及び操作する方法を示す。
【図17B】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17C】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17D】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17E】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17F】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17G】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17H】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17I】図17Aと同様の概略断面図である。
【図18A】本発明の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図である。
【図18B】伝導性ポリマー電極形成前の図18Aの構造を示す概略断面図である。
【図18C】本発明の別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図である。
【図18D】図18Cの窪み形成材料150内のレザバーのエッチング前の図18Cの構造を示す概略断面図である。
【図19A】上側伝導性ポリマー電極が収縮し、下側伝導性ポリマー電極が拡張するように上下の伝導性ポリマー電極にバイアスをかけた後、かつレザバーに治療薬を装填した後の図18Aのデバイスの概略断面図である。
【図19B】この概略上面図のA−A線に沿った断面図が図19Aである。
【図20A】上側伝導性ポリマー電極が拡張し、下側伝導性ポリマー電極が収縮するように上下の伝導性ポリマー電極にバイアスをかけた後の図19Aのデバイスの概略断面図である。
【図20B】この概略上面図のA−A線に沿った断面図が図20Aである。
【図21A】本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図21B】図21AのB−B線に沿った概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(詳細な発明)
本発明の種々の態様及び実施形態の以下の詳細な説明を参照すれば、本発明のさらに完全な理解が得られる。以下の本発明の詳細な説明は本発明を例証するが、本発明を限定する意図ではない。本発明の範囲は、添付のいずれの請求項によっても定義される。
一態様によれば、本発明は、少なくとも1つのレザバーと、このレザバー内に配置された治療薬含有領域と、伝導性ポリマーを含んでなる電極(本明細書では「伝導性ポリマー電極」とも称する)とを含む医療デバイスに関する。本発明のデバイスは、伝導性ポリマーの酸化状態が変化すると、レザバーからの治療薬の放出速度が変化する(例えば、放出が始まる、放出が増加する、放出が減少する、放出が終わる等)ように構成されている。
本発明のデバイスは、典型的に、酸化状態の変化の結果としての伝導性ポリマー電極の変化(膨張、収縮、疎水性/親水性の変化など)が放出速度の変化をもたらすように構成されている。多くの例では、伝導性ポリマーは、レザバー(特定の実施形態ではレザバーの口を含む)内に位置づけられる。例えば、伝導性ポリマーは、レザバーの内面の少なくとも一部を画定し得る(例えば、特定の実施形態では口を含め、レザバーの内部を形成又は裏打ちする)。
【0006】
本発明から利益を得る医療デバイスは多く、例えば、下記デバイスから選択され得る:無傷の皮膚及び破損した皮膚(創傷など)に治療薬を送達するためのパッチ、移植可能又は挿入可能医療デバイス、例えばカテーテル(例えば、腎臓又は血管カテーテル、例えばバルーンカテーテル)、バルーン、ガイドワイヤー、フィルター(例えば、大静脈フィルター及び末梢保護デバイス(distil protection device)用のメッシュフィルター)、ステント(冠血管ステント、末梢血管ステント、大脳、尿道、尿管、胆管、気管、胃腸管及び食道ステントなど)、ステントカバー、ステント移植片(stent grafts)、血管移植片、腹部大動脈瘤(AAA)デバイス(例えば、AAAステント、AAA移植片)、血管アクセスポート、塞栓形成デバイス、例えば脳動脈瘤フィラーコイル(例えばGuglilmi取り外し可能コイル及び種々の他の金属コイル)、心筋栓、中隔欠損閉鎖デバイス、移植可能パッチ、デバイスに遠位の動脈部分を治療するため動脈に設置するのに適応した薬物貯蔵所(depot)、ペースメーカー及びペースメーカーリード、除細動リード及びコイル、神経刺激リード、心室補助デバイス(左心室補助心臓及びポンプなど)、全人工心臓、心臓弁、血管弁、吻合クリップ及びリング、人工内耳、組織充填デバイス、in vivo組織再生、特に脊髄などの神経路再生用の組織操作スキャフォールド、関節プロステーシス、脊椎円板及び神経核、整形外科用プロステーシス、例えば骨移植片、骨プレート、ヒレ状器官(fin)及び融合デバイス、整形外科用固定デバイス、例えば足首、膝、及び手領域のインターフェアレンススクリュー(interference screw)、骨折固定用のロッド及びピン、頭蓋顎顔面(craniomaxillofacial)修復用のスクリュー及びプレート、歯科用インプラント、生検デバイス、並びに体内に移植又は挿入されて治療薬を放出する多くの他のデバイス。
【0007】
本発明の医療デバイスは、いずれかの組織若しくは器官、例えば、以下:腫瘍;器官、例えば心臓、冠血管及び末梢血管系(全体で「脈管構造」と称する)、泌尿生殖器系(腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、腟、子宮及び卵巣など)、目、肺、気管、食道、腸、胃、脳、肝臓及び膵臓、骨格筋、平滑筋、乳房、皮膚組織、及び軟骨組織などの診断のため、全身治療のため、又は局所治療のために使用する医療デバイスを包含する。本明細書で使用する場合、「治療」は、疾患若しくは状態の予防、疾患若しくは状態と関連する徴候若しくは症状の軽減又は排除、或いは疾患若しくは状態の実質的又は完全な排除を意味する。典型的対象(「患者」とも称する)は脊椎動物、さらに典型的には哺乳動物対象、なおさらに典型的にはヒト対象である。
上述したように、一態様では、本発明は、少なくとも1つのレザバーと、このレザバー内に配置された治療薬含有領域と、伝導性ポリマーを含んでなる電極(本明細書では「伝導性ポリマー電極」とも称する)とを含む医療デバイスに関する。
本発明のデバイスでは、治療薬含有領域が伝導性ポリマー電極とは異なることに留意されたい。しかしながら、一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極が治療薬を含んでよく、他の実施形態では、伝導性ポリマー電極が治療薬を含まない。
【0008】
本発明のデバイスは、伝導性ポリマーの酸化状態が変化すると、レザバーからの治療薬の放出速度が変化する(例えば、放出が始まる、放出が増加する、放出が減少する、放出が終わる等)ように構成されている。さらに詳細には、本発明のデバイスは、酸化状態の変化の結果としての伝導性ポリマー電極の変化(例えば、膨張、収縮、疎水性/親水性の変化など)が放出速度の変化をもたらすように構成されている。
伝導性ポリマー電極内の伝導性ポリマーの酸化状態は、伝導性ポリマー電極と追加電極(本明細書では「対電極」とも称する)との間に適切な電位を加えることによって変化し得る。このプロセスでは以下の要素を一般的に利用する:(a)伝導性ポリマー電極、(b)対電極、(c)伝導性ポリマー電極と対電極の両方と接触する電解質、及び(d)電位源(「電源」とも称する)。
伝導性ポリマーの表面の少なくとも一部と接触する電解質は、イオンの流れを可能にするので、イオンのソース/シンクとして作用する。例えば、電解質は、イオンの動きを可能にする限り、液体、ゲル、又は固体であってよい。本発明の種々の実施形態では、生理液を電解質として使用する。
対電極は、医療デバイスの上又は中に配置してよく、或いは対電極が別のデバイスの形態であってよい。いずれの適切な伝導性材料からも対電極を調製することができる。対電極用の伝導性材料の例として、とりわけ以下の適切な材料が挙げられる:伝導性ポリマー、純粋金属及び合金(例えば、その高い伝導性、酸化耐性、及び蛍光透視などの間にデバイスの可視性を助長し得る放射線不透過性のため、金、白金、ステンレススチール等、或いは最終的にin vivo酸化するであろう組織内に放置できるマグネシウム又はマグネシウム合金)、及び伝導性カーボン。対電極は無数の形状をとり得、とりわけ層、ロッド、ワイヤー、チューブ、ブレード、及び格子の形状が挙げられる。対電極と伝導性ポリマー電極との間の接触面積を最大にする設計は、電荷移動を高め、活性化時間を減少させ得る。
【0009】
特定の実施形態では、基準電極(例えば、銀/塩化銀電極)の助けを借りて、伝導性ポリマーの酸化状態を変える。利用する場合、対電極と同様に、基準電極を医療デバイスの上又は中に配置してよく、或いは基準電極が別のデバイスの形態であってよい。一実施形態では、E.W.H. Jager et al., Sensors and Actuators B 56 (1999) 73-78に記載のプロセスを利用して、医療デバイス上にAg/AgCl基準電極を形成することができる。詳細には、デバイス上(例えば、金導体層上)にAg層を沈着させた(例えば、電気メッキ又は別の沈着プロセスによって)後、例えば、KCl電解質溶液に浸漬させながら電極に適切な電位を加えることによって(適切な対電極を用いて)、電気化学的にAg層を部分的にAgClに変換させることによって、Ag/AgCl基準電極を形成することができる。
電力源は、例えば、本発明の医療デバイス内に設けてよく、或いは本発明の医療デバイスに接続される(例えば、絶縁導電線によって)別のデバイスの形態であってよい。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極、対電極及び/又は基準電極は、電源に容易に接続できる(例えば、適切な電気的結合部品、例えば、栓、ソケット等で終わる絶縁導電線によって)ように構成されている。
【0010】
本発明の特定デバイス、特にインプラントでは、電力を無線システムの形態で供給してよい。例えば、ダイオードブリッジを有する伝導コイルを含む回路(一端が1つ以上の伝導性ポリマー電極に接続され、他端が1つ以上の対電極に接続される)をデバイスに設けてよい。外部電力送信器、例えばRF送信器を用いて該システムを活性化することができる。例えば、William H. Moore et al., IEEE Trans Biomed Eng. 2006 August ; 53(8): 1705-1708を参照されたい。適切な周波数は、例えば、1MHz〜20MHzの範囲である。特定の実施形態では、追加の電子部品、例えば基準電極及び/又は電圧調節デバイスを含めてよい。この目的のために使用できる非常に有用な部品は、ツェナーダイオード(Zener diode)である。ツェナーダイオードは、回路を通した電圧を調節するために広く使用されている。可変電圧源(例えば、前述したようなコイル/ダイオード配列)が逆方向にバイアスされるように可変電圧源を並列に接続した場合、電圧がダイオードの逆方向ブレークダウン電圧に達すると、ツェナーダイオードが電流を導き始める。その時から、ツェナーダイオードは電圧をその値に維持する。換言すれば、伝導コイルから可変電圧を受けると、治療薬の放出を調節する電極を通した固定電圧を確保することができる。利用し得る追加の電子部品として、検出デバイス(例えば、電流及び/又は電圧検出デバイス)及び送信器が挙げられる。該部品を用いると、外部電力送信器に値(例えば、電流及び/又は電圧値)伝え戻して、該値を調整することができる。このような実施形態は、大型インプラント(例えば、心臓弁、組織充填及び再生デバイス等)に特に適している。
【0011】
いずれの適切な伝導性ポリマーを用いて伝導性ポリマー電極を形成してもよい。既知の伝導性ポリマーとして、ポリピロール及びその誘導体とコポリマー、ポリチオフェン及びその誘導体とコポリマー、例えばポリ(3-アルキルチオフェン)及びポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等、ポリアニリン及びその誘導体とコポリマー、ポリ(p-フェニレンビニレン)及びその誘導体とコポリマー、ポリスフホン及びその誘導体とコポリマー、並びにポリアセチレン及びその誘導体とコポリマーが挙げられる。ポリピロールは、生理的条件下でこれらのポリマーの中でより安定な1つである。ポリピロールの既知誘導体として、とりわけ以下の置換ポリマーが挙げられる:ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(N-ブチルピロール)、ポリ[N-(2-シアノエチル)ピロール]、ポリ[N-(2-カルボキシエチル)ピロール]、ポリ(N-フェニルピロール)、ポリ[N-(6-ヒドロキシヘキシル)ピロール]、及びポリ[N-(6-テトラヒドロピラニルヘキシル)ピロール]。
上記及び他のモノマーから(例えば、ピロールモノマー、チオフェンモノマー、アニリンモノマー、p-フェニレンビニレンモノマー、スルホンモノマー、アセチレンモノマー等から)伝導性ポリマーを形成することができる。例えば、ピロールコポリマーは、例えば、とりわけ下記モノマー:ピロール、1-(2-シアノエチル)ピロール、1-フェニルピロール、3-(酢酸)ピロール、1-(プロピオン酸)ピロール、及びそのペンタフルオロフェノールエステルの2種以上から形成され得る。具体例として、とりわけ、例えばポリ[ピロール-co-3-(酢酸)ピロール]、ポリ[ピロール-co-1-(プロピオン酸)ピロール]、ポリ[ピロール-co-1-(プロピオン酸)ピロールペンタフルオロフェノールエステル]、ポリ[ピロール-co-1-(2-シアノエチル)ピロール]及びポリ(ピロール-co-1-フェニルピロール)が挙げられる。
【0012】
伝導性ポリマーは、典型的にその中性状態で半導体である。しかし、ポリマーが酸化又は還元されて荷電状態になると(例えば、ポリピロールは、酸化されると正に荷電され、還元されると中性である)、電気伝導性が半導体の領域(regime)から半金属の領域に変化すると理解される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、酸化及び還元が電荷の不均衡を引き起こし、順次、該材料を出入りするイオンの流れをもたらすと考えられる。これらのイオンは典型的にポリマーに隣接するイオン伝導性媒体から該材料物質に入り、該材料から出てイオン伝導性媒体に入る。一般的に、ポリマーを出入りするイオンの質量移動によって、伝導性ポリマーに寸法変化がもたらされると考えられる。例えば、拡張は、一部の伝導性ポリマーでは、鎖間へのイオン挿入に起因すると考えられ、他の伝導性ポリマーでは、鎖間の反発が主な作用であると考えられる。メカニズムにかかわらず、このイオンの動きがポリマーの拡張又は収縮をもたらし、有意な応力と歪みを与え得る。例えば、E. Smela et al., “Volume Change in Polypyrrole Studied by Atomic Force Microscopy,” J. Phys. Chem. B, 105 (2001) 9395-9405は、ポリピロールでは、酸化状態に比べて還元状態で35%以上フィルム厚が増えることを報告している。
伝導性ポリマーの酸化還元の切替えが、いくつかの異なった酸化状態に到達できるようにする。これらの酸化還元状態は、電気化学的切替え中にポリマーを出入りする、電荷均衡を保つ対イオン(多くの場合ドーパントイオンと呼ばれる)によって安定化される。具体例として、例えば、電解重合中に、酸化され、正に荷電した伝導性ポリマー、例えばポリピロールと、電荷均衡を保つ種々のアニオンを関連付けることができる。しかし、ポリマーを還元/中和することによって、正味の負電荷がポリマー内に発生する。
【0013】
ドーパントアニオンが実質的に可動性である場合(例えば、アニオンが小型分子である場合)、ポリピロールの還元/中和に基づいた正味の負電荷の発生は、主にポリマーから隣接するイオン伝導性媒体へのアニオンの排出をもたらし、ポリマーを縮ませる。ポリピロールの形成で常用される可動性イオンの例として、過塩素酸(ClO4-)、BF4-、Br-、Cl-、NO3-、及びI-が挙げられる。生理学的観点から、塩素イオン等の天然に存在するイオン(体内に)が好ましいであろう。
ドーパントアニオンが実質的に不動性であれば(例えば、アニオンが大型分子である)、ポリピロールの還元/中和に基づいた正味の負電荷の発生は、主に、隣接するイオン伝導性媒体からのカチオンの流入をもたらし、ポリマーを拡張させる。ポリピロールの形成で常用される実質的に不動性のイオンの例として、ドデシルベンゼンスルホナート、ポリビニルスルホナート、ポリ-4-スチレンスルホナート、ポリアスパラギン酸、及びポリグルタミン酸が挙げられる。可動性カチオンの例として、天然に存在する(体内に)カチオン、例えば、とりわけNa+及びK+が挙げられる。
【0014】
ドデシルベンゼンスルホナートは、親水性(荷電した)末端と疎水性(炭化水素)末端とを有する界面活性剤であることを注記する。ドデシルベンゼンスルホナートをドーパントイオンとして使用するポリピロールの還元/中和は、親水性の増加をもたらすことが観察されており(ポリマーバルクから表面(すなわち、イオン伝導性媒体との界面)への界面活性剤の荷電末端の反発の結果である仮定されている)、このようにして親水性荷電末端基の濃度が該表面で増加する。逆に、ポリピロールの酸化は、疎水性の増加を引き起こすことが観察されており(界面活性剤の荷電末端のポリマーバルクへの離脱の結果であると仮定されている)、該表面での界面活性剤の疎水性末端の濃度の増加につながる。メカニズムにかかわらず、ドデシルベンゼン-スルホナート-ドープドポリピロールは、還元/中和によって膨張し、親水性が高くなることが観察され、酸化によって収縮し、疎水性が高くなることをが観察される。例えば、J. Causley et al., “Electrochemically-induced fluid movement using polypyrrole,” Synthetic Metals 151 (2005) 60-64を参照されたい。
ドーパントアニオンが適度に可動性である場合(すなわち、中間サイズのアニオン、例えばトシラートアニオン等を利用する場合)、酸化還元処理中にカチオンとアニオンの両イオンの運動が観察されている(K. Naoi et al., J. Electrochem. Soc., Vol. 138, No. 2, February 1991, pp. 440-445)。
【0015】
電解重合によって種々の伝導性ポリマーを形成することができる。例えば、適切なアニオン材料(例えば、とりわけ、上述したアニオンドーピング材料の1種)の存在下でピロールモノマーを電解重合させ得る。電解重合を実施するための典型的器具として以下のものが挙げられる:それぞれ電解質(例えば、ピロール及び適切なドーピングアニオンを含む溶液)で分離されたアノード(例えば、その上で電解重合が起こる伝導性金属表面)、カソード(例えば、金属の対電極)、及び多くの場合、基準電極、並びに種々の電極で電圧/電流を監視/設定するポテンシオスタット。種々の電気化学的条件下で電解重合を行なうことができ、該条件として、とりわけ以下の条件が挙げられる:(a)一定電流(定電流)、(b)一定電圧(定電位)、(c)電流走査/掃引、例えば、単一又は複数の走査/掃引によって、(d)電圧走査/掃引、例えば、単一又は複数の走査/掃引によって、(e)電流矩形波又は他の電流パルス波形、(f)電圧矩形波又は他の電圧パルス波形、及び(g)異なる電流及び電圧パラメーターの組合せ。
さらに伝導性ポリマーについては、例えば、Atanasoskaらの出願公開第US2006/0184092号及びWeberらの出願公開第US2007/0239256号、並びにそれらの中で引用されている文献を参照されたい。
【0016】
上述したように、本発明の一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極が治療薬を含み得る。具体例として、伝導性ポリマー電極は、伝導性ポリマーの電着中に電極に組み入れられるアニオン性治療薬を含み得る。別の具体例として、小型の可動性アニオンを伝導性ポリマーの電着中に電極に組み入れることができる。そして、アニオン性治療薬を含む電解質と接触させながら伝導性ポリマーを複数サイクルにわたって酸化又は還元すると、沈着したままのアニオンとアニオン性治療薬との間のアニオン交換をもたらす。別の具体例として、大型の不動性アニオンを伝導性ポリマーの電着中に電極に組み入れて、引き続きカチオン性治療薬を含む電解質と接触させながら還元することができる。還元によって、カチオンが伝導性ポリマーに引き込まれる。
ここで、本発明の種々の実施形態について述べる。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーが膨張すると(例えば、伝導性ポリマーの性質に応じて、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの容積が減少し、治療薬をレザバーから追い立てるように配置される。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーが収縮すると(例えば、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの容積が減少し、治療薬をレザバーから追い立てるように配置される。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーの親水性/疎水性が変化すると(例えば、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)治療薬がレザバーから追い立てられるように配置される。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーが収縮すると(例えば、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの口が拡大し、レザバーからの治療薬の送達を開始するか又は送達速度を高めるように配置される。一部の実施形態では、前記メカニズムの2つ以上を利用して、レザバーからの治療薬の送達速度を変更する。
ここで、伝導性ポリマー電極がレザバー内に、伝導性ポリマーが膨張すると、レザバーの容積が減少し、治療薬をレザバーから追い立てるように配置されるいくつかの実施形態について述べる。これらの特定の実施形態では、伝導性ポリマーがレザバーの境界(壁)を少なくとも部分的に画定する(例えば、レザバーが伝導性ポリマー内に形成される、伝導性ポリマーの層がレザバーを裏打ちする等)。
【0017】
種々の実施形態では、本発明の医療デバイスは、多くの他の可能性のうち、例えば、ポリマー基体材料、金属基体材料、又は非金属基体材料(例えばセラミック材料、炭素ベース材料、若しくはケイ素ベース材料)であってよい、基礎をなす基体材料を含む。
具体例として、ある特定の実施形態では、本発明の医療デバイスは、治療薬装填バルーン表面を有するバルーンである。このような治療薬装填バルーン表面用の基体材料として、非柔軟基体材料(例えば、金属材料又は非柔軟ポリマー材料、例えばポリエーテル-ポリアミドブロックコポリマー、例えばElf AtochemからPEBAXとして入手可能なポリ(テトラメチレンオキシド)-ポリアミド-12ブロックコポリマー)及び柔軟基体材料(例えば、柔軟ポリマー材料、例えばケイ素ゴム、ポリウレタン、ラテックス又はポリイソプレン)が挙げられる。この点で、本発明は、柔軟バルーン、非柔軟バルーン、ファイバーバルーン、編み組合み(braided)バルーン及び/又はカッティングバルーンといった種々多様のバルーンカテーテルと併せて使用することができる。(本発明の特定実施形態では、カッティングバルーン上のブレードを対電極として使用し得ることに留意されたい。)
以下に述べることから分かるように、本発明の多くの実施形態では、本発明の医療デバイスの上又は中に層の形態で材料を設ける。本明細書で使用する場合、ある材料の「層」とは、当該材料の長さと幅の両方に比べてその厚さが小さい(例えば、25%以下)である当該材料の部分である。本明細書で使用する場合、層は平面である必要はなく、例えば、基礎をなす基体の輪郭を呈する。層は不連続(例えば、パターン化された)であり得る。層は積層し得る。本明細書では、「フィルム」、「層」及び「コーティング」等の用語を相互交換可能に使用し得る。
【0018】
次に図面を参照する。図1Aは、本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーン表面の一部など)の概略上面図である。図1Bは、図1AのB−B線に沿った概略断面図である。示したデバイスは、基体110(例えば、柔軟又は非柔軟基体材料など)を含み、その中に種々の窪み(例えば、示した実施形態では溝)が形成されている。基体110上には金属層120(例えば、電着、無電解沈着、又はPVD沈着された金層、白金層など)が配置され、その上に伝導性ポリマー電極130(例えば、適切なアニオンでドープした電着ポリピロール層)が設けられている。金属薄層120が伝導性ポリマー電極130の電気接点として作用する。結果として生じる構造の溝(本明細書では一般的にレザバーと称する)が治療薬含有材料140で満たされる。レザバー内に治療薬含有材料を装填する非常に好適な方法は、インクジェットプリンター又はピコリットルディスペンサーを利用する。このようなデバイスは、それぞれ個々のレザバー内に沈着される治療薬含有材料の量を定義できるという利点をも有する。
伝導性ポリマー電極130と対電極との間に配置された適切な電解質(例えば、血液などの生理液、図示せず)の存在下で伝導性ポリマー電極130と対電極(図示せず)との間に適切な電位を加えると、伝導性ポリマー電極130内の伝導性ポリマーがその酸化状態を変え、結果として図2A及び2Bに示すように伝導性ポリマー電極130が膨張する。この膨張(図2B中、矢印で示す)が、レザバー内の治療薬含有材料140の一部の排出につながる。
例えば、伝導性ポリマー電極130は、ドーピング材料用の小型アニオンと共に電着され、次いで該イオンを還元及び排出した後に治療薬含有材料140を装填したポリピロールを含んでよい。デバイスを対象の体内に挿入すると、ポリピロールが酸化され、結果として周囲の生理液からのアニオン(例えば、Cl-など)の流入と伝導性ポリマー電極130の膨張をもたらす。
【0019】
別の例として、伝導性ポリマー電極130は、ドーピング材料用の大型の実質的に不動性のアニオンと共に電着され、治療薬含有材料140の装填前に還元されていないポリピロールを含んでよい。デバイスを対象の体内に挿入すると、適切な電位の適用によってポリピロールが還元され、結果として周囲の生理液からのカチオン(例えば、Na+、K+など)の流入をもたらす。
上述したように、ドデシルベンゼンスルホナート等のアニオン性界面活性剤でドープされたポリピロールは、還元状態で親水性が高くなることが分かっている。治療薬含有材料が疎水性(例えば、疎水性溶媒中のパクリタキセル又は別の疎水性薬物など)である場合、伝導性ポリマー電極130の親水性の増加は、親水性-疎水性反発に基づいた治療薬含有材料の排出を補助し得る。
図1A、1B及び2A、2Bに示す本発明の実施形態では、基体材料が非伝導性であり、電解重合前に伝導層を加える必要がある。他方で、基体が伝導性であれば、伝導性ポリマーを基体上で直接電解重合させることができる。
上記実施形態について多くの他の変形も可能である。例えば、図3は、図1AのB−B線に沿った代替断面である。図1Bの断面と同様に、図3の断面は、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、及び治療薬含有材料140を含む。しかし、窪み(例えば、溝など)が基体材料内に形成されている図1Bの断面と異なり、図3の断面の窪みは、伝導性ポリマー電極130内に形成されている。
【0020】
図4は、図1AのB−B線に沿った別の代替断面である。図1Bの断面と同様に、図4の断面は、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、及び治療薬含有材料140を含む。しかし、図1Bの断面と異なり、窪み(例えば、溝など)を作り出すため、基体110上にレザバー形成材料の追加層150が配置されている。追加層の材料150は、基体110を形成する材料と同一であってよく、或いは追加層が異なる材料を形成してよい。異なる材料は、例えば、電気活性ポリマーの硬度より高い硬度を有するポリマーであってよい。
本発明の特定の実施形態では、レザバー内の治療薬含有材料は、治療薬含有材料の早過ぎる放出を防止するためのバリア層で覆われている。このような実施形態は、例えば、治療薬含有材料が非常に可溶性である場合及び/又は体の上若しくは中への医療デバイスの設置と、治療薬の放出との間に実質的な時間があることが望ましい場合に役立ち得る。例えば、図12は、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、及び治療薬含有材料140を含む点で図1A、1Bのデバイスと同様のデバイスである。しかし、図1A、1Bのデバイスと異なり、図12のデバイスは、治療薬含有窪みの口を覆うバリア層170をさらに含む。
バリア材料の例として、(a)伝導性ポリマー電極を拡張/膨張させるために使用する電解質イオンに透過性であるが、治療薬には透過性でない当該材料及び(b)伝導性ポリマー電極を拡張/膨張させるために使用する電解質イオンと治療薬の両方に透過性である当該材料が挙げられる。該材料の具体例として高分子電解質が挙げられる(好ましくは、高分子電解質と薬剤との間の静電相互作用を回避するため無電荷治療薬と併せて使用する)。例えば単一の高分子電解質層(例えば、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアリルアミドヒドロクロリド(PAH)、ヘパリン等)又は交互電荷の複数層(例えば、PAH\PAA、キトサン\ヘパリンなど)を表面に適用してよい。疎水性薬剤のため、フッ素化高分子電解質、例えばNa+イオン、
【0021】
【化1】
【0022】
、及びポリ(ビニルピリジン)から合成されたポリカチオン及びフッ素化アルキルヨージド、
【0023】
【化2】
【0024】
を利用し得る(R.M. Jisr et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 782-785)。
別の具体例では、マクロ多孔性膜をデバイスに適用し得る。この点で、ナノメートル〜数百ミクロンの範囲の制御された孔径を有するハニカムパターン化フィルムとして種々のタイプのポリマーを二次加工することができる(L. Wang et al., “Formation of ordered macroporous films from fluorinated polyimide by water droplets templating,” European Polymer Journal 43 (2007) 862-869)。電解質イオンも治療薬も両方とも該細孔を通って拡散できるが、治療薬のバルクは伝導性ポリマー電極の拡張/膨張の時間までレザバー内に残ると予測される(デバイスの導入と電極の活性化との間の時間が相対的に短いと仮定して)。
バリア部材のさらなる例として、薬物送達に望ましい位置にデバイスを移植/挿入するために利用するフレームを経時的に溶解する材料層が挙げられる。該材料の例として、とりわけマンニトール及びポリエチレングリコールが挙げられる。
なおさらなる例では、pH感受性材料をバリア部材として利用して、デバイスのレザバーからの治療薬の早過ぎる放出を防止することができる。例えば、生理的pHでは溶けないが、わずかに酸性のpH又はわずかに塩基性のpHでは溶ける材料をこの目的に利用し得る。近傍電極、例えば、レザバー内の電極又はデバイスの表面上のバリアに隣接する電極に、局所環境のpHを変えるための適切なバイアスを与えて、該材料を溶かすことができる。例えば、適切なアノードバイアスを加えて電解生成酸を供給するか又は適切なカソードバイアスを加えて電解生成塩基を供給し得る。一部の例では、このような材料を架橋して、pH膨張性及びpH収縮性ゲルを与えることができる。該材料の例として、生理的pHでは不溶性であり、わずかに酸性のpHで可溶性になる材料、例えば、わずかに酸性のpHでプロトン化されて荷電基(例えば、アンモニウム等)に変換され、該材料を水/血液に可溶性にするようになる官能基(例えば、アミン等)を有する材料が挙げられる。わずかに酸性のpHで可溶性になる材料の1つの具体例はキトサンである。該材料の例としてさらに、生理的pHで不溶性であり、わずかに塩基性のpHで可溶性になる材料、例えば、わずかに塩基性のpHで脱プロトン化されて荷電基(例えば、-COO-等)に変換され、該材料を水/血液に可溶性にするようになる官能基(例えば、-COOH等)を有する材料が挙げられる。
【0025】
前記図面には対電極を示していない。前述したように、一部の実施形態では対電極を別のデバイスの形態で供給することができる。他の実施形態では、1つ以上の対電極を医療デバイスの上又は中に配置してよい。
例えば、図5は、本発明のバルーンカテーテル500のバルーン部分の概略図である。バルーンカテーテル500はバルーン505を含む。バルーン505の円筒部分上には、本明細書の他のところに記載のもの(少なくとも1つのレザバー、このレザバー内に配置された治療薬含有領域、及び伝導性ポリマー電極を含む)と同様の治療薬送達領域510が配置されている。バルーン505の錐体部分上に対電極520(例えば、金など)が配置されている。
他の実施形態では、治療薬送達領域内に1つ以上の対電極が組み込まれている。例えば、図6Aは本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーン表面の一部)の概略上面図である。図6Bは、図6AのB−B線に沿った概略断面図である。上記図4と同様に、図6Bは、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、治療薬含有材料140、及び窪みを作り出すレザバー形成材料の層150を含む。図6Cは、図6AのC−C線に沿った概略断面図であり、基体110の上に配置されたレザバー形成材料の層150の上に配置された対電極160を示す(図6Cでは、層150がなくても可能であろう(基体110が非伝導性である限り))。対電極160に加えて(又は対電極160に代えて)、図6A〜6Cのデバイスが基準電極(例えば、上述した電極と同様のAg/AgClクロリド電極)を備えてよい。
対電極が別のデバイス上に位置する場合、医療デバイスの、レザバーを含む特有の領域上の伝導性ポリマーの酸化状態を優先的に変えて、医療デバイスの特定領域から治療薬を優先的に放出するが、他の領域では放出しないようにすることができる。例えば、バルーン表面の円筒部分を完全に覆うレザバー/貯蔵所を有する血管形成バルーンシステムを、第1ガイドワイヤーに沿って該脈管構造の分岐部の主分岐中へ前進させたいことがある。分岐部の側分岐内にある別のガイドワイヤー上に異なる対電極デバイスを配置してよい。バルーン上の対電極と伝導性ポリマー電極に適切なバイアスを与えると、側分岐の近傍のレザバーが、側分岐に対抗するレザバーより早く活性化される(電流分布効果のため)。
【0026】
別の例として、インプラントを移植した後、該デバイスの表面の特有領域のみから治療薬を放出させることができる。例えば、医療デバイスの、組織の再生がデバイスの他の領域に比べて緩徐に進行している領域から優先的に治療薬を放出させたいことがある。例えば、その遅い再生領域の近傍に対電極(例えば、先端が絶縁されていない絶縁伝導針など)を設置して、そこで一定量の治療薬を放出させることができる。レザバー間で内部接続させることによって、デバイス内の残存薬物量をレザバー間で均等にすることができる。
組織再生材料の例として、とりわけ、例えば、成長因子刺激ホルモン及び因子、例えばプロゲステロン、エストロゲン、メチル-プレドニゾロン、トリアムジノロン-アセタト、コルチコステロイド、インスリン、PDGF(血小板由来成長因子)、プルプリン及びアクチビンが挙げられる。成長因子のさらなる例として、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、骨形成タンパク質(BMP)、組換えヒト骨形成タンパク質(rhBMP)、上皮成長因子(EGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子I(IGF-I)、神経成長因子(NGF)、形質転換成長因子(TGF)及び血管内皮成長因子(VEGF)が挙げられる。
【0027】
上記から分かるように、本発明の種々の実施形態は、医療デバイス表面における窪みの形成に関与し、窪みは最終的に治療薬のレザバーを形成する。上記例では溝を示したが、多種多様な形状と大きさで窪みを作り出すことができる。窪みのさらなる例として、多孔性基体中の細孔も挙げられる。例として、その横の広がりが円形、多角形(例えば、三角形、四辺形、五辺形など)である細孔、並びに種々の他の規則的及び不規則的な形状及び大きさの細孔が挙げられる。無限に近い種々の配列で複数の窪みを設けることができる。溝には、単純な線形溝、波形溝、方向が角変化する線形セグメントから形成される溝(例えば、ジグザグ溝)、及び種々の角度で交わる線形溝網目構造、並びに他の規則的及び不規則的溝構造が含まれる。窪みは、本発明の特徴をもたらすいずれの適切な大きさのものであてもよい。例えば、本発明の医療デバイスは典型的に、その最小横寸法(例えば、幅)が10mm(10000μm)未満、例えば、10000μm〜1000μm〜100μm〜10μm〜1μm〜100nm又は100nm未満の範囲である。
一定の実施形態では、最小横寸法(例えば、幅)が約1μm〜10μmである。例えば、ポリピロールでは、酸化状態に比べて還元状態で35%以上フィルム厚が増えると報告していることに加えて、E. Smelaら(前出)は、最高の変化はフィルム厚に左右され、1.5μm近傍のフィルムが最大の歪みを受けることをさらに観察した。
【0028】
窪み(例えば、細孔、溝など)を形成するための技法の例には、材料が、形成されたままの窪みを含む方法も含まれる。これには、種々の突出部を備えてよい型が、問題の基体を鋳造した後に、該材料内に窪みを作り出す成形方法が含まれる。これらの技法はさらに、発泡に基づいた技法のような、それによって多孔性材料を形成する方法を包含する。適切なプロセス(例えば、溶解、エッチング等)を用いて多成分材料から一成分を除去することによって、多孔性材料を形成することもできる。1つの具体例として、多孔性ポリピロール層は、ポリピロール電解重合中にシリカを組み入れる(例えば、負に荷電したシリカ粒子を電気泳動によって組み入れる)ことによって形成され得る。そして、例えば、L. Hao et al., Synthetic Metals, 139(2), 2003, 391-396の方針に従って、ポリピロールからシリカ粒子を除去することができる。
ポリピロールを形成する方法のさらなる例として、ピロールと、電解質としても界面活性剤としても機能する物質(例えば、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩)とを含む溶液からポリピロールを電解重合することができる。電気化学的バイアスの制御下での該試薬を用いた界面活性剤媒介成長は、ミセル周囲のピロールの電気化学的重合に帰するマイクロ/ナノ構造(カップ/ボウル様容器を含め)の合成につながると報告されている(S. Gupta et al., “Spherical Molecular Containers of Polypyrrole: From Discovery to Design to Drug Delivery Applications,” 10th Annual NSTI Nanotech, The Nanotechnology Conference and Trade Show, Santa Clara, May 22, 2007)。
【0029】
窪みを形成するための技法の例はさらに、直接除去並びに除去すべきでない材料を保護するためにマスキングを利用するマスクに基づいた除去法を包含する。直接除去法は、材料を堅い工具と接触させて材料を除去する方法(例えば、マイクロドリリング、マイクロ機械加工など)及び堅い工具を必要とせずに材料を除去する方法(例えば、レーザー、電子、及びイオンビーム等の有向エネルギービームに基づいた方法)を包含する。マスクに基づいた技法には、機械加工すべき材料とマスキング材料が接触する方法(例えば、既知のリソグラフィー法を用いてマスクを形成する場合)及び機械加工すべき材料とマスキング材料が接触しないが、有向掘削エネルギー源と機械加工すべき材料との間にマスキング材料(例えば、中に開口部が形成されている不透明マスク、並びに半透明マスク、例えば可変ビーム強度、ひいては可変機械加工速度を与えるグレースケールマスク)を設ける方法が含まれる。上記マスクで保護されていない領域の材料は、物理プロセス(例えば、除去される材料の熱昇華及び/又は蒸発)、化学プロセス(例えば、除去される材料の化学分解及び/又は反応)、又は両者の組合せを含めたいずれの様々なプロセスを用いても除去される。除去プロセスの具体例として、湿式及び乾式(プラズマ)エッチング法、及び電子、イオン及びレーザービーム等の有向エネルギービームに基づいたアブレーション法が挙げられる。
【0030】
さらに他の実施形態では、基体表面上、例えば、パターン化表面上又はマスク表面上での材料の選択的成長によって窪みを形成することができる。
例えば、図7Bは、その上に伝導性材料の格子120a(例えば、金属)が沈着している基体110の一部の概略上面図である。図7Aは、A−A線に沿った図7Bの断面である。次に図7A及び7Bの伝導性材料120を用いて、図8に示すように電着層、例えば、伝導性ポリマー材料の層130a(例えばドープドポリピロール)を作り出すことができる。一部の実施形態では(図示せず)、この構造に治療薬含有材料を装填することができる。他の実施形態では、図8の構造を次に図9に示すように伝導層120bでコーティングすると、図10に示すように、伝導性ポリマー材料の層130b(例えば、ドープドポリピロール)が形成される。最後に図10のレザバーRが、図11Aに示すように治療薬含有材料140で満たされる。図11Bは、図11Aのデバイスの上面図である。ポリピロールの上層130bの酸化又は還元による該層130bの膨張が、治療薬含有材料140のレザバーからの排出をもたらす。図示した実施形態では、ポリピロールの下層130aは膨張せず(電解質と接触していない)、むしろ構造的性質である。
【0031】
上記種々の実施形態では、酸化状態の変化による伝導性ポリマー電極の膨張の結果として、本発明のデバイスから治療薬が送達される。他の実施形態では、酸化状態の変化による伝導性ポリマー電極の収縮に応じて治療薬が送達される。
例えば、本発明の多くの実施形態では、レザバーを含み、レザバーの口で医療デバイスの外側に開放している医療デバイスを提供する。これらの実施形態のレザバーの口は、膨張すると治療薬の流れを制限し、収縮すると治療薬の流れを許容する伝導性ポリマー電極を備えてよい。換言すれば、レザバーの口は、伝導性ポリマーの収縮によって広がり、伝導性ポリマーの拡張によって狭くなる(一部の実施形態では閉じる)。
該デバイスの一例を図13A〜13Bに示す。図13Aは、レザバーに治療薬含有材料を装填する前の本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーン表面の一部など)の概略上面図である。図13Bは、図13AのB−B線に沿った概略断面図である。図13Bは、基体110、窪み形成材料の層150(レザバーRを形成する)、窪み形成層150の上部の伝導層120(例えば、金属層)、及び伝導層120上に形成された伝導性ポリマー電極130を示す。この構造は、例えば、基体110全体の上に窪み形成材料150(例えば、ポリマー)及び伝導性材料 120(例えば、金属)を沈着させた後、マスキング、窪み形成材料150及び伝導性材料120のエッチング、及びマスク除去によって、図13Cのような構造を形成することによって形成され得る。次に、電解重合プロセスを行なって伝導性ポリマー電極130を作製する。図13A、13Bの伝導性ポリマー電極130は収縮状態であり、この構造は治療薬含有材料140を装填できる。次に電極130が拡張すると、図14A〜14Bに示すように治療薬含有材料140を捕捉する(図14Bは、治療薬装填構造の概略上面図であり、図14Aは、図14BのA−A線に沿った概略断面図である)。デバイスをin vivoに移植すると、伝導性ポリマー電極130が再び収縮して図13A〜13Bと同様のコンフィギュレーションになり、治療薬の放出を可能にする。
【0032】
K. Yamada et al., Journal of The Electrochemical Society, 151 (1), 2004, E14-E19は、まず無電解メッキプロセスを利用して金でポリエステルフィルター膜のμm未満の細孔壁(及び外面)をメッキした後、この細孔壁(及び外面)上でポリピロールを電解重合させるプロセスを開示している。彼らは、細孔内に電着されたポリピロールの厚さが細孔深さによって一定でないことを見い出した。もっと正確に言えば、彼らは、ポリピロール壁が膜の中心より膜表面で厚いことを見い出し、彼らは、このような「ボトルネック」は、ポリピロール合成の速度が、細孔内深くより膜表面で速いために起こると仮定した。彼らは、この状況は、ポリピロールの沈着速度が前駆材料(ピロールモノマー)の細孔下への物質移動の速度を超えると起こるとことを見い出した。
同様の条件を利用して、本発明の治療薬送達デバイスを提供することができる。例えば、図15は、(非伝導性)基体材料110と、該基体上に沈着した多孔性伝導性材料の層120とを含む医療デバイスの一部の概略断面である。沈着層130の厚さが細孔内よりデバイスの表面で大きくなるような条件下、伝導性材料120上で伝導性ポリマー電極130(例えば、実質的に不動性のポリマーアニオンと共にポリピロール)を重合させた(本明細書の他のところで述べたように、多孔性材料が非伝導性である限りでは、多孔性材料上に伝導性材料層を沈着させることによって多孔性材料を伝導性にし得る−例えば、上記K. Yamadaらに記載の無電解メッキプロセス参照)。デバイスに治療薬含有材料140を装填した後、伝導性ポリマー130を膨張させて(例えば、ポリピロールをカチオン性電解質と接触させながら還元することによって)、図15に示すデバイスを生じさせる。患者に送達したら、伝導性ポリマー130を酸化し、デバイス表面の細孔を再び開くことによって、デバイスからの治療薬の放出を開始する/放出速度を高めることができる。
【0033】
図15のデバイスと同様の実施形態では、細孔の側壁全体を覆うための伝導性ポリマーが必要ない。もっと正確に言えば、細孔の口に伝導性ポリマーを設けることが求められるだけである。例えば、図16Aは、図15と同様に基体材料110と該基体上に沈着した伝導性材料120の多孔性層とを含む医療デバイスの一部の概略断面である。図15とは異なり、伝導性ポリマー130(例えば、実質的に不動性のポリマーカチオンと共にポリピロール)がデバイス表面上と細孔の口に沈着されているが、細孔内深くは沈着されていない。図6Aに示すように細孔に治療薬140を装填する。この装填プロセス後、伝導性ポリマー130の膨張をもたらし(例えば、ポリピロールを電解質中のカチオンと接触させながら還元することによって)、図16Bに示すように細孔の口を閉じる(又は狭くする)条件に図6Aの構造をさらす。患者に送達したら、導性ポリマー130を酸化して、デバイス表面の細孔を開き、治療薬140がデバイスから出られるようにすることによって、デバイスからの治療薬の放出を開始し/その放出速度を高めることができる。例えば、図16Cを参照されたい。
【0034】
今度は、伝導性ポリマー電極の収縮に応じて治療薬を送達するデバイスの別の例について図17A〜17Iの概略断面図に関連して述べる。
まず、図17Aに示すように、狭い金属ストライプ210nと広い金属ストライプ210wを有する金属層(例えば、金層)を多孔性膜220(例えば、トラックエッチング(track-etched)ポリカーボナート膜)の一面に沈着させる。この後、広いストライプ210wの細孔内で伝導性ポリマー(例えば、比較的可動性のアニオンでドープされたポリピロール)を電解重合させて、膜220が伝導性ポリマー繊維を含む領域220pを生じさせる。次に、例えば、A.S. Lee et al., “Electroactive Polymer Actuation at the Nanoscale,” Sixth IEEE Conference on Nanotechnology, 2006. IEEE-NANO 2006, Volume 2, 818-821に記載されているようにクロロホルムを用いて膜220の上部を除去し、図17Cに示すように伝導性ポリマー繊維230の先端を露出させる。次に膜220上に上側金属層210u(例えば、金層)を沈着させて、伝導性ポリマー繊維の先端を包み込んで、図17Dに示す構造にする。次に図17Eに示すように、金層上にポリマー材料(例えば、ポリウレタン)の上層260uと下層260lを沈着させて金層を絶縁かつ支持する。図17Fに示すように上面に穴215を形成した後、デバイスの内部から多孔性膜材料220を除去して、図17Gに示すように伝導性ポリマー繊維230で橋渡しされたレザバー235を残す。次に図17Hに示すようにレザバーを治療薬240で満たす。患者に送達したら、伝導性ポリマー230を還元して(例えば、狭いストライプ210nと広いストライプ210wとの間に適切な電位を加えることによって)図17Iに示すように、繊維230を収縮させ、対向壁を一緒に引いてレザバーを収縮させてデバイスから治療薬240を追いやることによって、デバイスからの治療薬の放出を開始し/その放出速度を高めることができる。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、前記戦略の組合せを利用する。例えば、下記要素:(a)伝導性ポリマーが収縮したとき(伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、少なくとも1つのレザバーの口が拡大するように配置された少なくとも1つの第1の伝導性ポリマー電極及び(b)伝導性ポリマーが膨張したとき(伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの容積が減少するように、レザバー内に配置された少なくとも1つの第2の伝導性ポリマー電極;を有する医療デバイスを提供することができる。
このようなデバイスの一例を図18Aに示す。図18Aは、治療薬含有材料をデバイスに装填する前の本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーンの一部など)の概略断面図である。図18Aは、基体110、下側伝導層120l(例えば、金属)、下側伝導性ポリマー電極130l、窪み形成材料の層150(ここでは非伝導性ポリマー等の電気絶縁材料から形成された)、窪み形成層150上の上側伝導層120u、及び上側伝導層120u上に形成された上側伝導性ポリマー電極130uを含む。この構造は、例えば、伝導性材料の下側層120lを基体上に沈着させた後、電解重合プロセスで下側伝導性ポリマー電極130lを生じさせることによって形成され得る。下側伝導性ポリマー電極130lの上に窪み形成材料の層150と伝導性材料の層を沈着させた後、マスキング及びエッチングによって図18Bの構造と同様の構造を形成する。次に、電解重合プロセスを行なって、図18Aに示すように伝導性ポリマー電極130uを作り出す。
前記構成については当然に多くの変形が可能である。例えば、伝導性ポリマー材料と窪み形成材料との間に良いエッチング選択性がある場合、伝導性ポリマー電極130uの形成後に窪み形成材料のエッチングを行なってもよく、すなわち、図18Cと同様の構造をエッチングして、図18Aと同様の構造を作り出してよい。
【0036】
別の例として、下側伝導性ポリマー電極の上に窪み形成材料を沈着させるのではなく、図18Cに示すように基体110上で窪み形成材料の層150を形成かつパターン化してよい。これは、例えば、単一の沈着工程で上側伝導層120uと下側伝導層120lを形成する可能性を考慮し得る(伝導性材料が窪み形成材料150の壁に沈着されないと仮定した場合であり、沈着されると上側伝導層120uと下側伝導層120lの間に電気的短絡をもたらし得るが、この結果は層150の壁をアンダーカットすることで回避し得る)。次にこの工程の後、単一の電解重合工程で上側伝導性ポリマー電極130uと下側伝導性ポリマー電極130lを形成できるであろう。
図18A及び18Cと同様のデバイス構造では、作動中に上側伝導性ポリマー電極130uが下側伝導性ポリマー電極130lの対電極として作用し得る。そして逆も同じである。
【0037】
次に電解質(図示せず)の存在下の図19Aでは、図18Aと同様の構造の電極に、下側伝導性ポリマー電極130lが膨張状態になり、かつ上側伝導性ポリマー電極130uが収縮状態になるようにバイアスをかけることができる。例えば、図19Aの伝導性ポリマー電極130l、130uを大型(実質的に不動性)アニオンの存在下で形成することができる。電極が適切な電解質と接触していると仮定して、ポリピロールが酸化されるように一方の電極(例えば、上側伝導性ポリマー電極130u)にバイアスをかけて当該電極を収縮状態に置きながら、他方の電極(例えば、下側伝導性ポリマー電極130l)を電極が還元されるようにバイアスをかけて当該電極を膨張状態に置く(例えば、電解質からの、電荷均衡を保つカチオンの流入のため)。図19Aに示すコンフィギュレーションでは、レザバーをデバイスの外側に開いて、レザバーに治療薬含有材料140を装填することができる。これは、図19Aの概略上面図である図19Bからさらに容易に分かるであろう(図19Aは、図19BのA−A線に沿った断面を表す)。
レザバーに装填した後、図20Aに示すように、下側伝導性ポリマー電極130lが収縮状態になり、かつ上側伝導性ポリマー電極130uが膨張状態になるように、電極にバイアスをかけることができる。例えば、下側伝導性ポリマー電極130lに、ポリピロールが酸化されるようにバイアスをかけて、当該電極を収縮状態(例えば、カチオンの排出のため)に置きながら、上側伝導性ポリマー電極130uに、該電極が還元されるようにバイアスをかけて、当該電極を拡張状態(例えば、カチオンの流入のため)に置く。図20Aのコンフィギュレーションでは、レザバーは、例えば、図20Bの概略上面図から分かるようにデバイスの外側へは実質的に閉じている(図20Aは、図20BのA−A線に沿った断面である)。
再びin vivovで電極130l、130uのバイアスを逆にすることによって、構造を図19Aの構造に戻して、上側伝導性ポリマー電極130uを収縮させることでレザバーを開くことができる。さらに、下側伝導性ポリマー電極130lは膨張する。これらの作用が治療薬含有材料140の排出を促進する。
【0038】
さらに、上述したように、還元されると膨張するのみならず親水性も高くなることが観察される伝導性ポリマー電極を開発した。逆に、これらの電極は、酸化されると収縮して疎水性が高くなることが観察された。このような電極を疎水性治療薬含有材料140(例えば、疎水性液体に溶解したパクリタキセル又はオリムス(olimus)ファミリーの薬物、例えばエベロリムス若しくは6-メルカプトプリン)と併用することによって、下側伝導性ポリマー電極130lの膨張の結果としてのみならず、下側伝導性ポリマー電極130lの疎水性から親水性状態への切り替えによって起こる親水性-疎水性反発の結果としても治療薬含有材料140がレザバーから追い出される。
本発明の特定の実施形態では、表面トポグラフィーを利用して、治療薬送達を補助することができる。例えば、図21Aは、本発明の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。図21Bは、図21AのB−B線に沿った断面である。図21A〜21Bは、中に種々の窪みが形成された基体110を含むという点で図1A〜1Bと同様である。基体110の上に金属薄層120が配置され、その上に伝導性ポリマー電極130(例えば、適切なアニオンでドープされた電着ポリピロール層)が設けられている。この構造の窪みは治療薬含有材料140で満たされる。しかし、図1A〜1Bと異なり、窪みが溝ではなくて細孔(すなわち、矩形細孔)である。さらに、各細孔のリムに隆起リング130r(すなわち、矩形リング)材料(例えば、伝導性ポリマー材料又は別の可撓性材料のリング)が備わっている。
図21A〜21Bは、例えば、本発明のバルーンカテーテルのバルーンの一部を表し得る。該実施形態では、隆起リング130rは、バルーンが血管壁に対抗して拡張している限り、シールとして作用し得る。さらに、バルーンが収縮すると、隆起リング130rがレザバー内の負圧の形成を促し(以前圧縮されていたトイレ用プランジャーの引き込みが負圧を生じさせるのと酷似している)、治療薬の送達を補助する。
【0039】
上述したように、本発明の医療デバイスは治療薬送達デバイスである。「治療薬」、「薬物」、「生物活性剤」、「医薬」、「医薬活性剤」、及び他の関連用語は本明細書では相互交換可能に使用され、遺伝的及び非遺伝的治療薬を包含する。
治療薬を単独で使用しても併用してもよい。前記実施形態では、単一治療薬を送達する場合の本発明の医療デバイスについて述べている。しかし、他の実施形態では、複数タイプの治療薬を送達する。例えば、再狭窄の治療に関係する実施形態では(例えば、デバイスが薬物送達医療バルーンである場合)、抗再狭窄薬の送達前に血管拡張薬を送達するのが望ましいことがある。該薬剤は、例えば、混合物として放出され、それら薬剤が医療デバイス表面上の異なるレザバーから放出され得る。一例として、図14A〜14Bのデバイスの交互のレザバー(溝)に異なる治療薬を供給してよい。別の例として、11A〜11Bのデバイスの交互のレザバー(細孔)に異なる治療薬を供給してよい(例えば、「チェッカーボード」様式で)。
本発明のデバイスと共に種々多様な治療薬充填物を使用することができ、医薬的に有効な量は、当業者によって、かつ最終的には、例えば、治療すべき状態、治療薬自体の性質、デバイスを導入する組織、組織に治療薬をさらす持続時間などによって容易に決定される。
医療デバイスを再狭窄の治療用パクリタキセルを放出するために構成された本発明の当該特有の実施形態では、デバイス内のパクリタキセルの量は、例えば、デバイス表面1mm2当たり(例えば、バルーン表面1mm2当たり)0.01〜0.025〜0.05〜0.1〜0.25〜0.5〜1〜2.5〜5μgの範囲で非常に広く変化し得る。本発明の医療デバイスが再狭窄の治療用エベロリムスを放出するために構成された別の特有の例では、デバイス上のエベロリムスの量は、例えば、デバイス表面1mm2当たり(例えば、バルーン表面1mm2当たり)0.025〜0.05〜0.1〜0.25〜0.5〜1〜2.5〜5〜10μgの範囲で非常に広く変化し得る。本発明の医療デバイスが再狭窄の治療用6-メルカプトプリンを放出するために構成された別の特有の例では、デバイス上の6-メルカプトプリンの量は、例えば、デバイス表面1mm2当たり(例えば、バルーン表面1mm2当たり)1〜2.5〜5〜10〜25〜50〜100〜250μgの範囲で非常に広く変化し得る。
【0040】
治療薬としては非イオン性治療薬、カチオン性治療薬及びアニオン性治療薬が挙げられる。該治療薬を本発明のレザバー内に配置することができる。例えば該治療薬を純粋形態で配置するか或いはレザバー内で追加化合物に混合又は共有結合させることができる。該追加化合物の例として、以下の特性を有する1種以上の化合物が挙げられる:治療薬の溶解度を高める化合物及び隣接組織による治療薬の取込みを増やす化合物。該化合物の一例はイオプロミド(ヨウ素ベース造影剤)であり、生理食塩水内での抗再狭窄薬の溶解度を有意に高めることが分かっている(特に、パクリタキセル)。イオプロミドは曝露後数秒間血管壁に接着するので、パクリタキセル等の抗再狭窄薬のin vivoマトリックスとして一時的に作用し得るすることも分かっている。例えば、B. Scheller et al., Journal of the American College of Cardiology, 42(8), 2003, 1415-1420を参照されたい。該追加化合物の他の例には、取込み後に細胞からの治療薬のポンピングに応答するタンパク質を阻害することによって、細胞内の治療薬の濃度を高める化合物が含まれる。例えば、P-糖タンパク質(P-gp)は、新生物組織内における多剤耐性に関与する最も重要な輸送タンパク質の1つである。このタンパク質を多く発現する癌組織内では、P-gpがパクリタキセルといった多くの化学療法薬の細胞内濃度を減少させる薬物排出ポンプとして機能する。パクリタキセル及び他の化学療法薬は、再狭窄に応答性の平滑筋細胞増殖を遮断するときに使用される。従って、阻害すること(P-gpを)は、本発明のデバイス(例えば、薬物溶出バルーン)で治療される血管壁内でより高い細胞内薬用量を得るのにも有効だろう。従って特定の実施形態では、P-糖タンパク質阻害薬は抗再狭窄薬と相互に関連する。P-糖タンパク質阻害薬の例として、例えば、シクロスポリンD及びその類似体(例えば、バルスポダール(valspodar)等)が挙げられる。
【0041】
治療薬が追加化合物と共有結合している当該実施形態では、結合が酸性pH(適切なアノードバイアスでアノードに得られる)又はアルカリ性pH(適切なアノードバイアスでカソードにて得られる)で容易に分解されるように結合を選択することができる。該材料の具体例として、(a)パクリタキセルがヒドラゾンリンカーを介してPEG(可溶化剤として作用する)に結合している酸感受性ポリエチレングリコール(PEG)抱合体(例えば、K. Ulbrich, “Polymeric anticancer drugs with pH-controlled activation,” Advanced Drug Delivery Reviews, 56 (2004) 1023-1050及びその中の引用文献を参照されたい)及び(b)パクリタキセル2'-N-メチルピリジニウムメシラート(PNMM)、
【0042】
【化3】
【0043】
(ここで、パクリタキセルとN-メチルピロリジンエンティティー(可溶化剤として作用する)を結びつけている結合の加水分解が塩基性触媒作用を示すと報告されている(例えば、Jaber G. Qasem et al, AAPS PharmSciTech 2003, 4(2) Article 21を参照されたい))が挙げられる。PNMMのN-メチルピリジニウム部分の1つ以上の環水素のヨウ素との置換がパクリタキセル抱合体を放射線不透過性にし得ることに留意されたい。
治療薬がアニオン性治療薬である当該実施形態では、治療薬を本発明の伝導性ポリマー電極内に配置する(例えば、電解重合プロセスでポリピロール又は別の伝導性ポリマーと共沈着させる)ことができる。このような場合、アニオン性治療薬は、形成される伝導性ポリマーに典型的に共有結合されないことに留意されたい。
本発明とともに使用する典型的治療薬は、例えば、とりわけ以下のものから選択され得る:(a)抗血栓薬、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレル、及びPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン);(b)抗炎症薬、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン及びメサラミン;(c)抗悪性腫瘍/抗増殖/抗縮瞳(anti-miotic)薬、例えばパクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロネス、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を遮断できるモノクロナール抗体、及びチミジンキナーゼ阻害薬;(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカイン及びロピバカイン;(e)抗凝固薬、例えばD-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬及びダニ抗血小板ペプチド;(f)血管細胞成長促進薬、例えば成長因子、転写活性薬、及び翻訳促進薬;(g)血管細胞成長阻害薬、例えば成長因子阻害薬、成長因子受容体拮抗薬、転写抑制薬、翻訳抑制薬、複製阻害薬、抑制抗体、成長因子特異性抗体、成長因子と細胞毒から成る二機能性分子、抗体と細胞毒から成る二機能性分子;(h)タンパク質キナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害薬(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);(i)プロスタサイクリン類似体;(j)コレステロール低減剤;(k)アンジオポエチン;(l)抗菌薬、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びニトロフラントイン;(m)細胞毒性薬、細胞分裂阻害剤及び細胞増殖影響因子;(n)血管拡張薬;(o) 内因性血管作用機序を妨害する薬剤;(p)白血球動員の阻害薬、例えばモノクロナール抗体;(q)サイトカイン;(r)ホルモン;(s)HSP 90タンパク質の阻害薬(すなわち、Heat Shock Protein分子シャペロン又はハウスキーピングタンパク質であり、かつ細胞の成長及び生存に応答性の他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性と機能が必要である)、例えばゲルダナマイシン、(t)平滑筋弛緩薬、例えばα受容体拮抗薬(例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、テルアゾシン、プラゾシン及びアルフゾシン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラピミル、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニモジピン及びベプリジル)、β純粋作動薬(例えば、ドブタミン及びサルメテロール)、β受容体拮抗薬(例えば、アテノロール、メタプロロール及びブトキサミン)、アンジオテンシン-II受容体拮抗薬(例えば、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン及びテルミサルタン)、及び鎮痙薬/抗コリン薬(例えば、オキシブチニン クロリド、フラボキサート、トルテロジン、ヒヨスチアミンスルファート、ジクロミン)、(u)bARKct阻害薬、(v)ホスホランバン阻害薬、(w)Serca 2遺伝子/タンパク質、(x)免疫反応変更因子、例えばアミノキゾリン(aminoquizoline)、例えば、イミダゾキノリン、例えばレシキモド及びイミキモド、(y)ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI、AII、AIII、AIV、AVなど)、(z)選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)、例えばラロキシフェン、ラソホキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、オスペミフェン、PKS 3741、MF 101及びSR 16234、(aa)PPAR作動薬、例えばPPAR-α、γ及びδ作動薬、例えばロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ネトグリタゾン、フェノフィブラート、ベキサオテン、メタグリダセン、リボグリタゾン及びテサグリタザル、(bb)プロスタグランジンE作動薬、例えばPGE2作動薬、例えばアルプロスタジル又はONO 8815Ly、(cc) トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、(dd)バソペプチダーゼ阻害薬、例えばベナゼプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、デラプリル、モエキシプリル及びスピラプリル、(ee)チモシンβ4、(ff)リン脂質、例えばホスホリルコリン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルコリン、並びに(gg)VLA-4拮抗薬及びVCAM-1拮抗薬。
【0044】
必ずしも上掲の治療薬を含めなくても多くの治療薬が、例えば再狭窄を標的とする薬剤(抗再狭窄薬)として血管治療計画の候補として同定されている。このような薬剤は本発明の実施のために有用であり、例えば、以下の1つ以上の薬剤から選択され得る:(a)Caチャネル遮断薬、例えばベンゾチアゼピン、例えばジルチアゼム及びクレンチアゼム、ジヒドロピリジン、例えばニフェジピン、アムロジピン及びニカルダピン、並びにフェニルアルキルアミン、例えばベラパミル、(b)セロトニン径路調節因子、例えば:5-HT拮抗薬、例えばケタンセリン及びナフチドロフリル、並びに5-HT取込み阻害薬、例えばフルオキセチン、(c)環状ヌクレオチド径路薬、例えばホスホジエステラーゼ阻害薬、例えばシロスタゾール及びジピリダモール、アデニラート/グアニラートシクラーゼ刺激因子、例えばホルスコリン、並びにアデノシン類似体、(d)カテコラミン調節因子、例えばα-拮抗薬、例えばプラゾシン及びブナゾシン、β-拮抗薬、例えばプロプラノロール及びα/β-拮抗薬、例えばラベタロール及びカルベジロール、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、例えばボセンタン、シタキセンタンナトリウム、アトラセンタン、エンドネンタン、(f)一酸化窒素供与体/放出分子、例えば有機ニトラート/ニトリット、例えばニトログリセリン、イソソルビド ジニトラート及びアミルニトリット、無機ニトロソ化合物、例えばニトロプルシドナトリウム、シドノンイミン、例えばモルシドミン及びリンシドミン、ノノアート、例えばジアゼニウムジオラート及びアルカンジアミンのNO付加物、S-ニトロソ化合物、例えば低分子量化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン及びN-アセチル ペニシラミンのS-ニトロソ誘導体)及び高分子量化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖、合成ポリマー/オリゴマー及び天然ポリマー/オリゴマーのS-ニトロソ誘導体)、並びにC-ニトロソ-化合物、O-ニトロソ-化合物、N-ニトロソ-化合物及びL-アルギニン、(g)アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、例えばシラザプリル、ホシノプリル及びエナラプリル、(h)ATII受容体拮抗薬、例えばサララシン及びロサルチン、(i)血小板粘着阻害薬、例えばアルブミン及びポリエチレンオキシド、(j)血小板凝集阻害薬、例えばシロスタゾール、アスピリン及びチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)及びGP IIb/IIIa阻害薬、例えばアブシキシマブ、エピチフィバチド and チロフィバン、(k)凝固径路調節因子、例えばヘパリノイド、例えばヘパリン、低分子量ヘパリン、デキストランスルファート及びβ-シクロデキストリンテトラデカスルファート、トロンビン阻害薬、例えばヒルジン、ヒルログ、PPACK(D-phe-L-プロピル-L-arg-クロロメチルケトン)及びアルガトロバン、FXa阻害薬、例えばアンチスタチン及びTAP(ダニ抗凝固ペプチド)、ビタミンK阻害薬、例えばワルファリン、並びに活性化タンパク質C、(l)シクロオキシゲナーゼ径路阻害薬、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン及びスルフィンピラゾン、(m)天然及び合成コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン及びヒドロコルチゾン、(n)リポキシゲナーゼ径路阻害薬、例えばノルジヒドログアイレト酸及びカフェー酸、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E-及びP-セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM-1及びICAM-1相互作用の阻害薬、(r)プロスタグランジンとその類似体、例えばプロスタグランジン、例えばPGE1及びPGI2並びにプロスタサイクリン類似体、例えばシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト及びベラプロスト、(s)マクロファージ活性化防止薬、例えばビスホスホナート、(t)HMG-CoAレダクターゼ阻害薬、例えばロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン及びセリバスタチン、(u)魚油及びω-3-脂肪酸、(v)フリーラジカルスカベンジャー/抗酸化剤、例えばプロブコール、ビタミンC及びE、エブセレン、trans-レチノイン酸、SOD(オルゴテイン)及びSOD模倣薬、ベルテポルフィン、ロスタポルフィン、AGI 1067、及びM 40419、(w)種々の成長因子に影響を及ぼす薬剤、例えばFGF径路薬、例えばbFGF抗体及びキメラ融合タンパク質、PDGF受容体拮抗薬、例えばトラピジル、IGF径路因子、例えばソマトスタチン類似体、例えばアンギオペプチン及びオクレオチド、TGF-β径路因子、例えばポリアニオン性薬(ヘパリン、フコイジン)4、デコリン、並びにTGF-β抗体、EGF径路因子、例えばEGF抗体、受容体拮抗薬及びキメラ融合タンパク質、TNF-α径路因子、例えばサリドマイド及びその類似体、トロンボキサンA2(TXA2)径路調節因子、例えばスロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン及びリドグレル、並びにタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬、例えばチルホスチン、ゲニステイン及びキノキサリン誘導体、(x)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)径路阻害薬、例えばマリマスタット、イロマスタット、メタスタット、バチマスタット、ペントサンポリスルファート、レビマスタット、インサイクリニド、アプラタスタット、PG 116800、RO 1130830又はABT 518、(y)細胞運動性阻害薬、例えばサイトカラシンB、(z)抗増殖/抗悪性腫瘍薬、例えば代謝拮抗薬、例えばプリン拮抗薬/類似体(例えば、6-メルカプトプリン及び6-メルカプトプリンのプロドラッグ、例えばアザチオプリン又はクラドリビン(塩素化プリンヌクレオシド類似体である))ピリミジン類似体(例えば、シタラビン及び5-フルオロウラシル)及びメトトレキサート、窒素ムスタルド、アルキルスルホナート、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソウレア、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタキセル及びエポチロン)、カスパーゼ活性化因子、プロテアソーム阻害薬、血管形成阻害薬(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン及びスクアラミン)、オリムスファミリー薬物(例えば、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス等)、セリバスタチン、フラボピリドール及びスラミン、(aa)マトリックス沈着/組織化径路阻害薬、例えばハロフギノン又は他のキナゾリノン誘導体、ピルフェニドン及びトラニラスト、(bb)内皮化(endothelialization)促進因子、例えばVEGF及びRGDペプチド、(cc)血液流動調節因子、例えばペントキシフィリン並びに(dd)グルコース架橋遮断薬(breaker)、例えばアラゲブリウムクロリド(ALT-711)。
【0045】
好ましい非遺伝的治療薬として、とりわけ、タキサン、例えばパクリタキセル(特にその粒子形態、例えば、タンパク質結合パクリタキセル粒子、例えばアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子、例えばABRAXANEが挙げられる)、オリムスファミリー薬物、例えばシロリムス、エベロリムス、タクロリムス及びゾタロリムス、Epo D、デキサメタゾン、プリン拮抗薬/類似体、例えば6-メルカプトプリン、エストラジオール、ハロフギノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、アラゲブリウムクロリド(ALT-711)、ABT-578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノムシンD、レステン-NG、Ap-17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、β遮断薬、bARKct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、Serca 2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI-AV)、成長因子(例えば、VEGF-2)、並びに前記薬剤の誘導体及びプロドラッグが挙げられる。
本発明の実施で有用な多くのさらなる治療薬は、Kunzの米国特許第5,733,925号(参照によって開示全体が援用される)にも開示されている。
【0046】
本明細書では種々の実施形態を詳細に例示して説明したが、当然のことながら、本発明の変態及び変形は上記教示によって包含され、かつ本発明の精神及び意図した範囲から逸脱することなく添付の特許請求の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、参照によってその全体が本明細書に援用される、2008年6月20日に提出された米国仮特許出願第61/074,456号の利益を主張する。
(発明の分野)
本発明は、ヒト対象内に治療薬を送達するための医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
患者の体の上又は中への治療薬の送達は、現代医療業務で一般的である。治療薬のin vivo送達は、体内の標的部位に一時的又は永久的に設置し得る医療デバイスを用いて実行されることが多い。必要に応じて、これらの医療デバイスをそれらの標的部位に短時間又は長期間維持して、標的部位で治療薬を送達することができる。
【発明の概要】
【0003】
(発明の概要)
一態様では、本発明は、少なくとも1つのレザバー(reservoir)と、このレザバー内に配置された治療薬含有領域と、伝導性ポリマーを含んでなる電極とを含む医療デバイスに関する。本発明のデバイスは、伝導性ポリマーの酸化状態が変化すると、レザバーからの治療薬の放出速度が変化する(例えば、放出が始まる、増加する、減少する、終わる等)ように構成されている。
本発明の利点は、治療薬の送達を電気的に補助し、ひいては制御できる医療デバイスを提供し得ることである。
以下の詳細な説明及びいずれの請求項をも精査すれば、当業者には本発明のこれらの態様及び他の態様、実施形態並びに利点が容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1A】伝導性ポリマー電極が収縮状態になるようにバイアスがかけられている、本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図1B】図1AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図2A】伝導性ポリマー電極が拡張状態になるようにバイアスがかけられている、本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図2B】図2AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図3】本発明の代替実施形態による図1AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図4】本発明の別の代替実施形態による図1AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態のバルーンカテーテルのバルーン部分の概略図である。
【図6A】本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図6B】図6AのB−B線に沿った断面図である。
【図6C】図6AのC−C線に沿った断面図である。
【図7A】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図7B】この概略上面図のA−A線に沿った断面図が図7Aである。
【図8】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図9】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図11A】本発明の実施形態の医療デバイスの形成方法を示す概略断面図である。
【図11B】この概略上面図のA−Aに沿った断面図が図11Aである。
【図12】本発明の別の実施形態のデバイスの一部の概略断面図である。
【図13A】本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図13B】図13AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図13C】伝導性ポリマー電極の形成前の図13Bの概略断面図に相当する。
【図14A】デバイスに治療薬を装填し、伝導性ポリマー電極の作動後の、図13Aのデバイスに相当する概略上面図である。
【図14B】図14AのB−B線に沿った概略断面図である。
【図15】本発明の別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図である。
【図16A】本発明のさらに別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図であり、治療薬を装填した後かつ伝導性ポリマー電極の膨張前のデバイスを示す。
【図16B】治療薬をデバイス内に保持するように伝導性ポリマー電極の膨張後の図16Aのデバイスを示す。
【図16C】in vivoで伝導性ポリマー電極を収縮させて、デバイスから治療薬を放出できるようにした後の図16Bのデバイスを示す。
【図17A】本発明のさらに別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図であり、本発明の実施形態の医療デバイスを形成及び操作する方法を示す。
【図17B】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17C】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17D】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17E】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17F】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17G】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17H】図17Aと同様の概略断面図である。
【図17I】図17Aと同様の概略断面図である。
【図18A】本発明の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図である。
【図18B】伝導性ポリマー電極形成前の図18Aの構造を示す概略断面図である。
【図18C】本発明の別の実施形態の医療デバイスの一部の概略断面図である。
【図18D】図18Cの窪み形成材料150内のレザバーのエッチング前の図18Cの構造を示す概略断面図である。
【図19A】上側伝導性ポリマー電極が収縮し、下側伝導性ポリマー電極が拡張するように上下の伝導性ポリマー電極にバイアスをかけた後、かつレザバーに治療薬を装填した後の図18Aのデバイスの概略断面図である。
【図19B】この概略上面図のA−A線に沿った断面図が図19Aである。
【図20A】上側伝導性ポリマー電極が拡張し、下側伝導性ポリマー電極が収縮するように上下の伝導性ポリマー電極にバイアスをかけた後の図19Aのデバイスの概略断面図である。
【図20B】この概略上面図のA−A線に沿った断面図が図20Aである。
【図21A】本発明の実施形態の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。
【図21B】図21AのB−B線に沿った概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(詳細な発明)
本発明の種々の態様及び実施形態の以下の詳細な説明を参照すれば、本発明のさらに完全な理解が得られる。以下の本発明の詳細な説明は本発明を例証するが、本発明を限定する意図ではない。本発明の範囲は、添付のいずれの請求項によっても定義される。
一態様によれば、本発明は、少なくとも1つのレザバーと、このレザバー内に配置された治療薬含有領域と、伝導性ポリマーを含んでなる電極(本明細書では「伝導性ポリマー電極」とも称する)とを含む医療デバイスに関する。本発明のデバイスは、伝導性ポリマーの酸化状態が変化すると、レザバーからの治療薬の放出速度が変化する(例えば、放出が始まる、放出が増加する、放出が減少する、放出が終わる等)ように構成されている。
本発明のデバイスは、典型的に、酸化状態の変化の結果としての伝導性ポリマー電極の変化(膨張、収縮、疎水性/親水性の変化など)が放出速度の変化をもたらすように構成されている。多くの例では、伝導性ポリマーは、レザバー(特定の実施形態ではレザバーの口を含む)内に位置づけられる。例えば、伝導性ポリマーは、レザバーの内面の少なくとも一部を画定し得る(例えば、特定の実施形態では口を含め、レザバーの内部を形成又は裏打ちする)。
【0006】
本発明から利益を得る医療デバイスは多く、例えば、下記デバイスから選択され得る:無傷の皮膚及び破損した皮膚(創傷など)に治療薬を送達するためのパッチ、移植可能又は挿入可能医療デバイス、例えばカテーテル(例えば、腎臓又は血管カテーテル、例えばバルーンカテーテル)、バルーン、ガイドワイヤー、フィルター(例えば、大静脈フィルター及び末梢保護デバイス(distil protection device)用のメッシュフィルター)、ステント(冠血管ステント、末梢血管ステント、大脳、尿道、尿管、胆管、気管、胃腸管及び食道ステントなど)、ステントカバー、ステント移植片(stent grafts)、血管移植片、腹部大動脈瘤(AAA)デバイス(例えば、AAAステント、AAA移植片)、血管アクセスポート、塞栓形成デバイス、例えば脳動脈瘤フィラーコイル(例えばGuglilmi取り外し可能コイル及び種々の他の金属コイル)、心筋栓、中隔欠損閉鎖デバイス、移植可能パッチ、デバイスに遠位の動脈部分を治療するため動脈に設置するのに適応した薬物貯蔵所(depot)、ペースメーカー及びペースメーカーリード、除細動リード及びコイル、神経刺激リード、心室補助デバイス(左心室補助心臓及びポンプなど)、全人工心臓、心臓弁、血管弁、吻合クリップ及びリング、人工内耳、組織充填デバイス、in vivo組織再生、特に脊髄などの神経路再生用の組織操作スキャフォールド、関節プロステーシス、脊椎円板及び神経核、整形外科用プロステーシス、例えば骨移植片、骨プレート、ヒレ状器官(fin)及び融合デバイス、整形外科用固定デバイス、例えば足首、膝、及び手領域のインターフェアレンススクリュー(interference screw)、骨折固定用のロッド及びピン、頭蓋顎顔面(craniomaxillofacial)修復用のスクリュー及びプレート、歯科用インプラント、生検デバイス、並びに体内に移植又は挿入されて治療薬を放出する多くの他のデバイス。
【0007】
本発明の医療デバイスは、いずれかの組織若しくは器官、例えば、以下:腫瘍;器官、例えば心臓、冠血管及び末梢血管系(全体で「脈管構造」と称する)、泌尿生殖器系(腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、腟、子宮及び卵巣など)、目、肺、気管、食道、腸、胃、脳、肝臓及び膵臓、骨格筋、平滑筋、乳房、皮膚組織、及び軟骨組織などの診断のため、全身治療のため、又は局所治療のために使用する医療デバイスを包含する。本明細書で使用する場合、「治療」は、疾患若しくは状態の予防、疾患若しくは状態と関連する徴候若しくは症状の軽減又は排除、或いは疾患若しくは状態の実質的又は完全な排除を意味する。典型的対象(「患者」とも称する)は脊椎動物、さらに典型的には哺乳動物対象、なおさらに典型的にはヒト対象である。
上述したように、一態様では、本発明は、少なくとも1つのレザバーと、このレザバー内に配置された治療薬含有領域と、伝導性ポリマーを含んでなる電極(本明細書では「伝導性ポリマー電極」とも称する)とを含む医療デバイスに関する。
本発明のデバイスでは、治療薬含有領域が伝導性ポリマー電極とは異なることに留意されたい。しかしながら、一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極が治療薬を含んでよく、他の実施形態では、伝導性ポリマー電極が治療薬を含まない。
【0008】
本発明のデバイスは、伝導性ポリマーの酸化状態が変化すると、レザバーからの治療薬の放出速度が変化する(例えば、放出が始まる、放出が増加する、放出が減少する、放出が終わる等)ように構成されている。さらに詳細には、本発明のデバイスは、酸化状態の変化の結果としての伝導性ポリマー電極の変化(例えば、膨張、収縮、疎水性/親水性の変化など)が放出速度の変化をもたらすように構成されている。
伝導性ポリマー電極内の伝導性ポリマーの酸化状態は、伝導性ポリマー電極と追加電極(本明細書では「対電極」とも称する)との間に適切な電位を加えることによって変化し得る。このプロセスでは以下の要素を一般的に利用する:(a)伝導性ポリマー電極、(b)対電極、(c)伝導性ポリマー電極と対電極の両方と接触する電解質、及び(d)電位源(「電源」とも称する)。
伝導性ポリマーの表面の少なくとも一部と接触する電解質は、イオンの流れを可能にするので、イオンのソース/シンクとして作用する。例えば、電解質は、イオンの動きを可能にする限り、液体、ゲル、又は固体であってよい。本発明の種々の実施形態では、生理液を電解質として使用する。
対電極は、医療デバイスの上又は中に配置してよく、或いは対電極が別のデバイスの形態であってよい。いずれの適切な伝導性材料からも対電極を調製することができる。対電極用の伝導性材料の例として、とりわけ以下の適切な材料が挙げられる:伝導性ポリマー、純粋金属及び合金(例えば、その高い伝導性、酸化耐性、及び蛍光透視などの間にデバイスの可視性を助長し得る放射線不透過性のため、金、白金、ステンレススチール等、或いは最終的にin vivo酸化するであろう組織内に放置できるマグネシウム又はマグネシウム合金)、及び伝導性カーボン。対電極は無数の形状をとり得、とりわけ層、ロッド、ワイヤー、チューブ、ブレード、及び格子の形状が挙げられる。対電極と伝導性ポリマー電極との間の接触面積を最大にする設計は、電荷移動を高め、活性化時間を減少させ得る。
【0009】
特定の実施形態では、基準電極(例えば、銀/塩化銀電極)の助けを借りて、伝導性ポリマーの酸化状態を変える。利用する場合、対電極と同様に、基準電極を医療デバイスの上又は中に配置してよく、或いは基準電極が別のデバイスの形態であってよい。一実施形態では、E.W.H. Jager et al., Sensors and Actuators B 56 (1999) 73-78に記載のプロセスを利用して、医療デバイス上にAg/AgCl基準電極を形成することができる。詳細には、デバイス上(例えば、金導体層上)にAg層を沈着させた(例えば、電気メッキ又は別の沈着プロセスによって)後、例えば、KCl電解質溶液に浸漬させながら電極に適切な電位を加えることによって(適切な対電極を用いて)、電気化学的にAg層を部分的にAgClに変換させることによって、Ag/AgCl基準電極を形成することができる。
電力源は、例えば、本発明の医療デバイス内に設けてよく、或いは本発明の医療デバイスに接続される(例えば、絶縁導電線によって)別のデバイスの形態であってよい。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極、対電極及び/又は基準電極は、電源に容易に接続できる(例えば、適切な電気的結合部品、例えば、栓、ソケット等で終わる絶縁導電線によって)ように構成されている。
【0010】
本発明の特定デバイス、特にインプラントでは、電力を無線システムの形態で供給してよい。例えば、ダイオードブリッジを有する伝導コイルを含む回路(一端が1つ以上の伝導性ポリマー電極に接続され、他端が1つ以上の対電極に接続される)をデバイスに設けてよい。外部電力送信器、例えばRF送信器を用いて該システムを活性化することができる。例えば、William H. Moore et al., IEEE Trans Biomed Eng. 2006 August ; 53(8): 1705-1708を参照されたい。適切な周波数は、例えば、1MHz〜20MHzの範囲である。特定の実施形態では、追加の電子部品、例えば基準電極及び/又は電圧調節デバイスを含めてよい。この目的のために使用できる非常に有用な部品は、ツェナーダイオード(Zener diode)である。ツェナーダイオードは、回路を通した電圧を調節するために広く使用されている。可変電圧源(例えば、前述したようなコイル/ダイオード配列)が逆方向にバイアスされるように可変電圧源を並列に接続した場合、電圧がダイオードの逆方向ブレークダウン電圧に達すると、ツェナーダイオードが電流を導き始める。その時から、ツェナーダイオードは電圧をその値に維持する。換言すれば、伝導コイルから可変電圧を受けると、治療薬の放出を調節する電極を通した固定電圧を確保することができる。利用し得る追加の電子部品として、検出デバイス(例えば、電流及び/又は電圧検出デバイス)及び送信器が挙げられる。該部品を用いると、外部電力送信器に値(例えば、電流及び/又は電圧値)伝え戻して、該値を調整することができる。このような実施形態は、大型インプラント(例えば、心臓弁、組織充填及び再生デバイス等)に特に適している。
【0011】
いずれの適切な伝導性ポリマーを用いて伝導性ポリマー電極を形成してもよい。既知の伝導性ポリマーとして、ポリピロール及びその誘導体とコポリマー、ポリチオフェン及びその誘導体とコポリマー、例えばポリ(3-アルキルチオフェン)及びポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等、ポリアニリン及びその誘導体とコポリマー、ポリ(p-フェニレンビニレン)及びその誘導体とコポリマー、ポリスフホン及びその誘導体とコポリマー、並びにポリアセチレン及びその誘導体とコポリマーが挙げられる。ポリピロールは、生理的条件下でこれらのポリマーの中でより安定な1つである。ポリピロールの既知誘導体として、とりわけ以下の置換ポリマーが挙げられる:ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(N-ブチルピロール)、ポリ[N-(2-シアノエチル)ピロール]、ポリ[N-(2-カルボキシエチル)ピロール]、ポリ(N-フェニルピロール)、ポリ[N-(6-ヒドロキシヘキシル)ピロール]、及びポリ[N-(6-テトラヒドロピラニルヘキシル)ピロール]。
上記及び他のモノマーから(例えば、ピロールモノマー、チオフェンモノマー、アニリンモノマー、p-フェニレンビニレンモノマー、スルホンモノマー、アセチレンモノマー等から)伝導性ポリマーを形成することができる。例えば、ピロールコポリマーは、例えば、とりわけ下記モノマー:ピロール、1-(2-シアノエチル)ピロール、1-フェニルピロール、3-(酢酸)ピロール、1-(プロピオン酸)ピロール、及びそのペンタフルオロフェノールエステルの2種以上から形成され得る。具体例として、とりわけ、例えばポリ[ピロール-co-3-(酢酸)ピロール]、ポリ[ピロール-co-1-(プロピオン酸)ピロール]、ポリ[ピロール-co-1-(プロピオン酸)ピロールペンタフルオロフェノールエステル]、ポリ[ピロール-co-1-(2-シアノエチル)ピロール]及びポリ(ピロール-co-1-フェニルピロール)が挙げられる。
【0012】
伝導性ポリマーは、典型的にその中性状態で半導体である。しかし、ポリマーが酸化又は還元されて荷電状態になると(例えば、ポリピロールは、酸化されると正に荷電され、還元されると中性である)、電気伝導性が半導体の領域(regime)から半金属の領域に変化すると理解される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、酸化及び還元が電荷の不均衡を引き起こし、順次、該材料を出入りするイオンの流れをもたらすと考えられる。これらのイオンは典型的にポリマーに隣接するイオン伝導性媒体から該材料物質に入り、該材料から出てイオン伝導性媒体に入る。一般的に、ポリマーを出入りするイオンの質量移動によって、伝導性ポリマーに寸法変化がもたらされると考えられる。例えば、拡張は、一部の伝導性ポリマーでは、鎖間へのイオン挿入に起因すると考えられ、他の伝導性ポリマーでは、鎖間の反発が主な作用であると考えられる。メカニズムにかかわらず、このイオンの動きがポリマーの拡張又は収縮をもたらし、有意な応力と歪みを与え得る。例えば、E. Smela et al., “Volume Change in Polypyrrole Studied by Atomic Force Microscopy,” J. Phys. Chem. B, 105 (2001) 9395-9405は、ポリピロールでは、酸化状態に比べて還元状態で35%以上フィルム厚が増えることを報告している。
伝導性ポリマーの酸化還元の切替えが、いくつかの異なった酸化状態に到達できるようにする。これらの酸化還元状態は、電気化学的切替え中にポリマーを出入りする、電荷均衡を保つ対イオン(多くの場合ドーパントイオンと呼ばれる)によって安定化される。具体例として、例えば、電解重合中に、酸化され、正に荷電した伝導性ポリマー、例えばポリピロールと、電荷均衡を保つ種々のアニオンを関連付けることができる。しかし、ポリマーを還元/中和することによって、正味の負電荷がポリマー内に発生する。
【0013】
ドーパントアニオンが実質的に可動性である場合(例えば、アニオンが小型分子である場合)、ポリピロールの還元/中和に基づいた正味の負電荷の発生は、主にポリマーから隣接するイオン伝導性媒体へのアニオンの排出をもたらし、ポリマーを縮ませる。ポリピロールの形成で常用される可動性イオンの例として、過塩素酸(ClO4-)、BF4-、Br-、Cl-、NO3-、及びI-が挙げられる。生理学的観点から、塩素イオン等の天然に存在するイオン(体内に)が好ましいであろう。
ドーパントアニオンが実質的に不動性であれば(例えば、アニオンが大型分子である)、ポリピロールの還元/中和に基づいた正味の負電荷の発生は、主に、隣接するイオン伝導性媒体からのカチオンの流入をもたらし、ポリマーを拡張させる。ポリピロールの形成で常用される実質的に不動性のイオンの例として、ドデシルベンゼンスルホナート、ポリビニルスルホナート、ポリ-4-スチレンスルホナート、ポリアスパラギン酸、及びポリグルタミン酸が挙げられる。可動性カチオンの例として、天然に存在する(体内に)カチオン、例えば、とりわけNa+及びK+が挙げられる。
【0014】
ドデシルベンゼンスルホナートは、親水性(荷電した)末端と疎水性(炭化水素)末端とを有する界面活性剤であることを注記する。ドデシルベンゼンスルホナートをドーパントイオンとして使用するポリピロールの還元/中和は、親水性の増加をもたらすことが観察されており(ポリマーバルクから表面(すなわち、イオン伝導性媒体との界面)への界面活性剤の荷電末端の反発の結果である仮定されている)、このようにして親水性荷電末端基の濃度が該表面で増加する。逆に、ポリピロールの酸化は、疎水性の増加を引き起こすことが観察されており(界面活性剤の荷電末端のポリマーバルクへの離脱の結果であると仮定されている)、該表面での界面活性剤の疎水性末端の濃度の増加につながる。メカニズムにかかわらず、ドデシルベンゼン-スルホナート-ドープドポリピロールは、還元/中和によって膨張し、親水性が高くなることが観察され、酸化によって収縮し、疎水性が高くなることをが観察される。例えば、J. Causley et al., “Electrochemically-induced fluid movement using polypyrrole,” Synthetic Metals 151 (2005) 60-64を参照されたい。
ドーパントアニオンが適度に可動性である場合(すなわち、中間サイズのアニオン、例えばトシラートアニオン等を利用する場合)、酸化還元処理中にカチオンとアニオンの両イオンの運動が観察されている(K. Naoi et al., J. Electrochem. Soc., Vol. 138, No. 2, February 1991, pp. 440-445)。
【0015】
電解重合によって種々の伝導性ポリマーを形成することができる。例えば、適切なアニオン材料(例えば、とりわけ、上述したアニオンドーピング材料の1種)の存在下でピロールモノマーを電解重合させ得る。電解重合を実施するための典型的器具として以下のものが挙げられる:それぞれ電解質(例えば、ピロール及び適切なドーピングアニオンを含む溶液)で分離されたアノード(例えば、その上で電解重合が起こる伝導性金属表面)、カソード(例えば、金属の対電極)、及び多くの場合、基準電極、並びに種々の電極で電圧/電流を監視/設定するポテンシオスタット。種々の電気化学的条件下で電解重合を行なうことができ、該条件として、とりわけ以下の条件が挙げられる:(a)一定電流(定電流)、(b)一定電圧(定電位)、(c)電流走査/掃引、例えば、単一又は複数の走査/掃引によって、(d)電圧走査/掃引、例えば、単一又は複数の走査/掃引によって、(e)電流矩形波又は他の電流パルス波形、(f)電圧矩形波又は他の電圧パルス波形、及び(g)異なる電流及び電圧パラメーターの組合せ。
さらに伝導性ポリマーについては、例えば、Atanasoskaらの出願公開第US2006/0184092号及びWeberらの出願公開第US2007/0239256号、並びにそれらの中で引用されている文献を参照されたい。
【0016】
上述したように、本発明の一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極が治療薬を含み得る。具体例として、伝導性ポリマー電極は、伝導性ポリマーの電着中に電極に組み入れられるアニオン性治療薬を含み得る。別の具体例として、小型の可動性アニオンを伝導性ポリマーの電着中に電極に組み入れることができる。そして、アニオン性治療薬を含む電解質と接触させながら伝導性ポリマーを複数サイクルにわたって酸化又は還元すると、沈着したままのアニオンとアニオン性治療薬との間のアニオン交換をもたらす。別の具体例として、大型の不動性アニオンを伝導性ポリマーの電着中に電極に組み入れて、引き続きカチオン性治療薬を含む電解質と接触させながら還元することができる。還元によって、カチオンが伝導性ポリマーに引き込まれる。
ここで、本発明の種々の実施形態について述べる。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーが膨張すると(例えば、伝導性ポリマーの性質に応じて、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの容積が減少し、治療薬をレザバーから追い立てるように配置される。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーが収縮すると(例えば、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの容積が減少し、治療薬をレザバーから追い立てるように配置される。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーの親水性/疎水性が変化すると(例えば、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)治療薬がレザバーから追い立てられるように配置される。一部の実施形態では、伝導性ポリマー電極はレザバー内に、伝導性ポリマーが収縮すると(例えば、伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの口が拡大し、レザバーからの治療薬の送達を開始するか又は送達速度を高めるように配置される。一部の実施形態では、前記メカニズムの2つ以上を利用して、レザバーからの治療薬の送達速度を変更する。
ここで、伝導性ポリマー電極がレザバー内に、伝導性ポリマーが膨張すると、レザバーの容積が減少し、治療薬をレザバーから追い立てるように配置されるいくつかの実施形態について述べる。これらの特定の実施形態では、伝導性ポリマーがレザバーの境界(壁)を少なくとも部分的に画定する(例えば、レザバーが伝導性ポリマー内に形成される、伝導性ポリマーの層がレザバーを裏打ちする等)。
【0017】
種々の実施形態では、本発明の医療デバイスは、多くの他の可能性のうち、例えば、ポリマー基体材料、金属基体材料、又は非金属基体材料(例えばセラミック材料、炭素ベース材料、若しくはケイ素ベース材料)であってよい、基礎をなす基体材料を含む。
具体例として、ある特定の実施形態では、本発明の医療デバイスは、治療薬装填バルーン表面を有するバルーンである。このような治療薬装填バルーン表面用の基体材料として、非柔軟基体材料(例えば、金属材料又は非柔軟ポリマー材料、例えばポリエーテル-ポリアミドブロックコポリマー、例えばElf AtochemからPEBAXとして入手可能なポリ(テトラメチレンオキシド)-ポリアミド-12ブロックコポリマー)及び柔軟基体材料(例えば、柔軟ポリマー材料、例えばケイ素ゴム、ポリウレタン、ラテックス又はポリイソプレン)が挙げられる。この点で、本発明は、柔軟バルーン、非柔軟バルーン、ファイバーバルーン、編み組合み(braided)バルーン及び/又はカッティングバルーンといった種々多様のバルーンカテーテルと併せて使用することができる。(本発明の特定実施形態では、カッティングバルーン上のブレードを対電極として使用し得ることに留意されたい。)
以下に述べることから分かるように、本発明の多くの実施形態では、本発明の医療デバイスの上又は中に層の形態で材料を設ける。本明細書で使用する場合、ある材料の「層」とは、当該材料の長さと幅の両方に比べてその厚さが小さい(例えば、25%以下)である当該材料の部分である。本明細書で使用する場合、層は平面である必要はなく、例えば、基礎をなす基体の輪郭を呈する。層は不連続(例えば、パターン化された)であり得る。層は積層し得る。本明細書では、「フィルム」、「層」及び「コーティング」等の用語を相互交換可能に使用し得る。
【0018】
次に図面を参照する。図1Aは、本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーン表面の一部など)の概略上面図である。図1Bは、図1AのB−B線に沿った概略断面図である。示したデバイスは、基体110(例えば、柔軟又は非柔軟基体材料など)を含み、その中に種々の窪み(例えば、示した実施形態では溝)が形成されている。基体110上には金属層120(例えば、電着、無電解沈着、又はPVD沈着された金層、白金層など)が配置され、その上に伝導性ポリマー電極130(例えば、適切なアニオンでドープした電着ポリピロール層)が設けられている。金属薄層120が伝導性ポリマー電極130の電気接点として作用する。結果として生じる構造の溝(本明細書では一般的にレザバーと称する)が治療薬含有材料140で満たされる。レザバー内に治療薬含有材料を装填する非常に好適な方法は、インクジェットプリンター又はピコリットルディスペンサーを利用する。このようなデバイスは、それぞれ個々のレザバー内に沈着される治療薬含有材料の量を定義できるという利点をも有する。
伝導性ポリマー電極130と対電極との間に配置された適切な電解質(例えば、血液などの生理液、図示せず)の存在下で伝導性ポリマー電極130と対電極(図示せず)との間に適切な電位を加えると、伝導性ポリマー電極130内の伝導性ポリマーがその酸化状態を変え、結果として図2A及び2Bに示すように伝導性ポリマー電極130が膨張する。この膨張(図2B中、矢印で示す)が、レザバー内の治療薬含有材料140の一部の排出につながる。
例えば、伝導性ポリマー電極130は、ドーピング材料用の小型アニオンと共に電着され、次いで該イオンを還元及び排出した後に治療薬含有材料140を装填したポリピロールを含んでよい。デバイスを対象の体内に挿入すると、ポリピロールが酸化され、結果として周囲の生理液からのアニオン(例えば、Cl-など)の流入と伝導性ポリマー電極130の膨張をもたらす。
【0019】
別の例として、伝導性ポリマー電極130は、ドーピング材料用の大型の実質的に不動性のアニオンと共に電着され、治療薬含有材料140の装填前に還元されていないポリピロールを含んでよい。デバイスを対象の体内に挿入すると、適切な電位の適用によってポリピロールが還元され、結果として周囲の生理液からのカチオン(例えば、Na+、K+など)の流入をもたらす。
上述したように、ドデシルベンゼンスルホナート等のアニオン性界面活性剤でドープされたポリピロールは、還元状態で親水性が高くなることが分かっている。治療薬含有材料が疎水性(例えば、疎水性溶媒中のパクリタキセル又は別の疎水性薬物など)である場合、伝導性ポリマー電極130の親水性の増加は、親水性-疎水性反発に基づいた治療薬含有材料の排出を補助し得る。
図1A、1B及び2A、2Bに示す本発明の実施形態では、基体材料が非伝導性であり、電解重合前に伝導層を加える必要がある。他方で、基体が伝導性であれば、伝導性ポリマーを基体上で直接電解重合させることができる。
上記実施形態について多くの他の変形も可能である。例えば、図3は、図1AのB−B線に沿った代替断面である。図1Bの断面と同様に、図3の断面は、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、及び治療薬含有材料140を含む。しかし、窪み(例えば、溝など)が基体材料内に形成されている図1Bの断面と異なり、図3の断面の窪みは、伝導性ポリマー電極130内に形成されている。
【0020】
図4は、図1AのB−B線に沿った別の代替断面である。図1Bの断面と同様に、図4の断面は、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、及び治療薬含有材料140を含む。しかし、図1Bの断面と異なり、窪み(例えば、溝など)を作り出すため、基体110上にレザバー形成材料の追加層150が配置されている。追加層の材料150は、基体110を形成する材料と同一であってよく、或いは追加層が異なる材料を形成してよい。異なる材料は、例えば、電気活性ポリマーの硬度より高い硬度を有するポリマーであってよい。
本発明の特定の実施形態では、レザバー内の治療薬含有材料は、治療薬含有材料の早過ぎる放出を防止するためのバリア層で覆われている。このような実施形態は、例えば、治療薬含有材料が非常に可溶性である場合及び/又は体の上若しくは中への医療デバイスの設置と、治療薬の放出との間に実質的な時間があることが望ましい場合に役立ち得る。例えば、図12は、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、及び治療薬含有材料140を含む点で図1A、1Bのデバイスと同様のデバイスである。しかし、図1A、1Bのデバイスと異なり、図12のデバイスは、治療薬含有窪みの口を覆うバリア層170をさらに含む。
バリア材料の例として、(a)伝導性ポリマー電極を拡張/膨張させるために使用する電解質イオンに透過性であるが、治療薬には透過性でない当該材料及び(b)伝導性ポリマー電極を拡張/膨張させるために使用する電解質イオンと治療薬の両方に透過性である当該材料が挙げられる。該材料の具体例として高分子電解質が挙げられる(好ましくは、高分子電解質と薬剤との間の静電相互作用を回避するため無電荷治療薬と併せて使用する)。例えば単一の高分子電解質層(例えば、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアリルアミドヒドロクロリド(PAH)、ヘパリン等)又は交互電荷の複数層(例えば、PAH\PAA、キトサン\ヘパリンなど)を表面に適用してよい。疎水性薬剤のため、フッ素化高分子電解質、例えばNa+イオン、
【0021】
【化1】
【0022】
、及びポリ(ビニルピリジン)から合成されたポリカチオン及びフッ素化アルキルヨージド、
【0023】
【化2】
【0024】
を利用し得る(R.M. Jisr et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 782-785)。
別の具体例では、マクロ多孔性膜をデバイスに適用し得る。この点で、ナノメートル〜数百ミクロンの範囲の制御された孔径を有するハニカムパターン化フィルムとして種々のタイプのポリマーを二次加工することができる(L. Wang et al., “Formation of ordered macroporous films from fluorinated polyimide by water droplets templating,” European Polymer Journal 43 (2007) 862-869)。電解質イオンも治療薬も両方とも該細孔を通って拡散できるが、治療薬のバルクは伝導性ポリマー電極の拡張/膨張の時間までレザバー内に残ると予測される(デバイスの導入と電極の活性化との間の時間が相対的に短いと仮定して)。
バリア部材のさらなる例として、薬物送達に望ましい位置にデバイスを移植/挿入するために利用するフレームを経時的に溶解する材料層が挙げられる。該材料の例として、とりわけマンニトール及びポリエチレングリコールが挙げられる。
なおさらなる例では、pH感受性材料をバリア部材として利用して、デバイスのレザバーからの治療薬の早過ぎる放出を防止することができる。例えば、生理的pHでは溶けないが、わずかに酸性のpH又はわずかに塩基性のpHでは溶ける材料をこの目的に利用し得る。近傍電極、例えば、レザバー内の電極又はデバイスの表面上のバリアに隣接する電極に、局所環境のpHを変えるための適切なバイアスを与えて、該材料を溶かすことができる。例えば、適切なアノードバイアスを加えて電解生成酸を供給するか又は適切なカソードバイアスを加えて電解生成塩基を供給し得る。一部の例では、このような材料を架橋して、pH膨張性及びpH収縮性ゲルを与えることができる。該材料の例として、生理的pHでは不溶性であり、わずかに酸性のpHで可溶性になる材料、例えば、わずかに酸性のpHでプロトン化されて荷電基(例えば、アンモニウム等)に変換され、該材料を水/血液に可溶性にするようになる官能基(例えば、アミン等)を有する材料が挙げられる。わずかに酸性のpHで可溶性になる材料の1つの具体例はキトサンである。該材料の例としてさらに、生理的pHで不溶性であり、わずかに塩基性のpHで可溶性になる材料、例えば、わずかに塩基性のpHで脱プロトン化されて荷電基(例えば、-COO-等)に変換され、該材料を水/血液に可溶性にするようになる官能基(例えば、-COOH等)を有する材料が挙げられる。
【0025】
前記図面には対電極を示していない。前述したように、一部の実施形態では対電極を別のデバイスの形態で供給することができる。他の実施形態では、1つ以上の対電極を医療デバイスの上又は中に配置してよい。
例えば、図5は、本発明のバルーンカテーテル500のバルーン部分の概略図である。バルーンカテーテル500はバルーン505を含む。バルーン505の円筒部分上には、本明細書の他のところに記載のもの(少なくとも1つのレザバー、このレザバー内に配置された治療薬含有領域、及び伝導性ポリマー電極を含む)と同様の治療薬送達領域510が配置されている。バルーン505の錐体部分上に対電極520(例えば、金など)が配置されている。
他の実施形態では、治療薬送達領域内に1つ以上の対電極が組み込まれている。例えば、図6Aは本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーン表面の一部)の概略上面図である。図6Bは、図6AのB−B線に沿った概略断面図である。上記図4と同様に、図6Bは、基体110、金属薄層120、伝導性ポリマー電極130、治療薬含有材料140、及び窪みを作り出すレザバー形成材料の層150を含む。図6Cは、図6AのC−C線に沿った概略断面図であり、基体110の上に配置されたレザバー形成材料の層150の上に配置された対電極160を示す(図6Cでは、層150がなくても可能であろう(基体110が非伝導性である限り))。対電極160に加えて(又は対電極160に代えて)、図6A〜6Cのデバイスが基準電極(例えば、上述した電極と同様のAg/AgClクロリド電極)を備えてよい。
対電極が別のデバイス上に位置する場合、医療デバイスの、レザバーを含む特有の領域上の伝導性ポリマーの酸化状態を優先的に変えて、医療デバイスの特定領域から治療薬を優先的に放出するが、他の領域では放出しないようにすることができる。例えば、バルーン表面の円筒部分を完全に覆うレザバー/貯蔵所を有する血管形成バルーンシステムを、第1ガイドワイヤーに沿って該脈管構造の分岐部の主分岐中へ前進させたいことがある。分岐部の側分岐内にある別のガイドワイヤー上に異なる対電極デバイスを配置してよい。バルーン上の対電極と伝導性ポリマー電極に適切なバイアスを与えると、側分岐の近傍のレザバーが、側分岐に対抗するレザバーより早く活性化される(電流分布効果のため)。
【0026】
別の例として、インプラントを移植した後、該デバイスの表面の特有領域のみから治療薬を放出させることができる。例えば、医療デバイスの、組織の再生がデバイスの他の領域に比べて緩徐に進行している領域から優先的に治療薬を放出させたいことがある。例えば、その遅い再生領域の近傍に対電極(例えば、先端が絶縁されていない絶縁伝導針など)を設置して、そこで一定量の治療薬を放出させることができる。レザバー間で内部接続させることによって、デバイス内の残存薬物量をレザバー間で均等にすることができる。
組織再生材料の例として、とりわけ、例えば、成長因子刺激ホルモン及び因子、例えばプロゲステロン、エストロゲン、メチル-プレドニゾロン、トリアムジノロン-アセタト、コルチコステロイド、インスリン、PDGF(血小板由来成長因子)、プルプリン及びアクチビンが挙げられる。成長因子のさらなる例として、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、骨形成タンパク質(BMP)、組換えヒト骨形成タンパク質(rhBMP)、上皮成長因子(EGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子I(IGF-I)、神経成長因子(NGF)、形質転換成長因子(TGF)及び血管内皮成長因子(VEGF)が挙げられる。
【0027】
上記から分かるように、本発明の種々の実施形態は、医療デバイス表面における窪みの形成に関与し、窪みは最終的に治療薬のレザバーを形成する。上記例では溝を示したが、多種多様な形状と大きさで窪みを作り出すことができる。窪みのさらなる例として、多孔性基体中の細孔も挙げられる。例として、その横の広がりが円形、多角形(例えば、三角形、四辺形、五辺形など)である細孔、並びに種々の他の規則的及び不規則的な形状及び大きさの細孔が挙げられる。無限に近い種々の配列で複数の窪みを設けることができる。溝には、単純な線形溝、波形溝、方向が角変化する線形セグメントから形成される溝(例えば、ジグザグ溝)、及び種々の角度で交わる線形溝網目構造、並びに他の規則的及び不規則的溝構造が含まれる。窪みは、本発明の特徴をもたらすいずれの適切な大きさのものであてもよい。例えば、本発明の医療デバイスは典型的に、その最小横寸法(例えば、幅)が10mm(10000μm)未満、例えば、10000μm〜1000μm〜100μm〜10μm〜1μm〜100nm又は100nm未満の範囲である。
一定の実施形態では、最小横寸法(例えば、幅)が約1μm〜10μmである。例えば、ポリピロールでは、酸化状態に比べて還元状態で35%以上フィルム厚が増えると報告していることに加えて、E. Smelaら(前出)は、最高の変化はフィルム厚に左右され、1.5μm近傍のフィルムが最大の歪みを受けることをさらに観察した。
【0028】
窪み(例えば、細孔、溝など)を形成するための技法の例には、材料が、形成されたままの窪みを含む方法も含まれる。これには、種々の突出部を備えてよい型が、問題の基体を鋳造した後に、該材料内に窪みを作り出す成形方法が含まれる。これらの技法はさらに、発泡に基づいた技法のような、それによって多孔性材料を形成する方法を包含する。適切なプロセス(例えば、溶解、エッチング等)を用いて多成分材料から一成分を除去することによって、多孔性材料を形成することもできる。1つの具体例として、多孔性ポリピロール層は、ポリピロール電解重合中にシリカを組み入れる(例えば、負に荷電したシリカ粒子を電気泳動によって組み入れる)ことによって形成され得る。そして、例えば、L. Hao et al., Synthetic Metals, 139(2), 2003, 391-396の方針に従って、ポリピロールからシリカ粒子を除去することができる。
ポリピロールを形成する方法のさらなる例として、ピロールと、電解質としても界面活性剤としても機能する物質(例えば、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩)とを含む溶液からポリピロールを電解重合することができる。電気化学的バイアスの制御下での該試薬を用いた界面活性剤媒介成長は、ミセル周囲のピロールの電気化学的重合に帰するマイクロ/ナノ構造(カップ/ボウル様容器を含め)の合成につながると報告されている(S. Gupta et al., “Spherical Molecular Containers of Polypyrrole: From Discovery to Design to Drug Delivery Applications,” 10th Annual NSTI Nanotech, The Nanotechnology Conference and Trade Show, Santa Clara, May 22, 2007)。
【0029】
窪みを形成するための技法の例はさらに、直接除去並びに除去すべきでない材料を保護するためにマスキングを利用するマスクに基づいた除去法を包含する。直接除去法は、材料を堅い工具と接触させて材料を除去する方法(例えば、マイクロドリリング、マイクロ機械加工など)及び堅い工具を必要とせずに材料を除去する方法(例えば、レーザー、電子、及びイオンビーム等の有向エネルギービームに基づいた方法)を包含する。マスクに基づいた技法には、機械加工すべき材料とマスキング材料が接触する方法(例えば、既知のリソグラフィー法を用いてマスクを形成する場合)及び機械加工すべき材料とマスキング材料が接触しないが、有向掘削エネルギー源と機械加工すべき材料との間にマスキング材料(例えば、中に開口部が形成されている不透明マスク、並びに半透明マスク、例えば可変ビーム強度、ひいては可変機械加工速度を与えるグレースケールマスク)を設ける方法が含まれる。上記マスクで保護されていない領域の材料は、物理プロセス(例えば、除去される材料の熱昇華及び/又は蒸発)、化学プロセス(例えば、除去される材料の化学分解及び/又は反応)、又は両者の組合せを含めたいずれの様々なプロセスを用いても除去される。除去プロセスの具体例として、湿式及び乾式(プラズマ)エッチング法、及び電子、イオン及びレーザービーム等の有向エネルギービームに基づいたアブレーション法が挙げられる。
【0030】
さらに他の実施形態では、基体表面上、例えば、パターン化表面上又はマスク表面上での材料の選択的成長によって窪みを形成することができる。
例えば、図7Bは、その上に伝導性材料の格子120a(例えば、金属)が沈着している基体110の一部の概略上面図である。図7Aは、A−A線に沿った図7Bの断面である。次に図7A及び7Bの伝導性材料120を用いて、図8に示すように電着層、例えば、伝導性ポリマー材料の層130a(例えばドープドポリピロール)を作り出すことができる。一部の実施形態では(図示せず)、この構造に治療薬含有材料を装填することができる。他の実施形態では、図8の構造を次に図9に示すように伝導層120bでコーティングすると、図10に示すように、伝導性ポリマー材料の層130b(例えば、ドープドポリピロール)が形成される。最後に図10のレザバーRが、図11Aに示すように治療薬含有材料140で満たされる。図11Bは、図11Aのデバイスの上面図である。ポリピロールの上層130bの酸化又は還元による該層130bの膨張が、治療薬含有材料140のレザバーからの排出をもたらす。図示した実施形態では、ポリピロールの下層130aは膨張せず(電解質と接触していない)、むしろ構造的性質である。
【0031】
上記種々の実施形態では、酸化状態の変化による伝導性ポリマー電極の膨張の結果として、本発明のデバイスから治療薬が送達される。他の実施形態では、酸化状態の変化による伝導性ポリマー電極の収縮に応じて治療薬が送達される。
例えば、本発明の多くの実施形態では、レザバーを含み、レザバーの口で医療デバイスの外側に開放している医療デバイスを提供する。これらの実施形態のレザバーの口は、膨張すると治療薬の流れを制限し、収縮すると治療薬の流れを許容する伝導性ポリマー電極を備えてよい。換言すれば、レザバーの口は、伝導性ポリマーの収縮によって広がり、伝導性ポリマーの拡張によって狭くなる(一部の実施形態では閉じる)。
該デバイスの一例を図13A〜13Bに示す。図13Aは、レザバーに治療薬含有材料を装填する前の本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーン表面の一部など)の概略上面図である。図13Bは、図13AのB−B線に沿った概略断面図である。図13Bは、基体110、窪み形成材料の層150(レザバーRを形成する)、窪み形成層150の上部の伝導層120(例えば、金属層)、及び伝導層120上に形成された伝導性ポリマー電極130を示す。この構造は、例えば、基体110全体の上に窪み形成材料150(例えば、ポリマー)及び伝導性材料 120(例えば、金属)を沈着させた後、マスキング、窪み形成材料150及び伝導性材料120のエッチング、及びマスク除去によって、図13Cのような構造を形成することによって形成され得る。次に、電解重合プロセスを行なって伝導性ポリマー電極130を作製する。図13A、13Bの伝導性ポリマー電極130は収縮状態であり、この構造は治療薬含有材料140を装填できる。次に電極130が拡張すると、図14A〜14Bに示すように治療薬含有材料140を捕捉する(図14Bは、治療薬装填構造の概略上面図であり、図14Aは、図14BのA−A線に沿った概略断面図である)。デバイスをin vivoに移植すると、伝導性ポリマー電極130が再び収縮して図13A〜13Bと同様のコンフィギュレーションになり、治療薬の放出を可能にする。
【0032】
K. Yamada et al., Journal of The Electrochemical Society, 151 (1), 2004, E14-E19は、まず無電解メッキプロセスを利用して金でポリエステルフィルター膜のμm未満の細孔壁(及び外面)をメッキした後、この細孔壁(及び外面)上でポリピロールを電解重合させるプロセスを開示している。彼らは、細孔内に電着されたポリピロールの厚さが細孔深さによって一定でないことを見い出した。もっと正確に言えば、彼らは、ポリピロール壁が膜の中心より膜表面で厚いことを見い出し、彼らは、このような「ボトルネック」は、ポリピロール合成の速度が、細孔内深くより膜表面で速いために起こると仮定した。彼らは、この状況は、ポリピロールの沈着速度が前駆材料(ピロールモノマー)の細孔下への物質移動の速度を超えると起こるとことを見い出した。
同様の条件を利用して、本発明の治療薬送達デバイスを提供することができる。例えば、図15は、(非伝導性)基体材料110と、該基体上に沈着した多孔性伝導性材料の層120とを含む医療デバイスの一部の概略断面である。沈着層130の厚さが細孔内よりデバイスの表面で大きくなるような条件下、伝導性材料120上で伝導性ポリマー電極130(例えば、実質的に不動性のポリマーアニオンと共にポリピロール)を重合させた(本明細書の他のところで述べたように、多孔性材料が非伝導性である限りでは、多孔性材料上に伝導性材料層を沈着させることによって多孔性材料を伝導性にし得る−例えば、上記K. Yamadaらに記載の無電解メッキプロセス参照)。デバイスに治療薬含有材料140を装填した後、伝導性ポリマー130を膨張させて(例えば、ポリピロールをカチオン性電解質と接触させながら還元することによって)、図15に示すデバイスを生じさせる。患者に送達したら、伝導性ポリマー130を酸化し、デバイス表面の細孔を再び開くことによって、デバイスからの治療薬の放出を開始する/放出速度を高めることができる。
【0033】
図15のデバイスと同様の実施形態では、細孔の側壁全体を覆うための伝導性ポリマーが必要ない。もっと正確に言えば、細孔の口に伝導性ポリマーを設けることが求められるだけである。例えば、図16Aは、図15と同様に基体材料110と該基体上に沈着した伝導性材料120の多孔性層とを含む医療デバイスの一部の概略断面である。図15とは異なり、伝導性ポリマー130(例えば、実質的に不動性のポリマーカチオンと共にポリピロール)がデバイス表面上と細孔の口に沈着されているが、細孔内深くは沈着されていない。図6Aに示すように細孔に治療薬140を装填する。この装填プロセス後、伝導性ポリマー130の膨張をもたらし(例えば、ポリピロールを電解質中のカチオンと接触させながら還元することによって)、図16Bに示すように細孔の口を閉じる(又は狭くする)条件に図6Aの構造をさらす。患者に送達したら、導性ポリマー130を酸化して、デバイス表面の細孔を開き、治療薬140がデバイスから出られるようにすることによって、デバイスからの治療薬の放出を開始し/その放出速度を高めることができる。例えば、図16Cを参照されたい。
【0034】
今度は、伝導性ポリマー電極の収縮に応じて治療薬を送達するデバイスの別の例について図17A〜17Iの概略断面図に関連して述べる。
まず、図17Aに示すように、狭い金属ストライプ210nと広い金属ストライプ210wを有する金属層(例えば、金層)を多孔性膜220(例えば、トラックエッチング(track-etched)ポリカーボナート膜)の一面に沈着させる。この後、広いストライプ210wの細孔内で伝導性ポリマー(例えば、比較的可動性のアニオンでドープされたポリピロール)を電解重合させて、膜220が伝導性ポリマー繊維を含む領域220pを生じさせる。次に、例えば、A.S. Lee et al., “Electroactive Polymer Actuation at the Nanoscale,” Sixth IEEE Conference on Nanotechnology, 2006. IEEE-NANO 2006, Volume 2, 818-821に記載されているようにクロロホルムを用いて膜220の上部を除去し、図17Cに示すように伝導性ポリマー繊維230の先端を露出させる。次に膜220上に上側金属層210u(例えば、金層)を沈着させて、伝導性ポリマー繊維の先端を包み込んで、図17Dに示す構造にする。次に図17Eに示すように、金層上にポリマー材料(例えば、ポリウレタン)の上層260uと下層260lを沈着させて金層を絶縁かつ支持する。図17Fに示すように上面に穴215を形成した後、デバイスの内部から多孔性膜材料220を除去して、図17Gに示すように伝導性ポリマー繊維230で橋渡しされたレザバー235を残す。次に図17Hに示すようにレザバーを治療薬240で満たす。患者に送達したら、伝導性ポリマー230を還元して(例えば、狭いストライプ210nと広いストライプ210wとの間に適切な電位を加えることによって)図17Iに示すように、繊維230を収縮させ、対向壁を一緒に引いてレザバーを収縮させてデバイスから治療薬240を追いやることによって、デバイスからの治療薬の放出を開始し/その放出速度を高めることができる。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、前記戦略の組合せを利用する。例えば、下記要素:(a)伝導性ポリマーが収縮したとき(伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、少なくとも1つのレザバーの口が拡大するように配置された少なくとも1つの第1の伝導性ポリマー電極及び(b)伝導性ポリマーが膨張したとき(伝導性ポリマーの酸化又は還元によって)、レザバーの容積が減少するように、レザバー内に配置された少なくとも1つの第2の伝導性ポリマー電極;を有する医療デバイスを提供することができる。
このようなデバイスの一例を図18Aに示す。図18Aは、治療薬含有材料をデバイスに装填する前の本発明の医療デバイス表面の一部(例えば、バルーンの一部など)の概略断面図である。図18Aは、基体110、下側伝導層120l(例えば、金属)、下側伝導性ポリマー電極130l、窪み形成材料の層150(ここでは非伝導性ポリマー等の電気絶縁材料から形成された)、窪み形成層150上の上側伝導層120u、及び上側伝導層120u上に形成された上側伝導性ポリマー電極130uを含む。この構造は、例えば、伝導性材料の下側層120lを基体上に沈着させた後、電解重合プロセスで下側伝導性ポリマー電極130lを生じさせることによって形成され得る。下側伝導性ポリマー電極130lの上に窪み形成材料の層150と伝導性材料の層を沈着させた後、マスキング及びエッチングによって図18Bの構造と同様の構造を形成する。次に、電解重合プロセスを行なって、図18Aに示すように伝導性ポリマー電極130uを作り出す。
前記構成については当然に多くの変形が可能である。例えば、伝導性ポリマー材料と窪み形成材料との間に良いエッチング選択性がある場合、伝導性ポリマー電極130uの形成後に窪み形成材料のエッチングを行なってもよく、すなわち、図18Cと同様の構造をエッチングして、図18Aと同様の構造を作り出してよい。
【0036】
別の例として、下側伝導性ポリマー電極の上に窪み形成材料を沈着させるのではなく、図18Cに示すように基体110上で窪み形成材料の層150を形成かつパターン化してよい。これは、例えば、単一の沈着工程で上側伝導層120uと下側伝導層120lを形成する可能性を考慮し得る(伝導性材料が窪み形成材料150の壁に沈着されないと仮定した場合であり、沈着されると上側伝導層120uと下側伝導層120lの間に電気的短絡をもたらし得るが、この結果は層150の壁をアンダーカットすることで回避し得る)。次にこの工程の後、単一の電解重合工程で上側伝導性ポリマー電極130uと下側伝導性ポリマー電極130lを形成できるであろう。
図18A及び18Cと同様のデバイス構造では、作動中に上側伝導性ポリマー電極130uが下側伝導性ポリマー電極130lの対電極として作用し得る。そして逆も同じである。
【0037】
次に電解質(図示せず)の存在下の図19Aでは、図18Aと同様の構造の電極に、下側伝導性ポリマー電極130lが膨張状態になり、かつ上側伝導性ポリマー電極130uが収縮状態になるようにバイアスをかけることができる。例えば、図19Aの伝導性ポリマー電極130l、130uを大型(実質的に不動性)アニオンの存在下で形成することができる。電極が適切な電解質と接触していると仮定して、ポリピロールが酸化されるように一方の電極(例えば、上側伝導性ポリマー電極130u)にバイアスをかけて当該電極を収縮状態に置きながら、他方の電極(例えば、下側伝導性ポリマー電極130l)を電極が還元されるようにバイアスをかけて当該電極を膨張状態に置く(例えば、電解質からの、電荷均衡を保つカチオンの流入のため)。図19Aに示すコンフィギュレーションでは、レザバーをデバイスの外側に開いて、レザバーに治療薬含有材料140を装填することができる。これは、図19Aの概略上面図である図19Bからさらに容易に分かるであろう(図19Aは、図19BのA−A線に沿った断面を表す)。
レザバーに装填した後、図20Aに示すように、下側伝導性ポリマー電極130lが収縮状態になり、かつ上側伝導性ポリマー電極130uが膨張状態になるように、電極にバイアスをかけることができる。例えば、下側伝導性ポリマー電極130lに、ポリピロールが酸化されるようにバイアスをかけて、当該電極を収縮状態(例えば、カチオンの排出のため)に置きながら、上側伝導性ポリマー電極130uに、該電極が還元されるようにバイアスをかけて、当該電極を拡張状態(例えば、カチオンの流入のため)に置く。図20Aのコンフィギュレーションでは、レザバーは、例えば、図20Bの概略上面図から分かるようにデバイスの外側へは実質的に閉じている(図20Aは、図20BのA−A線に沿った断面である)。
再びin vivovで電極130l、130uのバイアスを逆にすることによって、構造を図19Aの構造に戻して、上側伝導性ポリマー電極130uを収縮させることでレザバーを開くことができる。さらに、下側伝導性ポリマー電極130lは膨張する。これらの作用が治療薬含有材料140の排出を促進する。
【0038】
さらに、上述したように、還元されると膨張するのみならず親水性も高くなることが観察される伝導性ポリマー電極を開発した。逆に、これらの電極は、酸化されると収縮して疎水性が高くなることが観察された。このような電極を疎水性治療薬含有材料140(例えば、疎水性液体に溶解したパクリタキセル又はオリムス(olimus)ファミリーの薬物、例えばエベロリムス若しくは6-メルカプトプリン)と併用することによって、下側伝導性ポリマー電極130lの膨張の結果としてのみならず、下側伝導性ポリマー電極130lの疎水性から親水性状態への切り替えによって起こる親水性-疎水性反発の結果としても治療薬含有材料140がレザバーから追い出される。
本発明の特定の実施形態では、表面トポグラフィーを利用して、治療薬送達を補助することができる。例えば、図21Aは、本発明の医療デバイスの表面の一部の概略上面図である。図21Bは、図21AのB−B線に沿った断面である。図21A〜21Bは、中に種々の窪みが形成された基体110を含むという点で図1A〜1Bと同様である。基体110の上に金属薄層120が配置され、その上に伝導性ポリマー電極130(例えば、適切なアニオンでドープされた電着ポリピロール層)が設けられている。この構造の窪みは治療薬含有材料140で満たされる。しかし、図1A〜1Bと異なり、窪みが溝ではなくて細孔(すなわち、矩形細孔)である。さらに、各細孔のリムに隆起リング130r(すなわち、矩形リング)材料(例えば、伝導性ポリマー材料又は別の可撓性材料のリング)が備わっている。
図21A〜21Bは、例えば、本発明のバルーンカテーテルのバルーンの一部を表し得る。該実施形態では、隆起リング130rは、バルーンが血管壁に対抗して拡張している限り、シールとして作用し得る。さらに、バルーンが収縮すると、隆起リング130rがレザバー内の負圧の形成を促し(以前圧縮されていたトイレ用プランジャーの引き込みが負圧を生じさせるのと酷似している)、治療薬の送達を補助する。
【0039】
上述したように、本発明の医療デバイスは治療薬送達デバイスである。「治療薬」、「薬物」、「生物活性剤」、「医薬」、「医薬活性剤」、及び他の関連用語は本明細書では相互交換可能に使用され、遺伝的及び非遺伝的治療薬を包含する。
治療薬を単独で使用しても併用してもよい。前記実施形態では、単一治療薬を送達する場合の本発明の医療デバイスについて述べている。しかし、他の実施形態では、複数タイプの治療薬を送達する。例えば、再狭窄の治療に関係する実施形態では(例えば、デバイスが薬物送達医療バルーンである場合)、抗再狭窄薬の送達前に血管拡張薬を送達するのが望ましいことがある。該薬剤は、例えば、混合物として放出され、それら薬剤が医療デバイス表面上の異なるレザバーから放出され得る。一例として、図14A〜14Bのデバイスの交互のレザバー(溝)に異なる治療薬を供給してよい。別の例として、11A〜11Bのデバイスの交互のレザバー(細孔)に異なる治療薬を供給してよい(例えば、「チェッカーボード」様式で)。
本発明のデバイスと共に種々多様な治療薬充填物を使用することができ、医薬的に有効な量は、当業者によって、かつ最終的には、例えば、治療すべき状態、治療薬自体の性質、デバイスを導入する組織、組織に治療薬をさらす持続時間などによって容易に決定される。
医療デバイスを再狭窄の治療用パクリタキセルを放出するために構成された本発明の当該特有の実施形態では、デバイス内のパクリタキセルの量は、例えば、デバイス表面1mm2当たり(例えば、バルーン表面1mm2当たり)0.01〜0.025〜0.05〜0.1〜0.25〜0.5〜1〜2.5〜5μgの範囲で非常に広く変化し得る。本発明の医療デバイスが再狭窄の治療用エベロリムスを放出するために構成された別の特有の例では、デバイス上のエベロリムスの量は、例えば、デバイス表面1mm2当たり(例えば、バルーン表面1mm2当たり)0.025〜0.05〜0.1〜0.25〜0.5〜1〜2.5〜5〜10μgの範囲で非常に広く変化し得る。本発明の医療デバイスが再狭窄の治療用6-メルカプトプリンを放出するために構成された別の特有の例では、デバイス上の6-メルカプトプリンの量は、例えば、デバイス表面1mm2当たり(例えば、バルーン表面1mm2当たり)1〜2.5〜5〜10〜25〜50〜100〜250μgの範囲で非常に広く変化し得る。
【0040】
治療薬としては非イオン性治療薬、カチオン性治療薬及びアニオン性治療薬が挙げられる。該治療薬を本発明のレザバー内に配置することができる。例えば該治療薬を純粋形態で配置するか或いはレザバー内で追加化合物に混合又は共有結合させることができる。該追加化合物の例として、以下の特性を有する1種以上の化合物が挙げられる:治療薬の溶解度を高める化合物及び隣接組織による治療薬の取込みを増やす化合物。該化合物の一例はイオプロミド(ヨウ素ベース造影剤)であり、生理食塩水内での抗再狭窄薬の溶解度を有意に高めることが分かっている(特に、パクリタキセル)。イオプロミドは曝露後数秒間血管壁に接着するので、パクリタキセル等の抗再狭窄薬のin vivoマトリックスとして一時的に作用し得るすることも分かっている。例えば、B. Scheller et al., Journal of the American College of Cardiology, 42(8), 2003, 1415-1420を参照されたい。該追加化合物の他の例には、取込み後に細胞からの治療薬のポンピングに応答するタンパク質を阻害することによって、細胞内の治療薬の濃度を高める化合物が含まれる。例えば、P-糖タンパク質(P-gp)は、新生物組織内における多剤耐性に関与する最も重要な輸送タンパク質の1つである。このタンパク質を多く発現する癌組織内では、P-gpがパクリタキセルといった多くの化学療法薬の細胞内濃度を減少させる薬物排出ポンプとして機能する。パクリタキセル及び他の化学療法薬は、再狭窄に応答性の平滑筋細胞増殖を遮断するときに使用される。従って、阻害すること(P-gpを)は、本発明のデバイス(例えば、薬物溶出バルーン)で治療される血管壁内でより高い細胞内薬用量を得るのにも有効だろう。従って特定の実施形態では、P-糖タンパク質阻害薬は抗再狭窄薬と相互に関連する。P-糖タンパク質阻害薬の例として、例えば、シクロスポリンD及びその類似体(例えば、バルスポダール(valspodar)等)が挙げられる。
【0041】
治療薬が追加化合物と共有結合している当該実施形態では、結合が酸性pH(適切なアノードバイアスでアノードに得られる)又はアルカリ性pH(適切なアノードバイアスでカソードにて得られる)で容易に分解されるように結合を選択することができる。該材料の具体例として、(a)パクリタキセルがヒドラゾンリンカーを介してPEG(可溶化剤として作用する)に結合している酸感受性ポリエチレングリコール(PEG)抱合体(例えば、K. Ulbrich, “Polymeric anticancer drugs with pH-controlled activation,” Advanced Drug Delivery Reviews, 56 (2004) 1023-1050及びその中の引用文献を参照されたい)及び(b)パクリタキセル2'-N-メチルピリジニウムメシラート(PNMM)、
【0042】
【化3】
【0043】
(ここで、パクリタキセルとN-メチルピロリジンエンティティー(可溶化剤として作用する)を結びつけている結合の加水分解が塩基性触媒作用を示すと報告されている(例えば、Jaber G. Qasem et al, AAPS PharmSciTech 2003, 4(2) Article 21を参照されたい))が挙げられる。PNMMのN-メチルピリジニウム部分の1つ以上の環水素のヨウ素との置換がパクリタキセル抱合体を放射線不透過性にし得ることに留意されたい。
治療薬がアニオン性治療薬である当該実施形態では、治療薬を本発明の伝導性ポリマー電極内に配置する(例えば、電解重合プロセスでポリピロール又は別の伝導性ポリマーと共沈着させる)ことができる。このような場合、アニオン性治療薬は、形成される伝導性ポリマーに典型的に共有結合されないことに留意されたい。
本発明とともに使用する典型的治療薬は、例えば、とりわけ以下のものから選択され得る:(a)抗血栓薬、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレル、及びPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン);(b)抗炎症薬、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン及びメサラミン;(c)抗悪性腫瘍/抗増殖/抗縮瞳(anti-miotic)薬、例えばパクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロネス、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を遮断できるモノクロナール抗体、及びチミジンキナーゼ阻害薬;(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカイン及びロピバカイン;(e)抗凝固薬、例えばD-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬及びダニ抗血小板ペプチド;(f)血管細胞成長促進薬、例えば成長因子、転写活性薬、及び翻訳促進薬;(g)血管細胞成長阻害薬、例えば成長因子阻害薬、成長因子受容体拮抗薬、転写抑制薬、翻訳抑制薬、複製阻害薬、抑制抗体、成長因子特異性抗体、成長因子と細胞毒から成る二機能性分子、抗体と細胞毒から成る二機能性分子;(h)タンパク質キナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害薬(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);(i)プロスタサイクリン類似体;(j)コレステロール低減剤;(k)アンジオポエチン;(l)抗菌薬、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びニトロフラントイン;(m)細胞毒性薬、細胞分裂阻害剤及び細胞増殖影響因子;(n)血管拡張薬;(o) 内因性血管作用機序を妨害する薬剤;(p)白血球動員の阻害薬、例えばモノクロナール抗体;(q)サイトカイン;(r)ホルモン;(s)HSP 90タンパク質の阻害薬(すなわち、Heat Shock Protein分子シャペロン又はハウスキーピングタンパク質であり、かつ細胞の成長及び生存に応答性の他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性と機能が必要である)、例えばゲルダナマイシン、(t)平滑筋弛緩薬、例えばα受容体拮抗薬(例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、テルアゾシン、プラゾシン及びアルフゾシン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラピミル、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニモジピン及びベプリジル)、β純粋作動薬(例えば、ドブタミン及びサルメテロール)、β受容体拮抗薬(例えば、アテノロール、メタプロロール及びブトキサミン)、アンジオテンシン-II受容体拮抗薬(例えば、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン及びテルミサルタン)、及び鎮痙薬/抗コリン薬(例えば、オキシブチニン クロリド、フラボキサート、トルテロジン、ヒヨスチアミンスルファート、ジクロミン)、(u)bARKct阻害薬、(v)ホスホランバン阻害薬、(w)Serca 2遺伝子/タンパク質、(x)免疫反応変更因子、例えばアミノキゾリン(aminoquizoline)、例えば、イミダゾキノリン、例えばレシキモド及びイミキモド、(y)ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI、AII、AIII、AIV、AVなど)、(z)選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)、例えばラロキシフェン、ラソホキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、オスペミフェン、PKS 3741、MF 101及びSR 16234、(aa)PPAR作動薬、例えばPPAR-α、γ及びδ作動薬、例えばロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ネトグリタゾン、フェノフィブラート、ベキサオテン、メタグリダセン、リボグリタゾン及びテサグリタザル、(bb)プロスタグランジンE作動薬、例えばPGE2作動薬、例えばアルプロスタジル又はONO 8815Ly、(cc) トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、(dd)バソペプチダーゼ阻害薬、例えばベナゼプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、デラプリル、モエキシプリル及びスピラプリル、(ee)チモシンβ4、(ff)リン脂質、例えばホスホリルコリン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルコリン、並びに(gg)VLA-4拮抗薬及びVCAM-1拮抗薬。
【0044】
必ずしも上掲の治療薬を含めなくても多くの治療薬が、例えば再狭窄を標的とする薬剤(抗再狭窄薬)として血管治療計画の候補として同定されている。このような薬剤は本発明の実施のために有用であり、例えば、以下の1つ以上の薬剤から選択され得る:(a)Caチャネル遮断薬、例えばベンゾチアゼピン、例えばジルチアゼム及びクレンチアゼム、ジヒドロピリジン、例えばニフェジピン、アムロジピン及びニカルダピン、並びにフェニルアルキルアミン、例えばベラパミル、(b)セロトニン径路調節因子、例えば:5-HT拮抗薬、例えばケタンセリン及びナフチドロフリル、並びに5-HT取込み阻害薬、例えばフルオキセチン、(c)環状ヌクレオチド径路薬、例えばホスホジエステラーゼ阻害薬、例えばシロスタゾール及びジピリダモール、アデニラート/グアニラートシクラーゼ刺激因子、例えばホルスコリン、並びにアデノシン類似体、(d)カテコラミン調節因子、例えばα-拮抗薬、例えばプラゾシン及びブナゾシン、β-拮抗薬、例えばプロプラノロール及びα/β-拮抗薬、例えばラベタロール及びカルベジロール、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、例えばボセンタン、シタキセンタンナトリウム、アトラセンタン、エンドネンタン、(f)一酸化窒素供与体/放出分子、例えば有機ニトラート/ニトリット、例えばニトログリセリン、イソソルビド ジニトラート及びアミルニトリット、無機ニトロソ化合物、例えばニトロプルシドナトリウム、シドノンイミン、例えばモルシドミン及びリンシドミン、ノノアート、例えばジアゼニウムジオラート及びアルカンジアミンのNO付加物、S-ニトロソ化合物、例えば低分子量化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン及びN-アセチル ペニシラミンのS-ニトロソ誘導体)及び高分子量化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖、合成ポリマー/オリゴマー及び天然ポリマー/オリゴマーのS-ニトロソ誘導体)、並びにC-ニトロソ-化合物、O-ニトロソ-化合物、N-ニトロソ-化合物及びL-アルギニン、(g)アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、例えばシラザプリル、ホシノプリル及びエナラプリル、(h)ATII受容体拮抗薬、例えばサララシン及びロサルチン、(i)血小板粘着阻害薬、例えばアルブミン及びポリエチレンオキシド、(j)血小板凝集阻害薬、例えばシロスタゾール、アスピリン及びチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)及びGP IIb/IIIa阻害薬、例えばアブシキシマブ、エピチフィバチド and チロフィバン、(k)凝固径路調節因子、例えばヘパリノイド、例えばヘパリン、低分子量ヘパリン、デキストランスルファート及びβ-シクロデキストリンテトラデカスルファート、トロンビン阻害薬、例えばヒルジン、ヒルログ、PPACK(D-phe-L-プロピル-L-arg-クロロメチルケトン)及びアルガトロバン、FXa阻害薬、例えばアンチスタチン及びTAP(ダニ抗凝固ペプチド)、ビタミンK阻害薬、例えばワルファリン、並びに活性化タンパク質C、(l)シクロオキシゲナーゼ径路阻害薬、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン及びスルフィンピラゾン、(m)天然及び合成コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン及びヒドロコルチゾン、(n)リポキシゲナーゼ径路阻害薬、例えばノルジヒドログアイレト酸及びカフェー酸、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E-及びP-セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM-1及びICAM-1相互作用の阻害薬、(r)プロスタグランジンとその類似体、例えばプロスタグランジン、例えばPGE1及びPGI2並びにプロスタサイクリン類似体、例えばシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト及びベラプロスト、(s)マクロファージ活性化防止薬、例えばビスホスホナート、(t)HMG-CoAレダクターゼ阻害薬、例えばロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン及びセリバスタチン、(u)魚油及びω-3-脂肪酸、(v)フリーラジカルスカベンジャー/抗酸化剤、例えばプロブコール、ビタミンC及びE、エブセレン、trans-レチノイン酸、SOD(オルゴテイン)及びSOD模倣薬、ベルテポルフィン、ロスタポルフィン、AGI 1067、及びM 40419、(w)種々の成長因子に影響を及ぼす薬剤、例えばFGF径路薬、例えばbFGF抗体及びキメラ融合タンパク質、PDGF受容体拮抗薬、例えばトラピジル、IGF径路因子、例えばソマトスタチン類似体、例えばアンギオペプチン及びオクレオチド、TGF-β径路因子、例えばポリアニオン性薬(ヘパリン、フコイジン)4、デコリン、並びにTGF-β抗体、EGF径路因子、例えばEGF抗体、受容体拮抗薬及びキメラ融合タンパク質、TNF-α径路因子、例えばサリドマイド及びその類似体、トロンボキサンA2(TXA2)径路調節因子、例えばスロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン及びリドグレル、並びにタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬、例えばチルホスチン、ゲニステイン及びキノキサリン誘導体、(x)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)径路阻害薬、例えばマリマスタット、イロマスタット、メタスタット、バチマスタット、ペントサンポリスルファート、レビマスタット、インサイクリニド、アプラタスタット、PG 116800、RO 1130830又はABT 518、(y)細胞運動性阻害薬、例えばサイトカラシンB、(z)抗増殖/抗悪性腫瘍薬、例えば代謝拮抗薬、例えばプリン拮抗薬/類似体(例えば、6-メルカプトプリン及び6-メルカプトプリンのプロドラッグ、例えばアザチオプリン又はクラドリビン(塩素化プリンヌクレオシド類似体である))ピリミジン類似体(例えば、シタラビン及び5-フルオロウラシル)及びメトトレキサート、窒素ムスタルド、アルキルスルホナート、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソウレア、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタキセル及びエポチロン)、カスパーゼ活性化因子、プロテアソーム阻害薬、血管形成阻害薬(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン及びスクアラミン)、オリムスファミリー薬物(例えば、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス等)、セリバスタチン、フラボピリドール及びスラミン、(aa)マトリックス沈着/組織化径路阻害薬、例えばハロフギノン又は他のキナゾリノン誘導体、ピルフェニドン及びトラニラスト、(bb)内皮化(endothelialization)促進因子、例えばVEGF及びRGDペプチド、(cc)血液流動調節因子、例えばペントキシフィリン並びに(dd)グルコース架橋遮断薬(breaker)、例えばアラゲブリウムクロリド(ALT-711)。
【0045】
好ましい非遺伝的治療薬として、とりわけ、タキサン、例えばパクリタキセル(特にその粒子形態、例えば、タンパク質結合パクリタキセル粒子、例えばアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子、例えばABRAXANEが挙げられる)、オリムスファミリー薬物、例えばシロリムス、エベロリムス、タクロリムス及びゾタロリムス、Epo D、デキサメタゾン、プリン拮抗薬/類似体、例えば6-メルカプトプリン、エストラジオール、ハロフギノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、アラゲブリウムクロリド(ALT-711)、ABT-578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノムシンD、レステン-NG、Ap-17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、β遮断薬、bARKct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、Serca 2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI-AV)、成長因子(例えば、VEGF-2)、並びに前記薬剤の誘導体及びプロドラッグが挙げられる。
本発明の実施で有用な多くのさらなる治療薬は、Kunzの米国特許第5,733,925号(参照によって開示全体が援用される)にも開示されている。
【0046】
本明細書では種々の実施形態を詳細に例示して説明したが、当然のことながら、本発明の変態及び変形は上記教示によって包含され、かつ本発明の精神及び意図した範囲から逸脱することなく添付の特許請求の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面を有するレザバーと、前記レザバー内に配置された治療薬を含む治療薬含有材料と、前記レザバーの前記内面の少なくとも一部を画定する第1の伝導性ポリマーを含む第1の電極とを含んでなる医療デバイスであって、前記第1の伝導性ポリマーの酸化状態を変えるのに十分な電位を加えると、前記レザバーから前記治療薬が放出し始めるか又は前記放出の速度が増加する、前記医療デバイス。
【請求項2】
さらに第2の電極を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記電位を加えるのに適応した電力源をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記医療デバイスが外部電源と電気的に接続するように構成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記デバイスが、(a)前記第1の電極から近位に伸長し、かつ(b)前記第1の電極と電気的に接触している絶縁電導体を含む細長いデバイスである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記レザバーが、イオン透過性バリア層でキャップされている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記レザバーが、基体材料内又は基体材料上に配置された材料内に形成された窪み内に形成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記窪みが溝又は細孔の形態である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記酸化状態の変化が、前記第1の伝導性ポリマーを膨張させ、かつ前記レザバーの容積を減少させる、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記酸化状態の変化が、前記第1の伝導性ポリマーを親水性の高い状態に切り替える、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記レザバーが少なくとも部分的に前記第1の伝導性ポリマー内に形成されている、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記第1の伝導性ポリマーが、窪みの少なくとも一部を裏打ちする層の形態である、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記酸化状態の変化が、前記第1の伝導性ポリマーを収縮させる、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記第1の伝導性ポリマーが、前記レザバーを形成する材料の2つの対向壁を接続しており、かつ前記酸化状態の変化が、前記壁が一緒に引かれ、前記レザバーの容積を減少させて前記治療薬含有材料を排出するように前記伝導性ポリマーを短縮する、請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記レザバーが、前記デバイスの外部へ開く口を含んでおり、かつ前記第1の伝導性ポリマーが、この第1の伝導性ポリマーが収縮すると、前記レザバーの前記口が大きさを増すように前記レザバーの前記口の少なくとも一部を裏打ちしている、請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項16】
第2の伝導性ポリマーを含む第2の電極をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記第1の伝導性ポリマーが膨張し、かつ前記第2の伝導性ポリマーが収縮すると、前記レザバーから前記治療薬が放出し始めるか又は前記放出の速度が増加する、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記第1の伝導性ポリマーが、前記レザバーの壁の表面の少なくとも一部を画定し、かつ前記第2の伝導性ポリマーが、前記レザバーの前記口の表面の少なくとも一部を画定している、請求項17に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記医療デバイスが、バルーンカテーテル及び組織再生デバイスから選択される挿入可能又は移植可能デバイスである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記医療デバイスが、細長いシャフトと、放射状に拡張可能な部材とを含んでなる挿入可能デバイスである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記放射状に拡張可能な部材がバルーンである、請求項20に記載の医療デバイス。
【請求項22】
前記治療薬が無電荷治療薬である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記治療薬が、抗再狭窄薬、成長因子及び成長因子刺激薬から選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記治療薬が、パクリタキセル、エベロリムス及び6-メルカプトプリンから選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項25】
前記パクリタキセルが造影剤と混合されている、請求項24に記載の医療デバイス。
【請求項1】
内面を有するレザバーと、前記レザバー内に配置された治療薬を含む治療薬含有材料と、前記レザバーの前記内面の少なくとも一部を画定する第1の伝導性ポリマーを含む第1の電極とを含んでなる医療デバイスであって、前記第1の伝導性ポリマーの酸化状態を変えるのに十分な電位を加えると、前記レザバーから前記治療薬が放出し始めるか又は前記放出の速度が増加する、前記医療デバイス。
【請求項2】
さらに第2の電極を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記電位を加えるのに適応した電力源をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記医療デバイスが外部電源と電気的に接続するように構成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記デバイスが、(a)前記第1の電極から近位に伸長し、かつ(b)前記第1の電極と電気的に接触している絶縁電導体を含む細長いデバイスである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記レザバーが、イオン透過性バリア層でキャップされている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記レザバーが、基体材料内又は基体材料上に配置された材料内に形成された窪み内に形成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記窪みが溝又は細孔の形態である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記酸化状態の変化が、前記第1の伝導性ポリマーを膨張させ、かつ前記レザバーの容積を減少させる、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記酸化状態の変化が、前記第1の伝導性ポリマーを親水性の高い状態に切り替える、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記レザバーが少なくとも部分的に前記第1の伝導性ポリマー内に形成されている、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記第1の伝導性ポリマーが、窪みの少なくとも一部を裏打ちする層の形態である、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記酸化状態の変化が、前記第1の伝導性ポリマーを収縮させる、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記第1の伝導性ポリマーが、前記レザバーを形成する材料の2つの対向壁を接続しており、かつ前記酸化状態の変化が、前記壁が一緒に引かれ、前記レザバーの容積を減少させて前記治療薬含有材料を排出するように前記伝導性ポリマーを短縮する、請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記レザバーが、前記デバイスの外部へ開く口を含んでおり、かつ前記第1の伝導性ポリマーが、この第1の伝導性ポリマーが収縮すると、前記レザバーの前記口が大きさを増すように前記レザバーの前記口の少なくとも一部を裏打ちしている、請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項16】
第2の伝導性ポリマーを含む第2の電極をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記第1の伝導性ポリマーが膨張し、かつ前記第2の伝導性ポリマーが収縮すると、前記レザバーから前記治療薬が放出し始めるか又は前記放出の速度が増加する、請求項16に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記第1の伝導性ポリマーが、前記レザバーの壁の表面の少なくとも一部を画定し、かつ前記第2の伝導性ポリマーが、前記レザバーの前記口の表面の少なくとも一部を画定している、請求項17に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記医療デバイスが、バルーンカテーテル及び組織再生デバイスから選択される挿入可能又は移植可能デバイスである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記医療デバイスが、細長いシャフトと、放射状に拡張可能な部材とを含んでなる挿入可能デバイスである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記放射状に拡張可能な部材がバルーンである、請求項20に記載の医療デバイス。
【請求項22】
前記治療薬が無電荷治療薬である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記治療薬が、抗再狭窄薬、成長因子及び成長因子刺激薬から選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記治療薬が、パクリタキセル、エベロリムス及び6-メルカプトプリンから選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項25】
前記パクリタキセルが造影剤と混合されている、請求項24に記載の医療デバイス。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【公表番号】特表2011−525131(P2011−525131A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514803(P2011−514803)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/047777
【国際公開番号】WO2009/155405
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/047777
【国際公開番号】WO2009/155405
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]